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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】造形装置及び造形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 67/00 20170101AFI20220826BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220826BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220826BHJP
【FI】
B29C67/00
B33Y10/00
B33Y30/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2016205929
(22)【出願日】2016-10-20
(65)【公開番号】P2018065309
(43)【公開日】2018-04-26
【審査請求日】2019-04-09
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142653
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】越智 和浩
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】石附 直弥
【審判官】松波 由美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-123685(JP,A)
【文献】特開2016-150549(JP,A)
【文献】特開2016-147458(JP,A)
【文献】特開2015-221515(JP,A)
【文献】国際公開第2015/198974(WO,A1)
【文献】特表2006-503735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C64/00-64/40
B33Y10/00-99/00
B41J2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体的な造形物を造形する造形装置であって、
造形の材料を吐出する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドによる前記造形の材料の吐出を制御する制御部と
を備え、
前記吐出ヘッドとして、
混色によりカラー表現を行う場合に混色させる色である基本色に着色された前記材料をそれぞれが吐出する複数の前記吐出ヘッドである複数の基本色用ヘッドと、
前記基本色用ヘッドが吐出する前記材料よりも淡い色に着色された前記材料を吐出する前記吐出ヘッドである淡色用ヘッドと、
光反射性のインクを吐出する光反射性インク用ヘッドと
を備え、
前記造形物において外部から色彩を視認できる領域の少なくとも一部に形成される着色領域と、前記造形物において前記着色領域の内側に形成される光反射領域とを備える前記造形物を造形し、
前記光反射領域は、前記着色領域を介して前記造形物の外部から入射する光を反射するための領域であり、
前記制御部は、前記基本色用ヘッド及び前記淡色用ヘッドを用いて前記着色領域が形成されると共に、前記光反射性インク用ヘッドを用いて前記光反射領域が形成されるように、前記吐出ヘッドによる前記造形の材料の吐出を制御し、
前記複数の基本色用ヘッドのそれぞれは、互いに異なる色の前記基本色に着色された前記材料を吐出し、
前記着色領域について、前記複数の基本色用ヘッドを用いて着色し、かつ、前記着色領域の各位置に対して前記複数の基本色用ヘッドにより吐出する前記材料の合計量の差について、前記淡色用ヘッドから前記淡い色に着色された材料を吐出することで補填し、
前記着色領域の少なくとも一部について、前記造形物の表面と直交する方向である法線方向の位置が前記造形物における内側寄りの部分の色の濃度が前記造形物における外側寄りの部分の色の濃度よりも濃くなるように形成し、
前記着色領域の前記法線方向における各位置について、前記淡色用ヘッドから吐出する前記材料の割合を淡色材料率と定義した場合、前記外側寄りの部分における前記淡色材料率を前記内側寄りの部分における前記淡色材料率よりも大きくすることを特徴とする造形装置。
【請求項2】
前記吐出ヘッドは、インクジェット方式で前記材料を吐出するインクジェットヘッドであり、
前記材料は、紫外線の照射に応じて硬化する紫外線硬化型インクであることを特徴とする請求項1に記載の造形装置。
【請求項3】
前記材料は、紫外線の照射に応じて硬化する成分である硬化成分を含み、
前記淡い色に着色された材料は、前記硬化成分の地の色の影響を低減する色に着色されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の造形装置。
【請求項4】
前記吐出ヘッドとして、実質的に着色がされていない透明な材料を吐出する透明材料用ヘッドを更に備え、
前記複数の基本色用ヘッドにより吐出する前記材料の合計量の差について、前記透明材料用ヘッドを更に用いて前記補填を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の造形装置。
【請求項5】
前記着色領域の少なくとも一部について、前記造形物の内側になる程色の濃度が濃くなるように形成することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の造形装置。
【請求項6】
前記淡色用ヘッドが吐出する前記材料は、いずれかの前記基本色用ヘッドが吐出する前記材料と同じ色で、かつ、色の濃度が薄い材料であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の造形装置。
【請求項7】
前記複数の基本色用ヘッドのそれぞれは、イエロー色(Y色)、マゼンタ色(M色)、シアン色(C色)、及びブラック色(K色)のそれぞれの色に着色された前記材料を吐出することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の造形装置。
【請求項8】
前記淡色用ヘッドとして、
マゼンタ色用の前記基本色用ヘッドが吐出する前記材料よりも淡い色のマゼンタ色に着色された前記材料と吐出するマゼンタ色用の前記淡色用ヘッドと、
シアン色用の前記基本色用ヘッドが吐出する前記材料よりも淡い色のシアン色に着色された前記材料と吐出するシアン色用の前記淡色用ヘッドと
を備えることを特徴とする請求項に記載の造形装置。
【請求項9】
前記淡色用ヘッドが吐出する前記材料は、いずれの前記基本色用ヘッドが吐出する前記材料とも異なる色に着色された材料であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の造形装置。
【請求項10】
前記複数の基本色用ヘッドのそれぞれは、イエロー色(Y色)、マゼンタ色(M色)、シアン色(C色)、及びブラック色(K色)のそれぞれの色に着色された前記材料を吐出し、
前記淡色用ヘッドは、淡い青色に着色された前記材料を吐出することを特徴とする請求項に記載の造形装置。
【請求項11】
立体的な造形物を造形する造形方法であって、
造形の材料を吐出する吐出ヘッドとして、
混色によりカラー表現を行う場合に混色させる色である基本色に着色された前記材料をそれぞれが吐出する複数の前記吐出ヘッドである複数の基本色用ヘッドと、
前記基本色用ヘッドが吐出する前記材料よりも淡い色に着色された前記材料を吐出する前記吐出ヘッドである淡色用ヘッドと、
光反射性のインクを吐出する光反射性インク用ヘッドと
を用いて、
前記造形物において外部から色彩を視認できる領域の少なくとも一部に形成される着色領域と、前記造形物において前記着色領域の内側に形成される光反射領域とを備える前記造形物を造形し、
前記光反射領域は、前記着色領域を介して前記造形物の外部から入射する光を反射するための領域であり、
前記基本色用ヘッド及び前記淡色用ヘッドを用いて前記着色領域が形成されると共に、前記光反射性インク用ヘッドを用いて前記光反射領域が形成されるように、前記吐出ヘッドによる前記造形の材料の吐出を制御し、
前記複数の基本色用ヘッドのそれぞれは、互いに異なる色の前記基本色に着色された前記材料を吐出し、
前記着色領域について、前記複数の基本色用ヘッドを用いて着色し、かつ、前記着色領域の各位置に対して前記複数の基本色用ヘッドにより吐出する前記材料の合計量の差について、前記淡色用ヘッドから前記淡い色に着色された材料を吐出することで補填し、
前記着色領域の少なくとも一部について、前記造形物の表面と直交する方向である法線方向の位置が前記造形物における内側寄りの部分の色の濃度が前記造形物における外側寄りの部分の色の濃度よりも濃くなるように形成し、
