(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】自動車用配線システム
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20220817BHJP
B60R 16/03 20060101ALI20220817BHJP
H02G 3/16 20060101ALN20220817BHJP
【FI】
B60R16/02 620S
B60R16/03 A
H02G3/16
(21)【出願番号】P 2018188545
(22)【出願日】2018-10-03
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】松村 雄高
(72)【発明者】
【氏名】石原 章生
(72)【発明者】
【氏名】伊東 真也
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-043882(JP,A)
【文献】特開2016-110811(JP,A)
【文献】特開2016-147558(JP,A)
【文献】特開平08-227738(JP,A)
【文献】国際公開第2017/222060(WO,A1)
【文献】特開2000-016200(JP,A)
【文献】特開2012-076630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
B60R 16/03
H02G 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電気部品が組込まれる自動車に搭載される自動車用配線システムであって、
電気部品に対して通信及び電源供給可能に接続される第1接続装置と、
電気部品に対して通信及び電源供給可能に接続される複数の第2接続装置と、
を備え、
前記複数の第2接続装置のうちの一部から前記第1接続装置を経て前記複数の第2接続装置の残部を通るように、共通するバス通信ラインが、前記第1接続装置と前記複数の第2接続装置とを順次通って、前記第1接続装置と前記複数の第2接続装置とのそれぞれにおいて電気部品に通信可能なように分岐され、
自動車に搭載される複数の電源が前記第1接続装置に接続されて集約されると共に、前記複数の電源による電力が前記第1接続装置から前記複数の第2接続装置のそれぞれに分配される、自動車用配線システム。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車用配線システムであって、
前記バス通信ラインの一端に接続されたゲートウエイ装置をさらに備える自動車用配線システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の自動車用配線システムであって、
前記第1接続装置及び前記複数の第2接続装置のうちの少なくとも1つは、共通するコネクタを介して電気部品に電源供給及び通信可能に接続される、自動車用配線システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の自動車用配線システムであって、
前記バス通信ラインのうち前記第1接続装置と前記第2接続装置との間又は前記複数の第2接続装置の間に設けられる少なくとも1つの配線部
と、前記複数の第2接続装置の少なくとも1つの内部配線部分とがコネクタ接続される、自動車用配線システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の自動車用配線システムであって、
前記第1接続装置と前記複数の第2接続装置との間に設けられる少なくとも1つの電源配線部
が、前記複数の第2接続装
置の少なくとも1つに対して物理的に分離した状態から接続される、自動車用配線システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の自動車用配線システムであって、
前記第1接続装置と前記複数の第2接続装置との間に設けられる複数の電源配線部が、異なる導体断面積であるものを含む、自動車用配線システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の自動車用配線システムであって、
前記第1接続装置に、前記複数の第2接続装置のそれぞれに対応する過電流遮断部が設けられている、自動車用配線システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の自動車用配線システムであって、
前記第1接続装置は、自動車の車室よりも前側の前室に配設され、
