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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】モータ駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20220816BHJP
【FI】
H02M7/48 M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018089863
(22)【出願日】2018-05-08
(65)【公開番号】P2019198152
(43)【公開日】2019-11-14
【審査請求日】2021-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾関 主馬
(72)【発明者】
【氏名】神谷 直仁
(72)【発明者】
【氏名】金森 正樹
(72)【発明者】
【氏名】野木 雅也
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0181219(US,A1)
【文献】特開2009-273348(JP,A)
【文献】特開2014-054927(JP,A)
【文献】特開2010-132206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42~ 7/98
H02P21/00~25/03
H02P25/04
H02P25/10~27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに非接続状態の複数の相巻線を有するモータのモータ駆動装置であって、
上流側スイッチング素子と下流側スイッチング素子の直列回路を複数有し、これら直列回路の両端が直流電源に接続され、前記各直列回路の上流側スイッチング素子と下流側スイッチング素子の相互接続点が前記各相巻線の一端に接続された第1インバータと、
上流側スイッチング素子と下流側スイッチング素子の直列回路を複数有し、これら直列回路の両端が前記直流電源に接続され、前記各直列回路の上流側スイッチング素子と下流側スイッチング素子の相互接続点が前記各相巻線の他端に接続された第2インバータと、
前記各相巻線の他端の相互間に接続され、付勢により閉じ消勢により開く開閉器と、
前記開閉器の開閉と前記第1インバータおよび前記第2インバータの運転を制御するコントローラと、
前記開閉器を消勢して前記第2インバータにおける所定の上流側スイッチング素子および所定の下流側スイッチング素子を導通し、前記直流電源と前記第2インバータとの間に流れる電流により前記開閉器の短絡故障を検出する検出手段と、
を備えることを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記開閉器を付勢して前記第1インバータにおける所定の上流側スイッチング素子および所定の下流側スイッチング素子を導通し、前記各相巻線に流れる電流により前記開閉器の開放故障を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記開閉器の閉成により前記各相巻線の他端を相互接続しかつ前記第1インバータを単独運転する星形結線モード、および前記開閉器の開放により前記各相巻線の他端を開放しかつ前記第1および第2インバータを互いに連系運転するオープン巻線モードを、前記検出手段の検出結果および負荷に応じて選択的に設定する
ことを特徴とする請求項2に記載のモータ駆動装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記モータの起動前に前記検出手段による検出を実行し、
前記検出手段で前記短絡故障および前記開放故障が検出されない場合、前記開閉器の閉成により前記各相巻線の他端を相互接続しかつ前記第1インバータを単独運転する星形結線モードを設定して前記モータを起動し、この起動後、前記星形結線モードと、前記開閉器の開放により前記各相巻線の他端を開放しかつ前記第1および第2インバータを互いに連系運転するオープン巻線モードとを、負荷に応じて選択的に設定し、
前記検出手段で前記短絡故障が検出された場合、前記星形結線モードを設定して前記モータを起動し、この起動後も前記星形結線モードの設定を継続し、
前記検出手段で前記開放故障が検出された場合、前記オープン巻線モードを設定して前記モータを起動し、この起動後も前記オープン巻線モードの設定を継続する
ことを特徴とする請求項3に記載のモータ駆動装置。
【請求項5】
前記モータは、3つの相巻線Lu,Lv,Lwを有し、
