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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-17
(45)【発行日】2022-08-25
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/77 20110101AFI20220818BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20220818BHJP
   H01B 7/04 20060101ALI20220818BHJP
   H01B 7/08 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
H01R12/77
H01B7/00 306
H01B7/04
H01B7/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018203621
(22)【出願日】2018-10-30
(65)【公開番号】P2020071937
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 大樹
(72)【発明者】
【氏名】大森 康雄
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-172751(JP,A)
【文献】特開2000-077124(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第10107233(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/00-12/91
H01R 24/00-24/86
H01B 7/00
H01B 7/04
H01B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する絶縁シートに複数本の導体を並列配置した形態のフラットケーブルと、
ハウジングに保持され、前記複数本の導体の前端部に個別に固着された複数の端子金具と、
前記絶縁シートのうち前記導体と前記端子金具の固着部を含む領域に積層状態で一体化された補強板と、
前記補強板に設けられた引掛け部と、
前記ハウジングに設けられ、前記引掛け部を当接させることで前記ハウジングに対する前記フラットケーブルの後方変位を規制するストッパと、
前記補強板のうち前記固着部よりも後方で且つ前記引掛け部よりも前方の領域に形成された低剛性部とを備え、
前記低剛性部は、前記補強板のうち前記低剛性部が形成されていない領域よりも剛性が低く、前後方向へ伸長することが可能であるコネクタ。
【請求項2】
可撓性を有する絶縁シートに複数本の導体を並列配置した形態のフラットケーブルと、
ハウジングに保持され、前記複数本の導体の前端部に個別に固着された複数の端子金具と、
前記絶縁シートのうち前記導体と前記端子金具の固着部を含む領域に積層状態で一体化された補強板と、
前記補強板に設けられた引掛け部と、
前記ハウジングに設けられ、前記引掛け部を当接させることで前記ハウジングに対する前記フラットケーブルの後方変位を規制するストッパと、
前記補強板のうち前記固着部よりも後方で且つ前記引掛け部よりも前方の領域に形成された低剛性部とを備え、
前記低剛性部が、前記補強板のうち前記固着部との対応領域及び前記引掛け部の形成領域よりも厚さの薄い肉薄部によって構成されているコネクタ。
【請求項3】
前記肉薄部が、前記補強板のうち前記絶縁シートとは反対側の外面を凹ませた形態であることを特徴とする請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記肉薄部の凹んだ表面が曲面を含む形状であることを特徴とする請求項2又は請求項3記載のコネクタ。
【請求項5】
可撓性を有する絶縁シートに複数本の導体を並列配置した形態のフラットケーブルと、
ハウジングに保持され、前記複数本の導体の前端部に個別に固着された複数の端子金具と、
前記絶縁シートのうち前記導体と前記端子金具の固着部を含む領域に積層状態で一体化された補強板と、
前記補強板に設けられた引掛け部と、
前記ハウジングに設けられ、前記引掛け部を当接させることで前記ハウジングに対する前記フラットケーブルの後方変位を規制するストッパと、
前記補強板のうち前記固着部よりも後方で且つ前記引掛け部よりも前方の領域に形成された低剛性部とを備え、
前記フラットケーブルの前端側領域が、先方へ片持ち状に延出する複数の分岐部を櫛歯状に並列した形態であり、
前記複数の分岐部の前端部に前記複数の端子金具が個別に固着されており、
