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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】放熱モジュール
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/04 20060101AFI20220816BHJP
【FI】
F28D15/04 H
F28D15/04 B
F28D15/04 G
F28D15/04 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018136938
(22)【出願日】2018-07-20
(65)【公開番号】P2020012620
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】川原 洋司
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 祐士
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0071879(US,A1)
【文献】特開2018-004108(JP,A)
【文献】特開2017-003160(JP,A)
【文献】登録実用新案第3206206(JP,U)
【文献】米国特許第06695040(US,B1)
【文献】国際公開第2018/003957(WO,A1)
【文献】特開2004-226032(JP,A)
【文献】特開2011-102691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/02
F28D 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体を内部に封入し、該封入した作動流体を蒸発させる蒸発部と、該蒸発した作動流体を凝縮させる凝縮部と、を有するコンテナと、
前記コンテナの内部において、熱源から熱を受ける第一面と、前記第一面とは反対側の第二面と、を接続する複数のフィンと、
前記複数のフィンの間に配置され、毛細管力によって前記凝縮した作動流体を前記凝縮部から前記蒸発部に移動させるウィックと、を備え、
前記ウィックは、
前記第一面を覆う第1ウィック部と、
少なくとも前記凝縮部の一部において、前記第一面から前記第二面に向かって前記第1ウィック部よりも高く形成され、前記複数のフィンの一部の隙間を充填する第2ウィック部と、を有し、
前記第2ウィック部が配置された前記複数のフィンの一部の隙間である第2隙間は、前記第1ウィック部が配置された前記複数のフィンの他の隙間である第1隙間よりも幅が広い、ことを特徴とする放熱モジュール。
【請求項2】
前記第2ウィック部は、前記第二面と接している、ことを特徴とする請求項1に記載の放熱モジュール。
【請求項3】
前記第2ウィック部は、前記凝縮部から前記蒸発部まで延在している、ことを特徴とする請求項1または2に記載の放熱モジュール。
【請求項4】
前記複数のフィンは、平面視長方形状を有し、
前記複数のフィンのうち、長手方向において前記第2隙間を挟んで対向する第2フィンは、当該長手方向において、他の第1フィンよりも短い、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の放熱モジュール。
【請求項5】
前記第1ウィック部は、パウダーウィックにより形成されており、
前記第2ウィック部は、前記パウダーウィックが、前記第1ウィック部よりも高く盛られて形成されている、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の放熱モジュール。
【請求項6】
前記第2ウィック部は、前記パウダーウィックの上に配置されたワイヤーウィックを含む、ことを特徴とする請求項5に記載の放熱モジュール。
【請求項7】
前記第2ウィック部は、ワイヤーウィックにより形成されている、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の放熱モジュール。
【請求項8】
