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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】エレベーター案内システム
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/00 20060101AFI20220815BHJP
【FI】
B66B3/00 G
B66B3/00 L
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019099108
(22)【出願日】2019-05-28
(65)【公開番号】P2020193064
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 卓馬
(72)【発明者】
【氏名】簗瀬 誠司
(72)【発明者】
【氏名】魚谷 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】薛 祺
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-184239(JP,A)
【文献】特開2017-146813(JP,A)
【文献】国際公開第2018/167827(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00- 3/02
B66B 1/00- 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターかご内の搭乗者情報に基づいて、建物の設備の利用状況を搭乗者に知らせるための制御を行うエレベーター制御装置と、前記エレベーター制御装置と通信可能に接続され、前記建物の設備の利用状況を監視する建物設備監視装置を備えたエレベーター案内システムであって、
前記エレベーター制御装置は、
エレベーターかご内に設置された各種センサーからの情報を取得するセンサー通信部と、
前記センサー通信部で取得したセンサー情報から前記搭乗者の人数または性別を判定するセンサー情報演算部と、
前記建物設備監視装置からの前記設備の利用状況を取得する設備監視通信部と、
前記センサー情報演算部における演算結果と、前記設備監視通信部で取得した設備の利用状況に基づいて、エレベーターかご内のモニターに現在の設備の利用状況を表示するモニター表示制御部と、を備え、
前記建物設備監視装置は、前記設備に設置されたセンサーからの情報に基づいて前記設備の利用状況を、通信回線を通して前記エレベーター制御装置に送信し、
前記モニター表示制御部は、エレベーターかごの走行方向の階の設備の使用状況が混雑している場合には、前記エレベーターかご内のモニターに走行方向の階の設備が混雑している旨の情報を表示する
エレベーター案内システム。
【請求項2】
前記エレベーター制御装置は、設備利用情報記録部及び設備利用時間演算部を備え、
前記設備利用情報記録部は、前記設備監視通信部で取得した建物設備の利用情報を統計データとして保存し、
前記設備利用時間演算部は、前記設備利用情報記録部に記録された利用情報の統計データから、前記設備の平均利用時間を算出するとともに、利用完了時間を予測する、
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベーター案内システム。
【請求項3】
前記エレベーター制御装置は、前記設備の平均利用時間を算出した結果に基づいて、前記設備の利用可能性について判定し、判定結果をモニターに出力する、
ことを特徴とする請求項2に記載のエレベーター案内システム。
【請求項4】
前記エレベーター制御装置は、エレベーターの運行制御情報や、前記かご内の各種センサーからの情報を解析し、搭乗者数や性別に応じて前記モニターに表示する内容を切り替えることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のエレベーター案内システム。
【請求項5】
前記建物の設備は、トイレまたはロッカーであり、前記建物の設備に設置されるセンサーは人感センサーである、
請求項1~3のいずれか1項に記載のエレベーター案内システム。
【請求項6】
前記モニター表示制御部は、昼食後などの特定の時間帯のときは、前記特定の時間帯の特定階の設備の利用状況をエレベーターかご内のモニターに表示する、
