(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】画像センサ
(51)【国際特許分類】
H04N 5/225 20060101AFI20220823BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20220823BHJP
【FI】
H04N5/225
G03B17/02
(21)【出願番号】P 2018031001
(22)【出願日】2018-02-23
【審査請求日】2020-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123319
【氏名又は名称】関根 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125357
【氏名又は名称】中村 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100123098
【氏名又は名称】今堀 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100106622
【氏名又は名称】和久田 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100138357
【氏名又は名称】矢澤 広伸
(72)【発明者】
【氏名】高山 正広
(72)【発明者】
【氏名】保理江 勝
(72)【発明者】
【氏名】伊奈 裕史
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 浩介
【審査官】吉川 康男
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-081080(JP,A)
【文献】特開2005-345802(JP,A)
【文献】特開2003-224765(JP,A)
【文献】特開2001-142121(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0054595(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/225
G03B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工場に設置され製造物の検査又は管理を行うために利用される画像センサであって、撮像系と、前記撮像系により取得される画像を用いた処理を実行する処理部と、前記工場内に設置された画像センサを管理する外部装置との間でデータの送受信を行う入出力I/Fと、を有し、
前記撮像系は、モジュール化された複数の構成要素を
任意に組み合わせ
て、前記処理部及び前記入出力I/Fが設けられたセンサ本体に対し組み付けることにより構成され、
前記複数の構成要素は、それぞれ、不揮発性のメモリを有しており、
前記処理部は、前記複数の構成要素のそれぞれの前記メモリに対し、情報の読み込み及び/又は書き込みが可能であり、
前記処理部は、自発的に又は前記外部装置の要求に応じて、前記複数の構成要素それぞれの前記メモリから情報を読み出し、
前記センサ本体に現に組み付けられている前記撮像系を構成する構成要素の組み合わせを表すモジュール構成情報を生成し、前記モジュール構成情報を、前記入出力I/Fを介して前記外部装置に送信及び/又は前記画像センサの表示器に表示可能である
ことを特徴とする画像センサ。
【請求項2】
前記メモリは、前記構成要素の形式を特定するための情報を少なくとも記憶している
ことを特徴とする請求項1に記載の画像センサ。
【請求項3】
前記メモリは、前記構成要素の個体を特定するための情報を少なくとも記憶している
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像センサ。
【請求項4】
前記メモリは、前記構成要素の性能及び/又は機能を示す情報を少なくとも記憶している
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の画像センサ。
【請求項5】
前記メモリは、前記画像センサのユーザーによる書き換えができない第1の記憶領域と、前記ユーザーによる書き換えが可能な第2の記憶領域と、を有する
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の画像センサ。
【請求項6】
