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特許7127378画像処理装置、自己診断方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】画像処理装置、自己診断方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20220823BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
H04N1/00 002A
H04N1/00 127A
B41J29/38
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2018115812
(22)【出願日】2018-06-19
(65)【公開番号】P2019220806
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117651
【弁理士】
【氏名又は名称】高垣 泰志
(72)【発明者】
【氏名】内野 智史
【審査官】花田 尚樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-269498(JP,A)
【文献】特開2005-205723(JP,A)
【文献】特開2008-182650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
B41J 29/00 -29/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常ジョブモードと再現確認モードとを有する画像処理装置であって、
ジョブを受け付けるジョブ受付手段と、
前記通常ジョブモードにおいて、前記ジョブ受付手段によって受け付けられたジョブの実行を制御する第1のジョブ制御手段と、
前記第1のジョブ制御手段によって実行されるジョブに関するジョブ詳細情報を生成し、前記第1のジョブ制御手段によるジョブの実行途中でトラブルが発生した場合に該トラブルに対応するトラブルコードを前記ジョブ詳細情報に付加して管理するジョブ管理手段と、
前記ジョブ詳細情報にトラブルコードが付加されており、且つ、ユーザーにより使用されていない状態が一定時間以上継続することを条件として、前記通常ジョブモードから前記再現確認モードへ移行させるモード移行手段と、
前記再現確認モードにおいて、トラブルコードが付加されている前記ジョブ詳細情報に基づいて再現ジョブを生成し、該再現ジョブの実行を制御する第2のジョブ制御手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
通常ジョブモードと再現確認モードとを有する画像処理装置であって、
ユーザーが操作可能な操作入力手段と、
ジョブを受け付けるジョブ受付手段と、
前記通常ジョブモードにおいて、前記ジョブ受付手段によって受け付けられたジョブの実行を制御する第1のジョブ制御手段と、
前記第1のジョブ制御手段によって実行されるジョブに関するジョブ詳細情報を生成し、前記第1のジョブ制御手段によるジョブの実行途中でトラブルが発生した場合に該トラブルに対応するトラブルコードを前記ジョブ詳細情報に付加して管理するジョブ管理手段と、
前記ジョブ詳細情報にトラブルコードが付加されており、且つ、前記操作入力手段に対する操作が所定時間以上検知されていない場合に、前記通常ジョブモードから前記再現確認モードへ移行させるモード移行手段と、
前記再現確認モードにおいて、トラブルコードが付加されている前記ジョブ詳細情報に基づいて再現ジョブを生成し、該再現ジョブの実行を制御する第2のジョブ制御手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
前記モード移行手段は、前記再現確認モードにおいて前記操作入力手段に対する操作が検知された場合、前記再現確認モードから前記通常ジョブモードへ移行させることを特徴とする請求項に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第2のジョブ制御手段は、前記再現確認モードにおいて、前記ジョブ詳細情報に付加されているトラブルコードと同じトラブルの発生が検知されるまで前記再現ジョブの実行を繰り返すことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記第2のジョブ制御手段は、前記再現ジョブの実行中に、前記ジョブ詳細情報に付加されているトラブルコードと同じトラブルの発生が検知されなかった場合、前回と同じ条件で前記再現ジョブを再度実行することを特徴とする請求項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記第2のジョブ制御手段は、前記再現ジョブの実行中に、前記ジョブ詳細情報に付加されているトラブルコードと同じトラブルの発生が検知されなかった場合、前回と異なる条件で前記再現ジョブを再度実行することを特徴とする請求項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記第2のジョブ制御手段は、前記ジョブ詳細情報に付加されているトラブルコードに基づいて前記再現ジョブを実行する際の条件を決定することを特徴とする請求項又はに記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記第2のジョブ制御手段は、前記再現ジョブの実行中に、前記ジョブ詳細情報に付加されているトラブルコードと同じトラブルの発生が検知された場合、当該再現ジョブの実行時の条件をトラブル再現情報として管理することを特徴とする請求項乃至のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記第1のジョブ制御手段は、前記通常ジョブモードにおいてジョブの実行を制御するとき、前記トラブル再現情報に記録されている条件とは異なる条件でジョブの実行を制御することを特徴とする請求項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記再現ジョブの実行中におけるログ情報を生成するログ情報生成手段と、
前記ログ情報生成手段によって取得されるログ情報を外部サーバーへ送信するログ情報送信手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記ログ情報生成手段は、前記通常ジョブモードにおいて前記第1のジョブ制御手段によるジョブの実行が行われるときにもログ情報を生成することが可能であり、前記再現確認モードのときには、前記通常ジョブモードのときよりも詳細なログ情報を生成することを特徴とする請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記ジョブ管理手段は、ジョブの実行途中でトラブルが発生することなく、前記第1のジョブ制御手段によるジョブの実行が終了した場合、当該ジョブに対応する前記ジョブ詳細情報を破棄することを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記再現ジョブの実行中にトラブルが発生した場合に自動的に再起動処理を行ってトラブルから復帰させる復帰手段、
をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記ジョブ詳細情報には、ジョブの実行時に利用される画像データが含まれており、
前記第2のジョブ制御手段は、前記ジョブ詳細情報に含まれる画像データを用いて前記再現ジョブの実行を制御することを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項15】
原稿を読み取って画像データを生成するスキャナ部と、
前記スキャナ部を駆動して前記スキャナ部から画像データを取得するスキャナ制御部と、
画像データに対する画像処理を行う画像処理手段と、
をさらに備え、
前記第2のジョブ制御手段は、前記再現ジョブが原稿の読み取り動作を伴うジョブである場合、前記スキャナ制御部から出力される画像データを、前記ジョブ詳細情報に含まれる画像データに差し替えて前記画像処理手段による画像処理を行わせることを特徴とする請求項14に記載の画像処理装置。
【請求項16】
印刷出力を行うプリンタ部と、
入力する画像データに基づいて前記プリンタ部を駆動させるプリント制御部と、
をさらに備え、
前記第2のジョブ制御手段は、前記再現ジョブが印刷出力を伴うジョブである場合、前記再現ジョブの実行中において前記プリント制御部に画像データを出力しないことを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項17】
トラブルの発生箇所とトラブルコードとを対応付けたテーブル情報を記憶する記憶手段、
をさらに備え、
前記第2のジョブ制御手段は、前記ジョブ詳細情報に付加されているトラブルコードに基づいて前記テーブル情報を参照することによりトラブルの発生箇所を特定し、前記再現ジョブの実行中において、特定したトラブルの発生箇所の動作が終了したことを検知した場合に前記再現ジョブの実行を終了させることを特徴とする請求項1乃至16のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項18】
