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特許7125914蓄電モジュール及び蓄電モジュールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-17
(45)【発行日】2022-08-25
(54)【発明の名称】蓄電モジュール及び蓄電モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/193 20210101AFI20220818BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20220818BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20220818BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20220818BHJP
   H01M 10/28 20060101ALI20220818BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20220818BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20220818BHJP
   H01M 50/131 20210101ALI20220818BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20220818BHJP
   H01M 50/186 20210101ALI20220818BHJP
   H01M 50/198 20210101ALI20220818BHJP
【FI】
H01M50/193
H01G11/78
H01G11/84
H01M10/04 Z
H01M10/28 Z
H01M50/103
H01M50/121
H01M50/131
H01M50/184 A
H01M50/186
H01M50/198
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019078003
(22)【出願日】2019-04-16
(65)【公開番号】P2020177761
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】中村 知広
(72)【発明者】
【氏名】弘瀬 貴之
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 伸烈
(72)【発明者】
【氏名】奥村 素宜
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-133201(JP,A)
【文献】国際公開第2019/073717(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/194288(WO,A1)
【文献】特開2005-135764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/193
H01G 11/78
H01G 11/84
H01M 10/04
H01M 10/28
H01M 50/103
H01M 50/121
H01M 50/131
H01M 50/184
H01M 50/186
H01M 50/198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の一対のエンドプレートと、前記一対のエンドプレートの間において積層された複数のバイポーラ電極とを有する電極積層体と、
前記電極積層体の側面を囲むように設けられた封止体と、
隣り合う前記バイポーラ電極の間に収容された電解液と、を備え、
前記複数のバイポーラ電極の各々は、金属板と、当該金属板の一方面に設けられた正極と、当該金属板の他方面に設けられた負極と、を含み、
前記封止体は、前記一対のエンドプレートの少なくとも一方の周縁部に接合されている終端樹脂部と、前記バイポーラ電極の前記金属板の周縁部に接合されている中間樹脂部と、を含み、
前記終端樹脂部の結晶化度は、前記中間樹脂部の結晶化度よりも低くなっている、蓄電モジュール。
【請求項2】
前記終端樹脂部と前記中間樹脂部とは、互いに異なる材料からなり、
前記終端樹脂部の材料は、前記中間樹脂部の材料よりも結晶化しにくい材料である、請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
前記中間樹脂部は、ホモポリマーのポリプロピレンを含有し、
前記終端樹脂部は、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーのポリプロピレンを含有する、請求項1又は2に記載の蓄電モジュール。
【請求項4】
前記終端樹脂部と前記中間樹脂部とは、同一の材料からなる、請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項5】
前記一対のエンドプレートの一方は、金属板と当該金属板の一方面に設けられた負極を有する負極終端電極の金属板であり、
前記電解液は、アルカリ溶液を含んでおり、
前記終端樹脂部は、前記負極終端電極の前記金属板の周縁部に接合された負極側終端樹脂部を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の蓄電モジュール。
【請求項6】
前記電解液は、アルカリ溶液を含んでおり、
前記一対のエンドプレートの一方は、前記電極積層体の積層方向において、金属板と当該金属板の一方面に設けられた負極を有する負極終端電極の外側に配置された負極側最外金属板であり、
前記終端樹脂部は、前記負極側最外金属板の周縁部に接合された負極側終端樹脂部を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の蓄電モジュール。
【請求項7】
前記一対のエンドプレートの他方は、金属板と当該金属板の一方面に設けられた正極を有する正極終端電極の金属板であり、
前記終端樹脂部は、前記正極終端電極の前記金属板の周縁部に接合された正極側終端樹脂部を含み、
前記正極側終端樹脂部の結晶化度は、前記負極側終端樹脂部の結晶化度よりも高くなっている、請求項5又は6に記載の蓄電モジュール。
【請求項8】
前記一対のエンドプレートの他方は、前記電極積層体の積層方向において、金属板と当該金属板の一方面に設けられた正極を有する正極終端電極の外側に配置された正極側最外金属板であり、
前記終端樹脂部は、前記正極側最外金属板の周縁部に接合された正極側終端樹脂部を有し、
前記正極側終端樹脂部の結晶化度は、前記負極側終端樹脂部の結晶化度よりも高くなっている、請求項5又は6記載の蓄電モジュール。
【請求項9】
前記終端樹脂部は、前記中間樹脂部と対向する対向面を有し、
前記対向面は、前記エンドプレートに対して、接合している領域と、接合しない領域とを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の蓄電モジュール。
【請求項10】
前記終端樹脂部と前記エンドプレートとの接合領域において、前記エンドプレートは粗面化されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の蓄電モジュール。
【請求項11】
金属板と当該金属板の一方面に設けられた正極と当該金属板の他方面に設けられた負極とを含む複数のバイポーラ電極が金属製の一対のエンドプレートの間に積層された電極積層体を有する蓄電モジュールの製造方法であって、
前記一対のエンドプレートの少なくとも一方の周縁部に終端樹脂部を接合する最外層形成工程と、
前記バイポーラ電極の前記金属板の周縁部に中間樹脂部を接合する中間層形成工程と、を有し、
前記終端樹脂部の接合後の結晶化度が前記中間樹脂部の接合後の結晶化度よりも低くなるように、前記最外層形成工程及び前記中間層形成工程を実施する、蓄電モジュールの製造方法。
【請求項12】
前記終端樹脂部と前記中間樹脂部とに、互いに異なる材料を用い、
前記終端樹脂部の材料として、前記中間樹脂部の材料よりも結晶化しにくい材料を用いる、請求項11記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項13】
前記中間樹脂部として、ホモポリマーのポリプロピレンを用い、
前記終端樹脂部として、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーのポリプロピレンを用いる、請求項11又は12に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項14】
前記終端樹脂部と前記中間樹脂部とに、同一の材料を用い、
前記終端樹脂部の接合時の冷却速度を前記中間樹脂部の接合時の冷却速度よりも速くする、請求項11に記載の製造方法。
【請求項15】
前記一対のエンドプレートの一方は、金属板と当該金属板の一方面に設けられた負極を有する負極終端電極であり、
前記最外層形成工程では、前記負極終端電極の前記金属板の周縁部に前記終端樹脂部としての負極側終端樹脂部を接合し、
前記負極側終端樹脂部の接合後の結晶化度が前記中間樹脂部の接合後の結晶化度よりも低くなるように、前記最外層形成工程及び前記中間層形成工程を実施する、請求項11~14のいずれか一項に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項16】
前記一対のエンドプレートの一方は、前記電極積層体の積層方向において、金属板と当該金属板の一方面に設けられた負極を有する負極終端電極の外側に配置された負極側最外金属板であり、
前記最外層形成工程では、積層方向において、前記負極側最外金属板の周縁部に前記終端樹脂部としての負極側終端樹脂部を接合し、
前記負極側終端樹脂部の接合後の結晶化度が前記中間樹脂部の接合後の結晶化度よりも低くなるように前記最外層形成工程及び前記中間層形成工程を実施する、請求項11~14のいずれか一項に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項17】
前記一対のエンドプレートの他方は、金属板と当該金属板の一方面に設けられた正極を有する正極終端電極の金属板であり、
前記最外層形成工程では、前記正極終端電極の前記金属板の周縁部に前記終端樹脂部としての正極側終端樹脂部を接合し、
