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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】封止用樹脂組成物および構造体
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/62 20060101AFI20220823BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20220823BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
C08G59/62
H01L23/30 R
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2017111007
(22)【出願日】2017-06-05
(65)【公開番号】P2018203883
(43)【公開日】2018-12-27
【審査請求日】2020-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佑衣
(72)【発明者】
【氏名】山下 勝志
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/002704(WO,A1)
【文献】特開2017-031239(JP,A)
【文献】特開2018-021108(JP,A)
【文献】特開2018-145273(JP,A)
【文献】国際公開第2018/123806(WO,A1)
【文献】特開2017-043767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00 - 59/72
H01L 23/00 - 23/56
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉砕状、顆粒状、またはタブレット状の封止用樹脂組成物であって、
ビスマレイミド化合物と、
不飽和二重結合を有する基を含有するビフェニルアラルキル型フェノール樹脂と、
熱硬化性樹脂(ただし、前記ビスマレイミド化合物および前記不飽和二重結合を有する基を含有するビフェニルアラルキル型フェノール樹脂を除く。)と、
シランカップリング剤と、を含み、
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂(ただし、プロペニル基含有エポキシ樹脂を除く。)を含む、
封止用樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の封止用樹脂組成物であって、
前記不飽和二重結合を有する基が、炭素数3~14のアルケニル基であり、
前記ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂が、下記一般式(1)で表される化合物を含む、封止用樹脂組成物。
【化1】
(上記一般式(1)中、mはそれぞれ独立に0または1の整数を表し、nは1以上20以下の整数であり、Rは、炭素数3~14のアルケニル基を表す。)
【請求項3】
請求項1または2に記載の封止用樹脂組成物であって、
前記不飽和二重結合を有する基が、アリル基である、封止用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の封止用樹脂組成物であって、
アリル基を有する前記ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂におけるアリル化率が、10%以上である、封止用樹脂組成物。
上記アリル化率は、下記の構造単位(A)と下記の構造単位(B)の合計量に対する構造単位(A)のモル比率[構造単位(A)/〔構造単位(A)+構造単位(B)〕×100で表す。
【化2】
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物であって、
前記ビスマレイミド化合物が、下記一般式(10)で表される、封止用樹脂組成物。
【化3】
(式(10)中、nは0以上10以下の整数であり、Xはそれぞれ独立に炭素数1以上10以下のアルキレン基、下記式(10a)で表される基、式「-SO-」で表される基、「-CO-」で表される基、酸素原子または単結合であり、Rはそれぞれ独立に炭素数1以上6以下の炭化水素基であり、aはそれぞれ独立に0以上4以下の整数であり、bはそれぞれ独立に0以上3以下の整数である。)
【化4】
(式(10a)中、Yは芳香族環を有する炭素数6以上30以下の炭化水素基であり、nは0以上の整数である。)
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物であって、
無機充填材をさらに含む、封止用樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物であって、
当該封止用樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度が180℃以上である、封止用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物であって、
当該封止用樹脂組成物の硬化物の、250℃における曲げ弾性率が、3GPa以上20GPa以下である、封止用樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物であって、
当該封止用樹脂組成物の硬化物の、50℃から70℃の温度範囲における平均線膨張係数(α1)に対する、310℃から330℃の温度範囲における平均線膨張係数(α2)の線膨張係数比が、1.1以上7以下である、封止用樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物であって、
トランスファー成形用の封止用樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物であって、
顆粒状またはタブレット状である、封止用樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物であって、
下記の手順で測定される当該封止用樹脂組成物におけるスパイラルフローが、200cm以上である、封止用樹脂組成物。
(手順)
低圧トランスファー成形機を用いて、EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用の金型に、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間180秒間の条件で、当該封止用樹脂組成物を注入、硬化させ、上記スパイラルフローを測定する。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物であって、
