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特許7124737ゲート設定学習システム、情報処理装置、ゲート設定学習方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】ゲート設定学習システム、情報処理装置、ゲート設定学習方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G07B 15/00 20110101AFI20220817BHJP
   G06N 99/00 20190101ALI20220817BHJP
   G08G 1/01 20060101ALI20220817BHJP
   G08G 1/04 20060101ALI20220817BHJP
   G06Q 50/30 20120101ALI20220817BHJP
【FI】
G07B15/00 B
G06N99/00
G08G1/01 E
G08G1/01 F
G08G1/04 D
G06Q50/30
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019014325
(22)【出願日】2019-01-30
(65)【公開番号】P2020123123
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(72)【発明者】
【氏名】長橋 賢一
【審査官】小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-143109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07B 15/00
G07C 9/00- 9/38
G06Q 50/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた設定値に基づいて複数の状態に設定可能な複数のゲート装置それぞれの状態に変動を来す変動情報を取得する変動情報取得部と、
前記変動情報取得部によって取得される前記変動情報に基づいて、前記変動情報に対応する状態に前記複数のゲート装置それぞれを設定するための第1設定値を学習する設定値学習部と、
前記複数のゲート装置の管理者によって判断された前記複数のゲート装置それぞれを設定するための第2設定値が入力された場合に、前記第2設定値が入力されたタイミングで前記変動情報取得部によって取得された前記変動情報、及び前記第2設定値を含む調整データを前記設定値学習部に供給する調整データ供給部と、を備え、
前記調整データ供給部は、
前記管理者の判断レベルに基づいて前記調整データを適用するか否かを判定し、適用すると判定した場合に前記調整データを前記設定値学習部に供給し、
前記設定値学習部は、
前記調整データ供給部によって供給された前記調整データに基づいて自身の学習モデルを調整する、ゲート設定学習システム。
【請求項2】
予め定められた設定値に基づいて複数の状態に設定可能な複数のゲート装置それぞれの状態に変動を来す変動情報を取得する変動情報取得部と、
前記変動情報取得部によって取得される前記変動情報に基づいて、前記変動情報に対応する状態に前記複数のゲート装置それぞれを設定するための第1設定値を学習する設定値学習部と、
前記複数のゲート装置の管理者によって判断された前記複数のゲート装置それぞれを設定するための第2設定値が入力された場合に、前記第2設定値が入力されたタイミングで前記変動情報取得部によって取得された前記変動情報、及び前記第2設定値を含む調整データを前記設定値学習部に供給する調整データ供給部と、
前記第2設定値が入力された場合に、入力された前記第2設定値に基づいて前記複数のゲート装置それぞれの状態を設定する第1設定部と、
前記第1設定部による設定後に撮像された前記複数のゲート装置の周辺画像に基づいて前記複数のゲート装置における通行状態が予め定められた混雑度を超えるか否かを判定する混雑判定部と、を備え、
前記調整データ供給部は、
前記混雑判定部によって前記通行状態が前記混雑度未満であると判定された場合に限り、前記第1設定部による設定に用いられた前記第2設定値を含む前記調整データを前記設定値学習部に供給し、
前記設定値学習部は、
前記調整データ供給部によって供給された前記調整データに基づいて自身の学習モデルを調整する、ゲート設定学習システム。
【請求項3】
予め定められた設定値に基づいて複数の状態に設定可能な複数のゲート装置それぞれの状態に変動を来す変動情報を取得する変動情報取得部と、
前記変動情報取得部によって取得される前記変動情報に基づいて、前記変動情報に対応する状態に前記複数のゲート装置それぞれを設定するための第1設定値を学習する設定値学習部と、
前記複数のゲート装置の管理者によって判断された前記複数のゲート装置それぞれを設定するための第2設定値が入力された場合に、前記第2設定値が入力されたタイミングで前記変動情報取得部によって取得された前記変動情報、及び前記第2設定値を含む調整データを前記設定値学習部に供給する調整データ供給部と、を備え、
前記複数の状態は、前記ゲート装置の通路に対して一方向のみの通行を許可する第1状態、前記ゲート装置の通路に対して他方向のみの通行を許可する第2状態、及び前記ゲート装置の通路に対して両方向からの通行を許可する第3状態のいずれか2つ以上であり、
前記設定値学習部は、
前記調整データ供給部によって供給された前記調整データに基づいて自身の学習モデルを調整する、ゲート設定学習システム。
【請求項4】
予め定められた設定値に基づいて複数の状態に設定可能な複数のゲート装置それぞれの状態に変動を来す変動情報を取得する変動情報取得部と、
前記変動情報取得部によって取得される前記変動情報に基づいて、前記変動情報に対応する状態に前記複数のゲート装置それぞれを設定するための第1設定値を学習する設定値学習部と、
前記複数のゲート装置の管理者によって判断された前記複数のゲート装置それぞれを設定するための第2設定値が入力された場合に、前記第2設定値が入力されたタイミングで前記変動情報取得部によって取得された前記変動情報、及び前記第2設定値を含む調整データを前記設定値学習部に供給する調整データ供給部と、を備え、
前記ゲート装置は、鉄道の駅の改札口に設置され、前記設定値に基づいて前記複数の状態のいずれか一つに設定される自動改札機であり、
前記設定値学習部は、
前記調整データ供給部によって供給された前記調整データに基づいて自身の学習モデルを調整する、ゲート設定学習システム。
【請求項5】
前記調整データ供給部は、
前記管理者の判断レベルに基づいて前記調整データを適用するか否かを判定し、適用すると判定した場合に前記調整データを前記設定値学習部に供給する、請求項2から4のいずれかに記載のゲート設定学習システム。
【請求項6】
前記設定値学習部による学習結果に基づいて前記複数のゲート装置それぞれの状態を設定する第2設定部を更に備える、請求項1からのいずれかに記載のゲート設定学習システム。
【請求項7】
予め定められた設定値に基づいて複数の状態に設定可能な複数のゲート装置それぞれの状態に変動を来す変動情報を取得する変動情報取得部と、
前記変動情報取得部によって取得される前記変動情報に基づいて、前記変動情報に対応する状態に前記複数のゲート装置それぞれを設定するための第1設定値を学習する設定値学習部と、
前記複数のゲート装置の管理者によって判断された前記複数のゲート装置それぞれを設定するための第2設定値が入力された場合に、前記第2設定値が入力されたタイミングで前記変動情報取得部によって取得された前記変動情報、及び前記第2設定値を含む調整データを前記設定値学習部に供給する調整データ供給部と、を備え、
前記調整データ供給部は、
前記管理者の判断レベルに基づいて前記調整データを適用するか否かを判定し、適用すると判定した場合に前記調整データを前記設定値学習部に供給し、
前記設定値学習部は、
前記調整データ供給部によって供給された前記調整データに基づいて自身の学習モデルを調整する、情報処理装置。
【請求項8】
予め定められた設定値に基づいて複数の状態に設定可能な複数のゲート装置それぞれの状態に変動を来す変動情報を取得する変動情報取得部と、
前記変動情報取得部によって取得される前記変動情報に基づいて、前記変動情報に対応する状態に前記複数のゲート装置それぞれを設定するための第1設定値を学習する設定値学習部と、
前記複数のゲート装置の管理者によって判断された前記複数のゲート装置それぞれを設定するための第2設定値が入力された場合に、前記第2設定値が入力されたタイミングで前記変動情報取得部によって取得された前記変動情報、及び前記第2設定値を含む調整データを前記設定値学習部に供給する調整データ供給部と、
前記第2設定値が入力された場合に、入力された前記第2設定値に基づいて前記複数のゲート装置それぞれの状態を設定する第1設定部と、
前記第1設定部による設定後に撮像された前記複数のゲート装置の周辺画像に基づいて前記複数のゲート装置における通行状態が予め定められた混雑度を超えるか否かを判定する混雑判定部と、を備え、
前記調整データ供給部は、
前記混雑判定部によって前記通行状態が前記混雑度未満であると判定された場合に限り、前記第1設定部による設定に用いられた前記第2設定値を含む前記調整データを前記設定値学習部に供給し、
前記設定値学習部は、
前記調整データ供給部によって供給された前記調整データに基づいて自身の学習モデルを調整する、情報処理装置。
【請求項9】
予め定められた設定値に基づいて複数の状態に設定可能な複数のゲート装置それぞれの状態に変動を来す変動情報を取得する変動情報取得部と、
前記変動情報取得部によって取得される前記変動情報に基づいて、前記変動情報に対応する状態に前記複数のゲート装置それぞれを設定するための第1設定値を学習する設定値学習部と、
前記複数のゲート装置の管理者によって判断された前記複数のゲート装置それぞれを設定するための第2設定値が入力された場合に、前記第2設定値が入力されたタイミングで前記変動情報取得部によって取得された前記変動情報、及び前記第2設定値を含む調整データを前記設定値学習部に供給する調整データ供給部と、を備え、
前記複数の状態は、前記ゲート装置の通路に対して一方向のみの通行を許可する第1状態、前記ゲート装置の通路に対して他方向のみの通行を許可する第2状態、及び前記ゲート装置の通路に対して両方向からの通行を許可する第3状態のいずれか2つ以上であり、
前記設定値学習部は、
前記調整データ供給部によって供給された前記調整データに基づいて自身の学習モデルを調整する、情報処理装置。
【請求項10】
予め定められた設定値に基づいて複数の状態に設定可能な複数のゲート装置それぞれの状態に変動を来す変動情報を取得する変動情報取得部と、
前記変動情報取得部によって取得される前記変動情報に基づいて、前記変動情報に対応する状態に前記複数のゲート装置それぞれを設定するための第1設定値を学習する設定値学習部と、
前記複数のゲート装置の管理者によって判断された前記複数のゲート装置それぞれを設定するための第2設定値が入力された場合に、前記第2設定値が入力されたタイミングで前記変動情報取得部によって取得された前記変動情報、及び前記第2設定値を含む調整データを前記設定値学習部に供給する調整データ供給部と、を備え、
前記ゲート装置は、鉄道の駅の改札口に設置され、前記設定値に基づいて前記複数の状態のいずれか一つに設定される自動改札機であり、
前記設定値学習部は、
前記調整データ供給部によって供給された前記調整データに基づいて自身の学習モデルを調整する、情報処理装置。