前記正極側終端樹脂部の接合後の結晶化度が、前記負極側終端樹脂部の接合後の結晶化度よりも高くなるように前記最外層形成工程を実施する、請求項15又は16に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電モジュール及び蓄電モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蓄電モジュールとして、金属板の一方面に正極が形成され、他方面に負極が形成されたバイポーラ電極を備えるバイポーラ電池が知られている(特許文献1参照)。バイポーラ電池は、セパレータを介して複数のバイポーラ電極を積層してなる積層体を備えている。積層体の側面には、積層方向に隣り合うバイポーラ電極間に設けられた枠状の樹脂部が設けられており、バイポーラ電極間に形成された内部空間に電解液が収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-133201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような蓄電モジュールでは、金属板に接合された樹脂部は、例えば、金属板に対して樹脂体を熱溶着することで形成される。熱溶着では、樹脂体が、例えばヒータによって加熱され、加熱された部分と金属板とが溶着された状態で冷却される。この際、樹脂体の全体が均一に加熱されなければ、樹脂部内に残留応力が発生するおそれがある。例えば、加熱によって溶融した溶融部と溶融していない非溶融部が樹脂体内に存在している場合、冷却によって金属板に溶着された溶融部が収縮する際に非溶融部の高分子鎖が引き延ばされ、応力が発生する。この発生した応力は、残留応力として樹脂部内に残る。樹脂部内で発生している残留応力が大きいほど、内部空間の内圧などの樹脂部に加わる応力によって、樹脂部にクラックが発生し易くなる。最外層に位置する金属板に接合されている樹脂部にクラックが発生すると、電解液が蓄電モジュールの外部へ漏れ出す一因となるおそれがある。
【0005】
本発明は、蓄電モジュール全体の剛性が確保されながら、電解液が蓄電モジュールの外部に漏れ出すことを抑制できる蓄電モジュール及び蓄電モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る蓄電モジュールは、金属製の一対のエンドプレートと、一対のエンドプレートの間において積層された複数のバイポーラ電極とを有する電極積層体と、電極積層体の側面を囲むように設けられた封止体と、隣り合うバイポーラ電極の間に収容された電解液と、を備え、複数のバイポーラ電極の各々は、金属板と、当該金属板の一方面に設けられた正極と、当該金属板の他方面に設けられた負極と、を含み、封止体は、一対のエンドプレートの少なくとも一方の周縁部に接合されている終端樹脂部と、バイポーラ電極の金属板の周縁部に接合されている中間樹脂部と、を含み、終端樹脂部の結晶化度は、中間樹脂部の結晶化度よりも低くなっている。
【0007】
本発明の一側面に係る蓄電モジュールでは、終端樹脂部の結晶化度が、中間樹脂部の結晶化度よりも低くなっている。終端樹脂部は、エンドプレートの周縁部に接合されている。樹脂部の結晶化度が低いほど、剛性は低下するが、上述した残留応力に基づくクラックは発生し難くなる。上記蓄電モジュールでは、終端樹脂部は、少なくとも中間樹脂部よりも残留応力によるクラックが発生し難い。終端樹脂部でクラックの発生が抑制されていれば、蓄電モジュールの外部への電解液の漏れ出しも抑制される。また、終端樹脂部よりも結晶化度が高い中間樹脂部によって、蓄電モジュール全体の剛性が確保され得る。すなわち、上記蓄電モジュールでは、蓄電モジュール全体の剛性が確保されながら、電解液が蓄電モジュールの外部に漏れ出すことが抑制され得る。
【0008】
終端樹脂部と中間樹脂部とは、互いに異なる材料からなり、終端樹脂部の材料は、中間樹脂部の材料よりも結晶化しにくい材料であってもよい。この場合、終端樹脂部の結晶化度が中間樹脂部の結晶化度よりも低い構成を容易に実現できる。
【0009】
中間樹脂部は、ホモポリマーのポリプロピレンを含有し、終端樹脂部は、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーのポリプロピレンを含有してもよい。ランダムコポリマー又はブロックコポリマーのポリプロピレンは、ホモポリマーのポリプロピレンよりも結晶化しにくい。このため、終端樹脂部の結晶化度が中間樹脂部の結晶化度よりも低い構成を容易に実現できる。この結果、終端樹脂部においてクラックの発生が抑制されながら、中間樹脂部において蓄電モジュール全体の剛性が確保され得る。また、中間樹脂部において、ホモポリマーのポリプロピレンを含有することで、添加剤が抜けることを抑制できる。
【0010】
終端樹脂部と中間樹脂部とは、同一の材料からなっていてもよい。終端樹脂部と中間樹脂部とが同一の材料で製造されれば、製造コストが削減され得る。同一の材料を用いる場合でも接合条件を調整することで、上記終端樹脂部と中間樹脂部との間の結晶化度の関係を満足させることができる。
【0011】
一対のエンドプレートの一方は、金属板と当該金属板の一方面に設けられた負極を有する負極終端電極の金属板であり、電解液は、アルカリ溶液を含んでおり、終端樹脂部は、負極終端電極金属板の周縁部に接合された負極側終端樹脂部を有してもよい。電解液がアルカリ溶液を含んでいる場合、いわゆるアルカリクリープ現象により、電解液が負極終端電極のエンドプレートの表面を伝わり、上記負極側終端樹脂部とエンドプレートとの間を通って蓄電モジュールの外部に滲み出てしまうおそれがある。電解液が蓄電モジュールの外部に漏れ出て拡散すると、例えば蓄電モジュールに接して配置された金属板の腐食や、蓄電モジュールと拘束部材との短絡等が生じるおそれがある。また、負極側終端樹脂部には、内部空間の内圧に加えてアルカリクリープ現象による応力も付与される。この点、終端樹脂部の結晶化度が中間樹脂部の結晶化度よりも低くなっているため、負極側終端樹脂部において少なくとも中間樹脂部よりも残留応力によるクラックが発生し難い。したがって、内部空間の内圧に加えてアルカリクリープ現象による応力が負極側終端樹脂部に付与されても、蓄電モジュールの外部への電解液の漏れ出しが抑制される。
【0012】
電解液は、アルカリ溶液を含んでおり、一対のエンドプレートの一方は、電極積層体の積層方向において、金属板と当該金属板の一方面に設けられた負極を有する負極終端電極の外側に配置された負極側最外金属板であり、終端樹脂部は、負極側最外金属板の周縁部に接合された負極側終端樹脂部を含んでもよい。この場合も、内部空間の内圧に加えてアルカリクリープ現象による応力が負極側終端樹脂部に付与されても、蓄電モジュールの外部への電解液の漏れ出しが抑制される。
【0013】
一対のエンドプレートの他方は、金属板と当該金属板の一方面に設けられた正極を有する正極終端電極の金属板であり、終端樹脂部は、正極終端電極の金属板の周縁部に接合された正極側終端樹脂部を含み、正極側終端樹脂部の結晶化度は、負極側終端樹脂部の結晶化度よりも高くなっていてもよい。正極側終端樹脂部におけるクラックの発生は、アルカリクリープ現象による電解液の漏れ出しと関係性が低い。当該正極側終端樹脂部の結晶化度が負極側終端樹脂部の結晶化度よりも高ければ、正極側終端樹脂部は少なくとも負極側終端樹脂部よりも高い剛性を有する。したがって、この蓄電モジュールでは、アルカリクリープ現象によって電解液が蓄電モジュールの外部に漏れ出すことが抑制されながら、蓄電モジュール全体の剛性がさらに向上され得る。
【0014】
一対のエンドプレートの他方は、電極積層体の積層方向において、金属板と当該金属板の一方面に設けられた正極を有する正極終端電極の外側に配置された正極側最外金属板であり、終端樹脂部は、正極側最外金属板の周縁部に接合された正極側終端樹脂部を有し、正極側終端樹脂部の結晶化度は、負極側終端樹脂部の結晶化度よりも高くなっていてもよい。この蓄電モジュールでは、アルカリクリープ現象によって電解液が蓄電モジュールの外部に漏れ出すことが抑制されながら、蓄電モジュール全体の剛性がさらに向上され得る。
【0015】
終端樹脂部は、中間樹脂部と対向する対向面を有してもよい。対向面は、エンドプレートに対して、接合している領域と、接合しない領域とを含んでもよい。この場合、樹脂体の冷却時において、エンドプレートに接合しない領域がエンドプレートに接合している領域よりも収縮し、樹脂部内に残留応力が発生し易いという問題がある。上記蓄電モジュールでは、一対の終端樹脂部の少なくとも一方は比較的に結晶化度が低いため、エンドプレートに接合しない領域とエンドプレートに接合している領域との間で収縮差があっても、上記少なくとも一方における残留応力の発生が抑制される。したがって、残留応力によるクラックも発生し難い。
【0016】
終端樹脂部とエンドプレートとの接合領域において、エンドプレートは粗面化されていてもよい。この場合、アンカー効果によって、終端樹脂部とエンドプレートとの接合強度の向上を図ることができる。したがって、上記終端樹脂部の剥離を一層抑制でき、電解液の漏れをさらに抑制することが可能となる。
【0017】
本発明の別の側面に係る蓄電モジュールの製造方法は、金属板と当該金属板の一方面に設けられた正極と当該金属板の他方面に設けられた負極とを含む複数のバイポーラ電極が金属製の一対のエンドプレートの間に積層された電極積層体を有する蓄電モジュールの製造方法であって、一対のエンドプレートの少なくとも一方の周縁部に終端樹脂部を接合する最外層形成工程と、バイポーラ電極の金属板の周縁部に中間樹脂部を接合する中間層形成工程と、を有し、終端樹脂部の接合後の結晶化度が中間樹脂部の接合後の結晶化度よりも低くなるように、最外層形成工程及び中間層形成工程を実施する。
【0018】
上記製造方法で製造された蓄電モジュールでは、終端樹脂部の結晶化度が、中間樹脂部の結晶化度よりも低くなる。終端樹脂部はエンドプレートの周縁部に接合される。上記蓄電モジュールでは、終端樹脂部は、少なくとも中間樹脂部よりも残留応力によるクラックが発生し難い。終端樹脂部でクラックの発生が抑制されていれば、蓄電モジュールの外部への電解液の漏れ出しも抑制される。また、中間樹脂部によって、蓄電モジュール全体の剛性が確保され得る。すなわち、上記蓄電モジュールでは、蓄電モジュール全体の剛性が確保されながら、電解液が蓄電モジュールの外部に漏れ出すことが抑制され得る。
【0019】
終端樹脂部と中間樹脂部とに、互いに異なる材料を用い、終端樹脂部の材料として、中間樹脂部の材料よりも結晶化しにくい材料を用いてもよい。この場合、上記終端樹脂部の結晶化度が中間樹脂部の結晶化度よりも低い構成を容易に実現できる。
【0020】
中間樹脂部として、ホモポリマーのポリプロピレンを用い、終端樹脂部として、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーのポリプロピレンを用いてもよい。ランダムコポリマー又はブロックコポリマーのポリプロピレンは、ホモポリマーのポリプロピレンよりも結晶化しにくい。このため、上記終端樹脂部の結晶化度が中間樹脂部の結晶化度よりも低い構成を容易に実現できる。この結果、上記終端樹脂部においてクラックの発生が抑制されながら、中間樹脂部において蓄電モジュール全体の剛性が確保され得る。また、中間樹脂部において、ホモポリマーのポリプロピレンを含有することで、添加剤が抜けることを抑制できる。
【0021】
終端樹脂部と中間樹脂部とに、同一の材料を用い、終端樹脂部の接合時の冷却速度を中間樹脂部の接合時の冷却速度よりも速くしてもよい。この場合、冷却された後の上記終端樹脂部の結晶化度は、冷却された後の中間樹脂部の結晶化度よりも低く形成され得る。このため、この製造方法によって製造された蓄電モジュールでは、蓄電モジュール全体の剛性が確保されながら、電解液が蓄電モジュールの外部に漏れ出すことが抑制され得る。