前記複数の第2接続装置は、自動車の車室内において左右それぞれに設けられたものを含む、自動車用配線システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車用配線システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、複数の電源線が束ねられた幹線部と、前記幹線部の両端の間で前記幹線部に介在し前記車両に搭載され電力を蓄積するバッテリが接続される幹線中間分配部と、前記幹線部の両端にそれぞれ接続され、それぞれ接続される機器に前記蓄電装置からの電力を分配する一対の幹線端部分配部とを備えるワイヤハーネスを開示している。このワイヤハーネスにおいては、一対の幹線端部分配部の一方にも別のバッテリが接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動車としては、動力源として内燃機関を備えた内燃機関自動車、動力源として電動機を備えた電気自動車、それらを併用したハイブリッド自動車等がある。それぞれの自動車は、異なる電源システムを採用することがある。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、幹線中間分配部にバッテリが接続され、一対の幹線端部分配部の一方にも他のバッテリが接続されている。このため、電源システムが異なると、ワイヤハーネスの全体的な設計変更が必要となる。
【0006】
そこで、本発明は、自動車用配線システムの汎用性をなるべく高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、第1の態様は、複数の電気部品が組込まれる自動車に搭載される自動車用配線システムであって、電気部品に対して通信及び電源供給可能に接続される第1接続装置と、電気部品に対して通信及び電源供給可能に接続される複数の第2接続装置と、を備え、前記複数の第2接続装置のうちの一部から前記第1接続装置を経て前記複数の第2接続装置の残部を通るように、共通するバス通信ラインが、前記第1接続装置と前記複数の第2接続装置とを順次通って、前記第1接続装置と前記複数の第2接続装置とのそれぞれにおいて電気部品に通信可能なように分岐され、自動車に搭載される複数の電源が前記第1接続装置に接続されて集約されると共に、前記複数の電源による電力が前記第1接続装置から前記複数の第2接続装置のそれぞれに分配されるものである。
【0008】
第2の態様は、第1の態様に係る自動車用配線システムであって、前記バス通信ラインの一端に接続されたゲートウエイ装置をさらに備える。
【0009】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係る自動車用配線システムであって、前記第1接続装置及び前記複数の第2接続装置のうちの少なくとも1つは、共通するコネクタを介して電気部品に電源供給及び通信可能に接続されるものである。
【0010】
第4の態様は、第1から第3のいずれか1つの態様に係る自動車用配線システムであって、前記バス通信ラインのうち前記第1接続装置と前記第2接続装置との間又は前記複数の第2接続装置の間に設けられる少なくとも1つの配線部と、前記複数の第2接続装置の少なくとも1つの内部配線部分とがコネクタ接続されるものである。
【0011】
第5の態様は、第1から第4のいずれか1つの態様に係る自動車用配線システムであって、前記第1接続装置と前記複数の第2接続装置との間に設けられる少なくとも1つの電源配線部が、前記前記複数の第2接続装置の少なくとも1つに対して物理的に分離した状態から接続されるものである。
【0012】
第6の態様は、第1から第5のいずれか1つの態様に係る自動車用配線システムであって、前記第1接続装置と前記複数の第2接続装置との間に設けられる複数の電源配線部が、異なる導体断面積であるものを含むものである。
【0013】
第7の態様は、第1から第6のいずれか1つの態様に係る自動車用配線システムであって、前記第1接続装置に、前記複数の第2接続装置のそれぞれに対応する過電流遮断部が設けられているものである。
【0014】
第8の態様は、第1から第7のいずれか1つの態様に係る自動車用配線システムであって、前記第1接続装置は、自動車の車室よりも前側の前室に配設され、前記複数の第2接続装置は、自動車の車室内において左右それぞれに設けられたものを含む。
【発明の効果】
【0015】
第1の態様によると、自動車に搭載される電源システムが異なる場合であっても、第1接続装置と電源とを接続する構成を変更すれば、自動車用配線システムのうち他の大部分をそのままの設計で流用できる。また、バス通信ラインが、第1接続装置と複数の第2接続装置とを順次通って、第1接続装置と複数の第2接続装置とのそれぞれにおいて電気部品に通信可能なように分岐されている。このため、第1接続装置、第2接続装置に接続される電気部品に変更が生じたとしても、第1接続装置、第2接続装置に接続された電気部品は、当該バス通信ラインを通じて通信できる。このため、自動車用配線システムの汎用性をなるべく高めることができる。
【0016】
