(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】リソグラフィー用重合体溶液の製造方法、レジスト組成物の製造方法、およびパターンが形成された基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 6/06 20060101AFI20220823BHJP
【FI】
C08F6/06
(21)【出願番号】P 2017199069
(22)【出願日】2017-10-13
【審査請求日】2020-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】安田 敦
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-032508(JP,A)
【文献】特表2009-521539(JP,A)
【文献】特開2012-013880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F6/00-246/00;301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合溶媒の存在下でラクトン骨格を有する単量体、酸脱離性基を有する単量体、
並びに-C(CF
3
)
2
-OH、ヒドロキシ基、シアノ基、メトキシ基、カルボキシ基及びアミノ基からなる群から選ばれる親水性基を有する単量体を含む単量体を重合させて、重合体を含む重合反応溶液を得る重合工程と、
前記重合反応溶液を貧溶媒と混合して、重合体を含む析出物を得る精製工程と、
前記析出物を湿粉の状態で良溶媒に7.5時間を超える時間をかけて溶解させて重合体溶液を得る溶解工程を含む、
リソグラフィー用重合体溶液の製造方法。
【請求項2】
前記重合体溶液を濃縮して濃縮液を得る濃縮工程を有する、請求項1に記載のリソグラフィー用重合体溶液の製造方法。
【請求項3】
前記重合体溶液をろ過する第1のろ過工程を有する、請求項1に記載のリソグラフィー用重合体溶液の製造方法。
【請求項4】
前記重合体溶液をろ過する第1のろ過工程、および前記濃縮液をろ過する第2のろ過工程の少なくとも一方を有する、請求項2に記載のリソグラフィー用重合体溶液の製造方法。
【請求項5】
前記ろ過で用いるフィルターの孔径が0.1μm以下である、請求項3または4に記載のリソグラフィー用重合体溶液の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法によりリソグラフィー用重合体溶液を製造する工程と、得られたリソグラフィー用重合体溶液と、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物とを混合する工程を有する、レジスト組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の製造方法によりレジスト組成物を製造する工程と、得られたレジスト組成物を基板の被加工面上に塗布してレジスト膜を形成する工程と、該レジスト膜に対して、露光する工程と、露光されたレジスト膜を現像液を用いて現像する工程とを含む、パターンが形成された基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリソグラフィー用重合体溶液の製造方法、該製造方法で得られるリソグラフィー用重合体溶液を用いてレジスト組成物を製造する方法、および該レジスト組成物を用いて、パターンが形成された基板を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子、液晶素子等の製造工程において形成されるレジストパターンは、リソグラフィー技術の進歩により急速に微細化が進んでいる。微細化の手法としては、照射光の短波長化がある。
例えば、KrFエキシマレーザー(波長:248nm)、ArFエキシマレーザー(波長:193nm)またはEUV(波長:13.5nm)の照射光を用いたリソグラフィー技術や、電子線リソグラフィー技術が研究されている。
【0003】
短波長の照射光または電子線を用いたレジストパターンの形成に用いられる高感度のレジスト組成物として、光酸発生剤を含有する「化学増幅型レジスト組成物」の改良および開発が進められている。
例えば、ArFエキシマレーザーリソグラフィーにおいて用いられる化学増幅型レジスト用重合体として、波長193nmの光に対して透明なアクリル系重合体が注目されている。該アクリル系重合体としては、例えば、エステル部にアダマンタン骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルとエステル部にラクトン骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルとの重合体が提案されている(特許文献1等)。
また、露光時に基板からの反射を防ぐ役割を果たすため、露光光に対する光線透過率が低い反射防止膜の開発が進められており、アクリル系重合体を用いた反射防止膜が提案されている(特許文献2、3等)。
【0004】
特許文献4、5には、レジスト用重合体溶液の異物経時特性を向上させ、レジストパターン形成時のパターン欠陥を低減させる方法として特定の重合体固形分に調整した重合体溶液をフィルターでろ過してレジスト用重合体を精製する製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-319595号公報
【文献】特開2003-295456号公報
【文献】特開2004-31569号公報
【文献】特開2005-189789号公報
【文献】特開2006-83214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、レジストパターンの微細化が進み、優れたレジストパターンプロファイルを得るためには、レジスト用重合体溶液中の異物をできるだけ少なくすることが望ましいが、従来の方法では必ずしも充分とは言えない。