前記モード移行手段は、前記再現確認モードにおいて前記ジョブ受付手段によりジョブが受け付けられた場合、前記再現確認モードから前記通常ジョブモードへ移行させることを特徴とする請求項1乃至17のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項19】
前記モード移行手段は、前記ジョブ詳細情報に付加されているトラブルコードが所定のトラブルコードである場合、前記再現確認モードへ移行させないことを特徴とする請求項1乃至18のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項20】
画像処理装置における自己診断方法であって、
ジョブを受け付けるジョブ受付ステップと、
通常ジョブモードのときに、前記ジョブ受付ステップによって受け付けられたジョブの実行を制御する第1のジョブ制御ステップと、
前記第1のジョブ制御ステップによって実行されるジョブに関するジョブ詳細情報を生成し、前記第1のジョブ制御ステップによるジョブの実行途中でトラブルが発生した場合に該トラブルに対応するトラブルコードを前記ジョブ詳細情報に付加して管理するジョブ管理ステップと、
前記ジョブ詳細情報にトラブルコードが付加されており、且つ、ユーザーにより使用されていない状態が一定時間以上継続することを条件として、前記通常ジョブモードから再現確認モードへ移行させるモード移行ステップと、
前記再現確認モードのときに、トラブルコードが付加されている前記ジョブ詳細情報に基づいて再現ジョブを生成し、該再現ジョブの実行を制御する第2のジョブ制御ステップと、
を有することを特徴とする自己診断方法。
【請求項21】
通常ジョブモードと再現確認モードとを有する画像処理装置において実行されるプログラムであって、前記画像処理装置を、
ジョブを受け付けるジョブ受付手段、
前記通常ジョブモードにおいて、前記ジョブ受付手段によって受け付けられたジョブの実行を制御する第1のジョブ制御手段、
前記第1のジョブ制御手段によって実行されるジョブに関するジョブ詳細情報を生成し、前記第1のジョブ制御手段によるジョブの実行途中でトラブルが発生した場合に該トラブルに対応するトラブルコードを前記ジョブ詳細情報に付加して管理するジョブ管理手段、
前記ジョブ詳細情報にトラブルコードが付加されており、且つ、ユーザーにより使用されていない状態が一定時間以上継続することを条件として、前記通常ジョブモードから前記再現確認モードへ移行させるモード移行手段、及び、
前記再現確認モードにおいて、トラブルコードが付加されている前記ジョブ詳細情報に基づいて再現ジョブを生成し、該再現ジョブの実行を制御する第2のジョブ制御手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、自己診断方法及びプログラムに関し、特に画像処理装置においてトラブルが発生した場合の自己診断技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、MFP(Multifunction Peripherals)などの画像処理装置は、コピージョブなどのジョブの実行中にトラブルが発生した場合にジョブに関する情報を不揮発性の記憶領域に保存しておき、後にサービスマンがその情報を参照できるようにしたものが知られている(例えば特許文献1)。この従来技術において、トラブルの発生時に保存される情報は、例えば、コピーモード(両面又は片面)、倍率データ、使用カセットなどに関する情報である。しかし、これらの情報は、トラブルの発生原因を解明するための有益な情報とはならない。
【0003】
一方、従来、顧客環境で発生したトラブルの調査において自動的にトラブルを再現できるようにした再現システムも提案されている(例えば特許文献2)。この再現システムは、ユーザー先のハードウェアとソフトウェアの構成情報をハードウェアエミュレータが解釈可能な形式に変換して構成ファイルとして出力すると共に、ユーザー先で取得されたログ情報からハードエラー検出時に実行していた内部ログルーチンを含むハードエラーの情報をシナリオファイルとして出力する。そして構成ファイルに基づいてハードウェアエミュレータを起動し、シナリオファイルに基づいて開発元ハード管理ソフトへの操作指示と、ハードウェアエミュレータへのハードエラー発生指示を行うようにしている。
【0004】
しかし、従来の再現システムは、ユーザー先のハードウェアとソフトウェアの構成情報に基づいてハードウェアエミュレータを動作させることにより、ハードウェアエミュレータ上でトラブルの発生原因を再現しようとするものである。つまり、従来の再現システムは、実際にトラブルが発生した装置を用いてトラブルの発生原因を再現するものではない。そのため、従来の再現システムは、顧客環境に設置されている画像処理装置において発生する固有のトラブルであってその発生頻度が低いトラブルを再現することが困難である。特に、トラブルが顧客環境に固有の外的要因(例えば温度、湿度、電源状態、周辺の静電環境など)によって発生した場合には、従来の再現システムでトラブルの原因を究明することができない。
【0005】
ところで、画像処理装置においてトラブルが発生した場合であっても、画像処理装置を再起動することによりトラブルが解消し、ジョブを実行可能な状態に復帰することがある。そのため、ユーザーは、トラブルの原因が解明されていない場合であっても、画像処理装置を再起動させることにより、画像処理装置を継続して使用することができる。そのような場合、トラブルの原因を究明するために画像処理装置を長時間占有してしまうと、ユーザーが画像処理装置を使用することができなくなり、利便性が低下するという問題がある
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平5-197234号公報
【文献】特開2010-256997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、利便性を低下させることなく、顧客環境に設置されている状態でトラブルの発生を再現することにより、トラブルの原因を早期に究明できるようにした画像処理装置、自己診断方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、通常ジョブモードと再現確認モードとを有する画像処理装置であって、ジョブを受け付けるジョブ受付手段と、前記通常ジョブモードにおいて、前記ジョブ受付手段によって受け付けられたジョブの実行を制御する第1のジョブ制御手段と、前記第1のジョブ制御手段によって実行されるジョブに関するジョブ詳細情報を生成し、前記第1のジョブ制御手段によるジョブの実行途中でトラブルが発生した場合に該トラブルに対応するトラブルコードを前記ジョブ詳細情報に付加して管理するジョブ管理手段と、前記ジョブ詳細情報にトラブルコードが付加されており、且つ、ユーザーにより使用されていない状態が一定時間以上継続することを条件として、前記通常ジョブモードから前記再現確認モードへ移行させるモード移行手段と、前記再現確認モードにおいて、トラブルコードが付加されている前記ジョブ詳細情報に基づいて再現ジョブを生成し、該再現ジョブの実行を制御する第2のジョブ制御手段と、を備えることを特徴とする構成である。
請求項2に係る発明は、通常ジョブモードと再現確認モードとを有する画像処理装置であって、ユーザーが操作可能な操作入力手段と、ジョブを受け付けるジョブ受付手段と、前記通常ジョブモードにおいて、前記ジョブ受付手段によって受け付けられたジョブの実行を制御する第1のジョブ制御手段と、前記第1のジョブ制御手段によって実行されるジョブに関するジョブ詳細情報を生成し、前記第1のジョブ制御手段によるジョブの実行途中でトラブルが発生した場合に該トラブルに対応するトラブルコードを前記ジョブ詳細情報に付加して管理するジョブ管理手段と、前記ジョブ詳細情報にトラブルコードが付加されており、且つ、前記操作入力手段に対する操作が所定時間以上検知されていない場合に、前記通常ジョブモードから前記再現確認モードへ移行させるモード移行手段と、前記再現確認モードにおいて、トラブルコードが付加されている前記ジョブ詳細情報に基づいて再現ジョブを生成し、該再現ジョブの実行を制御する第2のジョブ制御手段と、を備えることを特徴とする構成である。
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の画像処理装置において、前記モード移行手段は、前記再現確認モードにおいて前記操作入力手段に対する操作が検知された場合、前記再現確認モードから前記通常ジョブモードへ移行させることを特徴とする構成である。
【0009】
請求項に係る発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の画像処理装置において、前記第2のジョブ制御手段は、前記再現確認モードにおいて、前記ジョブ詳細情報に付加されているトラブルコードと同じトラブルの発生が検知されるまで前記再現ジョブの実行を繰り返すことを特徴とする構成である。
【0010】
請求項に係る発明は、請求項に記載の画像処理装置において、前記第2のジョブ制御手段は、前記再現ジョブの実行中に、前記ジョブ詳細情報に付加されているトラブルコードと同じトラブルの発生が検知されなかった場合、前回と同じ条件で前記再現ジョブを再度実行することを特徴とする構成である。
【0011】