【請求項11】
予め定められた設定値に基づいて複数の状態に設定可能な複数のゲート装置それぞれの状態に変動を来す変動情報を取得する変動情報取得ステップと、
前記複数のゲート装置の管理者によって判断された前記複数のゲート装置それぞれを設定するための第2設定値が入力された場合に、前記第2設定値が入力されたタイミングで前記変動情報取得ステップによって取得された前記変動情報、及び前記第2設定値を含む調整データを生成する調整データ生成ステップと、
前記管理者の判断レベルに基づいて前記調整データを適用するか否かを判定し、適用すると判定した場合に前記調整データに基づいて、前記変動情報に対応する状態に前記複数のゲート装置それぞれを設定するための第1設定値を学習する学習モデルを調整する学習モデル調整ステップと、備えるゲート設定学習方法。
【請求項12】
予め定められた設定値に基づいて複数の状態に設定可能な複数のゲート装置それぞれの状態に変動を来す変動情報を取得する変動情報取得ステップと、
前記複数のゲート装置の管理者によって判断された前記複数のゲート装置それぞれを設定するための第2設定値が入力された場合に、前記第2設定値が入力されたタイミングで前記変動情報取得ステップによって取得された前記変動情報、及び前記第2設定値を含む調整データを生成する調整データ生成ステップと、
前記第2設定値が入力された場合に、入力された前記第2設定値に基づいて前記複数のゲート装置それぞれの状態を設定する第1設定ステップと、
前記第1設定ステップによる設定後に撮像された前記複数のゲート装置の周辺画像に基づいて前記複数のゲート装置における通行状態が予め定められた混雑度を超えるか否かを判定する混雑判定ステップと、
前記混雑判定ステップによって前記通行状態が前記混雑度未満であると判定された場合に限り、前記第1設定ステップによる設定に用いられた前記第2設定値を含む前記調整データに基づいて、前記変動情報に対応する状態に前記複数のゲート装置それぞれを設定するための第1設定値を学習する学習モデルを調整する学習モデル調整ステップと、備えるゲート設定学習方法。
【請求項13】
予め定められた設定値に基づいて複数の状態に設定可能な複数のゲート装置それぞれの状態に変動を来す変動情報を取得する変動情報取得ステップと、
前記複数のゲート装置の管理者によって判断された前記複数のゲート装置それぞれを設定するための第2設定値が入力された場合に、前記第2設定値が入力されたタイミングで前記変動情報取得ステップによって取得された前記変動情報、及び前記第2設定値を含む調整データを生成する調整データ生成ステップと、
前記調整データに基づいて、前記変動情報に対応する状態に前記複数のゲート装置それぞれを設定するための第1設定値を学習する学習モデルを調整する学習モデル調整ステップと、備え、
前記複数の状態は、前記ゲート装置の通路に対して一方向のみの通行を許可する第1状態、前記ゲート装置の通路に対して他方向のみの通行を許可する第2状態、及び前記ゲート装置の通路に対して両方向からの通行を許可する第3状態のいずれか2つ以上である、ゲート設定学習方法。
【請求項14】
予め定められた設定値に基づいて複数の状態に設定可能な複数のゲート装置それぞれの状態に変動を来す変動情報を取得する変動情報取得ステップと、
前記複数のゲート装置の管理者によって判断された前記複数のゲート装置それぞれを設定するための第2設定値が入力された場合に、前記第2設定値が入力されたタイミングで前記変動情報取得ステップによって取得された前記変動情報、及び前記第2設定値を含む調整データを生成する調整データ生成ステップと、
前記調整データに基づいて、前記変動情報に対応する状態に前記複数のゲート装置それぞれを設定するための第1設定値を学習する学習モデルを調整する学習モデル調整ステップと、備え、
前記ゲート装置は、鉄道の駅の改札口に設置され、前記設定値に基づいて前記複数の状態のいずれか一つに設定される自動改札機である、ゲート設定学習方法。
【請求項15】
請求項11から14のいずれかに記載のゲート設定学習方法の各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の状態のいずれかに状態変化可能な複数のゲート装置それぞれにおける適切な状態を学習することが可能なゲート設定学習システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入場券や乗車券等の通行券を読み取り、通行券に含まれる情報を取得する自動改札機が知られている。このような自動改札機は、施設における通行セキュリティゲートや鉄道における改札口などに設けられている。自動改札機には、通路を開閉するための扉が備えられている。自動改札機は、通行券が正当に処理された場合に扉を開位置に動作させて通路を通行可能に開放し、通行券が読取処理されず、或いは読取不良が生じた場合に扉を閉位置に保持して通行を禁止する。
【0003】
一般に、鉄道の改札口には複数の通路が区画されており、各通路に対応して複数の自動改札機が改札口に設けられている。従来、各自動改札機を管理する駅係員は、入場者及び出場者を円滑に通行させるために、改札口付近の混雑状況を予測して事前に各自動改札機の通路設定を変更し、或いは、改札口付近の現時点の混雑状況に応じて各自動改札機の通路設定を変更している。具体的には、駅係員は、各自動改札機それぞれの通路設定を、出場専用に設定したり、入場専用に設定したり、入出場兼用に設定していた。
【0004】
一方、人間の判断によらず、コンピュータによる演算処理によって通路設定を決定する装置が公知である。例えば、過去の運用実績と現時点の環境情報とに基づいて、有料道路の料金所の複数のゲートにおける運用車線数を決定する車線運用推定装置が開示されている(特許文献1参照)。また、撮像されたゲート周辺の画像から推定された通行人の位置や進行方向に基づいて、複数のゲートそれぞれについて設定すべき状態を判断するゲート制御装置が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-143109号公報
【文献】特開2005-70850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、演算処理によって通路設定を決定する従来手法では、必ずしも、ゲート(改札口等)の周辺の状況に応じた適切な設定値が出力されるとは限られず、著しく不適切な設定値が出力される場合もある。この場合、不適切な設定値に基づいて各ゲートの通路設定が自動で変更されると、そのゲートを通る通行人や車両運転者が迷惑を被る。また、変更後の混雑状況の悪化に気づいた駅係員があわてて通路設定を変更することになり、駅係員の作業負担が大きくなる。
【0007】
また、近年においては、複数のゲートそれぞれの通路設定を機械学習によって判定することも考えられる。しかしながら、ゲートが設けられた箇所の周辺環境が短期間で急激に変化した場合は、その変化に学習が追従せず、判定精度の低下を招くおそれがあり、場合によっては学習モデル自体が陳腐化してその更新を余儀なくされるおそれもある。
【0008】
本発明の目的は、通路に設けられた複数のゲート装置それぞれの状態を設定するための設定値の学習精度を、人間が判断するレベルと同等にすることが可能なゲート設定学習システム、情報処理装置、ゲート設定学習方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明の一の局面に係るゲート設定学習システムは、予め定められた設定値に基づいて複数の状態に設定可能な複数のゲート装置それぞれの状態に変動を来す変動情報を取得する変動情報取得部と、前記変動情報取得部によって取得される前記変動情報に基づいて、前記変動情報に対応する状態に前記複数のゲート装置それぞれを設定するための第1設定値を学習する設定値学習部と、前記複数のゲート装置の管理者によって判断された前記複数のゲート装置それぞれを設定するための第2設定値が入力された場合に、前記第2設定値が入力されたタイミングで前記変動情報取得部によって取得された前記変動情報、及び前記第2設定値を含む調整データを前記設定値学習部に供給する調整データ供給部と、を備える。
前記設定値学習部は、前記調整データ供給部によって供給された前記調整データに基づいて自身の学習モデルを調整する。
【0010】
このように、管理者の判断を含む前記調整データによって前記設定値学習部の学習モデルが調整されて更新される。そのため、ゲート装置の周辺環境の急変に起因して前記学習モデルが陳腐化することを防止することができる。また、管理者の判断を含む前記調整データによって前記学習モデルが調整されるため、調整される度に、調整後の学習モデルによる学習結果が前記管理者の判断レベルに近づき、この調整が繰り返されることにより、前記学習結果が管理者の判断レベルと同等になることが期待できる。また、管理者の判断レベルと同等の学習モデルを用いることにより、管理者によるゲート装置の状態の設定変更の頻度が少なくなり、管理者の作業負担が軽減する。
【0011】
(2) 前記調整データ供給部は、前記管理者の判断レベルに基づいて前記調整データを適用するか否かを判定し、適用すると判定した場合に前記調整データを前記設定値学習部に供給する。
【0012】
前記判断レベルが低い管理者による判断を含む前記調整データによって設定値学習部の学習モデルが調整されると、却って前記学習モデルの学習精度が低下するおそれがある。しかしながら、上述のように、前記管理者の判断レベルに基づいて前記調整データを適用するか否かを判定し、適用すると判定した場合に前記調整データを前記設定値学習部に供給することにより、学習モデルによる学習結果の精度の低下が防止される。
【0013】
(3) 前記ゲート設定学習システムは、前記第2設定値が入力された場合に、入力された前記第2設定値に基づいて前記複数のゲート装置それぞれの状態を設定する第1設定部と、前記第1設定部による設定後に撮像された前記複数のゲート装置の周辺画像に基づいて前記複数のゲート装置における通行状態が予め定められた混雑度を超えるか否かを判定する混雑判定部と、を更に備える。
前記調整データ供給部は、前記混雑判定部によって前記通行状態が前記混雑度未満であると判定された場合に限り、前記第1設定部による設定に用いられた前記第2設定値を含む前記調整データを前記設定値学習部に供給する。
【0014】
前記第1設定部によってゲート装置の状態の設定が変更された後に、前記ゲート装置の周辺の通行状態が悪化した場合は、設定変更の内容が現時点の変動情報に適しておらず、管理者の判断ミスの可能性が高い。したがって、この場合は、上述したように、前記混雑判定部によって前記通行状態が前記混雑度未満であると判定された場合に限り、前記第1設定部による設定に用いられた前記第2設定値を含む前記調整データを前記設定値学習部に供給することが好ましい。その結果、学習モデルによる学習結果の精度を低下させる調整を回避することができる。
【0015】
(4) 前記ゲート設定学習システムは、前記設定値学習部による学習結果に基づいて前記複数のゲート装置それぞれの状態を設定する第2設定部を更に備える。
【0016】
これにより、管理者による設定作業が減少し、管理者の作業負担が軽減する。
【0017】
(5) 前記複数の状態は、前記ゲート装置の通路に対して一方向のみの通行を許可する第1状態、前記ゲート装置の通路に対して他方向のみの通行を許可する第2状態、及び前記ゲート装置の通路に対して両方向からの通行を許可する第3状態のいずれか2つ以上であることが好ましい。
【0018】