前記着色領域の前記法線方向における各位置について、前記淡色用ヘッドから吐出する前記材料の割合を淡色材料率と定義した場合、前記外側寄りの部分における前記淡色材料率を前記内側寄りの部分における前記淡色材料率よりも大きくすることを特徴とする造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形装置及び造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットヘッドを用いて造形物を造形する造形装置(3Dプリンタ)が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このような造形装置においては、例えば、インクジェットヘッドにより形成するインクの層を複数層重ねることにより、積層造形法で造形物を造形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-71282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、造形装置を用いて行う造形の方法として、着色された造形物を造形することが検討されている。この場合、例えば、互いに異なる複数色の着色用のインクを用い、造形物において外側から色彩を視認できる領域の形成を着色用のインクを用いて行うことにより、様々な色に着色された造形物を造形する。
【0005】
また、この場合、複数色の着色用のインクを用いて行う様々な色の表現は、例えば、2次元の画像を印刷するインクジェットプリンタで様々な色を表現するための構成を応用することで行うことができる。しかし、造形物の造形時に着色を行う場合、2次元の画像の印刷時とは異なる点についても留意することが望ましい。そのため、従来、着色された造形物をより適切な方法で造形することが望まれていた。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる造形装置及び造形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の発明者は、着色された造形物を造形する場合により適切に着色を行う方法について、鋭意研究を行った。そして、この鋭意研究において、造形の材料として使用するインクの地の色と、造形時の着色の仕方との関係に着目した。この場合、インクの地の色とは、例えば、顔料や染料等の着色材を添加しない状態でのインクの色のことである。また、インクの地の色とは、例えば、無色透明のクリアインクの色と考えることもできる。また、より具体的に、造形の材料として例えば紫外線硬化型インクを用いる場合、インクの地の色について、着色材以外の硬化成分の地の色と考えることもできる。
【0007】
また、インクの地の色について、理想的には、完全に無色透明にすることが好ましい。しかし、実際のインクにおいて、インクの地の色を完全に無色透明にすることは難しい。そのため、通常、インクの地の色は、完全に無色透明にはならない。より具体的に、例えば紫外線硬化型インクを用いる場合、インクに含まれる開始剤の色や、紫外線硬化型樹脂の色の影響で、地の色がわずかに黄色味を帯びた状態になる場合がある。
【0008】
この点について、例えば2次元の画像を印刷する場合、通常、インクの地の色は、大きな問題にならない。これは、2次元の画像を印刷する場合、媒体(メディア)上に形成するインクの層の厚さが薄いため、地の色の影響が生じ難いためである。
【0009】
しかし、立体的な造形物を造形する場合、立体的な表面に対してより確実に着色を行う必要がある。そのため、着色用のインクで形成する領域(着色領域)について、通常、2次元の画像を印刷する場合と比べて厚いインクの層を形成することになる。その結果、立体的な造形物を造形する場合、2次元の画像を印刷する場合と比べて、インクの地の色の影響が生じやすくなる。また、これにより、例えば、着色領域において薄い色の着色を行う場合等に、地の色の影響で所望の色が表現できなくなる場合がある。より具体的には、例えば、地の色が黄色味を帯びた紫外線硬化型インクを用いて着色を行う場合において、薄い青色等を表現しようとする場合に、色相が黄色寄りに変化して、緑味を帯びた色になること等が考えられる。
【0010】
これに対し、本願の発明者は、着色用のインクとして用いる基本色のインクの他に、より淡い色のインクを更に用いることで、例えばインクの地の色の影響を打ち消して、インクの地の色の影響を低減することを考えた。また、このようにして造形を行うことで、着色された造形物をより適切な方法で造形できることを見出した。また、更なる鋭意研究により、このような効果を得るために必要な特徴を見出し、本発明に至った。
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明は、立体的な造形物を造形する造形装置であって、造形の材料を吐出する吐出ヘッドとして、混色によりカラー表現を行う場合に混色させる色である基本色に着色された前記材料を吐出する前記吐出ヘッドである基本色用ヘッドと、前記基本色用ヘッドが吐出する前記材料よりも淡い色に着色された前記材料を吐出する前記吐出ヘッドである淡色用ヘッドとを備えることを特徴とする。
【0012】
淡い色とは、例えば、明るい色のことである。また、明るい色とは、例えば、所定の厚さの層を形成した場合に光の透過率が高くなる色のことである。
【0013】
このように構成した場合、例えば、淡色用ヘッドから吐出する淡い色の材料(インク等)を用いることにより、造形の材料の地の色の影響を適切に低減できる。また、これにより、例えば、着色された造形物をより適切な方法で造形できる。
【0014】
造形の材料としては、例えば、紫外線の照射に応じて硬化する材料を好適に用いることができる。この場合、紫外線の照射に応じて硬化する材料とは、例えば、紫外線の照射に応じて硬化する成分である硬化成分を含む材料のことである。また、着色された材料としては、例えば、硬化成分と、色の成分である着色材とを含む材料を用いることが考えられる。着色材としては、例えば、顔料や染料等を好適に用いることができる。また、この場合、例えば基本色に着色された材料としては、硬化成分と、基本色の着色材とを含む材料を用いることが考えられる。
【0015】
また、このような造形の材料を用いる場合、着色材を添加しない状態での材料の色について、材料の地の色と考えることができる。また、この地の色は、材料中の硬化成分の地の色と考えることもできる。そして、この場合、淡色用ヘッドから吐出する淡い色に着色された材料として、硬化成分の地の色の影響を低減する色に着色されている材料を用いることが考えられる。
【0016】
硬化成分の地の色の影響を低減する淡い色とは、例えば、その淡い色と硬化成分の地の色とを合わせることにより、硬化成分の地の色の影響が見えにくくなる色のことである。また、例えば複数色の淡い色の材料を用いる場合、硬化成分の地の色の影響を低減する淡い色とは、例えば、その複数色の淡い色と硬化成分の地の色とを合わせることにより、硬化成分の地の色の影響が見えにくくなる色のことであってもよい。また、硬化成分の地の色の影響を見えにくくするためには、例えば、一又は複数の淡い色の材料として、硬化成分の地の色の補色又は補色に近い色を示す材料を用いること等が考えられる。
【0017】
また、より具体的に、吐出ヘッドとしては、例えば、インクジェット方式で材料を吐出するインクジェットヘッドを好適に用いることができる。この場合、造形の材料とは、例えば、造形に使用するインクである。また、このような材料としては、例えば、紫外線の照射に応じて硬化する紫外線硬化型インクを好適に用いることができる。また、造形の材料として紫外線硬化型インクを用いる場合、材料の地の色が黄色味を帯びていることが考えられる。そして、このような場合、例えば、黄色の補色である青色又は青色に近い色になる一色又は複数色の淡い色の材料を用いることが考えられる。
【0018】
また、この構成において、造形装置は、例えば、互いに異なる色の基本色に着色された材料をそれぞれ吐出する複数の基本色用ヘッドを備える。この場合、複数の基本色用ヘッドのそれぞれは、例えば、イエロー色(Y色)、マゼンタ色(M色)、シアン色(C色)、及びブラック色(K色)のそれぞれの色に着色された材料を吐出する。
【0019】
また、淡色用ヘッドから吐出する材料としては、例えば、いずれかの基本色用ヘッドが吐出する材料と同じ色で、かつ、色の濃度が薄い材料を用いることが考えられる。この場合、淡色用ヘッドから吐出する材料として、例えば、淡いマゼンタ色の材料と、淡いシアン色の材料とを用いること等が考えられる。また、淡色用ヘッドから吐出する材料として、例えば、いずれの基本色用ヘッドが吐出する材料とも異なる色に着色された材料を用いること等も考えられる。この場合、淡色用ヘッドから吐出する材料として、例えば淡い青色の材料を用いること等が考えられる。
【0020】
