(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】静電荷現像用トナー
(51)【国際特許分類】
G03G 9/097 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
G03G9/097 374
G03G9/097 365
(21)【出願番号】P 2018001757
(22)【出願日】2018-01-10
【審査請求日】2020-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100155620
【氏名又は名称】木曽 孝
(72)【発明者】
【氏名】宮島 謙史
(72)【発明者】
【氏名】須釜 宏二
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-033014(JP,A)
【文献】特開2009-025327(JP,A)
【文献】特開平07-160037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08-9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂および離型剤を含む第1トナー母体粒子と、前記第1トナー母体粒子の表面に付着した二酸化チタンを含む外添剤とを有する第1トナー粒子と、
結着樹脂および離型剤を含む第2トナー母体粒子と、前記第2トナー母体粒子の表面に付着した二酸化チタンを含まない外添剤とを有する第2トナー粒子と、
を有し、
以下の「個数分率の求め方」により求められる、前記第1トナー粒子および前記第2トナー粒子の合計に対する
下記チタン元素の質量分率が0.01質量%以上である粒子の個数分率は、0.1%以上2.0%以下であり、
下記チタン元素の質量分率が0.01質量%以上である粒子1個当たりの前記二酸化チタン中のチタン元素の含有量の平均値は、0.01質量%以上1.00質量%以下である、静電荷現像用トナー。
[個数分率の求め方]
第1トナー粒子および第2トナー粒子の混合物中の10000粒子について、エネルギー分散型X線分析装置を用いて、測定元素をケイ素、チタン、炭素および酸素としてZAF法による定量分析を行う。1粒子あたり3点について点分析測定を行い、得られたチタン元素の質量分率の平均値を、その粒子のチタン元素の質量分率とする。チタン元素の質量分率を測定した10000粒子中における、チタン元素の質量分率が0.01質量%以上である粒子の割合を、前記第1トナー粒子および前記第2トナー粒子の合計に対す
る個数分率とする。
【請求項2】
前記「個数分率の求め方」により求められる、前記第1トナー粒子および前記第2トナー粒子の合計に対する
前記チタン元素の質量分率が0.01質量%以上である粒子の個数分率は、0.3%以上1.0%以下である、請求項1に記載の静電荷現像用トナー。
【請求項3】
前記チタン元素の質量分率が0.01質量%以上である粒子1個当たりの前記二酸化チタン中のチタン元素の含有量の平均値は、0.04質量%以上0.50質量%以下である、請求項1または請求項2に記載の静電荷現像用トナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷現像用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プロダクションプリンティングの分野では、印刷速度の高速化や、画像不良のない良好な画像を出力することが求められている。
【0003】
印刷速度を高速化するためには、画像印刷での転写工程において、転写電界を大きくする方法や、トナーの帯電量を高くする方法が考えられる。
【0004】
トナーの帯電量を高くすると、過剰に帯電した一部のトナーが転写されずに感光体上に残留して、感光体と静電的に強く付着してしまう。感光体への付着を防止するために、特定の化合物を含有させたトナーが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1のトナーは、トナー粒子と、無機微粉体とを有している。トナー粒子は、結着樹脂と、カーボンブラックまたはアゾ系鉄化合物の一方または両方とを含んでいる。このように、特許文献1のトナーは、カーボンブラックまたはアゾ系鉄化合物を含有させることで、トナーが過剰に帯電することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の技術では、感光体と過剰に帯電したトナーとが付着することにより、クリーニング性が低下することがあった。また、特許文献1に記載のトナーでは、特定のカーボンブラックおよび特定のアゾ系鉄化合物がトナー粒子の抵抗値を下げてしまい、転写性が不十分なことがあった。このように、従来の技術では、トナーの転写性と、クリーニング性とを両立することが困難であった。
【0008】
本発明は、転写性およびクリーニング性を両立させた静電荷現像用トナーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するための一手段としての静電荷現像用トナーは、結着樹脂および離型剤を含むトナー母体粒子と、二酸化チタンを含む外添剤とを有するトナー粒子を含み、前記二酸化チタンを含む前記トナー粒子の個数分率は、0.1%以上2.0%以下である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、転写性およびクリーニング性を両立させた静電荷現像用トナーを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
[トナーの構成]
トナー(静電荷現像用トナー)は、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよい。一成分現像剤のトナーは、トナー粒子から構成される。また、二成分現像剤のトナーは、トナー粒子およびキャリア粒子から構成される。本実施の形態において、トナー粒子は、結着樹脂および離型剤を含むトナー母体粒子と、二酸化チタンを含む外添剤とを有する。
【0013】
キャリア粒子の例には、鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来から公知の材料からなる磁性粒子が含まれる。キャリア粒子の例には、磁性体からなる芯材粒子と、その表面を被覆する被覆材の層とを有する被覆型キャリア粒子と、樹脂中に磁性体の微粉末が分散されてなる樹脂分散型のキャリア粒子とが含まれる。キャリア粒子は、感光体へのキャリア粒子の付着を抑制する観点から、被覆型キャリア粒子が好ましい。