前記低剛性部が、前記補強板のうち前記複数の分岐部よりも後方の領域のみに配され、前記フラットケーブルの全幅に亘って連なった形態であるコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハウジングとフレキシブルフラットケーブルを備えたコネクタが開示されている。ハウジング内には、後方から複数の接続端子が挿入され、挿入された複数の接続端子は、ランスの係止作用により抜止めされた状態で並列配置されている。フレキシブルフラットケーブルは、絶縁性ベースフィルム上に複数本の平板状導体を並列配置した形態である。各平板状導体の前端部には、複数の接続端子が個別に固着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-203740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このコネクタでは、フレキシブルフラットケーブルが後方へ引っ張られると、抜け止めされている接続端子と引張力を受けている平板状導体との固着部に応力が生じる。そのため、接続端子と平板状導体との接続状態が不安定になったり、平板状導体が接続端子から外れたりする虞がある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、フラットケーブルと端子金具との固着部に対する負荷を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
可撓性を有する絶縁シートに複数本の導体を並列配置した形態のフラットケーブルと、
ハウジングに保持され、前記複数本の導体の前端部に個別に固着された複数の端子金具と、
前記絶縁シートのうち前記導体と前記端子金具の固着部を含む領域に積層状態で一体化された補強板と、
前記補強板に設けられた引掛け部と、
前記ハウジングに設けられ、前記引掛け部を当接させることで前記ハウジングに対する前記フラットケーブルの後方変位を規制するストッパと、
前記補強板のうち前記固着部よりも後方で且つ前記引掛け部よりも前方の領域に形成された低剛性部とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
フラットケーブルに後方への引張力が作用しても、引掛け部がストッパに当接してフラットケーブルの後方変位が規制される。このとき、ストッパと引掛け部との間に前後方向のクリアランスが空いていても、絶縁シートと低剛性部が前後方向に伸長するので、導体と端子金具の固着部に引張力が強く作用することはない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1のコネクタの平面図
図2】コネクタの正面図
図3】コネクタの側断面図
図4】部分拡大側断面図
図5】低剛性部が伸長した状態をあらわす部分拡大側断面図
図6】フレキシブル導電路の斜視図
図7】フレキシブル導電路の底面図
図8】フレキシブル導電路の側面図
図9】フレキシブル導電路の部分拡大平面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、前記低剛性部が、前記補強板のうち前記固着部との対応領域及び前記引掛け部の形成領域よりも厚さの薄い肉薄部によって構成されていてもよい。この構成によれば、補強板を同一材料からなる単一部材とすることができる。
【0010】
本発明は、前記肉薄部が、前記補強板のうち前記絶縁シートとは反対側の外面を凹ませた形態であってもよい。この構成によれば、肉薄部を形成するための加工が容易である。
【0011】
本発明は、前記肉薄部の凹んだ表面が曲面を含む形状であってもよい。この構成によれば、肉薄部が前後方向に伸長したときに、肉薄部の凹んだ表面に生じる応力が分散されるので、肉薄部が破断することを防止できる。
【0012】
本発明は、前記フラットケーブルの前端側領域が、先方へ片持ち状に延出する複数の分岐部を櫛歯状に並列した形態であり、前記複数の分岐部の前端部に前記複数の端子金具が個別に固着されており、前記低剛性部が、前記補強板のうち前記複数の分岐部よりも後方の領域のみに配され、前記フラットケーブルの全幅に亘って連なった形態であってもよい。この構成によれば、各分岐部には低剛性部が形成されていないので、分岐部の弾性変形が抑制される。これにより、端子金具がハウジングに保持されていない状態において、端子金具の位置や向きを安定させることができる。
【0013】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1図9を参照して説明する。尚、以下の説明において、前後の方向については、図1,3~5,7~9における左方を前方と定義する。上下の方向については、図2~6,8にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。
【0014】
