(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】二酸化炭素分離回収システム及び方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/04 20060101AFI20220816BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20220816BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20220816BHJP
B01D 53/82 20060101ALI20220816BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20220816BHJP
【FI】
B01D53/04 230
B01D53/14 100
B01D53/62 ZAB
B01D53/82
C01B32/50
(21)【出願番号】P 2018204321
(22)【出願日】2018-10-30
【審査請求日】2021-09-06
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度 経済産業省「CO2分離回収技術の研究開発事業/先進的 二酸化炭素固体吸収材実用化研究開発事業」委託研究、産業技術力強化法 第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西部 祥平
(72)【発明者】
【氏名】田中 一雄
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 克浩
(72)【発明者】
【氏名】奥村 雄志
(72)【発明者】
【氏名】沼口 遼平
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-181964(JP,A)
【文献】特開2018-051554(JP,A)
【文献】国際公開第2013/114937(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/013332(WO,A1)
【文献】特開昭63-059339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/00-53/96
C01B 32/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状の二酸化炭素吸着材が流入した吸着容器と、
前記吸着容器へ二酸化炭素を含む処理対象ガスを供給する処理対象ガス供給ラインと、
前記二酸化炭素吸着材と接触することによって二酸化炭素が吸着除去された前記処理対象ガスを前記吸着容器から排出する処理ガス排出ラインと、
前記吸着容器で二酸化炭素を吸着した前記二酸化炭素吸着材が流入した再生容器と、
前記再生容器へ脱着用蒸気を供給する脱着用蒸気供給ラインと、
前記二酸化炭素吸着材と接触した前記脱着用蒸気と当該二酸化炭素吸着材から離脱した二酸化炭素とを含む回収ガスを前記再生容器から排出する二酸化炭素回収ラインと、
前記再生容器で二酸化炭素が離脱した前記二酸化炭素吸着材を前記吸着容器へ移送する移送装置とを備え、
前記二酸化炭素回収ラインが、前記回収ガスを熱源とする熱交換器を有する、
二酸化炭素分離回収システム。
【請求項2】
前記熱交換器は、前記再生容器と前記再生容器に形成された前記回収ガスの通路とを含み、前記再生容器と前記回収ガスとを熱交換させる、
請求項1に記載の二酸化炭素分離回収システム。
【請求項3】
前記熱交換器は、前記処理ガス排出ラインを流れる処理ガスと、前記回収ガスとを熱交換させる、
請求項1に記載の二酸化炭素分離回収システム。
【請求項4】
前記再生容器で二酸化炭素が離脱した前記二酸化炭素吸着材が流入した乾燥容器と、
前記乾燥容器へ乾燥用ガスを供給する乾燥用ガス供給ラインと、
前記乾燥容器を通じた前記乾燥用ガスを当該乾燥容器から排出する乾燥用ガス排出ラインと、を更に備え、
前記熱交換器は、前記乾燥用ガス供給ラインを流れる前記乾燥用ガスと前記回収ガスとを熱交換させる第1熱交換器、及び、前記乾燥用ガス排出ラインを流れる前記乾燥用ガスと前記回収ガスとを熱交換させる第2熱交換器の少なくとも一方である、
請求項1に記載の二酸化炭素分離回収システム。
【請求項5】
粒子状の二酸化炭素吸着材が充填された処理容器と、
前記処理容器へ二酸化炭素を含む処理対象ガスを供給する処理対象ガス供給ラインと、
前記二酸化炭素吸着材と接触することによって二酸化炭素が吸着除去された前記処理対象ガスを前記処理容器から排出する処理ガス排出ラインと、
前記処理容器へ脱着用蒸気を供給する脱着用蒸気供給ラインと、