前記第1インバータの複数の直列回路は、上流側スイッチング素子と下流側スイッチング素子の相互接続点が前記相巻線Luの一端に接続される相直列回路、上流側スイッチング素子と下流側スイッチング素子の相互接続点が前記相巻線Lvの一端に接続されるV相直列回路、上流側スイッチング素子と下流側スイッチング素子の相互接続点が前記相巻線Lwの一端に接続されるW相直列回路であり、
前記第2インバータの複数の直列回路は、上流側スイッチング素子と下流側スイッチング素子の相互接続点が前記相巻線Luの他端に接続される相直列回路、上流側スイッチング素子と下流側スイッチング素子の相互接続点が前記相巻線Lvの他端に接続されるV相直列回路、上流側スイッチング素子と下流側スイッチング素子の相互接続点が前記相巻線Lwの他端に接続されるW相直列回路であり、
前記開閉器は、前記相巻線Luの他端と前記相巻線Lvの他端の相互間に接続され付勢により閉じ消勢により開く第1開閉器、および前記相巻線Lvの他端と前記相巻線Lwの他端の相互間に接続され付勢により閉じ消勢により開く第2開閉器であり、
前記検出手段は、前記第1開閉器および第2開閉器を消勢して前記第2インバータにおける1つの直列回路の上流側スイッチング素子およびその直列回路とは別の1つの直列回路の下流側スイッチング素子を導通し、前記直流電源と前記第2インバータとの間に流れる電流の有無により、前記第1開閉器の短絡故障および前記第2開閉器の短絡故障を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項6】
前記検出手段は、前記第1開閉器および第2開閉器を付勢して前記第1インバータにおけるV相直列回路の上流側スイッチング素子とU相直列回路の下流側スイッチング素子およびW相直列回路の下流側スイッチング素子を導通し、前記相巻線Lu,Lv,Lwに流れる電流の大きさにより、前記第1開閉器および第2開閉器の開放故障を検出する
ことを特徴とする請求項5に記載のモータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに非接続状態の複数の相巻線を有する永久磁石同期モータいわゆるオープン巻線モータを駆動するモータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機や熱源機などの冷凍サイクル装置に搭載される圧縮機の駆動用モータとして、複数の相巻線を有する永久磁石同期モータが使用される。また、この永久磁石同期モータの一例として、複数の相巻線を互いに非接続状態とした構成のオープン巻線モータ(Open-Windings Motor)が知られている。
【0003】
このオープン巻線モータを駆動するモータ駆動装置は、各相巻線の一端に接続される第1インバータ、各相巻線の他端に接続される第2インバータ、各相巻線の他端の相互間に接続される開閉器を備え、この開閉器の閉成により各相巻線を星形結線し第1インバータのみでモータを駆動する星形結線モード、および上記開閉器の開放により各相巻線を開放し第1インバータと第2インバータの両方でモータを駆動するオープン巻線モードを選択的に設定する。例えば、低回転数域では星形結線モードを設定し、高回転数域ではオープン巻線モードを設定することにより、幅広い回転数範囲が得られるとともに、低回転数域で高効率な運転が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4906836号公報
【文献】特開2017-93077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
開閉器の接点が溶着などにより閉じたまま開かない短絡故障が生じた場合、オープン巻線モードを設定できない。
本発明の実施形態の目的は、開閉器の短絡故障を的確に検出できるモータ駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1のモータ駆動装置は、互いに非接続状態の複数の相巻線を有するモータのモータ駆動装置であって、第1インバータ、第2インバータ、開閉器、コントローラ、および検出手段を備える。第1インバータは、上流側スイッチング素子と下流側スイッチング素子の直列回路を複数有し、これら直列回路の両端が直流電源に接続され、前記各直列回路の上流側スイッチング素子と下流側スイッチング素子の相互接続点が前記各相巻線の一端に接続される。第2インバータは、上流側スイッチング素子と下流側スイッチング素子の直列回路を複数有し、これら直列回路の両端が前記直流電源に接続され、前記各直列回路の上流側スイッチング素子と下流側スイッチング素子の相互接続点が前記各相巻線の他端に接続される。開閉器は、前記各相巻線の他端の相互間に接続され、付勢により閉じ消勢により開く。コントローラは、前記開閉器の開閉と前記第1インバータおよび前記第2インバータの運転を制御する。検出手段は、前記開閉器を消勢して前記第2インバータにおける所定の上流側スイッチング素子および所定の下流側スイッチング素子を導通し、前記直流電源と前記第2インバータとの間に流れる電流により前記開閉器の短絡故障を検出する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係る冷凍サイクル装置の構成を示す図。