(6) 前記ゲート装置は、鉄道の駅の改札口に設置され、前記設定値に基づいて前記複数の状態のいずれか一つに設定される自動改札機である。
【0019】
本発明は、鉄道の駅に設置された複数の自動改札機に好適である。
【0020】
(7) 本発明の他の局面に係る情報処理装置は、予め定められた設定値に基づいて複数の状態に設定可能な複数のゲート装置それぞれの状態に変動を来す変動情報を取得する変動情報取得部と、前記変動情報取得部によって取得される前記変動情報に基づいて、前記変動情報に対応する状態に前記複数のゲート装置それぞれを設定するための第1設定値を学習する設定値学習部と、前記複数のゲート装置の管理者によって判断された前記複数のゲート装置それぞれを設定するための第2設定値が入力された場合に、前記第2設定値が入力されたタイミングで前記変動情報取得部によって取得された前記変動情報、及び前記第2設定値を含む調整データを前記設定値学習部に供給する調整データ供給部と、を備える。
前記設定値学習部は、前記調整データ供給部によって供給された調整データに基づいて自身の学習モデルを調整する。
【0021】
(8) 本発明の他の局面に係るゲート設定学習方法は、予め定められた設定値に基づいて複数の状態に設定可能な複数のゲート装置それぞれの状態に変動を来す変動情報を取得する変動情報取得ステップと、前記複数のゲート装置の管理者によって判断された前記複数のゲート装置それぞれを設定するための第2設定値が入力された場合に、前記第2設定値が入力されたタイミングで前記変動情報取得ステップによって取得された前記変動情報、及び前記第2設定値を含む調整データを生成する調整データ生成ステップと、前記調整データ生成ステップによって生成された調整データに基づいて、前記変動情報に対応する状態に前記複数のゲート装置それぞれを設定するための第1設定値を学習する設定値学習部の学習モデルを調整する学習モデル調整ステップと、備える。
【0022】
(9) 本発明は、前記ゲート設定学習方法の各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラムの発明、又は、このようなプログラムを非一時的に記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体の発明として捉えることもできる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、通路に設けられた複数のゲート装置それぞれの状態を設定するための設定値の学習精度を、人間が判断するレベルと同等にすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の実施形態に係るゲートシステムのネットワーク構成を示す図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係るゲートシステムが適用される複数の自動改札機、及び改札口の周辺の状況を示す見取り図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係るゲートシステムが適用される自動改札機を示す斜視図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係るゲートシステムが適用される自動改札機の構成を示すブロック図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係るゲートシステムが適用される駅サーバの構成を示すブロック図である。
図6図6は、駅サーバが備える通路設定学習部の構成を示すブロック図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係るゲートシステムが適用される駅員端末装置の構成を示すブロック図である。
図8図8は、駅サーバが備える記憶部に記憶される通路設定履歴データを示す図である。
図9図9は、駅サーバが備える制御部が実行する通路設定変更処理の第1の例を示すフローチャートである。
図10図10は、駅サーバが備える制御部が実行する通路設定変更処理の第2の例を示すフローチャートである。
図11図11は、駅サーバが備える制御部が実行する通路設定変更処理の第3の例を示すフローチャートである。
図12図12は、駅サーバが備える制御部が実行する通路設定変更処理の第4の例を示すフローチャートである。
図13図13は、駅サーバが備える制御部が実行する通路設定変更処理の第5の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明を具体化した一例にすぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0026】
[ゲートシステム100]
図1は、本発明の実施形態に係るゲートシステム100(本発明のゲート設定学習システムの一例)を示すネットワーク図である。ゲートシステム100は、鉄道事業者が運営管理する鉄道の駅8の改札口7に設けられた複数の自動改札機1(本発明のゲート装置の一例)に適用されるものであり、図1に示すように、自動改札機1、駅員端末装置2、駅サーバ4(本発明の情報処理装置の一例)、及び、センタ装置5などを含んで構成されている。図1では、鉄道の駅8に設けられた二つの改札口7それぞれに複数の自動改札機1が設置された構成を例示するが、ゲートシステム100は、一つの改札口における少なくとも2つ以上の通路に複数の自動改札機1が設置された構成に適用可能である。
【0027】
なお、ゲートシステム100は、駅8の複数の自動改札機1に適用されるものに限られず、例えば、空港の搭乗口や施設の入場口などの通行セキュリティゲートに設けられている複数の自動入場装置(本発明のゲート装置の一例)や、有料道路の料金所に定められた複数のETCゲートに設けられた複数の自動ゲート装置(本発明のゲート装置の一例)にも適用可能である。
【0028】
駅8には複数の駅務機器が属しており、具体的には、複数の自動改札機1、駅員が使用する駅員端末装置2、精算端末装置3(図2参照)、駅サーバ4、券売機6(図2参照)等の駅務機器が駅8の改札口7の周辺に設置されている。これらの駅務機器は、LAN等のネットワークN1を介して互いに通信可能に接続されている。また、駅8の駅サーバ4は、専用回線や公衆回線等のネットワークN2を介して、鉄道事業者(鉄道会社)が管理するサーバ装置であるセンタ装置5に通信可能に接続されている。
【0029】
自動改札機1は、駅8の改札口7に設置されている。各改札口7それぞれには複数の自動改札機1が設置されている。図2は、改札口7Aの周辺の状況を示す見取り図(レイアウト図)である。図2に示すように、改札口7Aには複数の改札通路9が区画されており、具体的には、6つの改札通路9が区画されている。
【0030】
図3に示すように、自動改札機1は、入場用の自動改札機1A(以下、入場用改札機1Aと称する。)と出場用の自動改札機1B(以下、出場用改札機1Bと称する。)とを互いに対面させた構成である。入場用改札機1Aと出場用改札機1Bとは、互いに対向するように配置されている。改札通路9は、入場用改札機1Aと出場用改札機1Bとの間に形成された空間であり、改札口7Aの内側と外側とを繋いでいる。なお、一方の入場用改札機1Aは、入場時の進行方向(矢印D10の方向)に沿って改札口7Aの外側から内側に入場する利用者(入場者)に対して改札処理(入場改札処理)を行う役割を担う。他方の出場用改札機1Bは、出場時の進行方向(矢印D11の方向)に沿って改札口7Aの内側から外側へ出場する利用者(出場者)に対して改札処理(出場改札処理)を行う役割を担う。以下においては、特に区別しない限り、自動改札機1が入場用改札機1A及び出場用改札機1Bを含んでおり、入場用及び出場用の両方の改札機能を兼ねるものとして説明する。
【0031】
本実施形態では、ゲートシステム100は、複数の自動改札機1それぞれに対して、所定の通路規制となるように通路設定を行うことができる。自動改札機1が取り得る通路規制として、3つの通路規制が定められている。つまり、ゲートシステム100は、3つの通路規制から選択された特定の通路規制となるように自動改札機1の通路設定を行うことができる。
【0032】
自動改札機1が取り得る通路規制は、以下に説明する「入場専用」と、「出場専用」と、「入出場兼用」の3つのタイプがある。具体的には、前記入場専用は、自動改札機1のうちの出場用改札機1Bの改札機能を停止して、入場しようとする利用者(入場者)のみの通行を許可する通路規制である。前記出場専用は、自動改札機1のうちの入場用改札機1Aの改札機能を停止して、出場しようとする利用者(出場者)のみの通行を許可する通路規制である。前記入出場兼用は、入場用改札機1A及び出場用改札機1Bそれぞれの改札機能をともに有効にして、入出場者の双方の通行を許可する通路規制である。複数の自動改札機1の通路設定は、上述の3つのタイプの通行規制のいずれかに設定される。
【0033】
前記入場専用に設定された自動改札機1では、入場改札処理が行われた場合に改札通路9に対して入場時の進行方向D10のみの通行を許可し、逆方向の通行が禁止される。また、前記出場専用に設定された自動改札機1では、出場改札処理が行われた場合に改札通路9に対して出場時の進行方向D11のみの通行を許可し、逆方向の通行が禁止される。また、前記入出場兼用に設定された自動改札機1では、改札通路9に対して入場時に進行方向D10及び出場時の進行方向D11の両方からの通行を許可することが可能であり、先に改札処理が行われた利用者の通行を許可する。
【0034】
各自動改札機1の通路設定は、駅係員が所望する通路規制に対応する通路設定値を駅係員自らが定め、その通路設定値を含む設定値情報を、駅員端末装置2を通じて各自動改札機1に送信することにより変更することが可能である。ここで、前記通路設定値は、複数の自動改札機1それぞれの通路設定の内容(通行規制のタイプ)を示す設定値である。また、前記設定値情報は、複数の自動改札機1それぞれの通路設定を行うための情報である。以下、複数の自動改札機1を管理する駅係員(本発明の管理者の一例)によって適切と判断された前記通路設定値を管理者設定値と称し、この管理者設定値を含む前記設定値情報を管理者設定情報と称する。前記管理者設定値又は前記管理者設定情報は、本発明の第2設定値の一例である。
【0035】
以下、ゲートシステム100が適用される自動改札機1、駅サーバ4、駅員端末装置2、及びセンタ装置5の構成について説明する。
【0036】
[自動改札機1]
図3は、自動改札機1の外観を示す斜視図であり、図4は、自動改札機1の構成を示すブロック図である。
【0037】
自動改札機1は、駅8の改札口7に設置されるものであり、改札口7を通る利用者に対して改札処理を行う。図3に示すように、自動改札機1は、互いに対向するように設置された入場用改札機1A及び出場用改札機1Bを備える。本実施形態では、自動改札機1は、改札通路9を通行しようとする利用者が所有するICカードや切符(磁気券)などの乗車券から前記乗車券に含まれる乗車券情報を取得して、当該乗車券情報に基づく改札処理を行う。具体的には、自動改札機1は、取得した乗車券情報が有効であるか否かを判定し、有効と判定した場合に通行を許可し、無効と判定した場合や乗車券情報が取得されなかった場合に利用者の通行を禁止する。通行が許可される場合、自動改札機1は、フラップドア15を開けて、改札通路9を開放して、利用者が通行可能な状態にする。一方、通行が禁止される場合、自動改札機1は、フラップドア15を閉じて、改札通路9を閉鎖して、利用者が通行できない状態にする。
【0038】
