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特許7127994ドレッシングボード及びドレッシング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】ドレッシングボード及びドレッシング方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 53/12 20060101AFI20220823BHJP
   B24B 47/22 20060101ALI20220823BHJP
   B24B 47/25 20060101ALI20220823BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
B24B53/12 A
B24B47/22
B24B47/25
H01L21/304 622M
H01L21/304 631
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018027831
(22)【出願日】2018-02-20
(65)【公開番号】P2019141949
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】種村 大佑
(72)【発明者】
【氏名】関家 一馬
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-142906(JP,A)
【文献】特開2017-154238(JP,A)
【文献】特開2009-061570(JP,A)
【文献】特開2006-351928(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0123951(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 53/12
B24B 47/22
B24B 47/25
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削ホイールの研削砥石の研削面をドレッシングするドレッシングボードであって、
砥粒をボンド剤で固定させた円板状の板状砥石と、ドレッシングした該研削面で研削しようとする被加工物と同じ材質からなるリング状のリング被加工物と、該板状砥石と該リング被加工物とを配設する基台とを備え、
該基台の中心と該板状砥石の中心とが一致し、
該リング被加工物は、該板状砥石の中心を中心として該板状砥石を囲繞し、該板状砥石と同心円環状に形成され、
該基台に配設した該板状砥石の上面と該リング被加工物の上面とが面一に形成されるドレッシングボード。
【請求項2】
前記基台の面方向で、前記板状砥石と前記リング被加工物との間に前記研削砥石が該板状砥石を研削したことによって発生した研削屑が排出されるリング状の隙間を備えた請求項1記載のドレッシングボード。
【請求項3】
ウェーハを保持する保持面を有する保持手段と、研削ホイールを回転可能に装着し保持手段が保持したウェーハを研削する研削手段と、該研削手段を該保持手段の保持面に対して垂直方向に移動させた際の該研削手段の高さ位置を認識する高さ位置認識手段と、該保持面の高さ位置と該保持面が保持したウェーハの上面の高さ位置との差から該保持面が保持したウェーハの厚さを測定する厚さ測定手段と、を備えた研削装置と請求項1または2記載のドレッシングボードとを用いて、該研削手段の研削砥石の研削面のドレッシングを行うドレッシング方法であって、
該保持面に前記基台を介して該ドレッシングボードを保持させる保持工程と、
該保持工程で保持した該ドレッシングボードの前記リング被加工物の上面の高さ位置と該保持面の高さ位置とを測定し該ドレッシングボードの厚さを測定する厚さ測定工程と、
該研削手段を該保持手段に近づける方向に移動させ、該ドレッシングボードの該リング被加工物と前記板状砥石とに該研削面を接触させ、該ドレッシングボードの厚さを測定しながら該ドレッシングボードを研削し該研削面の目立てを行うドレッシング工程と、