図2】一実施形態の構成を示すブロック図。
図3】一実施形態におけるモータコントローラの制御を示すフローチャート。
図4】一実施形態においてリレー接点に異常がない場合に星形結線モードとオープン巻線モードが選択的に設定される様子を示すタイムチャート。
図5図3における点検モードルーチンを示すフローチャート。
図6】一実施形態の点検モード時にリレー接点51aに短絡故障がある場合の電流の流れを示す図。
図7】一実施形態の点検モード時にリレー接点51aに短絡故障がある場合の電流の流れの他の例を示す図。
図8】一実施形態の点検モード時にリレー接点52aに短絡故障がある場合の電流の流れを示す図。
図9】一実施形態の点検モード時にリレー接点52aに短絡故障がある場合の電流の流れの他の例を示す図。
図10】一実施形態の点検モード時にリレー接点51a,52aに開放故障がない場合の電流の流れを示す図。
図11】一実施形態の点検モード時にリレー接点51aに開放故障がある場合の電流の流れを示す図。
図12】一実施形態の点検モード時にリレー接点52aに開放故障がある場合の電流の流れを示す図。
図13】一実施形態の点検モード時にリレー接点51a,52aに開放故障がある場合に電流が流れない状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態に係る空気調和機の冷凍サイクル装置の構成を図1に示す。
オープン巻線モータ(Open-Windings Motor)1M(以下、モータ1Mという)を駆動用モータとして有する圧縮機1の吐出口に、四方弁2を介して室外熱交換器3の一端が配管接続され、その室外熱交換器3の他端に減圧器である電動膨張弁4を介して室内熱交換器5の一端が配管接続されている。そして、室内熱交換器5の他端が上記四方弁2を介して圧縮機1の吸込口に配管接続されている。
【0009】
室外熱交換器3の近傍に室外ファン6が配置され、室内熱交換器5の近傍に室内ファン7が配置されている。モータ1M、四方弁2、電動膨張弁4、室外ファン6、および室内ファン7は、コントローラ10により駆動制御される。
冷房運転時、コントローラ10は、図1中の実線矢印で示すように、圧縮機1が吐出するガス冷媒を四方弁2を介して室外熱交換器3に流す。室外熱交換器3に流れたガス冷媒は、外気に熱を放出して凝縮する。この室外熱交換器(凝縮器)3から流出する液冷媒は、電動膨張弁4で減圧された状態で室内熱交換器5に流れる。室内熱交換器5に流れた液冷媒は、室内空気から熱を奪って蒸発する。この室内熱交換器(蒸発器)5から流出するガス冷媒は、四方弁2を通って圧縮機1に吸い込まれる。暖房運転時、コントローラ10は、四方弁2を切換え、図1中の破線矢印で示すように、圧縮機1が吐出するガス冷媒を四方弁2を介して室内熱交換器5に流す。室内熱交換器5に流れたガス冷媒は、室内空気に熱を放出して凝縮する。この室内熱交換器(凝縮器)5から流出する液冷媒は、電動膨張弁4で減圧されて室外熱交換器3に流れる。室外熱交換器3に流れた液冷媒は、外気から熱を奪って蒸発する。この室外熱交換器(蒸発器)3から流出するガス冷媒は、四方弁2を通って圧縮機1に吸い込まれる。圧縮機1、四方弁2、室内熱交換器5、電動膨張弁4(減圧装置)、室外熱交換器3及びこれらを接続する冷媒配管によって冷凍サイクルが形成される。
【0010】
本実施形態のモータ駆動装置は、図2に示すように、モータ1Mに接続される駆動回路およびコントローラ10の一部により構成される。モータ1Mは、互いに非接続状態の複数たとえば3つの相巻線Lu,Lv,Lwを有する永久磁石同期モータである。
三相交流電源20にノイズフィルタ21を介してダイオードブリッジの全波整流回路22が接続され、その全波整流回路22の出力端にリアクタ23を介してコンデンサ24が接続されている。この全波整流回路22、リアクタ23、コンデンサ24により、直流電圧Vdcを出力する直流電源25が構成される。
【0011】
直流電源25にインバータ(第1インバータ)30の入力端が接続され、そのインバータ30の出力端に相巻線Lu,Lv,Lwの一端が接続されている。直流電源25にインバータ(第2インバータ)40の入力端が接続され、そのインバータ40の出力端に相巻線Lu,Lv,Lwの他端が接続されている。インバータ30,40を同じ直流電源25に接続する電源共通方式が採用されている。インバータ30は1次側インバータあるいはマスタインバータともいい、インバータ40は2次側インバータあるいはスレーブインバータともいう。
