(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】ロボットアーム及びそれを備えるロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20220810BHJP
【FI】
B25J19/00 E
(21)【出願番号】P 2018104976
(22)【出願日】2018-05-31
【審査請求日】2021-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】出村 暢啓
(72)【発明者】
【氏名】米山 真人
【審査官】木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0104792(US,A1)
【文献】特開2005-279635(JP,A)
【文献】特開2000-158377(JP,A)
【文献】特開2002-079487(JP,A)
【文献】特開2005-096073(JP,A)
【文献】特表2017-507799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドエフェクタが取り付けられるロボットアームであって、
前記エンドエフェクタまで延びる複数の長尺状部材と、
前記複数の長尺状部材の通路となる内部空間の周縁を画定する筒状筐体と、
前記筒状筐体の先端部に対して前記エンドエフェクタを取り付けるために、前記筒状筐体の内部空間の先端に対して設けられる取り付け構造と、を備えており、
前記取り付け構造は、
前記複数の長尺状部材それぞれを挿通するために前記複数の長尺状部材それぞれに対応して穿設されている挿通孔と、
前記複数の長尺状部材それぞれを前記挿通孔に対して固定するための固定部材と、を有しており、
前記筒状筐体は、先端部の内径が基端部の内径よりも大きく形成され
ており、前記先端部と前記基端部との間に前記先端部に向かうに連れて内径が大きくなる内径拡張部を有しており、
前記筒状筐体には、複数の関節軸が設けられており、
前記内径拡張部は、前記筒状筐体の軸方向において前記複数の関節軸のうちで最も先端側に設けられる関節軸とその一つ基端側に設けられる関節軸との間に存している、ロボットアーム。
【請求項2】
前記複数の長尺状部材は、それぞれ、配線又は配管として構成されている、請求項1に記載のロボットアーム。
【請求項3】
前記内径拡張部は、前記先端部に向かうに連れて、外径と内径の差が小さくなる、請求項1又は2に記載のロボットアーム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のロボットアームと、前記ロボットアームに取り付けられるエンドエフェクタと、を備えていることを特徴とする、ロボット。
【請求項5】
塗装作業を行うための塗装用ロボットとして構成されている、
請求項4に記載のロボット。
【請求項6】
前記エンドエフェクタは塗装ガンとして構成されている、
請求項5に記載のロボット。
【請求項7】
前記塗装ガンはベル型塗装ガンとして構成されている、
請求項6に記載のロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットアーム及びそれを備えるロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンドエフェクタが取り付けられるロボットアームが知られている。このようなロボットアームが、例えば、特許文献1の産業用ロボットで提案されている。
【0003】
特許文献1のロボットアームの手首先端には、グリッパまたは溶接トーチ等の作業ツールが取付けられている。手首は、手首機枠と、手首機枠に対してJ5軸回りに回動可能に取付けられた手首内枠とを主に含んでいる。手首内枠は作業ツール取付部を備えており、作業ツールと一緒にJ6軸回りに回転駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1で提案されているような従来からあるロボットアームは、作業現場での設置スペースを考慮して小型化されることが望ましい。ここで、従来からあるロボットアームは、一般に、複数の長尺状部材(例えば、配線や配管等)の通路となる内部空間の周縁を画定する筒状筐体を備えている。そして、ロボットアームの小型化を図るには、当該筒状筐体を小型化することが必要となる。
【0006】
ここで、筒状筐体の内部空間の先端には、一般に、エンドエフェクタを取り付けるための取り付け構造が設けられている。当該取り付け構造は、複数の長尺状部材それぞれを挿通するために複数の長尺状部材それぞれに対応して穿設されている挿通孔と、複数の長尺状部材それぞれを挿通孔に対して固定するための固定部材と、を有している。