【0007】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、リソグラフィー用重合体溶液に含まれる異物を低減できる、リソグラフィー用重合体溶液の製造方法、該製造方法で得られるリソグラフィー用重合体溶液を用いてレジスト組成物を製造する方法、および該レジスト組成物を用いて、パターンが形成された基板を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の態様を有する。
[1]重合溶媒の存在下で単量体を重合させて、重合体を含む重合反応溶液を得る重合工程と、前記重合反応溶液を貧溶媒と混合して、重合体を含む析出物を得る精製工程と、前記析出物を良溶媒に7時間以上かけて溶解させて重合体溶液を得る溶解工程を含む、リソグラフィー用重合体溶液の製造方法。
[2]前記重合体溶液を濃縮して濃縮液を得る濃縮工程を有する、[1]のリソグラフィー用重合体溶液の製造方法。
[3]前記重合体溶液をろ過する第1のろ過工程を有する、[1]のリソグラフィー用重合体溶液の製造方法。
[4]前記重合体溶液をろ過する第1のろ過工程、および前記濃縮液をろ過する第2のろ過工程の少なくとも一方を有する、[2]のリソグラフィー用重合体溶液の製造方法。
[5]前記ろ過で用いるフィルターの孔径が0.1μm以下である、[3]または[4]のリソグラフィー用重合体溶液の製造方法。
[6][1]~[5]のいずれかの製造方法により、リソグラフィー用重合体溶液を製造する工程と、得られたリソグラフィー用重合体溶液と、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物とを混合する工程を有する、レジスト組成物の製造方法。
[7][6]の製造方法によりレジスト組成物を製造する工程と、得られたレジスト組成物を基板の被加工面上に塗布してレジスト膜を形成する工程と、該レジスト膜に対して、露光する工程と、露光されたレジスト膜を現像液を用いて現像する工程とを含む、パターンが形成された基板の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のリソグラフィー用重合体溶液の製造方法によれば、溶液中の異物が少ないリソグラフィー用重合体溶液が得られる。
本発明のレジスト組成物の製造方法によれば、欠陥の少ないレジストパターンを形成できるレジスト組成物が得られる。
本発明の基板の製造方法によれば、高精度の微細レジストパターンを安定して形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例および比較例の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸またはメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリロイルオキシ」は、アクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシを意味する。
【0012】
本発明の実施形態を説明する。
≪リソグラフィー用重合体溶液≫
本実施形態のリソグラフィー用重合体溶液(単に「重合体溶液」ということもある。)は、リソグラフィー用重合体と良溶媒を含む。
【0013】
<リソグラフィー用重合体>
本実施形態におけるリソグラフィー用重合体(単に「重合体」ということもある。)は、リソグラフィー工程に用いられる重合体であれば、特に限定されずに適用することができる。例えば、レジスト膜の形成に用いられるレジスト用重合体、レジスト膜の上層に形成される反射防止膜(TARC)、またはレジスト膜の下層に形成される反射防止膜(BARC)の形成に用いられる反射防止膜用重合体、ギャップフィル膜の形成に用いられるギャップフィル膜重合体、トップコート膜の形成に用いられるトップコート膜用重合体が挙げられる。
【0014】
レジスト用重合体の例としては、酸脱離性基を有する構成単位の1種以上と、極性基を有する構成単位の1種以上とを含む共重合体が挙げられる。
反射防止膜用重合体の例としては、吸光性基を有する構成単位と、レジスト膜と混合を避けるため、硬化剤などと反応して硬化可能なアミノ基、アミド基、ヒドロキシル基、エポキシ基等の反応性官能基を有する構成単位とを含む共重合体が挙げられる。吸光性基とは、レジスト組成物中の感光成分が感度を有する波長領域の光に対して、高い吸収性能を有する基であり、具体例としては、アントラセン環、ナフタレン環、ベンゼン環、キノリン環、キノキサリン環、チアゾール環等の環構造(任意の置換基を有していてもよい。)を有する基が挙げられる。特に、照射光として、KrFレーザ光が用いられる場合には、アントラセン環又は任意の置換基を有するアントラセン環が好ましく、ArFレーザ光が用いられる場合には、ベンゼン環又は任意の置換基を有するベンゼン環が好ましい。
【0015】
上記任意の置換基としては、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、カルボキシ基、カルボニル基、エステル基、アミノ基、又はアミド基等が挙げられる。これらのうち、吸光性基として、保護された又は保護されていないフェノール性水酸基を有するものが、良好な現像性・高解像性の観点から好ましい。上記吸光性基を有する構成単位・単量体として、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、p-ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0016】
ギャップフィル膜用重合体の例としては、狭いギャップに流れ込むための適度な粘度を有し、レジスト膜や反射防止膜との混合を避けるため、硬化剤などと反応して硬化可能な反応性官能基を有する構成単位を含む共重合体、具体的にはヒドロキシスチレンと、スチレン、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の
単量体との共重合体が挙げられる。