前記複数の構成要素は、被写体を照明する照明部と、前記被写体の光学像を結像するレンズ部と、前記光学像に基づき前記画像を生成する撮像部と、を含む
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の画像センサ。
【請求項7】
前記照明部は、
波長、発光素子の配置、光量、および発光パターンの少なくともいずれかが異なる光を照射可能な複数のモジュールのうちのいずれかを用いて照明を行うか、
波長、光量、および発光パターンを変更可能なモジュールである
ことを特徴とする請求項6に記載の画像センサ。
【請求項8】
工場に設置され製造物の検査又は管理を行うために利用される画像センサであって、
被写体を照明する照明部と、
前記被写体の光学像を結像するレンズ部と、
前記光学像に基づき画像を生成する撮像部と、
前記画像を用いた処理を実行する処理部と、
前記工場内に設置された画像センサを管理する外部装置との間でデータの送受信を行う入出力I/Fと、を有し、
前記処理部が、センサ本体に設けられ、
形式の異なる複数の照明部、形式の異なる複数のレンズ部、及び、形式の異なる複数の撮像部のなかから選択される、照明部とレンズ部と撮像部の任意の組み合わせを、前記センサ本体に組み付け可能であって、
前記照明部は、当該照明部に関する情報を記憶する不揮発性のメモリを有し、
前記レンズ部は、当該レンズ部に関する情報を記憶する不揮発性のメモリを有し、
前記撮像部は、当該撮像部に関する情報を記憶する不揮発性のメモリを有し、
前記処理部は、自発的に又は前記外部装置の要求に応じて、前記照明部のメモリ、前記レンズ部のメモリ、及び、前記撮像部のメモリのそれぞれから前記情報を読み出し、前記センサ本体に
現に組み付けられ
ている前記照明部、前記レンズ部、及び、前記撮像部の組み合わせを表すモジュール構成情報を生成し、前記モジュール構成情報を前記入出力I/Fを介して前記外部装置に送信及び/又は前記画像センサの表示器に表示可能である
ことを特徴とする画像センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場の製造ラインなどで利用される画像センサに関し、特に、複数のモジュールの組み合わせにより構成されるモジュラー型の画像センサに関する。
【背景技術】
【0002】
工場の製造ラインにおいては、製造物の検査や管理を自動化ないし省力化するために、画像センサと呼ばれるシステムが多用されている。従来は、カメラと画像処理装置とをケーブルで接続する構成が一般的であったが(特許文献1参照)、最近では、カメラと画像処理装置を一体化し、単一の装置で撮像から画像処理まで行えるようにした処理一体型画像センサも登場している。このような処理一体型画像センサは「スマートカメラ」とも呼ばれており、照明やレンズが一体となっているものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像センサで安定した検査を行うためには、撮像環境、検査対象や目的などに応じて、照明・レンズ・撮像素子の機種(種類)や仕様・性能を最適化することが望ましい。そこでスマートカメラを提供するメーカは、従来は、照明・レンズ・撮像素子など機種(種類)や仕様・性能を少しずつ変えた多数の製品をラインナップし、ユーザーが最適なスペックのものを選択できるようにしていた。
【0005】
ところが、工場のIoT化が加速する中でスマートカメラの適用範囲が拡大し、多様化するユーザーニーズを網羅するような製品バリエーションの提供が困難になってきている。また、商品競争の中で競合との差異化のためにそれぞれの顧客の嗜好性に合わせたマスカスタマイゼーションや季節限定商品の提供の拡大、スマートフォンに代表されるデジタル機器の商品のライフサイクルの短命化など、検査対象の変更が短いサイクルで入ることで検査に合わせて最適となるように照明・レンズなどを部分的に変更するニーズも増加している。そこで近年、照明、レンズ、撮像素子をそれぞれモジュール化し、ユーザー側で照明、レンズ、撮像素子を自由に組み合わせられるようにした、いわゆるモジュラー構造のスマートカメラが登場している。例えば、メーカー側で照明モジュール、レンズモジュール、撮像素子モジュールを5種類ずつ提供すれば、125通りの組み合わせが可能となり、ユーザーはそのなかから要求スペックにマッチする組み合わせを選択することができる。
【0006】