【0012】
インバータ30は、上流側スイッチング素子のIGBT31uと下流側スイッチング素子のIGBT32uを直列接続し両端が直流電源25に接続されるとともにそのIGBT31u,32uの相互接続点がモータ1Mの相巻線Luの一端に接続されるU相直列回路、上流側スイッチング素子のIGBT31vと下流側スイッチング素子のIGBT32vを直列接続し両端が直流電源25に接続されるとともにそのIGBT31v,32vの相互接続点がモータ1Mの相巻線Lvの一端に接続されるV相直列回路、上流側スイッチング素子のIGBT31wと下流側スイッチング素子のIGBT32wを直列接続し両端が直流電源25に接続されるとともにそのIGBT31w,32wの相互接続点がモータ1Mの相巻線Lwの一端に接続されるW相直列回路を含み、直流電源25の直流電圧VdcをIGBT31u~32wのスイッチングにより所定周波数の三相交流電圧に変換し、その三相交流電圧をモータ1Mの相巻線Lu,Lv,Lwのそれぞれ一端へ供給する。IGBT31u~32wには、それぞれ回生用ダイオード(フリー・ホイール・ダイオードともいう)Dが逆並列接続されている。
【0013】
インバータ40は、上流側スイッチング素子のIGBT41uと下流側スイッチング素子のIGBT42uを直列接続し両端が直流電源25に接続されるとともにそのIGBT41u,42uの相互接続点がモータ1Mの相巻線Luの他端に接続されるU相直列回路、上流側スイッチング素子のIGBT41vと下流側スイッチング素子のIGBT42vを直列接続し両端が直流電源25に接続されるとともにそのIGBT41v,42vの相互接続点がモータ1Mの相巻線Lvの他端に接続されるV相直列回路、上流側スイッチング素子のIGBT41wと下流側スイッチング素子のIGBT42wを直列接続し両端が直流電源25に接続されるとともにそのIGBT41w,42wの相互接続点がモータ1Mの相巻線Lwの他端に接続されるW相直列回路を含み、直流電源25の直流電圧VdcをIGBT41u~42wのスイッチングにより所定周波数の三相交流電圧に変換し、その三相交流電圧をモータ1Mの相巻線Lu,Lv,Lwのそれぞれ他端へ供給する。IGBT41u~42wには、それぞれ回生用ダイオード(フリー・ホイール・ダイオードともいう)Dが逆並列接続されている。
【0014】
モータ1Mは、巻線への印加電圧を高めることができることから、高回転まで回すことができる。ただし、2つのインバータ30,40でモータ1Mを駆動すると、電力消費が増えて効率低下が発生する。そこで、低回転数域では、モータ1Mの各相巻線を星形結線して1つのインバータ30のみでモータ1Mを駆動することで効率向上を得ることが好ましい。さらに、低回転数域の運転では、モータ1Mの各相巻線の線径を細くして各相巻線の巻回数を多くし、これにより巻線密度を高めることがモータ1Mの効率向上につながる。この点からも相巻線Lu,Lv,Lwをオープン巻線状態と星形結線状態とに適宜に切換えることが好適である。そこで、モータ1Mの相巻線Luの他端と相巻線Lvの他端との相互間に開閉器たとえばリレー51の常開形接点(リレー接点という)51aが接続され、モータ1Mの相巻線Lvの他端と相巻線Lwの他端との相互間に開閉器たとえばリレー52の常開形接点(リレー接点という)52aが接続される。リレー接点51a,52aが閉成すると、相巻線Lu,Lv,Lwの他端が相互接続されて、相巻線Lu,Lv,Lwが星形結線される。リレー接点51a,52aが開放すると、相巻線Lu,Lv,Lwの他端が開放して、相巻線Lu,Lv,Lwが互いに電気的に分離したオープン巻線状態となる。
【0015】
インバータ30とモータ1Mの相巻線Lu,Lv,Lwとの間の3つの通電ラインに電流センサ53,53v,53wが配置され、これら電流センサ53,53v,53wの検知信号がコントローラ10に送られる。直流電源25とインバータ40との間の正側通電ラインP1および負側通電ラインP2の一方に電流センサ54が配置され、この電流センサ54の検知信号がコントローラ10に送られる。
【0016】
コントローラ10は、上記冷凍サイクル装置を制御するメインコントローラ10a、直流電源25の出力電圧Vdcを検出する電圧検出部61、モータ1Mの各相巻線に流れる電流を電流センサ53,53v,53wを介して検出する電流検出部62、リレー51,52を駆動するリレー駆動部63、表示部64、およびモータコントローラ60を含む。
【0017】