なお、前記乗車券として、前記乗車券情報が記録されたバーコードやQRコード(登録商標)などの情報コードが用いられてもよい。この場合、前記情報コードが印刷された紙媒体、或いは、前記情報コードが表示されたスマートフォンなどの端末装置の表示画面が前記乗車券に代用される。
【0039】
図3及び図4に示すように、自動改札機1は、制御部11と、記憶部12と、上側表示部13と、通信部14と、フラップドア15(15A,15B)と、ICカード読取部16と、サイド表示部17と、撮像部18と、人感センサ19と、を備えており、これらが自動改札機1の筐体10(図3参照)に設けられている。
【0040】
記憶部12は、各種の情報を記憶するHDD又はSSDなどを含む不揮発性の記憶媒体である。記憶部12には、自動改札機1で実行される各種演算処理を制御部11に実行させるための制御プログラム、前記各種演算処理に用いられる各種のデータなどが記憶されている。また、記憶部12には、駅サーバ4やセンタ装置5などから自動改札機1に送信された通路規制に関する通路設定値などの各種情報が記憶されている。
【0041】
上側表示部13は、制御部11からの指示に従って、改札通路9を通行する利用者に対するメッセージを表示する。上側表示部13は、例えば、液晶パネルを有している。図3に示すように、上側表示部13は、自動改札機1の筐体10の上面に設けられている。詳細には、上側表示部13は、筐体10の上面において、改札通路9(図3参照)における利用者の進行方向(矢印D10又は矢印D11の方向)の前方側に配置されている。利用者の通行が許可される場合、上側表示部13には、通行可能であることを示すメッセージが表示される。また、利用者の通行が許可されない場合、上側表示部13には、通行不可(禁止)であることを示すメッセージが表示される。なお、自動改札機1が出場用として用いられる場合は、上側表示部13には、例えば、運賃が不足していることを示すメッセージや、精算端末装置3(図2参照)での精算を促すメッセージが表示されてもよい。
【0042】
通信部14は、自動改札機1を有線又は無線でネットワークN1に接続し、ネットワークN1を介して駅サーバ4や駅員端末装置2などの駅務機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0043】
図3に示すように、人感センサ19は、筐体10に設けられており、詳細には、筐体10において改札通路9側の側面に設けられている。人感センサ19は、改札通路9に進入した利用者を検知するセンサであり、例えば、非接触で利用者を検知する光学式の近接センサである。本実施形態では、改札通路9において入場時の進行方向D10の手前側(入口側)と、前記進行方向の前方側(出口側)のそれぞれに人感センサ19が設けられている。換言すると、人感センサ19は、筐体10の側面において、改札口7よりも内部側の位置と、改札口7よりも外部側の位置に設けられている。例えば、乗車券が読み取られる前に進行方向の手前側の人感センサ19によって改札通路9内の利用者が検知されると、改札処理が行われずに改札通路9に利用者が進入したと判定され、更に進行方向の前方側の人感センサ19によって利用者が検知されると、改札処理が行われずに改札通路9を通過したと判定される。
【0044】
フラップドア15は、自動改札機1の改札通路9において、両サイドの通行口9A,9Bそれぞれの近傍に設けられている。換言すると、フラップドア15は、改札通路9において、改札口7よりも内部側の通行口9Aと、改札口7よりも外部側の通行口9Bに設置されている。前者の通行口9Aは、入場時の進行方向D10の前方側の出口(通行口)であり、後者の通行口9Bは、出場時の進行方向D11の前方側の出口(通行口)である。
【0045】
フラップドア15は、開閉可能な一対の扉であり、各扉は、入場用改札機1A及び出場用改札機1Bそれぞれの側面に回動可能に設けられている。フラップドア15は、モータなどの駆動部(不図示)から駆動力を得て開閉する。前記駆動部が制御部11のフラップドア駆動制御部116によって駆動制御されることにより、フラップドア15が開位置と閉位置との間で変位する。フラップドア15は、入場改札処理又は出場改札処理が行われて利用者の通行が許可された場合に開放される。これにより、利用者は自動改札機1の改札通路9を通過することができる。一方、利用者の通行が許可されない場合は、フラップドア15が閉じられるか、或いは閉位置を維持する。
【0046】
本実施形態では、改札通路9における前記通路規制が前記入出場兼用に設定されている自動改札機1においては、改札通路9の各フラップドア15A,15Bは、いずれも開位置に配置される。この状態では、入場改札処理又は出場改札処理が行われる前に利用者が改札通路9に進入して、人感センサ19(図3参照)によって前記利用者が検知されると、フラップドア15は開位置から閉位置に変位する。
【0047】
例えば、入場時に入場改札処理が行われていない状態で通行口9Bから改札通路9に利用者が進入すると、通行口9Bの人感センサ19によって検知されることにより、通行口9A側のフラップドア15Aが開位置から閉位置に変位される。そして、その後に入場改札処理が行われると、フラップドア15Aが閉位置から開位置に変位して、改札通路9が開放される。一方、入場改札処理が行われなかった場合は、フラップドア15Aは閉位置に維持される。
【0048】
また、出場時に出場改札処理が行われていない状態で通行口9Aから改札通路9に利用者が進入すると、通行口9Aの人感センサ19によって検知されることにより、通行口9B側のフラップドア15Bが開位置から閉位置に変位される。そして、その後に出場改札処理が行われると、フラップドア15Bが閉位置から開位置に変位して、改札通路9が開放される。一方、出場改札処理が行われなかった場合は、フラップドア15Bは閉位置に維持される。
【0049】
なお、上述したようにフラップドア15が動作するように前記通路規制が前記入出場兼用に設定されている自動改札機1の状態(通路の規制状態)は、本発明の複数の状態の一例であり、本発明の第3状態に相当する。
【0050】
また、改札通路9における前記通路規制が前記入場専用に設定されている自動改札機1においては、改札通路9の通行口9Aのフラップドア15Aが閉位置に配置され、通行口9Bのフラップドア15Bは開位置に配置される。この状態では、入場改札処理が行われて利用者の通行が許可された場合にフラップドア15Aが開けられて改札通路9が開放される。また、入場改札処理が行われていない場合は、フラップドア15Aは閉位置を維持して、改札通路9は閉鎖状態を保つ。
【0051】
上述したようにフラップドア15が動作するように前記通路規制が前記入場専用に設定されている自動改札機1の状態(通路の規制状態)は、本発明の複数の状態の一例であり、本発明の第1状態に相当する。なお、前記通路規制が前記入場専用に設定されている場合、出場改札機能が停止されているため、利用者は、その改札通路9からの出場が禁止される。
【0052】
また、改札通路9における前記通路規制が前記出場専用に設定されている自動改札機1においては、改札通路9の通行口9Bのフラップドア15Bが閉位置に配置され、通行口9Aのフラップドア15Aは開位置に配置される。この状態では、出場改札処理が行われて利用者の通行が許可された場合にフラップドア15Bが開けられて改札通路9が開放される。また、出場改札処理が行われていない場合は、フラップドア15Bは閉位置を維持して、改札通路9は閉鎖状態を保つ。
【0053】
上述したようにフラップドア15が動作するように前記通路規制が前記出場専用に設定されている自動改札機1の状態(通路の規制状態)は、本発明の複数の状態の一例であり、本発明の第2状態に相当する。なお、前記通路規制が前記出場専用に設定されている場合、入場改札機能が停止されているため、利用者は、その改札通路9からの入場が禁止される。
【0054】
なお、フラップドア15は、物理的な扉に限られず、例えば、ホログラムを用いた立体画像で現された扉であってもよい。また、フラップドア15に替えて、音声により利用者の通過を許可又は禁止する音声ゲートを用いてもよい。
【0055】
サイド表示部17は、制御部11からの指示に従って、改札通路9を通行しようとする利用者に対するメッセージを表示する。サイド表示部17は、例えば、液晶パネルを有している。図3に示すように、サイド表示部17は、自動改札機1の筐体10の前面(進行方向の手前側の側面)に設けられている。サイド表示部17には、自動改札機1に設定されている通路設定の内容を示す情報、つまり、前記通路規制の内容を示す情報が表示される。例えば、ICカード専用の改札機である場合は、「IC」の文字がサイド表示部17に表示される。また、改札処理が可能である場合は、「○」印がサイド表示部17に表示され、改札処理が不可である場合は、「×」印がサイド表示部17に表示される。
【0056】
ICカード読取部16は、筐体10の上面において前記進行方向の手前側に設けられている。ICカード読取部16は、ICカード形式の乗車券(以下「ICカード」という。)に記録されている情報(乗車券情報)を非接触により読み取る。ICカード読取部16は、例えば、近距離通信によってICカード内の情報を非接触で読み出し、非接触で書き込みを行うリーダライタ装置である。ICカード読取部16により読み取られた情報は制御部11に送信され、制御部11は当該情報に基づいて改札処理を実行する。ICカードを利用する利用者は、ICカード読取部16にICカードを翳して、ICカード読取部16に前記乗車券情報を読み取らせる。
【0057】
なお、乗車券挿入口(不図示)に切符が挿入された場合も、制御部11は、当該切符から読み取った情報に基づいて改札処理を実行する。
【0058】
撮像部18は、筐体10の上面に設けられている。撮像部18は、自動改札機1を利用しようとする利用者を撮像するものであり、詳細には、利用者の顔を撮像する。撮像部18は、具体的にはカメラである。撮像部18は、レンズが前記進行方向の上流側へ向くように設置されている。撮像部18は、入出場時の改札処理が行われる際に、利用者の顔を撮像する。撮像された顔画像は顔画像照合処理に用いられる。当該顔画像照合処理によって、撮像された顔画像と予め登録されている利用者本人の登録済み顔画像とが一致していると判定されると、入出場時の改札処理が行われ、改札通路9の通行が許可される。
【0059】
制御部11は、自動改札機1の各部の動作を制御する。制御部11は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶された不揮発性の記憶媒体である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶媒体であり、前記CPUが実行する各種の演算処理の一時記憶メモリ(作業領域)として使用される。そして、制御部11は、前記ROM又は記憶部12に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより自動改札機1を制御する。
【0060】
図4に示すように、制御部11は、読取処理部111、記録処理部112、通路設定部113(本発明の第1設定部、第2設定部の一例)、通行制御部114、フラップドア駆動制御部116、通知処理部117、などの各種の処理部を含む。
【0061】
