(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】水性分散体、その製造方法、塗料組成物及び塗膜
(51)【国際特許分類】
C08L 101/06 20060101AFI20220825BHJP
C08L 39/04 20060101ALI20220825BHJP
C08K 5/36 20060101ALI20220825BHJP
C08K 5/46 20060101ALI20220825BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20220825BHJP
C08F 2/26 20060101ALI20220825BHJP
C09D 139/04 20060101ALI20220825BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
C08L101/06
C08L39/04
C08K5/36
C08K5/46
C08L71/02
C08F2/26 A
C09D139/04
C09D5/02
(21)【出願番号】P 2020535811
(86)(22)【出願日】2019-08-06
(86)【国際出願番号】 JP2019030988
(87)【国際公開番号】W WO2020032063
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2018147960
(32)【優先日】2018-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤原 誠
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0160592(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0033886(US,A1)
【文献】特開2015-118311(JP,A)
【文献】特開2017-141474(JP,A)
【文献】特開2012-126085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K,C08F,C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-オキサゾリン基を有する重合体(A)
を含有するエマルション粒子と、
界面活性剤と、を含み、
前記界面活性剤が、以下の化学式(S)で表される硫酸エステル化合物を含有
し、
前記硫酸エステル化合物の含有量は、前記重合体(A)の総量に対して、0.5~10質量%である、水性分散体。
R
1-O-(R
2O)
nSO
3X (S)
(式中、R
1は炭素数8~20の脂肪族炭化水素基であり、R
2は炭素数2~4のアルキレン基であり、nは2~15であり、Xは、一価のカチオンを表す。)
【請求項2】
前記水性分散体に含まれる界面活性剤の総量に対する前記硫酸エステル化合物の割合が50~100質量%である、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項3】
イソチアゾリン系化合物を更に含む、請求項1又は2に記載の水性分散体。
【請求項4】
前記重合体(A)の総量に対して、10~5000質量ppmの前記イソチアゾリン系化合物を含む、請求項3に記載の水性分散体。
【請求項5】
前記イソチアゾリン系化合物がベンゾイソチアゾリンを含む、請求項3又は4に記載の水性分散体。
【請求項6】
前記重合体(A)は、当該重合体の総質量に対して、オキサゾリン基を有する構造単位を0.5~50質量%含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の水性分散体。
【請求項7】
前記重合体(A)は、当該重合体の総質量に対して、オキサゾリン基を有する構造単位を5~40質量%含む、請求項
1~6のいずれか一項に記載の水性分散体。
【請求項8】
2-オキサゾリン基を有する重合体(A)と、界面活性剤と、を含み、
前記界面活性剤が、以下の化学式(S);
R
1-O-(R
2O)
nSO
3X (S)
(式中、R
1は炭素数8~20の脂肪族炭化水素基であり、R
2は炭素数2~4のアルキレン基であり、nは2~15であり、Xは、一価のカチオンを表す。)
で表される硫酸エステル化合物を含有する水性分散体の製造方法であって、
付加重合性オキサゾリンを含有する単量体混合物を、前記硫酸エステル化合物を含有する界面活性剤の存在下で乳化重合を行う、重合体(A)の製造工程を備える、水性分散体の製造方法。
【請求項9】
水性分散体及びカルボキシル基を有する重合体(B)を含み、
前記水性分散体が、
2-オキサゾリン基を有する重合体(A)と、
界面活性剤と、を含み、
前記界面活性剤が、以下の化学式(S);
R
1-O-(R
2O)
nSO
3X(S)
(式中、R
1は炭素数8~20の脂肪族炭化水素基であり、R
2は炭素数2~4のアルキレン基であり、nは2~15であり、Xは、一価のカチオンを表す。)
で表される硫酸エステル化合物を含有する、塗料組成物。
【請求項10】
2-オキサゾリン基を有する重合体(A)と、
化学式(S);
R
1-O-(R
2O)
nSO
3X (S)
(式中、R
1は炭素数8~20の脂肪族炭化水素基であり、R
2は炭素数2~4のアルキレン基であり、nは2~15であり、Xは、一価のカチオンを表す。)
で表される硫酸エステル化合物と、
カルボキシル基を有する重合体(B)と、を含む、塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水性分散体、その製造方法、塗料組成物及び塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
2-オキサゾリン基を有する重合体は、2-オキサゾリン基が架橋性を有することから、カルボキシル基、チオール基等を有するポリマーを架橋させるための架橋剤などとして用いられている(特許文献1及び2)。2-オキサゾリン基を有する重合体は、当該重合体を水中に分散させた状態で使用するエマルションタイプ(水性分散体)、又は水に溶解させて使用する水溶性タイプのものが知られており、水性塗料等の分野で広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭61-89217号公報
【文献】特開平02-99537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2-オキサゾリン基を有する重合体を含む樹脂エマルションを架橋剤として用いる場合、カルボキシル基等の官能基を含む主剤樹脂と混合して水性樹脂組成物として使用する。そのような水性樹脂組成物は、塗料、粘接着剤、表面処理剤、繊維処理剤等に使用されており、主に工場ラインで基材等に塗装し加熱乾燥して最終製品となる。工場ラインでの使用の場合、スプレー、フローコーター等の高い圧力下で水性樹脂組成物を噴射させて塗装する工程があり、より短時間で塗装を行うために、より高い圧力で噴射することが求められている。
【0005】
しかしながら、本発明者が鋭意検討したところによれば、従来の2-オキサゾリン基を有する重合体を含む樹脂エマルションは、このような過酷な条件下での機械的安定性が不十分であり、高い圧力で水性樹脂組成物を噴射した場合に凝集物を生じることが判明した。スプレー装置等の内部に当該凝集物が蓄積すると、ノズル等において目詰まりを起こしやすく、却って生産性の低下を招く。
