(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20220810BHJP
【FI】
G03G15/20 555
(21)【出願番号】P 2017204031
(22)【出願日】2017-10-20
【審査請求日】2020-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮内 智絵
(72)【発明者】
【氏名】高木 修
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 諒太
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-065915(JP,A)
【文献】特開2016-133711(JP,A)
【文献】特開2007-079035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する無端状のベルトと、
前記ベルト内側に当接して配置され、前記ベルトの回転軸方向に複数のヒータブロックに分割され、前記ヒータブロック毎に制御される発熱領域を有するヒータと、
前記ベルトを挟んで前記ヒータと対向する位置に、搬送する用紙を加圧するように配置された加圧体と、
前記ヒータブロックそれぞれに配置された高温度センサと、
前記用紙の用紙幅と搬送位置に基づいて発熱対象のヒータブロックを1つ以上選択し、発熱ブロックを形成するヒータブロック選択部と、
前記発熱ブロック上の通紙領域を所定の温度範囲に制御する定着温度制御部と、
前記発熱ブロックのうち、非通紙領域を有するヒータブロックに配置された前記高温度センサを選択し、非通紙領域の過昇温を制御する高温制御部と、
を備え、
前記高温度センサは、第1の幅の用紙を印刷する際の非通紙領域の温度と、第1の幅と異なる第2の幅の用紙を印刷する際の非通紙領域の温度と、が同じ温度となる位置の温度を検知する定着装置。
【請求項2】
前記高温度センサは、前記発熱ブロックにて定着可能な最大用紙に対する非通紙領域内の温度を検知し、前記高温制御部は、少なくとも前記高温度センサの検知温度を用いて、前記非通紙領域の最大温度を算出する請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記高温度センサは、前記ヒータの裏面あるいは、前記ベルト裏面、ベルト表面に配置される請求項1または請求項2記載の定着装置。
【請求項4】
前記高温度センサは、前記ベルトの幅中央に対して対称に配置される、もしくは片方のみに配置される請求項1または請求項2記載の定着装置。
【請求項5】
前記請求項1から4
のいずれか一項に記載の定着装置を有する画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の定着装置ではヒータにより用紙を加熱させトナーを定着させる。同幅の用紙を連続印刷した場合、搬送される用紙端の外側に位置するヒータ領域、およびヒータが当接する定着ベルトの温度が極端に上昇する過昇温という現象を生じる(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
この非通紙領域の過昇温が部材の耐熱温度を超えると、ヒータの反り、定着ベルトの劣化、および搬送・加圧ローラの膨張等の不可逆的な性能劣化が生じるため、これを防止するとともに発火などの安全性対策についても考慮する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-27015号公報
【文献】特開2014-25965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は上記問題を解決し、ヒータの反り、定着ベルトの劣化、および搬送・加圧ローラの膨張等の性能劣化を防止するとともに、高い精度で安全制御を行うことができる定着装置、および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために、本実施形態の定着装置および画像形成装置は、回転する無端状のベルトと、前記ベルト内側に当接して配置され、前記ベルトの回転軸方向に複数のヒータブロックに分割され、前記ヒータブロック毎に制御される発熱領域を有するヒータと、前記ベルトを挟んで前記ヒータと対向する位置に、搬送する用紙を加圧するように配置された加圧体と、前記ヒータブロックそれぞれに配置された高温度センサと、前記用紙の用紙幅と搬送位置に基づいて発熱対象のヒータブロックを1つ以上選択し、発熱ブロックを形成するヒータブロック選択部と、前記発熱ブロック上の通紙領域を所定の温度範囲に制御する定着温度制御部と、前記発熱ブロックのうち、非通紙領域を有するヒータブロックに配置された前記高温度センサを選択し、非通紙領域の過昇温を制御する高温制御部と、を備える。高温度センサは、第1の幅の用紙を印刷する際の非通紙領域の温度と、第1の幅と異なる第2の幅の用紙を印刷する際の非通紙領域の温度と、が同じ温度となる位置の温度を検知する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る定着装置を含む画像形成装置の構成図。