【0014】
芯材粒子は、例えば、磁場によってその方向に強く磁化する磁性体である。磁性体は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。磁性体の例には、鉄、ニッケルおよびコバルトなどの強磁性を示す金属、これらの金属を含む合金もしくは化合物および熱処理することにより強磁性を示す合金が含まれる。
【0015】
強磁性を示す金属またはそれを含む化合物の例には、鉄と、下記式(a)で表わされるフェライトと、下記式(b)で表わされるマグネタイトとが含まれる。式(a)および式(b)中のMは、Mn、Fe、Ni、Co、Cu、Mg、Zn、CdおよびLiの群から選ばれる1以上の1価または2価の金属を表す。
式(a):MO・Fe2O3
式(b):MFe2O4
【0016】
強磁性を示す合金の例には、マンガン-銅-アルミニウム、マンガン-銅-錫などのホイスラー合金と、二酸化クロムとが含まれる。
【0017】
芯材粒子は、各種フェライトが好ましい。被覆型キャリア粒子の比重は、芯材粒子を構成する金属の比重よりも小さい。よって、各種フェライトは、現像器内における撹拌の衝撃力をより小さくできる。
【0018】
被覆材は、キャリア粒子における芯材粒子の被覆に利用される公知の樹脂を使用できる。被覆材は、キャリア粒子の水分吸着性を低減させる観点と、被覆層における芯材粒子との密着性を高める観点とから、シクロアルキル基を有する樹脂が好ましい。シクロアルキル基の例には、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基およびシクロデシル基が含まれる。シクロアルキル基は、シクロヘキシル基またはシクロペンチル基が好ましく、被覆層とフェライト粒子との密着性の観点から、シクロへキシル基がさらに好ましい。被覆材は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0019】
シクロアルキル基を有する樹脂の重量平均分子量Mwは、例えば10,000~800,000が好ましく、100,000~750,000がより好ましい。樹脂におけるシクロアルキル基の含有量は、例えば10~90質量%である。樹脂中のシクロアルキル基の含有量は、例えば、P-GC/MSや1H-NMRなどの公知の機器分析法により求めることができる。
【0020】
キャリア粒子の平均粒径は、体積基準のメジアン径で20~100μmが好ましく、25~80μmがより好ましい。キャリア粒子の体積基準のメジアン径は、例えば、湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置(HELOS;SYMPATEC社)で測定できる。
【0021】
トナー粒子とキャリア粒子との混合比(質量比)は、特に限定されないが、帯電性および保存性の観点から、トナー粒子:キャリア粒子=1:100~30:100が好ましく、3:100~20:100がより好ましい。
【0022】
(結着樹脂)
結着樹脂は、非晶性樹脂および結晶性樹脂を含む。
【0023】
非晶性樹脂は、結晶性を実質的に有しておらず、例えばその樹脂中に非晶部を含む。非晶性樹脂の例には、非晶性ポリエステル樹脂、ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレア系樹脂および一部が変性された非晶性の変性ポリエステル樹脂が含まれる。非晶性樹脂は、例えば公知の方法によって合成できる。非晶性樹脂は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0024】
非晶性ポリエステル樹脂のGPCによる分子量(重量平均分子量および数平均分子量)は、例えば以下のようにして測定できる。高速ゲル浸透クロマトグラフィー装置「HLC-8120GPC」(東ソー株式会社製)およびカラム「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZ-M3連」(東ソー株式会社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2mL/分で流す。測定試料(樹脂)は、濃度1mg/mLになるようにテトラヒドロフランに溶解させる。当該溶液の調製は、超音波分散機を用いて、室温にて5分間処理を行うことにより行う。次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得、この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒と共に装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出する。単分散のポリスチレン標準粒子を用いて作成された検量線に基づいて、測定試料の分子量分布を算出した。上記検量線測定用のポリスチレンとしては10点用いる。当該測定法は、THFに溶解する樹脂であれば、いずれの樹脂に対しても適用できる。
【0025】
ビニル系樹脂は、ビニル基を有する化合物またはその誘導体を含むモノマーの重合によって生成する樹脂である。ビニル系樹脂は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。ビニル系樹脂の例には、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂が含まれる。
【0026】
スチレン-(メタ)アクリル系樹脂は、ラジカル重合性の不飽和結合を有する化合物のラジカル重合体の分子構造を有する。スチレン-(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、ラジカル重合性の不飽和結合を有する化合物のラジカル重合によって合成できる。ラジカル重合性の不飽和結合を有する化合物は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。ラジカル重合性の不飽和結合を有する化合物の例には、スチレンおよびその誘導体と、(メタ)アクリル酸およびその誘導体とが含まれる。
【0027】
スチレンおよびその誘導体の例には、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-フェニルスチレン、p-クロロスチレン、p-エチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン、2,4-ジメチルスチレンおよび3,4-ジクロロスチレンが含まれる。