前記第2ウィック部は、前記蒸発部を中心に四方に延在している、請求項1~7のいずれか一項に記載の放熱モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、放熱モジュールの一形態として、ベーパーチャンバーが開示されている。このベーパーチャンバーは、気密状態に密閉された中空平板状のコンテナの内部に、空気などの非凝縮ガスを脱気した状態で、作動流体が封入されて構成されている。コンテナの内部には、電子部品などの熱源から熱を受ける底部から複数のフィンが立設している。そして、コンテナの底部におけるフィンの設置密度が低い部分に限定して、多孔質焼結体が密着して設けられている。この多孔質焼結体は、高い毛管力を生じるとともにその多孔構造中に液相の作動流体を保持することができるため、蒸発部に対する液相の作動流体の還流量を増大させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-132399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような放熱モジュールの熱性能を向上させる要素には、蒸発部における熱抵抗の低下と、最大熱輸送量の増加の2つがある。近年、CPU、GPU等の電子部品の発熱量はますます増加してきており、蒸発部での作動流体のドライアウトの発生が課題となっている。ドライアウトの発生を防止するためには、例えば、上記多孔質焼結体(ウィック)を厚くし、液相の作動流体を還流させる液体流路の圧力損失を下げて、最大熱輸送量を増加させることが考えられる。しかしながら、ウィックを厚くすると、蒸発部において熱伝導のよい薄膜蒸発ができなくなり、蒸発部における熱抵抗が増加し、熱性能が低下してしまう、という問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、熱抵抗の増加を抑えながら最大熱輸送量を増加させ、作動流体のドライアウトの発生を防止できる放熱モジュールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様に係る放熱モジュールは、作動流体を内部に封入し、該封入した作動流体を蒸発させる蒸発部と、該蒸発した作動流体を凝縮させる凝縮部と、を有するコンテナと、前記コンテナの内部において、熱源から熱を受ける第一面と、前記第一面とは反対側の第二面と、を接続する複数のフィンと、前記複数のフィンの間に配置され、毛細管力によって前記凝縮した作動流体を前記凝縮部から前記蒸発部に移動させるウィックと、を備え、前記ウィックは、前記第一面を覆う第1ウィック部と、少なくとも前記凝縮部の一部において、前記第一面から前記第二面に向かって前記第1ウィック部よりも高く形成され、前記複数のフィンの一部の隙間を充填する第2ウィック部と、を有する。
【0007】
(2)上記(1)に記載された放熱モジュールであって、前記第2ウィック部は、前記第二面と接していてもよい。
(3)上記(1)または(2)に記載された放熱モジュールであって、前記第2ウィック部は、前記凝縮部から前記蒸発部まで延在していてもよい。
(4)上記(1)~(3)に記載された放熱モジュールであって、前記第2ウィック部が配置された前記複数のフィンの一部の隙間である第2隙間は、前記第1ウィック部が配置された前記複数のフィンの他の隙間である第1隙間よりも幅が広くてもよい。
(5)上記(4)に記載された放熱モジュールであって、前記複数のフィンは、平面視長方形状を有し、前記複数のフィンのうち、長手方向において前記第2隙間を挟んで対向する第2フィンは、当該長手方向において、他の第1フィンよりも短くてもよい。
(6)上記(1)~(5)に記載された放熱モジュールであって、前記第1ウィック部は、パウダーウィックにより形成されており、前記第2ウィック部は、前記パウダーウィックが、前記第1ウィック部よりも高く盛られて形成されていてもよい。
(7)上記(6)に記載された放熱モジュールであって、前記第2ウィック部は、前記パウダーウィックの上に配置されたワイヤーウィックを含んでもよい。
(8)上記(1)~(5)に記載された放熱モジュールであって、前記第2ウィック部は、ワイヤーウィックにより形成されていてもよい。
(9)上記(1)~(8)に記載された放熱モジュールであって、前記第2ウィック部は、前記蒸発部を中心に四方に延在していてもよい。
【発明の効果】
【0008】
上記本発明の態様によれば、熱抵抗の増加を抑えながら最大熱輸送量を増加させ、作動流体のドライアウトの発生を防止できる放熱モジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係るベーパーチャンバー1の平断面図である。
図2図1に示すベーパーチャンバー1の矢視A-A断面図である。
図3図1に示すベーパーチャンバー1の矢視B-B断面図である。
図4図1に示すベーパーチャンバー1の領域Cの拡大図である。
図5】一実施形態の変形例に係るベーパーチャンバー1Aの縦断面図である。