【0007】
小型化が図られたロボットアームは、筒状筐体及びその内部空間が小さく形成される。しかし、このとき、取り付け構造は、固定部材の径寸法を小さくすることが困難であるため、その要部構造を小型化することが難しい。これにより、複数の長尺状部材が、それぞれ、筒状筐体の内部空間から取り付け構造の挿通孔に至るまでに、筒状筐体の径方向の外側に向けて急激に屈曲してしまう。このように屈曲することで、複数の長尺状部材それぞれが損傷してしまう。
【0008】
そこで、本発明は、小型化を図りながら、内部に挿通される複数の長尺状部材の損傷を抑制することが可能な、ロボットアーム及びそれを備えるロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明に係るロボットアームは、エンドエフェクタが取り付けられるロボットアームであって、前記エンドエフェクタまで延びる複数の長尺状部材と、前記複数の長尺状部材の通路となる内部空間の周縁を画定する筒状筐体と、前記筒状筐体の先端部に対して前記エンドエフェクタを取り付けるために、前記筒状筐体の内部空間の先端に対して設けられる取り付け構造と、を備えており、前記取り付け構造は、前記複数の長尺状部材それぞれを挿通するために前記複数の長尺状部材それぞれに対応して穿設されている挿通孔と、前記複数の長尺状部材それぞれを前記挿通孔に対して固定するための固定部材と、を有しており、前記筒状筐体は、先端部の内径が基端部の内径よりも大きく形成されていることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、先端部の内径が基端部の内径よりも大きく形成されているので、複数の長尺状部材は、それぞれ、筒状筐体の内部空間から取り付け構造の挿通孔に至るまでに、筒状筐体の径方向の外側に向けて急激に屈曲することがない。また、前記先端部以外の箇所では内径が小さいので小型化を図ることができる。その結果、本発明に係るロボットアームは、小型化を図りながら、内部に挿通される複数の長尺状部材の損傷を抑制することが可能となる。
【0011】
例えば、前記複数の長尺状部材は、それぞれ、配線又は配管として構成されていてもよい。
【0012】
前記筒状筐体は、前記先端部と前記基端部との間に前記先端部に向かうに連れて内径が大きくなる内径拡張部を有していてもよい。
【0013】
上記構成によれば、筒状筐体の内部で複数の長尺状部材を緩やかに屈曲させることが可能となる。これにより、複数の長尺状部材が損傷してしまうことをいっそう抑制することができる。
【0014】
前記筒状筐体には複数の関節軸が設けられており、前記内径拡張部は、前記筒状筐体の軸方向において前記複数の関節軸のうちで最も先端側に設けられる関節軸とその一つ基端側に設けられる関節軸との間に存していてもよい。
【0015】
上記構成によれば、出来得る限り小型化を図りながら、複数の長尺状部材の損傷を抑制することが可能となる。
【0016】
前記課題を解決するために、本発明に係るロボットは、上記いずれかのロボットアームと、前記ロボットアームに取り付けられるエンドエフェクタと、を備えていることを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、ロボットアームの先端部の内径が基端部の内径よりも大きく形成されているので、複数の長尺状部材は、それぞれ、筒状筐体の内部空間から取り付け構造の挿通孔に至るまでに、筒状筐体の径方向の外側に向けて急激に屈曲することがない。また、前記先端部以外の箇所では内径が小さいのでロボットアームの小型化を図ることができる。その結果、本発明に係るロボットは、小型化を図りながら、内部に挿通される複数の長尺状部材の損傷を抑制することが可能となる。
【0018】
例えば、塗装作業を行うための塗装用ロボットとして構成されていてもよい。
【0019】
例えば、前記エンドエフェクタは塗装ガンとして構成されていてもよい。
【0020】
例えば、前記塗装ガンはベル型塗装ガンとして構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、小型化を図りながら、内部に挿通される複数の長尺状部材の損傷を抑制することが可能な、ロボットアーム及びそれを備えるロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係るロボットアームを備えるロボットシステムの全体構成を示す概略図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るロボットアームの要部構成を示す一部断面概略図である。