【
図2】実施形態に係る画像形成装置の制御系を示すブロック図。
【
図3】実施形態に係る定着装置の一例を示す構成図。
【
図6】実施形態に係る定着装置の構御系を示すブロック構成図。
【
図7】第1ヒータブロックが選択される時の説明図。
【
図8】第1ヒータブロック端での温度低下を示す説明図。
【
図9】第1ヒータブロックと第2ヒータブロックが選択される時の説明図。
【
図10】第2ヒータブロック端での温度低下を示す説明図。
【
図11】第1ヒータブロックが選択される場合の高温度センサ位置を示す説明図。
【
図12】第1ヒータブロックの最大用紙幅に対する高温度センサ位置を示す説明図。
【
図13】最大用紙幅に対する非通紙領域の温度上昇を示す説明図。
【
図14】最大用紙幅より狭い用紙幅に対する非通紙領域の温度上昇を示す説明図。
【
図15】ベルト幅中央の両側に配置する高温度センサ位置を示す説明図。
【
図16】ベルト幅中央の片側に配置する高温度センサ位置を示す説明図。
【
図17】同実施形態における画像形成装置の制御動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について
図1から
図17を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0009】
図1において、画像形成装置10は、例えば複合機であるMFP(Multi-Function Peripherals)、プリンタ、および複写機等である。以下の説明ではMFPを例に説明する。
【0010】
画像形成装置10の本体11の上部には透明ガラスの原稿台12があり、原稿台12上にはADF(Auto Document Feeder)13が開閉自在に設けられている。また、本体11の上部には入出力制御部14が設けられている。入出力制御部14は、画像形成装置10を操作するための各種キーを有する操作パネル14aとタッチパネル式の表示部14bを有している。
【0011】
本体11内のADF13の下部には、読取装置であるスキャナ部15が設けられている。スキャナ部15は、ADF13によって送られる原稿または原稿台上に置かれた原稿を読み取って画像データを生成するもので、例えば密着型イメージセンサ16(以下、単にイメージセンサと称する)を備えている。イメージセンサ16は、主走査方向に配置されている。
【0012】
イメージセンサ16は、原稿台12に載置された原稿の画像を読み取る場合は原稿台12に沿って移動しながら、原稿画像を1ライン分ずつ読み取る。これを原稿サイズ全体にわたって実行し、1ページ分の原稿の読み取りを行う。また、ADF13によって送られる原稿の画像を読み取る場合、イメージセンサ16は、固定位置(図示の位置)にある。尚、主走査方向は、イメージセンサ16が原稿台12に沿って移動するときの移動方向と
直交する方向(
図1では奥行方向)である。
【0013】
更に、本体11内の中央部にはプリンタ部17を有している。プリンタ部17は、スキャナ部15で読み取った画像データや、パーソナルコンピュータなどで作成された画像データを処理して、記録媒体(例えば用紙)に画像を形成する。また本体11の下部には、各種サイズの用紙を収容する複数の給紙カセット18を備えている(
図1では、2つの給紙カセット18a、18bを示す)。尚、画像を形成する記録媒体としては、用紙のほかにOHPシート等があるが、以下の説明では、用紙に画像を形成する例を説明する。
【0014】
プリンタ部17は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色用の露光器としてLEDまたはレーザを含む走査ヘッド19Y、19M、19C、19Kを有し、露光器の各走査ヘッド19からの光線を走査して感光体に画像を生成する。このプリンタ部17は、例えパターンデム方式によるカラーレーザプリンタであり、各色の画像形成部20Y,20M,20C,20Kで構成される。この画像形成部20Y~20Kは、中間転写ベルト21の下側に上流から下流側に沿って並列に配置される。
【0015】