第2の態様によると、バス通信ラインの一端にゲートウエイ装置が接続されているため、通信プロトコルが異なる他の電気部品を、当該ゲートウエイ装置を介して電気部品に通信可能に接続できる。
【0017】
第3の態様によると、前記第1接続装置及び前記複数の第2接続装置のうちの少なくとも1つは、共通するコネクタを介して電気部品に電源供給及び通信可能に接続されるため、当該第1接続装置及び複数の第2接続装置のうちの少なくとも1つに接続される電気部品の変更に容易に対応できる。
【0018】
第4の態様によると、自動車に対して配線システムを容易に組込むことができる。
【0019】
第5の態様によると、自動車に対して配線システムを容易に組込むことができる。
【0020】
第6の態様によると、複数の第2接続装置のそれぞれに望ましいとされる電流に応じて、適切な導体断面積を有する電源配線部を使い分けることができる。
【0021】
第7の態様によると、過電流遮断時の対応を第1接続装置において容易に対応できる。
【0022】
第8の態様によると、前室に配設された電源を、自動車の車室内において左右それぞれに設けられた電気部品に接続するのに適する。また、前室、車室内の左右それぞれに設けられた電気部品同士を通信可能に接続するのに適する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施形態に係る自動車用配線システムを示すブロック図である。
【
図2】電源システムが異なった場合の自動車用配線システムを示すブロック図である。
【
図3】接続される電気部品を変更した場合の自動車用配線システムを示すブロック図である。
【
図4】コネクタ接続を適用した自動車用配線システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施形態に係る自動車用配線システム30について説明する。
図1は、自動車用配線システム30を示すブロック図である。
【0025】
自動車用配線システム30は、複数の電気部品20、21、22、23が組込まれる自動車10に搭載される。ここでは、自動車10は、ボディ11内空間が、車室12と、前室14とに区画されている。車室12は、乗員を収容する空間及び荷物を収容する空間である。前室14は、車室12よりも前方に位置する空間である。自動車10が内燃機関によって駆動されるものである場合、前室14はエンジンルームである。自動車10が電動機によって駆動されるものである場合、前室14はモータ室である。自動車10が内燃機関及び電動機によって駆動されるものである場合、前室14はエンジン及びモータ室である。
【0026】
電気部品20、21、22、23は、センサ、スイッチ、モータ等のアクチュエータ、照明装置、ヒータ、ECU(電子制御ユニット)等である。電気部品20、21、22、23は、自動車の各部に分散して配置される。ここでは、電気部品20が前室14内に、電気部品21が車室12内の右前側に、電気部品22が車室12内の左前側に、電気部品23が車室12内の後側に配設される部品であるとして説明する。
【0027】
自動車用配線システム30は、第1接続装置40と、複数の第2接続装置50A、50B、50Cとを備える。
【0028】
第1接続装置40は、電気部品20に対して通信及び電源供給可能に接続される。ここでは、第1接続装置40は、前室14内に配置され、主として前室14内に配置される電気部品20に対して通信及び電源供給可能に接続される。
【0029】
複数の第2接続装置50A、50B、50Cは、電気部品21、22、23に対して通信及び電源供給可能に接続される。ここでは、複数の第2接続装置50A、50B、50Cは、車室12内に配置され、主として車室12内に配置される電気部品21、22、23に対して通信及び電源供給可能に接続される。
【0030】
より具体的には、第2接続装置50Aは、車室12内の右前側に配置され、主として車室12内の右前側に配置される電気部品21に対して通信及び電源供給可能に接続される。第2接続装置50Bは、車室12内の左前側に配置され、主として車室12内の左前側に配置される電気部品22に対して通信及び電源供給可能に接続される。第2接続装置50Cは、車室12内の後側に配置され、主として車室12内の後側に配置される電気部品23に対して通信及び電源供給可能に接続される。
【0031】
つまり、自動車10が複数のエリアに分けられ、第1接続装置40と複数の第2接続装置50A、50B、50Cとがエリア毎に配置されている。そして、各エリア内の電気部品20、21、22、23が、自己のエリアに配置された第1接続装置40又は第2接続装置50A、50B、50Cに接続されている。
【0032】