本実施例1のコネクタAは、ハウジング10と、フレキシブル導電路22とを組み付けて構成されている。図3に示すように、ハウジング10は、全体として偏平な形状をなす合成樹脂製のロアハウジング11と、全体として偏平な形状をなす合成樹脂製のアッパハウジング12とを上下に重ねるように合体させて形成されている。
【0015】
ハウジング10内における前端側領域には、前後方向に細長い複数の端子収容室13が、左右方向に並列した状態で形成されている。各端子収容室13には、ロアハウジング11の上面から段差状に突出した形態の抜止め部14が形成されている。各端子収容室13の前端はハウジング10の前端面においてハウジング10外へ開口している。図3~5に示すように、ハウジング10内における後端側領域には1つのケーブル収容室15が形成されている。ケーブル収容室15の前端は、全ての端子収容室13の後端に連通している。ケーブル収容室15の後端は、ハウジング10の後端面において横長のスリット状に開口している。
【0016】
図3~5に示すように、ロアハウジング11の上面のうちケーブル収容室15を構成する領域には、上方へ片持ち状に突出する複数の円柱形をなすストッパ16が、左右方向に間隔を空け一体にて形成されている。ストッパ16には、その後面部を切欠した形態の係止凹部17が形成されている。ロアハウジング11の上面における後端部には、ケーブル収容室15の全幅に亘って左右方向に延びた形態の上向きリブ18が形成されている。
【0017】
図1,3~5に示すように、アッパハウジング12のうちケーブル収容室15を構成する壁部には、上下方向に貫通した形態の複数の長孔19が、左右に間隔を空けて形成されている。長孔19にはストッパ16が貫通され、長孔19の開口縁部のうち後縁部がストッパ16の係止凹部17に嵌合している。この嵌合により、ロアハウジング11とアッパハウジング12が上下方向へ離間することを規制されている。アッパハウジング12の下面における後端部には、ケーブル収容室15の全幅に亘って左右方向に延びた形態の下向きリブ20が形成されている。図3に示すように、下向きリブ20とロアハウジング11の上向きリブ18は、ストレインリリーフ部21を構成する。
【0018】
図3,6~9に示すように、フレキシブル導電路22は、複数の端子収容室13に個別に収容される複数の端子金具23と、可撓性を有するフラットケーブル26とを備えて構成されている。端子金具23は、全体として前後方向に細長い形状をなす。端子金具23の前端部は、基板用コネクタ(図示省略)の基板側端子(図示省略)に接続される角筒状の端子本体部24となっている。端子金具23の後端部は、端子本体部24の後端から後方へ延出した角筒状の端子側固着部25(請求項に記載の固着部)となっている。
【0019】
フラットケーブル26は、合成樹脂(絶縁材料)からなる絶縁シート27と、絶縁シート27内に埋設された状態で配索された複数本の導体32と、絶縁シート27の前端部の曲げ剛性を高めるための補強板34とを備えて構成されている。図7に示すように、フラットケーブル26の前端部には端子用固着部28が形成されている。端子用固着部28は、前方へ片持ち状に突出した複数の分岐部29を、左右方向に間隔を空けて櫛歯状に並列配置した形態である。
【0020】
絶縁シート27は、柔軟に湾曲変形し得る材料からなり、フラットケーブル26の全領域と同一の形状を有する。絶縁シート27のうち端子用固着部28を構成する前端部は、前方へ片持ち状に突出した複数の分岐状支持部30となっている。絶縁シート27のうち分岐状支持部30よりも後方には、複数の円形の貫通孔31が左右方向に間隔を空けて形成されている。複数の貫通孔31は複数のストッパ16と対応する位置に配置されている。貫通孔31の内径は、ストッパ16の外径よりも僅かに大きい寸法に設定されている。
【0021】
図9に示すように、分岐状支持部30の上面には、導体32の前端部のケーブル側固着部33(請求項に記載の固着部)が露出している。分岐状支持部30の上面には端子金具23の端子側固着部25(請求項に記載の固着部)が載置され、端子側固着部25とケーブル側固着部33とが半田付け等により導通可能に固着されている。導体32に接続された端子金具23の端子本体部24は、分岐部29(分岐状支持部30)から前方へ片持ち状に延出している。
【0022】
各分岐部29は細長く延びた形状であるため、分岐部29に端子金具23を取り付けると、分岐部29が端子金具23の重みで不正に弾性変形する虞がある。その対策として、絶縁シート27の下面(絶縁シート27のうち端子金具23が固着される側とは反対側の面)に、補強板34が溶着等の手段により積層した状態で一体化されている。補強板34は、絶縁シート27よりもヤング率の大きい合成樹脂材料からなる。補強板34の厚さは、絶縁シート27の厚さと概ね同じ寸法である。