モジュラー構造は、メーカーにとっては製品バリエーションの削減、ユーザーにとっては選択肢や自由度の拡がり、というメリットがある。しかしその一方で、次のようなデメリットが懸念される。従来は、工場での不具合対策や保全のために、画像センサ単位で設備を管理していれば足りたものが、モジュラー構造の画像センサを導入した場合には、各々の画像センサがどのようなモジュールの組み合わせで構成されており、それぞれのモジュールがどのようなモジュール(製造年月日、導入時期、使用時間、他設備からの流用の履歴、詳細スペックなど)であるかを把握する要求が拡大していくことが予見され、設備の管理や保守・保全が複雑化するおそれがある。通常、工場内には多数の画像センサが設置される(例えば大規模な工場になると、その数は数百から数千台にのぼる)ため、管理や保守・保全の手間の増大は深刻な問題となる。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、モジュラー構造の画像センサの管理を容易化するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一側面は、撮像系と、前記撮像系により取得される画像を用いた処理を実行する処理部と、を有する画像センサであって、前記撮像系は、モジュール化された複数の構成要素を組み合わせることにより構成され、前記複数の構成要素は、それぞれ、不揮発性のメモリを有しており、前記処理部は、前記複数の構成要素のそれぞれの前記メモリに対し、情報の読み込み及び/又は書き込みが可能であることを特徴とする画像センサを提供する。
【0009】
この構成によれば、構成要素のそれぞれが不揮発性のメモリを有しているため、各構成要素に関する固有の情報などをその構成要素自身のメモリ内に記憶させることができる。そうすることで、構成要素(ハードウェア)とその固有情報(ソフトウェア)を紐づけて取り扱うことが可能になるとともに、処理部が構成要素のメモリ内の情報を参照することによって、撮像系を構成している構成要素の組み合わせなどをソフトウェア的に簡単にチェックできるようになる。したがって、モジュラー構造の画像センサの管理を容易化することができる。
【0010】
前記メモリは、前記構成要素の形式を特定するための情報(形式情報)を少なくとも記憶しているとよい。このような形式情報を参照することによって、撮像系を構成している各構成要素の形式を簡単に特定することができるようになる。形式情報としては、例えば、カタログ上の形式名称や形式番号、あるいはそれらを符号化した情報などを用いることができる。
【0011】
前記メモリは、前記構成要素の個体を特定するための情報(個体情報)を少なくとも記憶しているとよい、このような個体情報を参照することによって、撮像系を構成している各構成要素の個体を簡単に特定することができるようになる。個体情報としては、例えば、製品のシリアル番号やロット番号、あるいはそれらを符号化した情報などを用いることができる。
【0012】
前記メモリは、前記構成要素の性能及び/又は機能を示す情報を少なくとも記憶しているとよい。このような情報を参照することによって、撮像系を構成している各構成要素の性能や機能を簡単に特定することができるようになる。
【0013】
前記メモリは、前記画像センサのユーザーによる書き換えができない第1の記憶領域と、前記ユーザーによる書き換えが可能な第2の記憶領域と、を有するとよい。このようにアクセス権限を異ならせた記憶領域を設けることにより、メモリの有用性を向上することができる。例えば、形式情報、個体情報、性能や機能のような不変の情報(書き換えられてはならない情報)については、メーカーなどのサプライヤーが構成要素の出荷時などに第1の記憶領域に書き込み、ユーザーには参照(読み込み)のみ許可するとよい。その一方で、第2の記憶領域のようにユーザーが自由に利用できる記憶領域を用意しておくことにより、例えば、構成要素の購入日、点検日、設置場所のような、ユーザー独自の管理項目の情報を構成要素(ハードウェア)と一緒に保管・管理することができる。
【0014】
前記複数の構成要素は、被写体を照明する照明部と、前記被写体の光学像を結像するレンズ部と、前記光学像に基づき前記画像を生成する撮像部と、を含むとよい。照明部・レンズ部・撮像部の組み合わせを変えることで、さまざまなスペックの撮像系を構成可能となるからである。
【0015】