【
図3】ロボットアームの小型化を図るときに生じ得る問題を説明するためのロボットアームの一部及びその先端部に取り付けられるエンドエフェクタの一部断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、以下では、全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0024】
(ロボットシステム10)
図1は、本実施形態に係るロボットアームを備えるロボットシステムの全体構成を示す概略図である。
図1に示すように、ロボットシステム10は、爆発性雰囲気が存する第1領域で塗装作業を行うロボット20と、ロボット20が有する内圧防爆構造の周縁を画定する容器内に保護気体を供給して掃気を行うための掃気装置70と、ロボット20及び掃気装置70を制御するための制御装置90と、を備えている。
【0025】
ロボットシステム10は、爆発性雰囲気が存する第1領域と、当該爆発性雰囲気が存しない第2領域とを仕切るための仕切部98をさらに備えている。そして、第1領域に後述する流量調節装置76、基台21、ロボットアーム30及びエンドエフェクタ50が設置されている。また、第2領域に後述する保護気体供給源71及び制御装置90が設置されている。
【0026】
本実施形態に係るロボット20は、自動車などに対して塗装を行うための塗装用ロボットとして構成されている。したがって、本実施形態において、上記第1領域は塗装場のことをいう。塗装場の雰囲気は、塗料に含まれる有機溶剤が気化したガスと混合され、可燃性ガス(又は爆発性ガス)になっていることが多い。このような第1領域で何ら対策を講じないまま電気機器を使用すると、通電により生じる火花などを原因に爆発が生じてしまう。
【0027】
ロボット20は、その周縁の一部を画定する容器内に図示しないサーボモータなどの電気機器が多数設けられている。したがって、ロボット20に通電を行う前に、前記容器内に侵入している可燃性ガスを排除することを要する。そこで、掃気装置70を用いることで、前記容器内に保護気体を供給して掃気が行われる。
【0028】
なお、基台21及びロボットアーム30の一部が前記容器を構成している。具体的には、基台21の内部空間とロボットアーム30の内部空間とは連通しており、ロボットアーム30の内部空間は、ロボットアーム30の基端部から第3関節軸JT3の部分まで延びている。
【0029】
(ロボット20)
ロボット20は、基台21と、基台21に連結されるロボットアーム30と、ロボットアーム30の先端部に取り付けられるエンドエフェクタ50と、ロボットアーム30及びエンドエフェクタ50を制御して塗装作業を行わせるロボット制御装置60と、を有している。
【0030】
(ロボットアーム30)
ロボットアーム30は、7つの関節軸JT1~JT7と、これらの関節軸によって順次連結される6つのリンク31a~31fと、を有している。ロボットアーム30の関節軸JT1~JT7は、それぞれ、サーボモータによって回動可能に設けられている。
【0031】
第1関節軸JT1は、サーボモータによって、第1リンク31aの先端部と第2リンク31bの基端部とを鉛直方向に延びる軸回りに回動可能に連結する。第2関節軸JT2は、サーボモータによって、第2リンク31bの先端部と第3リンク31cの基端部とを、水平方向に延びる軸回りにロボット20の前後方向と上下方向とが交わる平面において回動可能に連結する。
【0032】
第3関節軸JT3は、サーボモータによって、第3リンク31cの先端部と第4リンク31dの基端部とを、水平方向に延びる軸回りにロボット20の前後方向と上下方向とが交わる平面において回動可能に連結する。第4関節軸JT4は、サーボモータによって、第4リンクの先端部と第5リンク31eの基端部とを捻れ回動可能に連結する。
【0033】
第5関節軸JT5は、サーボモータによって、第5リンク31eの先端部と第6リンク31fの基端部とを捻れ回動可能に連結する。第6関節軸JT6は、サーボモータによって、第6リンク31fの先端部とエンドエフェクタ50の基端部とを捻れ回動可能に連結する。第7関節軸JT7は、サーボモータによって、基台21と第1リンク31aの基端部とを、水平方向に延びる軸回りにロボット20の左右方向と上下方向とが交わる平面において回動可能に連結する。
【0034】
