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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】給電制御装置及び給電制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/56 20060101AFI20220817BHJP
   H02P 29/028 20160101ALI20220817BHJP
【FI】
G05F1/56 320B
H02P29/028
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019013440
(22)【出願日】2019-01-29
(65)【公開番号】P2020123060
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】中口 真之介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅幸
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-171728(JP,A)
【文献】特開2004-282920(JP,A)
【文献】特開2001-095289(JP,A)
【文献】特開2009-213325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F1/445
G05F1/56
G05F1/613
G05F1/618
H02H7/06-7/097
H02P4/00
H02P25/08-25/098
H02P29/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたモータへの給電を制御する給電制御装置であって、
前記モータへの給電をオンオフするスイッチング素子と、
前記モータに流れる電流を検出する電流検出回路と、
該電流検出回路にて検出された電流に基づいて、前記モータがロック状態にあるか否かを判定し、ロック状態にあると判定された場合、前記電流検出回路にて検出された電流に応じたデューティ比で前記モータへの給電をオンオフさせる制御部と
を備え
前記デューティ比は、前記モータへの給電をオンオフさせる過程における前記モータの発熱が抑えられように設定されており、
前記デューティ比は、大きさが異なる複数の電流に対応付けられ、前記複数の電流それぞれが前記モータに流れた場合、各電流に対応する前記デューティ比が示すオン期間よりも長いオン期間で給電を制御した場合、前記モータの温度が上昇するように設定されている
給電制御装置。
【請求項2】
前記デューティ比は、
前記電流検出回路にて検出された電流が小さい程、前記スイッチング素子のオン時間が長くなるように設定されている
請求項1に記載の給電制御装置。
【請求項3】
前記デューティ比は、
前記モータへの給電をオンオフさせる過程で前記モータのトルク低下が起こらないように設定されている
請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の給電制御装置。
【請求項4】
記デューティ比は、
前記モータが使用される所定の周囲温度において、前記モータのトルク低下が起こらず、かつ前記スイッチング素子のオン時間が最長となるように設定されている
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の給電制御装置。
【請求項5】
前記電流検出回路は、
前記スイッチング素子に直列接続されるシャント抵抗を備える
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の給電制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記電流検出回路にて検出された電流が第1閾値以上又は第2閾値以下である場合、前記スイッチング素子をオフに制御し、前記電流が前記第1閾値と前記第2閾値との間の所定範囲内にある場合、前記モータがロック状態にあると判定する
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の給電制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記車両に設けられたワイパを駆動する前記モータへの給電を制御する