【0023】
補強板34は、単一部材であり、フラットケーブル26(絶縁シート27)の前端部のみに配されている。図7に示すように、補強板34は、補強板34の後端部を構成する1枚のベース部35と、補強板34の前端部を構成する1枚の櫛歯状補強部38と、ベース部35の前端と櫛歯状補強部38の後端とを繋ぐ1枚の低剛性部41とから構成されている。補強板34は、ストッパ16に当接する引掛け部37の形成母体としての機能と、櫛歯状に分岐した絶縁シート27(分岐部29)の変形を抑制して端子金具23の位置や向きを安定させる機能とを有する。
【0024】
ベース部35は、分岐部29よりも後方の領域に配され、絶縁シート27に対しフラットケーブル26の全幅に亘って一体化されている。ベース部35の平面視形状は方形である。ベース部35には、平面視において複数の貫通孔31と個別に対応する複数の係止孔36が形成されている。係止孔36は、ベース部35を貫通した形態であり、円形に開口している。図4,5に示すように、係止孔36の開口縁における前端縁部は、引掛け部37として機能する。ベース部35は、補強板34における引掛け部37(係止孔36)の形成領域を構成する。
【0025】
係止孔36の内径はストッパ16の外径よりも大きい寸法に設定され、図4に示すように、引掛け部37(係止孔36の開口縁)とストッパ16の外周面前端との間には、所定のクリアランスSが確保されている。係止孔36の内径とストッパ16の外径との寸法差は、各部品の寸法公差や部品間の組付け公差を勘案して設定されたものである。この寸法設定により、ストッパ16は、ベース部35を不正に変形させることなく係止孔36に貫通されている。
【0026】
櫛歯状補強部38は、フラットケーブル26の全幅に亘って左右方向に細長く延びた基部39と、左右方向に間隔を空けて並列配置された複数の分岐状補強部40とから構成されている。分岐状補強部40は、補強板34における固着部(端子側固着部25及びケーブル側固着部33)との対応領域を構成する。複数の分岐状補強部40は、基部39の前端縁から前方へ片持ち状に延出した形態である。各分岐状補強部40の平面視形状は、分岐部29及び分岐状支持部30と同一の形状であり、分岐状支持部30の下面に積層されている。1つの分岐部29は、分岐状支持部30と分岐状補強部40と導体32の前端部(ケーブル側固着部33)とを備えて構成されている。
【0027】
低剛性部41は、フラットケーブル26の全幅に亘る幅寸法を有する。低剛性部41の平面視形状(底面視形状)は方形である。図4,5,7,8に示すように、低剛性部41には、低剛性部41の下面(絶縁シート27とは反対側の面)を溝状に凹ませた形態の複数の肉薄部42が形成されている。各肉薄部42は左右方向(フラットケーブル26の長さ方向及びフラットケーブル26の厚さ方向の両方向に対して直交する方向)に細長く延びた形態である。複数の肉薄部42は、前後方向に一定ピッチで並列配置されている。
【0028】
1つの肉薄部42の側面視形状は、略半円形である。肉薄部42の凹んだ表面(下面)は曲面のみで構成されている。低剛性部41を構成する複数の肉薄部42の断面形状(側面視形状)は、全て同一形状である。肉薄部42は、肉薄部42が形成されていない領域に比べると、肉厚寸法が小さいので前後方向の引張り強度が低い。肉厚寸法が小さいほど引張り強度も小さくなる。低剛性部41の引張り強度は、ベース部35及び櫛歯状補強部38よりも低く、絶縁シート27とほぼ同等、若しくは絶縁シート27よりも低い強度である。
【0029】
低剛性部41は、分岐部29(分岐状補強部40)よりも後方の領域のみに形成されているので、櫛歯状補強部38(基部39と分岐状補強部40)は高い剛性を有している。分岐部29の剛性が分岐状補強部40によって高められているので、分岐部29の前端部に端子金具23が固着されていても、分岐部29は不正な変形を生じ難くなっている。これにより、フラットケーブル26の前端部に固着された複数の端子金具23は、並列した状態に保たれる。
【0030】
フラットケーブル26に複数の端子金具23を一体化したフレキシブル導電路22は、ハウジング10に組み付けられる。組み付けに際しては、ロアハウジング11の上面に端子金具23とフラットケーブル26の前端部を載置する。このとき、フラットケーブル26の貫通孔31と係止孔36をストッパ16に嵌合させることにより、フラットケーブル26の前端部をロアハウジング11に対して前後方向及び左右方向において位置決めする。これと同時に、端子金具23の端子本体部24の後端をロアハウジング11の抜止め部14に対し前方から引っ掛けて係止状態とする。
【0031】