第1~3関節軸JT1~3及び第7関節軸JT7を回動させるためのサーボモータは、それぞれ、自らが回動させる関節軸に連結して設けられている。一方で、第4~6関節軸JT4~6を回動させるためのサーボモータは、それぞれ、自らが回動させる関節軸から離間して設けられている。具体的には、前記サーボモータは、それぞれ、第3関節軸JT3の近傍に互いに隣接して設けられており、配線を介して離間した関節軸を回動させている。そして、第1~7関節軸JT1~7を回動させるためのサーボモータは、それぞれ、容器内に設けられている。
【0035】
(エンドエフェクタ50)
本実施形態では、エンドエフェクタ50は、後述する複数の長尺状部材32に含まれる塗料供給用ホース(配管)から供給される塗料を自動車の車体などに吹き付けるための塗装ガンとして構成されている。なお、本実施形態では、塗装ガンはベル型塗装ガンとして構成されている。
【0036】
(ロボット制御装置60)
ロボット制御装置60は、掃気制御装置80とともに制御装置90内に設けられている。ロボット制御装置60の具体的な構成は特に限定されないが、例えば、公知のプロセッサ(CPU等)が記憶部(メモリ)に格納されるプログラムに従って動作することにより実現される構成であってもよい。
【0037】
(掃気装置70)
掃気装置70は、保護気体供給源71と、保護気体供給源71から容器内まで保護気体を導くための供給流路72(流路)と、保護気体供給源71から容器内に供給される保護気体の流量を調節するための流量調節装置76と、流量調節装置76を制御して掃気を行うための掃気制御装置80と、を備えている。
【0038】
(保護気体供給源71)
保護気体供給源71は、第2領域に設けられている。本実施形態では、保護気体として空気を用いて掃気を行ってもよい。
【0039】
(供給流路72)
図1に示すように、供給流路72は、第2領域に設けられる保護気体供給源71から第1領域に設けられるロボット20の容器内まで延びている。具体的には、供給流路72は、ロボット20の基台21に穿設された貫通孔を通って容器内挿入され、且つ、当該容器内の最深部(すなわち、第3関節軸JT3の部分)まで延びており、その先端部から保護気体が供給される。
【0040】
なお、供給流路72は、第2関節軸JT2を回動させるサーボモータまで延びる分岐路をさらに有しており、その先端部から保護気体が供給される。また、供給流路72は、第7関節軸JT7を回動させるサーボモータの近傍まで延びる分岐路をさらに有しており、その先端部からも保護気体が供給される。
【0041】
(排出流路74)
容器内に供給された保護気体は、排出流路74によって容器から排出される。排出流路74は、基台21に穿設された貫通孔を通って容器の外部へと延びている。容器内の圧力は大気圧よりも高いため、供給流路72から容器内に供給された保護気体は、排出流路74の先端部に吸引されるようにして容器の外部へと排出される。
【0042】
(流量調節装置76及び掃気制御装置80)
流量調節装置76は、供給流路72上に設けられる第1調節弁77と、排出流路74上に設けられる第2調節弁78と、を有している。また、掃気制御装置80は、ロボット制御装置60とともに制御装置90内に設けられている。掃気制御装置80の具体的な構成は特に限定されないが、例えば、ロボット制御装置60と同様に公知のプロセッサ(CPU等)が記憶部(メモリ)に格納されるプログラムに従って動作することにより実現される構成であってもよい。
【0043】
(ロボットアーム30の要部構成)
本実施形態に係るロボットアーム30の要部構成について説明する。
図2は、本実施形態に係るロボットアームの要部構成を示す一部断面概略図である。
図2に示すように、本実施形態に係るロボットアーム30は、エンドエフェクタ50まで延びる複数の長尺状部材32と、複数の長尺状部材32の通路となる内部空間34の周縁を画定する筒状筐体36と、を備えている。また、ロボットアーム30は、筒状筐体36の先端部に対してエンドエフェクタ50を取り付けるために、筒状筐体36の内部空間34の先端に対して設けられる取り付け構造40をさらに備えている。なお、本実施形態では、内部空間34には、長尺状部材32に加えて後述する複数の固定部材42が配されている。
【0044】
(複数の長尺状部材32)
複数の長尺状部材32は、それぞれ、配線又は配管として構成されている。本実施形態では、複数の長尺状部材32は、エンドエフェクタ50に接続される電気配線(配線)と、塗料供給用ホース(配管)とを有している。なお、複数の長尺状部材32は、それぞれ、小型化が図られていないロボットアームに備えられる同様の部材と比較して、径寸法が小さく形成されていてもよい。これにより、ロボットアームの小型化を図ることが容易となる。
