(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】スティック糊の容器
(51)【国際特許分類】
B43M 11/06 20060101AFI20220823BHJP
B43M 11/00 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
B43M11/06
B43M11/00 A
(21)【出願番号】P 2018190626
(22)【出願日】2018-10-09
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】大橋 隆
(72)【発明者】
【氏名】前原 健二
(72)【発明者】
【氏名】加藤 康介
【審査官】三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】特許第5928663(JP,B2)
【文献】特開平09-075132(JP,A)
【文献】特開平11-291694(JP,A)
【文献】実開平07-009752(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43M 11/06
B43M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に糊が充填される糊充填空間を有するとともに先端に前記糊を外部に導出させるための円形状でない糊導出口を有した容器本体と、この容器本体の糊充填空間が外部に連通するのを気密に遮断する閉止状態及び前記糊を外部に導出可能な開放状態の何れかを選択的にとり得る開閉機構とを具備するスティック糊の容器であって、
前記開閉機構が、前記容器本体に設けられたキャップ取付筒と、このキャップ取付筒に外側から着脱可能に嵌合するキャップとを備え、キャップ取付筒の外側の円形状をなす嵌合部にキャップが嵌合するかまたはキャップの内側の円形状をなす嵌合部にキャップ取付筒が嵌合し、
前記キャップ取付筒が、その先端部に前記容器本体と接続される頂壁を有するとともに、内周面の少なくとも一部を先端とは反対側の基端方向に開放された隙間を介して容器本体に対面させたものであるスティック糊の容器。
【請求項2】
前記キャップ取付筒が、前記頂壁から基端方向に、前記容器本体における前記糊を塗布する操作を行う使用者の母指または示指の指先が触れ得る把持部分の先端領域まで延出している請求項1記載のスティック糊の容器。
【請求項3】
前記キャップ取付筒の延出端と前記把持部分の先端領域とが前記隙間の開口部を介して離間しているとともに、
横断面視において前記把持部分の外側辺が前記糊導出口の内側辺と平行または略平行となっている請求項2記載のスティック糊の容器。
【請求項4】
前記キャップ取付筒が、前記頂壁から基端方向に前記容器本体の基端領域まで延出しており、当該キャップ取付筒に前記糊を塗布する操作を行う使用者の母指と示指との間の指間部が触れ得る請求項1記載のスティック糊の容器。
【請求項5】
前記キャップ取付筒が円筒状の外周をなす請求項4記載のスティック糊の容器。
【請求項6】
前記キャップ取付筒の外径が先端方向に徐々に縮小し、前記キャップの内径が同方向に徐々に縮小する請求項1記載のスティック糊の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に棒状の糊が充填されるスティック糊の容器に関する。
【背景技術】
【0002】
紙等を貼着または接着するために用いられる固形の糊を細長い容器に収容し、これを少量ずつ繰り出すことのできるスティック糊が周知である。
【0003】
従来のスティック糊は、容器の先端に開設された円形状の糊導出口から円柱状の糊が現れるものであった。そのようなスティック糊では、例えば、四角形状の用紙の周囲に糊を塗布しようとするときに、当該用紙の縁や角の部分に糊をはみ出さないよう綺麗に塗ることが容易でない。それ故、容器の先端に開設された四角形状の糊導出口から四角柱状の糊が現れる態様のスティック糊が開発されるようになった。
【0004】
一方、四角柱形のスティック糊において、非使用時に装着するキャップ及び当該キャップが外嵌されるキャップ取付筒がそれぞれ角形筒状をなしていると、キャップ及びキャップ取付筒が円筒状をなす従前のスティック糊と比較して気密性が低下する不利が生ずる。角形筒状をなすキャップとキャップ取付筒とは、その隅角部では互いに密着してしっかりと嵌合されていても、それ以外の側辺部では密着しにくく、全体として高い気密性を保つことが難しい。そして、非使用時の気密性が損なわれると、容器内の糊が早期に劣化して使用可能期間が短くなったり、キャップの内周またはキャップ取付筒の外周に乾燥した糊が固着してキャップの着脱に支障を来したりする等の問題を招来する。