前記二酸化炭素吸着材と接触した前記脱着用蒸気と当該二酸化炭素吸着材から離脱した二酸化炭素とを含む回収ガスを前記処理容器から排出する二酸化炭素回収ラインと、
前記処理容器に前記処理対象ガス供給ライン及び前記処理ガス排出ラインが接続された状態と、前記処理容器に前記脱着用蒸気供給ライン及び二酸化炭素回収ラインが接続された状態とに切り替える切替装置とを備え、
前記二酸化炭素回収ラインが、前記回収ガスを熱源とする熱交換器を有する、
二酸化炭素分離回収システム。
【請求項6】
前記熱交換器は、前記処理容器と前記処理容器に形成された前記回収ガスの通路とを含み、前記処理容器と前記回収ガスとを熱交換させる、
請求項5に記載の二酸化炭素分離回収システム。
【請求項7】
前記熱交換器が、前記処理ガス排出ラインを流れる前記処理容器から排出された処理ガスと、前記回収ガスとを熱交換させる、
請求項5に記載の二酸化炭素分離回収システム。
【請求項8】
前記処理容器へ乾燥用ガスを供給する乾燥用ガス供給ラインを更に備え、
前記熱交換器が、前記乾燥用ガス供給ラインを流れる前記乾燥用ガスと前記回収ガスとを熱交換させる、
請求項5に記載の二酸化炭素分離回収システム。
【請求項9】
前記二酸化炭素回収ラインが、前記熱交換器よりも前記回収ガスの流れの下流側において前記回収ガス中の水分を凝縮する凝縮器と、前記凝縮器よりも前記回収ガスの流れの下流側において前記回収ガスを圧縮する圧縮ポンプとを有する、
請求項1~8のいずれか一項に記載の二酸化炭素分離回収システム。
【請求項10】
粒子状の二酸化炭素吸着材と二酸化炭素を含む処理対象ガスとを接触させて、前記処理対象ガスに含まれる二酸化炭素を前記二酸化炭素吸着材に吸着させるステップと、
二酸化炭素を吸着した前記二酸化炭素吸着材と脱着用蒸気とを接触させて、前記二酸化炭素吸着材から二酸化炭素を離脱させることにより当該前記二酸化炭素吸着材を再生するとともに、離脱した二酸化炭素を回収するステップとを含み、
前記二酸化炭素を回収するステップが、前記二酸化炭素吸着材と接触した前記脱着用蒸気と当該二酸化炭素吸着材から離脱した二酸化炭素とを含む回収ガスを熱交換器の熱源として利用することを含む、
二酸化炭素分離回収方法。
【請求項11】
前記熱交換器で、前記二酸化炭素吸着材と前記回収ガスとを熱交換させる、
請求項10に記載の二酸化炭素分離回収方法。
【請求項12】
前記熱交換器で、前記二酸化炭素吸着材と接触した前記処理対象ガスと前記回収ガスとを熱交換させる、
請求項10に記載の二酸化炭素分離回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素吸着材を用いて処理対象ガス中の二酸化炭素を分離及び回収する二酸化炭素分離回収技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、二酸化炭素吸着材を用いて処理対象ガス中の二酸化炭素を分離及び回収する二酸化炭素分離回収システムが知られている。例えば、特許文献1には、この種の二酸化炭素分離回収システムが開示されている。
【0003】
特許文献1の二酸化炭素分離回収システムは、二酸化炭素吸着材が、吸着塔、再生塔、乾燥塔、及び冷却塔の順に連続的に移送される移動層方式のシステムである。吸着塔では、吸着材と二酸化炭素を含む処理対象ガスとが接触させられ、処理対象ガス中の二酸化炭素が吸着材に吸着される。再生塔では、二酸化炭素を吸着した吸着材と飽和蒸気とが接触させられ、吸着材から二酸化炭素が離脱する。離脱した二酸化炭素は、圧縮ポンプで圧縮されてから二酸化炭素ホルダに貯留される。乾燥塔では、再生塔で飽和蒸気の凝縮水が付着した吸着材が、加熱により乾燥される。冷却塔では、乾燥した吸着材が二酸化炭素吸着に適した温度まで冷却される。冷却された吸着材は、コンベヤによって吸着塔へ戻される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような、二酸化炭素吸着材を再生するために、二酸化炭素吸着材と蒸気とを直接的に接触させるシステムにおいては、再生容器(再生塔)から排出されるガス(以下、回収ガスと称する)には、二酸化炭素吸着材から脱着した二酸化炭素に加えて蒸気が含まれる。このような回収ガスは、圧縮ポンプの負荷変動を抑えるために、圧縮ポンプで圧縮される前に水分が除去されることが望ましい。
【0006】
一般に、蒸気を含むガスから蒸気を選択的に除去する場合には、蒸気を凝縮して水として除去する。このような蒸気の凝縮は発熱を伴う。そこで、上記の回収ガスから蒸気の潜熱を回収することができれば、エネルギーを更に有効に利用できる。
【0007】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、二酸化炭素分離回収技術において、エネルギーの更なる有効利用を促進することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る二酸化炭素分離回収システムは、
