(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】不整地走行用のタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/03 20060101AFI20220817BHJP
B60C 11/11 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
B60C11/03 300E
B60C11/03 E
B60C11/03 D
B60C11/11 Z
(21)【出願番号】P 2018145262
(22)【出願日】2018-08-01
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】日南 有紀子
【審査官】弘實 由美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-035537(JP,A)
【文献】特開2008-254573(JP,A)
【文献】特開2009-196425(JP,A)
【文献】中国実用新案第203485682(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有する不整地走行用のタイヤであって、
前記トレッド部は、複数のブロックと、前記複数のブロックの間を第1トレッド端から第2トレッド端まで延びるトレッド横断溝とが設けられており、
トレッド展開視において、前記トレッド横断溝は、少なくとも10mm以上の幅で前記第1トレッド端から前記第2トレッド端まで一直線状に延びる排土空間を包含しており、
前記排土空間は、タイヤ軸方向に対して30~50度で傾いて
おり、
前記トレッド部は、前記第1トレッド端からタイヤ軸方向内側へトレッド展開幅の1/6の展開幅を有するショルダー領域と、前記ショルダー領域のタイヤ軸方向内側に位置し、かつ、前記トレッド展開幅の1/6の展開幅を有するミドル領域とを含み、
前記複数のブロックは、前記ショルダー領域に複数配されるショルダーブロックと、前記ミドル領域に複数配され、かつ、前記ショルダーブロックとショルダータイバーで連結されるミドルブロックとを含み、
前記ショルダータイバーは、前記ショルダーブロックの一つから、前記ミドルブロックの異なる2つにそれぞれ延びる第1ショルダータイバーを含む、
不整地走行用のタイヤ。
【請求項2】
前記トレッド横断溝は、タイヤ軸方向に対して一方側に傾斜する第1溝と、前記第1溝と逆向きに傾斜する第2溝とを含む、請求項1記載の不整地走行用のタイヤ。
【請求項3】
前記第1溝と前記第2溝とは、タイヤ周方向に交互に並ぶ、請求項2記載の不整地走行用のタイヤ。
【請求項4】
前記ショルダータイバーは、前記ミドルブロックの一つから、前記ショルダーブロックの異なる2つにそれぞれ延びる第2ショルダータイバーを含む、請求項1ないし3のいずれかに記載の不整地走行用のタイヤ。
【請求項5】
前記第1ショルダータイバーと前記第2ショルダータイバーとがタイヤ周方向に交互に配置されている、請求項4記載の不整地走行用のタイヤ。
【請求項6】
前記ショルダータイバーのなす角度は、90度未満である、請求項
1ないし5のいずれかに記載の不整地走行用のタイヤ。
【請求項7】
前記ショルダーブロック及び前記ミドルブロックは、各ブロックをタイヤ軸方向に2等分する線分とタイヤ周方向に2等分する線分とによってそれぞれ4つのブロック部に仮想区分され、
前記ショルダータイバーは、前記ショルダーブロックと前記ミドルブロックとの間の距離が最短となるように前記ブロック部に連なる、請求項
1ないし6のいずれかに記載の不整地走行用のタイヤ。
【請求項8】
前記ミドルブロック及び前記ショルダーブロックの少なくとも一つは、第1頂面と、前記第1頂面よりもブロック高さが小さい第2頂面とを含む段差状踏面を含む、請求項
1ないし7のいずれかに記載の不整地走行用のタイヤ。
【請求項9】
前記トレッド部は、前記ミドル領域のタイヤ軸方向内側に位置し、かつ、前記トレッド展開幅の1/3の展開幅を有するクラウン領域を含み、
前記複数のブロックは、前記クラウン領域に複数配されるクラウンブロックを含み、
前記クラウン領域及び前記ミドル領域では、タイヤ軸方向に亘ってタイヤ周方向線上に前記クラウンブロック又は前記ミドルブロックが位置する、請求項