また、淡色用ヘッドから吐出する材料については、例えば、造形物における着色領域の形成時において、複数の基本色用ヘッドにより吐出する材料の合計量の差を補填するために用いることが考えられる。この場合、複数の基本色用ヘッドにより吐出する材料の合計量の差とは、着色領域の各位置へ着色する色の違いによって生じる材料の合計量の差のことである。
【0021】
また、造形装置は、吐出ヘッドとして、実質的に着色がされていない透明な材料を吐出する透明材料用ヘッドを更に備えてもよい。この場合、実質的に着色がされていないとは、例えば、着色材を意図的に添加していない材料のことである。この場合、複数の基本色用ヘッドにより吐出する材料の合計量の差の補填について、淡色用ヘッドに加えて透明材料用ヘッドを更に用いて行うことが考えられる。また、実質的に着色がされていない透明な材料としては、例えば、無色透明なクリアインクを用いることが考えられる。
【0022】
また、着色領域については、例えば、造形物の表面と直交する方向である法線方向における位置によって色の濃さを異ならせてもよい。この場合、例えば、造形物の内側寄りの部分の色を濃くして、外側寄りの部分の色を薄くすることが好ましい。このように構成すれば、例えば、粒状感が目立ちやすい外側の部分の色を薄くすることで、粒状感をより適切に抑えることができる。また、粒状感が目立ちにくい内側の部分の色を濃くすることで、着色領域の厚さが過度に厚くなることを防ぎつつ、着色領域の全体での色を適切かつ十分に濃くすることができる。
【0023】
また、本発明の構成として、上記と同様の特徴を有する造形方法等を用いることも考えられる。この場合も、例えば、上記と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、例えば、着色された造形物をより適切な方法で造形できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る造形装置10の一例を示す図である。図1(a)は、造形装置10の要部の構成の一例を示す。図1(b)は、造形装置10のおけるヘッド部12の構成の一例を示す。図1(c)は、造形装置10により造形する造形物50の構成の例を示す。
図2】インクの量の補填の仕方について説明をする図である。図2(a)は、着色用のインクの量の変化に対してクリアインクを用いて補填を行う動作の一例を示す。図2(b)は、本例において行う補填の動作の一例を示す。
図3】法線方向における位置によって色の濃さを異ならせる場合の着色領域204の構成について説明をする図である。図3(a)は、着色領域204の構成の一例を模式的に示す図である。図3(b)は、着色領域204のうち、図3(a)とは異なる部分の構成の一例を示す断面図である。図3(c)は、着色領域204をより多くの領域に分ける場合の着色領域204の構成の一例を示す。
図4】造形装置10の構成の変形例を示す図である。図4(a)は、造形装置10におけるヘッド部12の構成を図1(b)に示した構成と異ならせた場合の変形例について、ヘッド部12の構成の一例を示す。図4(b)は、ヘッド部12の構成の更なる変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る造形装置10の一例を示す。図1(a)は、造形装置10の要部の構成の一例を示す。
【0027】
尚、以下に説明をする点を除き、造形装置10は、公知の造形装置と同一又は同様の構成を有してよい。より具体的に、以下の説明をする点を除き、造形装置10は、例えば、インクジェットヘッドを用いて造形物50の材料となる液滴(インク滴)を吐出することで造形を行う公知の造形装置と同一又は同様の構成を有してよい。また、造形装置10は、図示した構成以外にも、例えば、造形物50の造形や着色等に必要な各種構成を更に備えてよい。
【0028】
本例において、造形装置10は、積層造形法により立体的な造形物50を造形する造形装置(3D造形装置)である。この場合、積層造形法とは、例えば、複数の層を重ねて造形物50を造形する方法である。造形物50とは、例えば、立体的な三次元構造物のことである。また、本例において、造形装置10は、ヘッド部12、造形台14、走査駆動部16、及び制御部20を備える。
【0029】
ヘッド部12は、造形物50の材料を吐出する部分である。また、本例において、造形物50の形成に用いる造形の材料としては、インクを用いる。この場合、インクとは、例えば、インクジェットヘッドから吐出する液体のことである。インクジェットヘッドとは、例えば、インクジェット方式でインクの液滴を吐出する吐出ヘッドのことである。
【0030】
また、より具体的に、ヘッド部12は、造形物50の材料として、複数のインクジェットヘッドから、所定の条件に応じて硬化するインクを吐出する。そして、着弾後のインクを硬化させることにより、造形物50を構成する各層を重ねて形成する。また、本例では、インクとして、紫外線の照射に応じて液体状態から硬化する紫外線硬化型インク(UVインク)を用いる。この場合、紫外線硬化型インクは、紫外線の照射に応じて硬化する材料の一例である。また、紫外線の照射に応じて硬化する材料とは、例えば、紫外線の照射に応じて硬化する成分である硬化成分を含む材料のことである。
【0031】
また、ヘッド部12は、造形物50の材料に加え、サポート層52の材料を更に吐出する。また、これにより、造形装置10は、造形物50の周囲に、必要に応じて、サポート層52を形成する。サポート層52とは、例えば、造形中の造形物50の外周を囲むことで造形物50を支持する積層構造物のことである。サポート層52は、造形物50の造形時において、必要に応じて形成され、造形の完了後に除去される。また、ヘッド部12のより具体的な構成については、後に詳しく説明をする。
【0032】
造形台14は、造形中の造形物50を支持する台状部材であり、ヘッド部12におけるインクジェットヘッドと対向する位置に配設され、造形中の造形物50を上面に載置する。また、本例において、造形台14は、少なくとも上面が積層方向(図中のZ方向)へ移動可能な構成を有しており、走査駆動部16に駆動されることにより、造形物50の造形の進行に合わせて、少なくとも上面を移動させる。この場合、積層方向とは、例えば、積層造形法において造形の材料が積層される方向のことである。また、より具体的に、本例において、積層方向は、主走査方向(図中のY方向)及び副走査方向(図中のX方向)と直交する方向である。
【0033】
走査駆動部16は、造形中の造形物50に対して相対的に移動する走査動作をヘッド部12に行わせる駆動部である。この場合、造形中の造形物50に対して相対的に移動するとは、例えば、造形台14に対して相対的に移動することである。また、本例において、走査駆動部16は、主走査動作(Y走査)、副走査動作(X走査)、及び積層方向走査(Z走査)をヘッド部12に行わせる。
【0034】
ここで、ヘッド部12に主走査動作を行わせるとは、例えば、ヘッド部12が有するインクジェットヘッドに主走査動作を行わせることである。また、主走査動作とは、例えば、主走査方向へ移動しつつインクを吐出する動作のことである。本例において、走査駆動部16は、主走査方向における造形台14の位置を固定して、ヘッド部12の側を移動させることにより、ヘッド部12に主走査動作を行わせる。造形装置10の構成の変形例においては、例えば、主走査方向におけるヘッド部12の位置を固定して、例えば造形台14を移動させることにより、造形物50の側を移動させてもよい。
【0035】
また、以下において詳しく説明をするように、本例において、ヘッド部12は、紫外線光源を更に有する。そして、主走査動作時において、走査駆動部16は、ヘッド部12における紫外線光源の駆動を更に行う。より具体的に、走査駆動部16は、例えば、主走査動作時に紫外線光源を点灯させることにより、造形物50の被造形面に着弾したインクを硬化させる。造形物50の被造形面とは、例えば、ヘッド部12により次のインクの層が形成される面のことである。
【0036】
また、ヘッド部12に副走査動作を行わせるとは、例えば、ヘッド部12が有するインクジェットヘッドに副走査動作を行わせることである。副走査動作とは、例えば、主走査方向と直交する副走査方向へ造形台14に対して相対的に移動する動作のことである。また、より具体的に、副走査動作は、例えば、予め設定された送り量だけ副走査方向へ造形台14に対して相対的に移動する動作である。
【0037】
また、本例において、走査駆動部16は、主走査動作の合間に、ヘッド部12に副走査動作を行わせる。この場合、走査駆動部16は、例えば、副走査方向におけるヘッド部12の位置を固定して、造形台14を移動させることにより、ヘッド部12に副走査動作を行わせる。また、走査駆動部16は、副走査方向における造形台14の位置を固定して、ヘッド部12を移動させることにより、ヘッド部12に副走査動作を行わせてもよい。また、走査駆動部16は、造形しようとする造形物50の大きさに応じて、必要な場合にのみヘッド部12に副走査動作を行わせる。そのため、例えばサイズの小さな造形物50を造形する場合等には、副走査動作を行わずに造形物50を造形してもよい。