当該封止用樹脂組成物を表面温度175℃の熱板上においてからタックフリーになるまでの時間を測定しゲルタイムとしたとき、前記ゲルタイムが、61秒以上98秒以下である、封止用樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物の硬化物を備える、構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用樹脂組成物および構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで半導体素子を封止するために用いられる様々な封止材が開発されていている。この種の技術については、例えば、特許文献1に記載の技術が挙げられる。同文献によれば、エポキシ樹脂の硬化剤として、フェノール性水酸基以外の官能基を有しないビフェニルアラルキル型フェノール樹脂を用いることが記載されている(特許文献1の段落0040、実施例)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-59130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者が検討した結果、上記特許文献1に記載の封止材においては、温度サイクル信頼性の点で改善の余地を有していることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、こうした事情を踏まえて検討した結果、ビスマレイミド化合物とフェノール性水酸基以外の官能基を有するビフェニルアラルキル型フェノール樹脂との反応による架橋構造により、封止用樹脂組成物の硬化特性を高められることを見出した。
このような知見に基づいて、鋭意検討したところ、ビスマレイミド化合物と不飽和二重結合を有する基を含有するビフェニルアラルキル型フェノール樹脂とを併用することにより、封止用樹脂組成物の硬化物の温度サイクル信頼性を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明によれば、
粉砕状、顆粒状、またはタブレット状の封止用樹脂組成物であって、
ビスマレイミド化合物と、
不飽和二重結合を有する基を含有するビフェニルアラルキル型フェノール樹脂と、
熱硬化性樹脂(ただし、前記ビスマレイミド化合物および前記不飽和二重結合を有する基を含有するビフェニルアラルキル型フェノール樹脂を除く。)と、
シランカップリング剤と、を含み、
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂(ただし、プロペニル基含有エポキシ樹脂を除く。)を含む、
封止用樹脂組成物が提供される。
【0007】
また本発明によれば、上記封止用樹脂組成物の硬化物を備える、構造体が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、温度サイクル信頼性に優れた封止用樹脂組成物およびそれを用いた構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る半導体装置の一例を示す断面図である。
図2】本実施形態に係る半導体装置の一例を示す断面図である。
図3】本実施形態に係る車載用電子制御ユニットの一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0011】
まず、本実施形態に係る封止用樹脂組成物について説明する。
本実施形態の封止用樹脂組成物は、ビスマレイミド化合物と、不飽和二重結合を有する基を含有するビフェニルアラルキル型フェノール樹脂と、を含むことができる。
【0012】
本発明者は、ビスマレイミド化合物と官能基を有するビフェニルアラルキル型フェノール樹脂との反応による架橋構造により、封止用樹脂組成物の最適な架橋構造を得られることに着眼した。
このような着眼点に基づいて検討した結果、官能基として、不飽和二重結合を有する基を用いることにより、封止用樹脂組成物の最適な架橋構造を得られることが判明した。本実施形態において、不飽和二重結合を有する基としては、例えば、炭素数3~14のアルケニル基であり、好ましくはアリル基である。
【0013】
このような知見に基づいて、鋭意検討したところ、ビスマレイミド化合物と不飽和二重結合を有する基を含有するビフェニルアラルキル型フェノール樹脂とを併用することにより、これらの架橋構造を最適に制御できるため、封止用樹脂組成物の硬化物の温度サイクル信頼性を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
詳細なメカニズムは定かでないが、不飽和二重結合を有する基を含有するビフェニルアラルキル型フェノール樹脂を用いることにより、ビスマレイミド化合物と不飽和二重結合を有する基とによる反応により、架橋構造が最適化し、上記のように温度サイクル信頼性を向上できると考えられる。
【0015】
本実施形態によれば、上記封止用樹脂組成物を用いることにより、温度サイクル信頼性に優れた封止材やこれを用いた構造体を実現することができる。このような構造体としては、封止用樹脂組成物の硬化物を備えるものであり、例えば、パワー半導体などの半導体素子が封止用樹脂組成物の硬化物で封止された電子装置、ウェハの回路面を封止用樹脂組成物の硬化物で封止されたウェハレベルパッケージ、疑似ウェハに用いられる封止用樹脂組成物の硬化物などが挙げられる。また、上記構造体としては、一般的な電子装置に限らず、車載用電子制御ユニット(ECU)やこれに用いられる配線基板が挙げられる。上記配線基板は、金属配線を封止用樹脂組成物の硬化物により封止された構造を有する。また、上記車載用電子制御ユニットは、上記配線基板と、配線基板上に搭載された複数の電子素子と、が封止用樹脂組成物の硬化物で封止された構造を有する。
【0016】
また、本実施形態の封止用樹脂組成物の硬化物は、高いガラス転移温度を有することができるため、車両などの高温環境で使用に好適に用いることもできる。このため、封止用樹脂組成物は、ローターの固定部材として用いることもできる。
【0017】
また、本実施形態の封止用樹脂組成物は、室温(例えば25℃)で固形状態とすることができる。これにより、顆粒状やタブレット状などの形状を付与しやすい特性である賦形性に優れた封止用樹脂組成物を実現することができる。このような封止用樹脂組成物は、たとえば、トランスファー成形に有効に利用できるようなトランスファー成形用の封止用樹脂組成物とすることができる。
【0018】
以下、本実施形態の封止用樹脂組成物の成分について詳述する。
【0019】
(ビスマレイミド化合物)
本実施形態の封止用樹脂組成物は、ビスマレイミド化合物を含む。
本実施形態のビスマレイミド化合物は、マレイミド基を2つ以上有する化合物である。
【0020】
ビスマレイミド化合物は、たとえば下記式(10)に示す化合物を含むことができる。これにより、ガラス転移温度を高めることができ、封止材としての高温長期保管特性をより効果的に向上させることができる。
【0021】
【化1】