自動車用配線システム30は、第1接続装置40と複数の第2接続装置50A、50B、50Cとの間で相互通信を行うため、バス通信ライン60を備える。バス通信ライン60は、第1接続装置40と複数の第2接続装置50A、50B、50Cとを順次通るように設けられる。換言すれば、バス通信ライン60によって、第1接続装置40と複数の第2接続装置50A、50B、50Cとが数珠つなぎのように接続される。より具体的には、バス通信ライン60は、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)等の多重通信プロトコルに従った信号を伝送する通信ラインであり、例えば、ツイストペア電線によって構成されている。バス通信ライン60は、第1接続装置40と複数の第2接続装置50A、50B、50Cのうちの1つから他の1つに向って、残りのものを経由するように配設される。このため、第1接続装置40と複数の第2接続装置50A、50B、50Cとは、全体的に見て、1つのバス通信ライン60を介して相互通信可能に接続される。ここでは、バス通信ライン60は、第2接続装置50Aから第1接続装置40,第2接続装置50Bを経て、第2接続装置50Cに向うように配設されている。
【0033】
自動車用配線システム30において、複数の多重通信プロトコルが採用される場合、自動車用配線システム30は、上記のようなバス通信ライン60を、各多重通信プロトコルに応じて複数備えていてもよい。
【0034】
バス通信ライン60は、第1接続装置40及び複数の第2接続装置50A、50B、50Cのそれぞれにおいて、電気部品20、21、22、23に通信可能に分岐されている。ここでは、バス通信ライン60は、第1接続装置40及び複数の第2接続装置50A、50B、50Cのそれぞれにおいて分岐されており、分岐ライン62が第1接続装置40及び複数の第2接続装置50A、50B、50Cから外部に導出されて、電気部品20、21、22、23に接続される。このため、電気部品20、21、22、23は、第1接続装置40及び複数の第2接続装置50A、50B、50Cのいずれかにおいて、バス通信ライン60にバス接続される。バス通信ライン60は、多重通信プロトコルに従った信号を伝送する通信ラインであるため、電気部品20、21、22、23は、バス通信ライン60を介して相互通信可能に接続されることになる。
【0035】
バス通信ライン60には、ゲートウエイ装置66が接続されている。ゲートウエイ装置66を通じて、バス通信ライン60に、他の通信プロトコルにて通信を行う他の電気部品68を接続することができる。ゲートウエイ装置66に接続される他の電気部品68としては、インストルメントパネルに設けられる表示装置、スイッチ等が想定される。
【0036】
ここでは、ゲートウエイ装置66は、バス通信ライン60のうち第2接続装置50A側の一端部に接続されており、終端抵抗としての役割をも果す。ゲートウエイ装置66は、バス通信ライン60の一端に接続されているため、他の電気部品を変更する場合には、バス通信ライン60のうち各接続装置40、50間の配線を変更することなく、当該バス通信ライン60の一端側のゲートウエイ装置66と電気部品68との接続構成を変更することによって容易に対応できる。
【0037】
また、バス通信ライン60のうち第2接続装置50C側の端部には、終端抵抗69が接続されている。終端抵抗69は、第2接続装置50C内に設けられてもよいし、第2接続装置50C外に設けられてもよい。
【0038】
自動車10には、複数の電源70、72が搭載されている。ここでは、自動車10が電気自動車であることを想定し、複数の電源70、72として、2種類の電圧のバッテリ70、72が搭載されている。バッテリ70の電圧は、バッテリ72の電圧よりも低い。バッテリ70は、補機バッテリとも呼ばれる低圧バッテリであり、例えば、5V~59Vの電圧を供給する。バッテリ72は、自動車10を走行させるための電動機の駆動に適した電圧を供給する電源であり、例えば、90V~500Vの電圧を供給する高圧バッテリである。
【0039】
バッテリ70、72は、第1接続装置40に接続されて集約される。好ましくは、自動車10に搭載される全ての電源が第1接続装置40に接続される。
【0040】
バッテリ70は、低電圧を供給するため、直接的に第1接続装置40に接続される。バッテリ70から第1接続装置40への接続は、電線、コネクタ等を介して行われる。
【0041】
バッテリ72は、DC-DCコンバータ74を介して第1接続装置40に接続される。DC-DCコンバータ74は、バッテリ72の高電圧を、バッテリ70に電圧に合わせて5V~59Vの低電圧に変換する。バッテリ72から第1接続装置40への接続は、電線、コネクタ等を介して行われる。
【0042】
バッテリ70からの電源ライン80及びバッテリ72からのDC-DCコンバータ74を経由した電源ライン81は、第1接続装置40内の共通電源ライン82に接続されて、一つに集約される。これらの電源ライン80、81については、他の通信ラインと沿わせる必要性はあまりなく、それ自体で配線できることから、運転席、助手席等から離れた経路に配設し易い。
【0043】
複数のバッテリ70、72による電力は、第1接続装置40から複数の第2接続装置50A、50B、50Cのそれぞれに分配される。