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の給電制御装置。
【請求項8】
車両に搭載されたモータへの給電を制御する給電制御方法であって、
前記モータに流れる電流を検出し、
検出された電流に基づいて、前記モータがロック状態にあるか否かを判定し、
ロック状態にあると判定された場合、検出された電流に応じたデューティ比で前記モータへの給電をオンオフさせるようにしてあり、
前記デューティ比は、前記モータへの給電をオンオフさせる過程における前記モータの発熱が抑えられように設定されており、
前記デューティ比は、大きさが異なる複数の電流に対応付けられ、前記複数の電流それぞれが前記モータに流れた場合、各電流に対応する前記デューティ比が示すオン期間よりも長いオン期間で給電を制御した場合、前記モータの温度が上昇するように設定されている
給電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、給電制御装置及び給電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、車載バッテリから負荷への給電を制御する給電制御装置が搭載されている。負荷は、例えばワイパを駆動するモータである。給電制御装置は、給電経路に接続されたパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等のスイッチング素子を備え、スイッチング素子をオンさせることによりワイパを動作させる。
【0003】
給電制御装置は、給電経路及びモータの状態を監視し、給電経路を遮断する制御を行う。給電経路及びモータの状態には4つの状態、すなわち給電経路が短絡したショート故障状態と、給電経路が開放したオープン故障状態と、モータが動作不能になったロック状態と、正常状態とがある。ロック状態は、何らかの原因でワイパがロックし、固着し、凍結し、又は拘束された状態をいう。ロック状態には、モータが全く動かない状態はもちろん、ワイパとしての機能を発揮できない程度にモータの動きが制限された状態も含まれる。例えば、車両のフロントガラスに雪が堆積している場合、雪の重みでワイパが動かず、モータはロック状態になる。
給電制御装置は、特にショート故障状態又はオープン故障状態にある場合、スイッチング素子をオフにして、給電経路を遮断する。モータ及び自装置を過電流から保護するためである。オープン故障状態にある場合、車載バッテリに接続された電線がモータから外れ、あるいは断線している可能性があり、当該電線が車両のフレーム等に接触すると危険であるため、給電制御装置はスイッチング素子をオフにする。
【0004】
特許文献1には、半導体リレーであるFETの両端電圧からロック状態を判定し、ロック状態においてはロック状態から脱するために、スイッチング素子を一定の周期でオンオフさせる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-171728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された電力供給装置は、ロック時の電流の大きさに拘わらず、一定の周期でスイッチング素子をオンオフさせる構成であるため、効率的にロック状態から脱することができないという問題があった。
ロック電流による発熱を低減し、安全にモータを駆動させるためにはオン時間を短く設定する必要があるが、ロック状態によってはロック電流が小さいこともある。この場合、小さなトルクで短時間だけオン状態となる動作を繰り返すことになり、ロック状態から脱するまでの時間が長くなる。
【0007】
本開示の目的は、モータのロック状態から効率的に脱することができる給電制御装置及び給電制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本態様に係る給電制御装置は、車両に搭載されたモータへの給電を制御する給電制御装置であって、前記モータへの給電をオンオフするスイッチング素子と、前記モータに流れる電流を検出する電流検出回路と、該電流検出回路にて検出された電流に基づいて、前記モータがロック状態にあるか否かを判定し、ロック状態にあると判定された場合、前記電流検出回路にて検出された電流に応じたデューティ比で前記モータへの給電をオンオフさせる制御部とを備える。
【0009】