(式(10)中、nは0以上10以下の整数であり、Xはそれぞれ独立に炭素数1以上10以下のアルキレン基、下記式(10a)で表される基、式「-SO-」で表される基、「-CO-」で表される基、酸素原子または単結合であり、Rはそれぞれ独立に炭素数1以上6以下の炭化水素基であり、aはそれぞれ独立に0以上4以下の整数であり、bはそれぞれ独立に0以上3以下の整数である。)
【0022】
【化2】
(式(10a)中、Yは芳香族環を有する炭素数6以上30以下の炭化水素基であり、nは0以上の整数である。)
【0023】
なお、本実施形態において、前述の式(10a)のnの上限値は、たとえば20とすることができる。
【0024】
また、ビスマレイミド化合物としては、たとえば、以下の化合物を好ましく用いることができる。
【0025】
【化3】
【化4】
(上記化学式中、nは、10以下の整数であり、好ましくは5以下の整数である。)
【0026】
本実施形態において、封止用樹脂組成物中におけるビスマレイミド化合物の含有量は、たとえば封止用樹脂組成物全体に対して、5質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。ビスマレイミド化合物の含有量を上記下限値以上とすることにより、封止材としての耐熱性を効果的に向上させることがでる。
また、ビスマレイミド化合物の含有量は、たとえば封止用樹脂組成物全体に対して30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。ビスマレイミド化合物の含有量を上記上限値以下とすることにより、封止用樹脂組成物としての靭性を向上させることができる。
また、本実施形態において、樹脂組成物全体に対する含有量とは、溶媒を含む場合には、樹脂組成物のうちの溶媒を除く固形分全体に対する含有量を指す。樹脂組成物の固形分とは、組成物樹脂中における不揮発分を指し、水や溶媒等の揮発成分を除いた残部を指す。
【0027】
(ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂)
本実施形態の封止用樹脂組成物は、不飽和二重結合を有する基を含有するビフェニルアラルキル型フェノール樹脂を含む。
【0028】
本実施形態において、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂は、ビフェニルアラルキル骨格を有するフェノール樹脂であり、かつ不飽和二重結合を有する基を含有するものであれば、特に限定されない。上記不飽和二重結合を有する基としては、例えば、好ましくは炭素数3~14のアルケニル基であり、より好ましくはアリル基である。これらの不飽和二重結合を有する基は、フェノール性水酸基を有するベンゼン環に結合していることが好ましい。
【0029】
本実施形態において、上記不飽和二重結合を有する基を含有するビフェニルアラルキル型フェノール樹脂は、例えば、下記一般式(1)で表される化合物であってもよい。
【0030】
【化5】
(上記一般式(1)中、mはそれぞれ独立に0または1の整数を表し、nは1以上20以下の整数であり、Rは、炭素数3~14のアルケニル基を表す。)
【0031】
上記一般式(1)において、Rは、炭素数3~14のアルケニル基であり、好ましくは炭素数3~10のアルケニル基であり、より好ましくは炭素数3~8のアルケニル基である。この中でも、Rは、炭素数3のアルケニル基であるアリル基であってもよい。これにより、最適な架橋構造を形成することができる。
【0032】
上記一般式(1)において、mは、それぞれ独立に0または1の整数であり、好ましくは1である。また、nは、1以上20以下の整数であり、好ましくは2以上19以下の整数であり、より好ましくは3以上18以下の整数である。
【0033】
本実施形態において、不飽和二重結合を有する基を含有するビフェニルアラルキル型フェノール樹脂の数平均分子量としては、特に限定されないが、例えば、200以上1000以下であり、好ましくは300以上800以下である。
また、不飽和二重結合を有する基を含有するビフェニルアラルキル型フェノール樹脂の軟化温度としては、特に限定されないが、例えば、50℃以上120℃以下である。
【0034】
また、本実施形態において、不飽和二重結合を有する基を含有するビフェニルアラルキル型フェノール樹脂として、ビフェニルアラルキル型アリルフェノール樹脂を用いることができる。このビフェニルアラルキル型アリルフェノール樹脂は、例えば、上記一般式(1)で表される化合物を含む(ただし、上記一般式(1)中のRがアリル基である)。
【0035】
実施形態において、上記ビスマレイミド化合物のマレイミド基当量数に対する、ビフェニルアラルキル型アリルフェノール樹脂のアリル基当量数の下限値は、特に限定されないが、例えば、0.01以上でもよく、0.05以上でもよく、0.08以上でもよい。また、上記アリル基当量数の上限値は、特に限定されないが、例えば、1以下でもよく、0.5以下でもよく、0.35以下でもよい。これにより、温度サイクル信頼性と他の物性とのバランスを向上させることができる。
【0036】
また、アリル基を有するビフェニルアラルキル型アリルフェノール樹脂において、アリル化率の下限値は、例えば、10%以上でもよく、15%以上でもよく、好ましくは、20%以上でもよく、25%以上でもよい。これにより、温度サイクル信頼性を向上させることができる。一方、上記アリル化率の上限値は、特に限定されないが、例えば、100%以下でもよい。
ここで、アリル化率は、下記の構造単位(A)と下記の構造単位(B)の合計量に対する構造単位(A)のモル比率[構造単位(A)/〔構造単位(A)+構造単位(B)〕×100で表すことができる。
【0037】
【化6】
【0038】
(熱硬化性樹脂)
本実施形態の封止用樹脂組成物は、前述のビスマレイミド化合物以外の熱硬化性樹脂を含有してもよい。
このような熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂(エポキシ化合物)、ベンゾオキサジン化合物、フェノール樹脂、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂等、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、シアネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、およびベンゾシクロブテン樹脂等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
上記の中でも、本実施形態において、封止用樹脂組成物として、エポキシ樹脂を含有してもよい。これにより、樹脂組成物としての流動性と硬化性をバランスよく向上させることができる。
【0040】
上記エポキシ樹脂としては、たとえばビフェニル型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂)等のアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂から選択される一種類または二種類以上を含むことができる。硬化性とガラス転移温度の観点から、フェノールノボラック型エポキシ樹脂やトリフェノールメタン型エポキシ樹脂を使用することが好ましい。