制御部11は、前記CPUが前記制御プログラムに従った各種の演算処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。言い換えると、前記CPUは、前記制御プログラムを実行することにより、読取処理部111、記録処理部112、通路設定部113、通行制御部114、フラップドア駆動制御部116、通知処理部117、などの処理部として機能する。また、制御部11に含まれる一部又は全部の処理部が電子回路で構成されていてもよい。また、前記制御プログラムは、複数のプロセッサーを前記各種の処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。なお、制御部11又は前記CPUが、前記制御プログラムを実行するコンピュータの一例である。
【0062】
読取処理部111は、ICカード読取部16により読み取られたICカードの前記乗車券情報、或いは、磁気読取部(不図示)により読み取られた切符の前記乗車券情報を取得する。
【0063】
読取処理部111によって乗車券から前記乗車券情報が取得されると、記録処理部112は、乗車券における当該情報をICカード読取部16や前記磁気読取部(不図示)に更新させる。例えば、記録処理部112は、入場駅の駅名を乗車券に書き込む。また、記録処理部112は、出場時に、ICカードにチャージされている金額から所定の金額(運賃)を減額し、減額された残りの金額をICカードの情報保持部に書き込む。また、記録処理部112は、出場駅の駅名をICカードに書き込む。
【0064】
通路設定部113は、自動改札機1に前記設定値情報が入力された場合に、入力された前記設定値情報に含まれる前記通路設定値に基づいて自動改札機1における通路設定(通路規制の内容)を変更する。本実施形態では、通路設定部113は、自動改札機1の通路設定を、前記通路設定値に基づいて当該通路設定値が示す前記通路規制となるように変更、又は現状に維持する。上述したように、自動改札機1が取り得る前記通路規制は、前記入場専用、前記出場専用、及び前記入出場兼用の3タイプがあり、通路設定部113は、自動改札機1の通路設定を三つの通路規制のいずれかとなるように変更又は維持する。
【0065】
前記設定値情報には、複数の自動改札機1それぞれの識別情報とともに各自動改札機1の設定内容を示す前記通路設定値が含まれている。通路設定部113は、前記設定値情報を受け取ると、自身の自動改札機1に対応する前記通路設定値を抽出して、その通路設定値が示す通路規制となるように自動改札機1の通路設定を変更又は維持する。
【0066】
本実施形態では、駅員端末装置2から前記管理者設定情報(設定値情報)が自動改札機1に入力されるケースと、駅サーバ4から前記設定値情報が自動改札機1に入力されるケースとがある。いずれのケースであっても、通路設定部113は、前記設定値情報を受信すると、自動改札機1の通路設定を変更又は維持する。
【0067】
上述したように、前記管理者設定情報は、駅係員の判断によって決定した各自動改札機1それぞれに対する通路規制を示す前記管理者設定値(通路設定値)を含む情報であり、駅員端末装置2から各自動改札機1に送信される。
【0068】
また、駅サーバ4から各自動改札機1に入力される前記設定値情報は、駅サーバ4の通路設定学習部44(本発明の設定値学習部の一例)による学習結果を含む。後述するように、通路設定学習部44が複数の自動改札機1それぞれの前記通路規制を設定するための通路設定値を学習する。通路設定部113は、通路設定学習部44が学習した前記通路設定値(学習結果)を含む前記設定値情報を受け取ると、前記設定値情報に含まれる前記通路設定値に基づいて自動改札機1の通路設定を変更又は維持する。以下、前記管理者設定情報と区別するために、通路設定学習部44が学習した前記通路設定値を含む前記設定値情報を学習設定情報と称する。前記学習設定情報は、駅サーバ4における自動通路設定モードが有効に設定されている場合に、駅サーバ4から各自動改札機1に送信される。なお、通路設定学習部44については後述する。
【0069】
通行制御部114は、所定の条件を満たした場合に、利用者が改札通路9を通行することを許可又は禁止する。例えば、通行制御部114は、ICカードや切符などの乗車券から読み取られた乗車券情報が有効であると判定すると、利用者が改札通路9を通行することを許可する。一方、通行制御部114は、前記乗車券情報が無効であると判定した場合、利用者が改札通路9を通行することを禁止する。通行が許可された場合、後述のフラップドア駆動制御部116によってフラップドア15が開位置に変位されて、改札通路9が開放される。一方、通行が許可されなかった場合は、フラップドア駆動制御部116によってフラップドア15が閉位置に変位されて、改札通路9は閉鎖される。
【0070】
フラップドア駆動制御部116は、フラップドア15の動作(開閉動作)を制御する。例えば、改札通路9における利用者の通行が許可された場合、フラップドア駆動制御部116は、モータなどの駆動部(不図示)を制御して、フラップドア15を開位置まで変位させる。これにより改札通路9が開放される。一方、改札通路9における利用者の通行が禁止された場合、フラップドア駆動制御部116は、前記駆動部を制御して、フラップドア15を閉位置まで変位させるか、閉じた状態を維持する。これにより、改札通路9が閉鎖される。
【0071】
通知処理部117は、上側表示部13やサイド表示部17に所定の情報を出力して表示させる。本実施形態では、通知処理部117は、通行可能であることを示すメッセージを上側表示部13に表示する。また、利用者の通行が許可されない場合は、通行不可(禁止)であることを示すメッセージを上側表示部13に表示する。また、通知処理部117は、改札処理が可能か否かを識別するための「○」印又は「×」印をサイド表示部17に表示する。通知処理部117は、自動改札機1に設定されている通路設定の内容を示す情報、つまり、前記通路規制を示す情報をサイド表示部17に表示してもよい。
【0072】
[駅サーバ4]
図5は、駅サーバ4の構成を示すブロック図である。駅サーバ4は、駅8内のサーバ室などに設置されるサーバ装置であり、各駅8に設けられている。駅サーバ4は、駅8の駅内ネットワークであるネットワークN1に接続されている自動改札機1などの複数の駅務機器を管理する。なお、駅サーバ4は、1台のコンピュータに限らず、複数台のコンピュータが協働して動作するコンピュータシステムであってもよい。また、駅サーバ4で実行される各種の処理は、複数のプロセッサーによって分散して実行されてもよい。
【0073】
駅サーバ4は、制御部41と、記憶部42と、通信部43と、通路設定学習部44(本発明の設定値学習部の一例)と、を備えている。
【0074】
通信部43は、駅サーバ4を有線又は無線でネットワークN1,N2に接続し、所定の通信プロトコルに従って、ネットワークN1を介して自動改札機1や駅員端末装置2などの駅務機器との間でデータ通信を実行し、ネットワークN2を介してセンタ装置5との間でデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0075】
記憶部42は、各種の情報を記憶するHDD又はSSDなどを含む不揮発性の記憶媒体である。記憶部42には、制御部41に各種演算処理を実行させるための制御プログラムや、駅サーバ4で実行される後述の通路設定変更処理(図8乃至図13参照)に用いられる制御プログラムや、各処理に用いられるデータなどが記憶される。また、記憶部42には、自動改札機1の設置台数や各自動改札機1の識別番号及び位置情報などが記憶されている。
【0076】
なお、本実施形態では、記憶部42が駅サーバ4に設けられた構成を例示するが、例えば、記憶部42内の各種情報の一部又は全部が、ネットワークN1,N2などを通じて駅サーバ4とデータ通信可能な他のサーバ装置やネットワーク接続可能な記憶装置などの外部装置に記憶されていてもよい。また、後述の駅係員管理データ格納部421、通路設定履歴格納部422が前記外部装置に設けられていてもよい。
【0077】
また、記憶部42には、駅係員管理データ格納部421、及び通路設定履歴格納部422などの記憶領域が設けられている。
【0078】
駅係員管理データ格納部421には、駅8に属する複数の駅係員それぞれのID番号、氏名、役職などを含む駅係員管理データが格納されている。前記駅係員管理データは、後述の通路設定変更処理に用いられる。また、前記駅係員管理データには、駅係員ごとに所定の正確度が登録されている。前記正確度は、駅係員ごとに予め定められている。前記正確度は、駅係員が自動改札機1に対して通行規制の内容を変更したことに対する判断の正確性を示すものであり、本発明の判断レベルの一例である。前記正確度は、例えば、駅係員が駅務に携わってきた経験期間(経験年数)、駅8での勤務期間(勤務年数)、過去の判断に対する評価などに基づいて定められるものであり、例えば、1~10ポイントの数値で表される。数値が高いほど正確度が高く、数値が低いほど正確度が低い。前記駅係員管理データにおいて、前記正確度は前記ID番号で検索可能なように管理されている。
【0079】
通路設定履歴格納部422には、通路設定履歴データが格納されている。前記通路設定履歴データには、駅員端末装置2から自動改札機1に送られてきた前記管理者設定情報が含まれている。前記通路設定履歴データは、後述の通路設定変更処理に用いられる。前記通路設定履歴データは、駅係員の判断によって複数の自動改札機1の通路設定が変更された場合に、その変更内容の履歴を記録したログデータである。図8は、前記通路設定履歴データの一例を示す図である。図8に示すように、前記通路設定履歴データには、設定変更に用いられた前記管理者設定情報、設定変更された日時、設定変更した駅係員のID番号、その駅係員の前記正確度(ポイント値)などが含まれている。また、後述の通路設定変更処理において、通路設定の変更後の改札口7における通行状況が悪化したと判定された場合は、前記管理者設定情報に対応づけて、悪化したことを示す判定結果(例えば「×」印)が前記通路設定履歴データに追加される。
【0080】
制御部41は、駅サーバ4の各部の動作を制御する。制御部41は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶された不揮発性の記憶媒体である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶媒体であり、前記CPUが実行する各種の演算処理の一時記憶メモリ(作業領域)として使用される。そして、制御部41は、前記ROM又は記憶部42に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUが実行することにより駅サーバ4を制御する。
【0081】
図5に示すように、制御部41は、入力者判定部411、変動情報取得部412(本発明の変動情報取得部の一例)、調整データ供給部413(本発明の調整データ供給部)、混雑判定部414(本発明の混雑判定部の一例)、学習結果送信部415等の各種の処理部を含む。制御部41は、前記CPUが前記制御プログラムに従った各種の演算処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。また、制御部41に含まれる一部又は全部の処理部が電子回路で構成されていてもよい。なお、前記制御プログラムは、複数のプロセッサーを前記各種の処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0082】
入力者判定部411は、駅員端末装置2から駅係員のID番号が送信されてくると、そのID番号と駅係員管理データ格納部421に格納されている前記駅係員管理データとを照合して、前記ID番号に対応する駅係員の情報を特定する。
【0083】