中間転写ベルト21は、駆動ローラ31及び従動ローラ32に張架され、循環的に移動する。また中間転写ベルト21は感光体ドラム22Y、22M、22C、22Kに対向して接触している。
【0016】
各色の画像形成部20Y~20Kは同じ構成であるので、画像形成部20Kを例に説明すると、感光体ドラム22Kの周囲には、帯電器23K、現像器24K、一次転写ローラ25K等を配置している。感光体ドラム22Kの露光位置には、走査ヘッド19Kから光を照射し、感光体ドラム22K上に静電潜像を形成する。
【0017】
帯電器23Kは、感光体ドラム22Kの表面を一様に帯電する。現像器24Kは、現像バイアスが印加される現像ローラによりブラックのトナーを感光体ドラム22Kに供給し、静電潜像の現像を行う。
【0018】
また、画像形成部20Y~20Kの上部には、各現像器24Y~24Kにトナーを供給する図示しないトナーカートリッジを設けている。中間転写ベルト21の感光体ドラム22Kに対向する位置には、一次転写ローラ25Kに より一次転写電圧が印加され、感光体ドラム22K上のトナー像を中間転写ベルト21に 一次転写する。
【0019】
中間転写ベルト21を張架する駆動ローラ31は、二次転写ローラ33を対向して配置される。用紙Pが駆動ローラ31と二次転写ローラ33間を通過する際には、二次転写ローラ33により二次転写電圧が用紙Pに印加される。そして中間転写ベルト21上のトナー像を用紙Pに二次転写する。中間転写ベルト21の従動ローラ32付近には、ベルトクリーナ34が設けられている。
【0020】
また、給紙カセット18から二次転写ローラ33に至る搬送路には、給紙カセット18内から取り出した用紙Pを搬送するための給紙ローラ35が設けられている。更に、二次転写ローラ33の下流には加熱装置である定着装置36を設けている。さらに、定着装置36の下流には搬送ローラ37を設け、この搬送ローラ37によって用紙Pを排紙部38に排出する。また画像形成装置10は、システム制御部39によって統合的に制御される。
【0021】
また、通紙領域に配置されるラインセンサ40を用いて、搬送される用紙のサイズと位置をリアルタイムで判定できる。
【0022】
本実施形態の定着装置36については、詳しく後述する。尚、
図1は実施形態の一例であって、この例に限定するものではなく、公知の電子写真方式画像形成装置の構造を用いることができる。
【0023】
図2は、実施形態における画像形成装置10の制御系の構成例を示すブロック図である。画像形成装置10の制御系は、システム制御部39、入出力制御部14、給紙・搬送制御部130、画像形成制御部140、および定着制御部150によって形成され、バスライン110で相互に接続されている。
【0024】
システム制御部39は、例えば、画像形成装置10全体を制御するCPU100、リードオンリーメモリ(ROM)120、ランダムアクセスメモリ(RAM)121、インターフェース(I/F)122で構成される。
【0025】
CPU100は、ROM120或いはRAM121に記憶されたプログラムを実行することにより画像形成制御、定着温度制御をはじめとする装置全体の制御を実現する。ROM120は、画像形成制御、および定着温度制御などの制御プログラム及び制御データなどを記憶する。RAM121は、主として装置全体の制御を実行するためのワーキングメモリとして使用する。
【0026】
ROM120(或いはRAM121)は、例えば、画像形成部20や定着装置36等の制御プログラムと、制御プログラムが使用する各種の制御データを記憶する。I/F122は、ユーザ端末やファクシミリ等の各種装置との通信を行う。
【0027】
入出力制御部14は、入出力制御回路123に接続された操作パネル14aと、表示部14b、およびスキャナ部15を制御する。操作者は操作パネル14aを操作して、たとえば用紙サイズや、原稿のコピー部数、等を指定することができる。表示部14bは画像形成装置10の動作状態等を表示する。
【0028】
給紙・搬送制御部130は、給紙・搬送制御回路131、モータ群132、センサ群133で構成され、給紙、用紙搬送の制御を実行する。給紙・搬送制御回路131は、搬送路上の給紙ローラ35或いは搬送ローラ37等を駆動するモータ群132等を制御する。また、給紙・搬送制御回路131は、CPU100からの制御信号に基づいて、給紙カセット18近傍、あるいは搬送路上の各種センサ群133の検知結果に応じてモータ群132等を制御する。
【0029】
画像形成制御部140は、CPU100からの制御信号に基づいて感光体ドラム22、帯電器23、露光器(走査ヘッド)19、現像器24、転写器(転写ローラ)25をそれぞれ制御する画像形成制御回路141で構成され、画像形成の制御を実行する。
