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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】超音波探触子及び超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20220823BHJP
【FI】
A61B8/14
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019009013
(22)【出願日】2019-01-23
(65)【公開番号】P2020116099
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深瀬 浩一
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/031168(WO,A1)
【文献】特開2018-170449(JP,A)
【文献】特開2012-085872(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0100963(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を被検体に送受信する圧電素子と、
前記圧電素子に設けられた第1の電極に電気的に接続され、当該圧電素子に入力する駆動信号及び当該圧電素子から出力される受信信号が流れる電気信号線と、
前記電気信号線と間隙を介して設けられ、前記圧電素子に設けられた第2の電極に電気的に接続された接地信号線と、
温度により変形し、所定の温度以上で前記電気信号線及び前記接地信号線を接触させる熱変形部と、を備える超音波探触子。
【請求項2】
前記熱変形部は、導体からなり、前記電気信号線及び前記接地信号線の少なくとも1つの一部として機能する請求項1に記載の超音波探触子。
【請求項3】
前記電気信号線及び前記接地信号線の少なくとも1つが表面に形成された絶縁体部を備える請求項1又は2に記載の超音波探触子。
【請求項4】
前記電気信号線及び前記接地信号線は、前記絶縁体部の表面に形成され、
前記電気信号線及び前記接地信号線を絶縁し、前記熱変形部の変形により当該電気信号線及び当該接地信号線が接触される空洞部と、を備える請求項3に記載の超音波探触子。
【請求項5】
前記絶縁体部は、前記電気信号線及び前記接地信号線の外側に配置され、当該電気信号線又は当該接地信号線が前記圧電素子側の表面に形成されている請求項3に記載の超音波探触子。
【請求項6】
前記熱変形部は、バイメタルからなる請求項1から5のいずれか一項に記載の超音波探触子。
【請求項7】
前記熱変形部は、放熱機能を有する請求項1から6のいずれか一項に記載の超音波探触子。
【請求項8】
前記電気信号線、前記接地信号線及び前記熱変形部は、平行に配置されている請求項1から7のいずれか一項に記載の超音波探触子。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の超音波探触子と、
前記駆動信号を生成して前記超音波探触子に出力する送信部と、
前記超音波探触子から入力された前記受信信号に基づいて超音波画像データを生成する画像生成部と、を備える超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波探触子及び超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断は、超音波探触子を体表又は体腔内から当てるという簡単な操作で心臓や胎児の様子が超音波画像として得られ、かつ安全性が高いため繰り返して検査を行うことができる。このような超音波診断を行うために用いられる超音波診断装置が知られている。超音波画像データは、圧電素子を有する超音波探触子から超音波が被検体に送信され、反射した超音波を超音波探触子が受信し、その受信した信号に様々な処理を行うことで得られる。
【0003】
超音波探触子において、圧電素子の焦電効果により発生する電界の発生により、圧電素子の特性劣化が生じる場合がある。焦電効果とは、温度変化によって誘電体の分極(表面電荷)が変化する現象をいう。一般に圧電特性が大きな材料ほど焦電係数は大きくなるので、高い圧電特性をもつ材料を圧電素子に用いる場合、必然的にこの電荷量は大きくなり、結果として圧電素子には大きな電界がかかってしまう。この電界の影響によって圧電素子の分極方向に対して逆電界がかかる場合があり、このうち電界が大きい場合すなわち焦電係数が大きい場合には、圧電素子に対して脱分極の作用を及ぼすことがある。脱分極作用はデバイスの特性劣化につながることは明白である。
【0004】
このため、圧電素子の金属電極間に抵抗(導電ペースト)を塗布し、熱により発生した電荷が常に放電され、焦電効果による素子への電圧印加を防ぐ超音波探触子が知られている(特許文献1参照)。
【0005】
また、超音波駆動電圧の制御信号により、非駆動時に圧電素子(圧電体)に接続された信号線とグラウンド線とを短絡させ、不使用時の高温環境や急激な温度変化環境における圧電素子の信頼性を維持した超音波探触子が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-330578号公報
【文献】特許第6271127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の超音波探触子では、圧電素子の信号線側の金属電極とグラウンド線側の金属電極との間に常に抵抗が接続されている。このため、抵抗による圧電素子の特性劣化が生じる。
【0008】
また、特許文献2の超音波探触子では、超音波駆動電圧の制御信号の有無によりスイッチが切り替わり、信号線とグラウンド線とが短絡/開放される。具体的には、超音波駆動電圧の制御信号が有る場合、信号線とグラウンド線とは開放し、超音波駆動電圧の制御信号が無い場合、信号線とグラウンド線とは短絡する。このため、超音波駆動電圧の制御信号による電気的な制御が必要になりコストが上がる。
【0009】