【0041】
本実施形態の封止用樹脂組成物において、エポキシ樹脂を使用する場合、さらに上記エポキシ樹脂と反応する硬化剤を併用してもよい。これにより、封止用樹脂組成物の硬化性を一段と向上させることができる。上記硬化剤としては、フェノール樹脂系硬化剤、アミン系硬化剤、および酸無水物系硬化剤から選択される一種または二種以上を含むことができる。
なかでも、フェノール樹脂系硬化剤、およびアミン系硬化剤のうちの少なくとも一方を含むことが好ましく、フェノール樹脂系硬化剤を少なくとも含むことがより好ましい。
なお、本明細書中においては、この硬化剤もエポキシ樹脂と架橋してネットワークを形成するため、この硬化剤そのものも「熱硬化性樹脂」の一部であるものとして扱う。
【0042】
フェノール樹脂系硬化剤は、とくに限定されないが、たとえばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック等のノボラック型樹脂;ポリビニルフェノール;トリフェニルメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物;レゾール型フェノール樹脂等から選択される一種または二種以上を含むことができる。
アミン系硬化剤は、とくに限定されないが、たとえばジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレリレンジアミン(MXDA)等の脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、m-フェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)等の芳香族ポリアミン、ベンジルジメチルアミン(BDMA)、2,4,6-トリスジメチルアミノメチルフェノール(DMP-30)などの3級アミン化合物、ジシアンジアミド(DICY)、有機酸ジヒドララジドなどを含む他のアミン化合物から選択される一種または二種以上を含むことができる。
酸無水物系硬化剤としては、たとえばヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)等の脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)等の芳香族酸無水物から選択される一種または二種以上を含むことができる。
【0043】
上記ベンゾオキサジン化合物としては、ベンゾオキサジン環を2つ以上有する化合物が挙げられる。
たとえば下記式(6)に示す化合物、および下記式(7)に示す化合物のうちの少なくとも一方を含むことができ、下記式(6)に示す化合物を少なくとも含むことがより好ましい。これにより、封止材の高温長期保管特性をより効果的に向上させることができる。また、封止材の機械特性の向上に寄与することも可能である。
【0044】
【化7】
【0045】
上記式(6)において、Rは炭素数1~30の2価の有機基であり、酸素原子および窒素原子のうちの一種以上を含んでいてもよい。封止材の高温保管特性を向上させる観点からは、Rが芳香環を含む有機基であることがより好ましい。本実施形態においては、上記式(6)に示す化合物として、たとえば以下のようなものを用いることができる。
【0046】
【化8】
【0047】
【化9】
【0048】
上記式(7)において、Rは炭素数1~30の2価の有機基であり、酸素原子、窒素原子、および硫黄原子のうちの一種以上を含んでいてもよい。二つのRは、それぞれ独立して炭素数1~12の芳香族炭化水素基である。
【0049】
本実施形態において、封止用樹脂組成物中における熱硬化性樹脂の含有量(ただし、ビスマレイミド化合物およびビフェニルアラルキル型アリルフェノール樹脂を除く。)の下限値は、たとえば封止用樹脂組成物全体に対して、2質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましく、6質量%以上であることがさらに好ましい。熱硬化性樹脂の含有量を上記下限値以上とすることにより、低吸水の樹脂組成物が得られる。
また、上記熱硬化性樹脂の含有量(ただし、ビスマレイミド化合物およびビフェニルアラルキル型アリルフェノール樹脂を除く。)の上限値は、たとえば封止用樹脂組成物全体に対して20質量%以下であることが好ましく、18質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましい。熱硬化性樹脂の含有量を上記上限値以下とすることにより、封止用樹脂組成物の耐熱性を向上させることができる。
なお、この熱硬化性樹脂の含有量に関し、エポキシ樹脂を用いる場合は、このエポキシ樹脂に対応する硬化剤も合算した値として定義することができる。
【0050】
(無機充填材)
本実施形態の封止用樹脂組成物は、無機充填材を含むことができる。これにより、封止用樹脂組成物から得られる封止材の剛性を一段と向上させることができる。
上記無機充填材としては、たとえば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、シリカ、炭酸カルシウム、炭化ホウ素、クレー、マイカ、タルク、ワラストナイト、ガラスビーズ、ミルドカーボン、グラファイト等から選択される1種以上が用いられる。
この中でも、シリカを用いることが好ましく、溶融球状シリカ、溶融破砕シリカ、および結晶シリカから選択される一種または二種以上を含むことができる。これらの中でも、封止用樹脂組成物の充填性や、封止材の高温長期保管特性等を向上させる観点からは、溶融球状シリカを含むことがより好ましい。
【0051】
上記シリカは、たとえばSiOの含有量が99.8質量%以上であることが好ましい。このような純度の高いシリカを使用することによって、金属不純物等のイオン性不純物量を低減させつつ、良好な耐熱性や機械特性を有する封止材を実現することが容易となる。封止材の高温長期保管特性をより効果的に向上させる観点からは、シリカにおけるSiOの含有量が99.9質量%以上であることが好ましい。
【0052】
本実施形態において、封止用樹脂組成物中における無機充填材の含有量は、たとえば封止用樹脂組成物全体に対して、60質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。無機充填材の含有量を上記下限値以上とすることにより、封止材としての剛性を効果的に向上させることができる。
また、無機充填材の含有量は、たとえば封止用樹脂組成物全体に対して、95質量%以下であることが好ましく、93質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることがさらに好ましい。無機充填材の含有量を上記上限値以下とすることにより、電子装置や車載ユニット等の温度サイクルの信頼性について一段と向上を図ることができる。
【0053】
(硬化促進剤)
本実施形態の封止用樹脂組成物は、たとえば硬化促進剤を含むことができる。硬化促進剤は、ビスマレイミド化合物または熱硬化性樹脂の硬化を促進させるものであればよい。