本発明の第二側面は、被写体を照明する照明部と、前記被写体の光学像を結像するレンズ部と、前記光学像に基づき画像を生成する撮像部と、前記画像を用いた処理を実行する処理部と、を有する画像センサであって、前記処理部が、センサ本体に設けられ、形式の異なる複数の照明部、形式の異なる複数のレンズ部、及び、形式の異なる複数の撮像部のなかから選択される、照明部とレンズ部と撮像部の任意の組み合わせを、前記センサ本体に組み付け可能であって、前記照明部は、当該照明部に関する情報を記憶する不揮発性のメモリを有し、前記レンズ部は、当該レンズ部に関する情報を記憶する不揮発性のメモリを有し、前記撮像部は、当該撮像部に関する情報を記憶する不揮発性のメモリを有し、前記処理部は、前記照明部のメモリ、前記レンズ部のメモリ、及び、前記撮像部のメモリのそれぞれから読み込んだ前記情報に基づいて、前記センサ本体に組み付けられた前記照明部、前記レンズ部、及び、前記撮像部の組み合わせを特定することを特徴とする画像センサを提供する。
【0016】
この構成によれば、画像センサ(処理部)自身が、画像センサを構成する照明部、レンズ部、撮像部の組み合わせを容易にチェックすることができる。したがって、モジュラー構造の画像センサの管理を容易化することができる。
【0017】
前記処理部は、前記センサ本体に組み付けられた前記照明部、前記レンズ部、及び、前記撮像部の組み合わせを表す情報を、外部装置に出力するとよい。画像センサがこのような出力機能を有することにより、外部装置(例えば、管理用のコンピュータ、PLCなど)が画像センサのモジュール構成を容易に収集できる。したがって、例えば、管理用のコンピュータにより工場内に設置された多数の画像センサの一括管理を行う、PLCが画像センサのモジュール構成に応じて制御内容を変える、などを容易に実現できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、モジュラー構造の画像センサの管理を容易化するための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1(A)は、画像センサの外観を模式的に示す斜視図であり、
図1(B)は、画像センサを分解した状態を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、画像センサの構成を模式的に示すブロック図である。
【
図3】
図3は、画像センサの使用例を示す図である。
【
図4】
図4は、モジュール構成情報の収集例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<適用例>
まず、本発明が適用される場面の一例について説明する。
図1(A)及び
図1(B)は、本発明の実施形態に係る画像センサの一例を模式的に示している。
【0021】
本実施形態の画像センサ1は、いわゆるモジュラー構造の処理一体型画像センサである。撮像系の構成要素である、照明部10、レンズ部11、及び、撮像部12のそれぞれはモジュール化されており、ユーザーは画像センサ1の用途などに応じて、各モジュールを任意に組み合わせることができる。各モジュール(照明部10、レンズ部11、撮像部12)には不揮発性のメモリ100、110、120が設けられている。このメモリ100、110、120には、例えば工場出荷時などに形式情報や個体情報などが格納される。また、メモリ100、110、120に対し、ユーザーは任意の情報(ユーザーデータ)を書き込むことが可能である。センサ本体16の処理部14(
図2参照)は、各モジュールのメモリ100、110、120に対し、情報の読み込み及び/又は書き込みを行うこ
とができる。
【0022】
このように、モジュール毎に不揮発性のメモリを設け、その中にモジュールに関する固有の情報を格納し参照できるようにしたことで、例えば、画像センサ1(処理部14)自身あるいは外部のコンピュータなどにより、画像センサ1を構成するモジュールの組み合わせを簡単にチェックできるようになる。したがって、モジュラー構造の画像センサの管理を容易化することができる。
【0023】
<画像センサの構成>
図1(A)~
図3を参照して、本発明の実施形態に係る画像センサを説明する。
図1(A)は、画像センサの外観を模式的に示す斜視図であり、
図1(B)は、画像センサを分解した状態を模式的に示す斜視図である。
図2は、画像センサの構成を模式的に示すブロック図である。
図3は、画像センサの使用例を示す図である。
【0024】
画像センサ1は、例えば工場の製造ラインなどに設置され、画像を利用したさまざまな処理に利用される装置である。画像センサ1は、視覚センサ(vision sensor)や視覚シ