【0038】
また、ヘッド部12に積層方向走査を行わせるとは、例えば、ヘッド部12が有するインクジェットヘッドに積層方向走査を行わせることである。また、積層方向走査とは、例えば、積層方向へヘッド部12又は造形台14の少なくとも一方を移動させることで造形物50に対して相対的に積層方向へヘッド部12を移動させる動作のことである。この場合、積層方向へヘッド部12を移動させるとは、例えば、ヘッド部12における少なくともインクジェットヘッドを積層方向へ移動させることである。また、積層方向へ造形台14を移動させるとは、例えば、造形台14における少なくとも上面の位置を移動させることである。
【0039】
また、走査駆動部16は、造形の動作の進行に合わせてヘッド部12に積層方向走査を行わせることにより、積層方向において、造形中の造形物50に対するインクジェットヘッドの相対位置を調整する。また、より具体的に、本例において、走査駆動部16は、積層方向におけるヘッド部12の位置を固定して、造形台14を移動させる。走査駆動部16は、積層方向における造形台14の位置を固定して、ヘッド部12を移動させてもよい。
【0040】
制御部20は、例えば造形装置10のCPUであり、造形装置10の各部を制御することにより、造形物50の造形の動作を制御する。より具体的に、制御部20は、例えば造形すべき造形物50の形状情報や、カラー画像情報等に基づき、造形装置10の各部を制御する。本例によれば、例えば、着色された造形物50を適切に造形できる。
【0041】
続いて、ヘッド部12のより具体的な構成について、説明をする。図1(b)は、造形装置10のおけるヘッド部12の構成の一例を示す。本例において、ヘッド部12は、複数のインクジェットヘッドを有する。それぞれのインクジェットヘッドは、造形台14と対向する面に、所定のノズル列方向へ複数のノズルが並ぶノズル列を有する。また、造形装置10は、ヘッド部12における複数のノズル列から材料を吐出することにより、造形物50を造形する。
【0042】
また、より具体的に、本例において、ノズル列方向は、副走査方向と平行な方向である。また、ヘッド部12は、複数のインクジェットヘッド、複数の紫外線光源104、及び平坦化ローラ106を有する。また、複数のインクジェットヘッドとして、図1(b)に示すように、インクジェットヘッド102s、インクジェットヘッド102w、インクジェットヘッド102y、インクジェットヘッド102m、インクジェットヘッド102c、インクジェットヘッド102k、インクジェットヘッド102tm、及びインクジェットヘッド102tcを有する。これらの複数のインクジェットヘッドは、例えば、副走査方向における位置を揃えて、主走査方向へ並べて配設される。
【0043】
インクジェットヘッド102sは、サポート層52の材料を吐出するインクジェットヘッドである。本例において、サポート層52の材料としては、造形物50の材料よりも紫外線による硬化度が弱い紫外線硬化型インクを用いる。これにより、インクジェットヘッド102sは、サポート層52の材料となる紫外線硬化型インクを、ノズル列における各ノズルから吐出する。サポート層52の材料としては、例えば、サポート層用の公知の材料を好適に用いることができる。
【0044】
インクジェットヘッド102wは、白色(W色)のインクを吐出するインクジェットヘッドであり、白色のインクを、ノズル列における各ノズルから吐出する。また、本例において、インクジェットヘッド102wは、造形物50の内部を形成するための内部造形用ヘッドの一例であり、造形物50の内部を構成する内部領域を、白色のインクで形成する。
【0045】
また、白色のインクは、光反射性のインクの一例でもあり、例えば造形物50において光を反射する性質の領域(光反射領域)を形成する場合に用いられる。この光反射領域は、例えば、造形物50表面に対して減法混色によるフルカラー表現での着色を行う場合に、造形物50の外部から入射する光を反射する。フルカラー表現とは、例えば、プロセスカラーのインクによる減法混色の可能な組み合わせで行う色の表現のことである。また、本例においては、内部領域を白色のインクで形成することにより、内部領域が光反射領域としても機能する。
【0046】
尚、造形装置10の動作の変形例においては、内部領域と光反射領域とを分けて形成してもよい。この場合、内部領域について、白色のインク以外のインクを用いて形成してもよい。また、ヘッド部12は、内部領域を形成するためのインクジェットヘッドとして、造形材インク(Moインク)を吐出するインクジェットヘッド等を更に有してもよい。この場合、造形材インクとは、例えば、造形物50の内部領域の造形に用いる造形専用のインクである。また、この場合、造形材インク用のインクジェットヘッドについて、内部造形用ヘッドと考えることができる。
【0047】
インクジェットヘッド102y、インクジェットヘッド102m、インクジェットヘッド102c、インクジェットヘッド102k(以下、インクジェットヘッド102y~kという)は、互いに異なる色の基本色に着色された材料をそれぞれ吐出する複数の基本色用ヘッドの一例であり、着色に用いる複数色のインク(着色用のインク)のそれぞれのインクを、ノズル列における各ノズルからそれぞれ吐出する。この場合、着色用ヘッドとは、例えば、混色によりカラー表現を行う場合に混色させる色である基本色に着色された材料を吐出する吐出ヘッドのことである。また、基本色とは、例えば、フルカラー表現に用いるプロセスカラーの各色のことである。
【0048】
また、より具体的に、本例において、インクジェットヘッド102yは、イエロー色(Y色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド102mは、マゼンタ色(M色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド102cは、シアン色(C色)のインクを吐出する。また、インクジェットヘッド102kは、ブラック色(K色)のインクを吐出する。
【0049】
この場合、YMCKの各色は、プロセスカラーの一例である。また、YMCKの各色のインクは、着色用の材料の一例でもある。更に、YMCKのうちのYMCの各色のインクは、有彩色のインクの一例でもある。また、これらの各色のインクを吐出するインクジェットヘッド102y~kは、着色された造形物50の造形時に用いる着色用のインクジェットヘッド(着色用ヘッド)の一例である。
【0050】
インクジェットヘッド102tm及びインクジェットヘッド102tcは、淡色用ヘッドの一例である。この場合、淡色用ヘッドとは、基本色用ヘッドが吐出する材料よりも淡い色に着色された材料を吐出する吐出ヘッドのことである。また、淡い色とは、例えば、明るい色(ライト色)のことである。また、明るい色とは、例えば、所定の厚さの層を形成した場合に光の透過率が高くなる色のことである。
【0051】
また、より具体的に、本例において、インクジェットヘッド102tmは、マゼンタ色用の淡色用ヘッドの一例であり、インクジェットヘッド102mが吐出するインクよりも淡い色(より明るい色)のマゼンタ色に着色されたインクを吐出する。また、インクジェットヘッド102tcは、シアン色用の淡色用ヘッドの一例であり、インクジェットヘッド102cが吐出するインクよりも淡い色(より明るい色)のシアン色に着色されたインクを吐出する。また、これにより、インクジェットヘッド102tm及びインクジェットヘッド102tcは、インクジェットヘッド102m及びインクジェットヘッド102cが吐出するインクと同じ色で、かつ、色の濃度が薄いインクを吐出する。
【0052】
インクジェットヘッド102tm及びインクジェットヘッド102tcのそれぞれから吐出するインクとしては、例えば、インクジェットヘッド102m及びインクジェットヘッド102cのそれぞれから吐出するインクと同じ着色材を含み、かつ、着色材の含有濃度がインクジェットヘッド102m及びインクジェットヘッド102cのそれぞれから吐出するインクよりも少ないインクを好適に用いることができる。この場合、着色材とは、例えば、インクの着色に用いる顔料や染料等のことである。また、インクジェットヘッド102tm及びインクジェットヘッド102tcのそれぞれから吐出するインクについては、例えば、薄い着色がされた透明性のインクと考えることもできる。
【0053】
ここで、本例において、各色用のインクとして用いる紫外線硬化型インクは、紫外線に応じて硬化する硬化成分と、色の成分である着色材とを含む。そして、この場合、硬化成分について、通常、完全に無色透明にはならず、ある程度の薄い色がついた状態になる。より具体的に、本例のように紫外線硬化型インクを用いる場合、紫外線硬化樹脂や重合の開始剤等の影響により、硬化成分の地の色がわずかに黄色味を帯びることが考えられる。そして、この場合、インクの地の色についても、黄色味を帯びた状態になる。インクの地の色とは、例えば、着色材を添加しない状態でのインクの色のことである。