請求項1に記載のエレベーター案内システム。
【請求項7】
前記モニター表示制御部は、前記設備ないかあるいは前記設備が混雑している階からエレベーターかごに乗車した場合には、前記設備がある階あるいは前記設備が混雑していない階の前記設備の利用状況をエレベーターかご内のモニターに表示する、
請求項1に記載のエレベーター案内システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーター案内システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エレベーターのかご内には、運行情報や、監視カメラの映像、広告や建物内状況等を表示するモニターが備え付けられている。
例えば、特許文献1には、モニターへの表示内容の例として、建物内のトイレやロッカーの使用状況や、飲食店等の座席の空き状況などをエレベーター利用者に通知する技術が記載されている。
【0003】
すなわち、特許文献1には、エレベーターかご内に備えるタッチパネル操作盤と、外部からの情報を取得するエレベーター制御装置を用いて、エレベーター利用者がビル内の確認項目に対応するビル内の利用状況を取得してタッチパネルに表示する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-184239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されるタッチパネル操作盤を利用した制御は、専用タッチパネルが必要である点で、その操作方法を知らない利用者はこのシステムを利用することができなかった。また、タッチパネルの操作手順を誤ると、利用者が知りたい情報をタッチパネルに表示させることができないという問題もあった。
【0006】
さらに、タッチパネルを使った利用者による操作に時間がかかると、エレベーターから降車するより前に操作が完了せずにタッチパネルへの表示が間に合わないといった状況が発生しうる。したがって、特許文献1に記載の技術は、その適用条件が厳しく、エレベーター乗車時間が長くなるような高行程の移動でないと、利用者向けサービスが困難になる場合が多くなるという問題を抱えていた。
【0007】
本発明の目的は、以上の問題点に鑑み、利用者によるタッチパネルなどの操作をなくした状態で、利用者が求める情報を取得することができる建物内設備のエレベーター案内システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、本発明は、エレベーターかご内の搭乗者情報に基づいて、建物の設備の利用状況を搭乗者に知らせるための制御を行うエレベーター制御装置と、前記エレベーター制御装置と通信可能に接続され、前記建物の設備の利用状況を監視する建物設備監視装置を備えたエレベーター案内システムである。
エレベーター制御装置は、エレベーターかご内に設置された各種センサーからの情報を取得するセンサー通信部と、センサー通信部で取得したセンサー情報から搭乗者の人数または性別を判定するセンサー情報演算部と、建物設備監視装置からの設備の利用状況を取得する設備監視通信部と、センサー情報演算部における演算結果と、設備監視通信部で取得した設備の利用状況に基づいて、エレベーターかご内のモニターに現在の設備の利用状況を表示するモニター表示制御部と、を備える。
そして、建物設備監視装置は、設備に設置されたセンサーからの情報に基づいて設備の利用状況を、通信回線を通してエレベーター制御装置に送信し、モニター表示制御部は、エレベーターかごの走行方向の階の設備の使用状況が混雑している場合には、エレベーターかご内のモニターに走行方向の階の設備が混雑している旨の情報を表示する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エレベーター利用者によるタッチパネルの操作が不要となるため、エレベーターかご内のモニターにコンテンツ表示するまでの時間が短縮される。また、エレベーター搭乗者の人数や性別により搭乗者に対して最適なコンテンツをモニターに表示することが可能となる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態例に係る建物内のエレベーター及び設備全体のシステム構成例を示す図である。