請求項に係る発明は、請求項に記載の画像処理装置において、前記第2のジョブ制御手段は、前記再現ジョブの実行中に、前記ジョブ詳細情報に付加されているトラブルコードと同じトラブルの発生が検知されなかった場合、前回と異なる条件で前記再現ジョブを再度実行することを特徴とする構成である。
【0012】
請求項に係る発明は、請求項又はに記載の画像処理装置において、前記第2のジョブ制御手段は、前記ジョブ詳細情報に付加されているトラブルコードに基づいて前記再現ジョブを実行する際の条件を決定することを特徴とする構成である。
【0013】
請求項に係る発明は、請求項乃至のいずれかに記載の画像処理装置において、前記第2のジョブ制御手段は、前記再現ジョブの実行中に、前記ジョブ詳細情報に付加されているトラブルコードと同じトラブルの発生が検知された場合、当該再現ジョブの実行時の条件をトラブル再現情報として管理することを特徴とする構成である。
【0014】
請求項に係る発明は、請求項に記載の画像処理装置において、前記第1のジョブ制御手段は、前記通常ジョブモードにおいてジョブの実行を制御するとき、前記トラブル再現情報に記録されている条件とは異なる条件でジョブの実行を制御することを特徴とする構成である。
【0015】
請求項10に係る発明は、請求項1乃至のいずれかに記載の画像処理装置において、前記再現ジョブの実行中におけるログ情報を生成するログ情報生成手段と、前記ログ情報生成手段によって取得されるログ情報を外部サーバーへ送信するログ情報送信手段と、をさらに備えることを特徴とする構成である。
【0016】
請求項11に係る発明は、請求項10に記載の画像処理装置において、前記ログ情報生成手段は、前記通常ジョブモードにおいて前記第1のジョブ制御手段によるジョブの実行が行われるときにもログ情報を生成することが可能であり、前記再現確認モードのときには、前記通常ジョブモードのときよりも詳細なログ情報を生成することを特徴とする構成である。
【0017】
請求項12に係る発明は、請求項1乃至11のいずれかに記載の画像処理装置において、前記ジョブ管理手段は、ジョブの実行途中でトラブルが発生することなく、前記第1のジョブ制御手段によるジョブの実行が終了した場合、当該ジョブに対応する前記ジョブ詳細情報を破棄することを特徴とする構成である。
【0018】
請求項13に係る発明は、請求項1乃至12のいずれかに記載の画像処理装置において、前記再現ジョブの実行中にトラブルが発生した場合に自動的に再起動処理を行ってトラブルから復帰させる復帰手段、をさらに備えることを特徴とする構成である。
【0019】
請求項14に係る発明は、請求項1乃至13のいずれかに記載の画像処理装置において、前記ジョブ詳細情報には、ジョブの実行時に利用される画像データが含まれており、前記第2のジョブ制御手段は、前記ジョブ詳細情報に含まれる画像データを用いて前記再現ジョブの実行を制御することを特徴とする構成である。
【0020】
請求項15に係る発明は、請求項14に記載の画像処理装置において、原稿を読み取って画像データを生成するスキャナ部と、前記スキャナ部を駆動して前記スキャナ部から画像データを取得するスキャナ制御部と、画像データに対する画像処理を行う画像処理手段と、をさらに備え、前記第2のジョブ制御手段は、前記再現ジョブが原稿の読み取り動作を伴うジョブである場合、前記スキャナ制御部から出力される画像データを、前記ジョブ詳細情報に含まれる画像データに差し替えて前記画像処理手段による画像処理を行わせることを特徴とする構成である。
【0021】
請求項16に係る発明は、請求項1乃至15のいずれかに記載の画像処理装置において、印刷出力を行うプリンタ部と、入力する画像データに基づいて前記プリンタ部を駆動させるプリント制御部と、をさらに備え、前記第2のジョブ制御手段は、前記再現ジョブが印刷出力を伴うジョブである場合、前記再現ジョブの実行中において前記プリント制御部に画像データを出力しないことを特徴とする構成である。
【0022】
請求項17に係る発明は、請求項1乃至16のいずれかに記載の画像処理装置において、トラブルの発生箇所とトラブルコードとを対応付けたテーブル情報を記憶する記憶手段、をさらに備え、前記第2のジョブ制御手段は、前記ジョブ詳細情報に付加されているトラブルコードに基づいて前記テーブル情報を参照することによりトラブルの発生箇所を特定し、前記再現ジョブの実行中において、特定したトラブルの発生箇所の動作が終了したことを検知した場合に前記再現ジョブの実行を終了させることを特徴とする構成である。
【0025】
請求項18に係る発明は、請求項1乃至17のいずれかに記載の画像処理装置において、前記モード移行手段は、前記再現確認モードにおいて前記ジョブ受付手段によりジョブが受け付けられた場合、前記再現確認モードから前記通常ジョブモードへ移行させることを特徴とする構成である。
【0026】
請求項19に係る発明は、請求項1乃至18のいずれかに記載の画像処理装置において、前記モード移行手段は、前記ジョブ詳細情報に付加されているトラブルコードが所定のトラブルコードである場合、前記再現確認モードへ移行させないことを特徴とする構成である。
【0027】
請求項20に係る発明は、画像処理装置における自己診断方法であって、ジョブを受け付けるジョブ受付ステップと、通常ジョブモードのときに、前記ジョブ受付ステップによって受け付けられたジョブの実行を制御する第1のジョブ制御ステップと、前記第1のジョブ制御ステップによって実行されるジョブに関するジョブ詳細情報を生成し、前記第1のジョブ制御ステップによるジョブの実行途中でトラブルが発生した場合に該トラブルに対応するトラブルコードを前記ジョブ詳細情報に付加して管理するジョブ管理ステップと、前記ジョブ詳細情報にトラブルコードが付加されており、且つ、ユーザーにより使用されていない状態が一定時間以上継続することを条件として、前記通常ジョブモードから再現確認モードへ移行させるモード移行ステップと、前記再現確認モードのときに、トラブルコードが付加されている前記ジョブ詳細情報に基づいて再現ジョブを生成し、該再現ジョブの実行を制御する第2のジョブ制御ステップと、を有することを特徴とする構成である。
【0028】
請求項21に係る発明は、通常ジョブモードと再現確認モードとを有する画像処理装置において実行されるプログラムであって、前記画像処理装置を、ジョブを受け付けるジョブ受付手段、前記通常ジョブモードにおいて、前記ジョブ受付手段によって受け付けられたジョブの実行を制御する第1のジョブ制御手段、前記第1のジョブ制御手段によって実行されるジョブに関するジョブ詳細情報を生成し、前記第1のジョブ制御手段によるジョブの実行途中でトラブルが発生した場合に該トラブルに対応するトラブルコードを前記ジョブ詳細情報に付加して管理するジョブ管理手段、前記ジョブ詳細情報にトラブルコードが付加されており、且つ、ユーザーにより使用されていない状態が一定時間以上継続することを条件として、前記通常ジョブモードから前記再現確認モードへ移行させるモード移行手段、及び、前記再現確認モードにおいて、トラブルコードが付加されている前記ジョブ詳細情報に基づいて再現ジョブを生成し、該再現ジョブの実行を制御する第2のジョブ制御手段、として機能させることを特徴とする構成である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、画像処理装置の利便性を低下させることなく、顧客環境に設置されている状態のままでトラブルの発生を再現することができ、トラブルの原因を早期に究明することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】画像処理システムの構成例を示す図である。
図2】画像処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】制御部の機能構成の一例を示す図である。
図4】ジョブ詳細情報の一例を示す図である。
図5】テーブル情報の一例を示す図である。
図6】再現ジョブ制御部の詳細な機能構成の一例を示すブロック図である。
図7】制御信号の入出力タイミングを示す図である。
図8】画像処理装置において行われる主たる処理手順の一例を示すフローチャートである。
図9】通常ジョブ制御処理の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。
図10】再現ジョブ実行処理の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に関する好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下に説明する実施形態において互いに共通する部材には同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態である画像処理システム1の構成例を示す図である。この画像処理システム1は、画像処理装置2とサーバー3とがネットワーク4を介して相互に通信可能に接続された構成である。画像処理装置2は、例えばユーザーのローカル環境に設置される。ネットワーク4は、LAN(Local Area Network)などのローカルネットワークやインターネットなどの広域ネットワークを含むネットワークである。サーバー3は、例えばインターネット上のクラウドなどに設置されるサーバーであり、世界各地に設置される画像処理装置2と通信を行うことが可能である。
【0033】