【0006】
本開示は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、高い機械的安定性を有する水性分散体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の水性分散体は、2-オキサゾリン基を有する重合体と、界面活性剤と、を含み、当該界面活性剤が、以下の化学式(S)で表される硫酸エステル化合物を含有する。
R1-O-(R2O)nSO3X (S)
(式中、R1は炭素数8~20の脂肪族炭化水素基であり、R2は炭素数2~4のアルキレン基であり、nは2~15であり、Xは、一価のカチオンを表す。)
【0008】
水性分散体に含まれる界面活性剤の総量に対する上記硫酸エステル化合物の割合が50~100質量%であると好ましい。
【0009】
上記水性分散体は、イソチアゾリン系化合物を更に含むと好ましい。
【0010】
上記水性分散体は、上記重合体の総量に対して、50~5000質量ppmのイソチアゾリン系化合物を含むと好ましい。
【0011】
上記イソチアゾリン系化合物がベンゾイソチアゾリンを含むと好ましい。
【0012】
上記水性分散体は、上記重合体の総量に対して0.5質量%以上の上記硫酸エステル化合物を含むと好ましい。
【0013】
上記重合体は、当該重合体の総質量に対して、オキサゾリン基を有する構造単位を0.5~50質量%含むと好ましい。
【0014】
上記重合体は、当該重合体の総質量に対して、オキサゾリン基を有する構造単位を5~40質量%含むと好ましい。
【0015】
本開示の水性分散体の製造方法は、2-オキサゾリン基を有する重合体(A)と、界面活性剤と、を含み、界面活性剤が、以下の化学式(S);
R1-O-(R2O)nSO3X (S)
(式中、R1は炭素数8~20の脂肪族炭化水素基であり、R2は炭素数2~4のアルキレン基であり、nは2~15であり、Xは、一価のカチオンを表す。)
で表される硫酸エステル化合物を含有する水性分散体の製造方法であって、付加重合性オキサゾリンを含有する単量体混合物を、硫酸エステル化合物を含有する界面活性剤の存在下で乳化重合を行う重合体(A)の製造工程を備える。
【0016】
本開示の塗料組成物は、水性分散体及びカルボキシル基を有する重合体(B)を含み、当該水性分散体が、2-オキサゾリン基を有する重合体(A)と、界面活性剤と、を含み、界面活性剤が、以下の化学式(S);
R1-O-(R2O)nSO3X (S)
(式中、R1は炭素数8~20の脂肪族炭化水素基であり、R2は炭素数2~4のアルキレン基であり、nは2~15であり、Xは、一価のカチオンを表す。)
で表される硫酸エステル化合物を含有する。
【0017】
本開示の塗膜は、2-オキサゾリン基を有する重合体(A)と、以下の化学式(S);
R1-O-(R2O)nSO3X (S)
(式中、R1は炭素数8~20の脂肪族炭化水素基であり、R2は炭素数2~4のアルキレン基であり、nは2~15であり、Xは、一価のカチオンを表す。)
で表される硫酸エステル化合物と、カルボキシル基を有する重合体(B)とを含む。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、高い機械的安定性を有する水性分散体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施形態の水性分散体は、2-オキサゾリン基を有する重合体と、界面活性剤と、を含み、当該界面活性剤が、以下の化学式(S)で表される硫酸エステル化合物を含有する。
R1-O-(R2O)nSO3X (S)
(式中、R1は炭素数8~20の脂肪族炭化水素基であり、R2は炭素数2~4のアルキレン基であり、nは2~15であり、Xは、一価のカチオンを表す。)
【0020】
<2-オキサゾリン基を有する重合体:重合体(A)>
2-オキサゾリン基を有する重合体としては、2-オキサゾリン基を有する構造単位を含有する重合体であれば制限はなく、2-オキサゾリン基を有する構造単位としては、1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。また、当該重合体は、2-オキサゾリン基を有しないその他の構造単位を含有していてもよい。なお、以下、2-オキサゾリン基を有する重合体を重合体(A)とも呼ぶ。
【0021】
2-オキサゾリン基を有する構造単位は、2-オキサゾリン基を有する単量体から誘導されてもよいし、2-オキサゾリン基を有する構造単位を与えるのであれば、2-オキサゾリン基を有する単量体以外から誘導されてもよい。なお、2-オキサゾリン基を有する構造単位とは、例えば、2-オキサゾリン基を有する単量体のC=C二重結合がC-C単結合に置換された構造単位である。例えば、重合体(A)は、2-オキサゾリン基を有する単量体と、必要に応じて1種以上の2-オキサゾリン基を有しないその他の単量体(b)とを重合することによって得られる。2-オキサゾリン基を有する単量体としては、付加重合性の官能基を有する単量体(付加重合性オキサゾリン)が挙げられ、以下の一般式(a)で表される付加重合性オキサゾリン(a)であってよい。
【0022】
【化1】
〔式中、R
1、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、フェニル基又は置換フェニル基であり、R
5は付加重合性不飽和結合を持つ非環状有機基である。〕
【0023】
付加重合性不飽和結合を有する非環状有機基としては、ビニル基、イソプロペニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等が挙げられる。
【0024】
付加重合性オキサゾリン(a)の具体例としては、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリン等を挙げることができ、これらの群から選ばれる1種又は2種以上の混合物を使用することができる。中でも、2-イソプロペニル-2-オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。
【0025】
重合体(A)は、架橋剤として使用した際の硬化性と共に、硬化物の耐久性及び耐水性に優れる傾向にあることから、重合体(A)の総質量に対して、2-オキサゾリン基を有する構造単位を0.5~50質量%含むと好ましく、1~45質量%含むと好ましく、5~40質量%以上含むと更に好ましく、5~30質量%含むと更により好ましい。
【0026】
他の単量体(b)としては、2-オキサゾリン基と反応せず、付加重合性オキサゾリン(a)と共重合可能な単量体であれば特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等のアルキル(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸2-アミノエチル及びその塩等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル類などの(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα-オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等の含ハロゲンα,β-不飽和単量体類;スチレン、α-メチルスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム等のα,β-不飽和芳香族単量体類、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の分子内にビニル基を複数有する単量体(架橋剤)などが挙げられ、これらの1種又は2種以上の混合物を使用することができる。