本発明の課題は、焦電効果による圧電素子の特性劣化を容易になくすことである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の超音波探触子は、
超音波を被検体に送受信する圧電素子と、
前記圧電素子に設けられた第1の電極に電気的に接続され、当該圧電素子に入力する駆動信号及び当該圧電素子から出力される受信信号が流れる電気信号線と、
前記電気信号線と間隙を介して設けられ、前記圧電素子に設けられた第2の電極に電気的に接続された接地信号線と、
温度により変形し、所定の温度以上で前記電気信号線及び前記接地信号線を接触させる熱変形部と、を備える。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の超音波探触子において、
前記熱変形部は、導体からなり、前記電気信号線及び前記接地信号線の少なくとも1つの一部として機能する。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の超音波探触子において、
前記電気信号線及び前記接地信号線の少なくとも1つが表面に形成された絶縁体部を備える。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の超音波探触子において、
前記電気信号線及び前記接地信号線は、前記絶縁体部の表面に形成され、
前記電気信号線及び前記接地信号線を絶縁し、前記熱変形部の変形により当該電気信号線及び当該接地信号線が接触される空洞部と、を備える。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の超音波探触子において、
前記絶縁体部は、前記電気信号線及び前記接地信号線の外側に配置され、当該電気信号線又は当該接地信号線が前記圧電素子側の表面に形成されている。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の超音波探触子において、
前記熱変形部は、バイメタルからなる。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の超音波探触子において、
前記熱変形部は、放熱機能を有する。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の超音波探触子において、
前記電気信号線、前記接地信号線及び前記熱変形部は、平行に配置されている。
【0018】
請求項9に記載の発明の超音波診断装置は、
請求項1から8のいずれか一項に記載の超音波探触子と、
前記駆動信号を生成して前記超音波探触子に出力する送信部と、
前記超音波探触子から入力された前記受信信号に基づいて超音波画像データを生成する画像生成部と、を備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、焦電効果による圧電素子の特性劣化を容易になくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態の超音波診断装置の外観図である。
図2】超音波診断装置の機能構成を示すブロック図である。
図3】実施の形態の超音波探触子の断面図である。
図4】(a)は、実施の形態の変形前の超音波探触子の一部を示す断面図である。(b)は、実施の形態の変形後の超音波探触子の一部を示す断面図である。
図5】(a)は、第1の実施例の変形前の超音波探触子の一部を示す断面図である。(b)は、第1の実施例の変形後の超音波探触子の一部を示す断面図である。
図6】(a)は、第2の実施例の変形前の超音波探触子の一部を示す断面図である。(b)は、第2の実施例の変形後の超音波探触子の一部を示す断面図である。
図7】(a)は、第3の実施例の変形前の超音波探触子の一部を示す断面図である。(b)は、第3の実施例の変形後の超音波探触子の一部を示す断面図である。
図8】(a)は、第4の実施例の変形前の超音波探触子の一部を示す断面図である。(b)は、第4の実施例の変形後の超音波探触子の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
添付図面を参照して本発明に係る実施の形態及び第1~第4の実施例を順に詳細に説明する。なお、本発明は、図示例に限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態)
図1図4を参照して、本発明に係る実施の形態を説明する。先ず、図1を参照して、本実施の形態の超音波診断装置100の全体構成を説明する。図1は、本実施の形態の超音波診断装置100の外観図である。
【0023】
図1に示すように、超音波診断装置100は、超音波診断装置本体1と、超音波探触子2と、を備える。超音波探触子2は、図示しない生体などの被検体内に対して超音波(送信超音波)を送信するとともに、この被検体内で反射した超音波の反射波(反射超音波:エコー)を受信する。超音波診断装置本体1は、超音波探触子2とケーブル3を介して接続され、超音波探触子2に電気信号の駆動信号を送信することによって超音波探触子2に被検体に対して送信超音波を送信させるとともに、超音波探触子2にて受信した被検体内からの反射超音波に応じて超音波探触子2で生成された電気信号である受信信号に基づいて被検体内の内部状態を超音波画像データとして画像化する。
【0024】
超音波探触子2は、圧電素子からなる振動子2a(図2参照)を備えており、この振動子2aは、例えば、方位方向(走査方向)に一次元アレイ状に複数配列されている。本実施の形態では、例えば、192個の振動子2aを備えた超音波探触子2を用いている。なお、振動子2aは、二次元アレイ状に配列されたものであってもよい。また、振動子2aの個数は、任意に設定することができる。また、本実施の形態では、超音波探触子2としてリニア電子スキャンプローブを用いて、コンベックス走査方式による超音波の走査を行うものとするが、リニア走査方式又はセクタ走査方式の何れの方式を採用することもできる。超音波診断装置本体1と超音波探触子2との通信は、ケーブル3を介する有線通信に代えて、UWB(Ultra Wide Band)などの無線通信により行うこととしてもよい。