【0022】
一対のエンドプレートの一方は、金属板と当該金属板の一方面に設けられた負極を有する負極終端電極であり、最外層形成工程では、負極終端電極の金属板の周縁部に終端樹脂部としての負極側終端樹脂部を接合し、負極側終端樹脂部の接合後の結晶化度が中間樹脂部の接合後の結晶化度よりも低くなるように最外層形成工程及び中間層形成工程を実施してもよい。この場合、負極側終端樹脂部において少なくとも中間樹脂部よりも残留応力によるクラックが発生し難い。したがって、内部空間の内圧に加えてアルカリクリープ現象による応力が負極側終端樹脂部に付与されても、蓄電モジュールの外部への電解液の漏れ出しが抑制される。
【0023】
一対のエンドプレートの一方は、電極積層体の積層方向において、金属板と当該金属板の一方面に設けられた負極を有する負極終端電極の外側に配置された負極側最外金属板であり、最外層形成工程では、積層方向において、負極側最外金属板の周縁部に終端樹脂部としての負極側終端樹脂部を接合し、負極側終端樹脂部の接合後の結晶化度が中間樹脂部の接合後の結晶化度よりも低くなるように最外層形成工程及び中間層形成工程を実施してもよい。この場合も、内部空間の内圧に加えてアルカリクリープ現象による応力が上記終端樹脂部に付与されても、蓄電モジュールの外部への電解液の漏れ出しが抑制される。
【0024】
一対のエンドプレートの他方は、金属板と当該金属板の一方面に設けられた正極を有する正極終端電極の金属板であり、最外層形成工程では、正極終端電極の金属板の周縁部に終端樹脂部としての正極側終端樹脂部を接合し、正極側終端樹脂部の接合後の結晶化度が、負極側終端樹脂部の接合後の結晶化度よりも高くなるように最外層形成工程を実施してもよい。この場合、この製造方法で製造された蓄電モジュールでは、アルカリクリープ現象によって電解液が蓄電モジュールの外部に漏れ出すことが抑制されながら、蓄電モジュール全体の剛性がさらに向上され得る。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一側面によれば、蓄電モジュール全体の剛性が確保されながら、電解液が蓄電モジュールの外部に漏れ出すことを抑制できる蓄電モジュール及び蓄電モジュールの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1実施形態に係る蓄電モジュールを備える蓄電装置を示す概略断面図である。
図2】第1実施形態に係る蓄電モジュールを示す略断面図である。
図3】蓄電モジュールの製造工程を説明するためのフローチャートである。
図4】樹脂体が加熱される工程の一例を示す図である。
図5】比較例に係る蓄電モジュールにおいて、樹脂体が冷却される工程の一例を示す図である。
図6】蓄電モジュールにおいて、樹脂体が冷却される工程の一例を示す図である。
図7】第2実施形態に係る蓄電モジュールを示す略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
[第1実施形態]
【0028】
図1を参照して、蓄電装置の第1実施形態について説明する。図1は、蓄電装置の第1実施形態を示す概略断面図である。図1に示される蓄電装置1は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、及び電気自動車などの各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置1は、複数(図1に示されている構成では3つ)の蓄電モジュール4を備えるが、単一の蓄電モジュール4を備えてもよい。蓄電モジュール4は、バイポーラ電池である。蓄電モジュール4は、例えばニッケル水素二次電池、及びリチウムイオン二次電池などの二次電池であるが、電気二重層キャパシタであってもよい。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0029】
複数の蓄電モジュール4は、例えば金属板などの導電構造体5を介して積層され得る。積層方向Dから見て、蓄電モジュール4及び導電構造体5は例えば矩形形状を有する。各蓄電モジュール4の詳細については後述する。図1に示されている構成では、導電構造体5は、蓄電モジュール4の積層方向Dにおいて両端に位置する蓄電モジュール4の外側にもそれぞれ配置されている。なお、蓄電装置1は、導電構造体5が積層方向Dにおいて両端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置されていない構造であってもよく、蓄電装置1の積層方向Dにおける一端及び他端に蓄電モジュール4が配置されていてもよい。すなわち、蓄電装置1における蓄電モジュール4と導電構造体5との積層体の最外層(スタック最外層)は、蓄電モジュール4であってもよい。この場合、スタック最外層の蓄電モジュール4に対して、後述する正極端子6及び負極端子7が設けられる。導電構造体5は、隣り合う蓄電モジュール4と電気的に接続される。これにより、複数の蓄電モジュール4が積層方向Dに直列に接続される。
【0030】
図1に示されている構成では、積層方向Dにおいて、一端に位置する導電構造体5には正極端子6が接続されており、他端に位置する導電構造体5には負極端子7が接続されている。正極端子6は、正極端子6と接続される導電構造体5と一体であってもよい。負極端子7は、負極端子7と接続される導電構造体5と一体であってもよい。正極端子6及び負極端子7は、積層方向Dに交差する方向に延在している。これらの正極端子6及び負極端子7により、蓄電装置1の充放電が実施される。
【0031】
導電構造体5は、蓄電モジュール4において発生した熱を放出するための放熱板としても機能し得る。導電構造体5の内部に設けられた複数の空隙5aを空気及び気体などの冷媒が通過することにより、蓄電モジュール4からの熱を効率的に外部に放出できる。各空隙5aは、例えば積層方向Dと、正極端子6及び負極端子7の引き出し方向とに交差する方向に延在する。導電構造体5は、蓄電モジュール4同士を電気的に接続する接続部材としての機能のほか、これらの空隙5aに冷媒を流通させることにより、蓄電モジュール4で発生した熱を放熱する放熱板としての機能を併せ持っている。積層方向Dから見て、導電構造体5は、蓄電モジュール4よりも小さいが、蓄電モジュール4と同じか蓄電モジュール4より大きくてもよい。
【0032】
蓄電装置1は、交互に積層された蓄電モジュール4及び導電構造体5を積層方向Dに拘束する拘束部材3を備え得る。拘束部材3は、一対の拘束プレート8A,8Bと、ボルト9及びナット10とを備える。ボルト9及びナット10は、拘束プレート8A,8Bに締結し、拘束プレート8A,8B同士を連結する。各拘束プレート8A,8Bと導電構造体5との間には、例えば樹脂フィルムなどの絶縁フィルムFが配置される。なお、スタック最外層が蓄電モジュール4である場合には、拘束部材3と蓄電モジュール4との間に絶縁フィルムFが配置される。
【0033】
各拘束プレート8A,8Bは、例えば金属によって構成されている。積層方向Dから見て、各拘束プレート8A,8B及び絶縁フィルムFは例えば矩形形状を有する。絶縁フィルムFは導電構造体5よりも大きく、各拘束プレート8A,8Bは、蓄電モジュール4よりも大きい。各拘束プレート8A,8Bは、例えばアルミダイカストなどによって形成され、強度及び設計自由度が確保されると共に、軽量化が図られている。
【0034】
積層方向Dから見て、拘束プレート8Aの縁部には、ボルト9の軸部を挿通させる挿通孔H1が蓄電モジュール4よりも外側に設けられている。同様に、積層方向Dから見て、拘束プレート8Bの縁部には、ボルト9の軸部を挿通させる挿通孔H2が蓄電モジュール4よりも外側に設けられている。積層方向Dから見て各拘束プレート8A,8Bが矩形形状を有している場合、挿通孔H1及び挿通孔H2は、拘束プレート8A,8Bの角部に位置する。
【0035】
拘束プレート8Aは、負極端子7に接続された導電構造体5に絶縁フィルムFを介して突き当てられ、拘束プレート8Bは、正極端子6に接続された導電構造体5又は蓄電モジュール4に絶縁フィルムFを介して突き当てられている。ボルト9は、例えば拘束プレート8Aから拘束プレート8Bに向かって挿通孔H1及び挿通孔H2に通される。拘束プレート8Bから突出するボルト9の先端には、ナット10が螺合されている。これにより、絶縁フィルムF、導電構造体5及び蓄電モジュール4が挟持されてユニット化されると共に、積層方向Dに拘束荷重が付加される。
【0036】
次に、図2を参照して、第1実施形態に係る蓄電モジュール4の構成について詳細に説明する。図2は、図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。図2に示されるように、蓄電モジュール4は、電極積層体11と、電極積層体11を封止する樹脂製の封止体12とを備えている。電極積層体11は、複数の金属板15を含み、セパレータ13を介して蓄電モジュール4の積層方向Dに沿って積層された複数の電極を含む。これらの電極は、複数のバイポーラ電極14の積層体と、負極終端電極18と、正極終端電極19とを含む。複数の金属板15は、複数の金属板15のうち積層方向Dの両端に配置された金属製の一対のエンドプレートを含む。すなわち、本実施形態において、エンドプレートは、1つの蓄電モジュール4に含まれる電極積層体11において最も外側に位置する最外金属板である。一対のエンドプレートの間に、1つの電極積層体11における全てのバイポーラ電極14が積層されている。一対のエンドプレートは、後述する負極終端電極18側に位置する負極側最外金属板と、後述する正極終端電極19側に位置する正極側最外金属板とを含む。
【0037】
バイポーラ電極14は、一方面15a及び一方面15aの反対側の他方面15bを含む金属板15と、一方面15aに設けられた正極16と、他方面15bに設けられた負極17とを有している。正極16は、正極活物質が金属板15に塗工されることにより形成される正極活物質層である。負極17は、負極活物質が金属板15に塗工されることにより形成される負極活物質層である。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の正極16は、セパレータ13を挟んで積層方向Dの一方に隣り合う別のバイポーラ電極14の負極17と対向している。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の負極17は、セパレータ13を挟んで積層方向Dの他方に隣り合う別のバイポーラ電極14の正極16と対向している。
【0038】