変動情報取得部412は、後述の通路設定学習部44に入力される調整データを生成するための変動情報を取得する。この変動情報は、通路設定学習部44における機械学習にも用いられる情報である。前記変動情報は、複数の自動改札機1それぞれの通路規制内容に変動を来す要素(変動要素)に関する情報である。
【0084】
前記変動情報は、例えば、駅8の改札口7Aに設置された自動改札機1の設置台数や各自動改札機1の識別番号及び位置情報などを含む。これらの変動情報は、予めこれらの情報が記憶された記憶部42から得ることができる。また、前記変動情報は、駅8の改札口7Aの内側又は外側のコンコース(図2参照)や、改札口7Aの近辺、精算端末装置3や券売機6(図2参照)の周辺、改札口7Aと駅ホームとを接続する階段やエスカレータ(図2参照)、コンコース階とホーム階とを結ぶエレベータ(図2参照)などの各所における利用者の流動性や混雑具合を示す流動指数、当該利用者の進行速度及び進行方向、当該利用者の年齢層、団体利用者の有無、などの情報である。また、前記変動情報は、当該利用者に非健常者が含まれている場合はその人の進行速度、進行方向、位置、年齢層、杖の使用の有無、車いすの利用の有無、白杖の使用の有無などの情報である。これらの変動情報は、駅8の内外に設けられた複数のカメラ(図2参照)によって撮影された動画或いは静止画を解析して得ることができる。
【0085】
また、前記変動情報は、駅8の所在地における気温、湿度、気圧、高度、及び天候を含む。また、前記変動情報は、現時点の季節、暦(年月日)、時刻を含む。また、前記変動情報は、駅8の周辺で開催されるイベント情報や、駅8の周辺における大型施設の有無、駅8における運行状況(運行ダイヤ)、列車の遅延情報などを含む。前記変動情報が、駅8の所在地における気温、湿度、気圧、高度である場合は、変動情報取得部412は、駅8の屋内又は屋外に設けられた温度センサ、湿度センサ、気圧センサ、高度センサから出力されるセンサ出力値を受け取り、そのセンサ出力値が示すリアルタイムな気温、湿度、気圧、高度を取得する。また、前記変動情報が駅8周辺の天候である場合は、変動情報取得部412は、駅サーバ4とインターネット接続されたに天気情報データベースから制御部41が天候情報をダウンロードし、変動情報取得部412は、制御部41から前記天候情報を受け取る。また、変動情報取得部412は、センタ装置5から前記運行状況や前記遅延情報などの情報を取得することができる。
【0086】
また、前記変動情報は、過去の月別又は曜日別の利用者数を示す統計情報(利用者履歴情報)を含んでいてもよい。
【0087】
このような変動情報は、改札口7Aを通行する利用者の通行状況に影響するものであるため、複数の自動改札機1それぞれの通路規制内容に変動を来す情報であるといえる。例えば、改札口7の外側のスペースやコンコースの混雑度合いが高まった場合は、改札口7からの入場利用者が急増すると推測でき、この場合は、通路規制が入場専用に設定された自動改札機1の数を増加させる必要が生じる。また、平日の出勤・通学時刻では、ビジネス街や学校などの付近の駅の出場利用者が急増し、住宅街付近の駅の入場利用者が急増する。そのため、前者の駅では通路規制が出場専用に設定された自動改札機1の数を増加させる必要が生じ、後者の駅では通路規制が入場専用に設定された自動改札機1の数を増加させる必要が生じる。また、運行状況(運行ダイヤ)に乱れが生じたり遅延が生じた場合は、駅8を出場する出場利用者が急増すると推測でき、この場合は、通路規制が出場専用に設定された自動改札機1の数を増加させる必要が生じる。
【0088】
本実施形態では、上述した複数の変動情報に基づいて、後述する通路設定学習部44が各自動改札機1それぞれについての適切な通路規制内容となる前記通路設定値を学習する。
【0089】
調整データ供給部413は、通路設定学習部44に提供される調整データを生成する。前記調整データは、駅係員が所望する通路規制に対応する前記管理者設定情報(第2設定値)を駅員端末装置2から制御部41が受信した受信タイミング(受信した日時)で変動情報取得部412によって取得された前記変動情報と、前記管理者設定情報とを含む。前記調整データは、通路設定学習部44における学習モデルの各種パラメータ(重みやバイアスなど)を調整するためのものであり、所謂教師あり学習における教師データに相当する。本実施形態では、駅係員の判断で決定した前記管理者設定値を含む前記管理者設定情報は、その管理者設定情報を受信したタイミング(受信タイミング)で取得された前記変動情報に対する最適解と見なすことにより、前記変動情報を入力値とし、前記管理者設定情報の前記管理者設定値を前記入力値の最適解としている。
【0090】
また、本実施形態では、調整データ供給部413は、前記受信タイミングで取得された前記変動情報を解析することによりその変動情報の特徴量を抽出し、前記特徴量と前記管理者設定情報とが対応付けられた前記調整データを生成する。そして、調整データ供給部413は、生成した前記調整データを通路設定学習部44に送信する。
【0091】
なお、調整データ供給部413は、前記管理者設定情報を自動改札機1に送信した駅係員の正確度(判断レベル)に基づいて前記調整データを適用するか否かを判定し、適用すると判定した場合に限り、前記調整データを前記通路設定学習部44に送信してもよい。例えば、調整データ供給部413は、前記正確度が所定の閾値(基準レベル)以上である場合に、前記調整データを適用すると判定して、前記調整データを前記通路設定学習部44に送信する。
【0092】
混雑判定部414は、自動改札機1の通路設定部113によって前記管理者設定情報に基づいて通路設定が変更された場合に、その変更後に撮像された自動改札機1の周辺の画像に基づいて、改札口7における通行状態が予め定められた混雑度を超えるか否かを判定する。自動改札機1の周辺の画像は、改札口7周辺や駅8のコンコースなどに設置された複数のカメラから取得することができる。混雑判定部414は、これらの画像を基に、設定変更前の画像と設定変更後の画像とを比較することによって、改札口7の通行状態が前記混雑度を超えるかどうかを判定する。前記設定変更後の画像は、例えば、設定が変更されてから予め定められた設定時間を経過した後の画像である。前記混雑度および前記設定時間は、駅8の利用状況や周辺の環境などによって任意に決定される。
【0093】
なお、本実施形態では、改札口7の通行状態が前記混雑度未満であると判定された場合に限り、調整データ供給部413は前記調整データを前記通路設定学習部44に送信してもよい。
【0094】
学習結果送信部415は、自動設定モードが有効に設定されている場合に、通路設定学習部44による学習結果(通路設定値)を含む前記学習設定情報を自動改札機1に送信する。ここで、前記自動設定モードは、通路設定学習部44による学習結果に基づいて自動的に自動改札機1の通路設定を変更する通路設定制御モードである。前記自動設定モードの設定値は、例えば、駅サーバ4の記憶部42に記憶されており、当該設定値の有効又は無効は、駅員端末装置2からの要求によって変更可能である。なお、前記自動設定モードが無効に設定されている場合は、前記学習設定情報は前記自動改札機1に送信されず、仮に学習結果が通路設定学習部44から出力されても、その学習結果は学習履歴データとして記憶部42に記憶される。
【0095】
以下、図6を参照して、通路設定学習部44について説明する。ここで、図6は、駅サーバ4が備える通路設定学習部44の構成を示すブロック図である。
【0096】
通路設定学習部44は、設定すべき自動改札機1の通路規制の設定内容である通路設定値を機械学習により特定するよう構成された学習装置であり、前記通路設定値を特定するための学習モデルを有している。本実施形態では、通路設定学習部44は、入力される前記変動情報に適するように、複数の自動改札機1の通路設定、上述した3タイプの通行規制の配分、各通行規制が設定される自動改札機1の位置などを示す前記通路設定値を学習結果として出力する。ここで、前記学習結果として出力された前記通路設定値、又は前記学習結果は、本発明の第1設定値の一例である。
【0097】
図6に示すように、通路設定学習部44は、調整データ取得部441と、学習部442と、学習モデル調整部443と、を備える。通路設定学習部44は、汎用的なCPUを用いることができるが、より高速な演算処理を可能にするために、例えば、GPGPU(General-Purpose computing on Graphics Processing Units)や大規模PCクラスター等を用いることが望ましい。
【0098】
調整データ取得部441は、調整データ供給部413から送信される前記調整データを取得する。取得された前記調整データは、学習部442の学習に用いられる情報であり、通路設定学習部44内の図示しない記憶部に記憶されるとともに、学習部442に入力される。また、学習部442には、変動情報取得部412によって取得された上述の複数の変動情報が入力されて、前記変動情報が学習部442における機械学習に用いられる。なお、本実施形態では、制御部41に変動情報取得部412が設けられた構成を例示するが、変動情報取得部412は通路設定学習部44に設けられていてもよい。
【0099】
学習部442は、入力された前記変動情報に基づいて、前記通路設定値を学習する。本実施形態では、学習部442は、取得された前記変動情報のみならず、調整データ取得部441によって取得された前記調整データをも用いて、前記変動情報に対応する適切な前記通路設定値を機械学習する。
【0100】
学習部442は、入力された前記変動情報の集合から、その中にある有用な規則やルール、知識表現、判断基準などの特徴量を解析によって抽出し、その判断結果を出力するとともに、知識の学習を行う機能を備えている。機械学習には、教師あり学習(Supervised Learning)、教師なし学習(Unsupervised Learning)、強化学習(Reinforcement Learning)などのアルゴリズムがあり、更に、これらの手法を実現するうえで、特徴量そのものの抽出を学習する、「深層学習(ディープラーニング:Deep Learning)」と呼ばれる手法が用いられる。本実施形態では、学習部442は、上述した各種のアルゴリズムに基づく学習モデルを有している。
【0101】
ここで、教師あり学習は、事前に入力されたデータから、その「入力と出力の関係」を学習するアルゴリズムである。入力されるデータには、入力値とともに、そのデータの正解が付与されており、このようなデータを大量に学習部442に与えることで、学習部442は、それらのデータにある特徴を学習し、入力から出力(結果)を推定する。教師あり学習では、入力と出力との誤差を数値化するための誤差関数(クロスエントリピー関数など)が用いられる。教師あり学習では、前記誤差が小さくなるように学習モデルのパラメータ(重みやバイアス)を調整することにより、与えられた入出力データ間の関係を学習する。この学習ができれば、その関係性を未知のデータに適用することにより、出力の予想が可能になる。
【0102】
教師なし学習は、正解となる出力データを与えられることなく、大量に与えられた入力データから、そのデータの構造、特性、新たな知識などの特徴量を学習するアルゴリズムである。なお、学習する元となるデータに正解が付与されていない点で、教師あり学習とは異なる。
【0103】