【0025】
次いで、図2を参照して、超音波診断装置100の機能構成を説明する。図2は、超音波診断装置100の機能構成を示すブロック図である。
【0026】
図2に示すように、超音波診断装置本体1は、例えば、操作入力部11と、送信部12と、受信部13と、画像生成部14と、画像処理部15と、DSC(Digital Scan Converter)16と、表示部17と、制御部18と、を備える。
【0027】
操作入力部11は、医師、技師などの操作者の操作入力を受け付ける。操作入力部11は、例えば、診断開始を指示するコマンド、被検体の個人情報などのデータ、超音波画像データなどを表示部17に表示するための各種画像パラメーターの入力などを行うための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボードなどを備えており、操作信号を制御部18に出力する。なお、超音波診断装置本体1が、表示部17の表示パネル上に設けられ操作者のタッチ入力を受け付けるタッチパネルを備える構成としてもよい。
【0028】
送信部12は、制御部18の制御に従って、超音波探触子2にケーブル3を介して電気信号である駆動信号を供給して超音波探触子2に送信超音波を発生させる回路である。また、送信部12は、例えば、クロック発生回路、遅延回路、パルス発生回路を備える。クロック発生回路は、駆動信号の送信タイミングや送信周波数を決定するクロック信号を発生させる回路である。遅延回路は、振動子2a毎に対応した個別経路毎に遅延時間を設定し、設定された遅延時間だけ駆動信号の送信を遅延させ、送信超音波によって構成される送信ビームの集束を行うための回路である。パルス発生回路は、所定の周期で駆動信号としてのパルス信号を発生させるための回路である。上述のように構成された送信部12は、例えば、超音波探触子2に配列された複数(例えば、192個)の振動子2aのうちの連続する一部(例えば、64個)を駆動して送信超音波を発生させる。そして、送信部12は、送信超音波を発生させる毎に駆動する振動子2aを方位方向(走査方向)にずらすことで走査(スキャン)を行う。
【0029】
受信部13は、制御部18の制御に従って、超音波探触子2からケーブル3を介して電気信号である受信信号を受信する回路である。受信部13は、例えば、増幅器、A/D変換回路、整相加算回路を備えている。増幅器は、受信信号を、振動子2a毎に対応した個別経路毎に、予め設定された増幅率で増幅させるための回路である。A/D変換回路は、増幅された受信信号をアナログ-デジタル変換(A/D変換)するための回路である。整相加算回路は、A/D変換された受信信号に対して、振動子2a毎に対応した個別経路毎に遅延時間を与えて時相を整え、これらを加算(整相加算)して音線データを生成するための回路である。
【0030】
画像生成部14は、制御部18の制御に従って、受信部13からの音線データに対して包絡線検波処理や対数圧縮などを実施し、ダイナミックレンジやゲインの調整を行って輝度変換することにより、受信エネルギーとしての輝度値を有する画素からなるB(Brightness)モード画像データを生成することができる。すなわち、Bモード画像データは、受信信号の強さを輝度によって表したものである。画像生成部14は、画像モードがBモードの超音波画像データとしてのBモード画像データの他、A(Amplitude)モード、M(Motion)モード、ドプラ法による画像モード(カラードプラモードなど)など、他の画像モードの超音波画像データが生成できるものであってもよい。
【0031】
画像処理部15は、制御部18の制御に従って、設定中の各種画像パラメーターに応じて、画像生成部14から出力されたBモード画像データに画像処理を施す。また、画像処理部15は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの半導体メモリーによって構成された画像メモリー部15aを備える。画像処理部15は、制御部18の制御に従って、画像処理を施したBモード画像データをフレーム単位で画像メモリー部15aに記憶する。フレーム単位での画像データを超音波画像データあるいはフレーム画像データということがある。画像処理部15は、制御部18の制御に従って、上述したようにして生成された画像データを順にDSC16に出力する。
【0032】
DSC16は、制御部18の制御に従って、画像処理部15より受信した画像データを表示用の画像信号に変換し、表示部17に出力する。
【0033】
表示部17は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode-Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electronic Luminescence)ディスプレイ、無機ELディスプレイ及びプラズマディスプレイなどの表示装置が適用可能である。表示部17は、制御部18の制御に従って、DSC16から出力された画像信号に従って表示画面上に超音波画像データの静止画又は動画の表示を行う。また、表示部17は、制御部18の制御に従って、ダイナミックレンジの調整を行うことができる。
【0034】
制御部18は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備え、ROMに記憶されているシステムプログラムなどの各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムに従って超音波診断装置100の各部の動作を制御する。ROMは、半導体などの不揮発メモリーなどにより構成され、超音波診断装置100に対応するシステムプログラム及び該システムプログラム上で実行可能な各種処理プログラムや、ガンマテーブルなどの各種データなどを記憶する。これらのプログラムは、コンピューターが読み取り可能なプログラムコードの形態で格納され、CPUは、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。RAMは、CPUにより実行される各種プログラム及びこれらプログラムに係るデータを一時的に記憶するワークエリアを形成する。
