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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/06 20060101AFI20220817BHJP
   G03G 15/08 20060101ALI20220817BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
G03G15/06 101
G03G15/08 220
G03G15/00 303
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018178344
(22)【出願日】2018-09-25
(65)【公開番号】P2020052092
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正則
(72)【発明者】
【氏名】冨士 良太
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 善史
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-47461(JP,A)
【文献】特開2006-285201(JP,A)
【文献】特開2016-200619(JP,A)
【文献】特開2006-106136(JP,A)
【文献】特開2009-251197(JP,A)
【文献】特開平2-39072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/06
G03G 15/08
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像が形成される像保持体と、
前記像保持体と対向する現像部材から前記潜像にトナーを転移させてトナー像を形成する現像装置と、
直流電圧に交流電圧が重畳された重畳電圧により構成された現像電圧を前記像保持体と前記現像部材との間に印加する現像用電源と、
前記トナー像の画像密度を検知する検知部と、
前記画像密度が高くなるにつれて、前記交流電圧における振幅値を下げると共に周波数を上げるように前記現像用電源を制御する制御部と、
を備えた画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記画像密度が低くなるにつれて、前記交流電圧における前記振幅値を上げると共に前記周波数を下げるように前記現像用電源を制御する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記現像用電源の電力が予め定めた値を超えないように前記振幅値及び前記周波数を調整する請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記現像装置において現像剤を交換してからの使用時間の経過に応じて、前記交流電圧における前記振幅値を下げると共に前記周波数を上げる補正を行う請求項1~3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記像保持体の駆動時間の経過に応じて、前記交流電圧における前記振幅値を下げると共に前記周波数を上げる補正を行う請求項1~4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
少なくとも温度及び湿度のいずれかを含む環境条件を測定する測定部をさらに備え、
前記制御部は、
高温又は高湿になるにつれて、前記交流電圧における前記振幅値を下げると共に前記周波数を上げる補正を行う請求項1~5の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、
低温又は低湿になるにつれて、前記交流電圧における前記振幅値を上げると共に前記周波数を下げる補正を行う請求項6に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、低印字率画像パターンの画質向上とトナー消費量低減の両立を図る画像形成装置が開示されている。当該画像形成装置では、現像性能を高めるために、現像に供される現像バイアスの、現像材担持体から像形成担持体へ向かう方向へ現像材を飛翔させる効果を持つ第一のピーク電圧の現像効率を大きくする。かつ、時間平均電圧を第一のピーク電圧変化前後で一定値となるよう、第一のピーク電圧と、逆方向に現像材を飛翔させる第二のピーク電圧の時間比を変化させる。
【0003】