【0044】
すなわち、共通電源ライン82は、第1接続装置40内において、第1接続装置40用、複数の第2接続装置50A、50B、50C用に分岐される。ここでは、共通電源ライン82は、4つの分岐電源ライン83,84、85,86に分岐される。
【0045】
分岐電源ライン83は、第1接続装置40から外部に導き出され、当該第1接続装置40に接続される電気部品20に接続される。これにより、当該電気部品20に電源供給がなされる。分岐電源ライン83は、第1接続装置40から直接外部に導きだされて電気部品20に接続されていてもよい。分岐電源ライン83は、第1接続装置40内の配線部分と、第1接続装置40外と電気部品20とを接続する配線部分に分割され、両者がコネクタ接続されてもよい。
【0046】
分岐電源ライン84は、第1接続装置40から外部に導き出され、自動車10内空間を通って第2接続装置50Aに導入される。分岐電源ライン84は、第2接続装置50A内から外部に導き出され、当該第2接続装置50Aに接続される電気部品21に接続される。これにより、当該電気部品21に電源供給がなされる。第2接続装置50Aにおいて、複数の電気部品21が接続される場合には、分岐電源ライン84は、第2接続装置50A内において分岐された後、第2接続装置50A外に導き出され、それぞれの電気部品21に接続される。これにより、第2接続装置50Aに接続される複数の電気部品21に電源供給することができる。
【0047】
分岐電源ライン84は、連続する一つの導電路によって構成されてもよい。分岐電源ライン84は、第1接続装置40内の配線部分、第2接続装置50A内の配線部分、それらの間で自動車に敷設される配線部分とに分割され、それらがコネクタ接続される構成であってもよい。
【0048】
分岐電源ライン85、86は、第1接続装置40から外部に導き出され、自動車10内空間を通って第2接続装置50B、50Cに導入される。そして、上記第2接続装置50Aにおける分岐電源ライン84と同様構成にて、分岐電源ライン85、86が、第2接続装置50B、50Cに接続される電気部品22、23に接続される。
【0049】
なお、第1接続装置40に接続される電気部品20、第2接続装置50A、50B、50Cに接続される電気部品21、22、23のいずれかが、バッテリ70の電圧(又はDC-DCコンバータ74による変圧後の電圧)とは異なる電圧で駆動するものである場合、第1接続装置40に変圧器を組込み、変圧後の電圧を、分岐電源ライン83、84、85、86のいずれかを介して供給するようにしてもよい。
【0050】
それぞれの分岐電源ライン84、85、86のうち第1接続装置40と複数の第2接続装置50A、50B、50Cとの間に設けられる部分を電源配線部84a、85a、86aとすると、複数の電源配線部84a、85a、86aは、異なる導体断面積(延在方向に直交する断面)であるものを含む。ここでは、複数の電源配線部84a、85a、86aは、それぞれ異なる導体断面積に形成される。複数の電源配線部84a、85a、86aのそれぞれの導体断面積は、第2接続装置50A、50B、50Cに接続される電気部品21、22、23に応じて流れる電流に応じて設定される。電源配線部84a、85a、86aの導体断面積は、第1接続装置40と各バッテリ70、72とを接続する各電源ライン80、81の導体断面積よりも小さい。
【0051】
第1接続装置40には、複数の第2接続装置50A、50B、50Cのそれぞれに対応する過電流遮断部87A、87B、87Cが設けられる。過電流遮断部87A、87B、87Cは、過大な電流が流れたときに、電源ラインを遮断する。ここでは、第1接続装置40内において、分岐電源ライン84に過電流遮断部87Aが介挿され、分岐電源ライン85に過電流遮断部87Bが介挿され、分岐電源ライン86に過電流遮断部87Cが介挿されている。
【0052】
第1接続装置40には、自己に接続される電気部品20に対応する過電流遮断部87が設けられている。過電流遮断部87は、分岐電源ライン83に介挿されている。
【0053】
過電流遮断部87、87A、87B、87Cとしてはヒューズである場合が想定されている。過電流遮断部87、87A、87B、87Cは、電流センサと、電流センサの出力に基づいてオンオフ制御される半導体スイッチとの組合せによって構成されていてもよい。
【0054】
ここでは、第2接続装置50A、50B、50Cのそれぞれにも、過電流遮断部88A、88B、88Cが設けられている。過電流遮断部88A、88B、88Cは、第2接続装置50A、50B、50Cのそれぞれにおいて、分岐電源ライン84、85、86に介挿されている。
【0055】
なお、本自動車用配線システム30におけるアース接続は、ボディを経由して行われてもよいし、上記分岐電源ライン84、85、86にアース用の電線を沿わせてなされてもよい。
【0056】