粒子状の二酸化炭素吸着材が流入した吸着容器と、
前記吸着容器へ二酸化炭素を含む処理対象ガスを供給する処理対象ガス供給ラインと、
前記二酸化炭素吸着材と接触することによって二酸化炭素が吸着除去された前記処理対象ガスを前記吸着容器から排出する処理ガス排出ラインと、
前記吸着容器で二酸化炭素を吸着した前記二酸化炭素吸着材が流入した再生容器と、
前記再生容器へ脱着用蒸気を供給する脱着用蒸気供給ラインと、
前記二酸化炭素吸着材と接触した前記脱着用蒸気と当該二酸化炭素吸着材から離脱した二酸化炭素とを含む回収ガスを前記再生容器から排出する二酸化炭素回収ラインと、
前記再生容器で二酸化炭素が離脱した前記二酸化炭素吸着材を前記吸着容器へ移送する移送装置とを備え、
前記二酸化炭素回収ラインが、前記回収ガスを熱源とする熱交換器を有することを特徴としている。
【0009】
上記において、前記熱交換器が、前記再生容器と前記再生容器に形成された前記回収ガスの通路とを含み、前記二酸化炭素吸着材と前記回収ガスとを熱交換させるように構成されていてよい。
【0010】
或いは、上記において、前記熱交換器が、前記処理ガス排出ラインを流れる処理ガスと、前記回収ガスとを熱交換させるように構成されていてよい。
【0011】
或いは、上記において、前記再生容器で二酸化炭素が離脱した前記二酸化炭素吸着材が流入した乾燥容器と、前記乾燥容器へ乾燥用ガスを供給する乾燥用ガス供給ラインと、前記乾燥容器を通じた前記乾燥用ガスを当該乾燥容器から排出する乾燥用ガス排出ラインと、を更に備え、前記熱交換器が、前記乾燥用ガス供給ラインを流れる前記乾燥用ガスと前記回収ガスとを熱交換させる第1熱交換器、及び、前記乾燥用ガス排出ラインを流れる前記乾燥用ガスと前記回収ガスとを熱交換させる第2熱交換器の少なくとも一方であってよい。
【0012】
上記二酸化炭素分離回収システムによれば、熱交換器において、回収ガスの熱エネルギー(脱着用蒸気の潜熱のエネルギーを含む)が回収されて利用されるとともに、回収ガスから水分の一部又は全部が除去される。このように、二酸化炭素分離回収システムは、回収ガスの熱エネルギーを利用するので、システムにおけるエネルギーの更なる有効利用が促進される。
【0013】
本発明の別の一態様に係る二酸化炭素分離回収システムは、
粒子状の二酸化炭素吸着材が充填された処理容器と、
前記処理容器へ二酸化炭素を含む処理対象ガスを供給する処理対象ガス供給ラインと、
前記二酸化炭素吸着材と接触することによって二酸化炭素が吸着除去された前記処理対象ガスを前記処理容器から排出する処理ガス排出ラインと、
前記処理容器へ脱着用蒸気を供給する脱着用蒸気供給ラインと、
前記二酸化炭素吸着材と接触した前記脱着用蒸気と当該二酸化炭素吸着材から離脱した二酸化炭素とを含む回収ガスを前記処理容器から排出する二酸化炭素回収ラインと、
前記処理容器に前記処理対象ガス供給ライン及び前記処理ガス排出ラインが接続された状態と、前記処理容器に前記脱着用蒸気供給ライン及び二酸化炭素回収ラインが接続された状態とに切り替える切替装置とを備え、
前記二酸化炭素回収ラインが、前記回収ガスを熱源とする熱交換器を有することを特徴としている。
【0014】
上記において、前記熱交換器が、前記処理容器と前記処理容器に形成された前記回収ガスの通路とを含み、前記二酸化炭素吸着材と前記回収ガスとを熱交換させるように構成されていてよい。
【0015】
或いは、上記において、前記熱交換器が、前記処理ガス排出ラインを流れる前記処理容器から排出された処理ガスと、前記回収ガスとを熱交換させるように構成されていてよい。
【0016】
或いは、上記において、前記処理容器へ乾燥用ガスを供給する乾燥用ガス供給ラインを更に備え、前記熱交換器が、前記乾燥用ガス供給ラインを流れる前記乾燥用ガスと前記回収ガスとを熱交換させるように構成されていてよい。
【0017】
上記二酸化炭素分離回収システムによれば、熱交換器において、回収ガスの熱エネルギー(脱着用蒸気の潜熱のエネルギーを含む)が回収されて利用されるとともに、回収ガスから水分の一部又は全部が除去される。このように、二酸化炭素分離回収システムは、回収ガスの熱エネルギーを利用するので、システムにおけるエネルギーの更なる有効利用が促進される。
【0018】
上記において、前記二酸化炭素回収ラインが、前記熱交換器よりも前記回収ガスの流れの下流側において前記回収ガス中の水分を凝縮する凝縮器と、前記凝縮器よりも前記回収ガスの流れの下流側において前記回収ガスを圧縮する圧縮ポンプとを有していてよい。
【0019】
二酸化炭素吸着材の表面に付着する凝縮水量が抑えられることによって、回収ガスに含まれる蒸気量が増えるが、二酸化炭素回収ラインに設けられた熱交換器及び凝縮器で回収ガスの水分が除去されることにより、圧縮ポンプの負荷の変動を抑えることができる。