画像処理装置2は、MFPなどで構成される装置であり、スキャン機能、プリント機能、FAX機能などの複数の機能を有している。画像処理装置2は、ユーザーによって指定されたジョブの種類に対応する機能を動作させ、スキャンジョブやプリントジョブ、コピージョブ、FAXジョブなどの各種のジョブを実行する。例えば、画像処理装置2は、ネットワーク4を介してプリントジョブを受信すると、そのプリントジョブを実行することによって印刷出力を行う。
【0034】
画像処理装置2は、その動作モードとして、ユーザーによって投入されるジョブを実行する通常ジョブモードと、トラブルが発生した場合にそのトラブルの再現確認を行う再現確認モードとの2つのモードを有している。
【0035】
通常、画像処理装置2に電源が投入されると、画像処理装置2は、通常ジョブモードで起動する。この通常ジョブモードは、ユーザーによって投入される通常のジョブ(スキャンジョブ、プリントジョブ、コピージョブ、FAXジョブなど)を実行するモードである。通常ジョブモードにおいて、ユーザーによって投入されるジョブを受け付けると、画像処理装置2は、そのジョブに対応するジョブ詳細情報を生成し、不揮発の記憶領域に保存しておく。このジョブ詳細情報は、ジョブの実行中にトラブルが発生した場合、そのトラブルを再現させるために用いられる情報である。
【0036】
通常ジョブモードにおけるジョブの実行中にハードウェアエラーやソフトウェアエラーなどのトラブルが発生した場合、画像処理装置2は、そのトラブルに対応するトラブルコードをジョブ詳細情報に付加する。そして画像処理装置2は、通常ジョブモードにおいてユーザーにより使用されない状態が一定時間以上継続すると、ジョブ詳細情報にトラブルコードが付加されていることを条件として、動作モードを、再現確認モードへ移行させる。
【0037】
再現確認モードは、画像処理装置2において発生したトラブルを再現することによって自己診断を行うモードである。画像処理装置2は、再現確認モードへ移行すると、トラブルコードが付加されたジョブ詳細情報に基づきトラブル発生時に実行していたジョブに対応する再現ジョブを生成する。そして画像処理装置2は、再現確認モードにおいて、その再現ジョブを実行することにより、同じトラブルが再現することを確認する。
【0038】
ただし、再現ジョブを1回実行しただけでは、画像処理装置2において同じトラブルが再現するとは限らない。例えば、画像処理装置2が設置されている環境の外的要因(例えば温度、湿度、電源状態、周辺の静電環境など)によって偶発的に発生するような発生頻度の低いトラブルである場合、同一の外的要因が整わない限り、再現ジョブを実行しても同じトラブルが発生しない。そのため、画像処理装置2は、再現確認モードにおいて、同じトラブルが再現したことを確認することができるまで、再現ジョブを繰り返し実行する。画像処理装置2は、再現ジョブを繰り返し実行するとき、前回と同一の条件で再現ジョブを実行するようにしても良いし、また前回と異なる条件で再現ジョブを実行するようにしても良い。
【0039】
また画像処理装置2は、再現確認モードにおいて再現ジョブを実行するとき、詳細なログを記録してログ情報を生成する。そして画像処理装置2は、再現ジョブの実行によって同じトラブルが発生したことを確認することができた場合に、そのログ情報をサーバー3へ送信する。
【0040】
サーバー3は、各地に設置される画像処理装置2からトラブル発生時のログ情報を収集するサーバーである。サーバー3によって収集されるログ情報を解析することにより、画像処理装置2において低頻度で発生するトラブルの原因を解明することが可能になる。例えば、画像処理装置2における特定のハードウェアやソフトウェアにトラブルの発生原因があることが判明した場合、その原因を、ハードウェア設計やソフトウェア設計へフィードバックすることにより、ハードウェアやソフトウェアを改善することができるようになる。また画像処理装置2において低頻度で発生するトラブルの原因を解明することができれば、画像処理装置2の設置場所へサービスマンを派遣し、適切な修繕作業を行わせることも可能である。
【0041】
次に画像処理装置2の詳細について説明する。図2は、画像処理装置2のハードウェア構成の一例を示す図である。画像処理装置2は、そのハードウェア構成として、制御部10と、操作パネル11と、通信インタフェース12と、画像メモリ13と、入力画像処理部14と、出力画像処理部15と、プリント制御部21と、プリンタ部22と、スキャナ制御部23と、スキャナ部24と、FAX部25と、記憶装置26とを備えており、これら各部がバス9を介して相互にデータの入出力を行うことができる構成である。
【0042】
制御部10は、CPU10aと、メモリ10bとを備え、各部の動作を統括的に制御するものである。CPU10aは、記憶装置26に記憶されているプログラム31を読み出して実行する。メモリ10bは、CPU10aがプログラム31を実行することによって発生する一時的なデータなどを記憶するための揮発性メモリである。
【0043】
操作パネル11は、ユーザーが画像処理装置2を操作する際のユーザーインタフェースとなるものである。操作パネル11は、ユーザーが操作可能な操作画面を表示する表示部11aと、ユーザーによる操作を受け付ける操作部11bとを備えている。ユーザーは、操作パネル11に対する操作を行うことで、ジョブの設定操作や実行指示を行うことができる。
【0044】
通信インタフェース12は、画像処理装置2をネットワーク4に接続するインタフェースである。画像処理装置2は、この通信インタフェース12を介してネットワーク4に接続されている他の装置と通信を行う。例えば、画像処理装置2は、通信インタフェース12を介してプリントジョブを受信することが可能である。また、画像処理装置2は、通信インタフェース12を介してサーバー3にログ情報を送信することも可能である。
【0045】
画像メモリ13は、ジョブの実行中に取得される画像データを一時的に記憶するメモリである。すなわち、画像メモリ13には、ジョブの実行に伴って生成される画像データや、ジョブの受け付け時に取得される画像データなどが格納される。例えば、スキャンジョブの場合には原稿を読み取ることによって生成される画像データが画像メモリ13に格納され、プリントジョブの場合にはプリントジョブに含まれる画像データが画像メモリ13に格納される。
【0046】
入力画像処理部14は、入力画像データに対する画像処理を行うものである。例えば、スキャンジョブの場合、入力画像処理部14は、スキャナジョブによって画像メモリ13に保存される画像データを読み出し、その画像データに対して、スキャン設定に基づく色変換処理、解像度変換処理、画像圧縮処理などの各種画像処理を施す。そして入力画像処理部14は、画像処理後の画像データを再び画像メモリ13へ保存する。
【0047】
出力画像処理部15は、出力画像データに対する画像処理を行うものである。例えば、プリントジョブの場合、出力画像処理部15は、画像メモリ13に保存されている画像データを読み出し、その画像データに対して、プリント設定に基づく画像伸長処理、解像度変換処理、色変換処理、サイズ変換処理、画像回転処理などの各種画像処理を施す。そして出力画像処理部15は、画像処理後の画像データを再び画像メモリ13へ保存する。
【0048】
電源制御部16は、画像処理装置2の電源状態を制御するものである。例えば、電源制御部16は、画像処理装置2が通常ジョブモードであるとき、ユーザーによって使用されない状態が所定時間以上継続すると、画像処理装置2の通電状態を通常電力状態から省電力状態へ移行させる制御を行う。ただし、電源制御部16は、画像処理装置2が再現確認モードであるときには、ユーザーによって使用されない状態であっても再現ジョブを実行する必要があるため、省電力状態へは移行させないことが好ましい。また、通電状態を省電力状態に移行させているとき、通信インタフェース12がプリントジョブを受信した場合、又は、操作パネル11がユーザーの操作を検知した場合、電源制御部16は、画像処理装置2の通電状態を省電力状態から通常電力状態へ復帰させる。
【0049】
また電源制御部16は、制御部10からの指令に基づき画像処理装置2を自動的に再起動させることも可能である。例えば画像処理装置2においてトラブルが発生した場合において制御部10から再起動指令が出力されると、電源制御部16は、その再起動指令に基づいて画像処理装置2の再起動プロセスを開始する。これにより、画像処理装置2は、自動的に再起動を行うことになる。このような再起動により、トラブルが解消され、画像処理装置2が再びジョブを実行することが可能な状態に復帰することがある。
【0050】
プリント制御部21は、プリンタ部22を制御するものである。プリンタ部22は、例えば電子写真方式で印刷用紙に画像形成を行って印刷出力を行うものであり、帯電装置、感光体ドラム、露光装置、現像装置、転写機構、定着装置などの動作部を備えている。プリント制御部21は、プリンタ部22に設けられているそれらの動作部を駆動することによって印刷出力の動作を制御する。例えば、プリント制御部21は、画像メモリ13に格納されている画像データを読み出し、その画像データに基づいてプリンタ部22を制御することにより、画像データに基づく印刷出力を行わせる。
【0051】