本実施形態において、硬化促進剤は、たとえば有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール(EMI24)、2-フェニル-4-メチルイミダゾール(2P4MZ)、2-フェニルイミダゾール(2PZ)、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシイミダゾール(2P4MHZ)、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール(1B2PZ)などのイミダゾール化合物;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、ベンジルジメチルアミン等が例示されるアミジンや3級アミン、前記アミジンやアミンの4級塩等の窒素原子含有化合物から選択される1種類または2種類以上を含むことができる。硬化性と金属との密着性の観点から、イミダゾール化合物を使用することが好ましい。
【0054】
本実施形態において、封止用樹脂組成物中における硬化促進剤の含有量は、たとえば封止用樹脂組成物全体に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、0.03質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることがさらに好ましい。硬化促進剤の含有量を上記下限値以上とすることにより、樹脂組成物の硬化性を効果的に向上させることができる。
また、硬化促進剤の含有量は、たとえば封止用樹脂組成物全体に対して5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。硬化促進剤の含有量を上記上限値以下とすることにより、封止用樹脂組成物のハンドリングを向上させることができる。
【0055】
(シランカップリング剤)
本実施形態の封止用樹脂組成物は、たとえばシランカップリング剤を含むことができる。
これにより、封止用樹脂組成物の密着性のさらなる向上を図ることができる。
シランカップリング剤は、たとえばシランカップリング剤により表面処理が施された無機充填材を他成分と混合することにより封止用樹脂組成物中に含ませることができる。一方で、無機充填材に対して上記表面処理を行わず、各成分とともにシランカップリング剤をミキサー等へ投入し、これを混合することによってシランカップリング剤を封止用樹脂組成物中に含ませてもよい。
【0056】
シランカップリング剤としては、たとえばエポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、メタクリルシラン等の各種シラン系化合物を用いることができる。
これらを例示すると、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-[ビス(β-ヒドロキシエチル)]アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(β-アミノエチル)アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N-(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N-(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルーブチリデン)プロピルアミンの加水分解物等のシラン系カップリング剤が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
本実施形態において、封止用樹脂組成物中におけるシランカップリング剤の含有量は、たとえば封止用樹脂組成物全体に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、0.03質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることがさらに好ましい。シランカップリング剤の含有量を上記下限値以上とすることにより、樹脂組成物の流動性と密着性を効果的に向上させることができる。
また、シランカップリング剤の含有量は、たとえば封止用樹脂組成物全体に対して5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。シランカップリング剤の含有量を上記上限値以下とすることにより、封止用樹脂組成物の硬化性を向上させることができる。
【0058】
(添加剤)
本実施形態の封止用樹脂組成物には、さらに必要に応じて、ハイドロタルサイト類および多価金属酸性塩等の無機イオン交換体に例示されるイオン捕捉剤;シリコーンゴム等の低応力材;カルナバワックス等の天然ワックス、合成ワックス、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸及びその金属塩類もしくはパラフィン等の離型剤;カーボンブラック、ベンガラ等の着色剤;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、ホスファゼン等の難燃剤;酸化防止剤等の各種の添加剤を適宜配合してもよい。これらの配合量は任意である。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
本実施形態の封止用樹脂組成物は、たとえば前述の各成分を、公知の手段で混合し、さらにロール、ニーダーまたは押出機等の混練機で溶融混練し、冷却した後に粉砕することで得ることができる。さらには、これらをタブレット状に打錠成形したものを封止用樹脂組成物として用いることもできる。これにより、顆粒状またはタブレット状の封止用樹脂組成物を得ることができる。
このような打錠成形した組成物とすることにより、トランスファー成形、射出成形、および圧縮成形等の公知の成型方法を用いて封止成形することが容易となる。
【0060】
また、本実施形態の封止用樹脂組成物におけるスパイラルフローの下限値は、例えば、200cm以上である。流動性が求められる半導体パッケージに好的に用いることが出来る。一方で、上記スパイラルフローの上限値としては、特に限定されないが、例えば、250cm以下としてもよい。
【0061】
本実施形態において、低圧トランスファー成形機(コータキ精機社製、「KTS-30」)を用いて、EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用の金型に、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間180秒間の条件で、得られた封止用樹脂組成物を注入、硬化させ、上記スパイラルフローを測定する。
【0062】
以下、本実施形態の封止用樹脂組成物の硬化物の特性について説明する。
【0063】