【0020】
また、本発明の別の一態様に係る二酸化炭素分離回収方法は、
粒子状の二酸化炭素吸着材と二酸化炭素を含む処理対象ガスとを接触させて、前記処理対象ガスに含まれる二酸化炭素を前記二酸化炭素吸着材に吸着させるステップと、
二酸化炭素を吸着した前記二酸化炭素吸着材と脱着用蒸気とを接触させて、前記二酸化炭素吸着材から二酸化炭素を離脱させることにより当該前記二酸化炭素吸着材を再生するとともに、離脱した二酸化炭素を回収するステップとを含み、
前記二酸化炭素を回収するステップが、前記二酸化炭素吸着材と接触した前記脱着用蒸気と当該二酸化炭素吸着材から離脱した二酸化炭素とを含む回収ガスを熱交換器の熱源として利用することを含むことを特徴としている。
【0021】
上記において、前記熱交換器で、前記二酸化炭素吸着材と前記回収ガスとを熱交換させてよい。
【0022】
或いは、上記において、前記熱交換器で、前記二酸化炭素吸着材と接触した前記処理対象ガスと前記回収ガスとを熱交換させてよい。
【0023】
上記二酸化炭素分離回収方法によれば、熱交換器において、回収ガスの熱エネルギー(脱着用蒸気の潜熱のエネルギーを含む)が回収されて利用されるとともに、回収ガスから水分の一部又は全部が除去される。このように、二酸化炭素分離回収システムは、回収ガスの熱エネルギーを利用するので、システムにおけるエネルギーの更なる有効利用が促進される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、二酸化炭素分離回収技術において、エネルギーの更なる有効利用を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る二酸化炭素分離回収システムの全体的な構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2実施形態に係る二酸化炭素分離回収システムの全体的な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る二酸化炭素分離回収システムでは、粒子状の二酸化炭素吸着材(以下、単に「吸着材」と称する)と二酸化炭素を含む処理対象ガスとを接触させることにより、二酸化炭素を吸着材に吸着させる処理と、二酸化炭素を吸着した吸着材と脱着用蒸気とを接触させることにより、吸着材から二酸化炭素を脱着(離脱)させて吸着材を再生する処理とが行われる。吸着材から離脱した二酸化炭素は回収される。
【0027】
処理対象ガスは、例えば、燃焼排ガスである。吸着材は、例えば、アミン化合物を担持する多孔性物質である。多孔性物質としては、活性炭、活性アルミナなどを用いることができる。以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態及び第2実施形態を説明する。
【0028】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る二酸化炭素分離回収システム1Aの全体的な構成を示すブロック図である。
図1に示す二酸化炭素分離回収システム1Aは、移動層方式の複数の処理容器(吸着容器31、再生容器32、及び乾燥容器33)を備えたシステムである。
【0029】
二酸化炭素分離回収システム1Aは、吸着容器31と、再生容器32と、乾燥容器33と、処理対象ガス供給ライン5と、処理ガス排出ライン6と、脱着用蒸気供給ライン7と、二酸化炭素回収ライン8と、乾燥用ガス供給ライン4と、乾燥用ガス排出ライン9と、移送装置12とを備える。
【0030】
吸着容器31には、移送装置12によって搬送されてくる吸着材10が、上部入口から所定の供給速度で供給される。吸着容器31の上方に吸着材10を一時的に収容するホッパ(図示せず)を設け、このホッパを介して吸着容器31へ吸着材10が供給されてもよい。吸着容器31では、吸着材10が上部入口から供給されるとともに下部出口から排出されることによって、吸着材10が上から下へ向かって所定の速度で移動する。
【0031】
吸着容器31の下部には、処理対象ガス供給ライン5が接続されている。処理対象ガス供給ライン5は、処理対象ガス源51から吸着容器31へ送給される処理対象ガスが流れる流路50と、この流路50に設けられた送風機52及び減温塔53とを含む。二酸化炭素を含む処理対象ガスは、処理対象ガス源51から送風機52によって吸着容器31へ送られる。減温塔53では、処理対象ガスが二酸化炭素吸着反応に適切な温度まで冷却される。
【0032】
吸着容器31には、上向きに流れる処理対象ガスと下向きに移動する吸着材10とが連続的に接触する向流式の移動層が形成される。処理対象ガスと吸着材10とが接触すると、吸着材10が処理対象ガス中の二酸化炭素を選択的に吸着する。その際の吸着材10の温度は、例えば、40℃である。
【0033】