ステム(vision system)などとも呼ばれる。本実施形態の画像センサ1は、撮像系と処
理系とが一体となった処理一体型の画像センサ(いわゆるスマートカメラ)である。
【0025】
この画像センサ1は、撮像系として、照明部10、レンズ部11、撮像部12を備える。照明部10は、画像センサ1の視野内の被写体(検査対象など)を照明するデバイスであり、例えば、レンズ部11の周囲に配列された複数の発光素子(LEDなど)により構成される。レンズ部11は、被写体の光学像を撮像部12に結像する光学系であり、例えば、ピント調整、絞り、ズームなどの機能を有する光学系が用いられる。撮像部12は、光電変換によって画像データを生成・出力するデバイスであり、例えば、CCDやCMOSなどの撮像素子により構成される。
【0026】
また、画像センサ1は、処理系として、処理部14、入出力I/F15を備える。処理部14は、撮像系から取り込まれた画像データに対する画像処理(例えば、前処理、特徴量抽出など)、画像処理の結果に基づく各種処理(例えば、検査、文字認識、個体識別など)、入出力I/F15を介した外部装置とのデータ送受信、外部装置へ出力するデータの生成、外部装置から受信したデータに対する処理、撮像系や入出力I/F15の制御などを行うデバイスである。処理部14は、例えば、プロセッサ及びメモリなどで構成され、メモリに格納されたプログラムをプロセッサが読み込み、実行することによって、上述した各種処理が実現される。なお、処理部14の機能のうちの一部又は全部を、ASICやFPGAなどで実現してもよいし、外部の装置によって提供されてもよい。入出力I/F15は、外部装置との間でデータの送受信を行う通信インターフェイスである。例えば、入出力I/F15は、PLCや管理用端末(コンピュータ)と接続するためのネットワークインターフェイス、他のセンサやコントローラと接続するためのパラレルインターフェイスなどを含むとよい。
【0027】
本実施形態の画像センサ1は、モジュラー構造を有しており、
図1(B)に示すように、センサ本体16に対して、照明部10・レンズ部11・撮像部12の3つのモジュールを選択して組み付ける構造となっている。照明部に関しては選択せずに使用することも可能である。各々のモジュールは、例えば、ネジ締結などによりセンサ本体16に固定され、ユーザー側で自由にモジュールの取り付け/取り外しが可能である。
【0028】
照明部(照明モジュール)10としては、例えば、白色照明/赤色照明/赤外光照明のように照明光の波長が異なるものや、発光素子の配置や光量や発光パターンが異なるものなど、複数種類のモジュールが用意される。また、1つのモジュールに赤、青、緑、赤外
などの複数種類の光源(LEDなど)を設け、各光源の発光を制御することで、赤、青、緑、赤外以外の波長の光(例えば白、紫、ピンクなど)を照射可能な照明モジュールを用いてもよい。この種の照明はマルチカラー照明などと呼ばれる。レンズ部(レンズモジュール)11としては、例えば、手動操作あるいはアクチュエータなどを用いて自動でピントを調整できる機能を有するモジュール、狭視野/広視野のように視野が異なるモジュール、ズーム機能をもつモジュールなど、複数種類のモジュールが用意される。また、撮像部12としては、例えば、画素数、フレームレート、シャッター方式(ローリングシャッター/グローバルシャッター)などが異なる、複数種類のモジュールが用意される。ユーザーは、画像センサ1の用途や要求スペックにあわせて、適切なモジュールを適宜組み合わせることが可能である。
【0029】
各々のモジュールには、不揮発性のメモリが内蔵されている。具体的には、
図2に示すように、照明部10には照明モジュールメモリ100が、レンズ部11にはレンズモジュールメモリ110が、撮像部12には撮像モジュールメモリ120が、それぞれ内蔵されている。以下、これらを総称して「モジュールメモリ」と呼ぶ。モジュールメモリとしては、例えば、EPROM、EEPROM、FeRAM、MRAMなどを用いることができ、データ容量は任意である。本実施形態では、数キロバイト~数十メガバイト程度の容量をもつEEPROMを用いる。
【0030】
