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  • 特許-新規な環式ジオール化合物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-17
(45)【発行日】2022-08-25
(54)【発明の名称】新規な環式ジオール化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 319/08 20060101AFI20220818BHJP
   C08G 63/668 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
C07D319/08 CSP
C08G63/668
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018171976
(22)【出願日】2018-09-14
(65)【公開番号】P2020040928
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000191250
【氏名又は名称】新日本理化株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森 一紘
(72)【発明者】
【氏名】北川幸緒
(72)【発明者】
【氏名】辻本真也
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-526426(JP,A)
【文献】西独国特許出願公告第01053778(DE,B)
【文献】特開昭57-192382(JP,A)
【文献】国際公開第96/006839(WO,A1)
【文献】Chemistry - A European Journal,2007年,13(17),P.4859-4872
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 319/00
C08G 63/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

[式中、Rは、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。]
で表される、環式ジオール化合物からなる、ポリエステル樹脂又はポリカーボネート樹脂の樹脂原料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な環式ジオール化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル樹脂やポリカーボネート樹脂の樹脂原料として各種のジオール化合物が知られている。しかし、工業的に入手可能な環式ジオール化合物としては、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジオールや2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(水素化ビスフェノールA)がある(特許文献1及び2)が、その種類は非常に少なく、様々な応用分野における多岐に渡る要求を満足させることが難しいのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-310900号公報
【文献】特開2003-048966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂等の樹脂原料や樹脂改質剤として有用である新規な環式ジオール化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは,上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、特異な構造を有する環式ジオール化合物が文献未記載の化合物であり、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂及びポリメタクリル酸エステル樹脂等の樹脂原料や樹脂改質剤として有用なことを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、以下の項目を要旨とする新規な環式ジオール化合物を提供するものである。
【0007】
[項1]
一般式(1)
【化1】
[式中、Rは、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。]
で表される、環式ジオール化合物。
【0008】
[項2]
一般式(1)
【化2】
[式中、Rは、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。]
で表される環式ジオール化合物の、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂又はポリメタクリル酸エステル樹脂の樹脂原料としての使用方法。
【0009】
[項3]
一般式(1)
【化3】
[式中、Rは、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。]
で表される環式ジオール化合物からなる、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂又はポリメタクリル酸エステル樹脂の樹脂改質剤。
【0010】
[項4]
一般式(2)
【化4】
で表される、4-フェニルシクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタール。
【発明の効果】
【0011】
本発明の新規な環式ジオール化合物は、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂等の樹脂原料又は樹脂改質剤として使用出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1で得られた4-フェニルシクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタールのIRスペクトルである。
図2】実施例1で得られた4-フェニルシクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタールのH-NMRスペクトルである。
図3】実施例1で得られた4-フェニルシクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタールの13C-NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の新規な環式ジオール化合物は、下記一般式(1)
【化5】
[式中、Rは、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。]
で表される、環式ジオール化合物である。
【0014】
一般式(1)において、Rで表される炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基としては、特に制限ないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等のアルキル基が挙げられる。このうち好ましくは、メチル基、エチル基、イソブチル基、tert-ブチル基である。
【0015】
一般式(1)で表される環式ジオール化合物の具体的な例としては、4-フェニルシクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタール、4-(4-メチルフェニル)シクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタール、4-(4-エチルフェニル)シクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタール、4-(4-n-プロピルフェニル)シクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタール、4-(4-イソプロピルフェニル)シクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタール、4-(4-n-ブチルフェニル)シクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタール、4-(4-イソブチルフェニル)シクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタール、4-(4-tert-ブチルフェニル)シクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタール、4-フルオロフェニルシクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタール、4-クロロフェニルシクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタール、4-ブロモフェニルシクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタール、4-(3-メチル-4-フルオロフェニル)シクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタール、4-(3-メチル-4-クロロフェニル)シクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタール、4-(3,5-ジメチル-4-クロロフェニル)シクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタール、4-(3-エチル-4-クロロフェニル)シクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタール、4-(2-イソプロピル-4-クロロ-5-メチルフェニル)シクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタール、4-(3-メチル-4-ブロモフェニル)シクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタール、4-(3,5-ジメチル-4-ブロモフェニル)シクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタール、4-(2,4-ジメチルフェニル)シクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタール、4-(3,4-ジメチルフェニル)シクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタール、4-(2,4,6-トリメチルフェニル)シクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタール、4-(2,3,5,6-テトラメチルフェニル)シクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタール、4-(2,3,4,5,6-ペンタメチルフェニル)シクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタール、4-(2-tert-ブチル-4-エチルフェニル)シクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタール、4-(2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェニル)シクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタール、4-(3-メチル-4-イソプロピルフェニル)シクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタール、4-(4-sec-ブチルフェニル)シクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタール、4-(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)シクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタール、4-(2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニル)シクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタール、4-(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)シクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタール等が挙げられる。
【0016】
本発明の新規な環式ジオール化合物は、例えば、下記反応式に示すようにして製造される。
(反応式)
【化6】
[式中、Rは、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。]
【0017】
上記の反応式に示すように、本発明の新規な環式ジオール化合物(一般式(1))の製造方法としては、一般式(3)で表される4-フェニルシクロヘキサノン化合物とペンタエリスリトールを溶媒中、酸性触媒存在下でアセタール化反応する製造方法が例示される。
【実施例
【0018】
以下に実施例を掲げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本実施例において、環式ジオール化合物の各種測定は以下の方法により測定した。また、特に言及していない化合物は試薬を使用した。
【0019】
<使用化合物>
4-フェニルシクロヘキサノン:東京化成工業株式会社製
p-トルエンスルホン酸一水和物:ナカライテスク株式会社製
ペンタエリスリトール:パーストープ社製
BSTFA-TMCS:N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(1%トリメチルクロロシランを含む)東京化成工業株式会社製
【0020】
<ガスクロマトグラフィー(GC)による分析>
環式ジオール化合物の純度は、下記の方法で環式ジオールのヒドロキシル基をトリメチルシリル化してトリメチルシリル化化合物とした後、ガスクロマトグラフィー(GC)分析を行い、トリメチルシリル化化合物を面積百分率法より求め、その値を環式ジオールの純度とした。
(トリメチルシリル化化合物のサンプル調整)
環式ジオール化合物0.1gへアセトニトリル溶液3ml加え完全に溶解させ、その溶液1gに、BSTFA-TMCS0.2g加え、室温で振り混ぜ、トリメチルシリル化化合物とした。
【0021】
[測定条件]
機器:島津製作所製 GC-2010
カラム:アジレント・テクノロジー株式会社製DB-1 30m×0.25mm×0.25μm
カラム温度:150~300℃(昇温速度15℃/min)
インジェクション温度/検出器温度:305℃/320℃
検出器:FID
キャリアガス:ヘリウム
ガス線速度:27.5cm/sec
注入量:1μl
【0022】
<融点>
環式ジオール化合物の融点は、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製示差熱量測定装置DSC6220を用いて測定した。試料10.7mgを同社製アルミパンに入れて密封し、50ml/分の窒素気流下、昇温速度10℃/分で30℃から200℃まで昇温して、吸熱ピークを観測した。そのピークトップが示した温度を融点とした。
【0023】
<赤外吸収スペクトル(IRスペクトル)>
環式ジオール化合物のIRスペクトルは、赤外分光分析装置(株式会社パーキンエルマージャパン製Spectrum400)を用い、ATR法(減衰全反射法)で行った。
【0024】
<プロトン核磁気共鳴スペクトル(H-NMR)>
環式ジオール化合物のH-NMRは、重クロロホルムに溶かした後、核磁気共鳴装置(Bruker社製DRX-500)を用い、H-NMR(500MHz)測定で行った。
【0025】
<カーボン核磁気共鳴スペクトル(13C-NMR)>
環式ジオール化合物の13C-NMRは、重クロロホルムに溶かした後、核磁気共鳴装置(Bruker社製DRX-500)を用い、13C-NMR(125.8MHz)測定で行った。
【0026】
[実施例1]
還流冷却管を装着した1L4ツ口フラスコに4-フェニルシクロヘキサノン60mmol、p-トルエンスルホン酸一水和物2.7mmol、ペンタエリスリトール90mmol、トルエン60ml、N,N-ジメチルホルムアミド90mlを仕込み、系内窒素雰囲気下とした後、昇温してトルエン還流下で、4時間攪拌した。反応混合物を室温に戻し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50mlで中和後、100mlの酢酸エチルを加え水層と有機層に分けた。分けた水層を50mlの酢酸エチルで抽出し、その抽出操作を3回行った。抽出に用いた酢酸エチルと先の有機層とを混合し、そこに150gの水を加えると結晶が析出した。析出した結晶をろ別し、その粗結晶を酢酸エチルにて再結晶による精製を行った。再結晶物を80℃、常圧で乾燥することにより、純度99.8GC面積%の4-フェニルシクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタールを得た。結晶の融点144.9℃であった。
【0027】
得られた4-フェニルシクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタールについて、IRスペクトル、H-NMRスペクトル及び13C-NMRスペクトルを測定した。得られた結果を、図1~3に示した。図中に示される下記特性ピークより4-フェニルシクロヘキサノンペンタエリスリトールモノアセタールであることを確認した。
【0028】
IR(cm-1):3255,2938,2877,1602,1492,1445,1339,1236,1159,1103,1059,1039,1005,956,921,751,696
【0029】
H-NMR(500MHz,ppm):1.49(m,2H),1.75(m,4H),2.38(t,4H),2.55(m,1H),3.78(s,4H),3.78(d,4H),7.20(m,2H),7.22(m,1H),7.28(t,2H)
(なお、7.25ppm付近のピークは溶媒の重クロロホルムに由来するピークである。)
【0030】
13C-NMR(125.8MHz,ppm):30.0,32.5,39.2,43.8,61.9,62.2,65.2,98.1,126.1,126.8,128.3,146.4
(なお、77ppm付近のピークは溶媒の重クロロホルムに由来するピークである。)
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の新規な環式ジオール化合物は、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂及びポリメタクリル酸エステル樹脂等の樹脂原料や樹脂改質剤として使用することができる。
図1
図2
図3