モータコントローラ60は、メインコントローラ10aの制御、電圧検出部61の検出電圧、電流検出部62の検出電流などに応じて、リレー接点51a,52aの開閉とインバータ30の運転およびインバータ40の運転を制御する。
とくに、モータコントローラ60は、主要な機能として、異常検出部(検出手段)60aおよびモード設定部60bを有する。
【0018】
異常検出部60aは、インバータ40における所定の上流側スイッチング素子および所定の下流側スイッチング素子を導通し直流電源25とインバータ40との間に流れる電流Ioの有無によりリレー接点51a,52aの短絡故障を検出するとともに、インバータ30における所定の上流側スイッチング素子および所定の下流側スイッチング素子を導通し相巻線Lu,Lv,Lwに流れる電流の大きさ(有無を含む)によりリレー接点51a,52aの開放故障を検出する。
【0019】
モード設定部60bは、リレー接点51a,52aの閉成により相巻線Lu,Lv,Lwの他端を相互接続しかつインバータ30を単独運転する星形結線モード、およびリレー接点51a,52aの開放により相巻線Lu,Lv,Lwの他端を開放しかつインバータ30,40を互いに連系運転するオープン巻線モードを、上記検出部60aの検出結果および上記冷凍サイクル装置の負荷(空調負荷)に応じて選択的に設定する。
【0020】
[全体的な制御の説明]
つぎに、モータコントローラ60が実行する全体的な制御を図3のフローチャートおよび図4のタイムチャートを参照しながら説明する。フローチャートのステップS1,S2…については、単にS1,S2…と略称する。
モータコントローラ60は、メインコントローラ10aから運転開始指令を受けた場合(S1のYES)、リレー接点51a,52aの異常(短絡故障および開放故障)を検出するための点検モードルーチンを実行する(S2)。この点検モードルーチンの具体的な処理については後述する。
【0021】
点検モードルーチンにおいてリレー接点51a,52aの異常を検出しない場合(S3のYES)、モータコントローラ60は、異常フラグfを“0”にセットし(S4)、かつ星形結線モードを設定する(S5)。星形結線モードは、リレー接点51a,52aを閉成して相巻線Lu,Lv,Lwの他端を相互接続し、かつインバータ30を単独運転(インバータ40は停止)する運転のことである。この星形結線モードの設定後、モータコントローラ60は、所定の直流励磁電流をインバータ30から相巻線Lu,Lv,Lwに加えてモータ1Mのロータを指定の位置(角度)まで回動させる“直流励磁”いわゆる“初期位置決め”を実行する(S10)。
【0022】
上記点検モードルーチンにおいてリレー接点51a,52aのいずれかの異常を検出した場合(S3のNO)、モータコントローラ60は、異常の内容を表示部64の文字表示や画像表示により報知するとともに(S6)、異常フラグfを“1”にセットする(S7)。そして、リモートコントローラ60は、異常が短絡故障であるか開放故障であるかを判定する(S8)。
【0023】
リレー接点51a,52aの少なくとも1つが溶着等で閉じたまま開かない短絡故障である場合(S8のYES)、モータコントローラ60は、上記S5の処理に移行し、短絡故障でも設定可能な星形結線モードを設定する(S5)。
リレー接点51a,52aの少なくとも1つが開いたまま閉じない開放故障である場合(S8のNO)、リモートコントローラ60は、開放故障でも設定可能なオープン巻線モードを設定する(S9)。オープン巻線モードは、リレー接点51a,52aを開放して相巻線Lu,Lv,Lwの他端を開放しかつインバータ30,40を連系運転する運転モードである。このオープン巻線モードの設定後、モータコントローラ60は、上記S10の処理に移行し“直流励磁”を実行する(S10)。
【0024】
すなわち、リレー接点51a,52aのいずれかに短絡故障が生じていても、星形結線モードの設定によってモータ1Mを起動することが可能となる。また、リレー接点51a,52aのいずれかに開放故障が生じていても、オープン巻線モードの設定によってモータ1Mを起動することが可能となる。短絡故障および開放故障を表示部64の文字表示や画像表示により報知するので、短絡故障および開放故障の発生をユーザに的確に知らせることができる。
【0025】