【0035】
超音波診断装置100が備える各部について、各々の機能ブロックの一部又は全部の機能は、集積回路などのハードウェア回路として実現することができる。集積回路とは、例えばLSI(Large Scale Integration)であり、LSIは集積度の違いにより、IC(Integrated Circuit)、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)やLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサーを利用してもよい。また、各々の機能ブロックの一部又は全部の機能をソフトウェアにより実行するようにしてもよい。この場合、このソフトウェアは一つ又はそれ以上のROMなどの記憶媒体、光ディスク、又はハードディスクなどに記憶されており、このソフトウェアが演算処理器により実行される。
【0036】
つぎに、図3及び図4を参照して、超音波探触子2の内部構成を説明する。図3は、超音波探触子2の断面図である。図4(a)は、変形前の超音波探触子2の一部を示す断面図である。図4(b)は、変形後の超音波探触子2の一部を示す断面図である。
【0037】
図3に示すように、超音波探触子2は、背面層21と、第1の電極としてのI/O(Input/Output)電極22と、圧電素子23と、第2の電極としてのGND(GrouND)電極24と、音響整合層25と、音響レンズ26と、電気信号線としてのI/O信号線27と、接地信号線としてのGND信号線28と、熱変形部29と、を備える。背面層21、I/O電極22、圧電素子23、GND電極24、音響整合層25及び音響レンズ26は、図上正面視下方から上方に順に積層されている。
【0038】
背面層21は、例えば、背面負荷材(バッキング材)により構成されている。背面負荷材は、音響インピーダンスが圧電素子23よりも低い材料により形成されており、不要な超音波を吸収し得る超音波吸収体である。すなわち、背面負荷材は、圧電素子の反対側から発生する超音波を吸収する。
【0039】
背面負荷材としては、天然ゴム、フェライトゴム、エポキシ樹脂や、これらの材料に酸化タングステンや酸化チタン、フェライトなどの粉末を入れてプレス成形したゴム系複合材やエポキシ樹脂複合材、塩化ビニル、ポリビニルブチラール(PVB)、ABS樹脂、ポリウレタン(PUR)、ポリビニルアルコール(PVAL)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリエチレンテレフタレート(PETP)、フッ素樹脂(PTFE)ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート-ポリエチレングリコール共重合体などの熱可塑性樹脂などが適用できる。
【0040】
好ましい背面負荷材としては、ゴム系複合材料、及び/又は、エポキシ樹脂複合材からなるものであり、その形状は背面層21や圧電素子23、これらを含むプローブヘッドの形状に応じて、適宜選択することができる。
【0041】
圧電素子23は、下面にI/O電極22が形成され、上面にGND電極24が形成されて、背面層21上に積層されている。圧電素子23は、圧電材料を有し、電気信号を機械的な振動に、また機械的な振動を電気信号に変換可能で超音波の送受信が可能で焦電効果を有する素子(圧電素子)である。
【0042】
圧電材料は、電気信号を機械的な振動に、また機械的な振動を電気信号に変換可能な圧電体を含有する材料である。圧電体としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系セラミックス、チタン酸鉛、メタニオブ酸鉛などの圧電セラミックス、ニオブ酸リチウム、亜鉛ニオブ酸鉛とチタン酸鉛、マグネシウムニオブ酸鉛とチタン酸鉛などの固溶系単結晶からなる圧電単結晶、水晶、ロッシェル塩、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、あるいはVDFと、例えば、3フッ化エチレン(TrFE)の共重合体であるポリフッ化ビニリデン-3フッ化エチレン(P(VDF-TrFE))のようなPVDF共重合体、シアン化ビニリデン(VDCN)の重合体であるポリシアン化ビニリデン(PVDCN)、あるいはシアン化ビニリデン系共重合体あるいはナイロン9、ナイロン11などの奇数ナイロンや、芳香族ナイロン、脂環族ナイロン、あるいはポリ乳酸や、ポリヒドロキシブチレートなどのポリヒドロキシカルボン酸、セルロース系誘導体、ポリウレアなどの有機高分子圧電材料などを用いることができる。
【0043】
圧電材料の厚さとしては、例えば、100~500[μm]の範囲で用いられる。圧電素子23は、その両面にI/O電極22、GND電極24が付された状態で、振動子2aとして用いられる。
【0044】
I/O電極22、GND電極24に用いられる材料としては、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)などが挙げられる。
【0045】
圧電素子23にI/O電極22、GND電極24を付す方法としては、例えば、チタン(Ti)やクロム(Cr)などの下地金属をスパッタ法により0.02~1.0[μm]の厚さに形成した後、上記金属元素を主体とする金属及びそれらの合金からなる金属材料、さらには必要に応じ一部絶縁材料をスパッタ法、その他の適当な方法で1~10[μm]の厚さに形成する方法が挙げられる。
【0046】
I/O電極22、GND電極24形成はスパッタ法以外でも、微粉末の金属粉末と低融点ガラスとを混合した導電ペーストをスクリーン印刷やディッピング法、溶射法で形成することもできる。I/O電極22、GND電極24は、超音波探触子2の形状に応じて、圧電素子23の表面に設けられている。
【0047】
また、圧電素子23において、I/O電極22がI/O信号線27と電気的に接続されており、I/O信号線27がケーブル3のI/O信号線と電気的に接続され、GND電極24がGND信号線28と電気的に接続されており、GND信号線28がケーブル3のGND信号線と電気的に接続されている。したがって、超音波診断装置本体1から出力される駆動信号が圧電素子23に入力され、圧電素子23で発生した受信信号が超音波診断装置本体1に出力される。