本態様に係る給電制御方法は、車両に搭載されたモータへの給電を制御する給電制御方法であって、前記モータに流れる電流を検出し、検出された電流に基づいて、前記モータがロック状態にあるか否かを判定し、ロック状態にあると判定された場合、検出された電流に応じたデューティ比で前記モータへの給電をオンオフさせる。
【発明の効果】
【0010】
上記によれば、モータのロック状態から効率的に脱することができる給電制御装置及び給電制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る給電制御装置の構成例を示す回路ブロック図である。
図2】モータの状態と電流の関係を示すグラフである。
図3】テーブルの構成例を示す概念図である。
図4】給電制御の処理手順を示すフローチャートである。
図5】給電制御方法を示すタイミングチャートである。
図6】ロック状態における平均電流に応じたオンオフ制御方法を示す説明図である。
図7】最大トルクに維持可能なデューティ比を説明するためのシミュレーション結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0013】
(1)本態様に係る給電制御装置は、車両に搭載されたモータへの給電を制御する給電制御装置であって、前記モータへの給電をオンオフするスイッチング素子と、前記モータに流れる電流を検出する電流検出回路と、該電流検出回路にて検出された電流に基づいて、前記モータがロック状態にあるか否かを判定し、ロック状態にあると判定された場合、前記電流検出回路にて検出された電流に応じたデューティ比で前記モータへの給電をオンオフさせる制御部とを備える。
【0014】
本態様によれば、制御部は、モータがロック状態にある場合、モータに流れる電流に応じたデューティ比でスイッチング素子をオンオフさせる。従って、モータの電流の大きさに応じてモータの駆動時間を変更することができ、モータのロック状態から効率的に脱することができる。
【0015】
(2)前記デューティ比は、前記電流検出回路にて検出された電流が小さい程、前記スイッチング素子のオン時間が長くなるように設定されている構成が好ましい。
【0016】
本態様によれば、制御部は、モータに流れる電流が小さい程、スイッチング素子のオン時間が長くなるように、スイッチング素子をオンオフさせる。従って、モータに流れる電流が小さい程、モータの駆動時間を長くすることができ、モータのロック状態から効率的に脱することができる。また、モータに流れる電流が大きい程、モータの駆動時間を短くすることによって、モータの発熱を抑えることができる。
【0017】
(3)前記デューティ比は、前記モータへの給電をオンオフさせる過程における前記モータの発熱が抑えられように設定されている構成が好ましい。
【0018】
本態様によれば、制御部は、モータがロック状態になった場合であっても、モータの発熱が抑えられるようなデューティ比でスイッチング素子をオンオフさせる。モータの発熱を抑えることによって、モータに流れる電流の低下を抑えることができる。モータのトルクはモータに流れる電流に比例するため、モータの発熱を抑えることによってモータのトルク低下を防ぐことができる。従って、モータのトルクを維持しながら、スイッチング素子をオンオフさせることができ、モータのロック状態から効率的に脱することができる。
【0019】
(4)前記デューティ比は、前記モータへの給電をオンオフさせる過程で前記モータのトルク低下が起こらないように設定されている構成が好ましい。
【0020】
本態様によれば、制御部は、モータがロック状態になった場合であっても、モータのトルクが低下しないようなデューティ比でスイッチング素子をオンオフさせる。従って、モータのトルクを維持しながら、スイッチング素子をオンオフさせることができ、モータのロック状態から効率的に脱することができる。
【0021】
(5)大きさが異なる複数の電流と、前記デューティ比とを対応付けたテーブルを備え、該テーブルにおける前記デューティ比は、前記複数の電流それぞれが前記モータに流れた場合、各電流に対応する前記デューティ比が示すオン期間よりも長いオン期間で給電を制御した場合、前記モータの温度が上昇するように設定されている構成が好ましい。
【0022】
本態様によれば、制御部は、モータがロック状態になった場合、テーブルを参照し、モータに流れる電流に対応するデューティ比を用いて、スイッチング素子をオンオフさせる。テーブルに設定されているデューティ比は、オンオフ制御によってモータの温度が上昇しないような値、すなわちモータのトルクが低下しないような値に設定されている。従って、モータのトルクが最大になる状態を維持しながら、スイッチング素子をオンオフさせることができ、モータのロック状態から効率的に脱することができる。