1ないし8のいずれかに記載の不整地走行用のタイヤ。
【請求項10】
前記トレッド部は、前記クラウン領域の前記第2トレッド端側に位置し、かつ、前記トレッド展開幅の1/6の展開幅を有するミドル領域を含み、
前記クラウンブロックは、前記クラウン領域内に配される第1クラウンブロック、前記クラウン領域と前記第1トレッド端側の前記ミドル領域とに跨る第2クラウンブロック、及び、前記クラウン領域と前記第2トレッド端側の前記ミドル領域とに跨る第3クラウンブロックを含み、
前記第1クラウンブロックと前記第2クラウンブロックと前記第3クラウンブロックとからなるクラウンブロック群が、タイヤ周方向に並ぶ、請求項
9記載の不整地走行用のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不整地走行用のタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、トレッド部に、複数のブロックを設けた不整地走行用の空気入りタイヤが記載されている。このような空気入りタイヤは、複数のブロックが、砂地や泥濘地等の軟弱路に食い込み、前記ブロックのエッジにより、トラクションや旋回力を得て操縦安定性を高める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、軟弱路での操縦安定性能を、さらに高めることが求められている。
【0005】
本発明は、以上のような実情に鑑み案出されたもので、軟弱路での操縦安定性能を高め得る不整地走行用のタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有する不整地走行用のタイヤであって、前記トレッド部は、複数のブロックと、前記複数のブロックの間を第1トレッド端から第2トレッド端まで延びるトレッド横断溝とが設けられており、トレッド展開視において、前記トレッド横断溝は、少なくとも10mm以上の幅で前記第1トレッド端から前記第2トレッド端まで一直線状に延びる排土空間を包含しており、前記排土空間は、タイヤ軸方向に対して30~50度で傾いている。
【0007】
本発明に係る不整地走行用のタイヤは、前記トレッド横断溝が、タイヤ軸方向に対して一方側に傾斜する第1溝と、前記第1溝と逆向きに傾斜する第2溝とを含むのが望ましい。
【0008】
本発明に係る不整地走行用のタイヤは、前記第1溝と前記第2溝とが、タイヤ周方向に交互に並ぶのが望ましい。
【0009】
本発明に係る不整地走行用のタイヤは、前記トレッド部が、前記第1トレッド端からタイヤ軸方向内側へトレッド展開幅の1/6の展開幅を有するショルダー領域と、前記ショルダー領域のタイヤ軸方向内側に位置し、かつ、前記トレッド展開幅の1/6の展開幅を有するミドル領域とを含み、前記複数のブロックは、前記ショルダー領域に複数配されるショルダーブロックと、前記ミドル領域に複数配され、かつ、前記ショルダーブロックとショルダータイバーで連結されるミドルブロックとを含み、前記ショルダータイバーは、前記ショルダーブロックの一つから、前記ミドルブロックの異なる2つにそれぞれ延びる第1ショルダータイバーを含むのが望ましい。
【0010】
本発明に係る不整地走行用のタイヤは、前記ショルダータイバーが、前記ミドルブロックの一つから、前記ショルダーブロックの異なる2つにそれぞれ延びる第2ショルダータイバーを含むのが望ましい。
【0011】
本発明に係る不整地走行用のタイヤは、前記第1ショルダータイバーと前記第2ショルダータイバーとがタイヤ周方向に交互に配置されているのが望ましい。
【0012】
本発明に係る不整地走行用のタイヤは、前記ショルダータイバーのなす角度が、90度未満であるのが望ましい。
【0013】
本発明に係る不整地走行用のタイヤは、前記ショルダーブロック及び前記ミドルブロックが、各ブロックをタイヤ軸方向に2等分する線分とタイヤ周方向に2等分する線分とによってそれぞれ4つのブロック部に仮想区分され、前記ショルダータイバーは、前記ショルダーブロックと前記ミドルブロックとの間の距離が最短となるように前記ブロック部に連なるのが望ましい。
【0014】
本発明に係る不整地走行用のタイヤは、前記ミドルブロック及び前記ショルダーブロックの少なくとも一つが、第1頂面と、前記第1頂面よりもブロック高さが小さい第2頂面とを含む段差状踏面を含むのが望ましい。