スキャナ制御部23は、スキャナ部24を制御するものである。スキャナ部24は、原稿の画像を光学的に読み取って画像データを生成するものであり、主走査方向に沿って配置されたライン状の読取ヘッドを副走査方向に移動させる動作部を備えている。スキャナ制御部23は、スキャナ部24に設けられる動作部を駆動しながら、読取ヘッドから逐次出力されるライン状の画像データを副走査方向に結合させていくことにより、原稿の画像に対応する二次元の画像データを生成する。そしてスキャナ制御部23は、その画像データを画像メモリ13に保存する。
【0052】
FAX部25は、図示を省略する公衆電話回線を介してFAXデータの送受信を行うものである。例えば、FAX部25は、公衆電話回線を介してFAXデータを受信した場合、そのFAXデータを画像データに変換して画像メモリ13に保存する。また、FAXデータの送信を行う場合、FAX部25は、画像メモリ13に保存されている画像データを読み出してFAXデータに変換し、公衆電話回線を介してそのFAXデータを指定された宛先に送信する。
【0053】
記憶装置26は、例えばハードディスクドライブ(HDD)などによって構成される不揮発性の記憶装置である。この記憶装置26には、制御部10のCPU10aによって実行されるプログラム31が予め記憶される。またこの他、記憶装置26には、ジョブ詳細情報32、テーブル情報33、ログ情報34、トラブル再現情報35などが記憶される。これらの情報は、画像処理装置2が再起動する場合であっても、記憶装置26において記憶された状態が継続する。
【0054】
次に、制御部10の機能構成について説明する。図3は、制御部10の機能構成の一例を示す図である。制御部10のCPU10aがプログラム31を実行することにより、制御部10は、モード移行部40、第1制御部41、第2制御部42、ログ情報生成部43、及び、ログ情報送信部44として機能する。
【0055】
モード移行部40は、画像処理装置2の動作モードを通常ジョブモードと再現確認モードとのいずれか一方に制御する処理部である。すなわち、モード移行部40は、画像処理装置2においてトラブルが発生してない場合、動作モードを通常ジョブモードに設定する。これにより、画像処理装置2は、ユーザーによって投入されるジョブを実行可能な状態となる。
【0056】
これに対し、画像処理装置2においてトラブルが発生している場合、モード移行部40は、所定の条件下において、動作モードを通常ジョブモードから再現確認モードへ移行させる。すなわち、モード移行部40は、通常ジョブモードにおいてユーザーにより使用されない状態が一定時間以上継続し、且つ、記憶装置26に記憶されているジョブ詳細情報32にトラブルコードが付加されていることを条件として、動作モードを、再現確認モードへ移行させる。
【0057】
ただし、モード移行部40は、ジョブ詳細情報32にトラブルコードが付加されていれば必ず再現確認モードへ移行させる訳ではない。すなわち、モード移行部40は、トラブルコードを解析し、トラブルコードに応じて再現確認モードへ移行させるか否かを判断する。例えば、画像処理装置2において発生したトラブルが用紙エンプティやトナーエンプティなどのようなトラブルである場合、モード移行部40は、再現確認モードへ移行させる必要がないと判断する。用紙エンプティやトナーエンプティなどのような消耗品に関するトラブルは、発生原因が明らかであり、再現確認を行う必要がないからである。これに対し、モード移行部40は、画像処理装置2において発生したトラブルが発生頻度の低いトラブルである場合、再現確認モードへ移行させる必要があると判断する。
【0058】
第1制御部41及び第2制御部42は、画像処理装置2の動作モードに応じて制御部10において択一的に機能する処理部である。すなわち、第1制御部41は、画像処理装置2が通常ジョブモードのときに機能し、ユーザーによって投入されるジョブの実行を制御する。また、第2制御部42は、画像処理装置2が再現確認モードであるときに機能し、トラブル発生時のジョブを再現した再現ジョブの実行を制御する。
【0059】
第1制御部41は、ジョブ受付部51と、ジョブ管理部52と、通常ジョブ制御部53とを備えている。ジョブ受付部51は、通常ジョブモードにおいて、ユーザーによって投入される通常のジョブを受け付ける処理部である。ジョブ受付部51によってジョブが受け付けられると、ジョブ管理部52が機能する。ジョブ管理部52は、ジョブ受付部51によって受け付けられたジョブに関するジョブ詳細情報32を生成し、そのジョブ詳細情報32を記憶装置26に保存して管理する。そしてジョブ管理部52は、ジョブの実行状況に応じてジョブ詳細情報32を適宜更新する。
【0060】
図4は、ジョブ詳細情報32の一例を示す図である。ジョブ詳細情報32は、ジョブID32a、ジョブ種類32b、設定情報32c、画像データ32d、ステータス32e、トラブルコード32fなどを含む情報である。ジョブ受付部51によってジョブが受け付けられたとき、ジョブ管理部52は、図4(a)に示すようなジョブ詳細情報32を生成し、記憶装置26に保存する。例えばジョブ管理部52は、ジョブ受付部51によって受け付けられた新たなジョブにユニークな識別番号を付与し、その識別番号をジョブID32aの項目に記録する。またジョブ管理部52は、新たなジョブを解析し、その解析結果に基づく情報を、ジョブ種類32b、設定情報32c及び画像データ32dのそれぞれに記録する。このとき、新たなジョブがプリントジョブであれば、プリントジョブに含まれる画像データを画像データ32dの項目に記録する。これに対し、新たなジョブがスキャンジョブ又はコピージョブである場合、新たなジョブには画像データが含まれていないため、ジョブ管理部52は、ジョブの受け付け時点において画像データ32dの項目を空欄とする。そしてスキャナ部24が原稿を読み取ることによって画像データが生成されると、ジョブ管理部52は、その画像データを画像データ32dの項目に記録する。また、ジョブ管理部52は、ジョブのステータスをステータス32eの項目に記録する。例えばジョブの実行が開始される前であれば「実行前」を、ジョブの実行中であれば「実行中」を、ステータス32eの項目に記録する。また、ジョブ管理部52は、ユーザーによって投入されたジョブの実行中にトラブルが発生することなく、ジョブが正常終了すると、そのジョブに対応するジョブ詳細情報32を記憶装置26から削除する。
【0061】
一方、通常ジョブモードにおいてジョブの実行中にトラブルが発生し、そのトラブルによってジョブがエラー終了することがある。その場合、ジョブ管理部52は、図4(b)に示すように、ジョブ詳細情報32のステータス32eの項目に「エラー終了」を記録する。またジョブ管理部52は、ジョブの実行中にトラブルが発生すると、そのトラブルを特定し、トラブルに対応するトラブルコードをトラブルコード32fの項目に記録する。つまり、ジョブの実行中にトラブルが発生すると、ジョブ管理部52は、ジョブ詳細情報32に対してトラブルに対応するトラブルコードを付加するのである。そしてジョブ管理部52は、トラブルコードを付加したジョブ詳細情報32を記憶装置26へ保存した状態を継続させる。
【0062】
通常ジョブ制御部53は、第1のジョブ制御手段であり、通常ジョブモードにおいてユーザーによって投入されたジョブの実行を制御する。例えば、ユーザーによって投入されたジョブがプリントジョブである場合、通常ジョブ制御部53は、ジョブに含まれる画像データを画像メモリ13に格納し、出力画像処理部15による画像処理を行わせた後、プリント制御部21を動作させて印刷出力を行わせる。
【0063】
また、ユーザーによって投入されたジョブがスキャンジョブである場合、通常ジョブ制御部53は、スキャナ制御部23を動作させることによってユーザーによってセットされた原稿の読み取り動作を行わせ、スキャナ制御部23から出力される画像データを画像メモリ13に格納する。その後、通常ジョブ制御部53は、入力画像処理部14を動作させて画像処理を行わせた後、ユーザーによって指定された出力先へ画像データを出力する処理を行わせる。
【0064】
さらに、ユーザーによって投入されたジョブがコピージョブである場合、通常ジョブ制御部53は、上述したスキャンジョブの制御とプリントジョブの制御とを順に行うことで、コピージョブの実行を制御する。
【0065】
通常ジョブモードにおいて、通常ジョブ制御部53によるジョブの実行が行われているとき、画像処理装置2においてハードウェアエラーやソフトウェアエラーなどのトラブルが発生すると、上述したようにジョブ管理部52によってトラブルに対応するトラブルコードがジョブ詳細情報32に付加される。そして記憶装置26には、トラブルコードが付加されたジョブ詳細情報32が記憶された状態のまま残る。モード移行部40は、ジョブ詳細情報32に付加されているトラブルコードに基づいてテーブル情報33を参照し、トラブルコードに応じて再現確認モードへ移行させるか否かを決定する。
【0066】