【0023】
(6)前記テーブルにおける前記デューティ比は、前記モータが使用される所定の周囲温度において、前記モータのトルク低下が起こらず、かつ前記スイッチング素子のオン時間が最長となるように設定されている構成が好ましい。
【0024】
本態様によれば、モータの駆動時間が長く、しかもモータのトルクが最大になる状態を維持しながら、スイッチング素子をオンオフさせることができ、モータのロック状態から効率的に脱することができる。
【0025】
(7)前記電流検出回路は、前記スイッチング素子に直列接続されるシャント抵抗を備える構成が好ましい。
【0026】
本態様によれば、給電制御装置は、シャント抵抗を用いて電流を検出する構成であるため、精度良く電流の大きさを検出することができる。従って、制御部は、適切にスイッチング素子のオンオフを制御することができ、モータのロック状態から効率的に脱することができる。
【0027】
(8)前記制御部は、前記電流検出回路にて検出された電流が第1閾値以上又は第2閾値以下である場合、前記スイッチング素子をオフに制御し、前記電流が前記第1閾値と前記第2閾値との間の所定範囲内にある場合、前記モータがロック状態にあると判定する構成が好ましい。
【0028】
本態様によれば、モータの電流が第1閾値以上である場合、つまりショート故障状態にある場合、制御部は、スイッチング素子をオフにし、給電経路を遮断する。また、モータの電流が第2閾値以下である場合、つまりオープン故障状態にある場合、制御部は、スイッチング素子をオフにし、給電経路を遮断する。更に、制御部は、モータの電流が第1閾値と、第2閾値との間にある所定範囲内にある場合、ロック状態にあると判定する。
従って、制御部は、ロック状態から脱し得る状態か、ショート故障又はオープン故障等の危険な故障状態かを判別することができ、安全な状態を確認した上でスイッチング素子をオンオフさせることができる。
【0029】
(9)前記制御部は、前記車両に設けられたワイパを駆動する前記モータへの給電を制御する構成が好ましい。
【0030】
本態様によれば、スイッチング素子のオンオフ制御により、ワイパのロック状態から効率的に脱することができる。
【0031】
(10)本態様に係る給電制御方法は、車両に搭載されたモータへの給電を制御する給電制御方法であって、前記モータに流れる電流を検出し、検出された電流に基づいて、前記モータがロック状態にあるか否かを判定し、ロック状態にあると判定された場合、検出された電流に応じたデューティ比で前記モータへの給電をオンオフさせる。
【0032】
本態様によれば、モータの発熱を抑えつつ、モータの駆動時間を変更することができ、モータのロック状態から効率的に脱することができる。
【0033】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る給電制御装置及び給電制御方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0034】
以下、本開示をその実施形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
図1は実施形態に係る給電制御装置の構成例を示す回路ブロック図である。実施形態の給電制御装置は、図示しない車載バッテリからワイパ7a駆動用のモータ7への給電を制御する装置である。給電制御装置は、制御部1、駆動回路2、スイッチング素子3、シャント抵抗4、電流検出回路5及び過電流検出回路6を備える。
【0035】
スイッチング素子3は、例えばNチャネル型のパワーMOSFETである。スイッチング素子3のドレインは車載バッテリのプラス端子に接続され、スイッチング素子3のソースはモータ7のプラス端子に接続される。車載バッテリのマイナス端子及びモータ7のマイナス端子は接地されている。
【0036】
スイッチング素子3のゲートには駆動回路2が接続されている。駆動回路2は、接地電位を基準としたスイッチング素子3のゲートの電圧を上昇させることにより、スイッチング素子3をオン駆動する。
【0037】
電流検出回路5は、シャント抵抗4の両端電圧を検出することによって、当該シャント抵抗4、つまりモータ7に流れる電流を検出する回路であり、当該電流に相当する電圧を制御部1へ出力する。