また、特許文献2には、2成分現像剤を用いた画像形成装置において、画像形成装置を構成する現像装置の環境、経時に対応して、常に所定レベル以上の画像を形成することが可能な画像形成装置が開示されている。当該画像形成装置は、所定印字枚数の印字ジョブの平均原稿印字率を記憶する第1印字率記憶部と、第1印字率記憶部に対応する領域と、その領域に対応する現像バイアスの補正量とを対応づけて記憶する換算テーブルと、を備え、プロセスコントロール時における現像バイアスに対し、前記所定印字枚数における平均原稿印字率に対応する領域が、基準の領域と異なる場合に、前記換算テーブルを用いて現像バイアスを補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-121747号公報
【文献】特開2009-210786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、現像電圧において交流電圧の振幅値のみで画質を制御する場合に比べて、限られた電源容量で画像密度の変動に伴う画質の悪化を抑制する画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様の画像形成装置は、潜像が形成される像保持体と、前記像保持体と対向する現像部材から前記潜像にトナーを転移させてトナー像を形成する現像装置と、直流電圧に交流電圧が重畳された重畳電圧により構成された現像電圧を前記像保持体と前記現像部材との間に印加する現像用電源と、前記トナー像の画像密度を検知する検知部と、前記画像密度が高くなるにつれて、前記交流電圧における振幅値を下げると共に周波数を上げるように前記現像用電源を制御する制御部と、を備えている。
【0007】
第2の態様の画像形成装置では、前記制御部は、前記画像密度が低くなるにつれて、前記交流電圧における前記振幅値を上げると共に前記周波数を下げるように前記現像用電源を制御する。
【0008】
第3の態様の画像形成装置では、前記制御部は、前記現像用電源の電力が予め定めた値を超えないように前記振幅値及び前記周波数を調整する。
【0009】
第4の態様の画像形成装置では、前記制御部は、前記現像装置において現像剤を交換してからの使用時間の経過に応じて、前記交流電圧における前記振幅値を下げると共に前記周波数を上げる補正を行う。
【0010】
第5の態様の画像形成装置では、前記制御部は、前記像保持体の駆動時間の経過に応じて、前記交流電圧における前記振幅値を下げると共に前記周波数を上げる補正を行う。
【0011】
第6の態様の画像形成装置は、少なくとも温度及び湿度のいずれかを含む環境条件を測定する測定部をさらに備え、前記制御部は、高温又は高湿になるにつれて、前記交流電圧における前記振幅値を下げると共に前記周波数を上げる補正を行う。
【0012】
第7の態様の画像形成装置では、前記制御部は、低温又は低湿になるにつれて、前記交流電圧における前記振幅値を上げると共に前記周波数を下げる補正を行う。
【発明の効果】
【0013】
第1の態様によれば、現像電圧において交流電圧の振幅値のみで画質を制御する場合に比べて、限られた電源容量で画像密度の上昇に伴うかぶりを抑制することができる。
【0014】
第2の態様によれば、現像電圧において交流電圧の振幅値のみで画質を制御する場合に比べて、限られた電源容量で画像密度の低下に伴う現像性の悪化を抑制することができる。
【0015】
第3の態様によれば、電力に制限を設けずに画質を調整する場合に比べて、電力不足による現像用電源の調整限界に伴う画質の悪化を抑制できる。
【0016】
第4の態様によれば、現像剤の劣化に応じた補正を行わない場合に比べて、かぶりを抑制することができる。
【0017】
第5の態様によれば、像保持体の駆動時間の経過に応じた補正を行わない場合に比べて、かぶりを抑制することができる。
【0018】
第6の態様によれば、温度又は湿度の上昇に伴う補正を行わない場合に比べて、温度又は湿度の上昇に伴うかぶりを抑制することができる。
【0019】
第7の態様によれば、温度又は湿度の低下に伴う補正を行わない場合に比べて、温度又は湿度の低下に伴う現像性の悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
図2】本実施形態に係る画像形成装置の画像形成部及びその周辺の用紙搬送部の拡大図である。
図3】制御系のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】制御装置におけるCPUの機能構成の例を示すブロック図である。
図5】交流電圧の振幅値と現像率との関係を示す図である。
図6】交流電圧の振幅値とかぶりのグレードとの関係を示す図である。
図7】交流電圧の周波数とかぶりのグレードとの関係を示す図である。
図8】現像剤の経時変化とかぶりのグレードとの関係を示す図である。
図9】感光体ドラムにおける電荷輸送層の膜厚とかぶりのグレードとの関係を示す図である。