【0015】
本発明に係る不整地走行用のタイヤは、前記トレッド部が、前記ミドル領域のタイヤ軸方向内側に位置し、かつ、前記トレッド展開幅の1/3の展開幅を有するクラウン領域を含み、前記複数のブロックは、前記クラウン領域に複数配されるクラウンブロックを含み、前記クラウン領域及び前記ミドル領域では、タイヤ軸方向に亘ってタイヤ周方向線上に前記クラウンブロック又は前記ミドルブロックが位置するのが望ましい。
【0016】
本発明に係る不整地走行用のタイヤは、前記トレッド部が、前記クラウン領域の前記第2トレッド端側に位置し、かつ、前記トレッド展開幅の1/6の展開幅を有するミドル領域を含み、前記クラウンブロックは、前記クラウン領域内に配される第1クラウンブロック、前記クラウン領域と前記第1トレッド端側の前記ミドル領域とに跨る第2クラウンブロック、及び、前記クラウン領域と前記第2トレッド端側の前記ミドル領域とに跨る第3クラウンブロックを含み、前記第1クラウンブロックと前記第2クラウンブロックと前記第3クラウンブロックとからなるクラウンブロック群が、タイヤ周方向に並ぶのが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の不整地走行用のタイヤでは、トレッド部にトレッド横断溝が設けられる。前記トレッド横断溝は、少なくとも10mm以上の幅で第1トレッド端から第2トレッド端まで一直線状に延びる排土空間を包含している。このようなトレッド横断溝は、その排土空間内に大きな砂土の塊を形成することができる。このため、軟弱路に対するせん断力が高められるので、軟質路での操縦安定性能が向上する。
【0018】
前記排土空間は、タイヤ軸方向に対して30度以上で傾いている。このような排土空間は、タイヤ周方向成分を有するので、タイヤの転動を利用して、排土空間内の砂土が第1トレッド端側又は第2トレッド端側からスムーズに排出される。また、前記排土空間は、タイヤ軸方向に対して50度以下で傾いている。これにより、排土空間内の砂土に対する高いせん断力が発揮されるので、軟弱路での操縦安定性能がさらに向上する。
【0019】
したがって、本発明の不整地走行用のタイヤは、優れた軟弱路での操縦安定性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の不整地走行用のタイヤの一実施形態を示す横断面図である。
【
図2】
図1のトレッド部のトレッドパターンを示す展開図である。
【
図3】
図2のミドル領域及びショルダー領域の拡大図である。
【
図5】
図2のミドル領域及びショルダー領域の拡大図である。
【
図6】(a)は、
図3のミドルブロックの拡大斜視図であり、(b)は、(a)のB-B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本発明の一実施形態を示す不整地走行用のタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある。)1の正規状態における横断面図である。本実施形態では、好ましいタイヤ1として自動二輪車用が示される。なお、本発明は、自動二輪車用に限定されるものではなく、例えば、乗用車用、重荷重用や他のカテゴリーのタイヤ1にも採用される。
図2は、タイヤ1のトレッド部2のトレッドパターンを示す展開図である。
図1は、
図2のA-A線断面図である。
【0022】
「正規状態」は、タイヤ1が正規リム(図示省略)にリム組みされ、かつ、正規内圧が充填された無負荷の状態である。本明細書では特に断りがない限り、タイヤ1の各部の寸法は、正規状態で測定された値である。
【0023】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0024】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0025】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1のトレッド部2は、横断面において、その外面がタイヤ半径方向外側に凸の円弧状に湾曲している。
【0026】
本実施形態のタイヤ1の内部には、カーカス5及びベルト層6等が設けられている。これらには、公知の構成が適宜採用される。