電流検出回路5の一例を説明する。電流検出回路5は差動増幅器51を備え、反転増幅回路を構成している。差動増幅器51の非反転入力端子は、シャント抵抗4のマイナス端に接続されている。差動増幅器51の反転入力端子は、電気抵抗器52を介してシャント抵抗4のプラス端に接続されている。差動増幅器51の出力端子は、電気抵抗器53を介して接地されている。また差動増幅器51の出力端子は、反転入力端子に接続され、負帰還がかかっている。
【0038】
過電流検出回路6は、モータ7に過電流が流れた場合にスイッチング素子3をオフに制御する回路である。
過電流検出回路6の一例を説明する。過電流検出回路6は差動増幅器61を備える。差動増幅器61の反転入力端子は、モータ7に過電流が流れているか否かを判定するための参照電圧を出力する参照電圧電源62に接続されている。差動増幅器61の非反転入力端子は、電流検出回路5の出力端子が接続されている。差動増幅器61の出力端子は、遮断用スイッチング素子63のゲートに接続されている。遮断用スイッチング素子63のソースは接地されている。遮断用スイッチング素子63のドレインは抵抗器64の一端部に接続され、抵抗器64の他端部はダイオード65のカソードに接続されている。ダイオード65のアノードはスイッチング素子3のゲートに接続されている。
差動増幅器61は、電流検出回路5から出力される電圧と、参照電圧とを比較する。つまり、差動増幅器61は、モータ7に流れる電流と、参照電圧に対応する所定の電流とを比較する。差動増幅器61は、電流検出回路5から出力される電圧の方が参照電圧より大きい場合、遮断用スイッチング素子63をオンにする。つまり、モータ7に過電流が流れている場合、遮断用スイッチング素子63がオンになる。遮断用スイッチング素子63がオンになると、スイッチング素子3はオフになり、給電経路が遮断される。
【0039】
制御部1は、モータ7に流れる電流から、モータ7の状態を判定するための第1閾値、第2閾値及び第3閾値を記憶する(図2参照)。また、制御部1は、モータ7がロック状態にある場合に、モータ7に流れる電流に応じたスイッチング制御を実行するためのテーブル11を備える。
【0040】
図2はモータ7の状態と電流の関係を示すグラフである。横軸は時間、縦軸はモータ7に流れる電流を示している。
第1閾値は、モータ7ないし給電に係る回路がショート故障しているか否かを判定するための閾値である。制御部1は、曲線A1で示すように、スイッチング素子3がオン状態になってから一定時間経過後、モータ7に流れる電流が第1閾値以上である場合、ショート故障であると判定する。
第2閾値は、モータ7ないし給電に係る回路がオープン故障しているか否かを判定するための閾値である。制御部1は、曲線A4で示すように、スイッチング素子3がオン状態になってから一定時間経過後、モータ7に流れる電流が第2閾値以下である場合、オープン故障であると判定する。第2閾値は第1閾値より小さな値である。
第3閾値は、モータ7がロック状態にあるか否かを判定するための閾値である。第3閾値は、第2閾値超、第1閾値未満の値である。制御部1は、曲線A2で示すように、スイッチング素子3がオン状態になってから一定時間経過後、モータ7に流れる電流が第3閾値以上、第1閾値未満である場合、モータ7がロック状態にあると判定する。制御部1は、曲線A3で示すように、スイッチング素子3がオン状態になってから一定時間経過後、モータ7に流れる電流が第2閾値超、第3閾値未満である場合、モータ7が正常状態にあると判定する。
【0041】
図3はテーブル11の構成例を示す概念図である。テーブル11は、ロック状態にあるモータ7に流れる電流と、スイッチング素子3のデューティ比とを対応付けたものである。モータ7のロック状態から効率的に脱するためには、電流に応じた適切なデューティ比でスイッチング素子3をオンオフさせる必要がある。少なくともデューティ比は、モータ7に流れる電流が小さい程、スイッチング素子3のオン時間が長くなるように設定されている。デューティ比は20%以上80%以下の範囲で設定すると良い。例えば、電流が小さいときはデューティ比が50[%]、電流が大きいときはデューティ比が20「%」である。好ましくは、デューティ比は、モータ7への給電をオンオフさせる過程でモータ7の発熱によりトルクが低下しないように設定すると良い。好適なデューティ比の詳細は後述する。