“直流励磁”を一定時間t1続けた後(S11のYES)、モータコントローラ60は、界磁成分電流をインバータ30から相巻線Lu,Lv,Lwに加えてロータを強制的に牽引する“強制転流”を実行する(S12)。この“強制転流”を一定時間t2続けた後(S13のYES)、モータコントローラ60は、界磁成分電流を低減しながら、徐々に増加するトルク成分電流をインバータ30から相巻線Lu,Lv,Lwに与えてロータの回転数Nを上昇させ、この回転数Nの上昇に伴い、相巻線Lu,Lv,Lwに誘起する電圧によってモータ1Mとインバータ30との間に流れる電流を電流検出部62により検出し、検出した電流の値からロータの回転数Nを推定し、推定した回転数Nが空調負荷に応じた目標回転数Ntとなるようインバータ30のスイッチングをPWM(Pulse Width Modulation)制御する(S14)。
【0026】
続いて、モータコントローラ60は、異常フラグfを確認する(S15)。異常フラグfが“0”の場合(S15のYES)、つまりリレー接点51a,52aに異常がない場合、モータコントローラ60は、モータ1Mの回転数Nが閾値N2(<Nt)まで上昇したかどうかを判定する(S16)。回転数Nが閾値N2へ向かって上昇する間(S16のNO,S19のNO)、上記14の処理に戻り、回転数Nを空調負荷に応じた目標回転数Ntへ上昇させるべく、インバータ30のスイッチングのPWM制御を続ける(S14)。
【0027】
相巻線Lu,Lv,Lwの他端が相互接続される星形結線モードでは、効率の低下を招く零相電流(零軸電流ともいう)が相巻線Lu,Lv,Lwに流れないので、モータ1Mを高効率で起動できる。
回転数Nが上昇して閾値N2に達した場合(高回転数領域;S16のYES)、モータコントローラ60は、回転数Nを一定時間tsにわたり閾値N2一定に保持する(S17)。回転数Nを閾値N2一定に保持している間、モータコントローラ60は、オープン巻線モードを設定する(S18)。そして、モータコントローラ60は、メインコントローラ10aから運転停止指令を受けていなければ(S22のNO)、上記S14の処理に戻り、回転数Nが空調負荷に応じた目標回転数Ntとなるよう、インバータ30のIGBT31~36のスイッチングおよびインバータ40のIGBT41~46のスイッチングを互いに連系してPWM制御する(S14)。このオープン巻線モードの設定により、星形結線モード時のほぼ2倍の高レベルの電圧を相巻線Lu,Lv,Lwに印加することができる。これにより、高負荷運転に対応し得る十分な圧縮機能力を発揮できる。
【0028】
回転数Nが下降して閾値N1に達した場合(低回転数領域;S16のNO,S19のYES)、モータコントローラ60は、回転数Nを一定時間tsにわたり閾値N1一定に保持する(S20)。回転数Nを閾値N1一定に保持している間、モータコントローラ60は、リレー接点51a,52aを閉成して相巻線Lu,Lv,Lwの他端を相互接続しかつインバータ30を単独運転する星形結線モードを設定する(S21)。そして、モータコントローラ60は、メインコントローラ10aから運転停止指令を受けていなければ(S22のNO)、上記S14の処理に戻り、回転数Nが空調負荷に応じた目標回転数Ntとなるよう、インバータ30のIGBT31~36のスイッチングをPWM制御する(S14)。この星形結線モードの設定により、低負荷運転に対応し得る低レベルの電圧を相巻線Lu,Lv,Lwに印加することができる。
【0029】
メインコントローラ10aから運転停止指令を受けた場合(S22のYES)、モータコントローラ60は、インバータ30およびインバータ40の全ての運転を停止する(S23)。
なお、星形結線モードとオープン巻線モードとの切換え時に、回転数Nを一定時間tsにわたり閾値N2一定または閾値N1一定に保持するのは、インバータ30,40の駆動制御とモータ1Mの実際の回転とが同期しなくなるいわゆる脱調を防ぐためである。一定時間tsとして少なくとも1秒以上が確保される。
【0030】
上記S15の判定において、異常フラグfが“1”の場合(S15のNO)、つまりリレー接点51a,52aのいずれかに異常がある場合、モータコントローラ60は、上記S16~S21の処理によるモード切換えを行うことなく、現時点の星形結線モードの設定またはオープン巻線モードの設定を維持しながら、運転停止指令の有無を確認する(S22)。運転停止指令を受けていない場合(S22のNO)、現時点の星形結線モードの設定またはオープン巻線モードの設定を維持したまま上記S14の処理に戻り、回転数Nが空調負荷に応じた目標回転数Ntとなるよう、インバータ30のIGBT31~36のスイッチングをPWM制御する(S14)。メインコントローラ10aから運転停止指令を受けた場合(S22のYES)、モータコントローラ60は、インバータ30およびインバータ40の全ての運転を停止する(S23)。
【0031】
[点検モードルーチンの説明]
上記S2の点検モードルーチンの処理を図5のフローチャートおよび図6図13を参照しながら説明する。
(1)短絡故障の検出