【0054】
これに対し、本例においては、淡色用ヘッドであるインクジェットヘッド102tm及びインクジェットヘッド102tcから吐出するインクとして、インク中の硬化成分の地の色の影響を低減する淡い色に着色されているインクを用いている。この場合、硬化成分の地の色の影響を低減する淡い色とは、例えば、その淡い色と硬化成分の地の色とを合わせることにより、硬化成分の地の色の影響が見えにくくなる色のことである。また、本例のように、複数色の淡い色のインクを用いる場合、硬化成分の地の色の影響を低減する淡い色とは、例えば、その複数色の淡い色と硬化成分の地の色とを合わせることにより、硬化成分の地の色の影響が見えにくくなる色のことである。
【0055】
また、より具体的に、例えば、上記のように、地の色が黄色味を帯びた紫外線硬化型インクを用いて造形物50の造形及び着色を行う場合、黄色の補色である青色又は青色に近い色を淡い色のインクによって更に加えることで、地の色の影響を抑えることができる。例えば、本例の場合、インクジェットヘッド102tmから吐出する淡いマゼンタ色のインクと、インクジェットヘッド102tcから吐出する淡いシアン色のインクとを用いることにより、マゼンタ色とシアン色との混色により得られる青色の成分を付加することができる。また、これにより、地の色である黄色味の影響を適切に抑えることができる。
【0056】
また、この場合、淡いマゼンタ色や淡いシアン色の色の濃さについては、インクの地の色における黄色の濃さに合わせて、適宜設定することが好ましい。このように構成すれば、例えば、インクの地の色の影響を適切に抑えることができる。また、インクジェットヘッド102tm及びインクジェットヘッド102tcのそれぞれから吐出するインクの使い方等については、後に更に詳しく説明をする。
【0057】
複数の紫外線光源104は、インクを硬化させるための光源(UV光源)であり、紫外線硬化型インクを硬化させる紫外線を発生する。また、本例において、複数の紫外線光源104のそれぞれは、間にインクジェットヘッドの並びを挟むように、ヘッド部12における主走査方向の一端側及び他端側のそれぞれに配設される。紫外線光源104としては、例えば、UVLED(紫外LED)等を好適に用いることができる。また、紫外線光源104として、メタルハライドランプや水銀ランプ等を用いることも考えられる。
【0058】
平坦化ローラ106は、造形物50の造形中に形成されるインクの層を平坦化するための平坦化手段である。平坦化ローラ106は、例えば主走査動作時において、インクの層の表面と接触して、硬化前のインクの一部を除去することにより、インクの層を平坦化する。
【0059】
以上のような構成のヘッド部12を用いることにより、造形物50を構成するインクの層を適切に形成できる。また、複数のインクの層を重ねて形成することにより、造形物50を適切に造形できる。
【0060】
尚、ヘッド部12の具体的な構成については、上記において説明をした構成に限らず、様々に変形することもできる。例えば、ヘッド部12は、着色用のインクジェットヘッドとして、YMCK以外の色用のインクジェットヘッドを更に有してもよい。また、ヘッド部12における複数のインクジェットヘッドの並べ方についても、様々に変形可能である。例えば、一部のインクジェットヘッドについて、他のインクジェットヘッドと副走査方向における位置をずらしてもよい。
【0061】
また、淡色用ヘッドとして、インクジェットヘッド102tm及びインクジェットヘッド102tcとは異なる淡い色のインクを吐出するインクジェットヘッドを用いること等も考えられる。この場合、例えば、YMCKのいずれの色とも異なる色に着色されたインクを吐出するインクジェットヘッドを用いてもよい。また、透明性のインクを吐出するインクジェットヘッドとして、インクジェットヘッド102tm及びインクジェットヘッド102tcに加え、無色透明なインクであるクリアインクを吐出するインクジェットヘッド(透明材料用ヘッド)を更に用いること等も考えられる。この場合、無色透明なインクとは、例えば、実質的に着色がされていないインクのことである。また、実質的に着色がされていないとは、例えば、着色材を意図的に添加していないインクのことである。ヘッド部12の構成の変形例については、後に更に詳しく説明をする。
【0062】
続いて、造形装置10により造形する造形物50の構成の例について、説明をする。図1(c)は、造形装置10により造形する造形物50の構成の例を示す図であり、楕円体状の造形物50を造形する場合について、造形物50の断面の構成の一例をサポート層52と共に示す。また、図中に示すように、図示した断面は、Z方向と垂直なX-Y断面である。また、この場合、Y方向やZ方向と垂直な造形物50のZ-X断面やZ-Y断面の構成も、同様の構成になる。
【0063】
上記においても説明をしたように、本例の造形装置10におけるヘッド部12は、着色用のインクを吐出するインクジェットヘッド102y~k等を用いることにより、表面が着色された造形物50を造形する。この場合、造形物50の表面が着色されるとは、例えば、造形物50において外部から色彩を視認できる領域の少なくとも一部が着色されることである。また、図中に示すように、本例において、表面が着色された造形物50を造形する場合、造形装置10は、内部領域202、着色領域204、及び保護領域206を有する造形物50を造形する。また、必要に応じて、造形物50の周囲にサポート層52を形成する。
【0064】
内部領域202は、造形物50の形状を構成する造形物50の内部の領域(コア部分)である。本例において、ヘッド部12は、インクジェットヘッド102wから吐出する白色のインクを用いて内部領域202を形成する。また、これにより、上記においても説明をしたように、内部領域202について、光反射領域としても機能させる。
【0065】
着色領域204は、インクジェットヘッド102y~kから吐出する着色用のインクにより着色がされる領域(カラー層部分)である。また、図中に示すように、着色領域204は、例えば、造形物50の表面形状に沿った層状の領域である。また、本例において、ヘッド部12は、インクジェットヘッド102y~kから吐出する各色の着色用のインクに加え、インクジェットヘッド102tm及びインクジェットヘッド102tcから吐出する淡い色のインクを更に用いて、内部領域202の周囲に着色領域204を形成する。この場合、各位置への各色の着色用のインクの吐出量を調整することにより、様々な色を表現する。また、色の違いによって生じる着色用のインクの量(単位体積あたりの吐出量)の変化を補填するために、インクジェットヘッド102tm及びインクジェットヘッド102tcから吐出する淡い色のインクを用いる。このように構成すれば、例えば、着色領域204の各位置を所望の色で適切に着色できる。また、これにより、例えば、着色用のインクにより着色された着色領域204を適切に形成できる。尚、色の違いによって生じる着色用のインクの量の変化に対する補填の仕方については、後に更に詳しく説明をする。
【0066】
保護領域206は、造形物50の外面を保護するための透明な領域である。本例において、ヘッド部12は、インクジェットヘッド102tm及びインクジェットヘッド102tcから吐出する淡い色のインクを用いて、着色領域204の周囲に保護領域206を形成する。造形物50の外周面に保護領域206を形成することにより、着色領域204等をより適切に保護することができる。
【0067】
ここで、保護領域206については、着色領域204に着色されている色に影響がないように、実質的に無色透明に形成することが好ましい。この場合、実質的に無色透明であるとは、造形物50の造形に求められる着色の精度において無色透明と見なせることである。これに対し、本例においては、インクジェットヘッド102tm及びインクジェットヘッド102tcから吐出する淡いマゼンタ色及び淡いシアン色のインクを用いることで、インクの地の色の影響を適切に抑えることができる。また、これにより、保護領域206として、実質的に無色透明な領域を適切に形成できる。
【0068】
以上のように各領域を形成することにより、表面が着色された造形物50を適切に形成できる。また、造形物50の構成の変形例においては、造形物50の具体的な構成について、上記と異ならせることも考えられる。より具体的には、例えば、内部領域202と区別して、内部領域202と着色領域204との間に、光反射領域を形成すること等が考えられる。この場合、内部領域202について、白色のインク以外のインクを用いて形成してもよい。例えば、内部領域202について、サポート層52の材料以外の任意のインクを用いて形成することが考えられる。また、例えば、光反射領域と着色領域204との間に、分離領域を形成すること等も考えられる。この場合、分離領域とは、光反射領域を構成する白色のインクと着色領域204における着色用のインクとが混ざることを防ぐための領域であり、例えばインクジェットヘッド102tm及びインクジェットヘッド102tcから吐出する淡い色のインクで形成される。