【0045】
(筒状筐体36)
本実施形態では、ロボットアーム30の第4関節軸JT4から先端までが筒状筐体36を構成している。なお、複数の長尺状部材32は、第4関節軸JT4よりも基端側において、ロボットアーム30の外面に沿うように露出して配されていてもよい。これにより、複数の長尺状部材32のメンテナンス性等を向上させることができる。
【0046】
筒状筐体36は、先端部の内径が基端部の内径よりも大きく形成されている。本実施形態では、筒状筐体36は、その軸方向において、第6関節軸JT6(複数の関節軸のうちで最も先端側に設けられる関節軸)と第5関節軸JT5(その一つ基端側に設けられる関節軸)との間に、先端部に向かうに連れて内径が大きくなる内径拡張部37を有している。
【0047】
なお、筒状筐体36は、その軸方向において、基端部(すなわち、内径拡張部37よりも基端側の部分)の内径が一定であってもよい。当該内径は、例えば、50cm程度であってもよい。また、筒状筐体36は、その軸方向において、先端部(すなわち、内径拡張部37よりも先端側の部分)の内径が一定であってもよい。当該内径は、例えば、70cm程度であってもよい。
【0048】
(取り付け構造40)
取り付け構造40は、複数の長尺状部材32それぞれを挿通するために当該複数の長尺状部材32それぞれに対応して穿設されている挿通孔44と、複数の長尺状部材32それぞれを挿通孔44に対して固定するための固定部材42と、を有している。固定部材42は、例えば、エンドエフェクタ50の側から複数の長尺状部材32を囲繞するように取り付けられる6角ナット等であってもよい。すなわち、筒状筐体36の軸方向に見て、固定部材42の径寸法は、複数の長尺状部材32の径寸法よりも大きい。
【0049】
(効果)
本実施形態に係るロボットアーム30は、上記構成を備えることで、小型化を図りながら、内部に挿通される複数の長尺状部材32の損傷を抑制することが可能となる。当該効果について、
図3に基づき詳細に説明する。
図3は、ロボットアームの小型化を図るときに生じ得る問題を説明するためのロボットアームの一部及びその先端部に取り付けられるエンドエフェクタの概略図である。(A)に、従来の第1態様に係るロボットアーム及びその先端部に取り付けられるエンドエフェクタの概略図を示し、(B)に、従来の第2態様に係るロボットアーム及びその先端部に取り付けられるエンドエフェクタの概略図を示している。
【0050】
図3(A)に示すように、従来の第1態様に係るロボットアーム1の先端部には、エンドエフェクタ4を取り付けるための取り付け構造5が設けられている。取り付け構造5は、複数の長尺状部材8それぞれを挿通するために当該複数の長尺状部材8それぞれに対応して穿設されている挿通孔7と、複数の長尺状部材8それぞれを挿通孔7に対して固定するための固定部材6と、を有している。
【0051】
図3(B)に示すように、従来の第2態様に係るロボットアーム1´は、筒状筐体2´及びその内部空間3が小さく形成される。しかし、このとき、取り付け構造5´は、固定部材6´の径寸法を小さくすることが困難であるため、その要部構造を小型化することが難しい。ところが、上記従来の第1態様が備える取り付け構造5のままでは、複数の長尺状部材8´は、それぞれ、筒状筐体2´の内部空間から取り付け構造5´の挿通孔7´に至るまでに、筒状筐体2´の径方向の外側に向けて急激に屈曲してしまう。このように屈曲することで、複数の長尺状部材8´それぞれが損傷してしまう。
【0052】
そこで、
図3(B)に示すように、筒状筐体2´と取り付け構造5´との間にスペーサーを設け、当該スペーサー内で複数の長尺状部材8´それぞれを緩やかに屈曲させてから取り付け構造5´に至らせることで、複数の長尺状部材8´の損傷を抑制することが考えられる。しかし、このようにスペーサーを設けることは、ロボットアーム1´の小型化を図るという目的に反してしまう。また、スペーサーが妨げとなって、ロボットアーム1´に所望する姿勢をとらせることが困難になってしまう。
【0053】
一方、本実施形態に係るロボットアーム30は、先端部の内径が基端部の内径よりも大きく形成されている。これにより、複数の長尺状部材32は、それぞれ、筒状筐体36の内部空間34から取り付け構造40の挿通孔44に至るまでに、筒状筐体36の径方向の外側に向けて急激に屈曲することがない。また、前記先端部以外の箇所では内径が小さいので小型化を図ることができる。その結果、本発明に係るロボットアーム30は、小型化を図りながら、内部に挿通される複数の長尺状部材32の損傷を抑制することが可能となる。