【0028】
(メタ)アクリル酸およびその誘導体の例には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、β-ヒドロキシアクリル酸エチル、γ-アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルおよびメタクリル酸ジエチルアミノエチルが含まれる。
【0029】
非晶性樹脂中におけるビニル系樹脂の含有量は、50質量%以上が好ましい。ビニル系樹脂は、水系溶媒中で結晶性樹脂を凝集させて粒子を形成する工程において、非晶性樹脂中の結晶性樹脂の分散状態が不十分になることを防止できる。
【0030】
結晶性樹脂は、結晶性を有する樹脂である。ここで、「結晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有することを意味する。「明確な吸熱ピーク」とは、具体的には、DSCにおいて、昇温速度10℃/minで測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。
【0031】
結晶性樹脂は、低温定着性を良好にできる観点から、結晶性ポリエステル樹脂が好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の融点は、トナーを十分に軟化させて十分な低温定着性を確保する観点から、55~80℃が好ましく、さらに種々の特性をバランスよく向上させる観点から、75~85℃がより好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の融点は、樹脂組成(例えばモノマーの種類)によって制御できる。結晶性ポリエステル樹脂は、1種類で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0032】
結晶性ポリエステルは、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの脱水縮合反応による公知の合成方法によって製造できる。
【0033】
多価カルボン酸の例には、コハク酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸;それらの酸無水物;およびそれらの炭素数が1~3のアルキルエステル;が含まれる。多価カルボン酸は、脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
【0034】
多価アルコールの例には、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-へキサンジオール、1,7-へプタンジオール、1,8-オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオールなどの脂肪族ジオール;および、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールなどの3価以上のアルコール;が含まれる。多価アルコールは、脂肪族ジオールが好ましい。
【0035】
結晶性樹脂は、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂がより好ましい。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂ユニットおよび非晶性樹脂ユニットが化学的に結合した構造を有する。
【0036】
「結晶性ポリエステル樹脂ユニット」とは、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂における結晶性ポリエステル樹脂に由来する部分を示す。「非晶性樹脂ユニット」とは、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂における結晶性を有さない樹脂(非晶性樹脂)に由来する部分を示す。
【0037】
結晶性ポリエステル樹脂は、前述の結晶性ポリエステル樹脂を使用できる。また、非晶性樹脂は、前述の非晶性樹脂を使用できる。
【0038】
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂において、結晶性ポリエステル樹脂ユニットおよび非晶性樹脂ユニットは、結晶性ポリエステル樹脂ユニット同士、非晶性樹脂ユニット同士、あるいはこれらの樹脂同士が化学的に結合している範囲において、いずれも、連続していてもランダムに配置されていてもよい。また、両ユニットは、鎖状に連結されていてもよいし、一方の鎖に他方がグラフト結合していてもよい。
【0039】
なお、化学的な結合は、例えばエステル結合であり、あるいは不飽和基の付加反応による共有結合である。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、化学的な結合によって結晶性ポリエステル樹脂ユニットおよび非晶性樹脂ユニットを結合させる公知の方法によって入手できる。例えば、結着樹脂は、主鎖中の樹脂ユニットを構成するためのモノマーおよび両反応性モノマーを重合させる工程と、得られた主鎖前駆体の存在化で、側鎖中の樹脂ユニットを構成するためのモノマーおよび結晶核剤の一方または両方を重合または反応させる工程と、を含む方法によって製造できる。
【0040】
さらに、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂には、スルホン酸基、カルボキシル基、ウレタン基などの置換基をさらに導入できる。置換基の導入箇所は、結晶性ポリエステル樹脂ユニットでもよいし、非晶性樹脂ユニットでもよい。
【0041】
得られた樹脂における主鎖および側鎖の構造および量は、例えば、結着樹脂またはその加水分解物を核磁気共鳴(NMR)やエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)などの公知の機器分析法を利用して確認または推定できる。
【0042】
また、上記した樹脂ユニットの合成では、得られる樹脂の分子量を調整するための連鎖移動剤が当該樹脂ユニットのモノマーなどの原料にさらに含まれていてもよい。連鎖移動剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。連鎖移動剤の例には、2-クロロエタノール、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタンなどのメルカプタンと、スチレンダイマーとが含まれる。