該ドレッシング工程終了時の該研削手段の高さ位置から該厚さ測定手段が測定した該ドレッシング後の該ドレッシングボードの厚さを差し引いた高さ位置を、該保持手段に近づける方向に該研削手段を移動させ該研削面が該保持面に接触する高さ位置として記憶するセットアップ工程と、を備えるドレッシング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削砥石の研削面をドレッシングするドレッシングボード及びドレッシング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ等の被加工物を研削して所望の厚さに薄化する研削加工では、研削砥石を環状に配設した研削ホイールを回転させウェーハに研削砥石を当接させて研削を行っている。そして、研削加工を遂行していくと、研削砥石の研削面に露出した砥粒が摩滅して研削砥石の研削能力が低下することがある。
【0003】
そこで、砥粒がボンド剤で結合され所定の形状に成形されたドレッシングボード(例えば、特許文献1参照)を研削砥石で定期的に研削して、研削面に新たに砥粒を表出させ研削面の研削能力を復活させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-217935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているような従来のドレッシングボードでは、ドレッシング直後の研削砥石でウェーハを研削すると、ウェーハの被研削面の粗さが粗くなることがある。そこで、ウェーハの被研削面の粗さを粗くしないために、ドレッシング直後に製品でないウェーハ(ダミーウェーハ等)を研削砥石で研削して研削面から突出した砥粒の先端形状を整える必要があり、ウェーハ研削におけるスループット低下の要因となっていた。
【0006】
そこで、研削砥石の研削面をドレッシングボードを用いてドレッシングする場合には、ドレッシング直後の研削砥石で製品ウェーハを研削しても被研削面を粗くしてしまうことが無いように研削砥石をドレッシングするという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、研削ホイールの研削砥石の研削面をドレッシングするドレッシングボードであって、砥粒をボンド剤で固定させた円板状の板状砥石と、ドレッシングした該研削面で研削しようとする被加工物と同じ材質からなるリング状のリング被加工物と、該板状砥石と該リング被加工物とを同心円をなすように配設する基台とを備え、該基台の中心と該板状砥石の中心とが一致し、該リング被加工物は、該板状砥石の中心を中心として該板状砥石を囲繞し、該板状砥石と同心円環状に形成され、該基台に配設した該板状砥石の上面と該リング被加工物の上面とが面一に形成されるドレッシングボードである。
【0008】
前記ドレッシングボードは、前記基台の面方向で、前記板状砥石と前記リング被加工物との間に前記研削砥石が該板状砥石を研削したことによって発生した研削屑が排出されるリング状の隙間を備えてもよい。
【0009】
また、上記課題を解決するための本発明は、ウェーハを保持する保持面を有する保持手段と、研削ホイールを回転可能に装着し保持手段が保持したウェーハを研削する研削手段と、該研削手段を該保持手段の保持面に対して垂直方向に移動させた際の該研削手段の高さ位置を認識する高さ位置認識手段と、該保持面の高さ位置と該保持面が保持したウェーハの上面の高さ位置との差から該保持面が保持したウェーハの厚さを測定する厚さ測定手段と、を備えた研削装置と前記ドレッシングボードとを用いて、該研削手段の研削砥石の研削面のドレッシングを行うドレッシング方法であって、該保持面に前記基台を介して該ドレッシングボードを保持させる保持工程と、該保持工程で保持した該ドレッシングボードの前記リング被加工物の上面の高さ位置と該保持面の高さ位置とを測定し該ドレッシングボードの厚さを測定する厚さ測定工程と、該研削手段を該保持手段に近づける方向に移動させ、該ドレッシングボードの該リング被加工物と前記板状砥石とに該研削面を接触させ、該ドレッシングボードの厚さを測定しながら該ドレッシングボードを研削し該研削面の目立てを行うドレッシング工程と、該ドレッシング工程終了時の該研削手段の高さ位置から該厚さ測定手段が測定した該ドレッシング後の該ドレッシングボードの厚さを差し引いた高さ位置を、該保持手段に近づける方向に該研削手段を移動させ該研削面が該保持面に接触する高さ位置として記憶するセットアップ工程と、を備えるドレッシング方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るドレッシングボードは、砥粒をボンド剤で固定させた板状砥石と、リング状のリング被加工物と、板状砥石とリング被加工物とを同心円をなすように配設する基台とを備え、基台に配設した板状砥石の上面とリング被加工物の上面とが面一に形成されているため、ドレッシング時に板状砥石とリング被加工物とを研削砥石が研削することで、板状砥石の研削で研削砥石の研削面から新たな砥粒を突出させると共に、リング被加工物の研削で新たに突出させた砥粒の先端形状を整えることができる。