液浸リソグラフィーに用いられるトップコート膜用重合体の例としては、カルボキシル基を有する構成単位を含む共重合体、水酸基が置換したフッ素含有基を有する構成単位を含む共重合体等が挙げられる。
【0017】
[極性基を有する構成単位]
リソグラフィー用重合体は、極性基を有する構成単位を有してもよい。
「極性基」とは、極性を持つ官能基または極性を持つ原子団を有する基であり、具体例としては、ヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、カルボキシ基、アミノ基、カルボニル基、フッ素原子を含む基、硫黄原子を含む基、ラクトン骨格を含む基、アセタール構造を含む基、エーテル結合を含む基などが挙げられる。
これらのうちで、波長250nm以下の光で露光するパターン形成方法に適用されるレジスト用重合体は、極性基を有する構成単位として、ラクトン骨格を有する構成単位を有することが好ましく、さらに後述の親水性基を有する構成単位を有することが好ましい。
【0018】
(ラクトン骨格を有する構成単位・単量体)
ラクトン骨格としては、例えば、4~20員環程度のラクトン骨格が挙げられる。ラクトン骨格は、ラクトン環のみの単環であってもよく、ラクトン環に脂肪族または芳香族の炭素環または複素環が縮合していてもよい。
重合体がラクトン骨格を有する構成単位を含む場合、その含有量は、基板等への密着性の点から、全構成単位(100モル%)のうち、20モル%以上が好ましく、25モル%以上がより好ましい。また、感度および解像度の点から、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。
【0019】
ラクトン骨格を有する単量体としては、基板等への密着性に優れる点から、置換あるいは無置換のδ-バレロラクトン環を有する(メタ)アクリル酸エステル、置換あるいは無置換のγ-ブチロラクトン環を有する単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、無置換のγ-ブチロラクトン環を有する単量体が特に好ましい。
【0020】
ラクトン骨格を有する単量体の具体例としては、β-(メタ)アクリロイルオキシ-β-メチル-δ-バレロラクトン、4,4-ジメチル-2-メチレン-γ-ブチロラクトン、β-(メタ)アクリロイルオキシ-γ-ブチロラクトン、β-(メタ)アクリロイルオキシ-β-メチル-γ-ブチロラクトン、α-(メタ)アクリロイルオキシ-γ-ブチロラクトン、2-(1-(メタ)アクリロイルオキシ)エチル-4-ブタノリド、(メタ)アクリル酸パントイルラクトン、5-(メタ)アクリロイルオキシ-2,6-ノルボルナンカルボラクトン、8-メタクリロキシ-4-オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-3-オン、9-メタクリロキシ-4-オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-3-オン等が挙げられる。また、類似構造を持つ単量体として、メタクリロイルオキシこはく酸無水物等も挙げられる。
ラクトン骨格を有する単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
(親水性基を有する構成単位・単量体)
本明細書における「親水性基」とは、-C(CF3)2-OH、ヒドロキシ基、シアノ基、メトキシ基、カルボキシ基およびアミノ基の少なくとも1種である。
これらのうちで、波長250nm以下の光で露光するパターン形成方法に適用されるレジスト用重合体は、親水性基としてヒドロキシ基またはシアノ基を有することが好ましい。
重合体における親水性基を有する構成単位の含有量は、レジストパターン矩形性の点から、全構成単位(100モル%)のうち、5~30モル%が好ましく、10~25モル%がより好ましい。
【0022】
親水性基を有する単量体としては、例えば、末端ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリ酸エステル;単量体の親水性基上にアルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基等の置換基を有する誘導体;環式炭化水素基を有する単量体(例えば(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸1-イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンチル、(メタ)アクリル酸2-メチル-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸2-エチル-2-アダマンチル等。)が置換基としてヒドロキシ基、カルボキシ基等の親水性基を有するもの;が挙げられる。
【0023】
親水性基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシ-n-プロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシアダマンチル、2-または3-シアノ-5-ノルボルニル(メタ)アクリレート、2-シアノメチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。基板等に対する密着性の点から、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシアダマンチル、(メタ)アクリル酸3,5-ジヒドロキシアダマンチル、2-または3-シアノ-5-ノルボルニル(メタ)アクリレート、2-シアノメチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート等が好ましい。
親水性基を有する単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
[酸脱離性基を有する構成単位]
レジスト用重合体は、レジスト用途に用いるために上述した極性基を有する構成単位以外に酸脱離性基を有する構成単位を有することが好ましく、この他に、必要に応じて公知の構成単位を有していてもよい。