図2】本発明の実施の形態例に係るエレベーター制御装置のハードウェア構成を示す図である。
図3】本発明の実施の形態例に係るかご内のモニターに表示するコンテンツ例を示す図である。
図4】本発明の実施の形態例に係るかご内搭乗者数によりコンテンツ表示制御を行うフローチャートである。
図5】本発明の実施の形態例に係るかご内搭乗者の性別によりコンテンツ表示制御を行うフローチャートである。
図6】本発明の実施の形態例に係るトイレ利用者へのサービス向上させる為の予測表示制御を行うフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態例(以下、「本例」という)について詳細に説明する。
図1は、本例に係る建物内のエレベーター及び設備全体のシステム構成例を示す図である。エレベーターのかご1内には、エレベーターの運行情報、監視カメラ映像、広告や建物内設備の利用状況等を表示するモニター2が備えられている。また、かご1内を監視する監視カメラ3と、エレベーター利用者により運行可能な階床を指定する等の個別対応を行うことが可能なカードリーダ4が備えられている。
【0012】
さらに、本例に係るエレベーター案内システムは、エレベーター制御装置5と、建物設備監視装置6と、この建物設備監視装置6に接続された代表的な設備として、各階に設けられている男子トイレ10~10及び女子トイレ20~20等の各設備を含む。なお、トイレはあくまでも設備の一例であり、トイレ以外にもコインロッカーや、ロッカールーム、飲食点の空き席なども設備の例として考えることができる。
【0013】
また、エレベーター制御装置5は、そのソフトウェア機能として、センサー通信部5A、センサー情報演算部5B、モニター通信部5C、モニター表示制御部5D、設備監視通信部5E、設備利用情報記録部5F、設備利用時間演算部5G及び統合制御部5Hを備える。
【0014】
本例では、代表的な設備である男子トイレと女子トイレを例に挙げて以下説明する。すなわち、建物の各階には男子トイレ10~10(1階~n階)、女子トイレ20~20(1階~n階)が設置されており、それぞれのトイレに設置された不図示のセンサーは、建物設備全体を監視するための建物設備監視装置6に接続されている。
建物設備監視装置6は、電気通信回線によりエレベーター制御装置5と接続されており、エレベーター制御装置5は、建物設備監視装置6を介して建物内の各設備に関する情報を取得できるようになっている。
【0015】
エレベーター制御装置5のセンサー通信部5Aは、かご1内に設置された監視カメラ3、カードリーダ4、あるいは重量を検出するためにかご1内に設けられる不図示の秤装置や加重センサーからの情報を取得する。
【0016】
エレベーター制御装置5のセンサー情報演算部5Bは、センサー通信部5Aで取得されるセンサーからの情報(以下、「センサー情報」という)から、統合制御部5Hと連携して例えばエレベーターかご1内の人数や性別を判定する処理を行う。
設備監視通信部5Eは、建物設備監視装置6を介してトイレ等の建物設備に設置されている不図示の人感センサー等からの情報を取得する。
モニター表示制御部5Dは、設備監視通信部5Eで取得されたトイレの利用情報などの建物設備に関する情報に基づいて、かご1内のモニター2に表示する情報の内容を制御する。そして、モニター通信部5Cを介して、この表示内容をかご1内に設置されたモニター2に表示する。
【0017】
なお、モニター表示制御部5Dは、エレベーターの運行情報や各種コンテンツの表示、監視カメラ3の映像解析、カードリーダ4で読み取ったカード登録情報等を参照してかご1内のモニター2への表示制御を行う。すなわち、エレベーター制御装置5は、エレベーターの運行制御と各種センサーからの情報や各種コンテンツを利用した包括的な制御及び表示を、後述する統合制御部5Hと連携して行う。
【0018】
エレベーター制御装置5の設備利用情報記録部5Fは、取得した建物設備の利用状況等の情報を統計データとして保存する。また、設備利用時間演算部5Gは、設備利用情報記録部5Fに記録された利用状況等の統計データから、例えばエリア毎、設備毎、時間帯毎に設備の平均利用時間を算出したり、設備の利用完了時間を予測したりする。
【0019】