吸着容器31の上部には、処理ガス排出ライン6が接続されている。処理ガス排出ライン6は、吸着容器31から排出された処理ガスが流れる流路60と、この流路60に設けられた加温器61及びフィルタ62とを含む。吸着材10と接触することによって二酸化炭素が吸着除去された処理対象ガス(即ち、処理ガス)は、処理ガス排出ライン6へ流れ出て、加温器61で白煙抑制の為に加温され、フィルタ62で粉塵が除去されたのち、大気へ放出される。
【0034】
吸着容器31の下方には、再生容器32が配置されており、吸着容器31の下部出口と再生容器32の上部入口との間は、ロックホッパ等の圧力切替装置(図示略)を介して接続されている。再生容器32には、吸着容器31から排出された吸着材10が上部入口から自重によって流入する。再生容器32では、二酸化炭素を吸着した吸着材10が上から下へ向かって所定の速度で移動する。
【0035】
再生容器32の下部には、脱着用蒸気供給ライン7が接続されている。脱着用蒸気供給ライン7は、蒸気発生装置71と、蒸気発生装置71から再生容器32へ脱着用蒸気を送る流路70とを含む。蒸気発生装置71で生成された脱着用蒸気は、再生容器32の下部へ供給される。再生容器32には、上向きに流れる脱着用蒸気と下向きに移動する吸着材10とが連続的に接触する向流式の移動層が形成される。
【0036】
再生容器32において、吸着材10と接触する脱着用蒸気の二酸化炭素分圧(二酸化炭素濃度)は、吸着材10の表面の二酸化炭素分圧(二酸化炭素濃度)と比較して著しく低い。この二酸化炭素分圧の差が駆動力となって、吸着材10に吸着されている二酸化炭素は脱着用蒸気中に拡散する。このように、脱着用蒸気の二酸化炭素分圧と吸着材10の表面の二酸化炭素分圧との差を駆動力として吸着材10から二酸化炭素が離脱し、吸着材10が再生される。
【0037】
再生容器32の上部には、二酸化炭素回収ライン8が接続されている。二酸化炭素回収ライン8は、二酸化炭素ホルダ83と、再生容器32から二酸化炭素ホルダ83へ送られる回収ガスが流れる流路80と、流路80に設けられた熱交換器86、凝縮器81及び圧縮ポンプ82とを含む。回収ガスは、吸着材10から離脱した二酸化炭素と脱着用蒸気とを含むガスである。回収ガスは、圧縮ポンプ82による強制排気によって、再生容器32から二酸化炭素回収ライン8へ流出する。回収ガスに含まれる水分は凝縮器81で凝縮除去される。水分が除去された回収ガスは、圧縮ポンプ82で圧縮されることによって、高濃度の二酸化炭素となって、二酸化炭素ホルダ83に回収される。
【0038】
なお、再生容器32内は、圧縮ポンプ82によって強制排気されることによって、所定圧力に保持されている。つまり、吸着材10と接触する脱着用蒸気の圧力は、圧縮ポンプ82の稼働によって所定圧力に調整される。
【0039】
再生容器32の下方には、乾燥容器33が配置されており、再生容器32の下部出口と乾燥容器33の上部入口との間は、ロックホッパ等の圧力切替装置(図示略)を介して接続されている。乾燥容器33には、再生容器32から排出された吸着材10が上部入口から自重によって流入する。乾燥容器33では、再生された吸着材10が上から下へ向かって所定の速度で移動する。
【0040】
乾燥容器33の下部には、乾燥用ガス供給ライン4が接続されている。乾燥用ガス供給ライン4は、送風機41から乾燥容器33へ送給される乾燥用ガスが流れる流路40と、この流路40に設けられた凝縮器42及び加温器43とを含む。送風機41から圧送される乾燥用ガスは、凝縮器42で乾燥され、加温器43で乾燥に適した温度まで加温されてから、乾燥容器33へ送られる。
【0041】
乾燥容器33には、上向きに流れる乾燥用ガスと下向きに移動する吸着材10とが連続的に接触する向流式の移動層が形成される。乾燥用ガスと吸着材10とが接触すると、吸着材10の表面に付着している水分が蒸発し、吸着材10が乾燥される。
【0042】
吸着容器31の上部には、乾燥用ガス排出ライン9が接続されている。乾燥用ガス排出ライン9は、乾燥容器33から排出された乾燥用ガスが流れる流路90と、この流路90に設けられた加温器91及びフィルタ92とを含む。吸着材10と接触した乾燥用ガスは、乾燥用ガス排出ライン9へ流れ出て、加温器91で白煙抑制の為に加温され、フィルタ92で粉塵が除去されたのち、大気へ放出される。
【0043】
乾燥容器33の下部出口から排出された吸着材10は、移送装置12によって吸着容器31の入口へ戻される。移送装置12は、例えば、コンベヤであってよい。移送装置12による移送中に、吸着材10の温度は放熱により低下し、吸着容器31における二酸化炭素の吸着温度である約40℃まで低下する。但し、移送装置12の搬送中に吸着材10が吸着温度まで低下しない場合には、移送装置12の途中に冷却槽(図示せず)が設けられてもよい。
【0044】