図10】本実施形態における調整処理の流れを示すフローチャートである。
図11】本実施形態における第1補正処理の流れを示すフローチャートである。
図12】本実施形態における第2補正処理の流れを示すフローチャートである。
図13】本実施形態における第3補正処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。図1に示すように、本実施形態の画像形成装置10は、筐体12内に、画像形成部14、用紙38を搬送する用紙搬送部16及び画像形成部14を制御する制御装置50を備えている。
【0022】
(画像形成部)
図2に示すように、画像形成部14は、矢印A方向に定速回転する像保持体の一例である感光体ドラム22を備えている。
【0023】
この感光体ドラム22の周囲には、感光体ドラム22の回転方向(図2の矢印Aで示す時計回り方向)に沿って、デバイスとして、帯電部24、露光部26、現像部28、転写ロール30、クリーナ32及びイレーズランプ34が順に配設されている。現像部28は現像装置の一例である。
【0024】
現像部28の下流側には、濃度センサ66が配置されている。濃度センサ66は、感光体ドラム22上に形成されたトナー像の濃度を検出する。
【0025】
露光部26は、LEDプリンタヘッド(LPH)が適用されている。なお、露光部26は、LPHに限らず、レーザーを回転するポリゴンミラーに照射し、その反射光を走査する光走査装置であってもよい。
【0026】
感光体ドラム22は、帯電部24によって表面が一様に帯電(予め定めた感光体表面電位で帯電)された後、露光部26によって光ビームが照射されて、感光体ドラム22上に潜像が形成される。なお、感光体ドラム22は、交換可能な感光体ユニットとされている。
【0027】
光ビームによって感光体ドラム22上に形成された潜像には、感光体表面電位Vsと、現像部28に印加する現像バイアスである現像電圧Vdevとの差電圧Vclnによりトナーが供給(転移)される。つまり、現像部28は、潜像にトナーを転移させて感光体ドラム22上にトナー像を形成する。なお、本実施の形態では、トナーがマイナス帯電されている。
【0028】
また、現像部28は、感光体ドラム22に対向し、矢印B方向に回転駆動される現像部材の一例である現像ロール28Aを備える。この現像ロール28Aは、非磁性のトナーと磁性のキャリアを含む静電荷像現像剤(不図示;以下単に「現像剤」とも称す)が収容される筐体28B内に設置される。現像剤は図示しない現像剤カートリッジに収納されており、後述するCPU51が図示しないディスペンスユニットを制御して、現像剤カートリッジに収納された現像剤を筐体28B内部に搬送する。
【0029】
現像ロール28Aには、現像電圧として現像用電源20から直流電圧である直流成分(DC)に交流電圧である交流成分(AC)を重畳した重畳電圧が印加される。なお、交流成分の波形は、本実施形態では矩形波であるが、これに限らず、三角波や正弦波であってもよい。また、交流成分の周波数は、5kHz以上20kHz以下の範囲が好ましい。
【0030】
現像用電源20に要求される電力Pは、交流電圧における振幅値をVpp、周波数をfとすると、次の式1で表すことができる。なお、CDEVEは現像部の静電容量であり、CHVは定電圧制御用の静電容量である。
【0031】
【数1】
【0032】
つまり、現像用電源20の電源容量となる電力Pは、振幅値Vpp及び周波数fを可変値とすると、交流電圧における振幅値Vppの二乗に比例し、周波数fに比例する。
【0033】
また、現像ロール28Aの表面に形成された磁気ブラシを感光体ドラム22に接触させ、重畳電圧である現像電圧を印加する。これにより、キャリアに付着するトナー、つまり、現像ロール28Aに保持されたトナーが感光体ドラム22に対して供給され、感光体ドラム22表面に形成された潜像がトナー像として現像される。
【0034】
なお、現像ロール28Aは、現像剤の種類に応じて選択されるが、例えば、複数の磁極を有するマグネットロールが挙げられる。筐体28Bの底部には透磁センサ68が設けられている。透磁センサ68は、非磁性トナーと磁性キャリアからなる現像剤の透磁率を検出することにより、現像剤のトナー濃度を検出するセンサである。
【0035】
現像用電源20を含む現像部28は、例えば、画像形成装置10に設けられた制御装置50に電気的に接続されており、制御装置50により制御されて、現像ロール28Aに現像電圧を印加する。そして、現像ロール28Aは、例えば、筐体28B内に収容された現像剤を表面に保持して、現像剤に含まれるトナーを現像部28内から感光体ドラム22表面へと供給する。なお、キャリアは現像ロール28Aに保持されたまま現像部28内に戻る。
【0036】