【0027】
重合体(A)は、重合体(A)の総量に対してアルキル(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を10~80質量%含むと好ましく、20~60質量%含むとより好ましい。また、重合体(A)は、重合体(A)の総量に対してα,β-不飽和芳香族単量体類に由来する構造単位を0.5~70質量%含むと好ましく、20~60質量%含むとより好ましい。また、重合体(A)は、重合体(A)の総量に対して分子内にビニル基を複数有する単量体に由来する構造単位を0.01~5質量%含むと好ましく、0.05~1質量%含むとより好ましい。
【0028】
重合体(A)は、酸基を有する単量体に由来する構造単位を含んでいてもよい。酸基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、ビニル酢酸、ビニル乳酸、不飽和ホスホン酸等が挙げられる。酸基を有する単量体は、得られる共重合体に機械的安定性を付与する傾向にある。しかしながら、本実施形態の水性分散体は、上記硫酸エステル(S)を含むことにより、機械的安定性が向上しているため、重合体(A)は、酸基を有する単量体に由来する構造単位を低減することができ、具体的には、重合体(A)における酸基を有する単量体に由来する構造単位の含有量は、重合体(A)の総量に対して0.5質量%未満であってよく、酸基を有する単量体に由来する構造単位を全く含まなくてもよい。これにより、重合体(A)における又は単量体混合物における酸基と2-オキサゾリン基との反応を抑制することができる。
重合体(A)の重量平均分子量としては、100000~5000000g/molであることが好ましく、300000~3000000g/molであることがより好ましい。重量平均分子量は、ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。重量平均分子量は、例えば、以下の測定条件で測定する。
測定機器:HLC-8120GPC(商品名、東ソー社製)
分子量カラム:TSK-GEL GMHXL-Lと、TSK-GELG5000HXL(いずれも東ソー社製)とを直列に接続して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検量線用標準物質:ポリスチレン(東ソー社製)
測定方法:測定対象物を固形分が約0.2質量%となるようにTHFに溶解し、フィルターにてろ過したものを測定サンプルとして分子量を測定する。
また、重合体(A)を含む水性分散体の場合、水性分散体に含まれるエマルション粒子は、重合体(A)および界面活性剤を含むが、上記重合体(A)同士が、例えば架橋剤等により結合(架橋)された架橋体を有してもよい。重合体(A)が架橋体を有する場合、その重量平均分子量を測定することは困難であるため、重合体(A)の重量平均分子量の上限値は、特に限定されない。
【0029】
重合体(A)のガラス転移温度(Tg)としては、特に制限されないが、-10℃より高いと好ましく、-5℃以上であると好ましく、0℃以上であると更に好ましい。ガラス転移温度の上限としては、例えば、50℃以下とすることができる。ガラス転移温度は、示差熱量測定法(ASTM D3418-08)により測定することができるが、以下のFox式から見積もったものであってもよい。
【0030】
【数1】
計算式(1)中、Tg’は、重合体のTg(絶対温度)である。W
1’、W
2’、・・・W
n’は、全単量体成分に対する各単量体の質量分率である。T
1、T
2、・・・T
nは、それぞれ各単量体成分からなるホモポリマー(単独重合体)のガラス転移温度(絶対温度)である。
上記計算式(1)により重合性単量体成分のガラス転移温度(Tg)を算出するのに使用する、代表的なホモポリマーのTg値を下記に示す。
メチルメタクリレート(MMA):105℃
スチレン(St):100℃
ブチルアクリレート(BA):-56℃
2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA):-70℃
アクリル酸(AA):95℃
2-イソプロペニルー2-オキサゾリン:100℃
【0031】
<硫酸エステル化合物>
本実施形態の硫酸エステル化合物は、下記化学式(S)で表される。
R1-O-(R2O)nSO3X (S)
式中、R1は、炭素数8~20の脂肪族炭化水素基であり、直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。また、R1としては、一般式CmH2m+1で表されるアルキル基であることが好ましく、mは、8~20であることが好ましく、10~18であることがより好ましく、10~16であることが更に好ましく、11~15であることがより更に好ましく、12~14であることが特に好ましい。具体的には、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。また、R1は、一つ以上の不飽和二重結合を有する直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基であってよく、一つの不飽和二重結合を有する直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基であってよい。そのようなR1としては、具体的には、オレイル基等が挙げられる。
【0032】
R2は一般式CrH2r(rは2~4)で表されるアルキレン基であり、具体的には、エチレン基、1,3-プロピレン基、1,2-プロピレン基、1,4-ブチレン基、1,3-ブチレン基、1,2-ブチレン基等が挙げられ、水性分散体の機械的安定性をより高められる観点から、エチレン基、1,2-プロピレン基が好ましい。
【0033】
nは、2~15であり、2~10であると好ましく、3~8であるとより好ましく、3~6であるとより好ましい。nは、整数であってもよいが、水性分散体が複数種の化学式(S)で表される硫酸エステル化合物を含む場合、nは、水性分散体に含まれる当該硫酸エステル化合物にわたっての算術平均(個数平均)値であってよい。
【0034】
Xは、一価のカチオンであり、具体的には、例えば、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン等が挙げられる。アルカリ金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオンが挙げられる。
【0035】
<水性分散体>
本開示の水性分散体は、重合体(A)および硫酸エステル化合物を含む。水性分散体における重合体(A)の含有量は水性分散体の総量に対して、1~80質量%であることが好ましく、5~60質量%であることがより好ましく、10~50質量%であることが更に好ましい。本開示の水性分散体は、効果を阻害しない範囲において、重合体(A)以外の成分を含むことができる。また、本開示の水性分散体における不揮発分の含有量は、水性分散体の総量に対して、1~80質量%であることが好ましく、5~60質量%であることがより好ましく、10~50質量%であることが更に好ましい。