【0048】
音響整合層25は、圧電素子23と音響レンズ26との間の音響インピーダンスを整合させ、圧電素子23、音響整合層25及び音響レンズ26の各々の境界面での反射を抑制する。音響整合層25は、圧電素子23に対して被検体側に装着される。
【0049】
音響整合層25は、単数の層からなり又は複数の層が積層されて構成されている。複数の層の厚みを合わせた音響整合層25の音響インピーダンスは、最下層から最上層にかけて漸次減少するとともに、最下層の音響インピーダンスが圧電素子23の音響インピーダンス未満となるよう設定される。また、後述する音響レンズ26の音響インピーダンスと整合させるため、最上層の音響インピーダンスと音響レンズ26の音響インピーダンスとの差をより小さくすることが好ましく、より好ましくは、最上層と音響レンズ26との界面における最上層の音響インピーダンスが音響レンズ26の音響インピーダンスとほぼ等しくなるように音響整合層25を設ける。
【0050】
音響整合層25に用いられる材料として、具体的には、アルミ、アルミ合金(例えばAL-Mg合金)、マグネシウム合金、マコールガラス、ガラス、溶融石英、コッパーグラファイト、PE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)、PC(ポリカーボネート)、ABC樹脂、ABS樹脂、AAS樹脂、AES樹脂、ナイロン(PA6、PA6-6)、PPO(ポリフェニレンオキシド)、PPS(ポリフェニレンスルフィド:ガラス繊維入りも可)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PAI(ポリアミドイミド)、PETP(ポリエチレンテレフタレート)、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。好ましくはエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂に、充填剤として、タングステン、亜鉛華、酸化チタン、シリカやアルミナ、ベンガラ、フェライト、酸化タングステン、酸化イットリビウム、硫酸バリウム、モリブデンなどを入れて成形したものが適用できる。ここで、充填材の種類や量、分布などを各層で異ならせることにより、同一の種類の樹脂であっても各層の音響インピーダンスを異なるものとすることができる。
【0051】
音響レンズ26は、屈折を利用して超音波ビームを集束し分解能を向上するために配置されるものである。すなわち、音響レンズ26は、超音波探触子2の被検体と接する側に設けられ、圧電素子23にて発生した超音波を、被検体に効率よく入射させる。音響レンズ26は、被検体と接する部分で、内部の音速に応じて凸型又は凹型のレンズ形状を有し、被検体に入射される超音波を、撮像断面と直交する厚さ方向(エレベーション方向)で収束させる。
【0052】
音響レンズ26の音響インピーダンスは、被検体の音響インピーダンスに対して、音響レンズ26と被検体との間での超音波の減衰や反射がより小さくなるよう適宜設定される。ここで、被検体はヒトの肉体などであることから、一般的に、音響レンズ26の音響インピーダンスは、圧電体のような硬質の物質に比して音響インピーダンスが極めて低く設定される。このことから、音響レンズ26は、設定された音響インピーダンスに対応する素材(例えば、軟質の高分子材料など)により形成される。なお、音響レンズ26と音響整合層25との間での超音波の減衰や反射をより低減させるため、音響整合層25のうち、音響レンズ26と当接する部分の音響インピーダンスは、音響レンズ26とほぼ同一であることが好ましい。
【0053】
音響レンズ26を構成する素材としては、従来公知のシリコーン系ゴム、ブタジエン系ゴム、ポリウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴムなどのホモポリマー、エチレンとプロピレンとを共重合させてなるエチレン-プロピレン共重合体ゴムなどの共重合体ゴムなどが適用可能である。これらのうち、シリコーン系ゴム及びブタジエン系ゴムを用いることが好ましい。
【0054】
I/O信号線27は、導体で構成され、圧電素子23のI/O電極22と導電性接着剤などで電気的に接続され、ケーブル3のI/O信号線を介して、超音波診断装置本体1からの駆動信号をI/O電極22に伝達し、ケーブル3のI/O信号線を介して、被検体からの超音波を受信した圧電素子23から出力された受信信号をI/O電極22から超音波診断装置本体1に伝達する。GND信号線28は、導体で構成され、圧電素子23のGND電極24と導電性接着剤などで電気的に接続され、ケーブル3のGND信号線を介して超音波診断装置本体1のグラウンドに接続されている。I/O信号線27、GND信号線28及び熱変形部29は、間隙を設けて平行に配置されている。
【0055】
熱変形部29は、上端が固定され、下端が解放されて、温度により変形する機能を有する。熱変形部29は、例えば、亜鉛、銅、ニッケル、マンガン、フェライト、クロム、モリブデン、ジルコニクム、アルミニウムのいずれかからなる、バイメタルで構成される。ここで、熱膨張率が異なる2種以上の材料を接合したものをバイメタルという。本実施の形態では、熱変形部29は、圧電素子23側の内側部29aと、圧電素子23の外側の外側部29bとを有し、内側部29a及び外側部29bが接合されているものとする。
【0056】
本実施の形態では、内側部29aに熱膨張率が低い材料を用い、外側部29bに、内側部29aに比べて熱膨張率が高い材料を用いる。例えば、内側部29aと外側部29bとしては、ニッケルフェライト合金と銅とが接合したもの、クロムフェライト合金とニッケルクロムフェライトとが接合したもの、あるいは、ニッケルフェライト合金とニッケルマンガンフェライト合金とが接合したものなどがある。上記、いずれも低熱膨張材と高熱膨張材の組み合わせとなる。
【0057】