図6】一実施形態の変形例に係るベーパーチャンバー1Bの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係る放熱モジュールを、図面を参照しながら説明する。図面において、説明の便宜上、いくつかの部分が拡大され又は省略されており、図面に表されている各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
以下の説明では、放熱モジュールの一実施形態としてベーパーチャンバーを例示する。
【0011】
図1は、一実施形態に係るベーパーチャンバー1の平断面図である。図2は、図1に示すベーパーチャンバー1の矢視A-A断面図である。図3は、図1に示すベーパーチャンバー1の矢視B-B断面図である。図4は、図1に示すベーパーチャンバー1の領域Cの拡大図である。
ベーパーチャンバー1は、作動流体の潜熱を利用する熱輸送素子である。このベーパーチャンバー1は、図1に示すように、作動流体を内部に封入したコンテナ2と、コンテナ2の内部に配置されたウィック3と、を有する。
【0012】
作動流体は、周知の相変化物質からなる熱輸送媒体であって、コンテナ2内で液相と気相とに相変化する。例えば、作動流体として、水(純水)やアルコールやアンモニア等を採用できる。なお、作動流体について、液相の場合を「液体」、気相の場合を「蒸気」と記載して説明することがある。また、液相と気相とを特に区別しない場合には作動流体と記載して説明することがある。また、作動流体は図示されていない。
【0013】
コンテナ2は、密閉された中空容器であり、平面方向(図1における紙面上下左右方向)の寸法が、厚み方向(図1における紙面垂直方向)の寸法よりも大きい扁平形状に形成されている。コンテナ2の厚みは、例えば、1.5mm~3.5mm程である。また、コンテナ2は、平面視で略長方形状を有している。このコンテナ2には、封入した作動流体を蒸発させる蒸発部4と、該蒸発した作動流体を凝縮させる凝縮部5とが設定されている。本実施形態では、蒸発部4が、コンテナ2の中央部に設定されている。
【0014】
蒸発部4とは、熱源(電子部品)から熱を受ける領域である。なお、蒸発部4は、熱源の外形(実装面積)と同じ領域からだけでなく、その外形よりも一回り大きな領域からも熱を受けることがある。一方、凝縮部5とは、蒸発部4の周囲に設定された領域であって、蒸発部4以外の領域である。なお、熱源としては、電子機器の電子部品、例えば、CPUやGPU等が挙げられる。
【0015】
コンテナ2は、有底箱状のボトムコンテナ10と、図2に示す平板状のトップコンテナ20と、を上下に接合して形成されている。ボトムコンテナ10は、例えば、銅、銅合金、アルミ、アルミ合金等から形成することができる。また、トップコンテナ20は、例えば、銅、銅合金、アルミ、アルミ合金、鉄、ステンレス、銅とステンレスの複合材(Cu-SUS)、銅でステンレスを挟み込んだ複合材(Cu-SUS-Cu)、ニッケルとステンレスの複合材(Ni-SUS)、ニッケルでステンレスを挟み込んだ複合材(Ni-SUS-Ni)等から形成することができる。
【0016】
ボトムコンテナ10をトップコンテナ20よりも熱伝導率の高い材料から形成した場合、トップコンテナ20は、コンテナ2の変形を防止するため硬度の高い材料であることが好ましい。例えば、ボトムコンテナ10を、熱伝導率の高い銅から形成した場合、トップコンテナ20は、銅とステンレスの複合材(Cu-SUS)、銅でステンレスを挟み込んだ複合材(Cu-SUS-Cu)、ニッケルとステンレスの複合材(Ni-SUS)、ニッケルでステンレスを挟み込んだ複合材(Ni-SUS-Ni)等から形成することが好ましい。
【0017】
ボトムコンテナ10には、図1に示すように、コンテナ2の外形を形成する枠部11と、枠部11によって囲まれた領域に配置された複数のフィン12と、が形成されている。複数のフィン12は、それぞれ平面視長方形状を有し、互いに隙間をあけてマトリクス状に配置されている。複数のフィン12の隙間には、ウィック3の第1ウィック部3A(後述)が配置されると共に作動流体の蒸気流路6が形成される部分と、ウィック3の第2ウィック部3B(後述)が配置されると共に作動流体の蒸気流路6が形成されない部分(隙間が充填されている部分)と、が存在している。
【0018】