そのため、ドレッシング直後にダミーウェーハ等を研削砥石で研削しなくとも、ドレッシング直後の研削砥石で製品ウェーハの被研削面を粗くすることなく研削することができる。
【0011】
ドレッシングボードは、基台の面方向で、板状砥石とリング被加工物との間にリング状の隙間を備えることで、研削砥石の研削面のドレッシングをより効率よく行うことが可能となる。
【0012】
本発明に係るドレッシング方法は、ウェーハを保持する保持面を有する保持手段と、研削ホイールを回転可能に装着し保持手段が保持したウェーハを研削する研削手段と、研削手段を保持手段の保持面に対して垂直方向に移動させた際の研削手段の高さ位置を認識する高さ位置認識手段と、保持面の高さ位置と保持面が保持したウェーハの上面の高さ位置との差から保持面が保持したウェーハの厚さを測定する厚さ測定手段と、を備えた研削装置とドレッシングボードとを用いて、研削手段の研削砥石の研削面のドレッシングを行うドレッシング方法であって、保持面に基台を介してドレッシングボードを保持させる保持工程と、保持工程で保持したドレッシングボードのリング被加工物の上面の高さ位置と保持面の高さ位置とを測定しドレッシングボードの厚さを測定する厚さ測定工程と、研削手段を保持手段に近づける方向に移動させ、ドレッシングボードのリング被加工物と板状砥石とに研削面を接触させ、ドレッシングボードの厚さを測定しながらドレッシングボードを研削し研削面の目立てを行うドレッシング工程と、ドレッシング工程終了時の研削手段の高さ位置から厚さ測定手段が測定したドレッシング後のドレッシングボードの厚さを差し引いた高さ位置を、保持手段に近づける方向に研削手段を移動させ研削面が保持面に接触する高さ位置として記憶するセットアップ工程と、を備えている。そのため、複数枚のウェーハについて研削加工を一枚ずつ連続的に行う途中に、ウェーハに代えて前記ドレッシングボードを保持手段に保持させドレッシングボードの厚さを測定しながら研削面をドレッシングし、ドレッシング終了後に研削面が保持手段の保持面に接触する研削手段と高さ位置を算出して研削手段のセットアップができ、ドレッシング直後に新たなウェーハの研削加工へとスムーズに移行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】研削装置の一例を示す斜視図である。
図2】ドレッシングボードの分解斜視図である。
図3】ドレッシングボードの一例を示す斜視図である。
図4】ドレッシングボードを保持手段に保持し、ドレッシング前のドレッシングボードの厚さ値を測定している状態を説明する説明図である。
図5】ドレッシング工程及びセットアップ工程を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示す研削装置1は、保持手段30上に保持されたウェーハWを研削手段6によって研削する装置である。研削装置1のベース10上の前方(-X方向側)は、保持手段30に対してウェーハW又はドレッシングボードBの着脱が行われる領域となっており、ベース10上の後方(+X方向側)は、研削手段6によって保持手段30上に保持されたウェーハWの研削又ドレッシングボードBの研削(研削手段6の研削砥石641のドレッシング)が行われる領域となっている。
研削装置1において、ウェーハW及びドレッシングボードBは、例えばウエーハカセットに棚状に収容されており、図示しない搬入出手段によってウエーハカセットから一枚ずつ搬出され保持手段30に搬入される。
【0015】