【0005】
そこで、容器の先端の糊導出口を非円形の角形状に成形しつつ、容器の先端に向かって開放した隙間を介して糊導出口よりも径が拡大した円筒状のキャップ取付筒を外側に形成することにより、円筒状をなすキャップをそのキャップ取付筒に嵌合できる構造とすることが考案された(以上、下記特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、キャップを装着する非使用時の気密性を確保しながらさらなる改善を図ったスティック糊の容器を提供することを所期の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、内部に糊が充填される糊充填空間を有するとともに先端に前記糊を外部に導出させるための円形状でない糊導出口を有した容器本体と、この容器本体の糊充填空間が外部に連通するのを気密に遮断する閉止状態及び前記糊を外部に導出可能な開放状態の何れかを選択的にとり得る開閉機構とを具備するスティック糊の容器であって、前記開閉機構が、前記容器本体に設けられたキャップ取付筒と、このキャップ取付筒に外側から着脱可能に嵌合するキャップとを備え、キャップ取付筒の外側の円形状をなす嵌合部にキャップが嵌合するかまたはキャップの内側の円形状をなす嵌合部にキャップ取付筒が嵌合し、前記キャップ取付筒が、その先端部に前記容器本体と接続される頂壁を有するとともに、内周面の少なくとも一部を先端とは反対側の基端方向に開放された隙間を介して容器本体に対面させたものであるスティック糊の容器を構成した。
【0009】
ここで、「円形状」とは、中心からの距離が一定の真円のみならず、例えば真円に近い楕円等、中心からの距離が完全に一定ではない誤差を含んだ形状をも包含する概念である。
【0010】
前記キャップ取付筒が、前記頂壁から基端方向に、前記容器本体における前記糊を塗布する操作を行う使用者の母指または示指の指先が触れ得る把持部分の先端領域まで延出することがある。その場合、前記キャップ取付筒の延出端と前記把持部分の先端領域とが前記隙間の開口部を介して離間しており、横断面視において前記把持部分の外側辺が前記糊導出口の内側辺と平行または略平行となっている形状とすることができる。
【0011】
あるいは、前記キャップ取付筒が、前記頂壁から基端方向に前記容器本体の基端領域まで延出しており、当該キャップ取付筒に前記糊を塗布する操作を行う使用者の母指と示指との間の指間部が触れ得る態様をとることもできる。この場合の前記キャップ取付筒は、円筒状の外周をなすことがある。
【0012】
また、前記キャップ取付筒の外径が先端方向に徐々に縮小し、前記キャップの内径が同方向に徐々に縮小する形状とすることも考えられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、キャップを装着する非使用時の気密性を確保しながらさらなる改善を図ったスティック糊の容器が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態のスティック糊及びその容器の斜視図。
【
図2】同実施形態のスティック糊及びその容器の要部を拡大して示す斜視図。
【
図3】同実施形態のスティック糊の容器を破断し要部を拡大して示す斜視図。
【
図4】同実施形態のスティック糊の容器を破断して示す斜視図。
【
図5】同実施形態のスティック糊の容器の分解斜視図。
【
図6】同実施形態のスティック糊の容器の要部を拡大して示す縦断面図。
【
図7】同実施形態のスティック糊の容器のA-A線端面図。
【
図8】同実施形態のスティック糊の容器のB-B線端面図。
【
図9】同実施形態のスティック糊の容器のC-C線端面図。
【
図10】本発明の変形例の一に係るスティック糊及びその容器の斜視図。
【
図11】同変形例のスティック糊の容器を破断して示す斜視図。
【
図12】同変形例のスティック糊の容器の分解斜視図。
【
図13】同変形例のスティック糊の容器の要部を拡大して示す縦断面図。
【
図14】本発明の変形例の一に係るスティック糊の容器の要部を拡大して示す縦断面図。
【