負極終端電極18は、金属板15と、金属板15の他方面15bに設けられた負極17とを有している。第1実施形態では、負極終端電極18の金属板15が、一対のエンドプレートの一方を構成する負極側最外金属板である。負極終端電極18は、他方面15bが電極積層体11における積層方向Dの中央側を向くように、積層方向Dの一端に配置されている。負極終端電極18の金属板15の一方面15aは、電極積層体11の積層方向Dにおける一方の外側面を構成し、蓄電モジュール4に隣接する一方の導電構造体5(図1参照)と電気的に接続されている。負極終端電極18の金属板15の他方面15bに設けられた負極17は、セパレータ13を介して、積層方向Dの一端のバイポーラ電極14の正極16と対向している。
【0039】
正極終端電極19は、金属板15と、金属板15の一方面15aに設けられた正極16とを有している。第1実施形態では、正極終端電極19の金属板15が、一対のエンドプレートの他方を正極側最外金属板である。正極終端電極19は、一方面15aが電極積層体11における積層方向Dの中央側を向くように、積層方向Dの他端に配置されている。正極終端電極19の一方面15aに設けられた正極16は、セパレータ13を介して、積層方向Dの他端のバイポーラ電極14の負極17と対向している。正極終端電極19の金属板15の他方面15bは、電極積層体11の積層方向Dにおける他方の外側面を構成し、蓄電モジュール4に隣接する他方の導電構造体5(図1参照)と電気的に接続されている。
【0040】
金属板15は、例えば、ニッケル又はニッケルメッキ鋼板といった金属からなる。一例として、金属板15は、ニッケルからなる矩形の金属箔である。金属板15の周縁部15cは、矩形枠状をなし、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっている。正極16を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極17を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。第1実施形態では、金属板15の他方面15bにおける負極17の形成領域は、金属板15の一方面15aにおける正極16の形成領域に対して一回り大きくなっている。
【0041】
セパレータ13は、例えばシート状に形成されている。セパレータ13としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。セパレータ13は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されたものであってもよい。なお、セパレータ13は、シート状に限られず、袋状のものを用いてもよい。
【0042】
封止体12は、例えば絶縁性の樹脂によって、全体として矩形の筒状に形成されている。封止体12は、電極積層体11の側面11aを囲むように設けられている。封止体12は、側面11aにおいて周縁部15cを保持している。封止体12は、例えば、耐アルカリ性を有する絶縁性の樹脂である。封止体12は、樹脂部21と、樹脂部22と、樹脂部23と、筐体部24とを有する。樹脂部21、樹脂部22、及び樹脂部23は、金属板15において周縁部15cの全周にわたって連続的に設けられ、積層方向Dから見て矩形枠状を呈している。筐体部24は、側面11aに沿って樹脂部21、樹脂部22、及び樹脂部23を外側から包囲する。筐体部24は、樹脂部21、樹脂部22、及び樹脂部23のそれぞれに結合されている。
【0043】
蓄電モジュール4は、複数のバイポーラ電極14と樹脂部21とを含むバイポーラ電極ユニット31と、負極終端電極18と樹脂部22とを含む負極終端電極ユニット32と、正極終端電極19と樹脂部23とを含む正極終端電極ユニット33とを有する。負極終端電極ユニット32は、バイポーラ電極ユニット31の一端に接合されている。正極終端電極ユニット33は、バイポーラ電極ユニット31の他端に接合されている。樹脂部21は、複数のバイポーラ電極14の金属板15の周縁部15cに接合されている。樹脂部22は、負極終端電極18の金属板15の周縁部15cに接合されている。樹脂部23は、正極終端電極19の金属板15の周縁部15cに接合されている。
【0044】
第1実施形態では、例えば、樹脂部22が負極側終端樹脂部であり、樹脂部23が正極側終端樹脂部であり、樹脂部21が中間樹脂部である。例えば、負極側終端樹脂部はエンドプレートの一方の周縁部15cに接合され、正極側終端樹脂部はエンドプレートの他方の周縁部15cに接合され、中間樹脂部はバイポーラ電極14の金属板の周縁部15cに接合されている。
【0045】
樹脂部21、樹脂部22、及び樹脂部23は、それぞれ、隣り合う樹脂部21、樹脂部22、及び樹脂部23と対向する対向面25を有している。樹脂部21は、隣り合う樹脂部21、樹脂部22、又は樹脂部23との対向面25において、金属板15の一方面15a及び他方面15bに接合されている。樹脂部22は、隣り合う樹脂部21との対向面25において、負極終端電極18の金属板15の他方面15bに接合されている。樹脂部23は、隣り合う樹脂部21との対向面25において、正極終端電極19の金属板15の一方面15aに接合されている。樹脂部21、樹脂部22、及び樹脂部23のそれぞれは、金属板15と接合する上記対向面25において、金属板15に接合している領域K1と当該金属板15と接合しない領域K2を含む。
【0046】
各金属板15の表面は、樹脂部21、樹脂部22、及び樹脂部23と接合する接合領域K3において、粗面化されている。粗面化された領域は、接合領域K3のみでもよいが、第1実施形態では金属板15の面全体が粗面化されている。粗面化は、例えば電解メッキによる複数の突起の形成により実現し得る。複数の突起が形成されることにより、金属板15と樹脂部21、樹脂部22、及び樹脂部23との接合界面では、溶融状態の樹脂が粗面化により形成された複数の突起間に入り込み、アンカー効果が発揮される。これにより、金属板15と樹脂部21、樹脂部22、及び樹脂部23との間の結合強度を向上させることができる。粗面化の際に形成される突起は、例えば基端側から先端側に向かって先太りとなる形状を有している。これにより、隣り合う突起の間の断面形状がアンダーカット形状となり、アンカー効果を高めることが可能となる。
【0047】
樹脂部21、樹脂部22、及び樹脂部23は、熱によって金属板15に溶着され、気密に接合されている。樹脂部21、樹脂部22、及び樹脂部23は、例えば積層方向Dに所定の厚さを有するフィルムである。樹脂部21、樹脂部22、及び樹脂部23のそれぞれの内側は、積層方向Dから見て金属板15の周縁部15cと重なるように位置している。樹脂部21、樹脂部22、及び樹脂部23の外側は、金属板15の縁よりも外側に張り出しており、その先端部分は、筐体部24によって支持されている。積層方向Dに沿って互いに隣り合う樹脂部21、樹脂部22、及び樹脂部23は、互いに離間していてもよく、接していてもよい。また、樹脂部21、樹脂部22、及び樹脂部23の外縁部分同士は、例えば熱板溶着などによって互いに結合されていてもよい。
【0048】
筐体部24は、電極積層体11、樹脂部21、樹脂部22、及び樹脂部23の外側に設けられ、蓄電モジュール4の外壁を構成している。筐体部24は、例えば樹脂の射出成型によって形成され、積層方向Dに沿って電極積層体11の全長にわたって延在している。筐体部24は、積層方向Dを軸方向として延在する矩形枠状を呈している。筐体部24は、例えば射出成型時の熱によって樹脂部21の外表面に溶着されている。
【0049】
樹脂部21、樹脂部22、樹脂部23、及び筐体部24は、隣り合う電極の間に内部空間Vを形成すると共に内部空間Vを封止する。より具体的には、筐体部24は、樹脂部21、樹脂部22、及び樹脂部23と共に、積層方向Dに沿って互いに隣り合うバイポーラ電極14の間、積層方向Dに沿って互いに隣り合う負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び積層方向Dに沿って互いに隣り合う正極終端電極19とバイポーラ電極14との間をそれぞれ封止している。これにより、隣り合うバイポーラ電極14の間、負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び正極終端電極19とバイポーラ電極14との間には、それぞれ気密に仕切られた内部空間Vが形成されている。この内部空間Vには、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液を含む電解液(不図示)が収容されている。電解液は、セパレータ13、正極16、及び負極17内に含浸されている。
【0050】
樹脂部21、樹脂部22、樹脂部23、及び筐体部24は、例えば、耐アルカリ性を有する絶縁性の樹脂である。第1実施形態では、樹脂部21、樹脂部22、樹脂部23、及び筐体部24の主な構成材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)などが挙げられる。ポリプロピレンとしては、たとえば、単独重合のホモポリマー、並びに、共重合のランダムコポリマー及びブロックコポリマーが挙げられる。樹脂部21、樹脂部22、樹脂部23、及び筐体部24には、例えば、酸化防止機能を持つ添加剤が添加されていてもよい。酸化防止機能を持つ添加剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類などが挙げられる。
【0051】
第1実施形態では、樹脂部22の結晶化度は、樹脂部21及び樹脂部23の結晶化度よりも低くなっている。換言すれば、樹脂部21及び樹脂部23の結晶化度は、樹脂部22の結晶化度よりも高くなっている。樹脂部の結晶化度の違いは、材料の違い及び接合条件の違い、例えば冷却速度の違い、などによってもたらされる。第1実施形態では、樹脂部21、樹脂部22、及び樹脂部23の結晶化度の違いは、樹脂部21、樹脂部22、及び樹脂部23の材料の違いによってもたらされる。
【0052】
第1実施形態では、樹脂部23の結晶化度は、樹脂部21の結晶化度と等しくなっているが、これに限定されない。樹脂部22及び樹脂部23の少なくとも一方の結晶化度が、樹脂部21の結晶化度よりも低くなっていてもよい。例えば、第1実施形態の変形例として、樹脂部23の結晶化度は、樹脂部21の結晶化度よりも低くなっていてもよい。この変形例では、樹脂部23の結晶化度は、樹脂部22の結晶化度と等しくなっていてもよい。
【0053】
第1実施形態では、樹脂部22と、樹脂部21及び樹脂部23とが、互いに異なる材料からなる。樹脂部22の材料は、樹脂部21及び樹脂部23の材料よりも結晶化しにくい材料である。樹脂部21及び樹脂部23は、主な構成材料として、ホモポリマーのポリプロピレンを含有する。樹脂部22は、主な構成材料として、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーのポリプロピレンを含有する。ブロックコポリマーのポリプロピレンの融点の方が、ランダムコポリマーのポリプロピレンの融点よりも高い。このため、樹脂部22の主な構成材料がブロックコポリマーのポリプロピレンである場合、ランダムコポリマーのポリプロピレンである場合よりも、封止体12が容易かつ確実に形成され得る。この結果、製品の信頼性が向上される。
【0054】