このように構成された自動車用配線システム30によると、自動車10に搭載される電源システムが異なる場合であっても、第1接続装置40と複数の電源とを接続する構成を変更すれば、自動車用配線システム30のうちの他の大部分をそのままの設計で流用できる。例えば、自動車が、
図1に示すような電気自動車10ではなく、
図2に示すように、内燃機関で駆動する自動車10Aである場合を想定する。この場合、自動車10Aには、複数の電源として、低圧バッテリ70と、オルタネータ72Aとが搭載されていることが想定される。この場合には、低圧バッテリ70と、オルタネータ72Aとを第1接続装置40に接続するように変更すれば、自動車用配線システム30の大部分のそのままの設計で流用できる。つまり、第1接続装置40、複数の第2接続装置50A、50B、50Cの設置位置
の変更、それらの間の配線部材の変更、配線経路の変更等を
実施することなく流用し易い。
【0057】
なお、複数の電源と第1接続装置との接続構成を変更する場合、第1接続装置40に予め想定される電源を接続可能な多種のコネクタを設けておいてもよい。また、第1接続装置40自体は、接続される電源に応じて設計変更されてもよい。
【0058】
また、バス通信ライン60が、第1接続装置40と複数の第2接続装置50A、50B、50Cとを順次通って、第1接続装置40と複数の第2接続装置50A、50B、50Cとのそれぞれにおいて電気部品20、21、22、23に通信可能なように分岐されている。このため、第1接続装置40、第2接続装置に接続される電気部品20、21、22、23に変更が生じたとしても、その変更への対応は容易である。例えば、
図3に示すように、第2接続装置50Aに追加の電気部品24を接続する場合を考える。この場合には、電気部品24からの通信ライン24sを第2接続装置50A内に導入してバス通信ライン60にバス接続する。バス通信ライン60では、多重通信プロトコルに従った通信がなされるため、電気部品24は、バス通信ライン60を通じて他の電気部品20、21、22、23に通信可能に接続される。なお、分岐電源ライン84を、第2接続装置50Aで分岐させて二次分岐電源ライン84dを設け、この二次分岐電源ライン84dを電気部品24に接続することで、当該電気部品24に電源供給を行うことができる。
【0059】
これらのように、電源システムが異なる場合、接続対象となる電気部品が異なる場合等において、自動車用配線システム30のなるべく大部分を流用して設計して容易に対応することが可能となり、自動車用配線システム30の汎用性をなるべく高めることができる。
【0060】
また、自動車10を複数のエリアに分割し、エリア毎に第1接続装置40から複数の第2接続装置50A、50B、50Cに電源を分配し、また、エリア毎に電気部品21、22、23を第1接続装置40、第2接続装置50A、50B、50Cに接続して多重通信にて相互通信可能としている。このため、自動車10の電気的な設計変更を、多くの場合で、エリア単位で検討すればよくなる。
【0061】
また、ゲートウエイ装置66は、バス通信ライン60の一端に接続されているため、通信プロトコルが異なる他の電気部品68を、当該ゲートウエイ装置66を介して電気部品20、21、22、23に通信可能に接続できる。また、ゲートウエイ装置66の変更、他の通信プロトコル側の配線経路等を設計変更する場合には、バス通信ライン60の一端よりも外側の要素を設計変更すればよく、自動車用配線システム30についてはそのまま流用して設計し易い。この点からも、自動車用配線システム30の汎用性を高めることができる。
【0062】
また、第1接続装置40に、複数の第2接続装置50A、50B、50Cのそれぞれに対応する過電流遮断部87A、87B、87Cが設けられている。このため、過電流遮断時への対応を、第1接続装置40において容易に対応できる。例えば、ヒューズ交換等を、第1接続装置40において容易に対応できる。
【0063】
また、第1接続装置40は、自動車10の車室12よりも前側の前室14に配設されている。このため、前室14に配設された電源(バッテリ70、72)を、車室12内において左右それぞれに設けられた電気部品21、22、23に接続するのに適する。また、前室14、車室12の左右それぞれに設けられた電気部品20、21、22、23同士を通信可能に接続するのに適する。
【0064】
第2接続装置50A、50Bと第2接続装置50Cとは、前後に設けられているため、前後のエリアに分けて設けられる電気部品21、22と電気部品23とに、電源供給及び通信可能に接続するのに適する。
【0065】
第1接続装置40と複数の第2接続装置50A、50B、50Cとの間、第1接続装置40及び複数の第2接続装置50A、50B、50Cと各電気部品20、21、22、23との間において、通信のための接続は、通信線を介してなされる。通信線としては、ツイストペア電線であってもよいし、一般的な電線であってもよい。
【0066】