【0030】
定着制御部150は、定着装置36を構成するモータ151、加熱のためのヒータ152、温度検知を行う各種温度センサ153、定着温度制御、および安全制御を行う定着制御回路154で構成され、定着制御を実行する。
【0031】
図3は定着装置の一例を示す構成図である。
図3に示すように、定着装置36はベルト表面51およびベルト裏面52を有する無端状のベルト53と、ベルト53に対向する加圧ローラ(加圧体)54とを備えている。加圧ローラ54は、図示しないモータによって駆動力が伝達され矢印T方向に回転する。
【0032】
無端状のベルト53は、例えば厚さ50μmのSUS(Stainless Used Steel)、あるいは70μmのポリイミド耐熱樹脂の基材外側に、厚さ200μm程度のシリコンゴム層が形成され、再外周は、PFA(Perfluoroalkoxy)等の保護層で被膜されている。加圧ローラ54は、例えばφ10mmの鉄棒表面に厚さ5mm程度のシリコンスポンジ層が形成され、再外周は、PFA等の保護層で被膜されている。
【0033】
また定着装置36は、ベルト53の回転軸方向に、ベルト裏面52に当接して昇温のためのヒータ152が配置されている。無端状のベルト53は、矢印S方向に加圧ローラ54との間に定着ニップNを形成しながら回転する。矢印Aの方向に用紙Pが定着ニップNを通過する際に、ヒータ152で発熱する熱と定着ニップNでの圧力により用紙P上のトナー像55は用紙Pに定着される。
【0034】
定着温度を検知する各種温度センサ153については種々の方法がある。
図3では、ヒータ152の裏面に配置する温度センサ56、ベルト裏面52に配置しベルト裏面の温度を検知する温度センサ57、ベルト表面51に配置しベルト表面の温度を検知する温度センサ58を示している。
【0035】
温度センサ56はヒータ152の裏面に位置するために、ベルト53の回転の影響を受けにくく、用紙Pが定着ニップNの領域を通過する時を除いて概ね一定温度が検知可能である。
【0036】
温度センサ57はベルト裏面側に位置するため、ヒータ152が当接された定着ニップNの領域の温度が一番高く、ベルト53が回転するに従って温度降下が観測される。
【0037】
温度センサ58は、ベルト53を傷付けないように非接触のものが好ましい。温度センサ57、58は、定着ニップNとは離れたベルト53の周回上に配置する必要があるため、ベルト53の周回に伴う温度補正が必要である。定着装置36は、定着制御回路154により制御される。
【0038】
本実施形態では、これらの温度センサ56、57,58を適宜選択、あるいは複数のタイプを併用することが可能である。
【0039】
図4はヒータの一例を示す平面図、
図5はその断面図である。ヒータ152は、2点鎖線で示すヒータ中央線(B-B’)に対して対称に複数のヒータブロックに分かれている。本実施形態では7分割されている例を示す。もちろんこの分割数は任意数である。また、用紙Pの搬送位置をヒータ中央にしない場合は、ヒータブロックを対称に配置しなくてもよい。
【0040】
ベルト53の回転軸方向(ヒータ152の長手方向)に、複数のヒータブロックに分割されたヒータ152では、ヒータブロックの分割数が多い方が様々な用紙幅に対して発熱領域幅を適宜変えられるという利点を有する。ただし制御用の温度センサの個数の増加によるコスト増や制御の複雑さなどを考慮するとトレードオフの関係がある。従って、例えば給紙カセット18に収容されうる用紙サイズや主にユーザが使用する何種類かの紙サイズの用紙幅に応じて最適となる分割数を設定する。
【0041】
画像形成装置10のアイドリング時など、用紙が搬送されない状態では、最も外側に位置するヒータブロックの最外側端部の温度低下が生じる。このヒータブロック端部の温度低下領域を使用すると定着不良を生じるため、分割されるヒータブロックのブロック幅は、ヒータブロック端部の温度低下を見越して用紙幅より広くなるように設定される。
【0042】
このようにヒータ152を複数のヒータブロックに分割し、用紙サイズに応じて定着に必要なヒータブロックのみを使用することで消費電力を低減させることができる。
【0043】
中央部にあるヒータブロック41を第1ヒータブロック、ヒータブロック41の両側に位置するヒータブロック42a、42bを第2ヒータブロック、その両隣に位置するヒータブロック43a、43bを第3ヒータブロック、さらにその両隣に位置するヒータブロック44a、44bを第4ヒータブロックと呼ぶことにする。ヒータブロック41~44は、ヒータブロック毎に温度制御するための給電経路(図示しない)が形成され、ヒータブロック間には、離間(絶縁)されるよう所定のギャップΔGが形成される。