次に、フレキシブル導電路22の上からアッパハウジング12を被せ、ロアハウジング11とアッパハウジング12を合体させる。このとき、ストッパ16の係止凹部17とアッパハウジング12の長孔19の後縁部とを嵌合して係止状態とする。また、フラットケーブル26のうち低剛性部41より後方の部位は、ストレインリリーフ部21に挟み付けられるので、前後方向へ変位し難くなる。ストレインリリーフ部21は、ストッパ16よりも後方に配置されている。以上により、ハウジング10に対するフレキシブル導電路22の組付けが完了する。
【0032】
フレキシブル導電路22をハウジング10に組み付けた状態では、端子金具23が抜止め部14への係止により後方への変位を規制され、フラットケーブル26はハウジング10の後方へ導出される。係止孔36の内径は、寸法公差等を勘案してストッパ16の外径より少し大きく設定されているので、図4に示すように、ストッパ16の前端部と係止孔36の引掛け部37との間には前後方向のクリアランスSが空いている。そのため、ハウジング10の外部後方においてフラットケーブル26が後方へ引っ張られると、クリアランスSに相当する分だけフラットケーブル26が変位し得る。
【0033】
このとき、フラットケーブル26に作用する後方への引張力が、端子金具23と導体32(フラットケーブル26)との溶接部分(端子側固着部25及びケーブル側固着部33)に作用すると、端子金具23と導体32が離脱したり、接触不良を来したりすることが懸念される。そこで、本実施例1では、フラットケーブル26のうち抜止め部14(フレキシブル導電路22がハウジング10に対して後方への変位を規制される部位)とストッパ16(フレキシブル導電路22がハウジング10に対して後方への変位を許容されている部位)との間に、低剛性部41を設けている。
【0034】
これにより、ハウジング10の後方でフラットケーブル26が引っ張られても、図4,5に示すように、低剛性部41を構成する複数の肉薄部42が、絶縁シート27と一体となって前後方向に伸長するので、端子金具23と導体32との接続部分に作用する引張力が大幅に緩和される。低剛性部41が伸長すると、低剛性部41の前端と引掛け部37との間の前後方向の寸法Lが、長くなる。低剛性部41が伸長することにより、端子金具23と導体32との接続状態(固着状態)が安定して保たれる。
【0035】
ハウジング10の後方においてフラットケーブル26に後方への引張力が作用したときに低剛性部41と絶縁シート27に生じる最大想定応力は、フラットケーブル26(導体32)と端子金具23の固着部(端子側固着部25及びケーブル側固着部33)における固着強度よりも小さく設定されている。本実施例1において「最大想定応力」は、引掛け部37とストッパ16との間のクリアランスSが公差の範囲内において最大である場合に、引掛け部37がストッパ16に当接するまで低剛性部41と絶縁シート27が伸長したときに、低剛性部41と絶縁シート27に生じると想定される応力と定義する。最大想定応力は、絶縁シート27の材料、絶縁シート27の厚さ寸法、補強板34の材料、低剛性部41の厚さ寸法、低剛性部41の断面形状等を変更することによって、任意に設定することが可能である。
【0036】
低剛性部41が前後方向への伸長が続くと、図5に示すように、補強板34の引掛け部37がストッパ16の前端部に当たる状態となる。引掛け部37は、補強板34のうち低剛性部41よりも引張り強度の高いベース部35に形成されているので、ベース部35(係止孔36)が変形する虞はない。したがって、フラットケーブル26の後方への変位が規制され、端子金具23と導体32との固着部位(端子側固着部25及びケーブル側固着部33)への負荷が増大することもない。
【0037】
本実施例1のコネクタAは、フラットケーブル26と、複数の端子金具23は、補強板34とを備えている。フラットケーブル26は、可撓性を有する絶縁シート27に複数本の導体32を並列配置した形態である。複数の端子金具23は、複数本の導体32の前端部に個別に固着された状態でハウジング10に保持されている。補強板34は、絶縁シート27のうち導体32と端子金具23の固着部(端子側固着部25及びケーブル側固着部33)を含む領域に積層状態で一体化されている。
【0038】
補強板34には引掛け部37が設けられ、ハウジング10には、引掛け部37を当接させることでハウジング10に対するフラットケーブル26の後方変位を規制するストッパ16が設けられている。補強板34のうち固着部(端子側固着部25及びケーブル側固着部33)よりも後方で且つ引掛け部37よりも前方の領域には、低剛性部41が形成されている。
【0039】
フラットケーブル26のうちハウジング10の後方へ導出されている部位に後方への引張力が作用すると、引掛け部37がストッパ16に当接することによりフラットケーブル26の後方変位が規制される。このとき、ストッパ16と引掛け部37との間に前後方向のクリアランスSが空いていても、絶縁シート27と低剛性部41が前後方向に伸長するので、導体32と端子金具23の固着部(端子側固着部25及びケーブル側固着部33)に引張力が強く作用することはない。これにより、フラットケーブル26と端子金具23との固着部(端子側固着部25及びケーブル側固着部33)に対する負荷が軽減される。