【0054】
また、本実施形態では、筒状筐体36は、先端部と基端部との間に先端部に向かうに連れて内径が大きくなる内径拡張部37を有しているので、筒状筐体36の内部で複数の長尺状部材32を緩やかに屈曲させることが可能となる。これにより、複数の長尺状部材32が損傷してしまうことをいっそう抑制することができる。
【0055】
さらに、本実施形態では、筒状筐体36は、その軸方向において、第6関節軸JT6と第5関節軸JT5との間に、内径拡張部37を有しているので、出来得る限り小型化を図りながら、複数の長尺状部材32の損傷を抑制することが可能となる。
【0056】
そして、本実施形態に係るロボットアーム30が上記効果を奏するので、ひいては、それを備えるロボット20は、小型化を図りながら、内部に挿通される複数の長尺状部材32の損傷を抑制することが可能となる。
【0057】
(変形例)
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。したがって、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【0058】
上記実施形態では、ロボット20が塗装用ロボットとして構成されている場合を説明したが、これに限定されない。例えば、ロボット20は、ワークを搬送するための搬送用ロボットとして構成されていてもよいし、その他のロボットとして構成されていてもよい。
【0059】
上記実施形態では、エンドエフェクタ50がベル型塗装ガンとして構成されている場合を説明したが、これに限定されない。例えば、エンドエフェクタ50は、単純なスプレー式の塗装ガンであってもよいし、或いは、その他の塗装ガンであってもよい。また、ロボット20が塗装用ロボット以外のロボットとして構成されている場合、エンドエフェクタ50は、塗装ガン以外のエンドエフェクタ(例えば、ワークを保持するための保持部を有しているエンドエフェクタ)として構成されていてもよい。
【0060】
上記実施形態では、複数の長尺状部材32は、エンドエフェクタ50に接続される電気配線(配線)と、塗料供給用ホース(配管)とを有している場合について説明したが、これに限定されない。例えば、複数の長尺状部材32は、その全てが電気配線であってもよいし、又は、その全てが塗料供給用ホースであってもよい。これらどちらかの場合、例えば、筒状筐体36の内部空間34に挿通されない長尺状部材は筒状筐体36の外部に露出してエンドエフェクタ50まで延びてもよい。さらに、例えば、複数の長尺状部材32は、ロボット20が塗装用ロボット以外のロボットとして構成されている場合、塗料供給用ホース以外の配管を有していてもよい。
【0061】
上記実施形態では、内径拡張部37は、筒状筐体36の軸方向において、第6関節軸JT6と第5関節軸JT5との間に設けられる場合について説明したが、この場合に限定されず、他の箇所に設けられていてもよい。なお、筒状筐体36は、その軸方向の基端から先端の全域に亘って、基端から先端に向かうにつれて径寸法が大きくなるように形成されていてもよい。換言すれば、筒状筐体36全体が内径拡張部37として構成されていてもよい。
【0062】
また、図示するように、上記実施形態に係る内径拡張部37は、断面図を側面視したとき、その内面が直線状であったが、階段状であってもよいし、或いは、その他の形状であってもよい。なお、内径拡張部37は、その内面に1つ以上の凹部が形成されることで、筒状筐体36の先端部に向かうに連れて断続的に内径が大きくなる構造であってもよい。
【0063】
さらに、内径拡張部37は、筒状筐体36の先端部に向かうに連れて内径が大きくなる態様に限定されず、筒状筐体36の軸方向における一カ所で内径が大きくなる構造であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 ロボットアーム
2 筒状筐体
3 内部空間
4 エンドエフェクタ
5 取り付け構造
6 固定部材
7 挿通孔
8 複数の長尺状部材
10 ロボットシステム
20 ロボット
21 基台
30 ロボットアーム
31 リンク
32 複数の長尺状部材
34 内部空間
36 筒状筐体
37 内径拡張部
40 取り付け構造
42 固定部材
44 挿通孔
50 エンドエフェクタ
60 ロボット制御装置
70 掃気装置
71 保護気体供給源
72 供給流路
74 排出流路
76 流量調節装置
77 第1調整弁
78 第2調整弁
80 掃気制御装置
90 制御装置
98 仕切部