図5は、テーブル情報33の一例を示す図である。テーブル情報33は、トラブルコード33aと、トラブル箇所33bと、トラブルの詳細情報33cと、再現確認モード33dが相互に対応付けられた情報である。トラブル箇所33bの欄には、トラブルの発生箇所に関する詳しい情報が記録される。また、詳細情報33cの欄には、トラブルの種類に関する詳しい情報が記録される。さらに、再現確認モード33dの欄には、再現確認モードへ移行させる必要があるか否かに関する情報が記録される。例えば、画像処理装置2において発生したトラブルがハードウェア部品の不良によるものであり、不良部品を交換すればトラブルが解消されることが明らかな場合には、同じトラブルを再現させる必要がないため、再現確認モード33dの欄には予め「不要」が記録される。これに対し、画像処理装置2において発生したトラブルの原因が特定のハードウェア部品の不良によるものであることが明らかでない場合には、トラブルを再現させて原因を特定する必要があるため、再現確認モード33dの欄には予め「必要」が記録される。図5の例では、詳細情報33cに「入力データ不良」又は「タイミング不良」が記録されている場合、再現確認モードへ移行させることが必要となる。ここで、入力データ不良とは、ジョブを実行するために取得した画像データに不良があることを意味している。ただし、画像データが不良となった原因については不明である。また、タイミング不良とは、ジョブの実行を制御するための制御信号の入出力タイミングに不良があることを意味している。このような不良は、画像処理装置2においてマルチジョブが実行されているときに発生しやすい。このようにテーブル情報33には、トラブルの種類に応じて再現確認モードへ移行させるか否かが予め登録されている。
【0067】
モード移行部40は、ジョブ詳細情報32に付加されているトラブルコードに基づいてテーブル情報33の再現確認モード33dの欄を参照することにより、再現確認モードへ移行させる必要があるか否かを決定する。そして再現確認モードへ移行させることに決定すると、モード移行部40は、通常ジョブモードにおいてユーザーにより使用されない状態が一定時間以上継続することを条件として、動作モードを再現確認モードへ移行させる。これにより、画像処理装置2の制御部10において第2制御部42が動作するようになる。
【0068】
第2制御部42は、再現ジョブ制御部55を備えている。再現ジョブ制御部55は、第2のジョブ制御手段であり、再現確認モードにおいて再現ジョブの実行を制御する。また、再現ジョブ制御部55は、再現確認モードにおいて、ジョブ詳細情報32に付加されているトラブルコードと同じトラブルの発生が検知されるまで再現ジョブの実行を繰り返す。そして再現ジョブ制御部55は、再現ジョブの実行を繰り返し実行するときには、前回と同じ条件で再現ジョブを実行しても良いし、前回とは異なる条件で再現ジョブを実行しても良い。
【0069】
図6は、再現ジョブ制御部55の詳細な機能構成の一例を示すブロック図である。再現ジョブ制御部55は、再現ジョブ生成部71と、再現ジョブ実行部72と、再現確認部73と、復帰処理部74とを備えている。
【0070】
再現ジョブ生成部71は、トラブルコードが付加されているジョブ詳細情報32を記憶装置26から読み出し、そのジョブ詳細情報32に基づいてトラブルが発生したときに実行されていたジョブに対応する再現ジョブを生成する。
【0071】
例えば、ジョブ詳細情報32がスキャンジョブに関する情報である場合、再現ジョブ生成部71は、そのジョブ詳細情報32に基づき、スキャナ制御部23を動作させてスキャナ部24に原稿の読み取り動作を行わせるジョブを再現ジョブとして生成する。スキャンジョブに対応する再現ジョブは、スキャナ部24に原稿の読み取り動作を行わせることによって画像データが取得されると、スキャナ部24で得られた画像データをジョブ詳細情報32に含まれる画像データに差し替えて、その後の画像処理などの各種処理を進行させるジョブである。すなわち、再現ジョブでは、トラブルが発生したときと同じ画像データを用いて画像処理等を行うことにより、トラブルの再現性を高めるのである。また、再現ジョブの各種設定項目には、ジョブ詳細情報32の設定情報32cに記録されている設定値が反映される。ただし、再現ジョブは、画像処理装置2におけるジョブの処理中に同じトラブルが再現することを確認するためのジョブであるため、画像処理装置2における処理が終了した後に画像データを外部装置などへ出力する処理は行わない。
【0072】
また、ジョブ詳細情報32がプリントジョブに関する情報である場合、再現ジョブ生成部71は、そのジョブ詳細情報32に含まれる画像データに基づいて再現ジョブを生成する。プリントジョブの再現ジョブでは、ジョブ詳細情報32に含まれる画像データを用いて画像処理等が行われる。ただし、プリントジョブの再現ジョブでは、印刷出力の対象となる画像データをプリント制御部21へ出力しないようにしており、実際にプリンタ部22を駆動させる処理は行われない。印刷用紙やトナーなどの消耗品を再現ジョブによって消費してしまうことを防止するためである。
【0073】
再現ジョブ生成部71は、条件設定部71aを備えている。条件設定部71aは、再現ジョブを実行するときの条件を設定する処理部である。例えば、条件設定部71aは、ジョブ詳細情報32に付加されている設定情報32cに基づいてトラブル発生時と同じ設定となるように条件を設定する。
【0074】
また条件設定部71aは、設定情報32c以外の条件も設定することができる。すなわち、条件設定部71aは、ジョブ詳細情報32に付加されているトラブルコードに基づいて再現ジョブを実行する際の条件を決定し、その決定した条件を再現ジョブに設定する。一例を挙げると、条件設定部71aは、制御信号の入出力タイミングに関する条件を設定することができる。条件設定部71aは、ジョブ詳細情報32に付加されているトラブルコードに基づいてテーブル情報33を参照することにより、画像処理装置2において発生したトラブルを特定する。その結果、画像処理装置2において発生したトラブルがタイミング不良であった場合、条件設定部71aは、再現ジョブを実行する際の制御信号の入出力タイミングに関する条件を設定する。
【0075】
図7は、制御信号の入出力タイミングを示す図である。図7(a)に示すように、例えば画像処理装置2において第1タスク61と第2タスク62とが同時に起動された状態となり、第1タスク61及び第2タスク62のそれぞれから、あるハードウェア回路63に対して制御信号CNT1,CNT2が出力される場合を仮定する。このような状態は画像処理装置2においてマルチジョブが実行されるときに起こり得る。すなわち、第1のジョブによって第1タスク61が起動されると共に、第2のジョブによって第2タスク62が起動されることにより、第1タスク61と第2タスク62とが同時に起動された状態となり、第1タスク61及び第2タスク62のそれぞれからハードウェア回路63に対して制御信号CNT1,CNT2が出力されるのである。そしてハードウェア回路63は、第1タスク61又は第2タスク62から出力される制御信号CNT1,CNT2に基づき後段の回路に対して信号SIGを出力する。ハードウェア回路63は、制御信号CNT1,CNT2のいずれか一方を入力したタイミングで信号SIGの出力を開始し、その出力状態を一定期間Ta保持する。例えば、図7(b)に示すようにタイミングt1で制御信号CNT1を入力すると、ハードウェア回路63は、タイミングt1から一定期間Taの間、信号SIGの出力を保持する。このような回路構成において、ハードウェア回路63の後段の回路は、一定期間Taの信号SIGを入力すると、正常な信号SIGと判断し、信号SIGに応じた動作を行う。これに対し、後段の回路は、ハードウェア回路63から一定期間Taを超える期間において出力状態が継続する信号SIGを入力すると、その信号SIGを異常信号と判断し、トラブル発生を通知することがある。
【0076】
図7(c)は、2つの制御信号CNT1,CNT2によってトラブルが発生する場合の一例を示している。上記のような回路構成において、第1タスク61がタイミングt1において制御信号CNT1を出力した後、一定期間Taが経過するまでのタイミングt2において第2タスク62が制御信号CNT2を出力した場合、ハードウェア回路63は、制御信号CNT1に基づいて信号SIGを一定期間Ta出力する動作を開始すると共に、制御信号CNT2に基づいて信号SIGを再び一定期間Ta出力する動作を開始する。この場合、ハードウェア回路63から信号SIGが出力される期間Tbが一定期間Taを超えてしまうため、後段の回路において信号SIGが異常信号と判断され、トラブルが発生する。その結果、ジョブ詳細情報32の詳細情報33cには、「タイミング不良」が記録されることになる。
【0077】
条件設定部71aは、上記のようなケースにおいて再現ジョブを設定するとき、第1タスク61が制御信号CNT1を出力した後、第2タスク62が制御信号CNT2を出力するタイミングを決定し、その決定結果に基づいて再現ジョブの条件を設定する。したがって、条件設定部71aは、画像処理装置2において再現ジョブが繰り返し実行されるときには、第1タスク61が制御信号CNT1を出力するタイミングt1と、第2タスク62が制御信号CNT2を出力するタイミングt2とを変化させることができる。これにより、トラブルの再現率を上げることができるようになる。
【0078】
再現ジョブ実行部72は、再現ジョブの実行を制御する処理部である。すなわち、再現ジョブ実行部72は、再現ジョブに基づいて、画像メモリ13、入力画像処理部14、出力画像処理部15、プリント制御部21、スキャナ制御部23、スキャナ部24及びFAX部25を動作させる制御を行う。ただし、再現ジョブ実行部72は、通常ジョブ制御部53とは異なり、再現ジョブの実行時にプリンタ部22を動作させない。そのため、画像処理装置2において再現ジョブが実行されるときには、用紙やトナーなどの消耗品が消費されることはない。
【0079】