【0040】
また、低剛性部41は、補強板34のうち固着部(端子側固着部25及びケーブル側固着部33)との対応領域(分岐状補強部40)及び引掛け部37の形成領域(ベース部35)よりも厚さの薄い肉薄部42によって構成されている。この構成によれば、補強板34を同一材料からなる単一部材とすることができる。肉薄部42は、補強板34のうち絶縁シート27とは反対側の外面を凹ませた形態である。この構成によれば、肉薄部42を形成するための加工が容易である。肉薄部42の凹んだ表面は曲面を含む形状である。この構成によれば、肉薄部42が前後方向に伸長したときに、肉薄部42の凹んだ表面に生じる応力が分散されるので、肉薄部42が破断することを防止できる。
【0041】
また、フラットケーブル26の前端側領域は、先方へ片持ち状に延出する複数の分岐部29を櫛歯状に並列した形態である。複数の分岐部29の前端部には、複数の端子金具23が個別に固着されている。低剛性部41は、補強板34のうち複数の分岐部29よりも後方の領域のみに配されいて、フラットケーブル26の全幅に亘って連なった形態である。この構成によれば、各分岐部29には低剛性部41が形成されていないので、分岐部29の弾性変形が抑制される。これにより、端子金具23がハウジング10に保持されていない状態において、端子金具23の位置や向きを安定させることができる。
【0042】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例1では、低剛性部が複数の肉薄部を前後方向に並べて構成されているが、低剛性部は1つの肉薄部だけで構成されていてもよい。
(2)上記実施例1では、肉薄部の凹んだ表面が曲面のみで構成されているが、肉薄部の凹んだ表面は、曲面と平面とで構成されていてもよく、平面のみで構成されていてもよい。
(3)上記実施例1では、低剛性部を構成する複数の肉薄部の断面形状が、全て同一であるが、低剛性部は、断面形状が異なる複数種類の肉薄部を並べた形態であってもよい。
(4)上記実施例1では、低剛性部が、補強板のうち絶縁シートとは反対側の外面を凹ませた肉薄部のみで構成されているが、低剛性部は、補強板のうち絶縁シートと対向する内面を凹ませた肉薄部のみで構成されていてもよく、補強板の外面を凹ませた肉薄部と補強板の内面を凹ませた肉薄部とから構成されていてもよい。
(5)上記実施例1では、補強板を単一部材とした上で低剛性部を肉薄部によって構成しているが、補強板をヤング率(縦弾性係数)の異なる複数種類のシート状部材を二色成型などにより一体化させ、ヤング率の小さい部位を低剛性部として機能させてもよい。
(6)上記実施例1では、低剛性部を分岐部より後方の領域のみに形成したが、低剛性部の少なくとも一部を分岐部に形成してもよい。
(7)上記実施例1では、端子金具が段差状の抜止め部に係止されることによって抜止めされているが、端子金具は、弾性変形可能なランスの係止作用によって抜止めされていてもよい。
(8)上記実施例1では、端子金具と導体が半田付け(溶接)によって接続されているが、端子金具と導体は圧着によって接続されていてもよい。
(9)上記実施例1では、ハウジングがロアハウジングとアッパハウジングを合体させた形態であるが、ハウジングは単一部品であってもよい。
(10)上記実施例1では、ストッパがハウジングに一体に形成されているが、ストッパは、ハウジングとは別体の部品をハウジングに組み付けたものであってもよい。
(11)上記実施例1では、引掛け部が補強板に一体に形成されているが、引掛け部は、補強板とは別体の部品を補強板に取り付けたものでもよい。
(12)上記実施例1では、補強板の係止孔の開口縁における前端縁部を引掛け部としたが、引掛け部は補強板の表面から突出した形態であってもよい。
(13)上記実施例1では、ストッパがロアハウジングとアッパハウジングを合体状態に保持する機能を兼ね備えているが、ストッパは、ロアハウジングとアッパハウジングを合体状態に保持する機能を有しないものであってもよい。
【符号の説明】
【0043】
A…コネクタ
10…ハウジング
16…ストッパ
23…端子金具
25…端子側固着部(固着部)
26…フラットケーブル
27…絶縁シート
29…分岐部
32…導体
33…ケーブル側固着部(固着部)
34…補強板
35…ベース部(補強板における引掛け部の形成領域)
37…引掛け部
40…分岐状補強部(補強板における固着部との対応領域)
41…低剛性部
42…肉薄部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9