図2に示すように、複数のフィン12は、コンテナ2の内部において、コンテナ2の底部側(ボトムコンテナ10側)の第一面2aと、第一面2aと対向するコンテナ2の頂部側(トップコンテナ20側)の第二面2bと、の間を接続している。本実施形態のコンテナ2は、ボトムコンテナ10の底面側から熱源の熱を受ける構成となっている。ボトムコンテナ10の底面から受けた熱は、ボトムコンテナ10の上面(第一面2a)に伝わり、複数のフィン12を介してトップコンテナ20の下面(第二面2b)に伝わる。なお、トップコンテナ20の上面には、熱を外気に放散する放熱フィンを設けてもよい。
【0019】
ウィック3は、図1に示すように、第一面2aの全体を覆うように配置された第1ウィック部3Aを備えている。第1ウィック部3Aは、図2に示すように、銅などの金属パウダーを焼結させたパウダーウィック30(多孔質焼結体)から形成されている。第1ウィック部3Aは、第一面2aから所定高さで層状に形成されている。第1ウィック部3Aが配置された複数のフィン12の第1隙間S1には、作動流体の蒸気流路6が形成されている。蒸気流路6は、第1ウィック部3Aの上方空間であって、第1ウィック部3Aの上面、トップコンテナ20の下面(第二面2b)、及び隣り合うフィン12の間に形成されている。
【0020】
一方で、ウィック3は、図2に示すように、複数のフィン12の一部の隙間を充填する第2ウィック部3Bを備えている。本実施形態の第2ウィック部3Bは、パウダーウィック30が、第1ウィック部3Aよりも高く盛られて形成されていると共に、当該パウダーウィック30の上にワイヤーウィック31が配置されて形成されている。ワイヤーウィック31は、銅などの複数の金属素線からなる編組体である。第2ウィック部3Bのパウダーウィック30は、ボトムコンテナ10の第一面2a、隣り合うフィン12の対向面2cに接している。また、ワイヤーウィック31は、パウダーウィック30の上面、隣り合うフィン12の対向面2c、及びトップコンテナ20の第二面2bに接している。
【0021】
第2ウィック部3Bは、図3に示すように、第一面2aから第二面2bに向かって第1ウィック部3Aよりも高く形成されている。すなわち、第1ウィック部3Aの高さをH1、第2ウィック部3Bの高さをH2とすると、H1<H2の関係を有する。本実施形態の第2ウィック部3Bの高さH2は、フィン12の高さ(コンテナ2の内部空間の高さ)と等しくなっている。第1ウィック部3Aの高さH1は、例えば第2ウィック部3Bの高さH2(例えば0.8mm~1.0mm)の30%程度とされている。
【0022】
なお、第2ウィック部3Bの高さH2は、フィン12の高さの50%以上であればよい。すなわち、第2ウィック部3Bは、蒸気流路6が形成されなければ、トップコンテナ20側の第二面2bに接触していなくてもよい。本実施形態では、第2ウィック部3Bのパウダーウィック30の高さH30が、フィン12の高さの50%以上となっている。第2ウィック部3Bのワイヤーウィック31の高さH31は、フィン12の高さからパウダーウィック30の高さH30を差し引いた高さとするとよい。これにより、パウダーウィック30によって充填できなかったコンテナ2の内部空間の残り(蒸気流路6)を、ワイヤーウィック31で充填することができる。
【0023】
上記構成の第2ウィック部3Bは、図1に示すように、凝縮部5の一部に形成され、当該凝縮部5から蒸発部4まで直線状に延在している。図1に示す平面視で視ると、第2ウィック部3Bは、蒸発部4を中心に四方に延在している。本実施形態の第2ウィック部3Bは、四方のそれぞれに3列ずつ形成され、真ん中の一列がその両側の二列よりも蒸発部4の中心に向かって延びている。これら第2ウィック部3Bが配置される複数のフィン12の隙間は、第1ウィック部3Aが配置される複数のフィン12の隙間よりも幅が広くなっている。
【0024】
具体的に、第2ウィック部3Bが配置される複数のフィン12の一部の隙間(以下、第2隙間S2という)は、図4に示すように、複数のフィン12の一部(以下、第2フィン12Bという)を切り欠いて形成されている。第2フィン12Bは、複数のフィン12のうち、その長手方向において第2隙間S2を挟んで互いに対向するように一対で配置されている。第2フィン12Bは、互いに対向する端部からL1だけ切り欠かれている。すなわち、第2隙間S2を形成しない他のフィン(以下、第1フィン12Aという)よりも、第2フィン12Bは、その長手方向においてL1だけ短くなっている。
【0025】
図2に示すように、第2ウィック部3Bが配置される第2隙間S2は、長手方向において幅W1を有する第1フィン12Aよりも短くなった、幅W2を有する第2フィン12Bの間に形成されている。上述のように第2隙間S2は、第1ウィック部3Aが配置される第1隙間S1よりも幅が広くなっている。第2隙間S2の幅は、第1隙間S1の幅よりも1.5倍以上の大きさを有するとよい。本実施形態では、第1隙間S1は、例えば0.5mm程度の幅を有し、第2隙間S2は、例えば1.0mm程度の幅を有している。なお、第2ウィック部3Bが配置される隙間は、図1に示すように、フィン12の短手方向においては、フィン12を一列間引くことで形成してもよい。