再現確認部73は、再現ジョブの実行中に、同じトラブルが再現したか否かを確認する処理部である。すなわち、再現確認部73は、再現ジョブの実行中にハードウェアエラーやソフトウェアエラーなどのトラブルが発生した場合、そのトラブルに対応するトラブルコードを特定する。そして再現確認部73は、ジョブ詳細情報32に付加されているトラブルコードと同じトラブルコードであるか否かを判定することにより、同じトラブルが再現したか否かを判断する。その結果、再現確認部73は、再現ジョブの実行中に、ジョブ詳細情報32に付加されているトラブルコードと同じトラブルの発生を検出した場合、その再現ジョブの実行時の条件(例えばジョブの設定情報や制御信号の入出力タイミングなど)を記録したトラブル再現情報35を生成し、記憶装置26へ保存する。
【0080】
再現確認部73が、トラブル再現情報35を記憶装置26へ保存しておくことにより、その後の通常ジョブモードにおいて通常のジョブが実行されるときにトラブル再現情報35を参照することができる。すなわち、第1制御部41は、通常ジョブモードにおいて通常のジョブを実行するとき、記憶装置26にトラブル再現情報35が保存されていれば、そのトラブル再現情報35を参照する。そして第1制御部41は、トラブル再現情報35に記録されている条件を回避した状態で通常のジョブの実行を制御することにより、画像処理装置2において同様のトラブルが発生することを防止することができる。
【0081】
また、再現確認部73は、再現ジョブの実行中に同じトラブルが再現したことを確認すると、モード移行部40に対してトラブルの再現確認が終了したことを通知する。これにより、モード移行部40は、再現確認モードを終了させて、通常ジョブモードへ移行させる。
【0082】
また、モード移行部40は、再現確認モードにおいて、操作パネル11に対するユーザーの操作を検知した場合、或いは、通信インタフェース12を介してジョブを受信した場合に再現確認モードを強制的に終了させて通常ジョブモードへ移行させる。したがって、画像処理装置2の動作モードが再現確認モードであるときに、ユーザーが画像処理装置2を使用しようとすると、動作モードが通常ジョブモードとなり、ユーザーによって投入されるジョブを優先的に実行することができるようになる。
【0083】
ところで、再現ジョブの実行途中でトラブルが発生することにより、再現ジョブに対するその後の処理がフリーズしてしまうことがある。そのような場合、再現ジョブ制御部55において復帰処理部74が機能する。復帰処理部74は、画像処理装置2を自動的に再起動させてトラブルから復帰させる処理部である。すなわち、復帰処理部74は、電源制御部16に対して再起動指令を出力することにより、画像処理装置2を自動的に再起動させるのである。この再起動により、画像処理装置2は、トラブルによるフリーズ状態から自動的に復帰することができる。
【0084】
図3に戻り、ログ情報生成部43は、第1制御部41によって通常のジョブが実行されているとき、或いは、第2制御部42によって再現ジョブが実行されているときに、ログ情報34を生成する処理部である。ログ情報生成部43は、第1制御部41によって通常のジョブが実行されているときには、詳細なログ情報34の生成動作は行わず、基本的なログ情報34を生成する。すなわち、通常ジョブモードのとき、ログ情報生成部43は、ジョブの受付日時、ジョブの実行開始日時、ジョブの種類、ジョブの実行終了日時、正常終了か否かを示す基本的な情報だけを含むログ情報34を生成する。これにより、通常ジョブモードのときには、ログ情報生成部43によるログ情報34の生成処理がジョブの実行効率を低下させてしまうことを抑制する。尚、ログ情報生成部43は、通常ジョブモードのときには、ログ情報34を生成しないようにしても良い。
【0085】
これに対し、ログ情報生成部43は、第2制御部42によって再現ジョブが実行されているときには、基本的なログ情報よりも詳細なログ情報34を生成する。すなわち、再現確認モードのとき、ログ情報生成部43は、ジョブの受付日時、ジョブの実行開始日時、ジョブの種類、ジョブの実行終了日時、正常終了か否かを示す基本的な情報だけでなく、各部に対して制御信号や画像データが出力されたタイミングなどを示す詳細な情報を含むログ情報34を生成する。再現ジョブはユーザーによって投入されたジョブではないため、再現ジョブの実行効率が低下しても特に問題はない。寧ろ、詳細なログ情報34を生成することにより、再現ジョブの実行時に各部がどのようなタイミングでどのように動作したのかを詳細に解析することが可能になるため、トラブルの原因究明に役立つのである。
【0086】
ログ情報送信部44は、再現ジョブの実行中にログ情報生成部43によって生成されたログ情報34をサーバー3へ送信する処理部である。ログ情報送信部44がログ情報34をサーバー3へ送信することにより、開発者などがトラブルの発生原因となったハードウェアやソフトウェアを特定することができるようになる。
【0087】
次に上記のように構成される画像処理装置2の処理手順について説明する。図8は、画像処理装置2において行われる主たる処理手順の一例を示すフローチャートである。この処理は、画像処理装置2に対して電源が投入されることによって開始される。画像処理装置2は、この処理を開始すると、通常ジョブモードであるか否かを判断する(ステップS10)。例えば、前回の電源遮断時における動作モードが通常ジョブモードであれば、ステップS10においてYESと判断される。これに対し、前回の電源遮断時における動作モードが再現確認モードであれば、ステップS10においてNOと判断される。
【0088】
通常ジョブモードである場合(ステップS10でYES)、画像処理装置2は、動作モードを通常ジョブモードへ移行させ(ステップS11)、通常ジョブ制御処理を実行する(ステップS12)。通常ジョブ制御処理は、上述した第1制御部41が動作することによって通常のジョブが実行される処理である。
【0089】
図9は、通常ジョブ制御処理(ステップS12)の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。画像処理装置2は、通常ジョブ制御処理を開始すると、ユーザーによって投入されるジョブを受け付けたか否かを判断する(ステップS20)。ジョブを受け付けていない場合(ステップS20でNO)、通常ジョブ制御処理は終了する。これに対し、ジョブを受け付けた場合(ステップS20でYES)、画像処理装置2は、そのジョブに対応するジョブ詳細情報32を生成し(ステップS21)、ジョブ詳細情報32を記憶装置26へ保存する(ステップS22)。次に画像処理装置2は、ログ情報生成部43を機能させ、ログ情報34の記録動作を開始する(ステップS23)。ただし、このときは通常ジョブモードであるため、画像処理装置2は、基本的な情報のみを記録する動作に留める。そして画像処理装置2は、ユーザーによって投入されたジョブの実行を開始する(ステップS24)。
【0090】
その後、画像処理装置2は、ジョブが正常終了したか否かを判断し(ステップS25)、正常終了した場合は(ステップS25でYES)、記憶装置26に保存しているジョブ詳細情報32を破棄する(ステップS26)。これに対し、ジョブが正常終了していない場合(ステップS25でNO)、画像処理装置2は、トラブルが発生したか否かを判断する(ステップS27)。トラブルが発生していない場合(ステップS27でNO)、ジョブが正常終了か、或いは、トラブルが発生するまで待機する状態となる。
【0091】
ジョブの実行中にトラブルが発生した場合(ステップS27でYES)、画像処理装置2は、トラブルを特定し(ステップS28)、そのトラブルに対応するトラブルコードをジョブ詳細情報32に付加する(ステップS29)。この場合、ジョブ詳細情報32の保存状態が継続される。そして画像処理装置2は、ログの記録動作を終了する(ステップS30)。以上で、通常ジョブ制御処理(ステップS12)が終了する。
【0092】
図8に戻り、画像処理装置2は、通常ジョブ制御処理(ステップS12)を終了すると、画像処理装置2が一定時間未使用の状態であるか否かを判断する(ステップS13)。一定時間未使用の状態である場合(ステップS13でYES)、画像処理装置2は、記憶装置26にジョブ詳細情報32が保存されているか否かを判断する(ステップS14)。記憶装置26にジョブ詳細情報32が保存されている場合(ステップS14でYES)、画像処理装置2は、そのジョブ詳細情報32にトラブルコードが付加されているか否かを判断し(ステップS15)、トラブルコードが付加されていれば(ステップS15でYES)、そのトラブルコードを判定する(ステップS16)。その結果、再現確認が必要なトラブルである場合(ステップS17でYES)、画像処理装置2は、動作モードを再現確認モードへ移行させる(ステップS18)。これに対し、画像処理装置2が一定時間未使用の状態でない場合(ステップS13でNO)、記憶装置26にジョブ詳細情報32が保存されていない場合(ステップS14でNO)、ジョブ詳細情報32にトラブルコードが付加されていない場合(ステップS15でNO)、或いは、再現確認が必要なトラブルが発生していない場合(ステップS17でNO)、画像処理装置2による処理は、ステップS12へ戻り、ユーザーによってジョブが投入されるのを待機する状態となる。
【0093】
画像処理装置2は、再現確認モードへ移行させると、再現ジョブ制御処理を実行する(ステップS19)。再現ジョブ制御処理は、上述した第2制御部42が動作することによって再現ジョブが実行される処理である。