【0044】
図5に示すように、ヒータ152は、必要に応じグレーズ層が形成されたセラミック系基板61上に抵抗層62を形成し、その抵抗層62上に電極63a、電極63bが形成される。さらにガラス系の保護層64が形成される。定着制御回路154からヒータ152の長手方向と直交する方向に、すなわち、電極63a、電極63bに電流を流すことによって、発熱体である抵抗層62を発熱させ、当接するベルト53を昇温させることができる。各ヒータブロック41~44の断面は、同様の構造を有する。
【0045】
基板61下に温度センサ56を用いる場合には、ベルト回転軸方向すなわち基板61長手方向の温度検知すべき発熱領域の直下に、温度センサ56が適宜付加される。この温度センサ56は、サーミスタ等が用いられる。
【0046】
図6は、定着装置の構御系を示すブロック構成図である。
図2に示したブロック構成図より詳細な構成を示す。定着制御部150は、用紙幅取得部65、ヒータブロック選択部66、定着温度制御部67、高温制御部68、定着制御回路154、モータ151、ヒータ152、通紙領域を所定の定着温度範囲に制御するための温度センサ153、非通紙領域の過昇温を防止するための高温度センサ56hを有している。高温度センサ56hは、温度センサ56と同じデバイスである。
【0047】
用紙幅取得部65では、搬送される用紙Pの用紙幅と搬送位置についての情報を取得する。用紙Pのサイズは、通常ユーザが操作パネル14aを使用して、複数の給紙カセット18内に収容された用紙の種類と用紙の搬送方向を指定する。これにより指定された用紙Pの搬送方向と直交する方向(ベルト53回転軸方向)の用紙幅を判別する。また、非定型サイズの用紙Pに対する手差印刷などの場合にもユーザが操作パネル14aを使用して入力してもよい。またはラインセンサ40を用いて、搬送される用紙の用紙幅と搬送位置をリアルタイムで判定してもよい。
【0048】
ヒータブロック選択部66では、
図4に示したヒータ152の複数のヒータブロック41~44のうち、用紙幅取得部65で取得した、搬送される用紙の用紙幅と搬送位置情報からどのヒータブロックを選択するかを決定し、選択されたヒータブロックに対して通電し昇温させる。この選択・通電されたヒータブロックを発熱ブロックとし、この発熱ブロックに対して温度制御がなされる。用紙Pが定着装置の中心(B-B’)上を通過する場合には、第1ヒータブロックは必ず選択される。
【0049】
定着温度制御部67では、発熱ブロックに対応する位置に配置された温度センサ153の温度検出値を用いて、定着装置36の定着ニップN上の通紙領域温度を定着に最適な温度範囲になるように定温制御する。本実施形態では、定着温度制御に用いる温度センサ153の配置位置、種別(56,57,58)は規定せず、発熱ブロックに対する通紙領域が定着温度に制御されればよい。
【0050】
高温制御部68では、発熱ブロック上の非通紙領域の過昇温を検知し制御する。ヒータ152を構成する各ヒータブロック41~44のそれぞれには、過昇温検知用の高温度センサ56hが配置されている。以下、過昇温検出用の温度センサについては、ヒータ152の裏面に位置する高温度センサ56hを例に説明する。高温制御部68では、ヒータブロック選択部66で選択された発熱ブロックを形成するヒータブロックのうち、非通紙領域を有するヒータブロックに配置された高温度センサ56hを選択して、発熱ブロックの過昇温を制御する。非通紙領域の温度上昇が規定の温度に達する前に、過昇温を生じているヒータブロックへの通電制御、印刷速度の低下もしくは停止を行うなどの安全制御を行う。
以上説明した用紙幅取得部65、ヒータブロック選択部66、定着温度制御部67、高温制御部68は、主としてシステム制御部39から定着制御回路154に対する制御・命令に基づくソフトウエアで構成される。
【0051】
一方定着制御回路154は、主としてモータ151、ヒータ152、温度センサ153、高温度センサ56hなどのハードウエア制御を受け持つものとして構成される。
【0052】
以下、より具体的な例を用いて定着制御部150の動作を説明する。以下、用紙Pはヒータ152の中央を基準にして搬送されるものとして説明を行うが、用紙Pがヒータ中央からオフセットされた位置を搬送される場合にも対称性から一般性は失われない。
【0053】
図7は、第1ヒータブロック41が選択される時の説明図である。第1ヒータブロック41のブロック幅をWh1とし、搬送される用紙の用紙幅をWp1とする。
【0054】
また