「酸脱離性基」とは、酸により開裂する結合を有する基であり、該結合の開裂により酸脱離性基の一部または全部が重合体の主鎖から脱離する基である。
レジスト用組成物において、酸脱離性基を有する構成単位を有する重合体は、酸成分と反応してアルカリ性溶液に可溶となり、レジストパターン形成を可能とする作用を奏する。
酸脱離性基を有する構成単位の割合は、感度および解像度の点から、重合体を構成する全構成単位(100モル%)のうち、20モル%以上が好ましく、25モル%以上がより好ましい。また、基板等への密着性の点から、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。
【0025】
酸脱離性基を有する単量体は、酸脱離性基および重合性多重結合を有する化合物であればよく、公知のものを使用できる。重合性多重結合とは重合反応時に開裂して共重合鎖を形成する多重結合であり、エチレン性二重結合が好ましい。
酸脱離性基を有する単量体の具体例として、炭素数6~20の脂環式炭化水素基を有し、かつ酸脱離性基を有している(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。該脂環式炭化水素基は、(メタ)アクリル酸エステルのエステル結合を構成する酸素原子と直接結合していてもよく、アルキレン基等の連結基を介して結合していてもよい。
該(メタ)アクリル酸エステルには、炭素数6~20の脂環式炭化水素基を有するとともに、(メタ)アクリル酸エステルのエステル結合を構成する酸素原子との結合部位に第3級炭素原子を有する(メタ)アクリル酸エステル、または、炭素数6~20の脂環式炭化水素基を有するとともに、該脂環式炭化水素基に-COOR基(Rは置換基を有していてもよい第3級炭化水素基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、またはオキセパニル基を表す。)が直接または連結基を介して結合している(メタ)アクリル酸エステルが含まれる。
【0026】
特に、波長250nm以下の光で露光するパターン形成方法に適用される重合体を製造する場合には、酸脱離性基を有する単量体の好ましい例として、例えば、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、1-(1’-アダマンチル)-1-メチルエチル(メタ)アクリレート、1-メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1-エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1-メチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、1-エチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、イソプロピルアダマンチル(メタ)アクリレート、1-エチルシクロオクチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
酸脱離性基を有する単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
<良溶媒>
リソグラフィー用重合体溶液の製造において用いられる良溶媒としては、例えば、下記のものが挙げられる。
エーテル類:鎖状エーテル(ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、「PGME」と記す。)等。)、環状エーテル(テトラヒドロフラン(以下、「THF」と記す。)、1,4-ジオキサン等。)等。
エステル類:酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」と記す。)、γ-ブチロラクトン等。
ケトン類:アセトン、メチルエチルケトン(以下、「MEK」と記す。)、メチルイソブチルケトン(以下、「MIBK」と記す。)、シクロヘキサノン等。
アミド類:N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等。
スルホキシド類:ジメチルスルホキシド等。
芳香族炭化水素:ベンゼン、トルエン、キシレン等。
脂肪族炭化水素:ヘキサン等。
脂環式炭化水素:シクロヘキサン等。
リソグラフィー用重合体溶液中の良溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
≪リソグラフィー用重合体溶液の製造方法≫
本実施形態のリソグラフィー用重合体溶液の製造方法は、重合溶媒の存在下で単量体を重合させて、重合体を含む重合反応溶液を得る重合工程と、得られた重合反応溶液から重合体を析出させる精製工程と、重合体を含む析出物を良溶媒に溶解させる溶解工程とを有する。
【0029】
[重合工程]
重合方法として、重合溶媒の存在下で、重合開始剤を使用して単量体をラジカル重合させる溶液重合法を用いることができる。
重合溶媒としては、前記良溶媒として挙げたものが使用できる。
【0030】
重合開始剤としては、熱により効率的にラジカルを発生するものが好ましい。例えば、アゾ化合物(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等。)、有機過酸化物(2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等。)等が挙げられる。
これらの重合開始剤の、分解温度に応じた使用適性温度は50~150℃の範囲内にある。
【0031】
重合工程では、重合容器内に重合溶媒、重合開始剤、および単量体を供給し、所定の重合温度に保持してラジカル重合反応を行うことが好ましい。
単量体および重合開始剤の重合容器への供給は、連続供給であってもよく、滴下供給であってもよい。製造ロットの違いによる平均分子量、分子量分布等のばらつきが小さく、再現性のある重合体が簡便に得られる点から、単量体および重合開始剤を重合容器内に滴下する滴下重合法が好ましい。