第1接続装置40とバッテリ70、72との間、第1接続装置40と複数の第2接続装置50A、50B、50Cとの間、第1接続装置40及び複数の第2接続装置50A、50B、50Cと各電気部品20、21、22、23との間において、電力供給のための接続は、電源線を介してなされる。電源線は、一般的な電線であってもよいし、帯状の導電性板を含む電源線であってもよい。
【0067】
上記通信線又は電源線は、そのまま第1接続装置40又は第2接続装置50A、50B、50C内に導かれ、第1接続装置40又は第2接続装置50A、50B、50Cの内部において分岐されてもよい。また、上記通信線又は電源線は、コネクタ接続を介して第1接続装置40又は第2接続装置50A、50B、50Cの内部の配線に接続されてもよい。
【0068】
例えば、
図4に示すように、第1接続装置40及び複数の第2接続装置50A、50B、50Cのうちの少なくとも1つは、共通するコネクタ90a、90bを介して電気部品20、21、22、23に電源供給及び通信可能に接続
される構成が開示されている。一例を説明すると、第2接続装置50Aにおいて、電源用の内部配線部分51pがコネクタ90aの端子に接続されている。また、第2接続装置50Aにおいて、通信用の内部配線部分51sがコネクタ90aの端子に接続されている。また、電気部品21からの電源線21pがコネクタ90bの端子に接続され、電気部品21からの通信線21sがコネクタ
90bの端子に接続されている。そして、コネクタ90a、90bをコネクタ接続することで、第2接続装置50Aが電気部品21に電源供給及び通信可能に接続される。
図4では、他の第1接続装置40、第2接続装置50B、50Cに対しても、電気部品20、22、23がコネクタ接続される。
【0069】
これにより、第1接続装置40及び複数の第2接続装置50A、50B、50Cの少なくとも1つに対する電気部品20、21、22、23の変更に容易に対応することができる。
【0070】
また、第1接続装置40、第2接続装置50A、50B、50Cの少なくとも1つに(
図4では第2接続装置50A参照)、複数のコネクタ90aを設けておけば、後から追加される電気部品24を容易にコネクタ接続することができる。
【0071】
また、バス通信ライン60のうち第1接続装置40と第2接続装置50A、50B、50Cとの間、又は、複数の第2接続装置50A、50B、50Cの間に設けられる1つの配線部分(例えば、
図4において第1接続装置40と第2接続装置50Aとの間の配線部分60s参照)と、第1接続装置40及び第2接続装置50A、50B、50Cのうちの少なくとも1つの内部配線部分(例えば、第1接続装置40の内部配線部分51s参照)とがコネクタ接続されてもよい。
図4では、配線部分60sの端部にコネクタ92bの端子が接続され、内部配線部分51sの端部にコネクタ92aの端子が接続されている。そして、両コネクタ92a、92bが接続されることで、配線部分60sと内部配線部分51sとがコネクタ接続される。
図4では、バス通信ライン60の他の部分についても、内部配線部分と外側の内線部分とがコネクタ接続される例が開示されている。
【0072】
これにより、バス通信ライン60のうち自動車に敷設される配線部分と、第1接続装置40、複数の第2接続装置50A、50B、50Cとを別々に組込めるため、自動車用配線システム30を自動車10に組込みやすい。
【0073】
また、第1接続装置40と、複数の第2接続装置50A、50B、50Cとの間に設けられる少なくとも1つの電源配線部(例えば、
図4において第1接続装置40と第2接続装置50Aとの間の電源配線部分84p参照)と、第1接続装置40及び第2接続装置50A、50B、50Cのうちの少なくとも1つの内部配線部分(例えば、第1接続装置40の内部配線部分51p参照)とが物理的に分離した状態から接続される構成であってもよい。つまり、電源配線部分84pと、内部配線部分51pとが別々に形成され、それらが製造後、特に、自動車10への組付後に接続されてもよい。
図4では、配線部分84pの端部にコネクタ94bの端子が接続され、内部配線部分51pの端部にコネクタ94aの端子が接続されている。そして、両コネクタ94a、94bが接続されることで、配線部分84pと内部配線部分51pとがコネクタ接続される。
図4では、電源ラインの他の部分についても、内部配線部分と外側の内線部分とがコネクタ接続される例が開示されている。内部配線部分と外側の内線部分との接続は、その他、丸端子を介した接続によってなされてもよい。
【0074】
これにより、電源ラインのうち自動車に敷設される配線部分と、第1接続装置40、複数の第2接続装置50A、50B、50Cとを別々に組込めるため、自動車用配線システム30を自動車10に組込みやすい。
【0075】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【0076】
本開示は、下記の各態様を開示する。