【0043】
ここで、「グラフト結合」とは、幹となるポリマーと、枝となる異なる種類のポリマー(またはモノマー)との化学的な結合を意味する。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、トナーの所期の特性を総合的に高める観点から、非晶性樹脂ユニットに結晶性ポリエステル樹脂ユニットがグラフト結合した構造を有することが好ましい。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、トナー母体粒子中におけるハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の結晶化度を十分に高める観点から好ましい。
【0044】
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂における結晶性ポリエステル樹脂ユニットおよび非晶性樹脂ユニットの含有量は、本実施形態の効果が得られる範囲において適宜に決めることができる。例えば、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂における非晶性樹脂ユニットの含有量は、低すぎるとトナー母体粒子中へのハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の分散が不十分となることがあり、多すぎると低温安定性が不十分となることがある。このような観点から、当該含有量は、5~30質量%が好ましく、高温保存性および帯電均一性を高める観点から、5~20質量%がより好ましい。
【0045】
同様の観点から、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂における結晶性ポリエステル樹脂ユニットの含有量は、65~95質量%が好ましく、70~90質量%がより好ましい。また、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、本実施形態の効果が得られる範囲において、両ユニット以外の他の成分をさらに含有していてもよい。他の成分の例には、他の樹脂ユニットおよびトナー母体粒子へ添加されるべき各種添加剤が含まれる。
【0046】
(離型剤)
離型剤(ワックス)の例には、炭化水素系ワックスおよびエステルワックスが含まれる。炭化水素系ワックスの例には、低分子量ポリエチレンワックス、低分子量ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックスおよびパラフィンワックスが含まれる。また、上記エステルワックスの例には、カルナウバワックス、ペンタエリスリトールベヘン酸エステル、ベヘン酸ベヘニルおよびクエン酸ベヘニルが含まれる。
【0047】
結着樹脂100質量部に対する離型剤の含有量は、3~20質量部が好ましく、5~15量部がより好ましい。
【0048】
(着色剤)
着色剤は、カラートナーの着色剤として使用される公知の無機または有機着色剤を使用できる。着色剤の例には、カーボンブラック、磁性体、顔料および染料が含まれる。着色剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0049】
カーボンブラックの例には、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラックおよびランプブラックが含まれる。磁性体の例には、鉄やニッケル、コバルトなどの強磁性金属、これらの金属を含む合金、および、フェライトやマグネタイトなどの強磁性金属の化合物が含まれる。
【0050】
顔料の例には、C.I.ピグメントレッド2、同3、同5、同7、同15、同16、同48:1、同48:3、同53:1、同57:1、同81:4、同122、同123、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同208、同209、同222、同238、同269、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントイエロー3、同9、同14、同17、同35、同36、同65、同74、同83、同93、同94、同98、同110、同111、同138、同139、同153、同155、同180、同181、同185、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントブルー15:3、同15:4、同60、および、中心金属が亜鉛やチタン、マグネシウムなどであるフタロシアニン顔料が含まれる。
【0051】
染料の例には、C.I.ソルベントレッド1、同3、同14、同17、同18、同22、同23、同49、同51、同52、同58、同63、同87、同111、同122、同127、同128、同131、同145、同146、同149、同150、同151、同152、同153、同154、同155、同156、同157、同158、同176、同179、ピラゾロトリアゾールアゾ染料、ピラゾロトリアゾールアゾメチン染料、ピラゾロンアゾ染料、ピラゾロンアゾメチン染料、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93および同95が含まれる。
【0052】
(外添剤)
外添剤は、トナー粒子の流動性や帯電性などを制御する。本実施の形態では、一部のトナー母体粒子の表面には、外添剤としての二酸化チタンが付着している。
【0053】
二酸化チタンは、アナターゼ型であってもよいし、ルチル型であってもよいし、メタチタン酸であってもよい。
【0054】
二酸化チタンは、合成してもよいし、市販品を購入してもよい。市販されている二酸化チタンの例には、KA-10、KA-15、KA-20、KA-30、KA-35、KA-80、KA-90およびSTT-30(チタン工業社製)と、KR-310、KR-380、KR-460、KR-480、KR-270およびKV-300(チタン工業社製)と、MT-150A、MT-600B、MT-100S、MT-500B、JR-602SおよびJR-600A(テイカ社製)と、P25(日本アエロジル社製)と、が含まれる。
【0055】