図15】本発明の変形例の一に係るスティック糊の容器の要部を拡大して示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1ないし
図9に、本実施形態のスティック糊1及びその容器2を示す。スティック糊1は、容器2内に固形の棒状の糊3を充填または収容してなり、その糊3を容器2の糊導出口から少量ずつ繰り出して使用することのできるものである。本実施形態のスティック糊1の容器2は、内部に糊3が充填される糊充填空間41を有するとともに先端(または、前端、頂端、上端)に糊3を外部に導出させるための真円でない糊導出口42を有した容器本体4と、この容器本体4の糊充填空間41が外部に連通するのを気密に遮断する閉止状態及び糊3を外部に導出可能な開放状態を選択的にとり得る開閉機構5と、糊3を糊導出口42から漸次導出させるための糊押出機構6とを具備する。
【0016】
図3ないし
図9に示すように、容器本体4は、糊充填空間41を内包しかつ糊充填空間41を外部に連通させる糊導出口42を先端に開設した管状体である糊充填部43と、この糊充填部43の外側を取り巻き使用者が把持するための把持部分441を有したボディ44とを備える。本実施形態では、糊充填部43とボディ44とを、例えば合成樹脂または硬質樹脂により一体成形している。但し、糊3が消費された後に新たな糊3を装填することのできる詰め替えタイプのスティック糊1にあっては、糊充填部43を交換用のリフィル(の少なくとも一部)としてボディ44に対して脱着できることがある。
【0017】
本実施形態における糊3は、角柱状、特に四角柱状をなす。従って、糊導出口42に至る糊充填部43の内周面431は、糊3の外周形状に合致するような角形筒状、特に四角筒状に形成してある。なお、この内周面431には、後述するレール433を突出させて設けている。糊充填部43の先端の筒状部分432は、ボディ44の先端よりも先方に突き出し、その先端に糊導出口42が開口している。
【0018】
ボディ44は、糊充填部43の先端筒状部分432以外の部分を抱持するもので、その外周441が糊3の外周の形状または糊充填部43の内周431の形状に相似した角筒状、特に四角筒状をなしている。換言すれば、
図7ないし
図9に示すように、糊3及び容器2が伸長する方向と平行な軸線と直交する面で切った横断面視において、ボディ44の外側辺である四辺442が、糊充填部43及び糊導出口42の内側辺(さらには、糊3の外側辺)である四辺421と平行または略平行となっている。尤も、ボディ44の外周441の隅角部、即ち辺442と辺442とが交わる四隅は丸面取りしてある。このボディ44の外周441は、スティック糊1を使用して糊3を塗布しようとする使用者が把持することのできる把持部分として機能する。
【0019】
糊充填部43及びボディ44の基端(または、後端、底端、下端)部には、糊充填空間41を基端側から閉塞する底壁45を一体成形している。底壁45の中心部には、当該底壁45を貫通する軸孔451を穿ってある。軸孔451は、後述する糊押出機構6に係わる。
【0020】
本実施形態のスティック糊1の容器2の開閉機構5は、容器本体4の先端側に設けたキャップ取付筒51と、このキャップ取付筒51に外側から嵌合することで装着されて容器本体4の糊導出口42を被覆するキャップ52とを要素とする。
【0021】
キャップ取付筒51は、外周面511、514が円形状をなす、比較的厚みの薄い短尺な筒状体である。キャップ取付筒51は、隙間516を介して容器本体4の外周441を包囲しながら、径方向に沿って内方に突き出した頂壁515を介して容器本体4の外周441に接合している。より具体的には、頂壁515が、キャップ取付筒51における容器2の先端側にある部位と、ボディ44の先端または糊充填部43の先端筒状部分432の基端の近傍の部位とを連接している。本実施形態では、キャップ取付筒51とボディ44とを、例えば合成樹脂または硬質樹脂により一体成形する。同時に、キャップ取付筒51は糊充填部43(の先端筒状部分432)とも一体化しているが、既に述べたような詰め替えタイプのスティック糊1にあっては、糊充填部43とキャップ取付筒51とが分離することがあり得る。
【0022】
キャップ取付筒51及び頂壁515は、容器本体4の糊導出口42よりも容器2の基端側に偏倚している。即ち、糊導出口42は、キャップ取付筒51の基部及び頂壁515よりも先方に位置する。
【0023】