一方、感光体ドラム22上のトナー像は、転写ロール30によって、記録媒体としての用紙38に転写される。以下、トナー像が転写される領域を、「転写部TR」という場合がある。
【0037】
転写部TRでの転写後に、感光体ドラム22に残留しているトナーは、クリーナ32によって除去され、イレーズランプ34によって除電された後、再び帯電部24によって帯電されて、同様の画像形成処理を繰り返すことが可能である。
【0038】
一方、転写部TRでトナー像が転写された用紙38は、加圧ローラ40Aと加熱ローラ40Bとを備える定着部40に搬送されて定着処理が施される。これにより、トナー像が定着されて、用紙38上に所望の画像が形成される。画像が形成された用紙38は装置外へ排出される。
【0039】
(用紙の搬送系)
図1に示される如く、画像形成装置10には、画像形成部14に用紙38を供給する複数段の供給装置82が装着されている。
【0040】
供給装置82は、例えば普通紙や厚紙といった用紙38を種類毎に収納する異なる収納容器84を有する。収納容器84は、それぞれ画像形成装置10の筐体12より外側に引き出し可能になっており、収納容器84を画像形成装置10から引き出した状態で用紙38が装填(補充)される。
【0041】
供給装置82は、収納容器84に収納された最上層の用紙38を持ち出し、持ち出した用紙38を画像形成部14へ向けて搬送する搬送ロール86を有する。
【0042】
図1及び図2に示される如く、画像形成装置10には、用紙38の搬送に用いられる用紙搬送部16が形成されている。用紙搬送部16は、主搬送路88と、反転搬送路90と、副搬送路91とを有する。
【0043】
主搬送路88は、何れかの供給装置82から供給された用紙38を画像形成部14に搬送し、画像が形成された用紙38を画像形成装置10外に排出するために用いられる。
【0044】
主搬送路88に沿って、用紙38が搬送される方向における上流側から順に、搬送ロール86と、レジストロール92と、転写ロール30と、定着部40(加圧ローラ40Aと加熱ローラ40B)と、排出ロール94とが配置されている。
【0045】
レジストロール92は、例えば、供給装置82側から搬送されてきた用紙38の先端部を挟んだ状態で一時的に停止させ、転写部TRにトナー像が転写されるタイミングと合致するように用紙38を転写ロール30に向けて送り出す。
【0046】
排出ロール94は、定着部40によってトナーが定着された用紙38を画像形成装置10外に排出する。
【0047】
反転搬送路90は、一方の面にトナー像が定着された用紙38を反転させつつ、再び画像形成部14に向けて供給するために用いられる搬送路である。
【0048】
反転搬送路90に沿って、例えば、一対の反転搬送ロール96が適宜配置されている。反転搬送路90には、排出ロール94で用紙38の後端部を挟み込んだ状態で、排出ロール94が逆回転することで用紙38が後端部側から供給され、供給された用紙38が反転搬送ロール96、96によって、レジストロール92の上流の位置へと搬送される。
【0049】
副搬送路91は、供給装置82に収納された用紙38とは異なる用紙38を画像形成部14に供給するための搬送路である。副搬送路91には、供給用開閉部98を開いた状態で画像形成装置10の図1の左側面から用紙38が供給される。副搬送路91には、搬送ロール99が設けられている。搬送ロール99は、副搬送路91に供給された用紙38を画像形成部14に向けて搬送する。
【0050】
(その他の構成)
その他、筐体12の内部には、制御装置50、通信部60、温度センサ62及び湿度センサ64が備えられている。
【0051】
通信部60は、インターネットや、LAN、WAN等のネットワークに接続されており、外部のPC等との間でネットワークを介して通信が可能とされる。
【0052】
温度センサ62は、筐体12内部の温度を測定する。また、湿度センサ64は、筐体12内部の湿度を測定する。
【0053】
(制御系)
まず、図3を参照して、画像形成装置10の制御系のハードウェア構成について説明する。
【0054】
図3に示すように、画像形成装置10の制御装置50は、例えばコンピュータで構成される。制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)51、ROM(Read Only Memory)52、RAM(Random Access Memory)53、不揮発性メモリ57、及び入出力インターフェース(I/O)55を備える。そして、CPU51、ROM52、RAM53、不揮発性メモリ57、及びI/O55がバス56を介して各々接続されている。
【0055】