【0027】
図2に示されるように、トレッド部2は、クラウン領域Crとミドル領域Mとショルダー領域Sとを含んで区分される。クラウン領域Crは、タイヤ赤道Cに中心を有し、かつ、トレッド展開幅TWeの1/3の展開幅を有している。ミドル領域Mは、クラウン領域Crの両外側に位置し、かつ、トレッド展開幅TWeの1/6の展開幅を有している。ショルダー領域Sは、ミドル領域Mの両外側に位置し、かつ、トレッド展開幅TWeの1/6の展開幅を有している。
【0028】
トレッド展開幅TWeは、トレッド部2を平面に展開したときの第1トレッド端Te1、第2トレッド端Te2間のタイヤ軸方向の距離である。第1トレッド端Te1及び第2トレッド端Te2は、トレッド部2の最もタイヤ軸方向外側での接地位置を意味する。
図2では、第1トレッド端Te1が左側、第2トレッド端Te2が右側に位置しているが、これらの配置は逆でも良い。
【0029】
また、本明細書では、第1トレッド端Te1側のミドル領域Mを第1ミドル領域M1という場合があり、第2トレッド端Te2側のミドル領域Mを第2ミドル領域M2という場合がある。また、第1トレッド端Te1側のショルダー領域Sを第1ショルダー領域S1という場合があり、第2トレッド端Te2側のショルダー領域Sを第2ショルダー領域S2という場合がある。
【0030】
本実施形態のトレッド部2は、複数のブロック7と、複数のブロック7をそれぞれ区画するトレッド溝8とを含んでいる。ブロック7は、トレッド溝8の溝底8sから隆起している。トレッド溝8は、本実施形態では、その溝底8sが、カーカス5に沿った滑らかな面で形成される。ブロック7は、溝底8sからのブロック高さH(
図1に示す)が、6~19mm程度が望ましい。
【0031】
本実施形態のトレッド溝8は、第1トレッド端Te1から第2トレッド端Te2まで延びるトレッド横断溝9を含んでいる。トレッド横断溝9は、本実施形態では、第1トレッド端Te1から第2トレッド端Te2まで一直線状に延びる排土空間9Aを包含している。排土空間9Aは、少なくとも10mm以上の幅w1で形成されている。このようなトレッド横断溝9は、その排土空間9A内に大きな砂土の塊を形成することができる。このため、軟弱路に対するせん断力が高められるので、軟質路での操縦安定性能が向上する。
【0032】
排土空間9Aは、タイヤ軸方向に対して30~50度の角度α1で傾斜している。このように角度α1が30度以上の排土空間9Aは、タイヤ周方向成分を有するので、タイヤの転動を利用して、排土空間9A内の砂土が第1トレッド端Te1側又は第2トレッド端Te2側からスムーズに排出される。また、角度α1が50度以下の排土空間9Aは、排土空間9A内の砂土に対する高いせん断力を発揮するので、軟弱路での操縦安定性能をさらに向上する。
【0033】
このような排土空間9Aには、トレッド溝8の溝底8sの一部を隆起させた、後述するタイバーが形成さないのが望ましい。これにより、砂土の塊の容積を確保できるので、軟弱路に対するせん断力が高く維持される。
【0034】
トレッド横断溝9は、例えば、タイヤ軸方向に対して一方側に傾斜する第1溝9aと、第1溝9aと逆向きに傾斜する第2溝9bとを含んでいる。これにより、第1溝9a及び第2溝9bの砂土の塊に作用する逆向きの横力が相殺されるので、走行時の安定性能が向上する。
【0035】
第1溝9aと第2溝9bとは、本実施形態では、タイヤ周方向に交互に並んでいる。これにより、上述の作用が効果的に発揮される。
【0036】
クラウン領域Cr、ミドル領域M及びショルダー領域Sには、それぞれクラウンブロック11、ミドルブロック12及びショルダーブロック13が複数配置されている。クラウンブロック11は、踏面の図心がクラウン領域Cr内に位置している。ミドルブロック12は、踏面の図心がいずれかのミドル領域M内に位置している。ショルダーブロック13は、踏面の図心がいずれかのショルダー領域S内に位置している。なお、各ブロック11~13の踏面に溝等の凹部が設けられる場合は、その凹部を埋めて得られる仮想踏面の図心が採用される。
【0037】
ミドルブロック12及びショルダーブロック13は、それぞれ、その踏面12a、13aをタイヤ軸方向に2等分する線分n1とタイヤ周方向に2等分する線分n2とによってそれぞれ4つのブロック部b1~b4に仮想区分される。