研削装置1のベース10上の後方側には、コラム17が立設されており、コラム17の前面には研削手段6をZ軸方向(垂直方向)に研削送りする研削送り手段7が配設されている。研削送り手段7は、Z軸方向の軸心を有するボールネジ70と、ボールネジ70と平行に配設された一対のガイドレール71と、ボールネジ70に連結しボールネジ70を回動させるモータ72と、内部のナットがボールネジ70に螺合し側部がガイドレール71に摺接する昇降板73と、昇降板73に連結され研削手段6を保持するホルダ74とから構成され、モータ72がボールネジ70を回動させると、これに伴い昇降板73がガイドレール71にガイドされてZ軸方向に往復移動し、ホルダ74に支持された研削手段6もZ軸方向に往復移動する。
【0016】
研削手段6は、軸方向がZ軸方向である回転軸60と、回転軸60を回転可能に支持するハウジング61と、回転軸60を回転駆動するモータ62と、回転軸60の下端に取り付けられたマウント63と、マウント63に着脱可能に装着された研削ホイール64とを備える。回転軸60の回転と共にZ軸方向の軸心周りに回転する研削ホイール64は、ホイール基台640と、略直方体形状の外形を備えホイール基台640の下面に複数環状に配設された研削砥石641とを備えている。研削砥石641は、適宜のボンド剤でダイヤモンド砥粒等が固着されて成形されている。
【0017】
例えば、回転軸60の内部には、研削水供給源に連通し研削水の通り道となる図示しない流路が、回転軸60の軸方向に貫通して形成されており、流路は研削ホイール64の底面において研削砥石641に向かって研削水を噴出できるように開口している。
【0018】
外形が円形状の保持手段30は、ポーラス部材等からなりウェーハWを吸着する吸着部300と、吸着部300を支持する枠体301とを備える。保持手段30の吸着部300は、バキュームポンプやエジェクタ等の真空発生装置からなる図示しない吸引源に連通し、吸引源が吸引することで生み出された吸引力が、保持手段30の保持面300aとなる上面に伝達されることで、保持手段30は保持面300a上でウェーハWを吸引保持できる。保持面300aは、保持手段30の回転中心を頂点とする極めて緩やか傾斜を備える円錐面に形成されている。また、保持手段30は、カバー39によって周囲から囲まれつつ、カバー39及びカバー39に連結された蛇腹カバー39aの下に配設された図示しないX軸方向送り手段によって、ベース10上をX軸方向に往復移動可能となっている。
【0019】
保持手段30の下方にはモータ及び回転軸等からなる回転手段32が配設されており、保持手段30は回転手段32によってZ軸方向の軸心周りに回転可能となっている。また、保持手段3の下方には、カップリング等を介して傾き調節機構37が配設されている。傾き調節機構37は、保持手段30の保持面300aの水平面に対する傾き(研削手段6の研削砥石641の研削面に対する傾き)を調節することができる。
【0020】
図1に示すように、例えば、保持手段30の移動経路脇には、接触式の一対の高さ測定手段(ハイトゲージ)、即ち、保持手段30の保持面300aの高さ測定用の第1の高さ測定手段381と、保持手段30に保持されたウェーハWの上面Wbの高さ測定用の第2の高さ測定手段382とが配設されている。
【0021】
第1の高さ測定手段381及び第2の高さ測定手段382は、その各先端に上下方向に昇降し各測定面に接触するコンタクトを備えており、それぞれのコンタクトを各測定面に対して適宜の力で押し付けた状態で高さ測定を行う。なお、第1の高さ測定手段381及び第2の高さ測定手段382は、接触式のハイトゲージに限定されるものではなく、例えば、投光部と受光部とを備え非接触で測定面の高さを測定できる反射型の光センサであってもよい。
第1の高さ測定手段381及び第2の高さ測定手段382には、ウェーハWの厚さを測定する厚さ測定手段38が電気的に接続されている。厚さ測定手段38は、第2の高さ測定手段382が測定したウェーハWの上面Wbの高さと第1の高さ測定手段381が測定した保持手段30の保持面300aの高さとの差を保持面300aで保持されるウェーハWの厚さとして算出する。
【0022】
図1に示すように、研削装置1は、研削手段6の高さ位置を認識する高さ位置認識手段18を備えている。高さ位置認識手段18は、例えば、コラム17に固定され研削手段6の移動方向(Z軸方向)に延在するスケール180と、昇降板73に固定されスケール180に沿って昇降板73と共に移動しスケール180の目盛りを読み取る読み取り部181とを備えている。読み取り部181は、例えば、スケール180に形成された目盛りの反射光を読み取る光学式のものであり、スケール180の目盛りを検出して研削手段6のZ軸方向における高さ位置を検出する。なお、研削手段6の高さ位置は、昇降板73を移動させるモータ72に連結するロータリーエンコーダで検出しても良い。