図8は、第1ヒータブロック41が選択された時のヒータブロック端部での温度低下曲線を示している。尚、縦軸は温度、横軸はヒータ中央からの距離を示している。温度低下開始点T1からヒータブロック端までの距離をWd1とする。
【0055】
図7に示すように、第1ヒータブロック幅Wh1より小さい用紙幅Wp1を持つ用紙Pが搬送される場合、ヒータブロック端での温度低下幅Wd1を考慮して、第1ヒータブロック41が選択される。
【0056】
すなわち、
図8に示すように、第1ヒータブロック41が選択される最大の用紙幅Wp1maxは、温度低下開始点T1で決定されるため、第1ヒータブロック41が選択される用紙幅Wp1は、(1)式を満足する。
【0057】
Wp1≦Wh1-2×Wd1 ・・・(1)
図9は、第1ヒータブロック41と第2ヒータブロック42が選択される時の説明図である。第2ヒータブロック42のブロック幅をWh2とし、搬送される用紙の用紙幅をWp2とする。第1ヒータブロック41と第2ヒータブロック42の間のギャップをΔGとする。
【0058】
また
図10は、第1ヒータブロック41と第2ヒータブロック42が選択された時の第2ヒータブロック端部での温度低下曲線を示している。温度低下開始点T2からヒータブロック端までの距離をWd2とする。
【0059】
図9に示すように、用紙幅Wp2を持つ用紙Pが搬送され、第1ヒータブロック41と第2ヒータブロック42が選択される場合、第1ヒータブロック幅Wh1、2つの第2ヒータブロック幅(2×Wh2)と2つのギャップ(2×ΔG)を足した領域が発熱する発熱ブロックである。第2ヒータブロック端部での温度低下幅Wd2を考慮し、最大用紙幅Wp2maxが決定される。
【0060】
図10に示すように、第1ヒータブロック41と第2ヒータブロック42が選択される用紙幅Wp2は、(2)式を満足する。
【0061】
Wp2≦Wh1+2×(Wh2+ΔG-Wd2) ・・・(2)
(Wp2>Wp1maxの時)
なお、ヒータブロック間のギャップΔGは、このギャップで生じる温度低下が定着特性には影響しないように、さらにはヒータブロック間での絶縁特性が満足するように決定される。
【0062】
ここでは説明を省略するが、第1ヒータブロック41~第3ヒータブロック43までが選択される場合、および第1ヒータブロック41~第4ヒータブロック44までが選択される場合も上記と同様の方法を用いて搬送される用紙幅に応じたヒータブロックの選択がなされる。
【0063】
画像形成装置10において同一用紙幅の用紙を用いて連続印刷を実行した場合には、搬送される用紙による吸熱が顕著となる。定着温度制御部67は、通紙領域の温度を一定の温度範囲内に制御しようとするため、その結果、非通紙領域の温度が上昇する。
【0064】
本実施形態では、この過昇温を検知するために各ヒータブロックの最適な位置に高温度センサ56hを設ける。
図11は第1ヒータブロックが選択される場合の高温センサ位置を示す説明図である。
図11に示すように、用紙幅Wp1に対して第1ヒータブロック41が選択された場合、非通紙領域において最大温度となるS1の位置に高温度センサ56hを配置することが好ましい。
【0065】
同様に、
図12に示すように、用紙幅Wp1maxに対しては非通紙領域の最大温度となるS1maxの位置に高温度センサ56hを配置することが好ましい。このように一般的には用紙幅Wp1に対して最適な高温度センサ56hの位置は異なるため、本実施形態では用紙幅wp1が変化しても高精度な高温検出が可能な高温度センサの配置を求める。
【0066】
(第1の設置方法)
図13は最大用紙幅に対する非通紙領域の温度上昇曲線を示す説明図である。今最大用紙幅Wp1maxを有する用紙の用紙端が、
図8のT1点と等しい時を考えるとする。
【0067】
ヒータ中央を原点とすると、用紙端Wp1max/2までは通紙領域であり、略一定の制御温度Tcに制御される。しかし非通紙領域では、用紙端Wp1max/2からWs1離れた点にて温度ピーク点Tp1maxを生じる。この時、温度ピーク点Tp1maxは、第1ヒータブロック41の端部温度低下幅Wd1内に生じ、最適な高温度センサ56hの位置はS1maxの位置である。
【0068】
図14は、最大用紙幅より狭い用紙幅Wp1に対する非通紙領域の温度上昇曲線を示す説明図である。
図13と同様に、用紙端Wp1/2までは通紙領域であるため、ほぼ一定の制御温度Tcに制御される。非通紙領域では用紙端Wp1/2からWs1離れた点(S1点)にて過昇温のピーク点Twp1となり、Sd1点から発熱ブロック端部における温度低下が生じる。
【0069】