【0069】
続いて、インクジェットヘッド102tm及びインクジェットヘッド102tcのそれぞれから吐出する淡い色のインクの使い方に関し、着色領域204の形成時に行うインクの量の補填の仕方について説明をする。この補填は、上記においても説明をしたような、色の違いによって生じる着色用のインクの量の変化に対する補填である。また、以下においては、説明の便宜上、先ず、淡い色のインクではなく、無色透明なクリアインクを用いて補填を行う場合の動作について、説明をする。
【0070】
図2は、インクの量の補填の仕方について説明をする図である。図2(a)は、着色用のインクの量の変化に対してクリアインクを用いて補填を行う動作の一例を示す。
【0071】
YMCKの各色のインクのように、複数色の着色用のインクを混色させてカラー表現を行う場合、造形の解像度に応じて設定される各位置に対して一又は複数色のインクを吐出することにより、様々な色を表現する。この場合、各位置に複数色のインクを吐出するとは、例えば、一つのインクの層を形成する動作において、設計上の同じ位置に対して、複数色のインクを吐出することである。そして、この場合、各位置に着弾するインクの液滴数は、一定にならず、各位置に着色される色に応じて変化する。
【0072】
より具体的に、YMCKの各色のインクを用いて色表現を行う構成において、例えば青色(B色)の着色をする場合、マゼンタ色とシアン色とを混色させることでB色を表現する。そして、この場合、例えば図2(a)の上側左部分に示すように、一つの位置に対し、M色のインクと、C色のインクとを吐出することになる。そのため、この場合、この位置に対しては、YMCKの各色のインクの液滴(インク滴)が2滴着弾することになる。
【0073】
また、例えばマゼンタ色(M色)の着色をする場合、複数の色を混色させることなく、色の表現が可能である。そのため、この場合、例えば図2(a)の上側中央部分に示すように、一つの位置に対し、M色のインクのみを吐出すればよい。また、その結果、この位置に対しては、YMCKの各色のインク滴が1滴だけ着弾することになる。
【0074】
また、造形物50における着色領域204(図1参照)の一部については、YMCKの各色のインクを吐出しないことで、着色しない状態(無色)にする場合もある。そして、この場合、例えば図2(a)の上側右部分に示すように、この位置に対しては、YMCKの各色のインク滴が着弾しないことになる。
【0075】
このように、複数色の着色用のインクを混色させてカラー表現を行う場合、各位置に対して着色する色によって、各位置に着弾する着色用のインクの液滴数が変化する。しかし、積層造形法で造形を行う場合、複数のインクの層を重ねて形成する構成上、各位置に着弾するインク滴の着弾数に差が生じると、造形の動作を高い精度で行うことが困難になる。より具体的には、例えば、この場合、形成されるインクの層の厚さが位置によってばらつき、平坦化ローラ106(図1参照)による平坦化の動作を適切に行えなくなるおそれがある。
【0076】
そのため、積層造形法で造形物を造形する場合には、着色される色に影響を与えないインクを用いて、例えば図2(a)の下側に示すようにして、インクの量の補填を行うことが考えられる。また、着色される色に影響を与えないインクとして、最も単純に考えた場合には、着色材を添加しないことで原理上は無色透明な色(T色)になっているクリアインクを用いることが考えられる。
【0077】
この場合、図中に示すように、各位置について、YMCKの各色のインクのインク滴の着弾数に応じてクリアインクのインク滴の着弾数を変化させて、両方を合わせた合計の着弾数が一定になるように調整する。このように構成すれば、例えば、着色用のインクとして用いるYMCKの各色のインクの量の変化に対する補填を適切に行うことができる。また、これにより、例えば、造形の動作時において、形成中の着色領域204について、平坦化ローラ106で平坦化を行う前の高さをより均一にできる。そのため、このように構成すれば、例えば、平坦化ローラ106による平坦化をより適切に行うことができる。また、これにより、例えば、造形物50をより高い精度で造形できる。
【0078】
しかし、上記においても説明をしたように、実際のインクにおいては、インクの地の色の影響が生じることになる。そのため、上記のようにクリアインクを用いて補填を行う場合、インクの地の色の影響で、所望の色を適切に表現できなくなる場合がある。また、例えば、薄い色での着色を行う場合、インクの地の色の影響が特に大きくなることが考えられる。より具体的には、例えば、インクの地の色が黄色味を帯びている場合等において、薄い青色の色相表現が十分にできなくなること等が考えられる。
【0079】
これに対し、本例においては、インクジェットヘッド102tm及びインクジェットヘッド102tc(図1参照)から吐出する淡い色のインクを用いることで、インクの地の色の影響を抑えつつ、着色用のインクの量の変化に対する補填を行う。図2(b)は、本例において行う補填の動作の一例を示す。
【0080】
図中に示すように、本例においては、図2(a)に示した場合における無色透明のクリアインクの代わりに、淡いマゼンタ色のインク(TM)と、淡いシアン色のインク(TC)とを用いる。この場合、図2(a)に示した場合の一滴のクリアインクの代わりに、淡いマゼンタ色又は淡いシアン色のいずれかのインクのインク滴を吐出する。すなわち、本例においては、造形物50における着色領域204について、インクジェットヘッド102y~k(図1参照)を用いて着色し、かつ、着色領域204の各位置に対してインクジェットヘッド102y~kにより吐出するインクの合計量の差について、インクジェットヘッド102tm及びインクジェットヘッド102tcから淡い色に着色されたインクを吐出することで補填する。
【0081】
また、この場合、補填を行う位置のうち、一部の位置に対して淡いマゼンタ色のインク滴を吐出し、他の一部の位置に対してシアン色のインク滴を吐出することにより、淡いマゼンタ色と淡いシアン色とを組み合わせて、インクの地の色の影響を低減させる。このように構成すれば、例えば、インクの地の色の影響を適切に抑えることができる。また、これにより、例えば薄い青色等についても、適切かつ十分な色相表現が可能になる。そのため、本例によれば、例えば、着色された造形物50をより適切に造形できる。
【0082】
また、上記においては、主に、無色透明のクリアインクを用いず、淡い色のマゼンタ色や淡い色のシアン色等を用いて造形を行う場合について、説明をした。しかし、造形装置10の構成の変形例においては、クリアインク用のインクジェットヘッド(透明材料用ヘッド)を更に用いて造形を行うこと等も考えられる。この場合、インクジェットヘッド102y~kにより各位置に対して吐出するインクの合計量の差に対する補填の動作において、インクジェットヘッド102tm及びインクジェットヘッド102tcに加えて、クリアインク用のインクジェットヘッドを用いてもよい。
【0083】
また、上記においては、淡いマゼンタ色のインクや、淡いシアン色のインクについて、主に、インクの地の色の影響を抑える目的で使用する点について、説明をした。しかし、これらのインクについては、例えば、YMCKの各色のインクと共に用いることで、意図的に色を表現する目的で使用すること等も考えられる。この場合、淡いマゼンタ色や淡いシアン色のインクを用いることにより、より多彩な色表現を行うことが可能になる。また、この場合、例えば薄い青色等について、淡いマゼンタ色のインクと淡いシアン色のインクとを用いて表現すること等も考えられる。
【0084】
また、クリアインク用のインクジェットヘッドを更に用いる場合において、クリアインクについては、地の色である黄色味を考慮して、淡い黄色のインクに相当するインクと考えることもできる。この場合、クリアインクを更に用いて色表現を行うことにより、YMCの各色について、通常の濃度の色のインクと淡い色のインクとが使用可能になるといえる。そのため、このように構成すれば、例えば、多彩な色表現をより適切に行うことができる。また、より具体的に、この場合、表現しようとする色の色彩のうちの80%程度を基本色のインク(インクジェットヘッド102y~kから吐出するYMCKの各色)で表現して、残りの20%程度を淡い色のインクで表現すること等が考えられる。
【0085】