モータコントローラ60は、リレー接点51a,52aの短絡故障を検出するべく、リレー51,52を消勢する(S31)。続いて、モータコントローラ60は、2次側のインバータ40における所定の上流側スイッチング素子であるIGBT41uおよび所定の下流側スイッチング素子であるIGBT42vを導通するU相-V相通電(1相-1相通電)、または2次側のインバータ40における所定の上流側スイッチング素子であるIGBT41vおよび所定の下流側スイッチング素子であるIGBT42uを導通するV相-U相通電(1相-1相通電)を実行し(S32)、直流電源25とインバータ40との間の通電ラインP1,P2に流れる電流Ioの有無を電流センサ54を介して監視する(S33)。
【0032】
リレー51,52の消勢に応じてリレー接点51a,52aが確実に開けば、直流電源25とインバータ40との間の正側通電ラインP1および負側通電ラインP2に電流Ioは流れない(Io=0)。
リレー51を消勢したにもかかわらずリレー接点51aが例えば溶着により開かないまま、リレー接点52aについてはリレー52の消勢に応じて確実に開いた場合、上記U相-V相通電の実行であれば、図6に示すように、正側通電ラインP1→IGBT41u→リレー接点51a→IGBT42v→負側通電ラインP2を通る経路で直流電源25とインバータ40との間に電流Ioが流れる(Io>0)。上記V相-U相通電の実行であれば、図7に示すように、正側通電ラインP1→IGBT41v→リレー接点51a→IGBT42u→負側通電ラインP2を通る経路で直流電源25とインバータ40との間に電流Ioが流れる(Io>0)。
【0033】
直流電源25とインバータ40との間に電流Ioが流れた場合(Io>0;S33のYES)、モータコントローラ60は、リレー接点51aが短絡故障であると判定し(S34)、次の処理に移行する。電流Ioが流れない場合(Io=0;S33のNO)、モータコントローラ60は、S34の判定を迂回して次の処理に移行する。
【0034】
続いて、モータコントローラ60は、2次側のインバータ40における所定の上流側スイッチング素子であるIGBT41vおよび所定の下流側スイッチング素子であるIGBT42wを導通するV相-W相通電(1相-1相通電)、または2次側のインバータ40における所定の上流側スイッチング素子であるIGBT41wおよび所定の下流側スイッチング素子であるIGBT42vを導通するW相-V相通電(1相-1相通電)を実行し(S35)、直流電源25とインバータ40との間の通電ラインP1,P2に流れる電流Ioの有無を電流センサ54を介して監視する(S36)。
【0035】
リレー52を消勢したにもかかわらずリレー接点52aが溶着等により開かないまま、リレー接点51aについてはリレー51の消勢に応じて確実に開いた場合、上記V相-W相通電の実行であれば、図8に示すように、正側通電ラインP1→IGBT41v→リレー接点52a→IGBT42w→負側通電ラインP2を通る経路で直流電源25とインバータ40との間に電流Ioが流れる(Io>0)。上記W相-V相通電の実行であれば、図9に示すように、正側通電ラインP1→IGBT41w→リレー接点52a→IGBT42v→負側通電ラインP2を通る経路で直流電源25とインバータ40との間に電流Ioが流れる(Io>0)。
【0036】
直流電源25とインバータ40との間に電流Ioが流れた場合(Io>0;S36のYES)、モータコントローラ60は、リレー接点52aが短絡故障であると判定し(S37)、次の開放故障の検出処理に移行する。電流Ioが流れない場合(Io=0;S36のNO)、モータコントローラ60は、S37の判定を迂回して次の開放故障の検出処理に移行する。
【0037】
(2)開放故障の検出
短絡故障の検出処理に続き、モータコントローラ60は、リレー接点51a,52aの開放故障を検出するべく、リレー51,52を付勢する(S38)。そして、モータコントローラ60は、1次側のインバータ30における所定の上流側スイッチング素子であるIGBT31vおよび所定の下流側スイッチング素子であるIGBT32u,32wを導通するV相-U相・W相通電(1相-2相通電)を実行し(S39)、相巻線Lu,Lv,Lwに流れる電流Iu,Iv,Iwの大きさを電流センサ53u,53v,53wを介して監視する(S40,S41,S43,S45)。
【0038】
リレー接点51,52の付勢に応じてリレー接点51a,52aが確実に閉じれば、図10に示すように、正側通電路P1→IGBT31v→相巻線Lvを通る経路で電流Ivが流れ、相巻線Lvを経た電流Ivがリレー接点51a側に分流して相巻線Lu→IGBT32u→負側通電ラインP2に至る電流Iuとなり、かつ相巻線Lvを経た電流Ivがリレー接点52a側にも分流して相巻線Lw→IGBT32w→負側通電ラインP2に至る電流Iwとなる。