図2に示されるように、本明細書では、便宜上、第1ミドル領域M1及び第1ショルダー領域S1に配されたブロック12、13は、第1トレッド端Te1側かつ上側のブロック部がb1とされる。また、第2ミドル領域M2及び第2ショルダー領域S2に配されたブロック12、13は、第2トレッド端Te2側かつ上側のブロック部がb1とされる。以下、各ブロック12、13は、ブロック部b1の下側のブロック部がb2、ブロック部b2のタイヤ赤道C側のブロック部がb3、ブロック部b3の上側のブロック部がb4とされる。
【0038】
図3は、第1ミドル領域M1及び第1ショルダー領域S1の拡大図である。
図3に示されるように、ミドルブロック12とショルダーブロック13とは、本実施形態では、ショルダータイバー15で連結されている。ショルダータイバー15は、ミドルブロック12とショルダーブロック13との剛性を高める。これにより、軟弱路に対するせん断力が高められるので、軟弱路での優れた操縦安定性能が発揮される。さらに、剛性が高められた各ブロック12及び13は、硬質路との接地圧を高めることができるので、硬質路での操縦安定性能を向上する。なお、第2ミドル領域M2及び第2ショルダー領域S2も、第1ミドル領域M1及び第1ショルダー領域S1と同様に形成されるので、その説明が省略される。
【0039】
本実施形態のショルダータイバー15は、第1ショルダータイバー16と第2ショルダータイバー17とを含んでいる。第1ショルダータイバー16は、ショルダーブロック13の一つから、ミドルブロック12の異なる2つにそれぞれ延びている。第2ショルダータイバー17は、ミドルブロック12の一つから、ショルダーブロック13の異なる2つにそれぞれ延びている。
【0040】
第1ショルダータイバー16は、本実施形態では、ショルダーブロック13と、このショルダーブロック13とタイヤ周方向の両側で隣接するミドルブロック12、12とに連結される。また、第2ショルダータイバー17は、本実施形態では、ミドルブロック12と、このミドルブロック12のタイヤ周方向の両側で隣接するショルダーブロック13、13とに連結される。これにより、第1ショルダータイバー16は、タイヤ軸方向外側に凸の略V字状に形成される。また、第2ショルダータイバー17は、タイヤ軸方向内側に凸の略V字状に形成される。このような第1ショルダータイバー16及び第2ショルダータイバー17は、タイヤ軸方向及びタイヤ周方向へのミドルブロック12及びショルダーブロック13の動きを拘束して、軟弱路に対するせん断力を高める。また、このような第1ショルダータイバー16及び第2ショルダータイバー17は、硬質路との接地圧を高めるのに役立つ。
【0041】
第1ショルダータイバー16と第2ショルダータイバー17とは、タイヤ周方向に交互に配置される。即ち、本実施形態では、第1ショルダータイバー16に連結される第1ブロック群18と、第2ショルダータイバー17に連結される第2ブロック群19とがタイヤ周方向に交互に配置される。第1ブロック群18は、第1ショルダータイバー16に連結される一つのショルダーブロック13及び二つのミドルブロック12、12で形成される。第2ブロック群19は、第2ショルダータイバー17に連結される一つのミドルブロック12及び二つのショルダーブロック13、13で形成される。これにより、ショルダー領域S及びミドル領域Mの剛性差を小さくできるので、軟弱路や硬質路での旋回走行時の安定性が、さらに向上する。
【0042】
第1ショルダータイバー16は、一方のミドルブロック12と連結する第1部分16Aと、他方のミドルブロック12と連結する第2部分16Bとで形成されている。第1部分16Aと第2部分16Bとは、ショルダーブロック13で交わることなく、離間して連結されている。第2ショルダータイバー17も、一方のショルダーブロック13と連結する第1部分17Aと、他方のショルダーブロック13と連結する第2部分17Bとで形成され、これらがミドルブロック12で交わることなく離間して連結されている。これにより、各第1部分16A、17A及び第2部分16B、17Bからの荷重がミドルブロック12又はショルダーブロック13に分散して負荷されるので、ブロックの剛性低下が抑制される。
【0043】