CPU51は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU51は、ROM52又は不揮発性メモリ57からプログラムを読み出し、RAM53を作業領域としてプログラムを実行する。本実施形態では、不揮発性メモリ57に各種処理を実行するための実行プログラムが記憶されている。CPU51は、実行プログラムを実行することで、図4に示す検知部70、測定部72及び制御部74として機能する。
【0056】
ROM52は、各種プログラム及び各種データを記憶している。RAM53は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。
【0057】
不揮発性メモリ57は、供給電力を遮断しても記憶した情報が維持される記憶装置の一例であり、例えば半導体メモリが用いられるが、ハードディスクを用いてもよい。
【0058】
I/O55には、画像形成部14、搬送用モータ群80、通信部60、温度センサ62、湿度センサ64、濃度センサ66、及び透磁センサ68が接続される。ここで、画像形成部14には、現像電圧を印加するための現像用電源20が含まれる。また、搬送用モータ群80には、搬送ロール86、レジストロール92、排出ロール94及び反転搬送ロール96等を駆動するモータが含まれる。
【0059】
図4は、CPU51の機能構成の例を示すブロック図である。図4に示すように、CPU51は、検知部70、測定部72及び制御部74を有している。各機能構成は、CPU51が不揮発性メモリ57に記憶された実行プログラムを読み出し、これを実行することによって実現される。
【0060】
検知部70は、トナー像の画像密度を検知する機能を有する。具体的に、検知部70は通信部60において受信した画像データから画像密度を算出する。
【0061】
測定部72は、温度及び湿度に係る筐体12内部の環境条件を測定する機能を有している。測定部72は、温度センサ62の信号に基づいて温度を測定し、湿度センサ64の信号に基づいて湿度を測定する。
【0062】
制御部74は、画像形成部14の各機能を制御する機能を有する。また、本実施形態の制御部74は現像用電源20を制御することで、交流電圧における振幅値Vpp及び周波数fを変更する。
【0063】
(交流電圧と画質との関係について)
まず、用紙38に形成される画像の密度(以下、単に「画像密度」と称する)と画質には以下(A)及び(B)の関係がある。
(A)高画像密度で連続印刷をすると、トナー帯電量が低下する。これに伴い、潜像以外の余白部分にトナーが排出されるかぶりが発生する。かぶりは、画像密度が高くなるほど悪化する。
(B)低画像密度で連続印刷をすると、トナー帯電量が上昇する。これに伴いトナーの現像性が悪化する。現像性は画像密度が低くなるほど悪化する。
【0064】
一方、交流電圧における振幅値Vpp及び周波数fと画質との間には以下(1)~(6)の関係があることが、図5図9に示す実験結果、及び周知のデータから知られている。
(1)図5に示すように、交流電圧の振幅値Vppを上げると現像性が改善する。なお、図5における、現像率は現像ロール28Aから感光体ドラム22へのトナーの転移率に相当する。
(2)図6に示すように、交流電圧の振幅値Vppを上げると僅かであるがかぶりは悪化する。なお、図6におけるグレード(G)は、かぶりに関する標準限度見本(富士ゼロックス株式会社製の限度見本)において、かぶりの程度毎に定められた評価指標であって、グレードが高くなるほどかぶりが悪化することを示す。なお、上記(1)を踏まえると、振幅値Vppを上げた場合、かぶりの悪化よりも現像性の改善効果の方が大きい。
(3)図7に示すように、交流電圧の周波数fを上げるとかぶりは改善する。
(4)図8に示すように、現像剤(キャリア)が(劣化する)ほどトナー帯電量は低下するため、かぶりは悪化する。
(5)図9に示すように、感光体ドラム22における電荷輸送層(CTL)の膜厚が薄くなるほどかぶりは悪化する。
(6)一般的に、高温多湿になるほどトナー帯電量は低下するため、かぶりが悪化することが知られている。
【0065】
上記(A)及び(B)の課題と(1)~(6)の関係を踏まえ、本実施形態のCPU51は現像用電源20の電力Pが予め定めた値(例えば、現像用電源20の電源容量である最大電力)の範囲内において振幅値Vpp及び周波数fを変更することとした。これにより、画質の悪化、つまり、かぶりの発生や現像性の悪化を抑制することができる。なお、CPU51では、電力Pの上限値を監視しつつ振幅値Vpp及び周波数fを変更してもよいし、予め設定値が規定されたテーブルを参照して振幅値Vpp及び周波数fを変更してもよい。
【0066】
(作用)
以下、図10図13において、フローチャートを用いてCPU51による現像用電源20の制御について説明する。
【0067】
図10は、画像密度に対する振幅値Vpp及び周波数fの調整処理に係るフローチャートである。
【0068】