強化学習は、教師あり学習、教師なし学習のような固定的で明確なデータを元にした学習ではなく、プログラム自体が、与えられた環境(現在の状態)を観測し、連続した一連の行動を評価し、環境に行動が与える相互作用を踏まえて適切な行動、つまり、将来的に得られる報酬を最大にするための行動を自ら学習するアルゴリズムである。代表的な手法としてTD学習やQ学習が知られている。
【0104】
なお、強化学習は、行動が引き起こす結果が未知である。そのため、学習部442の機械学習として強化学習を採用する場合、学習したい前記通路設定値が全く分からない状態から学習がスタートすることになり、初期段階においては、学習によって得られた前記通路設定値が前記変動情報に適したものとはなっていない。そのため、一般には、教師あり学習で事前学習を行い、事前学習した入出力の関係性を初期状態として、その後に強化学習が適用される。
【0105】
学習モデル調整部443は、調整データ取得部441から入力された前記調整データに基づいて、学習部442の学習モデルのパラメータを調整する。
【0106】
ところで、複数の自動改札機1の通路設定を学習部442による学習結果に委ねたとしても、改札口7の周辺の状況を含む前記変動情報に応じた適切な解が出力されるとは限られず、著しく不適切な解が出力される場合もある。この場合、自動改札機1の通路設定が前記変動情報に見合わない不適切な内容に変更されることとなり、改札口7を通行する利用者が迷惑を被る。また、変更後の混雑状況の悪化に気づいた駅係員があわてて通路設定を変更することになり、駅係員の作業負担が大きくなる。また、駅8の周辺に学校や大型ショッピング施設ができるなどによって周辺環境が急激に変化した場合は、その変化に学習モデルによる学習が追従せず、学習精度の低下を招くおそれがあり、場合によっては学習モデル自体が陳腐化してその更新を余儀なくされるおそれがある。
【0107】
これに対して、本実施形態では、学習モデル調整部443が、前記調整データに基づいて、学習部442の学習モデルのパラメータを調整して、急変する変動情報に対応できるように更新するため、学習モデルの陳腐化を防止するとともに、学習精度を人間が判断するレベルと同等にすることが可能となる。
【0108】
[駅員端末装置2]
図7は、駅員端末装置2の構成を示すブロック図である。駅員端末装置2は、鉄道において駅務を行う駅係員が利用する端末装置であり、例えば、改札口7Aに隣接する駅務室90(図2参照)に設置された情報処理装置や、駅係員が携帯して所持可能なスマートフォン、携帯電話、又はタブレット端末などの携帯端末である。駅員端末装置2は、有線又は無線でネットワークN1に接続し、ネットワークN1を介して駅サーバ4や自動改札機1などの他の駅務機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を行う。駅係員は、駅員端末装置2を操作することにより、駅員端末装置2が受信した各種情報を閲覧、確認することができ、また、複数の自動改札機1の通路設定を変更することができる。
【0109】
図7に示すように、駅員端末装置2は、制御部21と、入力部22と、記憶部23と、表示部24と、通信部25と、IDカード読取部26と、を備えている。
【0110】
入力部22は、キーボード、マウス、タッチパネルなどのユーザインターフェースである。駅係員は、入力部22を用いて駅員端末装置2を操作する。
【0111】
記憶部23は、各種の情報を記憶するHDD又はSSDなどを含む不揮発性の記憶媒体である。記憶部23には、駅員端末装置2で実行される各種演算処理を制御部21に実行させるための制御プログラム、前記各種演算処理に用いられる各種のデータなどが記憶されている。また、記憶部23には、駅サーバ4やセンタ装置5などから送信された各種情報が一時的に格納される場合がある。
【0112】
表示部24は、例えば液晶パネルである。この表示部24には、自動改札機1の通路設定を変更するためのGUI画面や、駅係員に対するメッセージなどが、制御部21からの指示に従って表示される。
【0113】
通信部25は、駅員端末装置2を有線又は無線でネットワークN1に接続し、ネットワークN1を介して駅サーバ4や自動改札機1などの他の駅務機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0114】
IDカード読取部26は、駅係員に配付されたIDカードから、当該IDカードに含まれている駅係員のID番号を非接触で読み取る。IDカード読取部26により読み取られた情報は制御部21によって駅サーバ4に送信されて、駅係員の認証に用いられる。
【0115】
制御部21は、駅員端末装置2の各部の動作を制御する。制御部21は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶された不揮発性の記憶媒体である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶媒体であり、前記CPUが実行する各種の演算処理の一時記憶メモリ(作業領域)として使用される。そして、制御部21は、前記ROM又は記憶部32に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより駅員端末装置2を制御する。
【0116】
制御部21は、設定値生成部211と、通知処理部212とを含む。
【0117】
制御部21は、前記CPUが前記制御プログラムに従った各種の演算処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。言い換えると、前記CPUは、前記制御プログラムを実行することにより、設定値生成部211、及び通知処理部212として機能する。また、制御部21に含まれる前記各種の処理部が電子回路で構成されていてもよい。また、前記制御プログラムは、複数のプロセッサーを前記各種の処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。なお、制御部21又は前記CPUが、前記制御プログラムを実行するコンピュータの一例である。
【0118】
設定値生成部211は、駅係員による操作によって複数の自動改札機1の通路設定を変更するための指示情報が入力された場合に、その指示情報に対応する前記管理者設定値を含む前記管理者設定情報を生成する。そして、駅係員による操作によって設定変更指示が入力されると、制御部21は、前記管理者設定情報を複数の自動改札機1に送信して、各自動改札機1の通路設定を通路設定部113(図4参照)に変更させる。また、制御部21は、前記管理者設定情報を駅サーバ4にも送信して、駅サーバ4に前記調整データを生成させる。
【0119】
通知処理部212は、駅係員に通知する各種メッセージを出力して表示部24に表示する。
【0120】
[センタ装置5]
センタ装置5は、駅8を含む鉄道事業を運営する鉄道事業者が管理する中央監視装置であり、鉄道事業者が運営する全ての駅8の駅サーバ4や自動改札機1などの駅務機器を管理する。図1に示すように、センタ装置5は、無線によりネットワークN2に接続し、所定の通信プロトコルに従って、ネットワークN2を介して駅サーバ4や他の駅務機器との間でデータ通信を実行する。
【0121】
[通路設定変更処理]
以下、図9乃至図13を参照して、ゲートシステム100の駅サーバ4の制御部41によって実行される複数の自動改札機1の通路設定を変更する通路設定変更処理(学習モデル調整処理を含む)の第1乃至第5の例について説明するとともに、本発明のゲート設定学習方法について説明する。各図において、S11,S12,・・・は処理手順の番号(ステップ番号)を示す。
【0122】
[通路設定変更処理の第1の例]
まず、図9を参照して、前記通路設定変更処理(第1の例)について説明する。
【0123】
図9に示すように、ステップS11において、制御部41は、駅係員のID番を受信したかどうかを判定する。駅係員が駅員端末装置2にサインインするために自身のIDカードをIDカード読取部26に読み取らせると、駅員端末装置2の制御部21は、IDカードから読み取ったID番号を駅サーバ4に送信する。制御部41は、駅サーバ4の通信部43にID番号の情報が入力された場合に、ID番号を受信したと判定する。
【0124】
ステップS12では、制御部41は、ステップS11で取得したID番号と前記駅係員管理データとを照合して、駅員端末装置2からID番号を入力した入力者(駅係員)を判定する。ステップS12において照合一致した場合は、駅員端末装置2にサインインを許可する許可信号を送信する。この許可信号を受信した駅員端末装置2では、駅係員の手動による自動改札機1の通路設定の変更が可能となる。なお、照合一致した場合は、前記駅係員管理データから、受信したID番号に対応する前記正確度を抽出する。
【0125】
次のステップS13では、制御部41は、各自動改札機1の通路設定を変更するための前記管理者設定情報を受信したかどうかを判定する。駅係員が複数の自動改札機1それぞれの通路設定を変更するために、駅員端末装置2を操作して、設定変更の内容を決定し、変更指示を入力すると、駅係員が所望する通路規制に対応する前記管理者設定値を含む前記管理者設定情報(第2設定値)が各自動改札機1に送信され、更に、駅サーバ4にも送信される。各自動改札機1では、前記管理者設定情報を受信すると、前記管理者設定情報に含まれている前記管理者設定値に基づいて、通行規制に関する通路設定を変更する。一方、駅サーバ4では、制御部41は、駅サーバ4の通信部43に前記管理者設定情報が入力された場合に、前記管理者設定情報を受信したと判定する。
【0126】
ステップS13において前記管理者設定情報を受信すると、制御部41は、受信した前記管理者設定情報を通路設定履歴格納部422に格納されている前記通路設定履歴データに記憶する(S14)。この場合、制御部41は、前記管理者設定情報とともに、前記管理者設定情報の受信日時、設定変更を行った駅係員のID番号、当該駅係員の前記正確度を前記通路設定履歴データに書き込む。
【0127】
次のステップS15では、制御部41は、前記管理者設定情報を受信したタイミングにおける前記変動情報を取得する。この場合、制御部41は、取得した前記変動情報を解析することによりその変動情報の特徴量を抽出する。なお、ステップS15は、本発明の変動情報取得ステップの一例である。
【0128】
ステップS13において前記管理者設定情報を受信し、且つ、ステップS15において前記変動情報の特徴量を抽出すると、制御部41は、前記管理者設定情報と前記特徴量とから、通路設定学習部44に提供される前記調整データを生成する(S16)。なお、ステップS16は、本発明の調整データ生成ステッププの一例である。
【0129】
その後、制御部41は、ステップS16で生成された前記調整データを通路設定学習部44に入力する(S17)。そして、前記調整データが通路設定学習部44に入力されると、前記調整データが学習モデル調整部443に転送され、学習モデル調整部443によって学習部442の学習モデルが調整される(S18)。具体的には、前記学習モデルのパラメータ(重みやバイアス)が調整される。なお、ステップS18は、本発明の学習モデル調整ステップの一例である。
【0130】
このように、本実施形態では、駅係員の判断を含む前記調整データによって学習部442の学習モデルが調整されて更新されるため、駅8の周辺環境の急変に起因して学習モデルが陳腐化することを防止することができる。また、駅係員の判断を含む前記調整データによって学習モデルが調整されるため、調整される度に、調整後の学習モデルによる学習結果が人間の判断レベルに近づき、前記調整が繰り返されることにより、前記学習結果が人間の判断レベルと同等になることが期待できる。また、人間の判断レベルと同等の学習モデルを用いることにより、駅係員による設定変更の頻度が少なくなり、駅係員の作業負担が軽減する。