モジュールメモリには、「メーカー領域」と「ユーザー領域」の2つの書き込み領域が設けられるとよい。メーカー領域は、メーカーがモジュールの出荷時にデータを書き込むための領域である。ユーザーはメーカー領域内のデータを読み取ることはできるが、メーカー領域内のデータを書き換えたり削除したりすることはできない。メーカー領域には、例えば、モジュールの形式情報(形式名称、形式番号など)、個体情報(シリアル番号、ロット番号、ハードウェアバージョンなど)が格納される。また、モジュールを駆動する際の設定値や補正パラメータや、モジュールの個体ばらつき情報(例えば工場出荷時の検査で測定したデータ)を、モジュールメモリに格納してもよい。例えば、照明部の場合であれば、照明制御設定値(制御方式、電圧、Duty、遅延、ブロック点灯の方法など)や、光源ごとの明るさ・色味のばらつき、光軸情報などを格納してもよい。また、レンズ部の場合であれば、レンズ/フォーカス設定値(フォーカス初期基準値など)、AF機能の有無、焦点距離、画角、F値、歪み量、光軸の情報などを格納してもよい。また、撮像部の場合であれば、カメラ設定値(撮像素子の設定初期値など)、画素欠陥補正、縦縞補正データ、ホワイトバランス初期値などを格納してもよい。一方、ユーザー領域は、ユーザーが書き換え可能な領域である。ユーザーは、ユーザー領域を自由に利用することができる。例えば、画像センサの設置場所(工場、製造ライン)を特定する情報、モジュールの購入日やメンテナンス日の情報、モジュールの使用状況など、どのような情報を格納してもよい。なお、ここで挙げたものはあくまで一例であり、画像センサ1の管理や運用に際して有用な情報であればどのようなデータをモジュールメモリに格納してもよい。
【0031】
画像センサ1は、さまざまな用途に利用できる。例えば、検査対象の画像の記録、形状の認識、エッジの検出や幅・本数の計測、面積の計測、色特徴の取得、ラベリングやセグメンテーション、物体認識、バーコードや2次元コードの読み取り、OCR、個体識別などが挙げられる。
図3は、コンベア30上を流れる製造物31を画像センサ1で撮像し、製造物31の外観検査を行う例を示している。
【0032】
<モジュールメモリの使用例>
本実施形態の画像センサ1では、モジュール(構成要素)のそれぞれが不揮発性のメモリを有しているため、各モジュールに関する固有の情報などをそのモジュール自身のメモリ内に記憶させることができる。これにより、モジュール(ハードウェア)とその固有情報(ソフトウェア)を紐づけて取り扱うことが可能になるとともに、処理部14が各モジ
ュールのメモリ内の情報を参照することによって、画像センサ1に組み付けられているモジュールの組み合わせなどをソフトウェア的に簡単にかつ間違いなくチェックできるようになる。したがって、モジュラー構造の画像センサ1の管理や運用を容易化することができる。以下、モジュールメモリの使用例をいくつか例示する。
【0033】
(1)モジュール構成の収集
図4に示すように、画像センサ1の起動時又は外部装置からの要求に応じて、処理部14が、照明部10のメモリ100、レンズ部11のメモリ110、撮像部12のメモリ120からそれぞれ情報を読み出し、それらの情報に基づいて、センサ本体16に組み付けられているモジュールの組み合わせを表すモジュール構成情報を生成し、処理部14内のメモリに記録する。処理部14は、自発的に(定期的に)又は外部装置からの要求に応じて、モジュール構成情報を外部装置に送信する。あるいは、画像センサ1が表示器を有している場合には、処理部14がモジュール構成情報を表示器に表示してもよい。このようなモジュール構成の収集機能を利用することによって、ユーザー(設備の管理者を含む)は稼働中の画像センサ1のモジュール構成を容易に収集し把握することができる。また、製造ラインに設置されている多数の画像センサのモジュール構成情報を自動で収集し、外部装置(管理用のコンピュータなど)において一元管理することも容易である。なお、モジュール構成情報の形式は問わない。例えば、処理部14は、各モジュールのメモリから読み出した情報をそのままモジュール構成情報として出力してもよいし、メモリから読み出した情報を使って生成した情報(例えば、読み出した複数の形式情報を組み合わせて1つの統合形式の情報を生成してもよいし、使用開始日から現在の日付の差分をとることで期間を示す情報を生成するなどしてもよい)をモジュール構成情報として出力してもよい。また、モジュール構成情報には、モジュールの組み合わせを表す情報以外の情報が含まれていてもよい。
【0034】
(2)不具合発生時の原因特定