さらに、エレベーター制御装置5の統合制御部5Hは、上述したように、センサー情報演算部5Bと連携して、エレベーターかご1内の人数や性別を判定する処理を行うとともに、モニター表示制御部5Dと連携して、エレベーターの運行情報や各種コンテンツの表示制御を行う。また、監視カメラ3の映像解析、カードリーダ4で読み取ったセンサー情報を用いて、本例のエレベーター案内システム全体の包括的制御を行う。
すなわち、エレベーター制御装置5の統合制御部5Hは、エレベーターの運行制御を行う他、各種センサー情報や各種コンテンツの表示を含む包括的な制御を行う。
【0020】
図2は、図1に示したエレベーター制御装置5のハードウェア構成を示す図である。
図2に示すように、エレベーター制御装置5は、バス30に接続されたCPU(Central Processing Unit)31、ROM(Read Only Memory)32、RAM(Random Access Memory)33、不揮発性ストレージ34を備える。また、外部との通信を行うための通信インターフェース(通信部IF)35を備える。
【0021】
CPU31は、エレベーター制御装置5の各部の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードをROM32から読み出して実行する。RAM33には、エレベーター制御装置5内で行われる演算処理の途中で発生した変数等が一時的に書き込まれる。CPU31がROM32に記録されているプログラムコードを実行することにより、エレベーター制御装置5の各種機能が実現される。
【0022】
通信インターフェース35としては、例えば、NIC(Network Interface Card)等が用いられる。この通信インターフェース35を通して、エレベーター制御装置5は、エレベーター内の各種センサー及び建物設備監視装置6との通信を行う。
【0023】
不揮発性ストレージ34は、SSD(Solid State Drive)等の不揮発性のメモリで構成され、CPU31が動作するために必要なプログラムやデータ等が、半永久的に記憶され格納される。また、エレベーター制御装置5には、必要に応じて入力部36と出力部37が設けられるが、入力部36と出力部37は、エレベーター制御装置5のハードウェア構成として、必須のものではない。
【0024】
図3は、本発明の実施の形態例に係るかご1内のモニター2に表示するコンテンツの例を示す図である。本例では、プライバシーに配慮して、結果を文字や数字ではなく記号として表示している。図2の「◎」は目的のトイレ(設備)が全席空いている状態を示す。また、「〇」は1席以上空いている状態、「×」は全席使用中の状態を示す。また、「△」は全席使用中であるが、トイレの平均使用時間を考慮するとまもなく使用可能になると予測される状況にあることを示す。
【0025】
図3(A)は、全ての階の男子トイレと女子トイレの利用状況を示す図であり、図3(B)は男子トイレの利用状況、図3(C)は女子トイレの利用状況を示している。一般的には、エレベーターかご1内の搭乗者の数や性別によって、図3(A)~(C)のいずれかをモニター2に表示することになる。
【0026】
しかし、図3(A)~(C)には示されていないが、エレベーターかご1への搭乗者の行く先階に応じて、利用状況を表示するトイレの階を制限するようにしてもよい。例えば、3階から乗車して8階で降りる搭乗者に対しては、4階から8階までのトイレの利用状況を表示するだけで十分であり、他の階の表示を行う必要はない。つまり、搭乗者の乗車階と行き先階に応じて、利用状況を表示する階を設定するようにしてもよい。
【0027】
図4は、本発明の実施の形態例(本例)に係るかご1内の搭乗者数を監視することにより、モニター2に表示するコンテンツの内容を制御するためのフローチャートである。
かご1にエレベーター利用者が搭乗すると、エレベーター制御装置5のセンサー情報演算部5Bは、センサー通信部5Aで取得した各種センサー情報により、搭乗者の人物情報を取得する(ステップS1)。なお、センサー通信部5Aによる搭乗者の人物情報の取得手段はどのようなものでもかまわない。例えば、監視カメラ3による画像解析でも、カードリーダ4によりタッチされたICカード情報からの取得でもよい。また、エレベーターに標準的に備え付けられる不図示の秤装置や加重センサーからの情報を用いてもよい。
【0028】