ここで、図4を参照して、熱変形部29の変形及びその条件を説明する。ただし、図4(a)、図4(b)は、分かりやすくするため、超音波探触子2のうちの、圧電素子23、I/O電極22、GND電極24、I/O信号線27、GND信号線28及び熱変形部29のみを図示した断面図である。
【0058】
圧電素子が高温にさらされると、その焦電効果によって電界が発生し、その電界によって、圧電素子は脱分極し、特性劣化する。しかし、本実施の形態の超音波探触子2では、図4(a)に示すように、通常の温度で、I/O信号線27とGND信号線28と熱変形部29とが間隙を設けて配置しており、超音波探触子2の温度上昇に伴い、熱変形部29がGND信号線28側に変形する。さらに、図4(b)に示すように、熱変形部29は、温度上昇によってGND信号線28とI/O信号線27とを接触させ、電気的に短絡させる。
【0059】
つまり、高温下で生じる圧電素子の焦電効果によって生じる電界の発生を抑制し、圧電素子23の特性劣化を無くすことができる。つまり、超音波探触子2の特性劣化を無くすことができる。なお、本実施の形態では、熱変形部29は、GND信号線28側に配置したが、熱変形部をI/O信号線27側に配置する構成としてもよい。あるいは、熱変形部をGND信号線28側とI/O信号線27側との両側に配置する構成としてもよい。
【0060】
なお、温度上昇に伴い熱変形部29は変形するが、この変形は、I/O信号線27、GND信号線28自身の熱膨張による変形と比較すると10倍以上の変形となる。例えば、I/O信号線27、GND信号線28が金属導体で構成され、各々の寸法が0.1[mm]の場合、I/O信号線27、GND信号線28自身の熱膨張による変形は0.1[μm]程度であるが、I/O信号線27とGND信号線28との間隙を寸法ばらつきを考慮して1[μm]以上としており、I/O信号線27、GND信号線28自身の熱膨張による変形では、超音波探触子の温度上昇に伴い、GND信号線28とI/O信号線27とを接触させ、電気的に短絡させることはできない。
【0061】
従来の超音波探触子では、温度上昇に伴い圧電素子の焦電効果により、圧電素子の分極に異常が発生する。圧電素子の共振特性に異常が起こり、不要共振が生じる。しかし、本実施の形態の超音波探触子2では、高温下でも圧電素子の分極に異常は発生せず、不要な共振は発生しない。
【0062】
熱変形部29がバイメタルの場合に、図4(a)、図4(b)に示すように、I/O信号線27及び熱変形部29の間の距離Aと、GND信号線28の厚さBと、熱変形部29の厚さtと、熱変形部29の図の上下方向の長さLと、熱変形部29のわん曲量Dと、をとる。わん曲係数K、温度範囲ΔTとしたとき、わん曲量Dは、熱変形部29の厚さt、長さLを用いて、以下の式(1)で表される。
D=K×ΔT×L×L÷t …(1)
【0063】
一般に超音波探触子の使用温度の上限は70[℃]となっている。つまり、超音波探触子が70[℃]以上で使用されることはないことから、70[℃]以上でI/O信号線27とGND信号線28とを短絡させることが望ましい。70[℃]以上でI/O信号線27とGND信号線28とを短絡させる場合、一例として以下が挙げられる。
K=15×10-6(熱変形部29として、例えば、BL-2(日立金属ネオマテリアル製)を用いる)、
ΔT=50℃(室温:20[℃]、高温:70[℃])、
L=10[mm]、
t=0.05[mm]、とする。
【0064】
ここで、距離AとI/O信号線27及びGND信号線28の間隙の距離との差を、距離Cとする。式(1)より、わん曲量D=1.5[mm]となることから、距離Cを1.5[mm]以下にすると、70[℃]以上でI/O信号線27とGND信号線28とは短絡し、焦電効果によって発生させる電界を無くし、特性劣化を抑制させることができる。このため、熱変形部29をいかなる場所に設けても、同じ変形量でGND信号線28とI/O信号線27とを接触させ、電気的に短絡させることができる。
【0065】
以上、本実施の形態によれば、超音波探触子2は、超音波を被検体に送受信する圧電素子23と、圧電素子23に設けられたI/O電極22に電気的に接続され、圧電素子23に入力する駆動信号及び圧電素子23から出力される受信信号が流れるI/O信号線27と、I/O信号線27と間隙を介して設けられ、圧電素子23に設けられたGND電極24に電気的に接続されたGND信号線28と、温度上昇により変形し、所定の温度(高温:例えば70[℃])以上でI/O信号線27及びGND信号線28を接触させる熱変形部29と、を備える。
【0066】
このため、高温下で生じる圧電素子の焦電効果によって生じる電界の発生を抑制でき、焦電効果を防ぐための電気制御及びそのコストが不要であるので、焦電効果による圧電素子23の特性劣化を容易になくすことができ、超音波探触子2の特性劣化を無くすことができる。
【0067】
また、熱変形部29は、バイメタルからなる。このため、所定の温度以上で焦電効果によって生じる電界の発生を抑制することができる。
【0068】
また、I/O信号線27、GND信号線28及び熱変形部29は、平行に配置されている。このため、熱変形部29をいかなる場所に設けても、同じ変形量でGND信号線28とI/O信号線27とを接触させ、電気的に短絡させることができる。
【0069】
また、超音波診断装置100は、超音波探触子2と、駆動信号を生成して超音波探触子2に出力する送信部12と、超音波探触子2から入力された受信信号に基づいて超音波画像データを生成する画像生成部14と、を備える。このため、焦電効果による圧電素子23の特性劣化及び超音波探触子2の特性劣化を無くすことができ、劣化のない超音波画像データを生成できる。
【0070】
(第1の実施例)
図5を参照して、上記実施の形態の第1の実施例を説明する。図5(a)は、変形前の超音波探触子2Aの一部を示す断面図である。図5(b)は、変形後の超音波探触子2Aの一部を示す断面図である。
【0071】
本実施例の装置構成は、上記実施の形態の超音波探触子2を本実施例の超音波探触子2Aに代えた超音波診断装置100を用いる。このため、上記実施の形態と同様の構成部分に同じ符号を付してその説明を省略する。
【0072】