第1実施形態では、樹脂部21及び樹脂部23は、互いに同一の材料からなるが、これに限定されない。樹脂部22及び樹脂部23の少なくとも一方と、樹脂部21とが、互いに異なる材料からなっていてもよい。樹脂部21の材料は、樹脂部22及び樹脂部23の少なくとも一方の材料よりも結晶化しにくい材料であってもよい。例えば、上述した変形例では、樹脂部23と樹脂部21とが互い異なる材料からなってもよく、樹脂部23の材料が樹脂部21の材料よりも結晶化しにくい材料であってもよい。
【0055】
第1実施形態では、樹脂部21及び樹脂部23は主な材料としてホモポリマーのポリプロピレンを含有し、樹脂部22は主な構成材料としてランダムコポリマー又はブロックコポリマーのポリプロピレンを含有するが、これに限定されない。樹脂部22及び樹脂部23の少なくとも一方が、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーのポリプロピレンを含有してもよい。例えば、上述した変形例では、樹脂部21は、ホモポリマーのポリプロピレンを含有し、樹脂部22及び樹脂部23は、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーのポリプロピレンを含有してもよい。
【0056】
次に、図3及び図4を参照しながら、蓄電モジュール4の製造方法の一例について説明する。図3は、上述した蓄電モジュールの製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。図4は、樹脂体が加熱される工程の一例を示す図である。図3に示されるように、蓄電モジュール4の製造方法には、形成工程S1、積層工程S2、封止工程S3、及び注入工程S4が含まれる。
【0057】
まず、形成工程S1において、バイポーラ電極ユニット31と、負極終端電極ユニット32と、正極終端電極ユニット33とがそれぞれ形成される。形成工程S1は、負極終端電極ユニット32を形成する第1の形成工程と、バイポーラ電極ユニット31を形成する第2の形成工程と、正極終端電極ユニット33を形成する第3の形成工程とを含む。第1の形成工程、第2の形成工程、及び第3の形成工程は、いずれの順番で行われてもよいし、並行して行われてもよい。第1の形成工程及び第3の形成工程は、エンドプレートの周縁部に終端樹脂部を接合する最外層形成工程に含まれる。第2の形成工程は、バイポーラ電極14の金属板の周縁部に中間樹脂部を接合する中間層形成工程に含まれる。
【0058】
第1の形成工程では、負極終端電極18を用意する。続いて、負極終端電極18の金属板15の他方面15bの周縁部15cに、樹脂部22となる樹脂体を熱溶着によって接合する。これより、負極終端電極ユニット32が形成される。
【0059】
第2の形成工程では、所定数のバイポーラ電極14を用意する。続いて、セパレータ13を介して複数のバイポーラ電極14を積層する。続いて、各バイポーラ電極14の金属板15の一方面15aの周縁部15cと他方面15bの周縁部15cとのそれぞれに、樹脂部21となる樹脂体を熱溶着によって接合する。これにより、バイポーラ電極ユニット31が形成される。
【0060】
第3の形成工程では、正極終端電極19を用意する。続いて、正極終端電極19の金属板15の一方面15aの周縁部15cに、樹脂部23となる樹脂体を熱溶着によって接合する。これより、正極終端電極ユニット33が形成される。
【0061】
第1実施形態では、第1の形成工程、第2の形成工程、及び第3の形成工程では、同一の方法で、樹脂部21、樹脂部22、及び樹脂部23として樹脂体が金属板15に接合される。図4は、一例として、第1の形成工程でバイポーラ電極14の金属板15に樹脂体40を溶着する工程を示している。例えば、図4に示されているように、樹脂体40をヒータ41で加熱する。この際、少なくとも、ヒータ41と対向する加熱面42が、樹脂体40の材料の融点を超えるように加熱される。続いて、ゴム部材43で樹脂体を金属板15に向かって押し当て、樹脂体40の加熱面42を金属板15に溶着させる。第1実施形態では、加熱面42の一部が、金属板15に溶着される。続いて、加熱面42が金属板15に溶着されている状態で、樹脂体40を冷却する。
【0062】
これによって、第1の形成工程で負極終端電極18の金属板15の周縁部15cと接合された樹脂部22が形成され、第3の形成工程で正極終端電極19の金属板15の周縁部15cと接合された樹脂部23が形成され、第3の形成工程でバイポーラ電極14の金属板15の周縁部15cと接合された樹脂部21が形成される。冷却後の加熱面42は、金属板15に接合された対向面25に相当する。
【0063】
第1の形成工程、第2の形成工程、及び第3の形成工程は、樹脂部22の接合後の結晶化度が樹脂部21及び樹脂部23の接合後の結晶化度よりも低くなるように実施される。換言すれば、第1の形成工程、第2の形成工程、及び第3の形成工程は、樹脂部21及び樹脂部23の結晶化後の結晶化度が樹脂部22の結晶化後の結晶化度よりも高くなるように実施される。
【0064】
第1実施形態では、第2の形成工程及び第3の形成工程は、樹脂部23の結合後の結晶化度は樹脂部21の結合後の結晶化度と等しくなるように実施されるが、これに限定されない。第1から第3の形成工程は、樹脂部22及び樹脂部23の少なくとも一方の結合後の結晶化度が、樹脂部21の結合後の結晶化度よりも低くなるように実施されてもよい。例えば、上述した変形例では、第2の形成工程及び第3の形成工程は、樹脂部23の結合後の結晶化度が樹脂部21の結合後の結晶化度よりも低くなるように実施されてもよい。この変形例では、第1の形成工程及び第3の形成工程は、樹脂部23の結合後の結晶化度が樹脂部22の結合後の結晶化度と等しくなるように実施されてもよい。
【0065】
第1実施形態では、樹脂部21、樹脂部22、及び樹脂部23の結晶化度の違いは、樹脂部21、樹脂部22、及び樹脂部23の材料の違いによってもたらされる。第1実施形態では、樹脂部21及び樹脂部23と、樹脂部22とには、互いに異なる材料が用いられる。樹脂部22の材料には、樹脂部21及び樹脂部23の材料よりも結晶化しにくい材料が用いられる。
【0066】
第1実施形態では、樹脂部21及び樹脂部23の主な構成材料には、ホモポリマーのポリプロピレンが用いられる。樹脂部22の主な構成材料には、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーのポリプロピレンが用いられる。ブロックコポリマーのポリプロピレンの融点の方が、ランダムコポリマーのポリプロピレンの融点よりも高い。このため、樹脂部22の主な構成材料がブロックコポリマーのポリプロピレンである場合、ランダムコポリマーのポリプロピレンである場合よりも、封止体12が容易かつ確実に形成され得る。
【0067】
第1実施形態では、樹脂部21及び樹脂部23には互いに同一の材料が用いられるが、これに限定されない。樹脂部22及び樹脂部23の少なくとも一方と、樹脂部21とに、互いに異なる材料が用いられてもよい。樹脂部21の材料には、樹脂部22及び樹脂部23の少なくとも一方の材料よりも結晶化しにくい材料が用いられてもよい。例えば、上述した変形例では、樹脂部23と樹脂部21とに互い異なる材料が用いられてもよく、樹脂部21の材料に樹脂部23の材料よりも結晶化しにくい材料が用いられてもよい。
【0068】
第1実施形態では、樹脂部21及び樹脂部23の主な構成材料には、ホモポリマーのポリプロピレンが用いられ、樹脂部22の主な構成材料には、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーのポリプロピレンが用いられるが、これに限定されない。樹脂部22及び樹脂部23の少なくとも一方の主な構成材料に、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーのポリプロピレンが用いられてもよい。例えば、上述した変形例では、樹脂部21の構成材料には、ホモポリマーのポリプロピレンが用いられてもよく、樹脂部22及び樹脂部23の構成材料には、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーのポリプロピレンが用いられてもよい。
【0069】
次に、積層工程S2において、バイポーラ電極ユニット31の一端に負極終端電極ユニット32を接合し、バイポーラ電極ユニット31の他端に正極終端電極ユニット33を接合する。これによって、電極積層体11が形成される。この際、セパレータ13を介して、バイポーラ電極ユニット31の一端側のバイポーラ電極14上に負極終端電極ユニット32が積層される。セパレータ13を介して、正極終端電極ユニット33の正極終端電極19上にバイポーラ電極ユニット31が積層される。
【0070】
次に、封止工程S3において、射出成形の金型(不図示)内に電極積層体11を配置した後、金型内に溶融樹脂を射出することにより、筐体部24を成形する。すなわち、電極積層体11の側面11aを囲むように封止体12を形成し、電極積層体11を封止する。次に、注入工程S4において、電極間の内部空間Vに電解液を注入する。以上の工程によって、蓄電モジュール4が得られる。
【0071】
次に、図5及び図6を参照して蓄電モジュール4の作用効果について説明する。図5は、比較例に係る蓄電モジュールにおいて、樹脂体が冷却される工程の一例を示す図である。図6は、第1実施形態に係る蓄電モジュールにおいて、樹脂体が冷却される工程の一例を示す図である。
【0072】
上述したように、樹脂体40は、例えばヒータによって加熱され、加熱された加熱面42が金属板15に溶着されている状態で冷却される。この際、樹脂体40の全体を均一に加熱することは困難であり、樹脂体40内に溶融した溶融部46と溶融していない非溶融部47が存在する。図5及び図6では、溶融部46にドットハッチングが付されている。
【0073】
金属板15に溶着された溶融部46は冷却によって収縮するが、非溶融部47は冷却されても溶融部46ほど収縮しない。このため、金属板15に溶着された溶融部46が収縮する際に非溶融部47の高分子鎖が引き延ばされ、応力が発生する。この結果、樹脂部21、樹脂部22、及び樹脂部23の内部には、残留応力が発生するおそれがある。樹脂部内で発生している残留応力が大きいほど、内部空間Vの内圧又はアルカリクリープ現象によって樹脂部に加わる応力によって、樹脂部にクラックが発生し易くなる。負極終端電極18の金属板15に接合されている樹脂部22にクラックが発生すると、電解液が蓄電モジュールの外部へ漏れ出す一因となるおそれがある。
【0074】
図5及び図6において、矢印A1,A2は溶融部46の収縮のイメージを表し、矢印B1,B2は非溶融部47の高分子鎖が引き延ばされることによって発生する応力のイメージを表している。矢印A1,A2の長さは収縮の度合いを表し、矢印B1,B2の長さは、応力の強さを表している。図6は、図5よりも結晶化度が低くなるように樹脂部が形成される場合を示している。樹脂部の結晶化度の違いは、冷却速度の違い及び材料の違いなどによってもたらされる。図5及び図6の矢印B1,B2で示されているように、樹脂部の結晶化度が低いほど、樹脂部の形成において非溶融部47の高分子鎖が引き延ばされることよって発生する応力が弱くなる。したがって、樹脂部の結晶化度が低いほど、残留応力に基づくクラックは発生し難くなる。