次に、エレベーター制御装置5の統合制御部5Hは、ステップS1におけるエレベーターかご1内の人物情報からかご1内の搭乗者が1人であるか、あるいは2人以上かを判定する(ステップS2)。そして、ステップS2で、搭乗者が1人であると判定した場合は(図中:1人)、モニター表示制御部5Dを介して、建物設備監視装置6から取得した最新情報、例えば図3Aに示す男子トイレと女子トイレの利用状況をモニター2に表示する(ステップS3)。ステップS2で、搭乗者が2人以上であると判定された場合には(図中:2人以上)、建物設備監視装置6から取得したトイレの利用状況等をモニター2に表示することなく、処理を終了する。搭乗者が2人以上のときには、プライバシーに関係する情報をモニター2に表示することに対する抵抗を示す搭乗者も少なからずいると考えられるからである。
【0029】
図5は、本発明の実施の形態例(本例)に係るかご1内搭乗者の性別によりコンテンツの表示制御方法を示すフローチャートである。
エレベーターのかご1にエレベーター利用者が搭乗すると、エレベーター制御装置5のセンサー通信部5Aは、各種センサー情報から搭乗者の人物情報を取得する(ステップS11)。ステップS11における搭乗者の人物情報の取得は、ステップS1における搭乗者の人物情報の取得方法と同じである。
【0030】
次に、エレベーター制御装置5の統合制御部5Hは、センサー情報演算部5Bと連携して、センサー通信部5Aで取得された人物情報から搭乗者の性別を判定する(ステップS12)。なお、ステップS12で、センサー情報演算部5Bは、エレベーターかご1内に男性と女性がいる場合は、搭乗者の性別判定を行うことができない。センサー情報演算部5Bは、男性または女性のいずれかが一人または複数いる場合についてのみ搭乗者の性別を判定する。
【0031】
次に、ステップS12で、センサー情報演算部5Bにより、搭乗者が男性のみであると判定された場合は(図中:男性)には、エレベーター制御装置5の統合制御部5Hは、モニター表示制御部5Dと連携して、建物設備監視装置6から取得した男子トイレの最新情報(図3B)をモニター2に表示する(ステップS13)。
また、ステップS12で、センサー情報演算部5Bにより、搭乗者が女性のみであると判定された場合には(図中:女性)、エレベーター制御装置5の統合制御部5Hは、モニター表示制御部5Dと連携して、建物設備監視装置6から取得した女子トイレの最新情報(図3C)をモニター2に表示する(ステップS14)。
【0032】
なお、上述したように、図4のフローチャートでは、2人以上搭乗している場合には、トイレ空き情報をモニター2に表示させないようにした。同様に、図5のフローチャートでは、搭乗者の中に男女が混在している場合にはトイレ空き情報を表示させないようにしている。
【0033】
しかし、図4図5のいずれの場合でも、例えば監視カメラ3の映像の解析結果から、大人1~2人かつ子供1人以上と判定した場合で、かつそれぞれの人物の距離が近いと判定した場合など、複数の搭乗者が家族連れであると判断される場合には、ステップS3、ステップS13あるいはステップS14と同様の表示を行うようにしてもよい。
【0034】
また、本発明の実施形態では、図4に示す人数で分ける例と、図5に示す性別によって分ける例を別々に説明しているが、両者を結合して、精度の高い振り分け制御を行うようにしてもよい。すなわち、エレベーター制御装置5の統合制御部5Hは、図4のステップS2で搭乗者の人数が1人のときに限って、図5のステップS12の搭乗者の性別判定を行うようにしてもよい。
【0035】
図6は、本発明の実施の形態例(本例)に係るトイレ利用者へのサービス向上を図るための予測表示制御を行うフローチャートである。
ここで、建物内のトイレで代表される設備Yは、建物内に設備Y=1から設備Y=Zまで配置されているものとする。設備の数Zは建物内のトイレの数であり、例えば、ある建物がn階建てで、男子トイレと女子トイレがそれぞれ1階からn階のフロアの東側と西側に配置されているとすれば、全ての設備の数Zは、
Z=n階×2(男子と女子)×2(東側と西側)=4n
になる。ここで、設備Yの数Zは、それぞれのビル施設に特有の固定値である。
【0036】
すなわち、10階建てのビルであれば、Z=40、5階建てのビルであれば、Z=20となる。また、各階床にトイレである設備Yが1つであれば、その半分、つまり10階建てであればZ=20、5階建てであればZ=10になる。