図5(a)に示すように、超音波探触子2Aは、背面層21と、I/O電極22Aと、圧電素子23と、GND電極24Aと、音響整合層25と、音響レンズ26と、I/O信号線27Aと、GND信号線28Aと、空洞部30と、絶縁体部31と、空洞部32と、熱変形部29と、を備える。背面層21、I/O電極22A、圧電素子23、GND電極24A、音響整合層25及び音響レンズ26は、図上正面視下方から上方に順に積層されている。ただし、図5(a)、図5(b)は、分かりやすくするため、超音波探触子2Aのうちの、圧電素子23、I/O電極22A、GND電極24A、I/O信号線27A、GND信号線28A、空洞部30、絶縁体部31、空洞部32及び熱変形部29のみを図示した断面図である。
【0073】
I/O電極22Aは、圧電素子23の下面に形成されたI/O電極である。GND電極24Aは、圧電素子23の上面、側面及び一部下面に形成されたGND電極である。I/O電極22A及びGND電極24Aは、空洞部30により電気的に絶縁されている。
【0074】
I/O信号線27Aは、導体で構成され、I/O電極22Aに電気的に接続されている。GND信号線28Aは、導体で構成され、GND電極24Aに電気的に接続されている。絶縁体部31は、絶縁体で構成されている。I/O信号線27Aは、絶縁体部31の両面に形成され、GND信号線28Aは、絶縁体部31の一方の面に形成されている。このように、絶縁体部31と、I/O信号線27A、GND信号線28Aとは、積層されている。I/O信号線27A及びGND信号線28Aは、空洞部30及び絶縁体部31により絶縁されている。絶縁体部31は、例えば、ポリイミドなどの絶縁体のフィルムからなるフレキシブル基板(FPC:Flexible Printed Circuit)の基体部としてもよい。この構成では、I/O信号線27A、絶縁体部31、GND信号線28Aは、フレキシブル基板として機能する。
【0075】
また、空洞部32は、絶縁体部31の間隙であり、熱変形部29によってGND信号線28AとI/O信号線27Aとを短絡させる位置に配置されている。空洞部32の周囲には絶縁体部31が設けられているため、高温下以外ではI/O信号線27AとGND信号線28Aとは短絡しない。図5(b)に示すように、I/O信号線27AとGND信号線28Aとは、高温下(所定の温度(例えば70[℃])以上)において、熱変形部29の変形により、空洞部32における電気的な接触により短絡される。
【0076】
以上、本実施例によれば、超音波探触子2Aは、I/O信号線27A及びGND信号線28Aが表面に形成された絶縁体部31と、I/O信号線27A及びGND信号線28Aを絶縁し、熱変形部29の変形によりI/O信号線27A及びGND信号線28Aが接触される空洞部32と、を備える。このため、焦電効果による圧電素子23の特性劣化及び超音波探触子2の特性劣化を無くすことができるとともに、I/O信号線27AとGND信号線28Aとの絶縁性を向上できる。
【0077】
(第2の実施例)
図6を参照して、上記実施の形態の第2の実施例を説明する。図6(a)は、変形前の超音波探触子2Bの一部を示す断面図である。図6(b)は、変形後の超音波探触子2Bの一部を示す断面図である。
【0078】
本実施例の装置構成は、上記実施の形態の超音波探触子2を本実施例の超音波探触子2Bに代えた超音波診断装置100を用いる。このため、上記実施の形態と同様の構成部分に同じ符号を付してその説明を省略する。
【0079】
図6(a)に示すように、超音波探触子2Bは、背面層21と、I/O電極22と、圧電素子23と、GND電極24と、音響整合層25と、音響レンズ26と、I/O信号線27と、GND信号線28Bと、熱変形部29と、を備える。ただし、図6(a)、図6(b)は、分かりやすくするため、超音波探触子2Bのうちの、圧電素子23、I/O電極22、GND電極24、I/O信号線27、GND信号線28B及び熱変形部29のみを図示した断面図である。
【0080】
GND信号線28Bは、導体で構成され、GND電極24Aに電気的に接続されている。熱変形部29は、導体で構成され、温度により変形する機能を有するとともに、GND信号線28Bの一部として機能している。
【0081】
図6(b)に示すように、超音波探触子2Bの温度上昇に伴い、熱変形部29がI/O信号線27に向かって変形し、さらに温度上昇(所定の温度(例えば70[℃])以上)によってI/O信号線27と接触し、I/O信号線27とGND信号線28Bとが電気的に短絡する。つまり、高温下で生じる圧電素子23の焦電効果によって生じる電界の発生を抑制し、圧電素子23の特性劣化を無くすことができる。つまり、超音波探触子2Bの特性劣化を無くすことができる。
【0082】
以上、本実施例によれば、熱変形部29は、導体からなり、GND信号線28Aの一部として機能する。このため、焦電効果による圧電素子23の特性劣化及び超音波探触子2Bの特性劣化を無くすことができるとともに、GND信号線28Bの一部として電気伝導が可能となり、超音波探触子2Bの小スペース化が可能となる。
【0083】
なお、本実施例では、熱変形部29をGND信号線28Bの一部として配置したが、I/O信号線の一部として配置する構成としてもよい。この構成では、高温下で、熱変形部29がGND信号線に接触する構成となる。同様に、超音波探触子が、GND信号線の一部として機能する熱変形部と、I/O信号線の一部として機能する熱変形部とを、有する構成としてもよい。
【0084】
(第3の実施例)
図7を参照して、上記実施の形態の第3の実施例を説明する。図7(a)は、変形前の超音波探触子2Cの一部を示す断面図である。図7(b)は、変形後の超音波探触子2Cの一部を示す断面図である。
【0085】
本実施例の装置構成は、上記実施の形態の超音波探触子2を本実施例の超音波探触子2Cに代えた超音波診断装置100を用いる。このため、上記実施の形態と同様の構成部分に同じ符号を付してその説明を省略する。
【0086】