このようなショルダータイバー15のなす角度θ1は、90度未満であるのが望ましい。これにより、主に旋回走行時に接地するミドルブロック12及びショルダーブロック13の走行による変形が抑制され、硬質路での旋回時のグリップが高められる。第1ショルダータイバー16の角度θ1は、トレッド部2の平面視、第1部分16A及び第2部分16Bの幅中心線c1、c2で挟まれる角度である。第2ショルダータイバー17の角度θ1は、第1部分17A及び第2部分17Bの幅中心線c3、c4で挟まれる角度である。
【0044】
上述の作用を効果的に発揮させるために、第1ショルダータイバー16の各部分16A、16B及び第2ショルダータイバー17の各部分17A、17Bのタイヤ軸方向に対する角度θ1aは、30~60度が望ましい。
【0045】
ショルダータイバー15は、本実施形態では、このショルダータイバー15が連なるショルダーブロック13及びミドルブロック12の間の距離Lが最短となるようにブロック部に連なる。これにより、トレッド溝8の溝容積が大きく確保されるので、軟弱路での大きなせん断力が維持される。本実施形態では、例えば、第1ショルダータイバー16の第1部分16Aは、ミドルブロック12のブロック部b2とショルダーブロック13のブロック部b4とに連なる。
【0046】
図4は、ミドル領域M及びクラウン領域Crの拡大図である。
図4に示されるように、ミドルブロック12とクラウンブロック11とは、クラウンタイバー20で連結されている。クラウンタイバー20は、ミドルブロック12及びクラウンブロック11の剛性を大きくして、軟弱路に対するせん断力を高めつつ、硬質路での接地圧を高める。
【0047】
本実施形態のクラウンタイバー20は、各クラウンブロック11のそれぞれ一つからミドルブロック12の異なる2つにそれぞれ延びている。クラウンタイバー20は、クラウンブロック11と、このクラウンブロック11のタイヤ周方向の両側に隣接する2つのミドルブロック12、12とを連結している。これにより、クラウンタイバー20は、タイヤ軸方向内側に凸の略V字状に形成される。
【0048】
クラウンタイバー20は、第1クラウンタイバー21と第2クラウンタイバー22を含んでいる。本実施形態の第1クラウンタイバー21は、第1ショルダータイバー16と連結されるミドルブロック12と、この第1ショルダータイバー16とはタイヤ周方向に隣接する第2ショルダータイバー17と連結されるミドルブロック12とにそれぞれ延びている。本実施形態の第2クラウンタイバー22は、第1ショルダータイバー16に連結される2つのミドルブロック12にそれぞれ延びている。本実施形態では、タイヤ周方向に並ぶ2つの第1クラウンタイバー21のタイヤ周方向の両側に第2クラウンタイバー22が配されている。
【0049】
クラウンタイバー20は、本実施形態では、一方のミドルブロック12と連結する第1クラウン部20Aと、他方のミドルブロック12と連結する第2クラウン部20Bとを含んでいる。第1クラウン部20Aと第2クラウン部20Bとは、本実施形態では、クラウンブロック11で交わることなく離間して連結されている。なお、クラウンタイバー20は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、一つのクラウンブロック11と一つのミドルブロック12とを連結する第1クラウン部20Aのみで形成される態様でも良い。
【0050】
クラウンタイバー20のなす角度θ2は、ショルダータイバー15の前記角度θ1よりも大きいのが望ましい。これにより、クラウンタイバー20は、大きなタイヤ周方向成分を有し、大きな接地圧の作用するクラウンブロック11のタイヤ周方向への移動を効果的に抑制し、硬質路でのグリップを高める。このような観点より、クラウンタイバー20の前記角度θ2は、例えば、80~110度であるのが望ましい。
【0051】
上述の作用をさらに発揮させるために、クラウンタイバー20の各クラウン部20A、20Bのタイヤ軸方向に対する角度θ2aは、35~65度であるのが望ましい。
【0052】
本実施形態では、全てのミドルブロック12と全てのショルダーブロック13とがショルダータイバー15で連結され、全てのクラウンブロック11と全てのミドルブロック12とがクラウンタイバー20で連結されている。なお、本発明はこのような態様に限定されるものではない。
【0053】