以上の通り、二酸化炭素分離回収システム1Aは、粒子状の吸着材10が流入した吸着容器31と、吸着容器31へ二酸化炭素を含む処理対象ガスを供給する処理対象ガス供給ライン5と、吸着材10と接触することによって二酸化炭素が吸着除去された処理対象ガスを吸着容器31から排出する処理ガス排出ライン6と、吸着容器31で二酸化炭素を吸着した吸着材10が流入した再生容器32と、再生容器32へ脱着用蒸気を供給する脱着用蒸気供給ライン7と、吸着材10と接触することによって当該吸着材10から離脱した二酸化炭素を含んだ脱着用蒸気を再生容器32から排出する二酸化炭素回収ライン8と、再生容器32で二酸化炭素が離脱した吸着材10を吸着容器31へ移送する移送装置12とを備える。
【0045】
上記構成の二酸化炭素分離回収システム1Aで実施される二酸化炭素分離回収方法は、粒子状の吸着材10と二酸化炭素を含む処理対象ガスとを接触させて、処理対象ガスに含まれる二酸化炭素を吸着材10に吸着させるステップと、二酸化炭素を吸着した吸着材10と脱着用蒸気とを接触させて、吸着材10から二酸化炭素を離脱させることにより当該吸着材10を再生するとともに、離脱した二酸化炭素を回収するステップとを含む。
【0046】
なお、二酸化炭素分離回収システム1Aは、再生容器32と移送装置12との間に、再生容器32で二酸化炭素が離脱した吸着材10が流入した乾燥容器33と、乾燥容器33へ乾燥用ガスを供給する乾燥用ガス供給ライン4と、乾燥容器33を通じた乾燥用ガスを当該乾燥容器33から排出する乾燥用ガス排出ライン9とを更に備えるが、後述するように、これらは省略することも可能である。
【0047】
本実施形態において、脱着用蒸気は過熱蒸気である。より詳細には、脱着用蒸気が、脱着用蒸気と接触する吸着材10の温度での飽和水蒸気圧以下の圧力で、且つ、脱着用蒸気と接触する吸着材10の温度よりも高温の過熱蒸気である。そのために、再生容器32内の脱着用蒸気の圧力は、脱着用蒸気と接触する吸着材10の温度での飽和水蒸気圧以下に維持されている。更に、脱着用蒸気供給ライン7によって再生容器32へ送られる脱着用蒸気は、脱着用蒸気と接触する吸着材10の温度よりも高温である。但し、脱着用蒸気はこれに限定されず、飽和蒸気や、常圧の過熱蒸気が用いられてもよい。
【0048】
なお、「脱着用蒸気と接触する吸着材10の温度」は、再生容器32内の吸着材10の平均温度、再生容器32の上部入口の吸着材10の温度、又は、再生容器32の上下中間位置の吸着材10の温度であってよい。また、脱着用蒸気の飽和温度の下限値は、特に限定されるわけではないが、吸着材10の乾燥効率を考慮して、脱着用蒸気と接触する吸着材10の温度よりも15℃程度低い温度に設定されてよい。
【0049】
上記二酸化炭素分離回収システム1Aでは、脱着用蒸気供給ライン7を通じて再生容器32に供給された水分は、吸着材10の表面で凝縮せずに、その殆どが二酸化炭素回収ライン8に流出する。そのため、二酸化炭素回収ライン8に流入する回収ガスには多くの水蒸気が含まれる。そこで、二酸化炭素回収ライン8には、回収ガスを高熱源とする熱交換器86と、回収ガス中の水分を凝縮する凝縮器81とが設けられている。
【0050】
凝縮器81は、回収ガス中の水分を除去するともに、回収ガスの温度を圧縮ポンプ82での圧縮に適した温度(例えば、約10℃)まで低下させる。このように、回収ガス中の水蒸気の一部又は全部が除去される結果、二酸化炭素ホルダ83に回収される回収ガスの二酸化炭素濃度を高めることができる。更に、水分が低減され且つ冷却された回収ガスが圧縮ポンプ82へ流入するので、圧縮ポンプ82の負荷変動を抑え、安定した運転を行うことができる。
【0051】
再生容器32から排出される回収ガスの温度と圧縮ポンプ82に流入する回収ガスの温度との間には十分な差が有り、且つ、回収ガスに多くの蒸気が含まれる。そこで、再生容器32から排出された回収ガスを、凝縮器81へ流入させる前に、熱交換器86を通すことで、再生容器32の排熱(例えば、約60~70℃)は有効に利用する。熱交換器86は、回収ガスを高熱源とし、回収ガスの熱エネルギーを冷熱媒体に回収させるものである。熱交換器86では、回収ガスに含まれる水蒸気の一部又は全部が水に変化するので、上記の回収ガスの熱エネルギーには蒸気の潜熱のエネルギーが含まれる。なお、熱交換器86においても、回収ガスから水分を除去することができる。
【0052】
図2は、熱交換器86の第1例を示す図である。
図2に示すように、熱交換器86は、再生容器32を保温する熱交換器86Aとして構成されていてよい。第1例に係る熱交換器86Aは、再生容器32と、再生容器32に形成された回収ガスの通路38とを含む。通路38は、再生容器32の外周を包むジャケット式の通路であってよい。この熱交換器86Aでは、再生容器32(及び、再生容器32内の吸着材10)と回収ガスとの熱交換によって、再生容器32が保温される。
【0053】