本実施形態の封止用樹脂組成物を175℃、180秒の条件で硬化させた後、250℃、3時間の条件で後硬化させた硬化物のガラス転移温度の下限値は、例えば、180℃以上であり、好ましくは200℃以上であり、より好ましくは250℃以上である。これにより、耐熱性を向上させ、温度サイクル信頼性を一段と向上させることができる。また、上記封止用樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度の上限値は、とくに限定されないが、たとえば350℃以下である。上記ガラス転移温度の測定方法としては、例えば、熱機械分析装置(セイコーインスツル社製、TMA100)を用いることができる。
【0064】
本実施形態の封止用樹脂組成物を175℃、180秒の条件で硬化させた後、250℃、3時間の条件で後硬化させた硬化物の、310℃から330℃の温度範囲における平均線膨張係数(α2)の上限値は、例えば、90[10-6/℃]以下であり、好ましくは85[10-6/℃]以下であり、より好ましくは80[10-6/℃]以下である。これにより、熱履歴時における線膨張係数を低くすることができ、例えば、半導体パッケージの反りを抑制することができる。また、上記平均線膨張係数(α2)の下限値は、特に限定されないが、例えば、30[10-6/℃]以上としてもよい。
【0065】
本実施形態の封止用樹脂組成物を175℃、180秒の条件で硬化させた後、250℃、3時間の条件で後硬化させた硬化物の、50℃から70℃の温度範囲における平均線膨張係数(α1)に対する、310℃から330℃の温度範囲における平均線膨張係数(α2)の線膨張係数比の上限値が、例えば、7以下であり、好ましくは6.9以下であり、より好ましくは6.8以下である。これにより、常温時と熱履歴時における線膨張係数の変動を小さくすることができるので、ヒートサイクル特性を向上させることができる。また、上記線膨張係数比の下限値は、特に限定されないが、例えば、1.1以上としてもよい。上記平均線膨張係数(α1)、上記平均線膨張係数(α2)の測定は、例えば、熱機械分析装置(セイコーインスツル社製、TMA100)を用いることができる。
【0066】
本実施形態の封止用樹脂組成物を175℃、180秒の条件で硬化させた後、250℃、3時間の条件で後硬化させた硬化物の、250℃における曲げ弾性率の下限値は、例えば、3GPa以上であり、好ましくは4GPa以上であり、より好ましくは5.5GPa以上である。これにより、上記硬化物の強度を高めることができる。また、上記曲げ弾性率の上限値は、特に限定されないが、例えば、20GPa以下であり、好ましくは15GPa以下であり、より好ましくは10GPa以下である。これにより、応力緩和に優れた硬化物を実現できる。上記250℃における曲げ弾性率は、例えばJIS K 6911に準拠して測定できる。
【0067】
本実施形態の封止用樹脂組成物を175℃、180秒の条件で硬化させた後、250℃、3時間の条件で後硬化させた硬化物の、室温におけるダイシェア強度の下限値は、例えば、3.5MPa以上であり、好ましくは4.0MPa以上であり、より好ましくは4.5MPa以上である。これにより、得られた半導体装置の信頼性を向上させることができる。一方で、上記室温におけるダイシェア強度の上限値は、特に限定されないが、例えば、20MPa以下としてもよい。
【0068】
また、本実施形態の封止用樹脂組成物を175℃、180秒の条件で硬化させた後、250℃、3時間の条件で後硬化させた硬化物の、250℃におけるダイシェア強度の下限値は、例えば、1.8MPa以上であり、好ましくは1.9MPa以上であり、より好ましくは2.0MPa以上である。これにより、熱履歴時における半導体装置の信頼性を向上させることができる。一方で、上記250℃におけるダイシェア強度の上限値は、特に限定されないが、例えば、10MPa以下としてもよい。
【0069】
また、上記のダイシェア強度の測定方法としては、例えば、上記の封止用樹脂組成物を用い、低圧トランスファー成形機(山城精機社製、「AV-600-50-TF」)を用いて、金型温度175℃、注入圧力10MPa、硬化時間180秒の条件で、9×29mmの短冊状の試験用銅リードフレーム上に3.6mmφ×3mmの密着強度試験片を1水準当たり10個成形する。250℃で3時間硬化させた後、自動ダイシェア測定装置(ノードソン・アドバンスド・テクノロジー社製、DAGE4000型)を用いて、室温にて試験片とフレームとのせん断強度を測定する。また、250℃温度下において、試験片とフレームとのせん断強度について測定する。
【0070】
本実施形態の封止用樹脂組成物は、一般的な半導体素子やパワー半導体などの半導体素子封止用樹脂組成物、ウェハ封止用樹脂組成物、疑似ウェハ形成用樹脂組成物、車載用電子制御ユニット形成用封止用樹脂組成物、配線基板形成用封止用樹脂組成物、ローター固定部材用封止用樹脂組成物などの各種の用途に用いることができる。
【0071】
次に、半導体装置について説明する。
図1は、本実施形態に係る半導体装置100の一例を示す断面図である。本実施形態に係る半導体装置100は、基板30上に搭載された半導体素子20と、半導体素子20を封止する封止材50と、を備えている。半導体素子20は、たとえば、SiC、GaN、Ga、またはダイヤモンドにより形成されたパワー半導体素子である。また、封止材50は、本実施形態に係る封止用樹脂組成物を硬化して得られる硬化物により構成されている。
【0072】
本実施形態に係る半導体装置100において、半導体素子20は、上述したようにSiC、GaN、Ga、またはダイヤモンドにより形成されたパワー半導体素子であり、200℃以上という高温で動作することができる。このような高温環境での長時間使用においても、本実施形態に係る封止用樹脂組成物を用いて形成した封止材50は、十分な密着性を示すことができる。このため、半導体装置100の信頼性を向上させることが可能となる。なお、半導体素子20は、たとえば入力電力が1.7W以上であるパワー半導体素子とすることができる。
【0073】
図1においては、基板30が回路基板である場合が例示されている。この場合、図1に示すように、基板30のうちの半導体素子20を搭載する一面とは反対側の他面には、たとえば複数の半田ボール60が形成される。半導体素子20は、たとえば基板30上に搭載され、かつワイヤ40を介して基板30と電気的に接続される。一方で、半導体素子20は、基板30に対してフリップチップ実装されていてもよい。
ここで、ワイヤ40は、たとえば銅で構成される。
【0074】
封止材50は、たとえば半導体素子20のうちの基板30と対向する一面とは反対側の他面を覆うように半導体素子20を封止する。図1に示す例においては、半導体素子20の上記他面と側面を覆うように封止材50が形成されている。封止材50は、たとえば封止用樹脂組成物をトランスファー成形法または圧縮成形法等の公知の方法を用いて封止成形することにより形成することができる。
【0075】
図2は、本実施形態に係る半導体装置100の一例を示す断面図であって、図1とは異なる例を示すものである。図2に示す半導体装置100は、基板30としてリードフレームを使用している。この場合、半導体素子20は、たとえば基板30のうちのダイパッド32上に搭載され、かつワイヤ40を介してアウターリード34へ電気的に接続される。半導体素子20は、図1に示す例と同様に、SiC、GaN、Ga、またはダイヤモンドにより形成されたパワー半導体素子である。また、封止材50は、図1に示す例と同様にして、本実施形態に係る封止用樹脂組成物を用いて形成される。