【0032】
滴下重合法においては、重合容器内を所定の重合温度まで温調した後、単量体および重合開始剤を、それぞれ独立に、または任意の組み合わせで、重合容器内に滴下する。
単量体は、単量体のみで滴下してもよく、単量体を重合溶媒に溶解させた単量体溶液として滴下してもよい。
重合溶媒及び/又は単量体をあらかじめ重合容器に仕込んでもよい。
重合開始剤は、単量体に直接に溶解させてもよく、単量体溶液に溶解させてもよく、重合溶媒のみに溶解させてもよい。
単量体および重合開始剤は、同じ貯槽内で混合した後、重合容器中に滴下してもよく;それぞれ独立した貯槽から重合容器中に滴下してもよく;それぞれ独立した貯槽から重合容器に供給する直前で混合し、重合容器中に滴下してもよい。
単量体および重合開始剤は、一方を先に滴下した後、遅れて他方を滴下してもよく、両方を同じタイミングで滴下してもよい。
滴下速度は、滴下終了まで一定であってもよく、単量体または重合開始剤の消費速度に応じて、多段階に変化させてもよい。
滴下は、連続的に行ってもよく、間欠的に行ってもよい。
重合温度は、重合開始剤の使用適性温度の範囲内に設定することが好ましい。例えば50~150℃が好ましい。
【0033】
溶液重合法において、重合反応が行われる反応液の粘度は、単量体の重合反応が進むにしたがって上昇する。反応液の粘度が高くなりすぎると、重合反応が急速に進行する、いわゆる暴走反応が生じるおそれがある。
本明細書において、重合溶媒の存在下で単量体を重合反応させた状態の反応液を、重合反応溶液という。重合反応溶液には重合反応により生成した重合体が含まれる。
重合反応溶液の粘度は、重合反応に用いる重合溶媒の量が多いと低くなり、重合溶媒の使用量が少ないと高くなる。重合反応に用いる重合溶媒の量は、上記の暴走反応が生じない程度に反応液の粘度が低くなるように設定すればよく、重合溶媒の使用量が多いほど製造効率が悪くなる。
また、重合反応溶液の粘度は溶媒を用いて希釈することで任意の粘度に調整することができる。希釈溶媒の具体例としては1,4-ジオキサン、アセトン、THF、MEK、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、MIBK、γ-ブチロラクトン、PGMEA、PGME、乳酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、水、ヘキサン、ヘプタン、ジイソプロピルエーテル、またはそれらの混合溶媒等を挙げることができる。
重合反応溶液の25℃における粘度は、製造効率の点からは25mPa・s以上が好ましく、50mPa・s以上がより好ましく、100mPa・s以上、更には150mPa・s以上が特に好ましい。該重合反応溶液の粘度の上限は、前記暴走反応が生じない範囲であればよく、例えば10,000mPa・s以下が好ましく、9,000mPa・s以下がより好ましい。
溶媒による希釈は重合工程中の任意のタイミングで行うことができる。
【0034】
重合工程において予め設定された重合時間だけ所定の重合温度に保持してラジカル重合反応を行った後、重合反応を停止させて重合反応溶液を得る。
ラジカル重合反応は、開始反応、生長反応、停止反応、連鎖移動反応の4つの素反応からなる連鎖機構で重合が進行し、生成する重合体の分子量は各素反応の速度と機構によって決められる。生長反応速度は単量体濃度およびラジカル濃度の積に比例し、停止反応はラジカル濃度の2乗に比例する。
本明細書において「重合反応を停止させる」とは、重合開始剤の分解によるラジカルの発生量が、開始反応および生長反応を引き起こさない程度に充分少なくなる状態にすることを意味する。
重合反応を停止させる手法は反応液を冷却させる工程が一般的に用いられるが、重合禁止剤や酸素といったラジカル捕捉剤を投入することによって停止させることもできる。
【0035】
[精製工程]
重合工程で得られた重合反応溶液を、貧溶媒と混合し(好ましくは貧溶媒中に滴下し)、重合反応溶液中の重合体を析出させる。この工程は、再沈殿と呼ばれ、重合反応溶液中に残存する未反応単量体、重合開始剤等の不純物を取り除くために非常に有効である。未反応単量体は、そのまま残存しているとレジスト組成物として用いた場合に感度が低下するため、できるだけ取り除くことが好ましい。
貧溶媒は、未反応の単量体、重合開始剤等を効率的に取り除くことができる点で、メタノール、イソプロピルアルコール、ジイソプロピルエーテル、ヘプタン、または水が好ましい。貧溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合反応溶液を貧溶媒中に滴下する際の貧溶媒の量は、特に限定されないが、未反応単量体をより低減しやすい点で、重合反応溶液と同質量以上が好ましく、質量基準で3倍以上が好ましく、4倍以上がより好ましく、5倍以上がさらに好ましく、6倍以上が特に好ましい。上限は、使用する貧溶媒の量が多過ぎず、生産性を低下させない点で、質量基準で10倍以下が好ましい。
【0036】
その後、貧溶媒中の析出物をろ別することにより、目的の重合体を含む析出物が湿粉の状態で得られる。析出物中の単量体含有量は少ないほど好ましい。
【0037】
貧溶媒中の析出物をろ別して得られた湿粉を、再び貧溶媒に分散させて重合体分散液とした後にろ別する操作を繰り返すこともできる。この工程は、リスラリ工程と呼ばれ、湿粉中に残存する未反応の単量体、重合開始剤等の不純物をより低減させるために有効である。
重合体を高い生産性を維持したまま取得できる点では、リスラリ工程を行わず、再沈殿工程のみで精製を行うことが好ましい。
【0038】
[溶解工程]
精製工程で得られた、重合体を含む析出物を、良溶媒に溶解させて重合体溶液を得る。得られた重合体溶液はリソグラフィー用重合体溶液として使用できる。
析出物は、湿粉の状態で良溶媒に溶解させてもよく、湿粉を濃縮して低沸点化合物を除去した濃縮湿粉を良溶媒に溶解させてもよい。または、湿粉を乾燥させた乾燥粉末の状態で良溶媒に溶解させてもよい。析出物を良溶媒に溶解させる際に、保存安定剤等の添加剤を適宜添加してもよい。