図3は、熱交換器86の第2例を示す図である。
図3に示すように、熱交換器86は、処理ガス排出ライン6に設けられた加温器61(熱交換器86B)として構成されていてよい。加温器61は、二酸化炭素回収ライン8の回収ガスが流れるシェルと、処理ガス排出ライン6の処理ガスが流れるチューブとを含む。この加温器61では、処理ガス排出ライン6を流れる処理ガスと回収ガスとの熱交換によって、処理ガスが加温される。
【0054】
なお、
図3では、処理ガス排出ライン6に設けられた加温器61を熱交換器86Bの一例として示しているが、加温器43及び加温器91も加温器61と同様に熱交換器86Bとして構成されてよい。即ち、熱交換器86が、乾燥用ガス供給ライン4を流れる乾燥用ガスと回収ガスとを熱交換させる熱交換器として構成された加温器43であってよい。或いは、熱交換器86が、乾燥用ガス排出ライン9を流れる乾燥用ガスと回収ガスとを熱交換させる熱交換器として構成された加温器91であってよい。
【0055】
図4は、熱交換器86の第3例を示す図である。
図4に示すように、熱交換器86は、冷熱媒体88と回収ガスとを熱交換させる熱交換器86Cであってよい。このような熱交換器86Cは、例えば、二酸化炭素回収ライン8の回収ガスが流れるシェルと、冷熱媒体88が流れるチューブとを含む。この熱交換器86Cでは、冷熱媒体88が回収ガスの熱エネルギーを回収する。冷熱媒体88によって回収された熱エネルギーは、例えば、再生容器32の保温や、加温器43,61,91で流体の加温のために利用されてもよいし、それ以外の機器で利用されてもよい。
【0056】
二酸化炭素分離回収システム1Aは、上記の第1~3例に係る態様の熱交換器86A,86B,86Cのうち少なくとも1つを備えている。このように、二酸化炭素分離回収システム1Aでは、回収ガスの熱エネルギー(蒸気の潜熱のエネルギーを含む)を回収して利用するので、システムにおけるエネルギーの更なる有効利用が促進される。
【0057】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
図5は、本発明の第2実施形態に係る二酸化炭素分離回収システム1Bの全体的な構成を示すブロック図である。なお、第2実施形態の説明においては、前述の第1実施形態と同一又は類似の部材には、図面に同一の符号を付すことによって詳細な説明を省略する。
【0058】
図5に示す二酸化炭素分離回収システム1Bは、固定層方式の処理容器30を備えたシステムである。二酸化炭素分離回収システム1Bでは、単一の処理容器30で、二酸化炭素を吸着材10に吸着させる処理と、吸着材10から二酸化炭素を離脱させて吸着材10を再生する処理と、吸着材10を乾燥させる処理とが行われる。
【0059】
二酸化炭素分離回収システム1Bは、粒子状の吸着材10が充填された処理容器30と、処理容器30へ二酸化炭素を含む処理対象ガスを供給する処理対象ガス供給ライン5と、吸着材10と接触することによって二酸化炭素が吸着除去された処理対象ガスを吸着容器31から排出する処理ガス排出ライン6と、処理容器30へ脱着用蒸気を供給する脱着用蒸気供給ライン7と、吸着材10と接触した脱着用蒸気と当該吸着材10から離脱した二酸化炭素とを含む回収ガスを処理容器30から排出する二酸化炭素回収ライン8とを備える。二酸化炭素分離回収システム1Bは、処理容器30へ乾燥用ガスを供給する乾燥用ガス供給ライン4を更に備えるが、これは省略されてもよい。
【0060】
処理対象ガス供給ライン5、脱着用蒸気供給ライン7、及び乾燥用ガス供給ライン4は、処理容器30の下部と選択的に接続される。また、処理ガス排出ライン6及び二酸化炭素回収ライン8は、処理容器30の上部と選択的に接続される。
【0061】
二酸化炭素回収ライン8に設けられた熱交換器86は、例えば、処理容器30と処理容器30に形成された回収ガスの通路とを含み、処理容器30(及び処理容器30内の吸着材10)と回収ガスとを熱交換させる熱交換器(
図2の熱交換器86Aを参照)であってよい。
【0062】
熱交換器86は、例えば、処理ガス排出ライン6を流れる処理容器30から排出された処理ガスと、回収ガスとを熱交換させるように構成された熱交換器(
図3の熱交換器86Bを参照)、即ち、加温器61であってよい。
【0063】
熱交換器86は、例えば、乾燥用ガス供給ライン4を流れる乾燥用ガスと回収ガスとを熱交換させるように構成された熱交換器、即ち、加温器43であってよい。
【0064】
熱交換器86は、例えば、冷熱媒体と回収ガスとを熱交換させるように構成された熱交換器(
図4の熱交換器86Cを参照)であってよい。
【0065】
二酸化炭素分離回収システム1Bは、処理容器30に処理対象ガス供給ライン5及び処理ガス排出ライン6が接続された状態と、処理容器30に脱着用蒸気供給ライン7及び二酸化炭素回収ライン8が接続された状態と、処理容器30に乾燥用ガス供給ライン4及び処理ガス排出ライン6が接続された状態とに切り替える切替装置20を、更に備える。