図7(a)に示すように、超音波探触子2Cは、背面層21と、I/O電極22と、圧電素子23と、GND電極24と、音響整合層25と、音響レンズ26と、I/O信号線27と、GND信号線28Cと、熱変形部29と、絶縁体部33と、を備える。ただし、図7(a)、図7(b)は、分かりやすくするため、超音波探触子2Cのうちの、圧電素子23、I/O電極22、GND電極24、I/O信号線27、GND信号線28C、熱変形部29及び絶縁体部33のみを図示した断面図である。
【0087】
GND信号線28Cは、導体で構成され、GND電極24Aに電気的に接続されている。熱変形部29は、導体で構成され、温度により変形する機能を有するとともに、GND信号線28Cの一部として機能している。
【0088】
絶縁体部33は、例えば、ポリイミドなどの絶縁体のフィルムからなるフレキシブル基板の基体部である。GND信号線28C及び熱変形部29は、絶縁体部33の圧電素子23側の面に形成されている。このように、GND信号線28A又は熱変形部29と絶縁体部33とは、圧電素子23側から外側へ順に積層されている。絶縁体部33は、熱変形部29を容易に保持し、かつ外部から圧電素子23、I/O電極22、GND電極24、I/O信号線27、GND信号線28Cへの電気的絶縁が可能である。
【0089】
超音波探触子2Cの温度上昇に伴い、熱変形部29は、I/O信号線27に向かって変形し、さらに温度上昇(所定の温度(例えば70[℃])以上)によってI/O信号線27と接触し、I/O信号線27とGND信号線28Cとが電気的に短絡する。つまり、高温下で生じる圧電素子23の焦電効果によって生じる電界の発生を抑制し、圧電素子23の特性劣化を無くすことができる。つまり、超音波探触子2Cの特性劣化を無くすことができる。
【0090】
以上、本実施例によれば、超音波探触子2Cは、I/O信号線27及びGND信号線28Cの外側に配置され、GND信号線28Cが圧電素子23側(内側)の表面に形成されている絶縁体部33を備える。このため、焦電効果による圧電素子23の特性劣化及び超音波探触子2Cの特性劣化を無くすことができるとともに、外部から圧電素子23、I/O電極22、GND電極24、I/O信号線27、GND信号線28Cへの電気的絶縁を可能とする。
【0091】
なお、本実施例では、熱変形部29をGND信号線28C側に配置しGND信号線28Cの一部(高温下でI/O信号線27に接触)とする構成としたが、I/O信号線27側に配置しI/O信号線27の一部(高温下でGND信号線28Cに接触)とする構成としてもよい。あるいは、超音波探触子が、GND信号線側に配置しGND信号線の一部とした熱変形部と、I/O信号線側に配置しI/O信号線の一部とした熱変形部と、を備える構成としてもよい。
【0092】
(第4の実施例)
図8を参照して、上記実施の形態の第4の実施例を説明する。図8(a)は、熱変形前の超音波探触子2Dの一部を示す断面図である。図8(b)は、熱変形後の超音波探触子2Dの一部を示す断面図である。
【0093】
本実施例の装置構成は、上記実施の形態の超音波探触子2を本実施例の超音波探触子2Dに代えた超音波診断装置100を用いる。このため、上記実施の形態と同様の構成部分に同じ符号を付してその説明を省略する。
【0094】
図8(a)に示すように、超音波探触子2Dは、背面層21と、I/O電極22と、圧電素子23と、GND電極24と、音響整合層25と、音響レンズ26と、I/O信号線27と、GND信号線28と、熱変形部29Dと、を備える。ただし、図8(a)、図8(b)は、分かりやすくするため、超音波探触子2Dのうちの、圧電素子23、I/O電極22、GND電極24、I/O信号線27、GND信号線28、熱変形部29Dのみを図示した断面図である。
【0095】
熱変形部29Dは、上端が固定され、下端が解放されて、温度により変形する機能を有するとともに、放熱機能を有する。圧電素子23が超音波を送信する際に電気音響変換ロスにより発熱する。この発熱を低減させるために、圧電素子23周辺に熱伝導が高い金属などの材料からなる放熱部材が必要となる。熱伝導率が高い材料として金属が挙げられ、金属の中でも銅、モリブデン、アルミニウムなどが良好である。このため、熱変形部29Dは、例えば、放熱部材として上記の金属を有するバイメタルで構成される。
【0096】
また、熱変形部29Dは、上記実施の形態の熱変形部29に比べて、表面積が大きく、放熱効果を上げている。熱変形部29Dにより、放熱機能によって圧電素子23の発熱を抑制し、高温下で生じる圧電素子23の焦電効果によって生じる電界の発生を抑制し、圧電素子23の特性劣化を無くすことができる。つまり、超音波探触子2Dの特性劣化を無くすことができ、且つ、圧電素子23が超音波を送信する際に発熱するが、その発熱を低減させる。
【0097】
以上、本実施例によれば、熱変形部29Dは、熱伝導が高い金属などの材料からなり、平面の面積が大きいので、放熱機能を有する。このため、焦電効果による圧電素子23の特性劣化及び超音波探触子2Dの特性劣化を無くすことができるとともに、圧電素子23が超音波を送信する際に発熱するが、その発熱を低減できる。
【0098】
なお、上記実施の形態及び実施例における記述は、本発明に係る好適な超音波探触子及び超音波診断装置の一例であり、これに限定されるものではない。例えば、上記実施の形態及び各実施例の少なくとも2つを適宜組み合わせる構成としてもよい。
【0099】
また、以上の実施の形態及び実施例における超音波診断装置100を構成する各部の細部構成及び細部動作に関して本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0100】
100 超音波診断装置
1 超音波診断装置本体
11 操作入力部
12 送信部
13 受信部
14 画像生成部
15 画像処理部
15a 画像メモリー部
16 DSC
17 表示部
18 制御部
2,2A,2B,2C,2D 超音波探触子
21 背面層
22,22A I/O電極
23 圧電素子
24,24A GND電極
25 音響整合層
26 音響レンズ
27,27A I/O信号線
28,28A,28B,28C GND信号線
29,29D 熱変形部
30,32 空洞部
31,33 絶縁体部
2a 振動子
3 ケーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8