キャップ取付筒51は、頂壁515から軸線と平行または略平行に容器2の基端方向に延出しており、その内周面517が隙間516を介して容器本体4のボディ44の外周面441と対面している。キャップ取付筒51の頂壁515と反対側の基端は、容器本体4を把持して糊3を塗布する使用者の母指または示指の指先が触れ得る把持部分441の先端領域に臨む。このキャップ取付筒51の延出端と、把持部分441の先端領域とは、上記の隙間516の開口部を介して離間している。つまり、キャップ取付筒51の内周517と容器本体4のボディ44の外周441との間に介在する隙間516は、容器2の基端方向に開放している。
【0024】
翻って、キャップ取付筒51の基部は頂壁515により容器本体4の外周441に連接し、その頂壁515が隙間516を先端側から閉塞することから、隙間516は容器2の先端方向には開放していない。隙間516の径方向に沿った幅、換言すればキャップ取付筒51の内周517とボディ44の外周441との径方向に沿った離間距離は、頂壁515に接合するキャップ取付筒51の基部から把持部分441に臨むキャップ取付筒51の延出端に向かって徐々に拡開する。
【0025】
なお、
図7ないし
図9に示しているように、キャップ取付筒51の内周517は、容器本体4のボディ44の外周441の隅角部即ち四隅に内接し、それら四隅においてボディ44と一体化している。このため、隙間516は、ボディ44の四隅により分断されている。
【0026】
キャップ52は、中空の円筒状をなす周壁521の先端部を頂版524により閉塞した形状をなしており、その周壁521の内周522をキャップ取付筒51の外周511に嵌合させるようにして、キャップ取付筒51に対し着脱自在に装着することができる。キャップ52は、例えば合成樹脂または硬質樹脂により一体成形する。
【0027】
スティック糊1を使用しないときには、
図1、
図4、
図6ないし
図8に示すように、キャップ52をキャップ取付筒51に外嵌して装着、キャップ52の内に容器本体4の先端筒状部分432及び糊導出口42を収容し、キャップ52によりこれらを被覆して外部から遮蔽する閉止状態とする。スティック糊1を使用するときには、
図2及び
図3に示すように、キャップ52をキャップ取付筒51から脱離させ、容器本体4の先端筒状部分432及び糊導出口42を露出させた開放状態とすればよいことは言うまでもない。頂版524の外周縁は、若干ながら周壁521の外周よりも径方向に沿って外側方に迫り出している。
【0028】
キャップ取付筒51は、その外周511に軸線方向から見て円形状の嵌合部512を有している。より具体的には、円筒状または略円筒状の外周面511の所定部位から径方向に沿って外側方に突出し周方向に沿って一周連続したリブ512を成形しており、このリブ512が嵌合部としてキャップ52の円筒状または略円筒状の内周面522の所定部位に密接することで、当該嵌合部512がキャップ52の円形状の内周522に緊密に嵌合する。リブ512の断面の外縁は、糊3及び容器2が伸長する方向と平行な軸線と重なる面で切った縦断面視において、円弧状または楕円弧状をなす。
【0029】
キャップ52もまた、その内周522に軸線方向から見て円形状の嵌合523を有している。より具体的には、円筒状または略円筒状の内周面522の所定部位から径方向に沿って内側方に突出し周方向に沿って一周連続したリブ523を成形しており、このリブ523が嵌合部としてキャップ取付筒51の円筒状または略円筒状の外周面511の所定部位に密接することで、当該嵌合部523がキャップ取付筒51の円形状の外周511に緊密に嵌合する。リブ523の断面の外縁は、縦断面視において円弧状または楕円弧状をなす。
【0030】
図1、
図4、
図6ないし
図8に示す閉止状態では、キャップ52のリブ523がキャップ取付筒51のリブ512よりも容器2の基端側に所在する。即ち、キャップ52をキャップ取付筒51に装着する過程で、キャップ52のリブ523がキャップ取付筒51に対し容器2の先端側から基端側に向かって相対的に変位し、キャップ取付筒51の弾性変形を伴いながらキャップ取付筒51のリブ512を乗り越える。容器本体4の糊導出口42は、これらのリブ512、523さらにはキャップ取付筒51の基部よりも先方に配されている。
【0031】