【0039】
具体的には、良溶媒と析出物とを混合して溶解させる。良溶媒と析出物との混合を開始した時点から、得られた重合体溶液を次工程に使用するまでの時間を溶解時間とする。次工程としては、後述のろ過工程または濃縮工程が挙げられる。
例えば、良溶媒に析出物を投入し、溶解時間の開始から終了まで連続的に撹拌して溶解させてもよく、断続的に撹拌して溶解させてもよい。断続的に撹拌する場合、良溶媒に析出物を投入した直後に撹拌を行い、その後は、静置してもよく、もしくは静置の1回以上と撹拌の1回以上を交互に行ってもよい。または、良溶媒に析出物を投入した直後に静置し、その後は、連続的に撹拌してもよく、もしくは撹拌の1回以上と静置の1回以上とを交互に行ってもよい。
溶解時間は7時間以上とする。溶解時間を7時間以上とすることにより、重合体の溶解性を充分に向上させることができる。7時間を超えると重合体の溶解性の向上は緩やかになる。溶解時間の上限は特に限定されないが、製造効率の点からは、30時間以下が好ましく、20時間以下がより好ましい。
【0040】
撹拌手段は、撹拌翼を備えた撹拌機を用いることができる。撹拌翼の形状は特に限定されず、アンカー翼、パドル翼、プロペラ翼、タービン翼、エッジドタービン翼、リボン翼等が例示できる。また、住友重機会工業社製のマックスブレンド(登録商標)翼も使用できる。
撹拌翼の回転数は、例えば1~1000rpmが好ましく、2~500がより好ましく、3~100がさらに好ましい。
【0041】
[濃縮工程]
溶解工程で得られる重合体溶液を、濃縮して低沸点化合物を除去してもよい。得られた濃縮液はリソグラフィー用重合体溶液として使用できる。
【0042】
[ろ過工程]
溶解工程で得られる重合体溶液をろ過(第1のろ過工程ともいう。)して、重合体溶液中の異物を除去することが好ましい。
前記濃縮工程を行う場合、濃縮前の重合体溶液をろ過(第1のろ過工程)してもよく、濃縮液をろ過(第2のろ過工程ともいう。)してもよい。少なくとも一方を行うことが好ましく、両方行ってもよい。
【0043】
以下は、第1のろ過工程と第2のろ過工程において共通である。
ろ過工程では、重合体溶液を、孔径が0.1μm以下のフィルターに通液させことが好ましい。
ろ過中のろ過差圧は特に制限されないが、低すぎるとろ過速度が遅くなって生産性が落ちるため、10kPa以上が好ましく、20kPa以上がより好ましい。
ろ過差圧とは、フィルターに通液する重合体溶液の、ろ過膜に通液する前の重合体溶液にかかる圧力から通液後の重合体溶液にかかる圧力の値を引いた値のことである。通常、ろ過膜の通過抵抗があり通液する前の圧力が高くなるのでろ過前後の差圧は正の数値となる。
ろ過差圧が上記下限値以上であると、ろ過効率に優れる。ろ過効率(単位:%)とは、下式(1)で求められる値のことである。
(ろ過前の粒子数-ろ過後の粒子数)/ろ過前の粒子数×100 ・・・ (1)
【0044】
フィルターのろ過膜は、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン重合体;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド重合体等を含む重合体からなるろ過膜を挙げることができる。
重合反応で副生する、目的とする重量平均分子量よりも高分子量の重合体や共重合組成の偏った溶解性に乏しい重合体を効率的に除去することができる点で、極性基としてアミド結合を有するポリアミド重合体を含むろ過膜を有するフィルターを用いることが好ましい。
フィルターの形状は公知のものを用いることができ、例えば、ディスクタイプ、カートリッジタイプ等の容器内にろ過膜が収納されたものを使用することができる。フィルターは同一、もしくは異なる材質のろ過膜を複数有していてもよい。
フィルターの表面積、重合体溶液の温度、および通液させる際の流速は重合体溶液の量、粘度等により適宜調整することが好ましい。
【0045】
フィルターのろ過を二段階以上に分けて行うこともできる。また、一度ろ過した重合体溶液を再び同じフィルターに繰り返し通液させてろ過することもできる。
ろ過を二段階以上に分けて行う場合、第一段階のろ過と第二段階以上のろ過では、フィルターの孔径と材質を任意に組み合わせて用いることができる。フィルターの目詰まりによるろ過性の低下を防ぐ点で第一段階のろ過フィルターに最も孔径が大きなフィルターを用い、第二段階以降に進むにつれ、孔径の小さなフィルターを用いることが好ましい。
【0046】
≪レジスト組成物の製造方法≫
リソグラフィー用重合体溶液と、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物を混合してレジスト組成物を製造する。具体的には、リソグラフィー用重合体溶液に、必要に応じてレジスト溶媒を加え、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物を添加して溶解させる。
レジスト溶媒としては、上記に良溶媒として挙げた溶媒を用いることができる。
【0047】
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物は、化学増幅型レジスト組成物の光酸発生剤として使用可能なものの中から任意に選択できる。光酸発生剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、キノンジアジド化合物、ジアゾメタン化合物等が挙げられる。
光酸発生剤の使用量は、重合体100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましい。
【0048】
化学増幅型レジスト組成物は、含窒素化合物を含んでいてもよい。含窒素化合物を含むことにより、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等がさらに向上する。つまり、レジストパターンの断面形状が矩形により近くなり、また、レジスト膜に光を照射し、ついでベーク(PEB)した後、次の現像処理までの間に数時間放置されることが半導体素子の量産ラインではあるが、そのような放置(経時)したときにレジストパターンの断面形状の劣化の発生がより抑制される。