【0023】
図1に示すように、研削装置1は、例えば、制御プログラムに従って演算処理するCPU等から構成され装置全体の制御を行う制御手段9を備えている。制御手段9は、図示しない配線によって、研削送り手段7及び研削手段6等に接続されており、制御手段9の制御の下で、研削送り手段7による研削手段6のZ軸方向における研削送り動作、及び研削手段6の回転動作等が制御される。また、制御手段9は、メモリ等の記憶素子からなる記憶部90を備えている。
【0024】
図1に示すウェーハWは、例えば、母材がシリコンからなり外形が円形板状である半導体ウェーハであり、図1において上側を向いている上面Wbが被研削面となる。図1において下側を向いているウェーハWの下面Waは、分割予定ラインによって区画された領域に複数のデバイスが形成されており、図示しない保護テープが貼着されて保護されている。なお、ウェーハWは本実施形態に示す例に限定されるものではなく、例えば、母材がLT(リチウムタンタレート)やサファイア等の難研削材で構成されていてもよい。
【0025】
研削ホイール64の研削砥石641の研削面(下面)をドレッシングする本発明に係るドレッシングボードBは、砥粒をボンド剤で固定させた板状砥石B1と、リング状のリング被加工物B2と、板状砥石B1とリング被加工物B2とを同心円をなすように配設する基台B3とを備えている。
板状砥石B1は、例えば、ダイヤモンド砥粒がレジンボンドで円形板状に固められた砥石であり、その上下面は平坦面となっている。図2に示すように、板状砥石B1の半径は、例えば、約40mmとなっている。なお、板状砥石B1に含まれる砥粒は、研削砥石641の種類等により適宜適切なものを選択でき、ダイヤモンド砥粒以外にも、例えば、CBN(立方晶窒化ホウ素)砥粒、GC砥粒(グリーンカーボン)、又はアルミナ砥粒を用いてもよい。また、ボンド剤もレジンボンドに限定されず、セラミックボンド等であってもよい。板状砥石B1は、リング被加工物B2が消耗すると同時に消耗する硬さが好ましい。
【0026】
リング被加工物B2は円形の開口B2cを備えており、該開口B2cの直径は、板状砥石B1の直径よりも大きくなっている(例えば、直径約90mm)。また、リング被加工物B2のリング幅は、例えば、約20mmとなっており、その厚さは、板状砥石B1と略同一の厚さとなっている。リング被加工物B2の上下面は平坦面となっている。本実施形態においてリング被加工物B2の材質は、研削加工を施すウェーハWの材質と同様のシリコンであるが、これに限定されるものではなく別の材質(LTやサファイア等)であってもよい。
【0027】
基台B3は、例えば、所定の合金又は硬質プラスチック等からなり、リング被加工物B2の外径と略同径の円形板状であり、その上下面が平坦面となっている。
例えば、板状砥石B1の下面の全面及びリング被加工物B2の下面の全面に接着剤が均一に塗布される。そして、板状砥石B1の中心と、リング被加工物B2の中心と、基台B3の中心とが略合致した状態で、板状砥石B1の接着剤が塗布された下面とリング被加工物B2の接着剤が塗布された下面とが基台B3の上面に押し付けられることで、板状砥石B1及びリング被加工物B2が接着剤で基台B3上に同心円をなすように固定され、図3に示すドレッシングボードBが形成される。そして、板状砥石B1の上面B1aとリング被加工物B2の上面B2aとは面一となっている。
【0028】
本実施形態においてドレッシングボードBは、基台B3の面方向で、板状砥石B1とリング被加工物B2との間にリング状の隙間Vを備える。該隙間Vの幅は、例えば約5mmとなっている。なお、板状砥石B1とリング被加工物B2との間に隙間Vは形成されていなくてもよい。
【0029】
以下に、図1に示す研削装置1を用いてウェーハWを研削する場合について説明する。
まず、図1に示す研削装置1の着脱領域内において、図示しない搬入出手段によって、一枚のウェーハWが、保持手段30の保持面300a上に載置される。そして、図示しない吸引源により生み出される吸引力が保持面300aに伝達されることにより、保持手段30がウェーハWを吸引保持する。