重合体(A)を含む水性分散体は、付加重合性オキサゾリン(a)及び必要に応じて少なくとも1種の他の単量体(b)を、従来公知の重合法によって水性媒体中で重合を行うことにより製造することができる。より具体的には、本実施形態の水性分散体は、付加重合性オキサゾリンを含有する単量体混合物を、上記硫酸エステル化合物を含有する界面活性剤の存在下で乳化重合を行う工程(重合体(A)の製造工程)を備える製造方法によって製造できる。乳化重合は、界面活性剤を含む水溶液に単量体混合物を添加して得られたプレエマルションに対して行ってもよいし、界面活性剤を含む水溶液に単量体混合物を滴下しながら行ってもよい。上記硫酸エステル化合物を用いると、単量体混合物の乳化が容易であると共に、上記硫酸エステル化合物の存在下で乳化重合を行うと、重合中に生じる凝集物の量が少なく、安定して乳化重合が行える傾向にある。使用することができる水性媒体は、特に制限はないが、例示すれば、水;又は、水とメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ターシャリーブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール、アセトン、メチルエチルケトン等の有機溶媒との混合溶液が挙げられる。
【0036】
本実施形態の水性分散体は、重合体(A)を含むエマルション粒子と、連続相である水とを備える。重合体(A)を含むエマルション粒子について、水性分散体に対して動的光散乱法により測定した平均粒子径が、10~300nmであると好ましく、40~200nmであるとより好ましい。
【0037】
水性分散体における上記硫酸エステル化合物の含有量は、機械的安定性を更に高める観点から、2-オキサゾリン基を有する重合体の総量に対して、0.5質量%以上であると好ましく、0.7~10質量%であるとより好ましく、1~5質量%であると更に好ましく、1.5~4質量%であるとより更に好ましく、2~3.5質量%であると最も好ましい。
【0038】
エマルション粒子を更に安定化させるため、水性分散体は、上記硫酸エステル化合物以外の界面活性剤を含んでいてもよい。重合体(A)が乳化重合で得られたものである場合、界面活性剤は、乳化重合を行う際に添加されたものであってよい。また、重合体(A)が反応性乳化剤に由来する構造単位を含んでいてもよい。
【0039】
上記硫酸エステル化合物以外の界面活性剤としては、特に限定はなく、たとえば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤、反応性界面活性剤等のいずれの界面活性剤も使用することができる。
【0040】
アニオン系界面活性剤としては、具体的には、例えば、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート等のアルカリ金属アルキルサルフェート;アンモニウムドデシルサルフェート等のアンモニウムアルキルサルフェート;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート;ナトリウムスルホリシノエート;スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩、スルホン化パラフィンのアンモニウム塩等のアルキルスルホネート;ナトリウムラウリレート、トリエタノールアミンオレエート、トリエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩;ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルアリールスルホネート;高アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ジアルキルスルホコハク酸塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩等を挙げることができる。
【0041】
ノニオン系界面活性剤としては、具体的には、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;グリセロールのモノラウレート等の脂肪酸モノグリセライド;ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体;エチレンオキサイドと脂肪族アミン、アミド又は酸との縮合生成物等が使用できる。
【0042】
高分子界面活性剤としては、具体的には、例えば、ポリビニルアルコール;ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸カリウム、ポリ(メタ)アクリル酸アンモニウム、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート;ポリヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;又はこれらの重合体の構成単位である重合性単量体の二種以上の共重合体又は他の単量体との共重合体等が挙げられる。また、クラウンエーテル類等の相関移動触媒は界面活性を示すので、界面活性剤として使用してもよい。
【0043】
反応性界面活性剤としては、分子中に1個以上の重合可能な炭素-炭素不飽和結合を有するものが挙げられ、具体的には、例えば、プロペニル-2-エチルヘキシルベンゼンスルホコハク酸エステルナトリウム、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンの硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルエーテル硫酸アンモニウム塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンエステルのリン酸エステル、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート化硫酸エステルアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩の構造を有し、かつプロペニル基、イソプロペニル基、アリル基、アクリレート基、メタクリレート基等の重合性を有するもの等のアニオン性反応性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルベンゼンエーテル(メタ)アクリル酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(メタ)アクリル酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルの構造を有し、かつイソプロペニル基、アリール基等の重合性を有するもの等のノニオン性反応性界面活性剤等が挙げられる。これら界面活性剤の使用は、1種のみの使用であっても、また2種以上の併用であってもよいが、水性樹脂分散体からの乾燥塗膜の耐水性を考慮すれば、反応性界面活性剤が好ましい。
【0044】