二酸化チタンの個数平均一次粒子径は、10~300nmの範囲内が好ましい。二酸化チタンの一次粒子径が10nm未満の場合、凝集性が高いため、トナー表面上で均一に分散しないおそれがある。一方、二酸化チタンの個数平均一次粒子径が300nm超の場合、トナー母体粒子の表面に付着しないおそれがある。
【0056】
外添剤の個数平均一次粒子径は、例えば、透過型電子顕微鏡で撮影した画像の画像処理によって求めることができ、例えば、分級や分級品の混合などによって調整することができる。
【0057】
全トナー粒子中における二酸化チタンを含むトナー粒子の個数分率は、クリーニング性の観点から、0.1%以上が好ましく、0.3%以上がより好ましい。また、全トナー粒子中における二酸化チタンを含むトナー粒子の個数分率は、転写性の観点から、2.0%以下が好ましく、1.0%以下がより好ましい。
【0058】
二酸化チタンを含むトナー粒子の個数分率は、例えば以下の方法で算出できる。走査型電子顕微鏡(JSM-7401F;日本電子製)にトナーを挿入し、観察倍率2000倍、加速電圧20kV、照射時間200s、測定元素をケイ素、チタン、炭素および酸素としてZAF法による定量分析をエネルギー分散型X線分析装置(JED-2300;日本電子製)にて行う。トナー1粒子につき、3点、点分析測定を行い、得られたチタン元素の質量分率の平均値を測定したトナーのチタン元素の質量分率とした。質量分率の算出をトナー粒子10000粒について実施し、トナー1粒子あたりチタン元素が0.01質量%以上であるトナーの個数分率を算出した。
【0059】
トナー粒子1個当たりの二酸化チタン中のチタン元素の含有量の平均値は、クリーニング性の観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.02質量%以上がより好ましく、0.04質量%以上がさらに好ましい。また、トナー粒子1個当たりの二酸化チタン中のチタン元素の含有量の平均値は、転写性の観点から、1.00質量%以下が好ましく、0.50質量%以下がより好ましい。
【0060】
トナー粒子1個当たりの二酸化チタン中のチタン元素の含有量の平均値は、トナー1粒子あたりチタン元素が0.01質量%以上であるトナー粒子10000粒について、チタン元素の質量分率を算出して平均化することで求められる。
【0061】
二酸化チタンは、その表面が疎水化処理されていることが好ましい。疎水化処理には、公知の表面処理剤が用いられる。表面処理剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。表面処理剤の例には、シランカップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、脂肪酸、脂肪酸金属塩、そのエステル化物およびロジン酸が含まれる。
【0062】
シランカップリング剤の例には、ジメチルジメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、メチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシランおよびデシルトリメトキシシランが含まれる。上記シリコーンオイルの例には、環状化合物や、直鎖状あるいは分岐状のオルガノシロキサンなどが含まれ、より具体的には、オルガノシロキサンオリゴマー、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、および、テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサンが含まれる。
【0063】
また、シリコーンオイルの例には、側鎖または片末端や両末端、側鎖片末端、側鎖両末端などに変性基を導入した反応性の高い、少なくとも末端を変性したシリコーンオイルが含まれ、変性基の種類は、一種でもそれ以上でもよく、その例には、アルコキシ、カルボキシル、カルビノール、高級脂肪酸変性、フェノール、エポキシ、メタクリルおよびアミノが含まれる。
【0064】
外添剤は、二酸化チタンの効果を阻害しない範囲内であれば、他の外添剤を添加してもよい。他の外添剤の例には、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、酸化亜鉛粒子、酸化クロム粒子、酸化セリウム粒子、酸化アンチモン粒子、酸化タングステン粒子、酸化スズ粒子、酸化テルル粒子、酸化マンガン粒子および酸化ホウ素粒子が含まれる。他の外添剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0065】
他の外添剤は、ゾル-ゲル法で作製されたシリカ粒子を含むことがより好ましい。ゾル-ゲル法で作製されたシリカ粒子は、粒子径分布が狭いという特徴を有しているので、トナー母体粒子に対する外添剤の付着強度のバラツキを抑制する観点から好ましい。
【0066】
また、シリカ粒子の個数平均一次粒子径は、70~200nmが好ましい。個数平均一次粒子径が上記範囲内にあるシリカ粒子は、一般に、他の外添剤に比べて大きい。したがって、二成分現像剤においてスペーサーとしての役割を有する。よって、二成分現像剤が現像器中で撹拌されているときに、より小さな他の外添剤がトナー母体粒子に埋め込まれることを防止する観点から好ましい。また、トナー母体粒子同士の融着を防止する観点からも好ましい。
【0067】
他の外添剤は、前述した方法でその表面が疎水化処理されていることが好ましい。
【0068】
外添剤の添加量は、トナー粒子全体に対して0.1~10.0質量%が好ましく、1.0~3.0質量%がより好ましい。
【0069】
トナーは、一成分現像剤であればトナー粒子そのものにより構成され、二成分現像剤であればトナー粒子およびキャリア粒子により構成される。二成分現像剤におけるトナー粒子の含有量(トナー濃度)は、通常の二成分現像剤と同様でよく、例えば4.0~8.0質量%である。
【0070】
クリーニング性や転写性をさらに向上させるために、外添剤として滑剤を使用することもできる。滑剤の例には、ステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウムなどの塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウム等の塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウムなどの塩、リノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩などの高級脂肪酸の金属塩が含まれる。
【0071】