図2に示されるように、クラウンタイバー20の長手方向と直交する幅w3は、ショルダータイバー15の長手方向と直交する幅w2よりも小さいのが望ましい。これにより、大きな横力の作用するショルダーブロック13の変形を効果的に抑制することができるので、操縦安定性能をさらに高めることができる。
【0054】
図1に示されるように、クラウンタイバー20の高さh1及びショルダータイバー15の高さh1は、本実施形態では、クラウンブロック11、ミドルブロック12及びショルダーブロック13のうちの最大ブロック高さHmの10%~40%であるのが望ましい。これにより、各ブロック11~13の剛性が高められつつ、トレッド溝8の溝容積が確保されて、硬質路でのグリップや泥濘地でのトラクションが高められる。
【0055】
図5は、第1ミドル領域M1及び第1ショルダー領域S1の拡大図である。
図5に示されるように、ミドルブロック12及びショルダーブロック13のそれぞれは、その踏面12a、13aが、例えば、一対の軸方向縁23、23と、一対の軸方向縁23、23の両端間を継ぐ一対の周方向縁24、24とを含む矩形状で形成されている。軸方向縁23は、各ブロック12、13のタイヤ周方向の両側に配されてタイヤ軸方向に延びている。周方向縁24は、各ブロック12、13のタイヤ軸方向の両側に配されてタイヤ周方向に延びている。このような軸方向縁23及び周方向縁24は、旋回走行時の路面に対する引っ掻き力を高めて、操縦安定性能を高める。なお、ミドルブロック12及びショルダーブロック13の踏面12a、13aは、このような態様に限定されるものではない。第2ミドル領域M2及び第2ショルダー領域S2の各ブロック12、13についても、第1ミドル領域M1及び第1ショルダー領域S1の各ブロック12、13と同様に形成される。
【0056】
ミドルブロック12及びショルダーブロック13の少なくとも1つは、第1頂面25と、第1頂面25よりもブロック高さが小さい第2頂面26とを含む段差状踏面28を含んでいる。段差状踏面28は、本実施形態では、全てのミドルブロック12及び全てのショルダーブロック13に形成されている。
【0057】
段差状踏面28は、本実施形態では、第1頂面25と第2頂面26との間に溝29が設けられる。このような溝29は、ミドルブロック12及びショルダーブロック13のエッジ成分を増加させ、路面に対する摩擦力を高く維持する。
【0058】
本実施形態の溝29は、タイヤ軸方向に延びる一対の軸方向部30と、軸方向部30、30間を継いでタイヤ周方向に延びる周方向部31とを含んでいる。本実施形態では、軸方向部30は、タイヤ周方向に離間している。
【0059】
一対の軸方向部30のそれぞれは、本実施形態では、タイヤ軸方向に対して一方側に傾斜する第1傾斜部33と、第1傾斜部33とは逆向きに傾斜する第2傾斜部34とを含んでいる。軸方向部30は、第1傾斜部33と第2傾斜部34とで各ブロック12、13の外側ヘ向かって凸状に屈曲している。
【0060】
軸方向部30は、一方の周方向縁24から他方の周方向縁24に向かって延び、他方の周方向縁24に達することなく踏面内に終端30eを有する。周方向部31は、本実施形態では、両方の終端30e、30e間を継いでいる。本実施形態の第1頂面25は、一対の軸方向部30と周方向部31とで囲まれる六角形状に形成される。本実施形態の第2頂面26は、第1頂面25及び溝29を囲うように、平面視略U字状に形成されている。このような第1頂面25は、軸方向部30が屈曲しているので、タイヤ軸方向の過度の移動・変形が抑制されるため、硬質路と好適に接地して操縦安定性能を高める。
【0061】
より具体的には、ショルダーブロック13の軸方向部30は、タイヤ赤道C側に配された周方向縁24aからタイヤ軸方向外側に向かって延びている。ミドルブロック12の軸方向部30は、タイヤ軸方向外側に配された周方向縁24bからタイヤ赤道C側に向かって延びている。
【0062】
このような溝29は、その溝幅w4が例えば、0.5~3mm程度が望ましい。また、溝29は、その深さh3(
図1に示される)が、0.5~5mmであるのが望ましい。
【0063】
図6(a)は、ミドルブロック12の斜視図である。
図6(b)は、(a)のB-B線断面図である。