【0094】
図10は、再現ジョブ実行処理(ステップS17)の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。画像処理装置2は、再現ジョブ制御処理を開始すると、まず記憶装置26に保存されているジョブ詳細情報32を読み出し(ステップS40)、そのジョブ詳細情報32に基づいて再現ジョブを生成する(ステップS41)。続いて画像処理装置2は、ジョブ詳細情報32に付加されているトラブルコードに基づいてテーブル情報33を参照し(ステップS42)、トラブルを特定する(ステップS43)。このとき、画像処理装置2は、トラブルの発生箇所を予め特定しておくことが好ましい。
【0095】
続いて画像処理装置2は、操作パネル11に対するユーザーの操作を検知したか否かを判断する(ステップS44)。ユーザーの操作を検知している場合(ステップS44でYES)、画像処理装置2による処理は、図8のステップS11へ進む。つまり、再現確認モードが終了し、通常ジョブモードへ移行する。また、ユーザーの操作を検知していない場合(ステップS44でNO)、画像処理装置2は、ユーザーによって投入されるジョブを受け付けたか否かを判断する(ステップS45)。ユーザーのジョブを受け付けた場合(ステップS45でYES)、画像処理装置2による処理は、図8のステップS11へ進む。この場合も、再現確認モードが終了し、通常ジョブモードへ移行する。
【0096】
ユーザーのジョブを受け付けていない場合(ステップS45でNO)、画像処理装置2は、再現ジョブを実行する際の条件を設定する(ステップS46)。このとき、前回実行時と同じ条件を採用しても良いし、異なる条件を採用しても良い。そして画像処理装置2は、ログ情報生成部43を機能させ、ログ情報34の記録動作を開始する(ステップS47)。このときは再現確認モードであるため、画像処理装置2は、基本的な情報だけでなく、詳細な情報を含むログ情報34の記録動作を開始する。そして画像処理装置2は、再現ジョブの実行を開始する(ステップS48)。
【0097】
画像処理装置2は、再現ジョブの実行を開始すると、トラブルが発生したか否かを判断する(ステップS49)。トラブルが発生することなく、再現ジョブの実行が進行している場合(ステップS49でNO)、画像処理装置2は、トラブルの発生箇所の処理が終了したか否かを判断する(ステップS50)。例えば、再現ジョブがコピージョブに対応するジョブであって、スキャナ部24、画像メモリ13、入力画像処理部14、出力画像処理部15及びプリンタ部22を順に動作させるジョブである場合、トラブル発生箇所が入力画像処理部14のハードウェアであれば、画像処理装置2は、入力画像処理部14の動作が全て終了したか否かを判断する。その結果、トラブル発生箇所の処理が終了していない場合(ステップS50でNO)、画像処理装置2による処理はステップS49に戻る。これに対し、トラブル発生箇所の処理が終了した場合(ステップS50でYES)、画像処理装置2は、再現ジョブの実行を強制終了し、ログ情報34の記録動作を終了させる(ステップS51)。つまり、再現ジョブは同じトラブルの再現確認が目的であるため、トラブル発生箇所の処理が全て終了すると、その後の処理では同じトラブルが発生する可能性がないことから、再現ジョブの実行を強制終了させるのである。このように再現ジョブの実行を強制終了させることにより、再現ジョブの実行回数を効率的に増やすことができる。そして画像処理装置2は、再現ジョブの実行を強制終了させた後、ステップS44に戻って上述した処理を繰り返す。
【0098】
一方、再現ジョブの実行中にトラブルが発生した場合(ステップS49でYES)、画像処理装置2は、そのトラブルを特定し(ステップS52)、ログ情報34の記録動作を終了させる(ステップS53)。このとき生成されるログ情報34は、記憶装置26に保存される。そして画像処理装置2は、通常のジョブの実行時に発生したトラブルと同じトラブルであるか否かを判断する(ステップS54)。同じトラブルである場合(ステップS54でYES)、画像処理装置2は、再現ジョブ実行時の条件などに基づいてトラブル再現情報35を生成し(ステップS55)、そのトラブル再現情報35を記憶装置26に保存する(ステップS56)。その後、画像処理装置2は、ステップS53で保存したログ情報34をサーバー3へ送信する(ステップS57)。これにより、サーバー3は、画像処理装置2におけるトラブル発生時の詳細なログ情報34を取得することができる。その後、画像処理装置2による処理は、図8のステップS11へ進む。この場合も、再現確認モードが終了し、通常ジョブモードへ移行する。
【0099】
また再現ジョブの実行中に発生したトラブルが通常のジョブの実行時に発生したトラブルと同じトラブルではなかった場合(ステップS54でNO)、画像処理装置2による処理は、ステップS44に戻り、上述した処理が繰り返される。したがって、同じトラブルが発生するまで、再現ジョブの実行が繰り返される。
【0100】
尚、再現ジョブの実行中に発生したトラブルによって再現ジョブに対するその後の処理がフリーズしてしまった場合には、上術したように復帰処理部74が、画像処理装置2を自動的に再起動させることにより、トラブルから復帰させることが可能である。
【0101】
また、上記処理手順では、再現確認モードにおいて操作パネル11に対するユーザーの操作が検知されると、再現確認モードを通常ジョブモードに戻す処理が行われる例を示した。しかし、ユーザーが操作パネル11を操作している場合であっても、必ずしもそのユーザーによってジョブが投入されるとは限らない。そのため、操作パネル11を操作しているユーザーによってジョブの実行開始指示が与えられたタイミングで、再現確認モードを通常ジョブモードに戻すようにしても良い。
【0102】
以上のように本実施形態の画像処理装置2は、動作モードとして通常ジョブモードと再現確認モードとの2つのモードを有しており、通常ジョブモードにおいてトラブルが発生した場合には、動作モードを再現確認モードへ自動的に移行させて再現ジョブを自動実行することにより、そのトラブルの自己診断を行うように構成されている。
【0103】
そのため、トラブルが顧客環境に固有の外的要因(例えば温度、湿度、電源状態、周辺の静電環境など)によって偶発的に発生した場合であっても、画像処理装置2は、その顧客環境で自己診断を行うので、同じトラブルを再現させることができる。そのため、トラブルの原因を比較的早期に解明することができるようになる。
【0104】
また画像処理装置2は、ユーザーによって使用されていない状態のときに再現確認モードへ移行して自己診断を行うため、自己診断によってユーザーが使用できない状況が生じないようにしている。そのため、画像処理装置2の利便性を低下させることがない。
【0105】
以上、本発明に関する一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態において説明した内容のものに限られるものではなく、種々の変形例が適用可能である。
【0106】
例えば上記実施形態では、画像処理装置2が、再現確認モードへ自動的に移行させる場合について説明した。しかし、通常ジョブモードから再現確認モードへの移行は、必ずしも自動移行に限られるものではない。例えば、画像処理装置2は、記憶装置26に保存されているジョブ詳細情報32にトラブルコードが付加されており、再現確認モードへ移行させる必要があると判断すると、操作パネル11の表示部11aに再現確認モードへ移行させるための画面を表示するようにしても良い。そしてユーザーが再現確認モードへ移行させる操作を行った場合に、画像処理装置2が動作モードを通常ジョブモードから再現確認モードへ移行させるようにしても良い。ただし、この場合であっても、画像処理装置2は、ユーザーによって投入されるジョブの実行を優先させることが好ましい。
【0107】
また上記実施形態では、CPU10aによって実行されるプログラム31は画像処理装置2に予めインストールされている場合を例示した。しかし、プログラム31は、画像処理装置2に予めインストールされているものに限られず、それ単独で取引の対象となるものであっても構わない。その場合、プログラム31は、インターネットなどを介してユーザー自身がダウンロードする形態で画像処理装置2に提供されるものであっても良いし、CD-ROMやUSBメモリなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された状態で画像処理装置2に提供されるものであっても構わない。
【符号の説明】
【0108】
1 画像処理システム
2 画像処理装置
3 サーバー
10 制御部
11 操作パネル(操作入力手段)
31 プログラム
32 ジョブ詳細情報
33 テーブル情報
34 ログ情報
35 トラブル再現情報
40 モード移行部(モード移行手段)
41 第1制御部
42 第2制御部
43 ログ情報生成部(ログ情報生成手段)
44 ログ情報送信部(ログ情報送信手段)
51 ジョブ受付部(ジョブ受付手段)
52 ジョブ管理部(ジョブ管理手段)
53 通常ジョブ制御部(第1のジョブ制御手段)
55 再現ジョブ制御部(第2のジョブ制御手段)
74 復帰処理部(復帰手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10