このSd1点は、第1ヒータブロック41の端部Wh1/2から温度低下幅Wd1だけ離れた点である。したがって用紙幅Wp1に対する最適な高温度センサ56hの位置はS1からSd1の間の位置である。なお、用紙端から過昇温のピークまでの距離Ws1は、同一発熱ブロックであれば、用紙幅Wp1に関わらず略一定であることが実験で確認されている。
【0070】
用紙幅Wp1がさらに狭くなれば、S1の位置は
図14において、左方向に移動するが、Sd1の位置は概ね変化しない。
図13と
図14の両方において過昇温を検出できる高温センサ56hの位置は、Sd1からS1maxの間のWの範囲、好ましくは実線と点線で示す2つの温度上昇曲線の交点Sh1に配置すればよいことがわかる。
【0071】
しかし交点Sh1の場合は、高温度センサ56hは過昇温のピーク点に配置されないため、高温度センサ56hの検知温度、検知位置、制御温度Tc、用紙幅Wp、用紙端から過昇温のピーク点までの距離Ws1、端部温度低下幅Wd1などのパラメータを用いて予想される温度上昇曲線を求め、予想される過昇温のピーク温度を算出する。または、Wの範囲内に複数の高温度センサ56hを配置し、複数の検知温度から過昇温のピーク温度の予想値を外挿して算出してもよい。この設置方法では、発熱ブロック端部の温度低下開始点T1まで最大用紙幅を有効に使用することが可能となる。
【0072】
(第2の設置方法)
最大用紙幅Wp1maxを発熱ブロック端部の温度低下開始点T1まで最大限使用しないならば、
図14の温度上昇曲線(実線)に示したように、高温センサ56hの位置は、第1ヒータブロック41端部の温度低下が始まるSd1の位置に設置すればよい。この方法によれば、用紙幅Wp1が変化してもピーク点の温度を高温センサ56hで検知可能である。
【0073】
(第3の設置方法)
図15は、ベルト幅中央(B-B’)を基準として高温度センサ56hを両側に配置する場合の説明図である。以上では、第1ヒータブロック41のみが選択される場合について説明したが、第2ヒータブロック42から第4ヒータブロック43においても同様の方法で高温度センサ56hを配置する。すなわち、用紙幅Wpを変化させ、対応するヒータブロックを変更し、新たな発熱ブロックを形成する。この発熱ブロックのうち、定着可能な最大用紙に対する非通紙領域を有するヒータブロックの非通紙領域に、高温センサ56hを順次配置していけば、各ヒータブロックに過昇温検知用の温度センサ56hを配置することができる。
【0074】
図15に示すように、高温度センサ56hは、第1ヒータブロック41については両端のSh1の位置、第2ヒータブロック42から第4ヒータブロックについては、それぞれSh2、Sh3、およびSh4の位置に配置される。
【0075】
発熱ブロックの温度制御時には、発熱ブロック内の高温度センサ56hのうち、発熱ブロックの非通紙領域にある高温度センサ56hのみが選択されて、過昇温を防止する高温制御に使用される。この時、過昇温検知として使用しない高温度センサ56hは、発熱ブロック内のギャップΔG近辺の温度を検出できるため、これらを定着温度制御のための温度センサ153として使用すれば、ギャップΔGにおける定着ムラなどを低減することが可能となる。
【0076】
(第4の設置方法)
図16は、ベルト幅中央(B-B’)に対して片側に高温度センサを配置する場合の説明図である。用紙Pがベルト中央を搬送される場合は、ベルト幅中央に対して対称な温度特性となるため、高温度センサ56hはベルト幅中央に対してどちらか片方に配置すればよい。この配置方法によれば、高温度センサ56hの個数を減らすことが可能となり、制御の簡便化と低価格化に貢献できる。
【0077】
(第5の設置方法)
以上の第1から第4の高温度センサ56hの設置方法は、ヒータ152の裏面に配置する構成で説明したが、ベルト表面51の温度を検出する温度センサ58、ベルト裏面52の温度を検出する温度センサ57を用いても同様に実施可能である。
【0078】
(制御のフローチャート)
次に上記のように構成された画像形成装置10の印刷時の動作を
図17のフローチャートを用いて説明する。
【0079】
先ず、Act1(動作1)において、スキャナ部15が画像データを読込むと、CPU100は、画像形成部20における画像形成制御プログラムと定着装置36における定着温度制御プログラムを並列して実行する。
【0080】
画像形成処理のプログラムが開始されると、Act2では、読込んだ画像データを処理し、Act3では、感光体ドラム22の表面に静電潜像が書込まれる。またAct4で、現像器24は、静電潜像を現像する。
【0081】
他方、Act5において、定着温度制御プログラムの処理が開始されると、CPU100は、搬送される用紙Pの用紙幅と搬送位置を判定する。上述したように、この用紙幅判定は、例えばラインセンサ40の検出信号や、操作パネル14aを使用したユーザによる用紙選択情報に基づくことができる。