キャップ取付筒51の基部から延出端に向かう部位の外周511は、他の部位と比較して当該部位の肉厚を薄くするように、先端側から切り欠いてある。この切欠510は、周方向に沿って一周連続している。キャップ52を装着した閉止状態では、キャップ52の周壁521の端縁部がこの切欠510の内に収まる。そして、キャップ52の周壁521の端面525が、切欠510の容器2の先端方向を向く端面513に当接または極近接する。キャップ52のリブ523は、キャップ52の端縁部の内周面522、キャップ取付筒51に形成した切欠510の外周面511に面する位置から膨出している。キャップ取付筒51のリブ512は、キャップ取付筒51の切欠510の外周面511、キャップ52の端縁部の内周面522に面する位置から膨出している。また、閉止状態では、キャップ52の周壁521の外周526と、キャップ取付筒51における切欠510よりも容器2の基端側にある部位の外周514とが、面一または略面一となる。因みに、キャップ取付筒51における切欠510よりも基端側の部位の肉厚は、容器2の基端に向かうほど薄くなる傾向にある。
【0032】
図3ないし
図5に示すように、糊押出機構6は、容器本体4の底壁45の軸孔451に挿通して糊充填部43内の糊充填空間41に侵入したねじ棒61と、底壁45により隔てられた糊充填部43の外にあるねじ棒61の基端部に固定した手動操作用のつまみ62と、糊充填部43内においてねじ棒61に螺着したエレベータ63とを備えている。つまみ62の外周621は、把持部分となる容器本体4のボディ44の外周441の形状に合致した角筒状、特に四角筒状をなす。ねじ棒61の外周には、雄ねじ611を切ってある。
【0033】
エレベータ63は、容器2の先端側に向かって開口した有底の箱形をなし、糊充填部43内の糊充填空間41に充填される糊3を支持する。エレベータ63の底の中心部には、ねじ棒61の雄ねじ611に螺合する雌ねじ孔631を設けている。エレベータ63の外周面632は、糊充填部43の内周431の形状に合致するような角筒状、特に四角筒状に形成している。しかして、糊充填部43の内周面431と、これに当接または極近接するエレベータ63の外周面632とのうち一方に、糊3及び容器2の伸長方向即ち糊3の進退方向に沿って延伸するレール433を突出させて設け、他方に同方向に沿って延伸しレール433と係合する凹溝633を設けている。レール433と凹溝633との凹凸係合は、エレベータ63が容器本体4に対して相対的に軸線回りに回動することを禁じながら、エレベータ63が容器本体4に対して相対的に軸線と平行に移動することを案内する。
【0034】
糊3を糊導出口42から繰り出して使用するためには、使用者が、キャップ52を取り外して糊導出口42を露出させる開放状態とした上で、容器本体4の外部にあるつまみ62を軸線回りに正回転させればよい。さすれば、つまみ62とともにねじ軸が正回転し、これに螺合しているエレベータ63が容器本体4の糊充填部43内で糊導出口42に接近する先端方向に移動し、エレベータ63に支持された糊3が糊充填空間41から糊導出口42を通じて押し出される。
【0035】
使用を終えて繰り出した糊3を糊導出口42よりも没入させるためには、使用者が、つまみ62を軸線回りに逆回転させればよい。さすれば、ねじ軸が逆回転し、エレベータ63が糊充填部43内で糊導出口42から離反する基端方向に移動し、エレベータ63に支持された糊3が糊充填空間41内に引き込まれる。しかる後、キャップ52を再び装着して糊導出口42を被覆する閉止状態とする。
【0036】
本実施形態では、内部に糊3が充填される糊充填空間41を有するとともに先端に前記糊3を外部に導出させるための円形状でない糊導出口42を有した容器本体4と、この容器本体4の糊充填空間41が外部に連通するのを気密に遮断する閉止状態及び前記糊3を外部に導出可能な開放状態の何れかを選択的にとり得る開閉機構5とを具備するスティック糊1の容器2であって、前記開閉機構5が、前記容器本体4に設けられたキャップ取付筒51と、このキャップ取付筒51に外側から着脱可能に嵌合するキャップ52とを備え、キャップ取付筒51の外側の円形状をなす嵌合部512にキャップ52が嵌合するかまたはキャップ52の内側の円形状をなす嵌合部523にキャップ取付筒51が嵌合し、前記キャップ取付筒51が、その先端部に前記容器本体4と接続される頂壁515を有するとともに、内周面517の少なくとも一部を先端とは反対側の基端方向に開放された隙間516を介して容器本体4に対面させたものであるスティック糊1の容器2を構成した。
【0037】