ステップS100において、印刷ジョブの開始に伴い、CPU51は振幅値Vpp及び周波数fに対して初期値を設定する。なお、後述する第1~第3補正処理が実行されている場合は補正後の値が設定される。そして次のステップS101に進む。
【0069】
ステップS101において、CPU51は画像密度につき、予め規定された標準値を設定する。そして次のステップS102に進む。
【0070】
ステップS102において、CPU51は通信部60において受信した画像データから画像密度を算出する。そして次のステップS103に進む。
【0071】
ステップS103において、CPU51は画像密度が増加しているか、つまり、ステップS102にて算出された画像密度が現在設定されている画像密度よりも高いか否かを判定する。CPU51は算出された画像密度が現在設定されている画像密度よりも高い(増加している)と判定した場合、次のステップS104に進む。一方、CPU51は算出された画像密度が現在設定されている画像密度よりも高くない(増加していない)、すなわち現在設定されている画像密度以下であると判定した場合、ステップS105に進む。
【0072】
ステップS104において、CPU51は振幅値Vppを現在の値から下げると共に、周波数fを現在の値から上げる調整を行う。そしてステップS107に進む。
【0073】
ステップS105において、CPU51は画像密度が減少しているか、つまり、ステップS102にて算出された画像密度が現在設定されている画像密度よりも低いか否かを判定する。CPU51は算出された画像密度が現在設定されている画像密度よりも低い(減少している)と判定した場合、次のステップS106に進む。一方、CPU51は算出された画像密度が現在設定されている画像密度よりも低くない(減少していない)、すなわち現在設定されている画像密度と同じであると判定した場合、ステップS107に進む。つまり、画像密度に変化がない場合、CPU51は振幅値Vpp及び周波数fの値を維持する。
【0074】
ステップS106において、CPU51は振幅値Vppを現在の値から上げると共に、周波数fを現在の値から下げる調整を行う。そして次のステップS107に進む。
【0075】
ステップS107において、CPU51は印刷ジョブが終了したか否かを判定する。CPU51は印刷ジョブが終了したと判定した場合、調整処理を終了する。一方、CPU51は印刷ジョブが終了していないと判定した場合、ステップS102に戻る。
【0076】
図11は、現像部28において現像剤を交換してからの経過時間に対する振幅値Vpp及び周波数fの変更を行う第1補正処理に係るフローチャートである。
【0077】
ステップS200において、CPU51は現像部28において新たな現像剤が補充されてからの経過時間を取得する。すなわち、現像部28において現像剤を交換し、補充された新たな現像剤の使用時間を取得する。本実施形態における使用時間は、現像剤を交換した後の現像部28の駆動時間の累積値である。そして次のステップS201に進む。
【0078】
ステップS201において、CPU51は現像剤が交換されたか否かを判定する。CPU51は現像剤が交換されたと判定した場合、次のステップS202に進む。一方、CPU51は現像剤が交換されていないと判定した場合、ステップS203に進む。
【0079】
ステップS202において、CPU51は振幅値Vpp及び周波数fに対して初期値を設定する。そして第1補正処理を終了する。
【0080】
ステップS203において、CPU51は現像部28において現像剤が交換されてからの新たな現像剤の使用時間が予め定められた時間を経過したか否かを判定する。CPU51は現像剤の使用時間が予め定められた時間を経過したと判定した場合、次のステップS204に進む。なお、現像剤の使用時間が「予め定められた時間」を経過した場合、「予め定められた時間」には、次に補正を予定している使用時間が設定される。一方、CPU51は現像剤の使用時間が予め定められた時間を経過していないと判定した場合、第1補正処理を終了する。つまりこの場合、CPU51は振幅値Vpp及び周波数fの値を維持する。
【0081】
ステップS204において、CPU51は振幅値Vppを現在の値から下げると共に、周波数fを現在の値から上げる調整を行う。そして第1補正処理を終了する。
【0082】
図12は、感光体ユニットの駆動時間に対する振幅値Vpp及び周波数fの変更を行う第2補正処理に係るフローチャートである。
【0083】
ステップS250において、CPU51は感光体ユニットを使用開始してからの駆動時間を取得する。そして次のステップS251に進む。
【0084】
ステップS251において、CPU51は感光体ユニットが交換されたか否かを判定する。CPU51は感光体ユニットが交換されたと判定した場合、次のステップS252に進む。一方、CPU51は感光体ユニットが交換されていないと判定した場合、ステップS253に進む。