【0026】
続いて、上記構成のベーパーチャンバー1による熱輸送サイクルについて説明する。
ベーパーチャンバー1は、熱源から熱を受け取ることによって、図1に示す蒸発部4内において液体が蒸発する。蒸発部4では、ウィック3に浸透している液体が蒸発する。蒸発部4で生じた蒸気は、蒸発部4よりも圧力および温度が低い凝縮部5へ向けて、蒸気流路6内を流動する。凝縮部5では、蒸気流路6を介して凝縮部5に到達した蒸気が冷却されて凝縮する。凝縮部5で生じた液体は、ウィック3(例えば第1ウィック部3A)に浸透し、凝縮部5から蒸発部4へ還流される。
【0027】
ここで、ウィック3は、凝縮部5の一部において、第1ウィック部3Aよりも高く形成され、複数のフィン12の一部の隙間を充填する第2ウィック部3Bを有する。第2ウィック部3Bは、図2に示すように、第1ウィック部3Aよりも高く、トップコンテナ20まで延びているため、第1ウィック部3Aよりも作動流体の液体流路を大きく確保でき、当該液体流路における圧力損失を下げることができる。すなわち、第2ウィック部3Bには、パーミアビリティーの大きな(毛細間力の小さな)、圧力損失が少ない液体流路が形成されるため、凝縮部5から蒸発部4への作動流体の還流量が増加する。これにより、蒸発部4における作動流体のドライアウトが防止される。
【0028】
また、第2ウィック部3Bは、凝縮部5の一部に形成されるため、凝縮部5における蒸気流路6全体が狭くなることはなく、蒸気流路6の圧力損失に与える影響を抑えることができる。このため、蒸気と液体の圧力損失を共に少なくし、ベーパーチャンバー1の最大熱輸送量を大きくすることができる。なお、蒸発部4においては、熱源から熱を受ける第一面2aが、高さが低い第1ウィック部3Aで覆われているため、熱伝導のよい薄膜蒸発が可能となっており、蒸発部4の熱抵抗を低減することができる。このため、熱抵抗の増加を抑えながら最大熱輸送量を増加させ、作動流体のドライアウトの発生を防止できるベーパーチャンバー1が得られる。
【0029】
また、本実施形態では、図2に示すように、第2ウィック部3Bがトップコンテナ20側の第二面2bと接しているため、液体流路の断面積を可能な限り大きくすることができる。また、第2ウィック部3Bが第二面2bと接触することにより、第2ウィック部3Bの内部だけでなく、第2ウィック部3Bと第二面2bとの界面にもパーミアビリティーの大きな液体流路が形成されるため、より圧力損失が少ない液体流路を形成することができる。
【0030】
また、本実施形態では、図1に示すように、第2ウィック部3Bが凝縮部5から蒸発部4まで延在しているため、凝縮部5から蒸発部4に繋がる液体流路を形成することができ、蒸発部4における作動流体のドライアウトの発生をより確実に防止できる。また、第2ウィック部3Bは、蒸気流路6の妨げにならないように十分な間隔をあけて配置されているため、蒸発部4における熱抵抗の増加をできるかぎり抑えながら、最大熱輸送量を増加させることができる。
【0031】
また、本実施形態では、図2に示すように、第2ウィック部3Bが配置された複数のフィン12の一部の隙間である第2隙間S2は、第1ウィック部3Aが配置された複数のフィン12の他の隙間である第1隙間S1よりも幅が広い。この構成によれば、第2ウィック部3Bによって充填されるコンテナ2の空間断面積(チャンネル)を、第1ウィック部3Aが配置され蒸気流路6が形成されるコンテナ2の空間断面積(チャンネル)よりも大きくすることができる。これにより、第2ウィック部3Bにおける液体流路の断面積を大きく確保し、より圧力損失が少ない液体流路を形成することができる。
【0032】
さらに、本実施形態のように、複数のフィン12が平面視長方形状を有する場合、複数のフィン12のうち、長手方向において第2隙間S2を挟んで対向する第2フィン12Bを、当該長手方向において、他の第1フィン12Aよりも短くすることで、第1隙間S1より幅が大きい第2隙間S2を容易に形成することができる。
【0033】