このようなものであれば、角形状をなす糊導出口42から角柱状をなす糊3を繰り出して、四角形の用紙の角部等に無理なく糊3を美麗に塗布することが可能となる。糊充填部43の先端筒状部分432及び糊導出口42はキャップ取付筒51の基部及び頂壁515よりも先方に位置しており、その視認性が良好であり、糊3を塗布する箇所を常に確認しながら作業することができる。
【0038】
スティック糊1の非使用時には、キャップ52をキャップ取付筒51の外周511に嵌合させて装着することで、糊充填部43の糊充填空間41に充填された糊3が密封されるため、乾燥その他による糊3の品質及び性能の経時変化を防止または抑制することができる。特に、キャップ取付筒51の嵌合部512及びキャップ52の嵌合部523をそれぞれ真円または真円に近い円形状に成形しているので、
図7及び
図8に示すように、キャップ52とキャップ取付筒51とを全周に亘って均一に密着させることが可能となり、一部に隙間が生じて気密性が損なわれる不具合を回避できる。
【0039】
キャップ取付筒51の内周面517と容器本体4の外周面441との間には隙間516を設けており、キャップ取付筒51の厚みを周方向に沿って均一化し、嵌合部512を正確な真円形状とすることができる。これにより、キャップ52を装着した閉止状態での気密性が高まる。加えて、隙間516を設けることで、キャップ取付筒51が径方向に弾性変形しやすくなるため、キャップ取付筒51の外周511とキャップ52の内周522との嵌合の度合いを強め(きつめ)に設定しても、キャップ52を円滑に脱着または開閉することができる。
【0040】
本実施形態によれば、キャップ取付筒51の基部と容器本体4とが頂壁515を介して接合し、キャップ取付筒51と容器本体4との間の隙間516は容器2の基端方向に開放するが、先端方向には開放せず閉塞される。従って、キャップ52をキャップ取付筒51に外嵌した閉止状態では、容器本体4の先端筒状部分432及び糊導出口42を収容しているキャップ52の内部と当該隙間516とが連通せずに隔絶される。故に、閉止状態において隙間516内の空気が糊3に触れることがない、つまりは糊3に触れる空気の量がより減少して、乾燥、酸化等に起因する糊3の変質、例えば縮小固化を効果的に抑止できる。
【0041】
キャップ52はキャップ取付筒51に対して先端側から覆い被さるが、頂壁515の存在により、キャップ52が外嵌されるキャップ取付筒51の強度が向上し、閉止状態における気密性が高まり、また不意に外力が加わったとしてもキャップ52がキャップ取付筒51から脱離するおそれが低減する。
【0042】
総じて言えば、閉止状態におけるキャップ52の気密性を維持しながらも、糊導出口42の形状の自由度を高めることができ、糊3の乾燥その他の劣化の問題を解決しつつ、用紙の縁や角の部分への糊3の塗布の作業性を向上させることができる。
【0043】
加えて、本実施形態では、前記キャップ取付筒51が、前記頂壁515から基端方向に、前記容器本体4における前記糊3を塗布する操作を行う使用者の母指または示指の指先が触れ得る把持部分441の先端領域まで延出している。これにより、使用者が自然な形でキャップ取付筒51の延出端に指を掛けて容器本体4を把持することができ、取り落としにくく使い勝手のよいスティック糊1となる。
【0044】
また、ゴムや軟質樹脂等により成形したグリップ等の部材を容器本体4の把持部分の外周441に装着する場合において、容器2の基端方向に開口している隙間516を当該部材を係合せしめる係合部として利用することが可能である。
【0045】
さらに、前記キャップ取付筒51の延出端と前記把持部分441の先端領域とが前記隙間516の開口部を介して離間しているとともに、横断面視において前記把持部分441の外側辺442が前記糊導出口42の内側辺421と平行または略平行となっているので、使用者が糊導出口42から繰り出した糊3の側辺の向きを糊3を塗布する対象の用紙の縁辺の向きと平行に揃える操作が容易となる。
【0046】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。上記実施形態では、頂壁515の位置から容器2の基端に向かって延びるキャップ取付筒51が比較的短尺なものであったが、
図10ないし
図13に示すように、キャップ取付筒51を、その基端が容器本体4の基端近傍または糊押出機構6のつまみ62のすぐ手前まで達するような長尺なものとすることも可能である。
【0047】
図10ないし