例えば、各階床の西側と東側にトイレがある5階建てのビルの場合、Z=20になる。このとき、1階西側男子トイレが「Y=1」、1階西側女子トイレが「Y=2」、・・・、5階東側の男子トイレが「Y=19」、5階東側の女子トイレが「Y=20」になる。設備Yの数Zが多くなって、エレベーターかご1内のモニター2に全部が表示できなくなる場合には、モニター2の画面をスクロールして表示することも考えられる。
【0037】
まず、エレベーター制御装置5の設備監視通信部5Eは、各階床の設備(トイレ)Yの空き情報を建物設備監視装置6から定期的に取得し、各階床のエリア毎に集計する(ステップS21)。なお、各階床に、西側トイレと東側トイレ等の複数のトイレがある場合には、図3に示すように、その西または東側のエリア別に各トイレの空き情報を集計する。
【0038】
エレベーター制御装置5の設備利用時間演算部5Gは、ステップS21で集計した結果からエリア別にトイレ(設備Y)の1回あたりの平均利用時間Tを算出する(ステップS22)。このステップS22で算出される平均利用時間Tは、例えば、現時点から1時間前までに使用された各設備(トイレ)の平均利用時間、または1日前の開店時間(10時~18時)に使用された各設備(トイレ)の平均利用時間など、過去の所定の決められた時間内に集計された統計データに基づいて集計される時間である。
【0039】
次に、エレベーター制御装置5の統合制御部5Hは、により、モニター2に表示するための判定処理を行う。
まず初期値として、最初の設備Y=1を設定する(ステップS23)。1階西側男子トイレがこれに相当する。
【0040】
そして、統合制御部5Hは、設備Y=1の1階西側男子トイレに空きがあるか否かを判定する(ステップS24)。ステップS24で、設備Y=1のトイレが全席空いていると判定された場合には(図中:全席空き)、エレベーター制御装置5の統合制御部5Hは、「設備Y=1」を「◎」と判定する(ステップS26)。そして、統合制御部5Hは、モニター表示制御部5Dを制御して、判定結果「◎」をモニター2に出力する(ステップS30)。すなわち、モニター2の1階西側男子トイレの欄に全席が空いていることを示す「◎」が表示される。
【0041】
ステップS24で、設備Y=1が1席以上空いている場合には(図中:1席以上空き)、統合制御部5Hは、「設備Y=1」を「○」と判定し(ステップS27)、判定結果「○」をモニターに出力する(ステップS30)。すなわち、この場合は、モニター2の1階西側男子トイレの欄に1席以上が空いていることを示す「○」が表示される。
そして
【0042】
また、ステップS24で、設備Y=1のトイレに空きがないとされた場合(図中:空き無し)には、次に、エレベーター制御装置5の設備利用時間演算部5Gによって、設備Y=1のトイレ利用時間がステップS22で算出した平均利用時間Tを超えているか否かが判定される(ステップS25)。その結果、1席でも平均利用時間Tを超えているトイレがある場合(ステップS25のYES)には、統合制御部5Hは、「設備Y=1」を「△」と判定し(ステップS28)、判定結果「△」をモニターに出力する(ステップS30)。すなわち、モニター2には、1階西側男子トイレの中に平均利用時間Tを超えているトイレ、つまり、もうすぐ空きになる可能性があるトイレがあることを示す「△」が表示される。
【0043】
次に、ステップS25で、平均利用時間Tを超えているトイレが1席もない場合(ステップS25のNO)には、統合制御部5Hは、「設備Y=1」を「×」と判定し(ステップS29)、判定結果「×」をモニターに出力する(ステップS30)。この場合は、モニター2には、1階西側男子トイレの中に平均利用時間Tを超えているトイレが全くないことを示す「×」が表示される。ステップS30において、モニター2に「設備Y=1」の判定結果が表示された後は、「設備Y=1」に「1」を加算して、次に判定される「設備Y=2」、ここでは1階西側女子トイレに関して、の利用状況の判定に移る(ステップS31)。
【0044】
このように、統合制御部5Hは、ステップS31で設備Yの数を更新し、設備Yが全ての設備の数Zを超えたか否かを判定する(ステップS32)。ステップS32で設備Yが全ての設備の数Zを超えていないと判定された場合(ステップS32のNO)には、ステップS24~ステップS31までの処理を繰り返す。そして、ステップS32で設備Yが全ての設備の数Zを超えたと判定された場合(ステップS32のYES)には、処理を終了する。例えば、5階建てのビル施設の各階の西側と東側に、男子トイレと女子トイレがある場合には、Z=20になるので、20番目の施設Y=20である5階東側女子トイレの利用状況の判定が終了した段階で全ての処理を終える。