第1の態様は、複数の電気部品が組込まれる自動車に搭載される自動車用配線システムであって、電気部品に対して通信及び電源供給可能に接続される第1接続装置と、電気部品に対して通信及び電源供給可能に接続される複数の第2接続装置と、を備え、バス通信ラインが、前記第1接続装置と前記複数の第2接続装置とを順次通って、前記第1接続装置と前記複数の第2接続装置とのそれぞれにおいて電気部品に通信可能なように分岐され、自動車に搭載される複数の電源が前記第1接続装置に接続されて集約されると共に、前記複数の電源による電力が前記第1接続装置から前記複数の第2接続装置のそれぞれに分配されるものである。
第2の態様は、第1の態様に係る自動車用配線システムであって、前記バス通信ラインの一端に接続されたゲートウエイ装置をさらに備える。
第3の態様は、第1又は第2の態様に係る自動車用配線システムであって、前記第1接続装置及び前記複数の第2接続装置のうちの少なくとも1つは、共通するコネクタを介して電気部品に電源供給及び通信可能に接続されるものである。
第4の態様は、第1から第3のいずれか1つの態様に係る自動車用配線システムであって、前記バス通信ラインのうち前記第1接続装置と前記第2接続装置との間又は前記複数の第2接続装置の間に設けられる少なくとも1つの配線部と、前記第1接続装置及び前記複数の第2接続装置の少なくとも1つの内部配線部分とがコネクタ接続されるものである。
第5の態様は、第1から第4のいずれか1つの態様に係る自動車用配線システムであって、前記第1接続装置と前記複数の第2接続装置との間に設けられる少なくとも1つの電源配線部が、前記第1接続装置と前記複数の第2接続装置とのうちの少なくとも1つに対して物理的に分離した状態から接続されるものである。
第6の態様は、第1から第5のいずれか1つの態様に係る自動車用配線システムであって、前記第1接続装置と前記複数の第2接続装置との間に設けられる複数の電源配線部が、異なる導体断面積であるものを含むものである。
第7の態様は、第1から第6のいずれか1つの態様に係る自動車用配線システムであって、前記第1接続装置に、前記複数の第2接続装置のそれぞれに対応する過電流遮断部が設けられているものである。
第8の態様は、第1から第7のいずれか1つの態様に係る自動車用配線システムであって、前記第1接続装置は、自動車の車室よりも前側の前室に配設され、前記複数の第2接続装置は、自動車の車室内において左右それぞれに設けられたものを含む。
第1の態様によると、自動車に搭載される電源システムが異なる場合であっても、第1接続装置と電源とを接続する構成を変更すれば、自動車用配線システムのうち他の大部分をそのままの設計で流用できる。また、バス通信ラインが、第1接続装置と複数の第2接続装置とを順次通って、第1接続装置と複数の第2接続装置とのそれぞれにおいて電気部品に通信可能なように分岐されている。このため、第1接続装置、第2接続装置に接続される電気部品に変更が生じたとしても、第1接続装置、第2接続装置に接続された電気部品は、当該バス通信ラインを通じて通信できる。このため、自動車用配線システムの汎用性をなるべく高めることができる。
第2の態様によると、バス通信ラインの一端にゲートウエイ装置が接続されているため、通信プロトコルが異なる他の電気部品を、当該ゲートウエイ装置を介して電気部品に通信可能に接続できる。
第3の態様によると、前記第1接続装置及び前記複数の第2接続装置のうちの少なくとも1つは、共通するコネクタを介して電気部品に電源供給及び通信可能に接続されるため、当該第1接続装置及び複数の第2接続装置のうちの少なくとも1つに接続される電気部品の変更に容易に対応できる。
第4の態様によると、自動車に対して配線システムを容易に組込むことができる。
第5の態様によると、自動車に対して配線システムを容易に組込むことができる。
第6の態様によると、複数の第2接続装置のそれぞれに望ましいとされる電流に応じて、適切な導体断面積を有する電源配線部を使い分けることができる。
第7の態様によると、過電流遮断時の対応を第1接続装置において容易に対応できる。
第8の態様によると、前室に配設された電源を、自動車の車室内において左右それぞれに設けられた電気部品に接続するのに適する。また、前室、車室内の左右それぞれに設けられた電気部品同士を通信可能に接続するのに適する。
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0077】
10、10A 自動車
12 車室
14 前室
20、21、22、23、24 電気部品
30 自動車用配線システム
40 第1接続装置
50A、50B、50C 第2接続装置
60 バス通信ライン
66 ゲートウエイ装置
70、72 バッテリ
72A オルタネータ
80、81 電源ライン
82 共通電源ライン
83、84、85、86 分岐電源ライン
90a、90b コネクタ
92a、92b コネクタ
94a、94b コネクタ