【0131】
[通路設定変更処理の第2の例]
次に、図10を参照して、前記通路設定変更処理(第2の例)について説明する。
【0132】
図10に示すように、当該通路設定変更処理では、上述したステップS11~S16の処理が行われ、その後に、ステップS31の判定処理が行われる。
【0133】
ステップS31では、制御部41は、駅員端末装置2から自動改札機1に送信された前記管理者設定情報に基づいて各自動改札機1の通路設定が変更された後の各自動改札機1の通行状態が予め定められた前記混雑度を超えているか否かを判定する。つまり、制御部41は、通路設定の変更後の改札口7の通行状態が変更前に比べて悪化しているかどうかを判定する。かかる判定は、改札口7周辺や駅8のコンコースなどに設置された複数のカメラによって撮影された設定変更前後の動画或いは静止画を比較することにより判定することができる。
【0134】
ステップS31において、設定変更後の通行状態が前記混雑度以下であると判定されると(S31のNo)、制御部41は、ステップS17以降の処理を行う。つまり、制御部41は、前記調整データを通路設定学習部44に入力する(S17)。その後、学習モデル調整部443によって学習部442の学習モデルが前記調整データに基づいて調整される(S18)。
【0135】
一方、ステップS31において、設定変更後の通行状態が前記混雑度を超えていると判定されると(S31のYes)、次のステップS32において、制御部41は、設定変更に用いられた前記設定値情報に対応して、通行状態が悪化したことを示す判定結果「×」印を前記通路設定履歴データに書き込む。
【0136】
次のステップS33では、制御部41は、駅員端末装置2に対して、設定変更を要求するための要求信号を送信する。前記要求信号を受けて、駅係員が駅員端末装置2を操作して、所定の設定時間T1以内に、新たな前記管理者設定情報が各自動改札機1及び駅サーバ4に送信されて設定変更が行われると(S34のYes)、ステップS14以降の処理が繰り返される。
【0137】
前記要求信号が送信されたにも拘わらず、前記設定時間T1を経過するまでに設定変更がなされず(S34のNo)、且つ、前記自動設定モードが無効に設定されている場合は(S35のNo)、制御部41は、各自動改札機1それぞれに、設定変更前の前記通路設定値を含む前記設定値情報を送信して、各自動改札機1の通路設定を変更前の状態に戻す。
【0138】
一方、前記設定時間T1を経過するまでに設定変更がなされず(S34のNo)、且つ、前記自動設定モードが有効に設定されている場合は(S35のYes)、制御部41は、通路設定学習部44に現時点の前記変動情報に基づく学習を行わせ(S37)、その後、各自動改札機1それぞれに、通路設定学習部44による学習結果(通路設定値)を含む前記学習設定情報を送信して、各自動改札機1それぞれの通路設定を前記学習結果に基づいて変更させる(S38)。
【0139】
設定変更後の自動改札機1周辺の通行状態が悪化した場合は、変更後の通路設定が現時点の変動情報に適しておらず、駅係員の判断ミスの可能性が高い。したがって、この場合は、上述したように、通路設定を変更前の元の設定に戻すか、或いは、自動設定モードが有効な場合は、通路設定学習部44による学習結果に基づいて通路設定を変更することが好ましい。
【0140】
[通路設定変更処理の第3の例]
次に、図11を参照して、前記通路設定変更処理(第3の例)について説明する。
【0141】
図11に示すように、当該通路設定変更処理では、上述したステップS11~S16の処理が行われ、その後に、ステップS41の判定処理が行われる。
【0142】
ステップS41では、制御部41は、自動改札機1に対して通路設定の変更を指示した駅係員の前記正確度が基準値未満かどうかを判定する。制御部41は、駅係員のサインインの際に取得したID番号に対応する前記正確度を駅係員管理データ格納部421に格納されている前記駅係員管理データから抽出し、抽出した正確度が前記基準値未満かどうかを判定する。ここで、前記正確度が前記基準値未満である場合は(S41のYes)、前記調整データが現時点の変動情報に適切なものである可能性が低いため、この場合は、前記調整データを通路設定学習部44に入力せずに一連の処理を終了する。
【0143】
一方、前記正確度が前記基準値を超える場合は(S41のNo)、前記調整データが現時点の変動情報に適切なものである可能性が高いため、この場合は、制御部41は、ステップS17以降の処理を行う。つまり、制御部41は、前記調整データを通路設定学習部44に入力する(S17)。その後、学習モデル調整部443によって学習部442の学習モデルが前記調整データに基づいて調整される(S18)。
【0144】
前記正確度が低い駅係員による判断を含む前記調整データによって学習部442の学習モデルが調整されると、却って前記学習モデルの学習精度が低下するおそれがある。したがって、この場合は、前記正確度が前記基準値を超える場合に限り、前記調整データに基づく前記学習モデルの調整を行うことが好ましい。これにより、学習モデルによる学習結果の精度の低下が防止される。
【0145】
[通路設定変更処理の第4の例]
次に、図12を参照して、前記通路設定変更処理(第4の例)について説明する。
【0146】
図12に示すように、当該通路設定変更処理では、上述したステップS11~S16の処理が行われ、その後に、上述したステップS31の判定処理が行われる。そして、ステップS31において設定変更後の通行状態が前記混雑度を超えていると判定されると(S31のYes)、制御部41は、上述したステップS41の判定処理を行う。その後、ステップS41において、前記正確度が前記基準値未満と判定されると、一連の処理が終了し、前記正確度が基準値を超えると判定されると、ステップS17以降の処理が行われる。なお、ステップS31において通行状態が前記混雑度を超えていると判定された場合は、ステップS32(図10参照)以降の処理が行われる。
【0147】
このように、通行状態が悪化していないと判定された場合でも、前記正確度が前記基準値を超える場合に限り、前記調整データに基づく前記学習モデルの調整を行うようにすることで、学習モデルによる学習結果の精度の低下が防止される。
【0148】
[通路設定変更処理の第5の例]
次に、図13を参照して、前記通路設定変更処理(第5の例)について説明する。
【0149】
図13に示すように、当該通路設定変更処理では、上述したステップS11~S16の処理が行われ、その後に、上述したステップS31の判定処理が行われる。そして、ステップS31において設定変更後の通行状態が前記混雑度を超えていると判定されると(S31のYes)、制御部41は、上述したステップS41の判定処理を行う。その後、ステップS41において、前記正確度が基準値を超えると判定されると、ステップS17以降の処理が行われる。
【0150】
一方、ステップS41において、前記正確度が前記基準値未満と判定されると、次のステップS42では、制御部41は、前記正確度が前記基準値よりも小さい下限値よりも大きいか否かが判定される。ここで、前記正確度が前記下限値よりも小さいと判定された場合は、前記調整データによる前記学習モデルの調整を行わないまま、一連の処理が終了する。
【0151】
前記正確度が前記下限値よりも小さい場合、当該駅係員による判断を含む前記調整データによって学習部442の学習モデルが調整されると、前記学習モデルの学習精度が著しく低下する可能性が高い。したがって、この場合は、前記学習モデルの調整を行わないまま処理を終了することにより、学習結果の精度の低下を防止することが好ましい。
【0152】
ステップS42において、前記正確度が前記下限値以上であると判定された場合、つまり、前記正確度が前記下限値と前記基準値との間であると判定された場合は、制御部41は、次のステップS43の判定処理を行う。具体的には、ステップS43において、制御部41は、通路設定履歴格納部422に記憶されている前記通路設定履歴データ(図8参照)を参照して、通路設定の変更を指示した駅係員の過去の変更履歴に、通路設定の変更後に通行状況が悪化した履歴(通行悪化履歴)が有るかどうかを判定する。具体的には、制御部41は、当該駅係員の通路設定履歴において、「通路設定変更後の状況」の項目に「×」印が付いていない場合に、前記通行悪化履歴がなく、過去の変更実績が良好であると判定し、「×」印が付いている場合に、前記通行悪化履歴が有ると判定される。
【0153】
ステップS43において、前記通行悪化履歴が有ると判定された場合は、前記調整データによって学習部442の学習モデルが調整されると、前記学習モデルの学習精度が著しく低下する可能性が高い。したがって、この場合は、前記学習モデルの調整を行わないまま処理を終了する。
【0154】
一方、ステップS43において、前記通行悪化履歴が無いと判定された場合は、その駅係員による判断の信頼性が高く、前記調整データによって学習部442の学習モデルが調整されても、前記学習モデルの学習精度が低下する可能性が低い。したがって、この場合は、ステップS17以降の処理が行われて、前記調整データに基づく前記学習モデルの調整が行われる。
【0155】
なお、上述の実施形態では、図9乃至図13に示す通路設定処理が駅サーバ4の制御部41によって実行される例について説明したが、各ステップにおける処理が駅サーバ4、自動改札機1、駅員端末装置2、センタ装置5のいずれかの制御部によって実行されてもよく、また、各装置の各制御部によって分散して実行されてもよい。
【0156】
また、上述の実施形態では、各自動改札機1それぞれの通行規制の通路設定が、入場専用、出場専用、入出場兼用のいずれかに設定可能な構成について説明したが、本発明はこの構成に限られない。例えば、自動改札機1が、入場専用と出場専用のいずれかに設定可能な構成、或いは、入場専用と入出場兼用のいずれかに設定可能な構成、或いは、出場専用と入出場兼用のいずれかに設定可能な構成にも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0157】
1 :自動改札機
2 :駅員端末装置
3 :精算端末装置
4 :駅サーバ
5 :センタ装置
6 :券売機
7 :改札口
7A :改札口
8 :駅
9 :改札通路
9A :通行口
9B :通行口
10 :筐体
11 :制御部
12 :記憶部
13 :上側表示部
14 :通信部
15 :フラップドア
15A :フラップドア
15B :フラップドア
16 :ICカード読取部
17 :サイド表示部
18 :撮像部
19 :人感センサ
21 :制御部
22 :入力部
23 :記憶部
24 :表示部
25 :通信部
26 :IDカード読取部
32 :記憶部
41 :制御部
42 :記憶部
43 :通信部
44 :通路設定学習部
90 :駅務室
100 :ゲートシステム
111 :読取処理部
112 :記録処理部
113 :通路設定部
114 :通行制御部
116 :フラップドア駆動制御部
117 :通知処理部
211 :設定値生成部
212 :通知処理部
411 :入力者判定部
412 :変動情報取得部
413 :調整データ供給部
414 :混雑判定部
415 :学習結果送信部
421 :駅係員管理データ格納部
422 :通路設定履歴格納部
441 :調整データ取得部
442 :学習部
443 :学習モデル調整部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13