トナー母体粒子は、いずれも、本実施形態の効果を奏する範囲において、結着樹脂および離型剤以外の他の成分をさらに含有していてもよい。他の成分の例には、帯電制御剤が含まれる。帯電制御剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0072】
帯電制御剤の例には、ニグロシン系染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、および、サリチル酸金属塩あるいはその金属錯体が含まれる。
【0073】
トナー母体粒子は、その粒径および円形度の適切な制御の観点から、粉砕トナーよりも、水系媒体中で調製される重合トナーであることが好ましく、乳化会合凝集法によるトナー母体粒子であることがより好ましい。
【0074】
[トナーの特性]
二成分現像剤は、トナー粒子とキャリア粒子とを適量混合することによって製造することができる。当該混合に用いられる混合装置の例には、ナウターミキサー、WコーンおよびV型混合機が含まれる。
【0075】
トナー粒子の大きさおよび形状は、本実施形態の効果が得られる範囲において適宜に決めることができる。例えば、トナー粒子の体積平均粒径は、3.0~8.0μmであり、トナー粒子の平均円形度は、0.920~1.000である。
【0076】
トナー粒子の個数平均粒径は、「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用のコンピューターシステムを接続した装置を用いて測定および算出できる。また、上記トナー粒子の個数平均粒径は、例えば、トナー粒子の製造における温度や攪拌の条件、トナー粒子の分級、トナー粒子の分級品の混合などによって調整できる。
【0077】
トナー粒子の平均円形度は、例えば、フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(Sysmex社製)を用い、所定数のトナー粒子における、粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長L1と、粒子投影像の周囲長L2とから、下記式(c)から算出した円形度Cの総和を、当該所定数で除することにより求められる。トナー粒子の平均円形度は、例えば、トナー粒子の製造における樹脂粒子の熟成の程度や、トナー粒子の熱処理、異なる円形度のトナー粒子の混合、などによって調整できる。
式(c):C=L1/L2
【0078】
また、キャリア粒子の大きさおよび形状も、本実施形態の効果が得られる範囲において適宜に決定できる。例えば、キャリア粒子の体積平均粒径は、15~100μmである。キャリア粒子の体積平均粒径は、例えばレーザー回折式粒度分布測定装置「HELOS KA」(日本レーザー株式会社製)を用いて湿式で測定できる。また、キャリア粒子の体積平均粒径は、例えば、芯材粒子の製造条件による芯材粒子の粒径を制御する方法や、キャリア粒子の分級、キャリア粒子の分級品の混合などによって調整できる。
【0079】
(トナーの製造方法)
トナーを製造する方法は、公知の方法により製造できる。トナーを製造する方法の例には、混練粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法、溶解懸濁法、ポリエステル伸長法、分散重合法が含まれる。ここでは、混練粉砕法によるトナーの製造方法について説明する。
【0080】
混練粉砕法とは、少なくとも結着樹脂と着色剤とを混合し、混練処理を行った後、粉砕処理を行うことによってトナーを得る方法である。さらに、必要に応じて粉砕処理の後、公知の分級装置などを用いて分級処理を行う。また、混練処理の前に、結着樹脂、着色剤、必要に応じて、離形剤、荷電制御剤などの添加剤を、ヘンシェルミキサーやボールミルなどの混合機により十分混合してもよい。
【0081】
(1)混練処理工程
混練処理に用いられる混練機は、二軸押出混練機、三本ロール、ラボブラストミルなどの一般の混練機を使用できる。また、混練処理の際に内添剤を添加してもよい。混練の際には加熱することが好ましく、加熱条件は、適宜設定できる。
【0082】
加熱混練の後、通常は冷却して次工程の粉砕処理工程に進む。混錬工程終了の際における冷却速度は適宜設定すればよい。
【0083】
(2)粉砕処理工程
粉砕処理に用いられる粉砕機は、ターボミルなどの機械式粉砕機、気流式粉砕機(ジェットミル)などを使用できる。また、粉砕処理前に、混練処理によってチップ状に冷却固化した混練物を粉砕機に投入できる大きさまでハンマーミルやフェザーミルなどにより粗粉砕処理してもよい。
【0084】
粉砕工程により得られたトナー粒子は、必要に応じて、目的とする範囲の体積中位径のトナー粒子を得るため、分級工程により分級を行ってもよい。分級工程においては、従来から使用されている重力分級機、遠心分級機、慣性分級機(コアンダ効果を利用した分級機など)などが使用され、微粉(目的とする範囲の粒径よりも小さいトナー粒子)や粗粉(目的とする範囲の粒径よりも大きいトナー粒子)が除去される。
【0085】
粉砕処理後、または分級処理後に得られる粒子(以下、母体粒子とも称する)の体積中位径は、4.8~13.2μmが好ましい。母体粒子の体積基準の粒度分布における変動係数(CV値)は、10~32が好ましい。体積基準の粒度分布における変動係数(CV値)は、トナー粒子の粒度分布における分散度を体積基準で表したもので、以下の式(d)によって定義される。
式(d):CV値(%)=(個数粒度分布における標準偏差)/(個数粒度分布におけるメジアン径(D50v))×100
混練粉砕法によりトナーを得る場合、トナーの体積中位径は、粉砕条件(粉砕機の回転数、粉砕時間)、分級条件、下記の円形度制御工程における処理条件、後述の外添剤添加工程における処理条件(混合機の回転数、混合時間など)で制御できる。
【0086】
(3)円形度制御工程(球形化処理工程)
混練粉砕法によりトナーを得る場合、トナーの平均円形度が式(c)を満たすように制御するための円形度制御工程を有することが好ましい。この際、他のトナーおよび白色トナーのうち、少なくとも他のトナーについて円形度制御処理を行うことが好ましく、他のトナーおよび白色トナーの双方について円形度制御処理を行うことが好ましい。すなわち、好適な一実施形態は、その他のトナー(好適には、他のトナーおよび白色トナー)が、少なくとも結着樹脂および着色剤を混合する混練処理を行い、得られた混合物を粉砕処理する粉砕処理を行った後、円形度制御処理を行うことによって得られる形態である。