【0030】
極めて緩やかな円錐面である保持面300aが、研削砥石641の研削面(下面)に対して平行になるように、傾き調節機構37により保持手段30の傾きが調節されることで、円錐面である保持面300aにならって吸引保持されるウェーハWの上面Wbが、研削砥石641の研削面に対して平行になる。
【0031】
保持手段30が、図示しないX軸方向送り手段によって研削手段6の下まで+X方向へ移動して、研削ホイール64と保持手段30に保持されたウェーハWとの位置合わせがなされる。位置合わせは、例えば、研削砥石641の回転軌道がウェーハWの回転中心を通るように行われる。
その後、モータ62により回転軸60が回転駆動されるのに伴って、研削ホイール64が例えば+Z方向側から見て反時計周り方向に回転する。また、研削送り手段7が研削手段6を-Z方向へと下降させていき、研削砥石641がウェーハWの上面Wbに当接することで研削が行われる。研削加工中は、回転手段32により保持手段30が+Z方向側から見て反時計周り方向に回転するのに伴ってウェーハWも回転するので、研削砥石641がウェーハWの上面Wb全面の研削加工を行う。研削加工中は、研削水を回転軸60中の流路を通して研削砥石641とウェーハWとの接触部位に対して供給して、接触部位を冷却・洗浄する。
【0032】
第1の高さ測定手段381により、基準面となる保持手段30の保持面300aの高さ位置が測定され、第2の高さ測定手段382により、研削されるウェーハWの上面Wbの高さ位置が測定される。そして、厚さ測定手段38が、両者の測定値の差をウェーハWの厚さ値として算出する。厚さ測定手段38によるウェーハWの厚さ測定が行われつつ、研削手段6が研削送り手段7によって-Z方向に所定量下降して、ウェーハWが所望の厚さまで研削されると、研削送り手段7によって研削手段6が+Z方向に上昇してウェーハWから離間し研削が終了する。また、保持手段30の回転が停止する。
【0033】
例えば、複数枚のウェーハWに対して上記のような研削加工が1枚ずつ連続的に行われることで、研削砥石641の研削面の砥粒に目つぶれが生じ、研削砥石641の研削力が低下する。そこで、研削砥石641の研削面の研削力を正常な状態に戻すために、あるウェーハWの研削が終了して、その次の新しいウェーハWを研削する前の適宜のタイミングで、図1に示すドレッシングボードBを用いた本発明に係るドレッシング方法が以下に示す各工程のように実施される。
【0034】
(1)保持工程
まず、図1に示す研削装置1の着脱領域内において、図示しない搬入出手段によって、ウェーハWの代わりにドレッシングボードBが、基台B3が下側になるように保持手段30の保持面300a上に載置される。そして、図示しない吸引源により生み出される吸引力が保持面300aに伝達されることにより、保持手段30が保持面300a上で基台B3を介してドレッシングボードBを吸引保持する。
【0035】
傾き調節機構37により保持手段30の傾きが調節されることで、円錐面である保持面300aにならって吸引保持されているドレッシングボードBの上面(板状砥石B1の上面B1a及びリング被加工物B2の上面B2a)が、研削砥石641の研削面に対して平行になる。
【0036】
(2)厚さ測定工程
保持手段30が、図示しないX軸方向送り手段によって研削手段6の下まで+X方向へ移動して、研削ホイール64と保持手段30に保持されたドレッシングボードBとの位置合わせがなされる。位置合わせは、例えば、図4に示すように、研削砥石641の回転軌道がドレッシングボードBの回転中心(板状砥石B1の回転中心)を通るように行われる。
【0037】
図4に示すように、第1の高さ測定手段381により、基準面となる保持手段30の保持面300aの高さ位置Z1が測定され、第2の高さ測定手段382により、リング被加工物B2の上面B2aの高さ位置Z2が測定される。そして、厚さ測定手段38が、両者の測定値の差(Z2-Z1)をドレッシングボードBの厚さT1として算出する。ドレッシングボードBの厚さ値についての情報は、厚さ測定手段38から図1に示す制御手段9に送信されて記憶部90に記憶される。これにより、作業者がドレッシングボードBの厚さを研削装置1に入力設定しなくとも、研削装置1がドレッシングボードBのドレッシング前の厚さを自動的に把握した状態となる。
【0038】