【0075】
蓄電モジュール4では、樹脂部22及び樹脂部23の少なくとも一方の結晶化度は、樹脂部21の結晶化度よりも低くなっている。このため、上記蓄電モジュール4では、樹脂部22及び樹脂部23の少なくとも一方は、少なくとも樹脂部21よりも残留応力によるクラックが発生し難い。樹脂部22及び樹脂部23の少なくとも一方でクラックの発生が抑制されていれば、蓄電モジュール4の外部への電解液の漏れ出しも抑制される。また、樹脂部21によって、蓄電モジュール4の全体の剛性が確保され得る。すなわち、上記蓄電モジュール4では、蓄電モジュール4の全体の剛性が確保されながら、電解液が蓄電モジュール4の外部に漏れ出すことが抑制され得る。
【0076】
第1実施形態では、負極終端電極18の金属板15に接合された樹脂部22の結晶化度は、バイポーラ電極14の金属板15に接合された樹脂部21の結晶化度よりも低くなっている。樹脂部22は、負極終端電極18の金属板15の周縁部15cに接合されている。しかし、電解液がアルカリ溶液を含んでいる場合、いわゆるアルカリクリープ現象により、電解液が負極終端電極18の金属板15の表面を伝わり、樹脂部22と金属板15との間を通って蓄電モジュール4の外部に滲み出てしまうおそれがある。電解液が蓄電モジュール4の外部に漏れ出て拡散すると、例えば蓄電モジュール4に接して配置された金属板15の腐食や、蓄電モジュール4と拘束部材3との短絡等が生じるおそれがある。また、樹脂部22には、内部空間Vの内圧に加えてアルカリクリープ現象による応力も付与される。この点、樹脂部22の結晶化度が樹脂部23の結晶化度よりも低くなっているため、樹脂部22において少なくとも樹脂部23よりも残留応力によるクラックが発生し難い。したがって、内部空間Vの内圧に加えてアルカリクリープ現象による応力が樹脂部22に付与されても、蓄電モジュール4の外部への電解液の漏れ出しが抑制され得る。
【0077】
第1実施形態では、正極終端電極19の金属板15に接合された樹脂部23の結晶化度は、負極終端電極18の金属板15に接合された樹脂部22の結晶化度よりも高くなっている。正極終端電極19側において、樹脂部23におけるクラックの発生は、アルカリクリープ現象による電解液の漏れ出しと関係性が低い。樹脂部23の結晶化度が樹脂部22の結晶化度よりも高ければ、樹脂部23は少なくとも樹脂部22よりも高い剛性を有する。したがって、この蓄電モジュール4では、アルカリクリープ現象によって電解液が蓄電モジュール4の外部に漏れ出すことが抑制されながら、蓄電モジュール全体の剛性がさらに向上され得る。
【0078】
第1実施形態の変形例では、正極終端電極19の金属板15に接合された樹脂部23の結晶化度は、樹脂部21の結晶化度よりも低くなっている。この場合、樹脂部23において少なくとも樹脂部21よりも残留応力によるクラックが発生し難い。したがって、内部空間Vの内圧による応力が樹脂部23に付与されても、蓄電モジュール4の外部への電解液の漏れ出しが抑制され得る。
【0079】
第1実施形態では、樹脂部21及び樹脂部23と、樹脂部22とは、互いに異なる材料からなっており、樹脂部22の材料は、樹脂部21及び樹脂部23の材料よりも結晶化しにくい材料である。この場合、樹脂部22の結晶化度が樹脂部21よりも低く、かつ、樹脂部23の結晶化度が樹脂部22よりも高い構成を容易に実現できる。
【0080】
第1実施形態の変形例では、樹脂部23と樹脂部21とが互い異なる材料からなっており、樹脂部23の材料が樹脂部21の材料よりも結晶化しにくい材料である。この場合、樹脂部23の結晶化度が樹脂部21よりも低い構成を容易に実現できる。
【0081】
第1実施形態では、樹脂部21及び樹脂部23は、ホモポリマーのポリプロピレンを含有し、樹脂部22は、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーのポリプロピレンを含有する。ランダムコポリマー又はブロックコポリマーのポリプロピレンは、ホモポリマーのポリプロピレンよりも結晶化しにくい。このため、樹脂部22の結晶化度が樹脂部21よりも低く、かつ、樹脂部23の結晶化度が樹脂部22よりも高い構成を容易に実現できる。この結果、樹脂部22においてクラックの発生が抑制されながら、樹脂部21及び樹脂部23において蓄電モジュール全体の剛性が確保され得る。また、樹脂部21及び樹脂部23において、ホモポリマーのポリプロピレンを含有することで、樹脂体に添加されたヒンダードフェノール等の添加剤が抜けることを抑制できる。
【0082】
第1実施形態の変形例では、樹脂部21は、ホモポリマーのポリプロピレンを含有し、樹脂部22及び樹脂部23は、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーのポリプロピレンを含有する。この場合、樹脂部23の結晶化度が樹脂部21よりも低い構成を容易に実現できる。
【0083】
樹脂部22及び樹脂部23は、樹脂部21と対向する対向面25を有している。この対向面25は、金属板15に接合している領域K1と、当該金属板15と接合しない領域K2を含んでいる。この場合、図5の矢印A1,A2で表されているように、樹脂体の冷却時において、金属板15に接合しない領域K2は、金属板15に拘束されないため、金属板15に接合している領域K1よりも収縮する。このため、樹脂部22及び樹脂部23内に残留応力が発生し易いという問題がある。
【0084】
また、金属板15と樹脂部22及び樹脂部23との接合領域K3において、金属板15は粗面化されている。この場合、アンカー効果によって、樹脂部22及び樹脂部23と金属板15との接合強度の向上が図られる。したがって、樹脂部22及び樹脂部23の剥離を一層抑制でき、樹脂部22及び樹脂部23の剥離による電解液の漏れを抑制することが可能となる。特に、負極終端電極18の金属板15と樹脂部22との接合領域K3において、負極終端電極18の金属板15は粗面化されているため、樹脂部22の剥離によるアルカリクリープ現象の進行を抑制することが可能となる。しかし、アンカー効果が発生するがために、金属板15に接合しない領域K2と金属板15に接合している領域K1との収縮差による上記問題は、より顕著に生じるおそれがある。
【0085】
第1実施形態では、蓄電モジュール4では、樹脂部22は比較的に結晶化度が低いため、金属板15に接合しない領域K2と金属板15に接合している領域K1との間で収縮差があっても、樹脂部22における残留応力の発生が抑制される。したがって、樹脂部22において、残留応力によるクラックも発生し難い。また、第1実施形態の変形例では、樹脂部23も比較的に結晶化度が低いため、金属板15に接合しない領域K2と金属板15に接合している領域K1との間で収縮差があっても、樹脂部23における残留応力の発生が抑制される。したがって、樹脂部23においても、残留応力によるクラックも発生し難い。
【0086】
次に、第1実施形態の別の変形例に係る蓄電モジュールについて説明する。本変形例は、概ね、上述した実施形態と類似又は同じである。本変形例は、樹脂部21、樹脂部22、及び樹脂部23が同一の材料からなる点、及び、樹脂部の結晶化度の違いが冷却速度の違いによってもたらされる点に関して、上述した実施形態と相違する。以下、上述した実施形態との相違点を主として説明する。
【0087】
本変形例では、樹脂部21、樹脂部22、及び樹脂部23の結晶化度の違いは、樹脂部21、樹脂部22、及び樹脂部23のそれぞれが金属板15に接合される際の冷却速度の違いによってもたらされる。樹脂体が同一の材料で構成されている場合、樹脂体の冷却速度が速いほど、冷却後の結晶化度は低くなる。樹脂部21、樹脂部22、及び樹脂部23が同一の材料から製造されれば、製造コストが削減され得る。
【0088】
本変形例では、樹脂部22の結晶化度は、樹脂部21及び樹脂部23の結晶化度よりも低くなっている。換言すれば、樹脂部21及び樹脂部23の結晶化度は、樹脂部22の結晶化度よりも高くなっている。本変形例では、樹脂部22と樹脂部21との結晶化度の違いは、冷却速度の違いによってもたらされている。
【0089】
本変形例では、樹脂部21、樹脂部22、及び樹脂部23は、同一の材料からなり、主な構成材料として、ホモポリマーのポリプロピレンを含有する。樹脂部21、樹脂部22、及び樹脂部23は、主な構成材料として、ランダムコポリマーのポリプロピレンを含有してもよい。樹脂部21、樹脂部22、及び樹脂部23は、主な構成材料として、ブロックコポリマーのポリプロピレンを含有してもよい。ブロックコポリマーのポリプロピレンの融点の方が、ランダムコポリマーのポリプロピレンの融点よりも高い。このため、樹脂部21、樹脂部22、及び樹脂部23の主な構成材料がブロックコポリマーのポリプロピレンである場合、ランダムコポリマーのポリプロピレンである場合よりも、封止体12が容易かつ確実に形成され得る。
【0090】
本変形例における蓄電モジュール4の製造方法では、第1の形成工程、第2の形成工程、及び第3の形成工程は、樹脂部22の接合後の結晶化度が樹脂部21及び樹脂部23の接合後の結晶化度よりも低くなるように実施される。本変形例では、樹脂部21、樹脂部22、及び樹脂部23の結晶化度の違いは、樹脂部21、樹脂部22、及び樹脂部23を金属板15に接合する際の冷却速度の違いによってもたらされる。
【0091】
本変形例では、第1の形成工程における樹脂部22の接合時の冷却速度は、第2の形成工程における樹脂部21の接合時の冷却速度よりも速い。この結果、樹脂部21と樹脂部22とに同一の材料が用いられたとしても、樹脂体が冷却された後の樹脂部22の結晶化度は、樹脂体が冷却された後の樹脂部21の結晶化度よりも低く形成され得る。したがって、蓄電モジュール4の全体の剛性が確保されながら、電解液が蓄電モジュール4の外部に漏れ出すことが抑制され得る。
【0092】
本変形例では、第2の形成工程における樹脂部23の接合時の冷却速度は、第1の形成工程における樹脂部22の接合時の冷却速度よりも遅い。この結果、樹脂部22と樹脂部23とに同一の材料が用いられたとしても、樹脂体が冷却された後の樹脂部23の結晶化度は、樹脂体が冷却された後の樹脂部22の結晶化度よりも高く形成され得る。樹脂部23の結晶化度が樹脂部22の結晶化度よりも高ければ、樹脂部23は少なくとも樹脂部22よりも高い剛性を有する。したがって、この蓄電モジュール4では、アルカリクリープ現象によって電解液が蓄電モジュール4の外部に漏れ出すことが抑制されながら、蓄電モジュール全体の剛性がさらに向上され得る。
【0093】
更に別の変形例として、樹脂部23の結晶化度が樹脂部21よりも低い場合、第1の形成工程、第2の形成工程、及び第3の形成工程は、樹脂部23の接合後の結晶化度が樹脂部21の接合後の結晶化度よりも低くなるように実施される。この場合、例えば、第2の形成工程における樹脂部23の接合時の冷却速度は、第3の形成工程における樹脂部21の接合時の冷却速度よりも速くてもよい。この結果、樹脂部21と樹脂部23とに同一の材料が用いられたとしても、樹脂体が冷却された後の樹脂部23の結晶化度は、樹脂体が冷却された後の樹脂部21の結晶化度よりも低く形成され得る。したがって、内部空間Vの内圧による応力が樹脂部23に付与されても、電解液が蓄電モジュール4の外部に漏れ出すことが抑制され得る。