上記硫酸エステル化合物以外の界面活性剤の使用量は、特に限定はされないが、全重合性単量体成分の使用量に対して、好ましくは0.3~5質量%であり、より好ましくは0.5~3質量%である。上記硫酸エステル化合物以外の界面活性剤の使用量が多過ぎると塗膜の耐水性を低下させ、また、少な過ぎると樹脂粒子の重合安定性が著しく低下する。樹脂の粒子径は、上記硫酸エステル化合物以外の界面活性剤の種類によっても大きな影響を受けるため、使用量は、使用する界面活性剤に応じて、上記範囲内で、更に適宜、選ぶ必要がある。
【0045】
水性分散体は、上記硫酸エステル化合物以外の界面活性剤を含まなくてもよい。水性分散体に含まれる界面活性剤の総量に対する上記硫酸エステル化合物の割合が50~100質量%であると好ましく、75~100質量%であるとより好ましい。
【0046】
本実施形態の水性分散体は、防腐剤を含んでいてもよい。防腐剤としては、特に制限はないが、イソチアゾリン系化合物が挙げられる。イソチアゾリン系化合物を含むことにより、水性分散体に含まれるエマルション粒子の凝集を引き起こさずに、水性分散体に防腐性能又は抗菌性能を付与できる。イソチアゾリン系化合物としては、水性分散体に防腐性能又は抗菌性能を付与できるものであれば特に制限はないが、以下の式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0047】
【化2】
【化3】
[式(1)中、R
11は、水素原子、又は炭素数1~10、好ましくは炭素数1~6のアルキル基を示し、R
12は、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1~6、好ましくは1~4のアルキル基を示し、R
13は、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1~6のアルキル基を示す。式(2)中、R
21は、水素原子、又は炭素数1~10のアルキル基を示し、R
22~R
25は、それぞれ独立して水素原子、又は炭素数1~6のアルキル基を示す。]
【0048】
R11及びR21としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基が挙げられる。R12、R13及びR22~R25の炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。R13のハロゲン原子としては、塩素原子が挙げられる。
【0049】
水性分散体は、イソチアゾリン系化合物の1種のみを含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。水性分散体におけるイソチアゾリン化合物の含有量は、2-オキサゾリン基を有する重合体の総量に対して10~5000質量ppmであると好ましく、20~2000質量ppmであるとより好ましく、50~1000質量ppmであると更に好ましく、100~500質量ppmであると特に好ましい。
【0050】
イソチアゾリン系化合物としては、ベンゾイソチアゾリン(1,2-ベンゾイソチアゾール-3-オン)、メチルイソチアゾリン(2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン)、及びメチルクロロイミダゾリン(5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン)が好ましく、ベンゾイソチアゾリンがより好ましい。
【0051】
水性分散体には、本開示の目的を損なわない範囲で必要に応じて、溶剤、可塑剤、無機又は有機の充填剤、着色顔料、染料、増粘剤、分散剤、湿潤剤、消泡剤、防錆剤等を添加することも可能である。
【0052】
水性分散体の粘度としては、特に制限はないが、取り扱いやすさの観点から、室温(25℃)で、1000mPa・s以下であると好ましく、さらに1~100mPa・sであるとより好ましい。水性分散体の粘度は、B型粘度計により測定することができる。
【0053】
本実施形態の水性分散体において、さらに、上記重合体(A)の2-オキサゾリン基を開環して架橋反応を行うことができる官能基を有する主剤樹脂を配合することで、硬化性の塗料組成物とすることができる。このような主剤樹脂としては、カルボキシル基を有する重合体が挙げられる。以下、カルボキシル基を有する重合体を重合体(B)と呼ぶ。
【0054】
重合体(B)としては、水溶性又は水分散性のカルボキシル基を有する重合体であってよい。重合体(B)はカルボキシル基を有する単量体に由来する構造単位を有し、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂及びポリオレフィン樹脂等が挙げられるが、アクリル樹脂が好ましい。主剤である重合体(B)がアクリル樹脂の場合におけるカルボキシル基の量は重合体(B)の総質量を100質量部として、カルボキシル基を有する単量体に由来する構造単位を好ましくは1~15質量部、更に好ましくは2~10質量部、最も好ましくは3~8質量部とすることで、塗料組成物の硬化被膜が強靭となり、耐水性、耐久性及び基材への密着性に優れた被膜が形成される。なお、カルボキシル基を有する単量体に由来する構造単位は、カルボキシル基を有する単量体から誘導されてもよいし、カルボキシル基を有する単量体以外から誘導されてもよい。また、カルボキシル基を有する単量体に由来する構造単位は、例えば、カルボキシル基を有する単量体のC=C二重結合がC-C単結合に置き換わった構造単位である。なお、重合体(B)が有するカルボキシル基は、中和されていなくてもよいが中和されていてもよい。
【0055】
重合体(B)において、カルボキシル基を有する単量体とはモノカルボン酸類、ジカルボン酸類、ジカルボン酸モノエステル類などを挙げることができる。より具体的には、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノブチル、ビニル安息香酸、シュウ酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシル基末端カプロラクトン変性アクリレート(例えば「プラクセルFA」シリーズ;ダイセル工業製)、カルボキシル基末端カプロラクトン変性メタクリレート(例えば「プラクセルFMA」シリーズ;ダイセル工業株式会社製)などを挙げることができる。これらの中でも(メタ)アクリル酸、イタコン酸が好ましい。これらは1種又は2種以上を適宜選択し用いることができる。これらの中でも、重合体としての粘度が作業に好適になる(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0056】
カルボキシル基を有する単量体以外の単量体としては、特に限定は無いが、例えば以下のようなものを挙げることができ、単量体由来の性能を発揮させるためにそれらの1種又は2種以上を適宜選択し用いることができる。
【0057】
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアルキル又はシクロアルキルエステルモノマー類。
【0058】
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート(例えば、ダイセル化学工業製の「プラクセルF」シリーズ等)等のヒドロキシル基含有モノマー類、特にヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル類。
【0059】
メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリプロポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアルコキシアルキルエステル類。ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2-スチリルエチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヒドロキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルヒドロキシシラン等のヒドロキシシラン及び/又は加水分解性シラン基含有ビニル系モノマー類。
【0060】
(メタ)アクリルアミド、N-モノメチル(メタ)アクリルアミド、N-モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタクリルアミド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、モルホリンのエチレンオキサイド付加(メタ)アクリレート、N-ビニルピリジン、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルピロール、N-ビニルピロリドン、N-ビニルオキサゾリドン、N-ビニルサクシンイミド、N-ビニルメチルカルバメート、N,N-メチルビニルアセトアミド、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-2-オキサゾリン、(メタ)アクリロニトリル等の窒素含有モノマー類。
【0061】
(メタ)アクリロイルアジリジン、(メタ)アクリル酸2-アジリジニルエチル等のアジリジニル基含有モノマー類。
【0062】
グリシジル(メタ)アクリレート、α-メチルグリシジルアクリレート、α-メチルグリシジルメタクリレート(例えば、ダイセル化学工業製の「MGMA」)、グリシジルアリルエーテル、オキソシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート(例えば、ダイセル化学工業製の「サイクロマー(登録商標)A400」等)、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(例えば、ダイセル化学工業製の「サイクロマー(登録商標)M100」等)等のエポキシ基含有モノマー類。
【0063】
スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルメチルスチレン等の芳香族ビニルモノマー類。
【0064】
アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ホウミルスチロール、4~7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(ビニルエチルケトン等)、(メタ)アクリルオキシアルキルプロペナール、アセトニルアクリレート、ジアセトン(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、ブタンジオール-1,4-アクリレートアセチルアセテート等のカルボニル基含有モノマー類。パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロイソノニルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート類。
【0065】
4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(例えば、旭電化工業製「アデカスタブ(登録商標)LA-87」)、4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン(例えば、旭電化工業製「アデカスタブ(登録商標)LA-82」)、4-(メタ)アクリロイル-1-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルアミノ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-クロトノイル-4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等の紫外線安定性モノマー類。
【0066】
2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-5-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]-2H-1,2,3-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル]-5-t-ブチル-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルアミノメチル-5’-t-オクチルフェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-t-ブチル-3’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]-5-シアノ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]-5-t-ブチル-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(β-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)-3’-t-ブチルフェニル]-4-t-ブチル-2H-ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収性モノマー類。
【0067】
2-ヒドロキシ-4-(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシ]プロポキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-[2-(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-[3-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ]ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-4-[2-(メタ)アクリロイルオキシ]ブトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収性モノマー類。
【0068】
重合体(B)は、重合体(B)の総量に対してアルキル(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を20~80質量%含むと好ましく、20~60質量%含むとより好ましい。また、重合体(B)は、重合体(B)の総量に対して芳香族ビニルモノマー類に由来する構造単位を10~70質量%含むと好ましく、20~60質量%含むとより好ましい。
【0069】