尚、淡い色のインクを用いて多彩な色の表現をしようとする場合、単純に考えると、例えば、通常の基本色インクは用いずに、淡い色のインクのみを用いてもよいように思われる。しかし、淡い色のインクのみで着色を行う場合、濃い色を表現するためには、着色領域204として厚いインクの層を形成することが必要になる。そして、この場合、減法混色法において光反射領域として機能する内部領域202(図1参照)までの距離が長くなり、着色領域204での光の吸収量が増大することになる。また、その結果、濃い色になったとしても、暗い色になってしまう。そのため、淡い色のインクのみを用いる場合、多彩な色を適切に表現することは難しくなると考えられる。
【0086】
これに対し、基本色インクに加えて淡い色のインクを用いる場合、着色領域204の厚さを過度に厚くすることなく、色の濃度が濃い部分についても、適切かつ十分に色表現をできる。また、この場合、ある程度の色がついた淡い色のインクを更に用いて上記のような補填を行うことで、より濃い色の表現を行うこと等も可能になる。また、淡い色のインクを用いることにより、例えば、薄い色を着色する場合等に、粒状感を抑えること等も可能になる。すなわち、この場合、少なくとも一部の色について2種類以上の濃度のインクを用いることにより、より多彩な色相表現を行うことや、粒状感を低減すること等が可能になる。また、より幅広い濃度表現を行うこと等も可能になる。
【0087】
また、着色領域204について、より高い品質での着色を行うためには、着色領域204の全体を均一に着色するのではなく、例えば、造形物50の表面と直交する方向である法線方向における位置によって色の濃さを異ならせること等も考えられる。図3は、法線方向における位置によって色の濃さを異ならせる場合の着色領域204の構成について説明をする図である。図3(a)は、着色領域204の構成の一例を模式的に示す図であり、積層方向と直交する面による着色領域204の断面の構成の一例を内部領域202及び保護領域206と共に示す。
【0088】
上記においても説明をしたように、造形物50において、着色領域204として厚いインクの層を形成すると、表現される色が暗くなり、多彩な色を適切に表現することが難しくなる。そのため、着色用のインクとしては、着色領域204の厚さが過剰にならない範囲で十分な濃さの色を表現できるように、ある程度以上の濃い色のインクを用いる必要がある。しかし、この場合、濃い色のインクを用いることにより、着色後の状態において、粒状感が目立ちやすくなる場合がある。
【0089】
これに対し、図3(a)に示した構成の場合、着色領域204の全体を均一に着色するのではなく、法線方向における位置によって色の濃さを異ならせる。この場合、着色領域204において、造形物50の内側寄りの部分の色を濃くして、外側寄りの部分の色を薄くする。このように構成すれば、例えば、粒状感が目立ちやすい外側の部分の色を薄くすることで、粒状感をより適切に抑えることができる。この場合、粒状感について、実質的に問題がなくなるレベル(ほぼゼロ)にまで低減すること等も可能である。また、粒状感が目立ちにくい内側の部分の色を濃くすることで、着色領域204の厚さが過度に厚くなることを防ぎつつ、着色領域204の全体での色を適切かつ十分に濃くすることができる。
【0090】
また、より具体的に、この場合、着色領域204は、内側領域302と外側領域304とを有する。内側領域302は、着色領域204における内側寄りの領域である。また、外側領域304は、着色領域204における外側寄りの領域である。また、着色領域204において、外側領域304は、内側領域302よりも色の濃度が薄くなるように着色される。
【0091】
ここで、着色領域204について、造形物50の内側寄りの部分の色を濃くして、外側寄りの部分の色を薄くするとは、例えば、着色領域204の少なくとも一部について、このような色の濃さで着色することであってもよい。また、着色する色の濃さの調整は、例えば、インクジェットヘッド102y~k(図1参照)により吐出する着色用のインクと、インクジェットヘッド102tm及びインクジェットヘッド102tc(図1参照)により吐出する淡い色のインクとの割合を変化させることで行うことが考えられる。より具体的には、例えば、着色領域204の法線方向における各位置について、インクジェットヘッド102tm及びインクジェットヘッド102tcから吐出するインクの割合を淡色材料率と定義した場合、淡色材料率を変化させることにより、着色領域204に各位置へ着色する色の濃さを調整することができる。この場合、インクジェットヘッド102tm及びインクジェットヘッド102tcから吐出するインクの割合とは、例えば、着色領域204の各位置に対して吐出されるインクの量の合計に対する割合のことである。また、図3(a)に示した場合においては、例えば、着色領域204における外側領域304での淡色材料率について、内側領域302での淡色材料率よりも大きくすることが考えられる。このように構成すれば、例えば、内側領域302及び外側領域304のそれぞれにおける色の濃さを適切に調整できる。
【0092】
また、上記においても説明をしたように、着色領域204の形成時において、淡いマゼンタ色や淡いシアン色のインクについて、単に着色用のインクの量の補填を行うのみではなく、淡いマゼンタ色や淡いシアン色のインクを用いて意図的に色を表現すること等も考えられる。そのため、例えば色の濃さをより薄くする外側領域304については、例えば、主にインクジェットヘッド102tm及びインクジェットヘッド102tcから吐出するインクを用いて着色を行うこと等も考えられる。この場合、例えば、インクジェットヘッド102tm及びインクジェットヘッド102tcのそれぞれから吐出するインクの量を調整することにより、外側領域304の各位置の色を調整する。このように構成した場合、例えば、粒状感の目立ちやすい外側の領域を淡い色のインクで形成することで、粒状感をより適切に抑えることができる。また、この場合、少なくとも外側領域304の形成時において、淡い黄色のインクに相当するインクとしてクリアインクを更に用いることが好ましい。このように構成すれば、例えば、淡い色のインクのみを用いて、より多彩な色を適切に表現できる。
【0093】
図3(b)は、着色領域204のうち、図3(a)とは異なる部分の構成の一例を示す断面図であり、造形物50の法線方向と積層方向とが平行になる部分の構成の一例を示す。この部分は、例えば、積層方向における造形物50の最上部である。
【0094】
図示した部分の形成時において、造形装置10は、内部領域202の上に内側領域302と外側領域304とを重ねて形成することにより、着色領域204を形成する。また、この場合において、内側領域302及び外側領域304のそれぞれについて、一つ以上のインクの層を積層することで形成する。このように構成すれば、例えば、内側領域302及び外側領域304を有する着色領域204を適切に形成できる。
【0095】
また、着色領域204を構成する領域については、内側領域302及び外側領域304の二つの領域に限らず、更に多くの領域に分けてもよい。この場合、着色領域204の少なくとも一部について、造形物50の内側になる程色の濃度が濃くなるように形成することが好ましい。
【0096】
図3(c)は、着色領域204をより多くの領域に分ける場合の着色領域204の構成の一例を示す。この場合、着色領域204は、内側領域302及び外側領域304に加え、中間領域306を更に有する。中間領域306は、内側領域302と外側領域304との間に形成される領域である。また、この場合、中間領域306は、例えば、内側領域302よりも色の濃度が薄く、かつ、外側領域304よりも色の濃度が濃くなるように着色される。このように構成すれば、例えば、着色領域204について、最外層方向へ向けて徐々に色が薄くなるように着色できる。また、これにより、着色領域204について、より自然な印象で適切に着色することができる。
【0097】
続いて、造形装置10の構成の変形例や、造形装置10の特徴に関する補足説明等を行う。図4は、造形装置10の構成の変形例を示す図である。尚、以下に説明をする点を除き、図4において、図1~3と同じ符号を付した構成は、図1~3における構成と同一又は同様の特徴を有してよい。
【0098】
図4(a)は、造形装置10におけるヘッド部12の構成を図1(b)に示した構成と異ならせた場合の変形例について、ヘッド部12の構成の一例を示す。上記においても説明をしたように、造形に使用する透明性のインクとしては、淡い色の着色がされたインク以外に、無色透明のクリアインクを用いることも考えられる。そして、この場合、ヘッド部12は、図4(a)に示すように、クリアインク用のインクジェットヘッド102tを更に有する。このように構成すれば、例えば、多彩な色表現をより適切に行うことができる。
【0099】
また、上記においては、淡い色のインクについて、主に、淡いマゼンタ色のインクと、淡いシアン色のインクとを用いる場合について、説明をした。このように構成した場合、例えば、淡いマゼンタ色と淡いシアン色とを混色させて淡い青色を表現することにより、インクの地の色の影響を適切に抑えることができる。また、各位置に吐出するインクの量について、淡いマゼンタ色のインクの量と、淡いシアン色のインクの量とを調整することにより、より繊細に色の調整を行うことも可能になる。また、これにより、例えば、多彩な色表現をより高精度に行うこと等も可能になる。