[第2実施形態]
【0094】
次に、図7を参照して、第2実施形態に係る蓄電モジュールについて説明する。第2実施形態は、概ね、上述した第1実施形態及び第1実施形態の変形例と類似又は同じである。第2実施形態は、負極終端電極18及び正極終端電極19の外側にエンドプレートが配置されている点に関して、上述した第1実施形態及びその変形例と相違する。以下、上述した第1実施形態及びその変形例との相違点を主として説明する。図7は、第2実施形態に係る蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。
【0095】
第2実施形態の蓄電モジュール4Aでは、積層方向Dにおいて負極終端電極18が含む金属板15の外側に金属板50が配置されている。積層方向Dにおいて正極終端電極19が含む金属板15の外側に金属板60が配置されている。第2実施形態では、金属板50が一対のエンドプレートの一方を構成し、金属板60が一対のエンドプレートの他方を構成する。金属板50は負極側最外金属板であり、金属板60は正極側最外金属板である。金属板50,60は、電極積層体11の劣化抑制のために設けられる板状部材であり、導電性及び可撓性を示す。
【0096】
金属板50の一方面50a及び他方面50b、並びに、金属板60の一方面60a及び他方面60bには、いずれも正極活物質及び負極活物質が塗工されていない。このため、一方面50a,60a及び他方面50b,60bの全面は、未塗工領域となっている。一方面50a,60aは、積層方向Dにおいて導電構造体5に対向する面である。他方面50b,60bは、それぞれ積層方向Dにおいて一方面50a,60aの反対側に位置し、電極積層体11に対向する面である。他方面50bは負極終端電極18に対向し、他方面60bは正極終端電極19に対向する。金属板50は、負極終端電極18と封止体12との隙間を通る電解液の流出抑制機能も奏し得る。金属板60は、正極終端電極19と封止体12との隙間を通る電解液の流出抑制機能も奏し得る。
【0097】
金属板50,60は、導電構造体5に接触する中央部51,61と、平面視において中央部51,61を囲む周縁部52,62とを有する。導電構造体5を介して電極積層体11に付与される拘束部材3の拘束力によって、金属板50の中央部51は、電極積層体11の中心に向かって窪み負極終端電極18に押し付けられている。同様に、金属板60の中央部61は、電極積層体11の中心に向かって窪み正極終端電極19に押し付けられている。これにより、中央部51が負極終端電極18に接触し、金属板50は、蓄電モジュール4Aにおける負極端子として機能し得る。中央部61が正極終端電極19に接触し、金属板60は、蓄電モジュール4Aにおける正極端子として機能し得る。
【0098】
周縁部52,62は、負極終端電極18及び正極終端電極19に対して離間する部分である。周縁部52の一部52aは、樹脂部22及び後述する樹脂部71に保持される部分であり、積層方向Dにおいて中央部51よりも外側に位置する。周縁部62の一部62aは、樹脂部23及び後述する樹脂部72に保持される部分であり、積層方向Dにおいて中央部61よりも外側に位置する。周縁部52の他部52bは、上記一部52aと中央部51とをつなぐ部分であり、水平方向において封止体12よりも金属板50の中心側に位置している。周縁部62の他部62bは、上記一部62aと中央部61とをつなぐ部分であり、水平方向において封止体12よりも金属板60の中心側に位置している。金属板50,60は、金属板15と同様に、例えば、ニッケル又はニッケルメッキ鋼板といった金属からなる。
【0099】
第2実施形態では、封止体12は、金属板15の周縁部15cと、金属板50の周縁部52の一部52aと、金属板60の周縁部62の一部62aと、を保持している。第2実施形態では、封止体12は、樹脂部21,22,23に加えて、樹脂部71と樹脂部72とを有する。樹脂部71は、金属板50において周縁部52の一部52aの全周にわたって連続的に設けられ、積層方向Dから見て矩形枠状を呈している。樹脂部72は、金属板60において周縁部62の一部62aの全周にわたって連続的に設けられ、積層方向Dから見て矩形枠状を呈している。
【0100】
第2実施形態では、例えば、樹脂部71が負極側終端樹脂部であり、樹脂部72が正極側の終端樹脂部であり、樹脂部21が中間樹脂部である。例えば、負極側終端樹脂部は一対のエンドプレートの一方の周縁部52に接合され、正極側終端樹脂部は一対のエンドプレートの他方の周縁部62に接合され、中間樹脂部はバイポーラ電極14の金属板15の周縁部15cに接合されている。
【0101】
樹脂部71は樹脂部22と対向し、樹脂部72は樹脂部23と対向する。したがって、樹脂部71,72もまた、樹脂部21,22,23と同様に隣り合う樹脂部と対向する対向面25を有している。樹脂部71は、対向面25において、金属板50の一方面50aに接合されている。樹脂部71も、対向面25において、金属板50に接合している領域K1と当該金属板50と接合しない領域K2を含む。樹脂部72は、対向面25において、金属板60の一方面60aに接合されている。樹脂部72も、対向面25において、金属板60に接合している領域K1と当該金属板60と接合しない領域K2を含む。
【0102】
各金属板50,60の表面は、それぞれ樹脂部71及び樹脂部72と接合する接合領域K3において、粗面化されている。粗面化された領域は、接合領域K3のみでもよいが、第2実施形態では金属板50,60の面全体が粗面化されている。粗面化は、例えば電解メッキによる複数の突起の形成により実現し得る。複数の突起が形成されることにより、金属板50,60と樹脂部71及び樹脂部72との接合界面では、溶融状態の樹脂が粗面化により形成された複数の突起間に入り込み、アンカー効果が発揮される。これにより、金属板50,60と樹脂部71及び樹脂部72との間の結合強度を向上させることができる。粗面化の際に形成される突起は、例えば基端側から先端側に向かって先太りとなる形状を有している。これにより、隣り合う突起の間の断面形状がアンダーカット形状となり、アンカー効果を高めることが可能となる。
【0103】
樹脂部71及び樹脂部72は、熱によって金属板50,60に溶着され、気密に接合されている。樹脂部71及び樹脂部72は、例えば積層方向Dに所定の厚さを有するフィルムである。樹脂部71及び樹脂部72のそれぞれの内側は、積層方向Dから見て金属板50,60の周縁部52,62と重なるように位置している。樹脂部71及び樹脂部72の外側は、金属板50,60の縁よりも外側に張り出しており、その先端部分は、筐体部24によって支持されている。積層方向Dにおいて、樹脂部71は樹脂部22と接しており、樹脂部72は樹脂部23と接している。また、樹脂部71と樹脂部22との外縁部分同士、及び、樹脂部72と樹脂部23との外縁部分同士は、例えば熱板溶着などによって互いに結合されていてもよい。
【0104】
筐体部24は、樹脂部71及び樹脂部72の外側に設けられ、蓄電モジュール4Aの外壁を構成している。筐体部24は、例えば樹脂の射出成型によって形成され、積層方向Dに沿って電極積層体11の全長にわたって延在している。筐体部24は、積層方向Dを軸方向として延在する矩形枠状を呈している。筐体部24は、例えば射出成型時の熱によって樹脂部21の外表面に溶着されている。
【0105】
樹脂部71及び樹脂部72は、例えば、耐アルカリ性を有する絶縁性の樹脂である。第2実施形態では、樹脂部71及び樹脂部72の主な構成材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)などが挙げられる。ポリプロピレンとしては、たとえば、単独重合のホモポリマー、並びに、共重合のランダムコポリマー及びブロックコポリマーが挙げられる。樹脂部71及び樹脂部72には、例えば、酸化防止機能を持つ添加剤が添加されていてもよい。酸化防止機能を持つ添加剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類などが挙げられる。
【0106】
第2実施形態では、樹脂部22は、負極終端電極18の金属板15の周縁部15cと、金属板50の周縁部52の一部52a及び樹脂部71との間に配置されている。また、負極終端電極18の金属板15、樹脂部22、及び金属板50は、筐体部24によって気密に封止されている。このため、負極終端電極18と、金属板50と、樹脂部22とによって、余剰空間EVが形成される。
【0107】
第2実施形態では、樹脂部23は、正極終端電極19の金属板15の周縁部15cと、金属板60の周縁部62の一部62a及び樹脂部72との間に配置されている。また、正極終端電極19の金属板15、樹脂部23、及び金属板60は、筐体部24によって気密に封止されている。このため、正極終端電極19と、金属板60と、樹脂部23とによって、余剰空間EVが形成される。
【0108】
第2実施形態では、樹脂部71の結晶化度は、樹脂部21,22,23及び樹脂部72の結晶化度よりも低くなっている。換言すれば、樹脂部21,22,23及び樹脂部72の結晶化度は、樹脂部71の結晶化度よりも高くなっている。樹脂部の結晶化度の違いは、材料の違い及び接合条件の違い、例えば冷却速度の違い、などによってもたらされる。第2実施形態では、樹脂部71、樹脂部72、及び樹脂部21,22,23の結晶化度の違いは、樹脂部71、樹脂部72、及び樹脂部21,22,23の材料の違いによってもたらされる。
【0109】
第2実施形態では、樹脂部72の結晶化度は、樹脂部21,22,23の結晶化度と等しくなっているが、これに限定されない。樹脂部71及び樹脂部72の少なくとも一方の結晶化度が、樹脂部21,22,23の結晶化度よりも低くなっていてもよい。例えば、第2実施形態の変形例として、樹脂部72の結晶化度は、樹脂部21,22,23の結晶化度よりも低くなっていてもよい。この変形例では、樹脂部72の結晶化度は、樹脂部71の結晶化度と等しくなっていてもよい。
【0110】
第2実施形態では、樹脂部71と、樹脂部21,22,23及び樹脂部72とが、互いに異なる材料からなる。樹脂部71の材料は、樹脂部21,22,23及び樹脂部72の材料よりも結晶化しにくい材料である。樹脂部21,22,23及び樹脂部72は、主な構成材料として、ホモポリマーのポリプロピレンを含有する。樹脂部71は、主な構成材料として、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーのポリプロピレンを含有する。ブロックコポリマーのポリプロピレンの融点の方が、ランダムコポリマーのポリプロピレンの融点よりも高い。このため、樹脂部71の主な構成材料がブロックコポリマーのポリプロピレンである場合、ランダムコポリマーのポリプロピレンである場合よりも、封止体12が容易かつ確実に形成され得る。この結果、製品の信頼性が向上される。