重合体(B)は、通常の溶液重合や乳化重合のなどの公知の重合方法により調製することが可能である。重合体(B)が乳化重合で得られたものである場合、好ましい分子量は、重量平均分子量で好ましくは100,000~3000,000、更に好ましくは300,000~2000,000、最も好ましくは500,000~1000,000である。分子量をこの範囲に設定することで、塗膜の成膜性と耐久性のバランスがよくなる。
【0070】
また、水溶液中でのラジカル重合においては、分子量は好ましくは1000~50000、更に好ましくは3000~30000、最も好ましくは5000~20000である。分子量をこの範囲に設定することで、塗工時の作業性と塗膜耐久性のバランスがよくなる。
【0071】
重合体(B)としては、公知のものを広く使用することができる。例えば、アクリセット19E、アクリセット210E、アクリセット260E、アクリセット288E、アロロン453(いずれも株式会社日本触媒製)等の水分散性あるいは水溶性アクリル樹脂;ソフラネートAE-10、ソフラネートAE-40(いずれも日本ソフラン加工株式会社製)、ハイドランHW-110、ハイドランHW-131、ハイドランHW-135、ハイドランHW-320、ボンディック72070(いずれも大日本インキ化学工業株式会社製)、ポイズ710、ポイズ720(いずれも花王株式会社製)、メルシー525、メルシー585、メルシー414、メルシー455(いずれも東洋ポリマー株式会社製)等の水分散性ポリウレタン樹脂;バイロナールMD-1200、バイロナールMD-1400、バイロナールMD-1930(いずれも東洋紡績株式会社製)、WD3652、WJL6342(いずれもイーストマンケミカル社製)等の水分散性ポリエステル樹脂;イソバン-10、イソバン-06、イソバン-04(いずれもクラレイソプレンケミカル株式会社製)、プリマコール5981、プリマコール5983、プリマコール5990、プリマコール5991(いずれもダウケミカル社製)等の水溶性、水希釈性又は水分散性のポリオレフィン系樹脂等を挙げることができる。
【0072】
本開示の塗料組成物における、重合体(B)(カルボキシル基を有する重合体)と重合体(A)(2-オキサゾリン基を有する重合体)との配合割合は、重合体(B)100質量部に対して重合体(A)1~50質量部の範囲が好ましく、2~30質量部の範囲がより好ましく、3~10重量部の範囲が更に好ましい。この範囲に量比を設定することで硬化の程度が充分であり、耐久性、耐水性等がよく、基材への密着性がよくなる傾向がある。
【0073】
本実施形態の塗料組成物は、本開示の目的を損なわない範囲で必要に応じて、溶剤、可塑剤、無機又は有機の充填剤、着色顔料、染料、増粘剤、分散剤、湿潤剤、消泡剤、防錆剤等を添加することも可能である。本実施形態の塗料組成物を製造するに際しては、特に限定されず、当該業者で慣用の手段を広く適用でき、例えば、重合体(B)の水分散液に、上記水性分散体と必要に応じてその他添加剤とを適宜添加、混合すればよい。そして、塗料、表面処理剤、コーティング剤、接着剤、シーリング剤に使用するに際しては、ロールコーター、スプレー、浸漬、刷毛塗り等、当分野で慣用の方法で基材に塗布すればよい。硬化は室温で1日~2週間で行うことができるが、必要であれば120℃で30分間程度のような加熱により行うこともできる。
【0074】
本実施形態の塗料組成物が上記イソチアゾリン系化合物を含む場合に、繊維用接着剤として使用した際に、繊維材料とゴムとの接着力を向上させることができる傾向にある。そのため、自動車用のタイヤ、ベルト等における繊維用接着剤として好適に使用できる。また、本実施形態の塗料組成物でゴムと接着した繊維材料は、その後、ゴムと剥離した場合に繊維材料の表面に付着したゴムの量が少ない傾向にある。
【0075】
繊維材料としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、炭素繊維、アラミド繊維、スチール繊維等を挙げることができる。ゴムとしては、アクリルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンゴム等を挙げることができる。
【0076】
上記塗料組成物を基材に塗布し、乾燥させて塗膜とすることができる。すなわち、本実施形態の塗膜は、2-オキサゾリン基を有する重合体(A)と、化学式(S);
R1-O-(R2O)nSO3X (S)
(式中、R1は炭素数8~20の脂肪族炭化水素基であり、R2は炭素数2~4のアルキレン基であり、nは2~15であり、Xは、一価のカチオンを表す。)
で表される硫酸エステル化合物と、カルボキシル基を有する重合体(B)と、を含む。乾燥する際に加熱してもよく、100~140℃で5~60分の加熱乾燥を行ってもよい。乾燥する際の雰囲気としては、特に限定されないが、60~70%の相対湿度の雰囲気であってよい。
【実施例】
【0077】
<実施例1、2、比較例1~2(2-オキサゾリン基を有する重合体の製造)>
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計及び滴下ロートを備えたフラスコに、脱イオン水782.4質量部及び表1に記載された界面活性剤18.7質量部〔2-オキサゾリン基を有する重合体を形成する単量体混合物の質量(該重合体の質量に相当)に対し、2.9質量%〕を仕込み、適量の28質量%アンモニア水でpH9.0に調整し、ゆるやかに窒素ガスを流しながら70℃に加熱した。そこへ過硫酸カリウムの5質量%水溶液64質量部を注入し、続いて予め調製しておいたアクリル酸ブチル288質量部、スチレン288質量部、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン64質量部及びジビニルベンゼン6質量部からなる単量体混合物を3時間にわたって滴下しながら、重合反応を行った。反応中は窒素ガスを吹き込み続け、フラスコ内の温度を70±1℃に保った。滴下終了後も2時間同じ温度に保った後、内温を80℃に昇温させて1時間攪拌を続けて反応を完結させた。その後冷却し、300のメッシュの金網で濾過し、凝集物を分離し、pH8.0の2-オキサゾリン基を有する重合体の水性分散体を得た。不揮発分量を測定したところ、43.5質量%であった。重合体のガラス転移温度をFox式で見積もったところ、10℃であった。また、動的光散乱法による粒度分布測定器(Particle Sizing Systems社製「NICOMP Model 380」)を用い、水性分散体に含まれるエマルション粒子の平均粒子径(体積平均粒子径)を測定した。結果を表1に示す。
<比較例3(2-オキサゾリン基を有する重合体の製造)>
表1に記載された界面活性剤25.8質量部〔2-オキサゾリン基を有する重合体を形成する単量体混合物の質量(該重合体の質量に相当)に対し、4.0質量%〕を仕込む以外は、実施例1と同様の方法で製造した。不揮発分量を測定したところ、43.5質量%であった。重合体のガラス転移温度をFox式で見積もったところ、10℃であった。また、動的光散乱法による粒度分布測定器(Particle Sizing Systems社製「NICOMP Model 380」)を用い、水性分散体に含まれるエマルション粒子の平均粒子径(体積平均粒子径)を測定した。結果を表1に示す。
【0078】
<機械的安定性>