【0100】
しかし、造形装置10の構成の更なる変形例においては、上記においても説明をしたように、淡い色のインクとして、淡いマゼンタ色や淡いシアン色以外のインクを用いることも考えられる。また、この場合、着色用の基本色であるYMCKのいずれとも異なる色について、淡い色のインクを用いてもよい。また、より具体的に、この場合、例えば、淡い青色のインク等を用いること等が考えられる。
【0101】
図4(b)は、ヘッド部12の構成の更なる変形例を示す図である。図示した構成において、ヘッド部12は、図1(b)に示した構成におけるインクジェットヘッド102tm及びインクジェットヘッド102tmに代えて、淡い青色のインクを吐出するインクジェットヘッド102tbを有する。
【0102】
この場合、青色は、黄色の補色である。そのため、例えばインクの地の色が黄色味を帯びている場合等、淡い青色のインクを用いることで、地の色の影響を適切に抑えることができる。従って、このように構成した場合も、インクの地の色の影響を抑えて、着色された造形物50をより適切に造形できる。また、この場合、例えば淡いマゼンタ色及び淡いシアン色のインクを用いる場合よりも必要なインクジェットヘッドの数が少なくなるため、造形装置10のコストを低減することもできる。また、ヘッド部12の構成の更なる変形例において、ヘッド部12は、透明性のインク用のインクジェットヘッドとして、インクジェットヘッド102tbに加え、クリアインク用のインクジェットヘッド102t等を更に有してもよい。
【0103】
尚、淡い青色のインクとは、例えば、淡い青色を示す着色材を含むインクのことである。この場合、このインクの色についても、通常、着色材の色を反映した淡い青色になることが考えられる。また、インクの地の色の影響を低減することを考えた場合、淡い青色のインクの色について、例えば、インクの地の色と着色材の淡い青色とが合わさり、両者が打ち消し合った状態の色にすることも考えられる。より具体的に、この場合、インクの色は、薄い黄色と薄い青色とが合わさることで生じるごく薄い黒色やそれに近い色になっていてもよい。このような場合も、このインクについて、淡い青色を示す着色材を含むことで、淡い青色のインクと考えてもよい。
【0104】
続いて、造形装置10の構成に関する補足説明等を行う。上記において説明をした各構成において、透明性のインク用のインクジェットヘッド(インクジェットヘッド102tm、インクジェットヘッド102tb、インクジェットヘッド102t、及びインクジェットヘッド102tb等)については、インクジェットヘッド102y~kと平坦化ローラ106との間に配設している。このように構成した場合、例えば、平坦化を行う主走査動作時において、着色用のインク(YMCKの各色のインク)の上に透明性のインクが重なることになる。そのため、このように構成すれば、例えば、平坦化ローラ106での平坦化時において、平坦化ローラ106を主に透明性のインクと接触させることができる。また、これにより、例えば、着色用のインクが平坦化ローラ106に引きずられること等を適切に防ぐことができる。また、ヘッド部12の構成の更なる変形例においては、例えば求められる造形の精度等に応じて、透明性のインク用のインクジェットヘッドの一部又は全てについて、インクジェットヘッド102y~kと平坦化ローラ106との間以外の位置に配設すること等も考えられる。
【0105】
また、上記においても説明をしたように、図1~3等を用いた構成の造形装置10においては、着色用の基本色であるYMCKのインクに加え、淡いマゼンタ色や淡いシアン色のインク等を用いて、造形の動作を行う。そして、この特徴について、一見すると、例えば2次元の画像を印刷するインクジェットプリンタにおいてライトマゼンタ色やライトシアン色を用いて印刷を行う構成と似ているようにも見える。
【0106】
しかし、上記の説明からも明らかなように、図1~3等に示した造形装置10においては、造形時の特有の課題を解決するために、淡いマゼンタ色や淡いシアン色のインク等を使用している。より具体的に、例えば、2次元の画像を印刷するインクジェットプリンタの場合、インクの層を1層形成するのみで、画像の描画を行う。そして、この場合、多数のインクの層を重ねる構成ではないため、色の違いによって生じる着色用のインクの量に差が生じたとしても、補填等を行う必要はない。また、インクの層が1層のみである場合、ある程度インクの地の色がついていたとしても、地の色の影響は生じにくい。
【0107】
これに対し、積層造形法で造形物50を造形する場合、通常、上記においても説明をしたように、色の違いによって生じる着色用のインクの量に差に対して、適切に補填を行うことが必要になる。そして、この場合、補填に用いるインクの地の色が問題になりやすくなる。
【0108】
また、立体的の造形物50の場合、2次元の画像と比べ、より様々な角度から観察されることを考慮する必要がある。また、表面に小さな割れや欠け等が生じた場合にも着色領域204(図1参照)の内側にある内部領域202(図1参照)等の色が吐出しないことが望まれる。そのため、造形物50の造形時に形成する着色領域204の厚さは、通常、2次元の画像の印刷時に形成するインクの層よりも厚くなる。また、これに伴い、造形装置10において使用する着色用のインクの色の濃さは、通常、インクジェットプリンタのインクの色の濃さと比べて薄くなる。より具体的に、例えば、造形装置10における着色用のインクの色の濃さは、インクジェットプリンタにおける通常のインク(濃インク)よりも、むしろ、ライトマゼンタ色やライトシアン色等のライト色のインク(ライトインク)に近いともいえる。そして、インクの色の濃さが薄い場合、インクの地の色の影響が特に生じやすくなる。
【0109】
このように、造形物50においてインクの地の色の影響が問題になることは、2次元の画像の印刷時とは異なる造形装置10に特有の特徴と関連している。そのため、上記において説明をした造形装置10の特徴については、従来のインクジェットプリンタの特徴とは大きく異なるものである。
【0110】
上記のように、造形装置10において用いる着色用のインクの色の濃さは、例えば。インクジェットプリンタ用のライトインクに近いものである。そのため、着色用のインクよりも淡い色のインクについては、インクジェットプリンタ用のインクとの比較で考えた場合、例えば、超ライト色のインクと考えることもできる。
【0111】
また、上記においても説明をしたように、造形物50において、着色領域204の外側には、例えば、保護領域206が更に形成される。そして、この場合、着色領域204内で生じるインクの地の色の影響に加え、保護領域206を構成するインクにおける地の色の影響も生じることになる。そして、この場合、例えば、地の色が黄色味を帯びたクリアインクのみを用いて保護領域206を形成すると、地の色の影響が特に大きくなると考えられる。これに対し、淡いマゼンタ色及び淡いシアン色等の淡い色のインクを用いる場合、保護領域206についても、地の色の影響を抑えて適切に形成できる。また、これにより、着色された造形物50をより適切に造形できる。
【0112】
また、上記においても説明をしたように、インクの地の色の影響を低減するためには、例えば、インク中の硬化成分の地の色の影響を低減する淡い色に着色されているインクを用いることが考えられる。この場合、地の色の影響を低減するとは、例えば、硬化成分の地の色との混色後の色をほぼ無彩色にすることである。より具体的に、例えば、硬化成分の地の色である黄色と、淡い色のインクの色であるマゼンタ色とシアン色をと減法混色法で混色させた場合、混色後の色は黒色になる。そして、この場合、一見すると、インクの地の色について、黄色から黒色に変化したのみのようにも思われる。しかし、黄色等の特定の有彩色の地の色がついている場合と比べ、黒色等の無彩色の色がわずかについている状態は、表現される色への影響が小さくなると考えられる。そのため、上記のように構成すれば、例えば、インクの地の色の影響を適切に低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、例えば造形装置に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0114】
10・・・造形装置、12・・・ヘッド部、14・・・造形台、16・・・走査駆動部、20・・・制御部、50・・・造形物、52・・・サポート層、102・・・インクジェットヘッド、104・・・紫外線光源、106・・・平坦化ローラ、202・・・内部領域、204・・・着色領域、206・・・保護領域、302・・・内側領域、304・・・外側領域、306・・・中間領域
図1
図2
図3
図4