【0076】
次に、車載用電子制御ユニット10の製造方法について図3に基づいて説明する。
本実施形態に係る車載用電子制御ユニット10は、たとえば以下のように作製される。まず、配線基板12の少なくとも一面上に複数の電子部品16を搭載する。次いで、複数の電子部品16を、封止用樹脂組成物を用いて封止成形する。封止用樹脂組成物としては、上記に例示したものを用いることができる。
以下、車載用電子制御ユニット10の製造方法について詳述する。
【0077】
まず、配線基板12の少なくとも一面上に複数の電子部品16を搭載する。本実施形態においては、たとえば複数の電子部品16を、配線基板12の一面と、当該一面とは反対の他面と、のそれぞれに搭載することができる。これにより、図3に示すような、配線基板12の両面に電子部品16が搭載された車載用電子制御ユニット10を形成することが可能となる。一方で、配線基板12の一面のみに電子部品16を搭載し、他面には電子部品16が搭載されなくともよい。なお、配線基板12および電子部品16としては、本技術分野において通常用いられるものを適用することができる。
【0078】
なお、図3に示すように、配線基板12は、たとえば平板状の形状を有している。本実施形態においては、たとえばポリイミド等の有機材料により形成された有機基板を配線基板12として採用することができる。配線基板12は、たとえば配線基板12を貫通して一面と他面を接続するスルーホール120を有していてもよい。この場合、配線基板12のうちの一面に設けられた配線と、他面に設けられた配線と、がスルーホール120内に設けられた導体パターンを介して電気的に接続される。
【0079】
次に、複数の電子部品16を、封止用樹脂組成物を用いて封止成形する。これにより、電子部品16を封止する封止樹脂14が形成されることとなる。本実施形態においては、たとえば電子部品16とともに配線基板12を封止するように封止用樹脂組成物の成形が行われる。図3に例示される車載用電子制御ユニット10は、たとえば配線基板12の一面および他面、ならびに配線基板12に搭載された電子部品16を封止用樹脂組成物によって封止成形することにより得ることができる。また、本実施形態においては、複数の電子部品16とともに配線基板12の一部または全部が封止用樹脂組成物を用いて封止される。図3に例示される車載用電子制御ユニット10は、たとえば接続端子18が露出するように、配線基板12のうちの接続端子18を封止せずに他の部分全体を封止するように封止用樹脂組成物の成形を行うことにより得られる。
【0080】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
以下、参考形態の例を付記する。
1. ビスマレイミド化合物と、
不飽和二重結合を有する基を含有するビフェニルアラルキル型フェノール樹脂と、を含む、封止用樹脂組成物。
2. 1.に記載の封止用樹脂組成物であって、
前記不飽和二重結合を有する基が、炭素数3~14のアルケニル基であり、
前記ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂が、上記一般式(1)で表される化合物を含む、封止用樹脂組成物。
(上記一般式(1)中、mはそれぞれ独立に0または1の整数を表し、nは1以上20以下の整数であり、R は、炭素数3~14のアルケニル基を表す。)
3. 1.または2.に記載の封止用樹脂組成物であって、
前記不飽和二重結合を有する基が、アリル基である、封止用樹脂組成物。
4. 3.に記載の封止用樹脂組成物であって、
アリル基を有する前記ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂におけるアリル化率が、10%以上である、封止用樹脂組成物。
5. 1.から4.のいずれか1つに記載の封止用樹脂組成物であって、
前記ビスマレイミド化合物が、上記一般式(10)で表される、封止用樹脂組成物。
(式(10)中、n は0以上10以下の整数であり、X はそれぞれ独立に炭素数1以上10以下のアルキレン基、上記式(10a)で表される基、式「-SO -」で表される基、「-CO-」で表される基、酸素原子または単結合であり、R はそれぞれ独立に炭素数1以上6以下の炭化水素基であり、aはそれぞれ独立に0以上4以下の整数であり、bはそれぞれ独立に0以上3以下の整数である。)
(式(10a)中、Yは芳香族環を有する炭素数6以上30以下の炭化水素基であり、n は0以上の整数である。)
6. 1.から5.のいずれか1つに記載の封止用樹脂組成物であって、
エポキシ樹脂をさらに含む、封止用樹脂組成物。
7. 1.から6.のいずれか1つに記載の封止用樹脂組成物であって、
無機充填材をさらに含む、封止用樹脂組成物。
8. 1.から7.のいずれか1つに記載の封止用樹脂組成物であって、
当該封止用樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度が180℃以上である、封止用樹脂組成物。
9. 1.から8.のいずれか1つに記載の封止用樹脂組成物であって、
当該封止用樹脂組成物の硬化物の、250℃における曲げ弾性率が、3GPa以上20GPa以下である、封止用樹脂組成物。
10. 1.から9.のいずれか1つに記載の封止用樹脂組成物であって、
当該封止用樹脂組成物の硬化物の、50℃から70℃の温度範囲における平均線膨張係数(α1)に対する、310℃から330℃の温度範囲における平均線膨張係数(α2)の線膨張係数比が、1.1以上7以下である、封止用樹脂組成物。
11. 1.から10.のいずれか1つに記載の封止用樹脂組成物であって、
トランスファー成形用の封止用樹脂組成物。
12. 1.から11.のいずれか1つに記載の封止用樹脂組成物であって、
顆粒状またはタブレット状である、封止用樹脂組成物。
13. 1.から12.のいずれか1つに記載の封止用樹脂組成物の硬化物を備える、構造体。
【実施例
【0081】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0082】
(封止用樹脂組成物の調製)
各実施例、および各比較例のそれぞれについて、以下のように封止用樹脂組成物を調製した。
まず、表1に示す各成分をミキサーにより混合した。次いで、得られた混合物をロール混練した後、冷却、粉砕して粉粒体である封止用樹脂組成物を得た。
【0083】
表1中における各成分の詳細は下記のとおりである。また、表1中に示す各成分の配合割合は、樹脂組成物全体に対する配合割合(質量%)を示している。
【0084】
(ビスマレイミド化合物)
ビスマレイミド化合物1:下記式(8)に示すマレイミド基を二つ以上有する化合物(大和化成工業株式会社製「BMI-2300」)
【化10】
(アリルフェノール樹脂)