スイッチング素子3をオンオフさせる周期は0.5秒以上3秒以下である。本実施形態では、スイッチング素子3をオンオフさせる周期を1秒として説明する。当該周期が1秒であり、デューティ比が50[%]である場合、制御部1は、スイッチング素子3を500m秒間、オン状態に制御し、次いで500m秒間、オフ状態に制御する。
【0042】
図4は給電制御の処理手順を示すフローチャート、図5は給電制御方法を示すタイミングチャートである。図5中、横軸は時間、縦軸はモータ7に流れる電流を示している。ワイパ7aが動作し、モータ7に電流が流れている状態において、制御部1は以下の処理を実行する。制御部1は、電流検出回路5にて、モータ7に流れる電流を検出する(ステップS11)。
【0043】
次いで、制御部1は、検出した電流に基づいて、ショート故障であるか否かを判定する(ステップS12)。具体的には、制御部1は、ステップS11で検出した電流が第1閾値以上であるか否かを判定する。
【0044】
ショート故障で無いと判定した場合(ステップS12:NO)、制御部1は、検出した電流に基づいて、オープン故障であるか否かを判定する(ステップS13)。具体的には、制御部1は、ステップS11で検出した電流が第2閾値以下であるか否かを判定する。
【0045】
ショート故障であると判定した場合(ステップS12:YES)、又はオープン故障であると判定した場合(ステップS13:YES)、制御部1は、スイッチング素子3をオフにして給電経路を遮断し(ステップS14)、処理を終える。
【0046】
オープン故障で無いと判定した場合(ステップS13:NO)、制御部1は、所定時間t0だけ待機する(ステップS15)。所定時間t0は例えば約10m秒である。所定時間t0は、スイッチング素子3がオンになった後、モータ7の状態に応じた電流値に落ち着くまでの過渡期間以上の時間である。
【0047】
所定時間t0が経過した場合、制御部1は、電流検出回路5が検出した電流に基づいて、ロック状態にあるか否かを判定する(ステップS16)。具体的には、制御部1は、モータ7に流れる電流が第3閾値以上、第1閾値未満であるか否かを判定する。ロック状態であるか否かを判定するための電流は、短時間taで検出すれば良い。具体的には、電流検出回路5にて1回だけ電流を検出すれば足りる。時間taは、制御部1の1クロック分、例えば5m秒である。
【0048】
ロック状態に無いと判定した場合(ステップS16:NO)、制御部1はスイッチング素子3のオン状態を継続させ(ステップS17)、処理を終える。
【0049】
ロック状態にあると判定した場合(ステップS16:YES)、制御部1は、時間tbの間に電流検出回路5にて電流を複数回検出し(ステップS18)、モータ7に流れる平均電流を算出する(ステップS19)。時間tbは、例えば制御部1の4クロック分、例えば20m秒である。
【0050】
次いで、制御部1は、テーブル11を参照し、平均電流に対応するデューティ比を決定する(ステップS20)。そして、制御部1は決定したデューティ比でスイッチング素子3をオンオフ制御し(ステップS21)、処理をステップS11へ戻す。具体的には、図5に示すように、デューティ比をD=オン時間/オフ時間[%]とした場合、制御部1は、スイッチング素子3をtc×D/100秒だけオンに制御し、次いでスイッチング素子3をtc×(100-D)/100秒だけオフに制御し、再びスイッチング素子3をオンにする。
【0051】
図6はロック状態における平均電流に応じたオンオフ制御方法を示す説明図である。図6Aは、モータ7の平均電流が小さいときのスイッチング素子3のオンオフ状態を示し、図6Bはモータ7の平均電流が大きいときのスイッチング素子3のオンオフ状態を示している。制御部1は、図6A及び図6Bに示すように、モータ7の平均電流が小さい程、大きなデューティ比でスイッチング素子3をオンオフさせる。このため、モータ7に流れる電流が小さいときは、モータ7の駆動時間を長くすることができ、モータ7のロック状態から効率的に脱することができる。また、モータ7に流れる電流が大きいときは、モータ7の駆動時間を短くすることによって、モータ7の発熱を抑えることができる。
【0052】
図7は最大トルクに維持可能なデューティ比を説明するためのシミュレーション結果のグラフである。横軸は時間、左側の縦軸は電流、右側の縦軸はモータ7の温度を示している。図7Aは、デューティ比が大きすぎる状態を示しており、図7Bはデューティ比が適切な状態を示している。図7A及び図7Bに示すシミュレーション結果は、モータ7に流れる電流平均値から、モータコイルの抵抗、モータコイル長、コイル表面積、コイル質量、モータ熱容量を算出し、発熱と放熱量を組み合わせ、モータ7の温度上昇と通電電流減少値を求めたものである。シミュレーションの条件は以下の通りであり、初期状態のモータ7の温度を25℃、平均電流を25[A]とした。ハット記号はべき条を示している。Tは温度である。