【0039】
この場合、電流Ivの値は、IGBT31v,32u,32wの素子抵抗を無視すれば、相巻線Lvの抵抗値と相巻線Lu,Lwの並列回路の合成抵抗値との和に応じて定まる大きさとなり、予め定めた設定値Ivs以上となる(Iv≧Ivs)。電流Iu,Iwの値は、どちらも零より大となる(Iu>0;Iw>0)。
【0040】
電流Ivが設定値Ivs以上の場合(S40のYES)、モータコントローラ60は、リレー接点51a,52aに開放故障はないとして、点検ルーチンを終了する。
リレー51の付勢にもかかわらずリレー接点51aが閉じないまま、リレー接点52aについてはリレー52の付勢に応じて確実に閉じた場合、図11に示すように、正側通電路P1→IGBT31v→相巻線Lvを通る経路で電流Ivが流れ、相巻線Lvを経た電流Ivがリレー接点51a側に分流せずにリレー接点52a側にのみ分流し相巻線Lw→IGBT32w→負側通電ラインP2に至る電流Iwとなる。
【0041】
この場合、電流Ivの値は、IGBT31v,32u,32wの素子抵抗を無視すれば、相巻線Lvの抵抗値と相巻線Lwの抵抗値との和に応じて定まる大きさに増えるので、設定値Ivsより小さくなる(Iv<Ivs)。電流Iuの値は零となり(Iu=0)、電流Iwの値は零より大となる(Iw>0)。
【0042】
電流Ivが設定値Ivs未満かつ零より大きくて(S40のNO,S41のNO)、電流Iuが零の場合(S42のYES)、モータコントローラ60は、リレー接点51aが開放故障であると判定し(S43)、点検ルーチンを終了する。
逆に、リレー52の付勢にもかかわらずリレー接点52aが閉じないまま、リレー接点51aについてはリレー51の付勢に応じて確実に閉じた場合、図12に示すように、正側通電路P1→IGBT31v→相巻線Lvを通る経路で電流Ivが流れ、相巻線Lvを経た電流Ivがリレー接点52a側には分流せずにリレー接点51a側にのみ分流し相巻線Lu→IGBT32u→負側通電ラインP2に至る電流Iuとなる。
【0043】
この場合、電流Ivの値は、IGBT31v,32u,32wの素子抵抗を無視すれば、相巻線Lvの抵抗値と相巻線Luの抵抗値との和に応じて定まる大きさに増えるので、設定値Ivsより小さくなる(Iv<Ivs)。電流Iuの値は零より大となり(Iu>0)、電流Iwの値は零となる(Iw=0)。
【0044】
電流Ivが設定値Ivs未満かつ零より大きくて(S40のNO,S41のNO)、電流Iuが零より大でかつ電流Iwが零の場合(S42のNO)、モータコントローラ60は、リレー接点52aが開放故障であると判定し(S44)、点検ルーチンを終了する。
【0045】
また、リレー51,52の付勢にもかかわらずリレー接点51a,52aの両方が閉じない場合、図13に示すように、電流Ivは流れない(Iv=0)。
電流Ivが零の場合(S40のNO,S41のYES)、モータコントローラ60は、リレー接点51a,52aが共に開放故障であると判定し(S45)、点検ルーチンを終了する。
【0046】
以上、リレー接点51a,52aの短絡故障および開放故障を的確に検出できる。
[変形例]
上記実施形態では、開閉器がリレー接点51a,52aである場合を例に説明したが、半導体スイッチを開閉器として用いる場合も、同様に実施できる。
上記実施形態では、圧縮機の駆動用モータとして用いるオープン巻線モータを例に説明したが、他の用途に用いるオープン巻線モータについても同様に実施できる。
【0047】
上記実施形態では、全波整流回路22、リアクタ23、コンデンサ24により構成される直流電源25を用いたが、それに限らず例えば昇圧型コンバータを直流電源25として用いてもよい。
その他、上記実施形態および変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態や変形は、発明の範囲は要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1…圧縮機、1M…オープン巻線モータ、Lu,Lv,Lw…相巻線、2…四方弁、3…室外熱交換器、4…電動膨張弁、5…室内熱交換器、10…コントローラ、10a…メインコントローラ、20…三相交流電源、22…全波整流回路、24…コンデンサ、25…直流電源、30…インバータ(第1インバータ)、40…インバータ(第2インバータ)、51,52…リレー、51a,52a…リレー接点、53u,53v,53w…電流センサ、60…モータコントローラ、61…電圧検出部、62…電流検出部、63…中性点電位検出部、64…リレー駆動部
図1
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