【0045】
ここで、ステップS22で算出するトイレの利用平均時間Tについて説明を加える。既に説明したように、トイレの平均利用時間Tは、過去の所定時間の間に集計した利用時間の平均値であった。しかし、何階のどこのトイレが混むかどうかについては、時間帯や曜日などの他の要因が関係する場合がある。例えば、飲食点が3階の東側にあるような場合、昼食の時間帯の3階東側のトイレが混雑することが予想される。このときのトイレの平均利用時間は、通常の平均利用時間Tとは異なる平均利用時間Txとした方が精度の高いものとなる。したがって、時間帯または曜日(土日、祝日)などによって通常の平均利用時間Tとは異なる平均利用時間Txを用いて、より精度の高い空きトイレの判定を行うこともできる。
【0046】
以上説明したように、エレベーターの搭乗者がタッチパネル操作盤等による特別な操作をすることなく、建物内の各エリアの設備(トイレ等)の空き情報をかご1内のモニター2に表示して搭乗者に知らせることが可能となる。
また、エレベーターの搭乗階、進行方向等と組み合わせて、より限定的な表示制御を行うようにしてもよい。例えば、エレベーターが上昇運転するときに、2階から7階に向かう利用者が搭乗した場合には、モニター2への表示は3階(搭乗階+1階)から7階(目的階)までのトイレの空き情報だけを表示するようしてもよい。
【0047】
例えば、搭乗階でのエレベーターかごへの乗り込み時の方向が上方向であり、かつエレベーターかごの走行方向の階の設備の使用状況が混雑している場合には、エレベーターかご内のモニターに走行方向の特定の階のトイレ等の設備が混雑している旨の情報を表示することもできる。
【0048】
さらに、昼食後などの食堂の階が混雑するような場合には、その時間帯に合わせて特定の時間帯の特定階のトイレ等の設備の利用状況をエレベーターかご内のモニターに表示するようにしてもよい。
【0049】
また、トイレ等の設備ない階からエレベーターかごに乗車した利用者に対してはトイレ等の設備がある階の設備の利用状況をエレベーターかご内のモニターに表示するようにしてもよい。あるいは、トイレ等の設備が混雑している階からエレベーターかごに乗車した利用者に対しては、トイレ等の設備が混雑していない階のトイレ等の設備の利用状況をエレベーターかご内のモニターに表示するようにしてもよい。
【0050】
例えば、トイレ等の設備の空き情報が全て「×」の階から利用者がエレベーターかごに乗車して、別の階に運行する場合には、乗車階以外の他の全ての階のトイレ等の設備の空き情報を表示するようにすることもできる。
さらに、搭乗者が障害者(車椅子利用者)であって、車椅子用のボタンが操作された場合には、障害者用の設備(トイレ)のみを表示するようにすることもできる。
【0051】
なお、本例におけるエレベーター案内システムでは、エレベーターの搭乗者に対してトイレ空き状況を知らせる例で説明しているが、トイレの空き情報以外にも、建屋内の複数階にある有料ロッカーや、飲食店の座席等の空き状況を表示するなども考えられる。
【0052】
本発明は、上述した実施の形態例に限定されるものではなく、様々な変形例、応用例が含まれる。例えば、上述した実施の形態例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に記述したものであり、必ずしも記述した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施の形態例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…エレベーターのかご、2…モニター、3…監視カメラ、4…カードリーダ、5…エレベーター制御装置、5A…センサー通信部、5B…センサー情報演算部、5C…モニター通信部、5D…モニター表示制御部、5E…設備監視通信部、5F…設備利用情報記録部、5G…設備利用時間演算部、5H…統合制御部、6…建物設備監視装置、101~10n…男子トイレ(1階~n階)、201~20n…女子トイレ(1階~n階)
図1
図2
図3
図4
図5
図6