アリルフェノール樹脂1:下記の合成方法(ただし、塩化アリル53.57g(0.7モル))で得られたアリル変性ビフェニルアラルキルノボラック樹脂(アリル化率100%、Mw=2.9×10、Mn=1.3×10、Mw/Mn=2.2)
アリルフェノール樹脂2:下記の合成方法(ただし、塩化アリル38.27g(0.5モル))で得られたアリル変性ビフェニルアラルキルノボラック樹脂(アリル化率75%、Mw=2.6×10、Mn=1.3×10、Mw/Mn=2.0)
アリルフェノール樹脂3:下記の合成方法(ただし、塩化アリル25.25g(0.33モル))で得られたアリル変性ビフェニルアラルキルノボラック樹脂(アリル化率50%、Mw=2.2×10、Mn=1.1×10、Mw/Mn=2.0)
アリルフェノール樹脂4:下記の合成方法(ただし、塩化アリル13.01g(0.17モル))で得られたアリル変性ビフェニルアラルキルノボラック樹脂(アリル化率25%、Mw=2.0×10、Mn=1.1×10、Mw/Mn=1.8)
(アリルフェノール樹脂の合成方法)
温度計、冷却器、撹拌装置を備えた4つ口フラスコに、ビフェニルアラルキルノボラック樹脂215.3g(水酸基0.99モル、アリル化率0%、Mw=2.0×10、Mn=1.1×10、Mw/Mn=1.8)、1-プロパノール215.3g、及び塩基性触媒として水酸化ナトリウム44.10g(1.11モル)を投入し、50℃で5時間反応させてアラルキルノボラック樹脂のフェノラート化反応を行った。この反応混合物に、所定量の塩化アリルを投入し、70℃で4時間反応させることでアリルエーテル化反応を行った。得られた反応混合液を、130℃に昇温し減圧下にて未反応の塩化アリルおよび溶媒を除去した。95℃に降温後、純水で10回洗浄し、副生成物の塩を除去した。
洗浄後、150℃に昇温し、減圧下にて水分を除去することによって、生成物であるアリルエーテル化ビフェニルアラルキルノボラック樹脂を得た。続いて、温度計、冷却器、撹拌装置を備えた4つ口フラスコに上記で得られたアリルエーテル化ビフェニルアラルキル樹脂を加え、窒素雰囲気下にて190℃で8時間クライゼン転移反応を行うことによって、生成物であるアリル変性ビフェニルアラルキルノボラック樹脂を得た。
なお、アリル化率はIRで確認した。
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂1:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製「NC-3000L」)
熱硬化性樹脂2:トリフェニルメタン型フェノール樹脂(明和化成株式会社製「MEH-7500」)
熱硬化性樹脂3:ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂(日本化薬株式会社製「GPH-65」)
(無機充填材)
無機充填材1:溶融球状シリカ(平均粒径:30μm)
(硬化促進剤)
硬化促進剤1:2-フェニルイミダゾール(四国化成株式会社製「2PZ-PW」)
(シランカップリング剤)
シランカップリング剤1:フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製「CF-4083」)
(添加剤)
カーボンブラック1:三菱化学株式会社製カーボンブラック#5
【0085】
【表1】
【0086】
次いで、得られた封止用樹脂組成物について、以下の評価を行った。
【0087】
(温度サイクル試験)
得られた封止用樹脂組成物を使用し、低圧トランスファー成形機(アピックヤマダ社製「MSL-06M」)を用いて、金型温度175℃、注入圧力10MPa、硬化時間180秒でTO-220(パッケージサイズは114mm×30mm、厚み1.3mm、チップは未搭載、リードフレームはCu製)を成形し、250℃で3時間硬化させることでテスト用の半導体装置を作製した。封止したテスト用半導体装置を、-40℃~250℃でサイクル繰り返し、パッケージクラックや部材間剥離が発生しないサイクル数を計測した。
【0088】
(ガラス転移温度、平均線膨張係数)
トランスファー成形装置を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間180秒間で、得られた封止用樹脂組成物を注入成形し、15mm×4mm×4mmの成形品を得た。
次いで、得られた成形品を250℃、3時間で後硬化して試験片を作製した。その後、得られた試験片に関し、熱機械分析装置(セイコーインスツル社製、TMA100)を用いて、測定温度範囲0℃~320℃、昇温速度5℃/分の条件下で実施し、ガラス転移温度、50℃から70℃の範囲における平面方向(XY方向)の平均線膨張係数α1、310℃から330℃の範囲における平面方向(XY方向)の平均線膨張係数α2を算出した。ガラス転移温度の単位は℃である。平均線膨張係数α1,α2の単位は10-6/℃である。
【0089】
(曲げ弾性率)
トランスファー成形装置を用いて金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間180秒間で、得られた封止用樹脂組成物を注入成形し、幅10mm×厚さ4mm×長さ80mmの成形品を得た。次いで、得られた成形品を250℃、3時間で後硬化して、試験片を作製した。次いで、試験片の250℃における曲げ弾性率をJIS K 6911に準拠して測定した。単位はGPaである。
【0090】
(スパイラルフロー)
低圧トランスファー成形機(コータキ精機社製、「KTS-30」)を用いて、EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用の金型に、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間180秒間の条件で、得られた封止用樹脂組成物を注入、硬化させ、スパイラルフローを測定した。単位はcmである。
【0091】
(ゲルタイム)
得られた封止用樹脂組成物を表面温度175℃の熱板上においてからタックフリーになるまでの時間を測定しゲルタイムとした。単位は秒である。
【0092】
(ダイシェア強度)
得られた封止用樹脂組成物を使用し、低圧トランスファー成形機(山城精機社製、「AV-600-50-TF」)を用いて、金型温度175℃、注入圧力10MPa、硬化時間180秒の条件で、9×29mmの短冊状の試験用銅リードフレーム上に3.6mmφ×3mmの密着強度試験片を1水準当たり10個成形した。250℃で3時間硬化させた後、自動ダイシェア測定装置(ノードソン・アドバンスド・テクノロジー社製、DAGE4000型)を用いて、室温にて試験片とフレームとのせん断強度を室温測定した。また、250℃温度下において、試験片とフレームとのせん断強度について測定した。10個の試験片のダイシェア強度の平均値を表1に示す。
【符号の説明】
【0093】
10 車載用電子制御ユニット
12 配線基板
14 封止樹脂
16 電子部品
18 接続端子
20 半導体素子
30 基板
32 ダイパッド
34 アウターリード
40 ワイヤ
50 封止材
60 半田ボール
100 半導体装置
120 スルーホール
図1
図2
図3