【0087】
円形度制御処理の例には、トナー母体粒子に対する加熱処理が含まれる。加熱温度および保持時間によりトナー母体粒子の円形度を制御できる。加熱温度を高くする、または保持時間を長くすることにより、円形度を1に近づけることができる。ただし、トナー粒子の再凝集や粒子間の融着が促進されるため、加熱温度を過度に高くすることは好ましくない。また、トナー内部のドメイン構造(バインダー樹脂をマトリクスとした場合に、ワックスや結晶性ポリエステルなどのバインダー以外の配置)が変化するであるため、保持時間を過度に長くすることも好ましくない。
【0088】
円形度制御処理における加熱温度としては、Sc/Swが上記式(c)を満たすように適宜調整すればよいが、70~95℃が好ましく、75~90℃がより好ましい。非晶性ポリエステル樹脂を用いる場合、通常非晶性ポリエステル樹脂のTg~軟化点付近の温度で円形度制御処理を行う。ただし、他構成材料(ワックスや着色剤量など)によってもその適点が変わるため、加熱温度はこれらの材料を考慮して適宜設定すればよい。また、加熱温度での保持時間としては、Sc/Swが上記式(c)を満たすように、加熱温度を考慮して適宜調整すればよい。円形度の制御は、加温中に円形度測定装置にて体積中位径が2μm以上の粒径の円形度を測定し、所望の円形度であるかどうかを適宜判断することによって制御できる。
【0089】
(非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度の測定)
非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用いて測定できる。まず、測定試料(樹脂)3.0mgをアルミニウム製パンに封入し、「ダイヤモンドDSC」のサンプルホルダーにセットする。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用する。そして、昇温速度10℃/分で0℃から200℃まで昇温する第1昇温過程、冷却速度10℃/分で200℃から0℃まで冷却する冷却過程、および昇温速度10℃/分で0℃から200℃まで昇温する第2昇温過程をこの順に経る測定条件(昇温・冷却条件)によってDSC曲線を得る。この測定によって得られたDSC曲線に基づいて、その第2昇温過程における第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1のピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線を引き、その交点をガラス転移温度(Tg)とする。
【0090】
円形度制御処理においては、乾式加熱で行っても湿式加熱で行ってもよい。湿式加熱は、トナー母体粒子を水系媒体中に分散させて加熱処理を行う方法である。この際、トナー母体粒子の分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤などが添加されていてもよい。界面活性剤の例には、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウムベタインなどの両性界面活性剤が含まれ、また、フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤やカチオン性界面活性剤も使用できる。
【0091】
混練粉砕法によるトナー粒子の製造方法においては、円形度制御処理工程の後、下記(4)濾過・洗浄工程、(5)乾燥工程、および(6)外添剤添加工程を含んでいてもよい。
【0092】
(4)濾過・洗浄工程
濾過・洗浄工程では、得られたトナー粒子の分散液を冷却して冷却後のスラリーとし、この冷却されたトナー粒子の分散液から、水等の溶媒を用いて、トナー粒子を固液分離してトナー粒子を濾別する濾過処理と、濾別されたトナー粒子(ケーキ状の集合物)から界面活性剤などの付着物を除去する洗浄処理とが施される。具体的な固液分離および洗浄の方法としては、遠心分離法、アスピレータ、ヌッチェなどを使用する減圧濾過法、フィルタープレスなどを使用する濾過法などが挙げられ、これらは特に限定されるものではない。この濾過・洗浄工程においては適宜、pH調整や粉砕などを行ってもよい。このような操作は繰り返し行ってもよい。
【0093】
(5)乾燥工程
乾燥工程では、洗浄処理されたトナー粒子に乾燥処理が施される。この乾燥工程で使用される乾燥機の例には、オーブン、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機が含まれ、これらは特に限定されるものではない。なお、乾燥処理されたトナー粒子中のカールフィッシャー電量滴定法にて測定される水分量は、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。
【0094】
また、乾燥処理されたトナー粒子同士が、弱い粒子間引力で凝集して凝集体を形成している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。解砕処理装置の例には、ジェットミル、コーミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサーなどの機械式の解砕装置が含まれる。
【0095】
(6)外添剤添加工程
外添剤添加工程は、乾燥処理されたトナー母体粒子に、二酸化チタン、その他流動性、帯電性の改良およびクリーニング性の向上などの目的で、荷電制御剤や種々の無機微粒子、有機微粒子、または滑剤などの外添剤を添加する工程である。外添剤添加工程の条件は、例えば、大気圧、温度30~50℃、混合時間20分~1時間である。外添剤を添加するために使用される装置の例には、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機、サンプルミルなどの種々の公知の混合装置が含まれる。また、トナーの粒度分布を適当な範囲とするため、必要に応じ篩分級を行ってもよい。
【0096】
本実施の形態では、一部のトナー母体粒子のみに二酸化チタンが配置されている。よって、一部のトナー母体粒子および二酸化チタンを混合して二酸化チタンが付着したトナー粒子を製造する。次いで、二酸化チタンが付着していないまたは他の外添剤が付着したトナー粒子と、二酸化チタンが付着したトナー粒子とを混合してトナーを製造している。
【0097】