外部装置(管理用のコンピュータなど)において、製造ラインに設置されている全ての画像センサのモジュール構成情報を収集することにより、例えば、使用中の画像センサのモジュール構成、設置場所(設置されている工程)、各モジュールの形式やバージョン、導入時期などを一元管理することができる。したがって、例えば製造ラインにおいて何らかの不具合が発生した場合に、モジュール構成情報を基に、問題のありそうな画像センサの特定、原因(モジュールの劣化、古いバージョンなど)の究明や対策(モジュールの修理・交換、バージョンアップなど)の立案などを、迅速に行うことができる。
【0035】
(3)メンテナンス
モジュールの使用開始日や使用状況の情報をモジュールメモリに記録しておき、処理部14又は外部装置がそれらの情報を基に、モジュールの劣化や寿命を予測するとよい。これにより、モジュールの点検・交換時期の管理が容易になり、計画保全に役立てることができる。また、モジュールメモリに校正日の情報を記録しておき、処理部14又は外部装置が、各モジュールの校正(メンテナンス)の要否をチェックしたり、校正時期の通知などを自動で行ってもよい。
【0036】
(4)モジュール構成表の自動作成
外部装置が、収集したモジュール構成情報に基づいて、製造ラインに設置されている画像センサのモジュール構成の一覧表を自動作成してもよい。このような一覧表は、例えば、製造ラインの稼働設備を把握する目的に利用できる他、現在の製造ラインと同一構成のコピーラインを新規に立ち上げる際に、必要な画像センサ及びモジュールを購入するための発注情報として利用したりすることもできる。
【0037】
<その他>
上記実施形態は、本発明の構成例を例示的に説明するものに過ぎない。本発明は上記の具体的な形態には限定されることはなく、その技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、照明部、レンズ部、撮像部の3つのモジュールを例示したが、画像センサに組み付ける構成要素はこれらに限られない。例えば、光学フィルタ、入出力I/F、処理部(プロセッサやメモリ)、表示器などをモジュール化してもよい。なお、スマートカメラの提供形態(納品形態)として、モジュールを個別に提供し、ユーザー側で組み立てを行う形態と、センサ本体に照明モジュールやレンズモジュールを組み込んだ状態で提供する形態とがある。後者の提供形態の場合、ユーザー側での光学条件の調整などが不要となるため、より簡単に画像センサの導入を行うことができるという利点がある。
【0038】
<付記>
(1) 撮像系(10,11,12)と、前記撮像系(10,11,12)により取得される画像を用いた処理を実行する処理部(14)と、を有する画像センサ(1)であって、
前記撮像系は、モジュール化された複数の構成要素(10,11,12)を組み合わせることにより構成され、
前記複数の構成要素(10,11,12)は、それぞれ、不揮発性のメモリ(100,110,120)を有しており、
前記処理部(14)は、前記複数の構成要素のそれぞれの前記メモリ(100,110,120)に対し、情報の読み込み及び/又は書き込みが可能であることを特徴とする画像センサ。
【0039】
(2) 被写体を照明する照明部(10)と、
前記被写体の光学像を結像するレンズ部(11)と、
前記光学像に基づき画像を生成する撮像部(12)と、
前記画像を用いた処理を実行する処理部(14)と、を有する画像センサ(1)であって、
前記処理部(14)が、センサ本体(16)に設けられ、
形式の異なる複数の照明部、形式の異なる複数のレンズ部、及び、形式の異なる複数の撮像部のなかから選択される、照明部(10)とレンズ部(11)と撮像部(12)の任意の組み合わせを、前記センサ本体(16)に組み付け可能であって、
前記照明部(10)は、当該照明部(10)に関する情報を記憶する不揮発性のメモリ(100)を有し、
前記レンズ部(11)は、当該レンズ部(11)に関する情報を記憶する不揮発性のメモリ(110)を有し、
前記撮像部(12)は、当該撮像部(12)に関する情報を記憶する不揮発性のメモリ(120)を有し、
前記処理部(14)は、前記照明部のメモリ(100)、前記レンズ部のメモリ(110)、及び、前記撮像部のメモリ(120)のそれぞれから読み込んだ前記情報に基づいて、前記センサ本体(16)に組み付けられた前記照明部(10)、前記レンズ部(11)、及び、前記撮像部(12)の組み合わせを特定する
ことを特徴とする画像センサ(1)。
【符号の説明】
【0040】
1:画像センサ
10:照明部
11:レンズ部
12:撮像部
14:処理部
15:入出力I/F
16:センサ本体
30:コンベア
31:製造物
100:照明モジュールメモリ
110:レンズモジュールメモリ
120:撮像モジュールメモリ