図6に示されるように、第1頂面25からタイヤ半径方向内側に延びる第1ブロック壁25aは、第2頂面26からタイヤ半径方向内側に延びる第2ブロック壁26aよりもブロック12の外側に突出している。このような第1ブロック壁25a及び第2ブロック壁26aは、泥濘地に対するせん断力を高める。なお、このような第1ブロック壁25a及び第2ブロック壁26aは、ショルダーブロック13に形成されても良い。
【0064】
図5に示されるように、ミドルブロック12は、本実施形態では、タイヤ赤道C側に配された第1ミドルブロック12Aと、第1ミドルブロック12Aよりもタイヤ軸方向外側に配された第2ミドルブロック12Bとを含んでいる。本実施形態の第1ミドル領域M1は、第1ミドルブロック12Aと第2ミドルブロック12Bとがタイヤ周方向に重複するように設けられている。これにより、旋回中の車体の倒れ込みの変化による挙動が安定化する。
【0065】
図4に示されるように、クラウンブロック11は、本実施形態では、第1クラウンブロック11Aと第2クラウンブロック11Bと第3クラウンブロック11Cとを含んでいる。第1クラウンブロック11Aは、クラウン領域Cr内に配される。第2クラウンブロック11Bは、クラウン領域Crと第1ミドル領域M1とに跨って配される。第3クラウンブロック11Cは、クラウン領域Crと第2ミドル領域M2とに跨って配される。これにより、本実施形態のクラウン領域Cr及びミドル領域Mは、タイヤ軸方向に亘ってタイヤ周方向線上にいずれかのクラウンブロック11A~11C又はいずれかのミドルブロック12A、12Bが配される。これにより、直進走行から旋回走行での車体の倒れ込みの変化の挙動が安定化し、操縦安定性能が向上する。
【0066】
本実施形態では、第1クラウンブロック11A、第2クラウンブロック11B及び第3クラウンブロック11Cで一つのクラウンブロック群11Gが形成され、このクラウンブロック群11Gが、タイヤ周方向並べられる。これにより、上述の作用が効果的に発揮される。
【0067】
クラウンブロック11は、タイヤ軸方向の中央部をタイヤ周方向に延びる浅底溝35が設けられることにより、2つのブロック片37、37に区分される。このような浅底溝35は、クラウンブロック11のタイヤ周方向のエッジ成分を増加する。浅底溝35は、例えば、その幅w5が、クラウンブロック11の幅Wの5%~25%であるのが望ましく、その深さh4(
図1に示す)は、クラウンブロック11のブロック高さHの5%~50%であるのが望ましい。
【0068】
第1クラウンブロック11Aは、2つのブロック片37、37がタイヤ周方向に位置ずれしない非シフトブロックとして成形されている。第2クラウンブロック11B及び第3クラウンブロック11Cは、2つのブロック片37、37がタイヤ周方向に位置ずれするシフトブロックとして形成されている。
【0069】
以上、本発明の実施形態について、詳述したが、本発明は例示の実施形態に限定されるものではなく、種々の態様に変形して実施し得るのは言うまでもない。
【実施例】
【0070】
図1の基本構造、及び、
図2の基本パターンを有する自動二輪車用の空気入りタイヤが、表1の仕様に基づき試作され、各試供タイヤの軟弱路及び硬質路での操縦安定性能がテストされた。各試供タイヤの主な共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
【0071】
<軟弱路及び硬質路での操縦安定性能>
各試供タイヤが装着された下記テスト車両が、テストライダーによって乾燥アスファルト路面及び泥濘地のテストコースを走行された。このときの走行時のグリップや安定性に関する操縦安定性能が、テストライダーの官能により評価された。結果は、比較例1の値を5点とする10点満点で表示されている。数値が大きい程優れている。
タイヤ:80/100-21(フロント)、120/80-19(リア)
リム:WM1.60(フロント)、WM2.15(リア)
タイヤ内圧:80kPa
テスト車両:排気量450ccのモトクロス競技用の自動二輪車
テストの結果などが表1に示される。
【0072】
【0073】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例のタイヤに比べて、軟弱路や硬質路での高い操縦安定性能が発揮されることが確認される。
【符号の説明】
【0074】
1 タイヤ
2 トレッド部
7 ブロック
9 トレッド横断溝
9A 排土空間
Te1 第1トレッド端
Te2 第2トレッド端