【0085】
ステップS252において、CPU51は振幅値Vpp及び周波数fに対して初期値を設定する。そして第2補正処理を終了する。
【0086】
ステップS253において、CPU51は感光体ユニットの駆動時間が予め定められた時間を経過したか否かを判定する。CPU51は感光体ユニットの駆動時間が予め定められた時間を経過したと判定した場合、次のステップS254に進む。なお、感光体ユニットの駆動時間が「予め定められた時間」を経過した場合、「予め定められた時間」には、次に補正を予定している駆動時間が設定される。一方、CPU51は感光体ユニットの駆動時間が予め定められた時間を経過していないと判定した場合、第2補正処理を終了する。つまりこの場合、CPU51は振幅値Vpp及び周波数fの値を維持する。
【0087】
ステップS254において、CPU51は振幅値Vppを現在の値から下げると共に、周波数fを現在の値から上げる調整を行う。そして第2補正処理を終了する。
【0088】
図13は、筐体12内部の温度及び湿度に対する振幅値Vpp及び周波数fの変更を行う第3補正処理に係るフローチャートである。
【0089】
ステップS300において、CPU51は温度センサ62により筐体12内部の温度を測定し、湿度センサ64により筐体12内部の湿度を測定する。そして次のステップS301に進む。
【0090】
ステップS301において、CPU51はステップS300にて測定した温度及び湿度が前回(例えば、電源投入時)測定した温度及び湿度よりも大きいか否か、換言すると高温多湿か否かを判定する。CPU51は測定した温度及び湿度が前回測定した温度及び湿度よりも大きいと判定した場合、次のステップS302に進む。一方、CPU51は測定した温度及び湿度が前回測定した温度及び湿度よりも大きくない、すなわち前回の温度及び湿度以下であると判定した場合、ステップS303に進む。
【0091】
ステップS302において、CPU51は振幅値Vppを現在の値から下げると共に、周波数fを現在の値から上げる調整を行う。そして、第3補正処理を終了する。
【0092】
ステップS303において、CPU51はステップS300にて測定した温度及び湿度が前回(例えば、電源投入時)測定した温度及び湿度よりも小さいか否か、換言すると低温低湿か否かを判定する。CPU51は測定した温度及び湿度が前回測定した温度及び湿度よりも小さいと判定した場合、次のステップS304に進む。一方、CPU51は測定した温度及び湿度が前回測定した温度及び湿度よりも小さくない、すなわち前回の温度及び湿度と同じであると判定した場合、第3補正処理を終了する。つまり、温度及び湿度が変化しない場合、CPU51は振幅値Vpp及び周波数fの値を維持する。
【0093】
ステップS304において、CPU51は振幅値Vppを現在の値から上げると共に、周波数fを現在の値から下げる調整を行う。そして、第3補正処理を終了する。
【0094】
(実施形態まとめ)
本実施形態の画像形成装置10は、画像密度の変化、消耗部品の状態、画像形成環境の変化に伴う画質の悪化について、現像電圧を構成する交流電圧の特性を変えることにより抑制している。具体的には、制御部としてのCPU51が現像用電源20を制御し、画像密度の変化に応じて交流電圧の振幅値Vpp及び周波数fを調整し、消耗部品の状態及び画像形成環境の変化に応じて交流電圧の振幅値Vpp及び周波数fを補正している。本実施形態では、消耗部品の状態及び画像形成環境の変化による振幅値Vpp及び周波数fの補正を行った上で、画像密度の変化による振幅値Vpp及び周波数fの調整を行っている。
【0095】
この調整及び補正の何れの場合においても、CPU51は振幅値Vppを下げた場合には周波数fを上げ、振幅値Vppを上げた場合には周波数fを下げている。上記式1のように、現像用電源20における電力Pは、交流電圧における振幅値Vppの二乗に比例し、周波数fに比例する。そのため、本実施形態では、振幅値Vpp及び周波数fを常に逆方向に制御することで、交流電圧の振幅値Vppのみで画質を制御する場合と比べて、電力Pの増大を抑制することができる。
【0096】
そして、本実施形態では、高画像密度での連続印刷に伴いトナー帯電量が低下し、かぶりの発生のおそれがある場合、CPU51は低画像密度の場合と比べて振幅値Vppを下げると共に周波数fを上げる調整を行う。これにより、本実施形態は、交流電圧の振幅値Vppのみで画質を制御する場合に比べて、限られた電源容量で画像密度の上昇に伴うかぶりを抑制することができる。
【0097】