また、本実施形態では、図3に示すように、第1ウィック部3Aは、パウダーウィック30により形成されており、第2ウィック部3Bは、パウダーウィック30が、第1ウィック部3Aよりも高く盛られて形成されている。この構成によれば、ベーパーチャンバー1を製造する過程で、第1ウィック部3Aと第2ウィック部3Bの形成工程が容易になる。例えば、金属パウダーをディスペンサー等で第一面2aの全体に配置する場合には、第2ウィック部3Bの形成位置において、第1ウィック部3Aよりも高く金属パウダーを盛れば、第1ウィック部3Aよりも背の高い第2ウィック部3Bを容易に形成することができる。
【0034】
さらに、本実施形態のように、第2ウィック部3Bがパウダーウィック30の上に配置されたワイヤーウィック31を含んでいる場合、パウダーウィック30のみでは充填し難いコンテナ2の内部空間の残り(蒸気流路6)を、ワイヤーウィック31で容易に充填(閉塞)することができる。すなわち、パウダーウィック30を焼結する前は、金属パウダーをフィン12の全高まで盛ることが困難な場合がある(金属パウダーの安息角に依存するところがある)ため、ワイヤーウィック31を配置するとよい。これにより、トップコンテナ20まで空間を、第2ウィック部3Bで充填することが容易になる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態によれば、作動流体を内部に封入し、該封入した作動流体を蒸発させる蒸発部4と、該蒸発した作動流体を凝縮させる凝縮部5と、を有するコンテナ2と、コンテナ2の内部において、熱源から熱を受ける第一面2aと、第一面2aとは反対側の第二面2bと、を接続する複数のフィン12と、複数のフィン12の間に配置され、毛細管力によって凝縮した作動流体を凝縮部5から蒸発部4に移動させるウィック3と、を備え、ウィック3は、第一面2aを覆う第1ウィック部3Aと、少なくとも凝縮部5の一部において、第一面2aから第二面2bに向かって第1ウィック部3Aよりも高く形成され、複数のフィン12の一部の隙間を充填する第2ウィック部3Bと、を有する、という構成を採用することによって、熱抵抗の増加を抑えながら最大熱輸送量を増加させ、作動流体のドライアウトの発生を防止できるベーパーチャンバー1が得られる。
【0036】
以上、本発明の好ましい実施形態を記載し説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、特許請求の範囲によって制限されている。
【0037】
例えば、図5図6に示す変形例を採用することができる。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0038】
図5は、一実施形態の変形例に係るベーパーチャンバー1Aの縦断面図である。
図5に示すベーパーチャンバー1Aは、パウダーウィック30のみからなる第2ウィック部3Bを有している。この構成によれば、第1ウィック部3Aと第2ウィック部3Bの構成をパウダーウィック30のみにすることができるため、製造が容易になる。
【0039】
図6は、一実施形態の変形例に係るベーパーチャンバー1Bの縦断面図である。
図6に示すベーパーチャンバー1Bは、ワイヤーウィック31のみからなる第2ウィック部3Bを有している。この構成によれば、仮に、焼結前にコンテナ2が振動等を受けても、第2ウィック部3Bが崩れることはなくなるため、製造が容易になる。
【0040】
また、例えば、上記実施形態では、ウィックをパウダーウィックないしワイヤーウィックから形成する構成について説明したが、ウィックは、メッシュ、フェルト、コンテナ2に形成されたグルーブ(溝)、もしくはそれらを組み合わせたものから形成されていてもよい。
【0041】
また、例えば、上記実施形態では、放熱モジュールとして、ベーパーチャンバーを例示したが、上記構成を放熱モジュールの別形態であるヒートパイプに適用してもよい。
【0042】
また、本実施形態の放熱モジュールの用途は特に限定されないが、例示として、スマートフォン、タブレット型端末、携帯電話、パーソナルコンピュータ、サーバー、コピー機、ゲーム機、複合機、プロジェクター、電子機器、燃料電池、人工衛星等が挙げられる。
【符号の説明】
【0043】
1…ベーパーチャンバー、1A…ベーパーチャンバー、1B…ベーパーチャンバー、2…コンテナ、2a…第一面、2b…第二面、2c…対向面、3…ウィック、3A…第1ウィック部、3B…第2ウィック部、4…蒸発部、5…凝縮部、6…蒸気流路、10…ボトムコンテナ、11…枠部、12…フィン、12A…第1フィン、12B…第2フィン、20…トップコンテナ、30…パウダーウィック、31…ワイヤーウィック、S1…第1隙間、S2…第2隙間、W1…幅、W2…幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6