【0111】
第2実施形態では、樹脂部21,22,23及び樹脂部72は、互いに同一の材料からなるが、これに限定されない。樹脂部71及び樹脂部72の少なくとも一方と、樹脂部21,22,23とが、互いに異なる材料からなっていてもよい。樹脂部21,22,23の材料は、樹脂部71及び樹脂部72の少なくとも一方の材料よりも結晶化しにくい材料であってもよい。例えば、上述した第2実施形態の変形例では、樹脂部72と樹脂部21,22,23とが互い異なる材料からなってもよく、樹脂部21,22,23の材料が樹脂部72の材料よりも結晶化しにくい材料であってもよい。
【0112】
第2実施形態では、樹脂部21,22,23及び樹脂部72は主な材料としてホモポリマーのポリプロピレンを含有し、樹脂部71は主な構成材料としてランダムコポリマー又はブロックコポリマーのポリプロピレンを含有するが、これに限定されない。樹脂部71及び樹脂部72の少なくとも一方が、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーのポリプロピレンを含有してもよい。例えば、上述した第2実施形態の変形例では、樹脂部21,22,23は、ホモポリマーのポリプロピレンを含有し、樹脂部71及び樹脂部72は、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーのポリプロピレンを含有してもよい。
【0113】
次に、第2実施形態に係る蓄電モジュール4Aの製造方法の一例について、第1実施形態に係る蓄電モジュール4の説明に対する相違点を主として説明する。
【0114】
第2実施形態では、樹脂部71及び樹脂部72の形成工程は、樹脂部71の接合後の結晶化度は、樹脂部21,22,23及び樹脂部72の接合後の結晶化度よりも低くなるように実施される。換言すれば、樹脂部71及び樹脂部72の形成工程は、樹脂部21,22,23及び樹脂部72の結晶化後の結晶化度が樹脂部71の結晶化後の結晶化度よりも高くなるように実施される。
【0115】
第2実施形態では、樹脂部72の形成工程は、樹脂部72の結合後の結晶化度は樹脂部21,22,23の結合後の結晶化度と等しくなるように実施されるが、これに限定されない。樹脂部71及び樹脂部72の形成工程は、樹脂部71及び樹脂部72の少なくとも一方の結合後の結晶化度が、樹脂部21,22,23の結合後の結晶化度よりも低くなるように実施されてもよい。例えば、第2実施形態の上述した変形例では、樹脂部72の形成工程は、樹脂部72の結合後の結晶化度が樹脂部21,22,23の結合後の結晶化度よりも低くなるように実施されてもよい。この変形例では、樹脂部71及び樹脂部72の形成工程は、樹脂部72の結合後の結晶化度が樹脂部71の結合後の結晶化度と等しくなるように実施されてもよい。
【0116】
第2実施形態では、樹脂部71、樹脂部72、及び樹脂部21,22,23の結晶化度の違いは、樹脂部71、樹脂部72、及び樹脂部21,22,23の材料の違いによってもたらされる。第2実施形態では、樹脂部21,22,23及び樹脂部72と、樹脂部71とには、互いに異なる材料が用いられる。樹脂部71の材料には、樹脂部21,22,23及び樹脂部72の材料よりも結晶化しにくい材料が用いられる。
【0117】
第2実施形態では、樹脂部21,22,23及び樹脂部72の主な構成材料には、ホモポリマーのポリプロピレンが用いられる。樹脂部71の主な構成材料には、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーのポリプロピレンが用いられる。ブロックコポリマーのポリプロピレンの融点の方が、ランダムコポリマーのポリプロピレンの融点よりも高い。このため、樹脂部71の主な構成材料がブロックコポリマーのポリプロピレンである場合、ランダムコポリマーのポリプロピレンである場合よりも、封止体12が容易かつ確実に形成され得る。
【0118】
第2実施形態では、樹脂部21,22,23及び樹脂部72には互いに同一の材料が用いられるが、これに限定されない。樹脂部71及び樹脂部72の少なくとも一方と、樹脂部21,22,23とに、互いに異なる材料が用いられてもよい。樹脂部21,22,23の材料には、樹脂部71及び樹脂部72の少なくとも一方の材料よりも結晶化しにくい材料が用いられてもよい。例えば、第2実施形態の上述した変形例では、樹脂部72と樹脂部21,22,23とに互い異なる材料が用いられてもよく、樹脂部21,22,23の材料に樹脂部72の材料よりも結晶化しにくい材料が用いられてもよい。
【0119】
第2実施形態では、樹脂部21,22,23及び樹脂部72の主な構成材料には、ホモポリマーのポリプロピレンが用いられ、樹脂部71の主な構成材料には、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーのポリプロピレンが用いられるが、これに限定されない。樹脂部71及び樹脂部72の少なくとも一方の主な構成材料に、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーのポリプロピレンが用いられてもよい。例えば、第2実施形態の上述した変形例では、樹脂部21,22,23の構成材料には、ホモポリマーのポリプロピレンが用いられてもよく、樹脂部71及び樹脂部72の構成材料には、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーのポリプロピレンが用いられてもよい。
【0120】
蓄電モジュール4Aでは、樹脂部71及び樹脂部72の少なくとも一方の結晶化度は、樹脂部21,22,23の結晶化度よりも低くなっている。このため、上記蓄電モジュール4Aでは、樹脂部71及び樹脂部72の少なくとも一方は、少なくとも樹脂部21,22,23よりも残留応力によるクラックが発生し難い。樹脂部71及び樹脂部72の少なくとも一方でクラックの発生が抑制されていれば、蓄電モジュール4Aの外部への電解液の漏れ出しも抑制される。また、樹脂部21,22,23によって、蓄電モジュール4Aの全体の剛性が確保され得る。すなわち、上記蓄電モジュール4Aでは、蓄電モジュール4Aの全体の剛性が確保されながら、電解液が蓄電モジュール4Aの外部に漏れ出すことが抑制され得る。
【0121】
蓄電モジュール4Aでは、余剰空間EVが形成されている。内部空間Vに収容されるアルカリ電解液は、いわゆるアルカリクリープ現象により、樹脂部22と負極終端電極18の金属板15との隙間を介して蓄電モジュールの外部へ流出するおそれがある。上記蓄電モジュール4Aでは、積層方向Dにおいて負極終端電極18の外側に位置する金属板50が備えられているため、上記余剰空間EVが形成される。このため、流出したアルカリ電解液が蓄電モジュール4A外へ漏れることが抑制される。加えて、負極終端電極18と樹脂部71との上記隙間から、外部の空気中に含まれる水分が入り込むことも抑制される。この結果、上記水分に起因したアルカリクリープ現象の加速が抑制される。したがって、蓄電モジュール4Aの外部へのアルカリ電解液の流出が良好に抑制される。
【0122】
第2実施形態では、負極終端電極18側の金属板50に接合された樹脂部71の結晶化度は、樹脂部21,22,23の結晶化度よりも低くなっている。このため、内部空間Vの内圧に加えてアルカリクリープ現象による応力が樹脂部71に付与されても、蓄電モジュール4Aの外部への電解液の漏れ出しが抑制され得る。
【0123】
第2実施形態では、正極終端電極19側の金属板60に接合された樹脂部72の結晶化度は、樹脂部71の結晶化度よりも高くなっている。正極終端電極19側において、樹脂部72におけるクラックの発生は、アルカリクリープ現象による電解液の漏れ出しと関係性が低い。樹脂部72の結晶化度が樹脂部71の結晶化度よりも高ければ、樹脂部72は少なくとも樹脂部71よりも高い剛性を有する。したがって、この蓄電モジュール4Aでは、アルカリクリープ現象によって電解液が蓄電モジュール4Aの外部に漏れ出すことが抑制されながら、蓄電モジュール全体の剛性がさらに向上され得る。
【0124】
第2実施形態の変形例では、正極終端電極19側の金属板60に接合された樹脂部72の結晶化度は、樹脂部21の結晶化度よりも低くなっている。この場合、樹脂部72において少なくとも樹脂部21よりも残留応力によるクラックが発生し難い。したがって、内部空間Vの内圧による応力が樹脂部72に付与されても、蓄電モジュール4Aの外部への電解液の漏れ出しが抑制され得る。
【0125】
第2実施形態では、樹脂部21,22,23及び樹脂部72と、樹脂部71とは、互いに異なる材料からなる。樹脂部71の材料は、樹脂部21,22,23及び樹脂部72の材料よりも結晶化しにくい材料である。この場合、樹脂部71の結晶化度が樹脂部21,22,23よりも低く、かつ、樹脂部72の結晶化度が樹脂部71よりも高い構成を容易に実現できる。
【0126】
第2実施形態の変形例では、樹脂部72と樹脂部21,22,23とが互い異なる材料からなっており、樹脂部72の材料が樹脂部21,22,23の材料よりも結晶化しにくい材料である。この場合、樹脂部72の結晶化度が樹脂部21,22,23よりも低い構成を容易に実現できる。
【0127】
以上、本発明の第1及び第2実施形態、並びに、変形例について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した第1及び第2実施形態及び変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0128】
例えば、第2実施形態において、樹脂部21、樹脂部22、樹脂部23、樹脂部71、及び樹脂部72の全て又は一部が同一の材料からなり、上述した第1実施形態の変形例のように、樹脂部の結晶化度の違いが冷却速度の違いによってもたらされてもよい。
【0129】
第2実施形態のように、金属板50,60及び樹脂部71,72を有する蓄電モジュール4Aにおいて、上述した種々の作用効果に応じて、上述した第1実施形態及びそれに付随して説明した変形例のように、樹脂部21,22,23の結晶化度、材料、及び冷却速度に違いをもたせてもよい。
【0130】
上述した第1及び第2実施形態、並びに、変形例では、樹脂部21、樹脂部22、樹脂部23、樹脂部71、及び樹脂部72の結晶化度の違いが、冷却速度の違い及び材料の違いのいずれか一方によってもたらされる場合を説明した。しかし、樹脂部21、樹脂部22、樹脂部23、樹脂部71、及び樹脂部72の結晶化度の違いは、冷却速度の違いと材料の違いとの組み合わせによってもたらされてもよい。
【符号の説明】
【0131】
4,4A…蓄電モジュール、11…電極積層体、11a…側面、12…封止体、14…バイポーラ電極、15,50,60…金属板、15c,52,62…周縁部、16…正極、17…負極、18…負極終端電極、19…正極終端電極、21,22,23,71,72…樹脂部、25…対向面、D…積層方向、K1,K2…領域、K3…接合領域、V…内部空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7