図13に示す変形例では、キャップ取付筒51が、頂壁515から軸線と平行または略平行に容器本体4の基端領域まで延出している。即ち、キャップ取付筒51が、ボディ44の略全域を外側から囲繞している。そのため、このキャップ取付筒51の外周518が、スティック糊1を使用して糊3を塗布しようとする使用者が把持することのできる把持部分として機能する。上記実施形態と異なり、本変形例では、把持部分518即ちキャップ取付筒51の外周、及び糊押出機構6のつまみ62の外周621が円筒状をなしている。
【0048】
一方で、キャップ取付筒51の内周面517が隙間516を介して容器本体4のボディ44の外周面441と対面している点、キャップ取付筒51の内周517がボディ44の外周441の隅角部即ち四隅に内接して一体化しており隙間516がボディ44の四隅により分断される点は、上記実施形態と同様である。キャップ取付筒51の延出端とボディ44の基端領域とは、隙間516の開口部を介して離間している。つまり、容器本体4における隙間516は、容器2の基端方向に開放している。尤も、隙間516の開口部は、その外周621がキャップ取付筒51の外周518と面一または略面一となるように径方向に拡張したつまみ62によって遮蔽されており、使用者から見て露わとならない。
【0049】
そして、キャップ取付筒51の基部は頂壁515により容器本体4の外周441に連接し、その頂壁515が隙間516を先端側から閉塞することから、隙間516は容器2の先端方向には開放していない。隙間516の径方向に沿った幅、換言すればキャップ取付筒51の内周517とボディ44の外周441との径方向に沿った離間距離は、一定または略一定である。
【0050】
本変形例では、キャップ取付筒51及び隙間516が頂壁515から基端方向に容器本体4の基端領域まで拡張している。即ち、キャップ取付筒51及び隙間516が先端筒状部分432を除く容器本体4の略全長に亘って存在しているので、糊充填部43内の糊充填空間41に充填された糊3に対して断熱効果を得られ、糊3の温度変化に起因した経時変化を抑制することができる。しかも、一体的に延長したキャップ取付筒51が、糊3を塗布する操作を行う使用者の母指と示指との間の指間部が触れ得るので、これを把持部分518として使用者がしっかりと把持することができる。
【0051】
また、上記実施形態及び上掲の変形例では、キャップ取付筒51及びキャップ52の周壁521がそれぞれ、糊3及び容器2が伸長する方向に沿った軸線と平行または略平行に延出し、いわば真っ直ぐに伸びた円筒状となっていたが、
図14に示すように、キャップ取付筒51を基端側から先端側に向かって外径が徐々に縮小するようなテーパ状に成形し、かつキャップ52の周壁521をこれに合わせて内径が徐々に拡開するような切頭円錐状または漏斗状に成形してもよい。
【0052】
さらに、上記実施形態及び上掲の変形例では、キャップ取付筒51の基部が頂壁515の頂面よりも先方に突出していなかったが、
図15に示すように、キャップ取付筒51を頂壁515から容器2の先端方向に延出させ、その先端が頂壁515の頂面よりも先方に突出するものとしても構わない。但し、糊導出口42は、キャップ取付筒51よりも先方に位置する。キャップ取付筒51における、頂壁515よりも先方に突出した部位の外周519は、キャップ52の周壁521の内周と密接する嵌合部512として利用することができる。例えば、キャップ取付筒51の当該部位の外周519に、径方向に沿って外側方に膨出するリブ512を形成し、このリブを嵌合部512としてキャップ52の周壁521の内周522に密着させる。あるいは、キャップ52の周壁521の内周522に、径方向に沿って内側方に膨出するリブ523を形成し、そのリブを嵌合部523としてキャップ取付筒51の当該部位の外周519に密着させることもできる。
【0053】
糊導出口42の形状は、円形状には限定されず、三角形状や六角形状等の多角形状とすることが許される。その場合、糊導出口42から導出される糊3が、三角柱状や六角柱状等の多角柱状をなすこととなる。
【0054】
その他、各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…スティック糊
2…容器
3…糊
4…容器本体
41…糊充填空間
42…糊導出口
421…内側辺
441…把持部分
442…外側辺
5…開閉機構
51…キャップ取付筒
511…外周面
512…嵌合部
515…頂壁
516…隙間
517…内周面
518…把持部分
519…外周面
52…キャップ
523…嵌合部