【0066】
本実施形態に係る切替装置20は、処理容器30と処理対象ガス供給ライン5、処理ガス排出ライン6、脱着用蒸気供給ライン7、二酸化炭素回収ライン8、及び乾燥用ガス供給ライン4の各ラインとの接続部に設けられた切替弁21,22,23,24,25と、この切替弁21,22,23,24,25を開閉動作させる切替制御装置(図示略)とを含む。但し、切替装置20の態様は、本実施形態に限定されない。例えば、切替弁21,22,23,24,25に代えて、手動切替弁が設けられてもよい。
【0067】
上記構成の二酸化炭素分離回収システム1Bでは、処理容器30に処理対象ガス供給ライン5及び処理ガス排出ライン6が接続された状態として、処理容器30内で吸着材10と処理対象ガスとを接触させることにより、処理対象ガス中の二酸化炭素を吸着材10に吸着させる処理が行われる。二酸化炭素が除去された処理ガスは、処理ガス排出ライン6を通じて系外へ排出される。
【0068】
そして、処理容器30に脱着用蒸気供給ライン7及び二酸化炭素回収ライン8が接続された状態に切り替えて、二酸化炭素を吸着した吸着材10と脱着用蒸気とを接触させることにより、吸着材10から二酸化炭素を離脱させて吸着材10を再生する処理が行われる。吸着材から離脱した二酸化炭素を含む回収ガスは、処理容器30から二酸化炭素回収ライン8へ排出され、熱交換器86で回収ガスの熱エネルギーが利用され、凝縮器81で含まれる水分が凝縮除去され、圧縮ポンプ82で圧縮されて高濃度の二酸化炭素とされて、二酸化炭素ホルダ83に回収される。
【0069】
更に、処理容器30に乾燥用ガス供給ライン4及び処理ガス排出ライン6が接続された状態に切り替えて、再生された吸着材10と乾燥用ガスとを接触させることにより、吸着材10を乾燥させる処理が行われる。処理容器30を通じた乾燥用ガスは、処理ガス排出ライン6を通じて系外へ排出される。
【0070】
この第2実施形態に係る二酸化炭素分離回収システム1Bにおいても、第1実施形態に係る二酸化炭素分離回収システム1Aと同様に、脱着用蒸気は、当該脱着用蒸気と接触する吸着材10の温度での飽和水蒸気圧以下の圧力で、脱着用蒸気と接触する吸着材10の温度よりも高温の過熱蒸気である。そのために、再生処理時の処理容器30内の圧力は、圧縮ポンプ82による処理容器30内の強制排気によって、脱着用蒸気と接触する吸着材10の温度での飽和水蒸気圧以下に保持される。なお、「脱着用蒸気と接触する吸着材10の温度」は、処理容器30内の吸着材10の平均温度、処理容器30の上部入口の吸着材10の温度、又は、処理容器30の上下中間位置の吸着材10の温度であってよい。但し、脱着用蒸気はこれに限定されず、飽和蒸気や、常圧の過熱蒸気が用いられてもよい。
【0071】
また、この二酸化炭素分離回収システム1Bにおいても、脱着用蒸気供給ライン7を通じて再生容器32に供給された水分は、吸着材10の表面で凝縮せずに、その殆どが二酸化炭素回収ライン8に流出する。そのため、二酸化炭素回収ライン8に流入する回収ガスには多くの水蒸気が含まれる。蒸気の潜熱のエネルギーを含む回収ガスの熱エネルギーは、熱交換器86で回収されて利用される。このように、二酸化炭素分離回収システム1Bでは、システムにおけるエネルギーの更なる有効利用が促進される。
【0072】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明の思想を逸脱しない範囲で、上記実施形態の具体的な構造及び/又は機能の詳細を変更したものも本発明に含まれ得る。
【0073】
例えば、上記第1及び第2実施形態に係る二酸化炭素分離回収システム1A,1Bでは、脱着用蒸気として、過熱蒸気を利用した。但し、脱着用蒸気はこれに限定されず、飽和蒸気や、常圧の過熱蒸気が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1A,1B :二酸化炭素分離回収システム
4 :乾燥用ガス供給ライン
5 :処理対象ガス供給ライン
6 :処理ガス排出ライン
7 :脱着用蒸気供給ライン
8 :二酸化炭素回収ライン
9 :乾燥用ガス排出ライン
10 :吸着材
12 :移送装置
20 :切替装置
21,22,23,24,25 :切替弁
30 :処理容器
31 :吸着容器
32 :再生容器
33 :乾燥容器
38 :通路
40 :流路
41 :送風機
42 :凝縮器
43 :加温器
50 :流路
51 :処理対象ガス源
52 :送風機
53 :減温塔
60 :流路
61 :加温器
62 :フィルタ
70 :流路
71 :蒸気発生装置
80 :流路
81 :凝縮器
82 :圧縮ポンプ
83 :二酸化炭素ホルダ
86,86A~C :熱交換器
90 :流路
91 :加温器
92 :フィルタ