含窒素化合物としては、アミンが好ましく、第2級低級脂肪族アミン、第3級低級脂肪族アミンがより好ましい。
含窒素化合物の量は、重合体100質量部に対して、0.01~2質量部が好ましい。
【0049】
化学増幅型レジスト組成物は、有機カルボン酸、リンのオキソ酸またはその誘導体(以下、これらをまとめて酸化合物と記す。)を含んでいてもよい。酸化合物を含むことにより、含窒素化合物の配合による感度劣化を抑えることができ、また、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等がさらに向上する。
有機カルボン酸としては、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸等が挙げられる。
リンのオキソ酸またはその誘導体としては、リン酸またはその誘導体、ホスホン酸またはその誘導体、ホスフィン酸またはその誘導体等が挙げられる。
酸化合物の量は、重合体100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましい。
【0050】
レジスト組成物は、必要に応じて、界面活性剤、その他のクエンチャー、増感剤、ハレーション防止剤、保存安定剤、消泡剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。該添加剤は、当該分野で公知のものであればいずれも使用可能である。
【0051】
<微細パターンが形成された基板の製造方法>
微細パターンが形成された基板の製造方法の一例について説明する。
まず、所望の微細パターンを形成しようとするシリコンウエハー等の被加工基板の表面に、レジスト組成物をスピンコート等により塗布する。そして、レジスト組成物が塗布された被加工基板を、ベーキング処理(プリベーク)等で乾燥することにより、基板上にレジスト膜を形成する。
ついで、レジスト膜に、フォトマスクを介して、250nm以下の波長の光を照射して潜像を形成する(露光)。照射光としては、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー、EUVエキシマレーザーが好ましく、ArFエキシマレーザーが特に好ましい。また、電子線を照射してもよい。
また、該レジスト膜と露光装置の最終レンズとの間に、純水、パーフルオロ-2-ブチルテトラヒドロフラン、パーフルオロトリアルキルアミン等の高屈折率液体を介在させた状態で光を照射する液浸露光を行ってもよい。
【0052】
露光後、適宜熱処理(露光後ベーク、PEB)し、レジスト膜にアルカリ現像液を接触させ、露光部分を現像液に溶解させ、除去する(現像)。アルカリ現像液としては、公知のものが挙げられる。
現像後、基板を純水等で適宜リンス処理する。このようにして被加工基板上にレジストパターンが形成される。
レジストパターンが形成された基板は、適宜熱処理(ポストベーク)してレジストを強化し、レジストのない部分を選択的にエッチングする。
エッチング後、レジストを剥離剤によって除去することによって、微細パターンが形成された基板が得られる。
【0053】
本発明によれば、後述の実施例に示すように、重合体の溶媒への溶解性に優れ、レジスト組成物に用いたときに良好な感度を示すリソグラフィー用重合体溶液が得られる。
具体的には、重合体を含む析出物を、良溶媒に7時間以上かけて溶解させることにより、重合体溶液中に分散している全粒子に対する、粒径10nm以上の大粒径粒子の割合を充分に低減することができる。すなわち、重合体の溶解性に優れ、溶液中の異物が充分に低減された重合体溶液が得られる。
かかる重合体溶液は、溶液中の異物が充分に低減されているため、フィルターろ過時のろ過時間が短縮される。また、かかる重合体溶液用いたレジスト組成物は、感度に優れる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、各実施例、比較例中「部」とあるのは、特に断りのない限り「質量部」を示す。
測定方法および評価方法は以下の方法を用いた。
【0055】
<溶解性の評価方法>
重合体溶液の粒径分布を、希薄系プローブを備えた高感度仕様のFPAR-1000(大塚電子製)を用い測定した。得られた自己相関関数はMarquardt法により解析し、質量換算での粒径分布曲線を得た。得られた質量換算での粒径分布曲線より、粒径10nm以上の大粒径粒子の割合(質量%)を求めた。
【0056】
<重量平均分子量の測定方法>
重合体の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は、下記の条件(GPC条件)でゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより、ポリスチレン換算で求めた。
[GPC条件]
装置:東ソー社製、東ソー高速GPC装置 HLC-8220GPC(商品名)、
分離カラム:昭和電工社製、Shodex GPC K-805L(商品名)を3本直列に連結したもの、
測定温度:40℃、
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)、
試料:重合体の約20mgを5mLのTHFに溶解し、0.5μmメンブレンフィルターで濾過した溶液、
流量:1mL/分、
注入量:0.1mL、
検出器:示差屈折計。
【0057】
検量線I:標準ポリスチレンの約20mgを5mLのTHFに溶解し、0.5μmメンブレンフィルターで濾過した溶液を用いて、上記の条件で分離カラムに注入し、溶出時間と分子量の関係を求めた。標準ポリスチレンは、下記の東ソー社製の標準ポリスチレン(いずれも商品名)を用いた。
F-80(Mw=706,000)、
F-20(Mw=190,000)、
F-4(Mw=37,900)、
F-1(Mw=10,200)、