また、本実施形態では、低画像密度での連続印刷に伴いトナー帯電量が増加し、現像性が悪化するおそれがある場合、CPU51は高画像密度の場合と比べて振幅値Vppを上げると共に周波数fを下げる調整を行う。これにより、本実施形態は、交流電圧の振幅値Vppのみで画質を制御する場合に比べて、限られた電源容量で画像密度の低下に伴う現像性の悪化を抑制することができる。
【0098】
特に、本実施形態では、CPU51が電力Pに対して予め定めた値、つまり上限を設けて振幅値Vpp及び周波数fを調整するとよい。これにより、電力に制限を設けずに画質を調整する場合に比べて、電力不足による現像用電源20の調整限界に伴う画質の悪化を抑制できる。本実施形態によれば、電源容量を有効活用でき、現像用電源20に係るコストを抑制することができる。なお、電源容量のなかで、ユーザによる選択、現像剤のトナー濃度、帯電量、前後の画像の画像密度等から、振幅値Vpp及び周波数fのどちらか一方を優先して変化するようにしてもよい。
【0099】
また、CPU51が交流電圧の振幅値Vpp及び周波数fを調整する場合、画像データから算出した画像密度が予め定められた閾値を超えた場合に調整してもよいし、算出した画像密度が増減する都度に調整してもよい。さらに、本実施形態のCPU51は画像データから算出した画像密度を基に振幅値Vpp及び周波数fを調整しているが、これに限らない。例えば、濃度センサ66が感光体ドラム22に形成されたトナー像を検知して、CPU51が画像密度を解析することにより、振幅値Vpp及び周波数fを調整してもよい。
【0100】
また、本実施形態では、現像剤の劣化による帯電量の低下に伴うかぶりの発生を抑制すべく、現像部28において新たな現像剤に交換してからの経過時間に応じて、CPU51は振幅値Vppを下げると共に周波数fを上げる補正を行っている。これにより、本実施形態は、現像剤の劣化に応じた補正を行わない場合に比べて、かぶりを抑制することができる。一方、現像剤が交換されることで現像部28に新たな現像剤が補充された場合には、CPU51は振幅値Vpp及び周波数fを初期値にリセットする。
【0101】
なお、本実施形態のCPU51は現像部28に新たな現像剤が補充されてからの経過時間に応じて振幅値Vpp及び周波数fを補正しているが、これに限らない。例えば、透磁センサ68により検出された透磁率からCPU51は現像剤のトナー濃度を推定すると共に、CPU51はトナー濃度の変化に応じて振幅値Vpp及び周波数fを補正してもよい。
【0102】
また、本実施形態では、感光体ドラム22における電荷輸送層(CTL)の膜厚が薄くなることによるトナー帯電量の低下に伴うかぶりの発生を抑制すべく、感光体ユニットを交換してからの駆動時間の経過に応じて、CPU51は振幅値Vppを下げると共に周波数fを上げる補正を行っている。これにより、本実施形態は、感光体ドラム22の駆動時間の経過に応じた補正を行わない場合に比べて、かぶりを抑制することができる。一方、感光体ユニットが交換されることで現像部28に新たな感光体ユニットが設置された場合には、CPU51は振幅値Vpp及び周波数fを初期値にリセットする。
【0103】
なお、本実施形態のCPU51は感光体ユニットを交換してからの駆動時間に応じて振幅値Vpp及び周波数fを補正しているが、これに限らない。例えば、感光体ドラム22に隣接して図示しない表面電位センサを設け、CPU51は実際に測定した帯電量を基に振幅値Vpp及び周波数fを補正してもよい。
【0104】
また、本実施形態では、温度又は湿度の上昇に伴いトナー帯電量が低下し、かぶりの発生のおそれがある場合、CPU51は温度又は湿度が低い場合と比べて振幅値Vppを下げると共に周波数fを上げる補正を行う。これにより、本実施形態は、温度又は湿度の上昇に伴う補正を行わない場合に比べて、かぶりを抑制することができる。
【0105】
さらに、本実施形態では、温度又は湿度の低下に伴いトナー帯電量が増加し、現像性が悪化するおそれがある場合、CPU51は温度又は湿度が高い場合と比べて振幅値Vppを上げると共に周波数fを下げる補正を行う。これにより、本実施形態は、温度又は湿度の低下に伴う補正を行わない場合に比べて、現像性の悪化を抑制することができる。
【0106】
なお、振幅値Vpp及び周波数fの変更を行う場合、CPU51は振幅値Vpp及び周波数fを連続的に変化させてもよいし、段階的に変化させてもよい。
【0107】
本実施形態は、1つの画像形成部14を備える単色印刷用の画像形成装置10として説明したが、これに限らず、複数の画像形成部を備えるカラー印刷用の画像形成装置であってもよい。
【符号の説明】
【0108】
10 画像形成装置
20 現像用電源
22 感光体ドラム(像保持体の一例)
28 現像部(現像装置の一例)
28A 現像ロール(現像部材の一例)
70 検知部
72 測定部
74 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13