(3)ドレッシング工程
次いで、モータ62(図1参照)により回転軸60が回転駆動されるのに伴って、図5に示すように、研削ホイール64が+Z方向側から見て反時計周り方向に所定の回転速度(例えば、2000rpm)で回転する。また、研削送り手段7が研削手段6を-Z方向へと少しずつ下降させていき、研削砥石641がドレッシングボードBの上面に当接することで研削砥石641の研削面のドレッシングが開始される。ドレッシング中は、回転手段32により保持手段30が+Z方向側から見て反時計周り方向に回転するのに伴ってドレッシングボードBも回転するので、研削砥石641が板状砥石B1の上面B1a及びリング被加工物B2の上面B2aの全面の研削加工を行いつつ、研削砥石641の研削面の目立てが行われていく。例えば、ドレッシング中は、研削水を回転軸60中の流路を通して研削砥石641とドレッシングボードBとの接触部位に対して供給して、接触部位を冷却・洗浄する。
【0039】
本発明に係るドレッシングボードBは、砥粒をボンド剤で固定させた板状砥石B1と、リング状のリング被加工物B2と、板状砥石B1とリング被加工物B2とを同心円をなすように配設する基台B3とを備え、基台B3に配設した板状砥石B1の上面B1aとリング被加工物B2の上面B2aとが面一に形成されているため、ドレッシング時に板状砥石B1とリング被加工物B2とを研削砥石641が研削することで、板状砥石B1の研削で研削砥石641の研削面から新たな砥粒を突出させると共に、リング被加工物B2の研削で新たに突出させた砥粒の先端形状を整えることができる。そのため、ドレッシング後の研削砥石641は、ダミーウェーハ等を研削しなくとも製品ウェーハWの被研削面(上面Wb)を粗くすることなく研削できるようにドレッシングされる。
【0040】
本実施形態のように、ドレッシングボードBが、基台B3の面方向で、板状砥石B1とリング被加工物B2との間にリング状の隙間Vを備えることで、研削砥石641の研削面のドレッシングをより効率よく行うことが可能となる。
隙間Vの存在がこのような効果を生み出すことができる理由の1つは、以下の要因によるものと推定される。上述したように、ドレッシングボードBにおいては、板状砥石B1の研削で研削砥石641の研削面から新たな砥粒を突出させると共に、リング被加工物B2の研削で新たに突出させた砥粒の先端形状を整えることができるが、研削砥石641が板状砥石B1を研削した後、即リング被加工物B2を研削せずに隙間Vによってワンクッションおいてリング被加工物B2を研削するため、発生した研削屑がその間に隙間V内に排出されて、板状砥石B1の上面B1aとリング被加工物B2の上面B2a上とに堆積してしまうことが防がれる。そのため、研削屑によるドレッシングの妨害がより低減されるため、ドレッシングが効率よく進行していく。
【0041】
ドレッシング中は、高さ位置認識手段18によって下降していく研削手段6の高さ位置が逐次認識され、研削手段6の高さ位置についての情報が制御手段9に逐次送信される。さらに、第1の高さ測定手段381により、基準面となる保持手段30の保持面300aの高さ位置が測定され、第2の高さ測定手段382により、研削されるリング被加工物B2の上面B2aの高さ位置が測定される。そして、厚さ測定手段38が、両者の測定値の差をドレッシングボードBの厚さ値として算出する。ドレッシングボードBの厚さ値についての情報は、厚さ測定手段38から制御手段9に逐次送信される。なお、第2の高さ測定手段382のコンタクトは、板状砥石B1ではなくリング被加工物B2の上面B2aに接触しているので、急激に磨耗してしまうことはない。
【0042】
例えば、ドレッシングボードBの初期厚さからの厚さの変化量がドレッシング終了の判断基準として用いられ、図5に示すように研削砥石641の研削面のドレッシングが終了すると、研削送り手段7によって研削手段6が+Z方向に上昇してドレッシングボードBから離間する。また、高さ位置認識手段18によって認識されたドレッシング工程終了時の研削手段6の高さ位置Z3を、制御手段9の記憶部90が記憶する。
【0043】
(4)セットアップ工程