印加電圧:Va(=12)[V]
銅抵抗率:ρ(=1.5475+0.0068725T)×10^(-8)[Ω・m]
コイル線径:a(=1)[mm]
銅密度:ρcu(=8.94)[g/cm^3]
比熱:A(=0.379)[J/g・K]
熱伝達係数:λ(=10)[W/m^2・K]
ボルツマン定数:K(=5.67×10^(-8))[W/(m^2K^4)]
エナメル放射率:E(=0.37)
【0053】
図7のグラフから分かるように、モータ7をオンさせる期間は長ければ良いものでは無い。図7のグラフ中、太線はスイッチング素子3をオン状態で維持したときのモータ7に流れる電流の変化を示し、太線の破線はモータコイルの温度を示している。モータ7に電流が流れると、温度が上昇し、電流が低下する。モータ7のトルクは電流に比例するため、モータ7のトルクは減少する。
【0054】
図7Aに示すように、オン時間が長いと、モータ7の温度が上昇する。モータ7の温度が上昇すると、モータ7に流れる電流も低下し、結果としてトルクが小さくなる。図7Aはかかる状態を示したものである。
デューティ比が適切にされていると、図7Bに示すように、オンオフ制御を継続してもモータ7の温度上昇を抑えることができ、モータ7のトルクを高い状態で維持することができる。
【0055】
テーブル11には、図7Bのグラフに示すように、モータ7の温度上昇が抑えられるデューティ比、あるいはモータ7のトルクが低下しないようなデューティ比を記憶させると良い。より好ましくは、テーブル11が記憶するデューティ比は、テーブル11が記憶する各電流に対応するデューティ比が示すオン期間よりも長いオン期間で給電を制御した場合、図7Aに示すようにモータ7の温度が上昇してしまうような値に設定すると良い。つまり、デューティ比は、モータ7が使用される所定の周囲温度においてモータ7のトルクが低下せず、モータのオン時間が最長となる値に設定すると良い。言い換えると、所定の周囲温度が任意に設定されており、テーブル11に登録された複数の電流値に対応するデューティが示すオン時間よりも長い時間を設定すると、いずれの電流値についてもモータ7の温度が上昇し、モータ7のトルクが低下しまうようなデューティ比を各電流に対応付けて登録すると良いと言える。
なお、上記最長のオン時間は理論値では無いため、モータ7の温度が上昇しないオン時間と、モータ7の温度が上昇し始める温度との境界を厳密に定めるものでは無く、モータ7の使用環境、その他の要因に基づくある程度の揺らぎは許容されるべきものである。
【0056】
このように構成された実施形態に係る給電制御装置によれば、モータ7のロック状態から効率的に脱することができる。
【0057】
また、モータ7に流れる電流が小さい程、モータ7の駆動時間を長くすることができ、モータ7のロック状態から効率的に脱することができる。また、モータ7に流れる電流が大きい程、モータ7の駆動時間を短くすることによって、モータ7の発熱を抑えることができる。
【0058】
更に、モータ7のトルクが最大になる状態を維持しながら、スイッチング素子3をオンオフさせることができ、モータ7のロック状態から効率的に脱することができる。
【0059】
更にまた、シャント抵抗4を用いて、電流を検出する構成であるため、スイッチング素子3の両端電圧から電流を検出するような構成に比べて精度良く電流を検出することができる。従って、制御部1は、適切にスイッチング素子3のオンオフを制御することができ、モータ7のロック状態から効率的に脱することができる。
【0060】
更にまた、本実施形態では特に車両に設けられたワイパ7aのロック状態から脱することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 制御部
2 駆動回路
3 スイッチング素子
4 シャント抵抗4
5 電流検出回路
6 過電流検出回路
7 モータ
7a ワイパ
11 テーブル
51 差動増幅器
52,53 電気抵抗器
61 差動増幅器
62 参照電圧電源
63 遮断用スイッチング素子
64 抵抗器
65 ダイオード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7