得られた各水性分散体に対して、以下の条件でマロン機械的安定性試験を行った。試験機としては、株式会社安田精機製作所製、商品名:「No.156マロン機械的安定度試験機」を使用した。試験後、100メッシュの金網により試料を濾過し、回収された凝集物の質量を測定した。試験に使用した試料の量に対する得られた凝集物の質量を計算し、凝集率を求めた。結果を表1に示す。凝集率が小さいほど機械的安定性に優れている。
(試験条件)
サンプル量:70g
負荷 :10kg
回転数 :1000rpm
試験時間 :10分
【0079】
<乳化容易性>
フラスコに、脱イオン水782.4質量部及び実施例1、2、及び比較例1~3で使用した各界面活性剤を一定量(脱イオン水及び単量体混合物の総量に対して3質量%)添加した水溶液を用意した。当該水溶液に、上記単量体混合物と同じ組成の単量体混合物を添加した際の乳化しやすさを以下の基準で評価した。
A:単量体混合物を一括して添加し、回転数300rpmで15分攪拌して乳化できた。
B:単量体混合物を一括して添加すると乳化できないが、単量体混合物を10回に分けて添加し、添加するごとに回転数300rpmで15分攪拌した場合であれば、乳化可能であった。
C:乳化できなかった。
【0080】
<重合安定性>
乳化重合の直後に分離した凝集物の質量を測定し、水性分散体の総量に対する割合(%)を算出し、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
A:凝集物量が0.2%未満
B:凝集物量が0.2~1.0%
C:凝集物量が1.0%より大きい
【0081】
【0082】
なお、表1中の界面活性剤は、それぞれ以下のものである。
LA-10:第一工業製薬株式会社製、商品名「ハイテノール LA-10」、化学式(S)において、R
1:ラウリル、R
2:エチレン、n=4、X:NH
4の化合物。
08E :第一工業製薬株式会社製、商品名「ハイテノール 08E」、化学式(S)において、R
1:オレイル、R
2:エチレン、n=8、X:NH
4の化合物。
LA-16:第一工業製薬株式会社製、商品名「ハイテノール LA-16」、化学式(S)において、R
1:ドデシル、R
2:エチレン、n=16、X:NH
4の化合物。
E-1000A:花王株式会社製、商品名「ラムテル E-1000A」、下記化学式の多環芳香族化合物。
【化4】
4D/384:ソルベイジャパン株式会社製、商品名「4D/384」、ポリオキシエチレンモノ(トリスチレン化フェニル)エーテル硫酸エステルアンモニウム塩。
【0083】
表1に示されるとおり、実施例1及び2は、比較例1~3と比較して機械的安定性に優れる。
【0084】
<製造例1(アクリルエマルションの製造)>
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計及び滴下ロートを備えたフラスコに、脱イオン水376.5質量部及びハイテノールN-08(第一工業製薬株式会社製、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム塩の15質量%水溶液)70.8質量部を仕込み、ゆるやかに窒素ガスを流しながら80℃に加熱した。予め調製しておいたアクリル酸2-エチルヘキシル131質量部、スチレン205質量部及びアクリル酸17質量部からなる単量体混合物の5質量%をフラスコに仕込み、続いて過硫酸カリウムの5質量%水溶液21質量部を注入し重合を開始した。10分後に残りの単量体混合物を3時間にわたって滴下した。反応中は窒素ガスを吹き込み続け、フラスコ内の温度を80±1℃に保った。滴下終了後も1時間同じ温度に保った後、冷却し、25質量%アンモニア水9質量部でpH8.5に調整し、不揮発分44.1質量%、pH8.5のアクリルエマルションを(重合体(B))得た。
【0085】
実施例1、2及び比較例1~3の水性分散体に、製造例1で製造したアクリルエマルションを、アクリルエマルションに含まれるアクリル系重合体(不揮発分)100質量部に対して2-オキサゾリン基を有する重合体が5質量部となるように配合し、塗料組成物(クリア塗料)を得た。得られた塗料組成物について以下の各種特性を試験した。結果を表2に示す。
【0086】
<耐溶剤性>
各クリア塗料を、温度が23±2℃で、相対湿度が65±3%である雰囲気中でガラス板(縦:15cm、横:7cm)上に乾燥後の膜厚が150μmになるようにアプリケーターを用いて塗布した。このガラス板をこの雰囲気中で2分間放置し、次いで120℃の温度で30分間加熱した後、放冷することにより、塗膜が形成されたガラス板を作製した。
上記塗膜を、メチルエチルケトンを含ませた脱脂綿で50往復して擦った後(ラビング試験)、その塗膜の状態を目視で観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。なお、塗膜に変化がないほど架橋性が良好である。
A:塗膜に変化が認められない。
B:塗膜の一部に溶解が認められる。
C:塗膜全体に溶解が認められる。
【0087】
<耐水白化性>
耐溶剤性試験と同様にして塗膜が形成されたガラス板を作製した。この塗膜が形成されたガラス板の塗膜上に直径30mm、長さ30mmのガラス管の開口部を載せて接着させた後、ガラス管の内部にある塗膜が水と接触するようにイオン交換水10mLをガラス管内に注いだ状態で、温度が23±2℃で、相対湿度が65±3%である雰囲気中に24時間放置した。その後、イオン交換水と接触している塗膜の状態を目視で観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。なお、試験開始前の塗膜と比較して試験後の塗膜に変化が小さいほど架橋性が良好である。
(評価基準)
A:塗膜に変化が認められない。
B:塗膜の一部にやや白濁が認められる。
C:塗膜全体に白化が認められる。
【0088】
<フィルム強度>
耐溶剤性試験で用いた塗膜が形成されたガラス板から、カッターの刃で塗膜を剥ぎ取り、その剥ぎ取った塗膜(遊離フィルム)を強度測定用フィルムとした。強度測定用フィルムを恒温恒湿室(温度25℃、湿度60%RH)で24時間保存した。その後、引っ張り試験機〔株式会社島津製作所製、商品名:オートグラフAGS-100D〕のチャックに掴持し、JIS P-8113に準拠して引っ張り試験し、強度測定用フィルムの引張強度を測定した。製造例1で製造したアクリルエマルションのクリア塗料(実施例1、2及び比較例1~3の水性分散体を配合していない塗料)から形成したフィルムの引張強度をブランクとし、そのブランクと実施例1、2及び比較例1~3の水性分散体を配合した各クリア塗料から形成したフィルムとの引張強度を比較した。結果を以下の基準で評価した。
A:ブランクと比較して強度が1.5倍より大きくなった。
B:ブランクと比較して強度が1.0~1.5倍であった。
【0089】
【0090】
(実施例3~8)
水性分散体に含まれる2-オキサゾリン基を有する重合体のモノマー組成、又は水性分散体に含まれる添加剤(防腐剤若しくは乳化剤)の種類若しくは含有量を表3に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様に水性分散体を製造し、各種性能評価を行った。結果を表3に示す。なお、表3における略号は、以下のとおりである。
ST:スチレン
BA:アクリル酸ブチル
DVB:ジビニルベンゼン
IPO:2-イソプロペニル-2-オキサゾリン
MMA:メチルメタクリレート
BIT:ベンゾイソチアゾリン(ロンザジャパン株式会社製、商品名:Proxel GXL、ベンゾイソチアゾリンの含有量:20質量%)
【0091】