ドレッシング工程が上記のように実施された後、例えば、回転手段32が保持手段30の回転を停止させる。さらに、ドレッシング終了時において第1の高さ測定手段381により測定された保持手段30の保持面300aの高さ位置Z1と、第2の高さ測定手段382により測定されたドレッシングボードBの上面(リング被加工物B2の上面B2a)の高さ位置Z4とから厚さ測定手段38が算出した両者の測定値の差(Z4-Z1)、即ち、ドレッシング後のドレッシングボードBの厚さT2についての情報が、厚さ測定手段38から図1に示す制御手段9に送信される。
【0044】
図1に示すウェーハWを研削する際の研削量を制御するべく、研削送り方向(Z軸方向)において保持手段30の保持面300aと研削砥石641の先端である研削面とが接触する高さ位置を認識することをセットアップという。制御手段9は、図1に示す算出部91を備えており、算出部91は、図5に示すドレッシング工程終了時の研削手段6の高さ位置Z3からドレッシング後のドレッシングボードBの厚さT2を差し引いた高さ位置Z5を算出する。算出された高さ位置Z5は、研削手段6を高さ位置Z5まで仮に下降させた際に研削砥石641の研削面が保持手段30の保持面300aに接触する高さ位置として、制御手段9の記憶部90に記憶される(セットアップがなされる)。
【0045】
回転が停止した保持手段30が、図示しないX軸方向送り手段によって-X方向へ移動して、図1に示す研削装置1の着脱領域まで戻る。研削装置1の着脱領域内において、図示しない搬入出手段によって、ドレッシングボードBが保持手段30から搬出された後、新たなウェーハWが保持手段30の保持面300a上に載置され吸引保持される。
【0046】
上記のように、本発明に係るドレッシング方法は、ウェーハWを保持する保持面300aを有する保持手段30と、研削ホイール64を回転可能に装着し保持手段30が保持したウェーハWを研削する研削手段6と、研削手段6を保持手段30の保持面300aに対して垂直方向に移動させた際の研削手段6の高さ位置を認識する高さ位置認識手段18と、保持面300aの高さ位置と保持面300aが保持したウェーハWの上面Wbの高さ位置との差から保持面300aが保持したウェーハWの厚さを測定する厚さ測定手段38と、を備えた研削装置1とドレッシングボードBとを用いて、研削手段6の研削砥石641の研削面のドレッシングを行うドレッシング方法であって、保持面300aに基台B3を介してドレッシングボードBを保持させる保持工程と、保持工程で保持したドレッシングボードBのリング被加工物B2の上面B2aの高さ位置Z2と保持面300aの高さ位置Z1とを測定しドレッシングボードBの厚さT1を測定する厚さ測定工程と、研削手段6を保持手段30に近づける方向に移動させ、ドレッシングボードBのリング被加工物B2と板状砥石B1とに研削面を接触させ、ドレッシングボードBの厚さを測定しながらドレッシングボードBを研削し研削面の目立てを行うドレッシング工程と、ドレッシング工程終了時の研削手段6の高さ位置Z3から厚さ測定手段38が測定したドレッシング後のドレッシングボードBの厚さT2を差し引いた高さ位置Z5を、保持手段30に近づける方向に研削手段6を移動させ研削面が保持面300aに接触する高さ位置として記憶するセットアップ工程と、を備えている。そのため、複数枚のウェーハWについて研削加工を一枚ずつ連続的に行う途中に、適宜のタイミングでウェーハWに代えてドレッシングボードBを保持手段30に保持させドレッシングボードBの厚さを測定しながら研削砥石641の研削面をドレッシングし、ドレッシング終了後に研削面が保持手段30の保持面300aに接触する研削手段6と高さ位置Z5を算出して研削手段6のセットアップをすることができ、ドレッシング直後に新たなウェーハWの研削加工へとスムーズに移行することが可能となる。
【符号の説明】
【0047】
1:研削装置 10:ベース 17:コラム
18:高さ位置認識手段 180:スケール 181:読み取り部
30:保持手段 300:吸着部 300a:保持面 301:枠体 39:カバー
32:回転手段 37:傾き調節機構
381:第1の高さ測定手段 382:第2の高さ測定手段 38:厚さ測定手段
6:研削手段 60:回転軸 61:ハウジング 62:モータ 63:マウント
64:研削ホイール 640:ホイール基台 641:研削砥石
7:研削送り手段 9:制御手段 90:記憶部 91:算出部
W:ウェーハ B:ドレッシングボード B1:板状砥石 B2:リング被加工物 B3:基台 V:隙間
図1
図2
図3
図4
図5