A-2500(Mw=2,630)、
A-500(Mw=682、578、474、370、260の混合物)。
【0058】
<レジスト組成物の評価(感度)>
レジスト組成物を、6インチシリコンウエハー上に回転塗布し、ホットプレート上で120℃、60秒間プリベーク(PAB)して、厚さ300nmの薄膜を形成した。ArFエキシマレーザー露光装置(リソテックジャパン製、商品名:VUVES-4500)を用い、露光量を変えて10mm×10mmの18ショットを露光した。次いで110℃、60秒間のポストベーク(PEB)を行った後、レジスト現像アナライザー(リソテックジャパン製。商品名:RDA-800)を用い、23℃にて濃度2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で65秒間現像し、各露光量における現像中のレジスト膜厚の経時変化を測定した。
【0059】
[解析]
得られたデータを基に、露光量(mJ/cm2)の対数と、初期膜厚に対する60秒間現像した時点での残存膜厚の割合(以下、残膜率という)(%)をプロットした曲線(以下、露光量-残膜率曲線という)を作成し、Eth感度(残膜率0%とするための必要露光量であり、感度を表す。)を以下の通り求めた。Eth感度の値が小さいほどレジスト組成物の感度が高いことを示す。
Eth感度:露光量-残膜率曲線が残膜率0%と交わる露光量(mJ/cm2)。
【0060】
<例1~例6>
例1~4は比較例、例5、6は実施例である。
【0061】
(重合工程)
窒素導入口、攪拌機、コンデンサー、滴下漏斗1個、及び温度計を備えたSUS製のフラスコに、PGMEA1740部を入れた。フラスコ内を窒素で置換し、窒素雰囲気を保ったままフラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を攪拌しながら湯浴の温度を上げ、フラスコ内の液の温度を80℃に上げた。
その後、下記混合物1を滴下漏斗より、4時間かけてフラスコ内に滴下し、さらに80℃の温度を3時間保持した。その後、湯浴の加熱を停止し、湯浴の湯を20℃の水に連続的に置換することにより該フラスコを冷却して重合反応を停止させ、重合体を含む重合反応溶液を得た。
[混合物1]
下記式(m1)の単量体を680部(40mol%)、
下記式(m2)の単量体を936部(40mol%)、
下記式(m3)の単量体を472部(20mol%)、
PGMEA3132部、
ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート(和光純薬工業社製、V601(商品名))276部。
【0062】
【0063】
(精製工程)
次に、重合反応溶液を、7.2倍量(体積基準)の貧溶媒中に、該貧溶媒を攪拌しながら滴下し、重合体(白色の析出物)を沈殿させた。貧溶媒としてはメタノール/水=80/20(vol%)の混合溶媒を用いた。沈殿をろ別して、析出物を湿粉の状態で得た。
本例では、さらにリスラリ工程を行った。具体的には、ろ別して得られた湿粉を、再沈殿工程と同じ量(重合反応溶液の7.2倍量)の貧溶媒に分散させて重合体分散液とした後に、ろ別する操作を行い、固形分濃度46質量%の湿粉(精製後の湿粉)3720部を得た。リスラリ工程では貧溶媒としてメタノール/水=85/15(vol%)の混合溶媒を用いた。
【0064】
(溶解工程)
リスラリ工程で得られた湿粉と良溶媒とを混合し、湿粉を溶解させて重合体溶液とした。具体的には、撹拌槽に、湿粉30部とPGMEAの141部とを入れ、25℃に保ちながら、連続的に撹拌して重合体溶液を得た。撹拌は、アンカー翼を備えた攪拌機を用い、撹拌回転数30rpmで行った。撹拌槽に湿粉とPGMEAとを投入した時点から撹拌終了までの溶解時間を表1に示す通りに変更し、撹拌終了後、直ちに上記の溶解性の評価方法で、重合体溶液の粒径分布を測定し、粒径10nm以上の大粒径粒子の割合(質量%)を求めた。結果を表1に示す。
溶解時間が1時間である例1では、目視で不溶解重合体が確認されたため、粒径分布の測定を行わなかった。
【0065】
(第1のろ過工程(フィルターろ過))
各例で得られた重合体溶液を、孔径0.04μmのナイロン製カートリッジフィルター(10インチ)でろ過した。具体的には、重合体溶液360kgを、前記カートリッジフィルターに、ろ過差圧を50kPaに保持したまま通液させた。
ろ過の開始から終了までのろ過時間を測定した。結果を表1に示す。
例1の重合体溶液は、ろ過開始後に目詰まりを起こして全量をろ過することができなかった。
【0066】
(濃縮工程)
第1のろ過工程で得られた、例2~6のろ液(ろ過後の重合体溶液)を、圧力10kPa、温度40℃の条件で濃縮し、留出液が出なくなった時点で圧力5kPa、温度55℃の条件に変更して、重合体の濃度が20質量%になるまで濃縮を行い、濃縮液を得た。
得られた濃縮液の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を測定した。結果を表1に示す。
【0067】
[レジスト組成物の製造]
濃縮工程で得られた濃縮液をリソグラフィー用重合体溶液として用いて、レジスト組成物を製造した。
具体的には、濃縮液の500部と、光酸発生剤であるトリフェニルスルホニウムトリフレートの2部と、溶媒であるPGMEAとを、重合体濃度が12.5質量%になるように混合して均一溶液とした後、20℃に温度制御したまま孔径0.02μmのポリエチレン製カートリッジフィルターでろ過差圧を200kPaとなるように圧力をかけてろ過し、レジスト組成物を得た。得られたレジスト組成物についてEth感度を測定した。結果を表1に示す。
【0068】
【0069】
図1の実線は撹拌時間と大粒径粒子の割合との関係を表すグラフであり、破線は撹拌時間とフィルターろ過時のろ過時間との関係を示すグラフである。
表1および
図1の結果に示されるように、溶解時間を7時間以上とすることにより、大粒径粒子の含有割合が充分に低くなり、重合体溶液をフィルターろ過する際のろ過時間が充分に短縮され、レジスト組成物にしたときの感度が向上することがわかる。