【0082】
またAct6では、定着制御部150は、搬送される用紙Pの用紙幅と搬送位置に対応するヒータブロックを選択し、その選択されたヒータブロックを発熱対象とした発熱ブロックを形成する。ヒータブロック選択方法については、例えば、
図7から
図10において説明した方法に基づいて選択される。
【0083】
次にAct7では、選択されたヒータブロックで形成された発熱ブロックの温度制御が開始される。選択されたヒータブロックへの通電が行われ、温度が上昇するとともに、定着温度制御部67により発熱ブロックは、定着温度範囲に温度制御される。
【0084】
Act8では、発熱ブロックのうち、非通紙領域を有するヒータブロックの最も外側に位置する(あるいは非通紙領域に位置する)高温度センサ56hが高温制御に用いるために選択される。例えば、第1ヒータブロック41と第2ヒータブロック42が選択されて発熱ブロックが形成されている場合には、第2ヒータブロック42a、42bのSh2の位置に配置された高温度センサ56hのうち、どちらか一方または両方の高温度センサ56hが選択される。そして高温制御部68は、この選択された高温度センサ56hで温度検知を行い、非通紙領域の端部温度上昇を監視する高温制御を行う。
【0085】
Act9では、選択された高温度センサ56hの検知温度Thが、部品の性能、および安全を確保するのに十分な所定の温度Tthより低いかどうかを判定する。ここで、検知温度Thが所定の温度Tth以下であれば、Act10へ進む。一方、検知温度Thが温度Tthより高ければ(Act9:No)、は、Act11へ進む。
【0086】
Act11では、非通紙領域の端部温度上昇を防ぐために、高温になったヒータブロックを冷却する。具体的には、CPU100は、(1)印刷スピードを低下させる。(2)高温になったヒータブロックの通電を一時的に停止する。(3)印刷処理を一時停止するなどの処理を行い、Act8に戻り、再度非通紙領域の温度検出により端部温度上昇が改善されるまでこのループが処理される。
【0087】
次にAct10では、CPU100は、非通紙領域の端部上昇温度が所定の温度Tth以下の状態で、用紙Pを転写部に搬送する。
【0088】
Act12では、Act4で現像されたトナー像を用紙Pに転写する。そして用紙Pにトナー像を転写した後、用紙Pを定着装置36内に搬送する。
【0089】
次に、Act13で、定着装置36は用紙Pにトナー像を定着させる。
【0090】
Act14では、CPU100は、画像データの印字処理を終了するか否かを判定する。ここで、印字処理を終了すると判定した場合(Act14:Yes)は、Act15で、全てのヒータブロック41~44への通電をOFFにし、処理を終了する。一方、画像データの印字処理を未だ終了しないと判定した場合(Act14:No)、すなわち、印刷対象の画像データが残っている場合には、Act1へ戻り、終了するまで同様の処理を繰り返す。
【0091】
以上、本実施形態によれば、用紙を定着するためのヒータが複数のヒータブロックに分割されており、用紙の搬送位置と用紙幅に応じて、必要最低限のヒータブロックを選択して発熱ブロックを形成することが可能である。これにより、省エネルギー動作が達成できる。
【0092】
また、各ヒータブロックには、それぞれ過昇温検知用の温度センサが配置されており、発熱ブロックの非通紙領域にあたるヒータブロックに配置された温度センサを用いて、非通紙領域の過昇温を防止できる。すなわち、用紙幅に応じて発熱ブロックのブロック幅を変更するとともに、非通紙領域の過昇温を検出する高温度センサを切り替えて選択できるため、様々な用紙幅を有する用紙に対して高精度な高温制御が可能となる。
【0093】
また、高温度センサを各ヒーブロックの最適な位置に配置することによって同一発熱ブロックを使用する様々な用紙幅を有する用紙に対して高精度な高温制御が可能となる。
【0094】
また、発熱ブロック内で使用しない高温度センサを定着温度制御に使用することができ、ヒータブロック間のギャップに起因する定着ムラを防止することが可能である。
【0095】
尚、本発明のいくつかの実施形態を述べたが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。本実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0096】
10…画像形成装置
36…定着装置
53…定着ベルト
54…加圧体
56h…高温度センサ
152…ヒータ
153、56,57、58…温度センサ