以上のように製造されたトナーが転写性およびクリーニング性の両方を発揮できる理由は、以下のように考えられる。本実施の形態における一部のトナー粒子は、トナー母体粒子と、トナー母体粒子の表面に固着した二酸化チタンと、を有している。そして、二酸化チタンを有するトナー粒子の個数分率は、0.1~2.0%である。
【0098】
現在、市場に流通しているトナーのうち、多くのトナーは、外添剤として二酸化チタンを含んでいない。よって、市場で流通しているトナーは、帯電性が高く、かつトナー全体としてみれば転写性が良好である。ただし、トナーの帯電量は、所定の分布を有する。そして、二酸化チタンを有するトナー粒子の個数分率が2.0%超の場合、一部の過剰帯電したトナー粒子が感光体に強く静電的に付着し、転写されずに感光体上に残留する。感光体上に残ったトナーは、感光体に強く付着しており、流動性が低いため、クリーニング部において、除去することができずにクリーニング不良が発生してしまう。
【0099】
一方、市場に流通しているトナーのうち、一部のトナーは、外添剤として二酸化チタンを含んでいる。このようなトナーは、帯電性が低く、流動性が高いため、クリーニング性が良好である。しかし、このようなトナーは、帯電性が低いため、転写性が不良であり、感光体上に積極的に残留する。そして、本実施の形態のように、二酸化チタンを有するトナー粒子の個数分率が1.0%以上であれば、当該残留したトナー粒子のクリーニング性能は、二酸化チタンを有するトナー粒子によって補助される。
【実施例】
【0100】
本発明を、以下の実施例および比較例を用いてさらに具体的に説明する。以下、特記しない限り、各操作は、室温(20℃)で行った。なお、本発明は、以下の実施例などに限定されない。
【0101】
(非晶性ポリエステル樹脂(AP樹脂1)の合成)
窒素導入管、脱水管、撹拌装置および熱電対を装備した四つ口フラスコに下記の重縮合系樹脂の原料モノマーおよびエステル化触媒としてTi(n-OBu)4 1.0質量部を入れ、180℃で4時間反応させた。
フマル酸 132質量部
テレフタル酸 45質量部
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加体 500質量部
【0102】
その後、10℃/時間の速度で210℃まで昇温し、210℃で5時間保持した後、減圧下(8kPa)にて1時間反応させた。次に、200℃まで冷却したのち、減圧下(20kPa)にて1時間反応させることで非晶性ポリエステル樹脂(AP樹脂1)を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂(AP樹脂1)は、重量平均分子量(Mw)が35,000であり、ガラス転移温度(Tg)が58℃であった。
【0103】
(非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(AP分散液1)の調製)
非晶性ポリエステル樹脂(AP樹脂1)30質量部を溶融させた状態のまま、乳化分散機「キャビトロンCD1010」(株式会社ユーロテック製)に対して毎分100質量部の移送速度で移送した。また、この溶融状態の非晶性ポリエステル樹脂(AP樹脂1)の移送と同時に、当該乳化分散機に対して、濃度0.37質量%の希アンモニア水(水性溶媒タンクにおいて試薬アンモニア水70質量部をイオン交換水で希釈したもの)を、熱交換機で100℃に加熱しながら0.1L/分の移送速度で移送した。そして、この乳化分散機を、回転子の回転速度60Hz、圧力5kg/cm2の条件で運転することにより、体積基準のメジアン径が180nmの非晶性ポリエステル樹脂粒子を含む分散液(AP分散液1)を調製した。なお、上記体積基準のメジアン径(D50)は、マイクロトラック粒度分布測定装置「UPA-150」(日機装株式会社製)で測定した。
【0104】
(離型剤粒子分散液(W1)の調製)
パラフィンワックス(HNP0190、日本精蝋株式会社製(融点81℃))
200質量部
ドデシル硫酸ナトリウム 20質量部
イオン交換水 2200質量部
上記の材料を混合し95℃に加熱して、IKA社製のウルトラタラックス(登録商標、以下同じ)T50にて十分に分散した。その後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理し、離型剤粒子分散液(W1)を調製した。この分散液中の離型剤粒子の体積基準のメジアン径は、200nmであった。
【0105】
(シアン着色剤分散液(Cy)の調製)
ドデシル硫酸ナトリウム 90質量部
C.I.ピグメントブルー15:3 200質量部
イオン交換水 1600質量部
上記の成分を混合した溶液をウルトラタラックスT50(IKA社製)にて十分に分散した後、超音波分散機で20分間処理することによりシアン着色剤分散液(Cy)を調製した。得られたシアン着色剤分散液(Cy)において、着色剤の体積基準のメジアン径は、180nmであった。
【0106】
[トナー(1)の製造]
撹拌装置、温度センサーおよび冷却管を取り付けた反応容器に、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(AP分散液1)540質量部(固形分換算)と、着色剤分散液(Cy)30質量部(固形分換算)と、離型剤粒子分散液(W1)60質量部(固形分換算)とを投入した後、5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。
【0107】
次いで、塩化マグネシウム50質量部をイオン交換水50質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて添加した。昇温を開始し、この系を60分間かけて75℃まで昇温し、「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準のメジアン径が6.0μmとなるように、撹拌速度を制御した。その後、塩化ナトリウム190質量部をイオン交換水760質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。さらに76℃の状態で加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させた。
【0108】
その後、トナー粒子の平均円形度の測定装置「FPIA-3000」(Sysmex社製)を用いて(HPF検出数:4000個)平均円形度が0.957になった時点で1℃/分の冷却速度で30℃に冷却した。
【0109】
次いで、固液分離し、脱水したトナーケーキをイオン交換水に再分散し固液分離する操作を3回繰り返して洗浄したのち、40℃で24時間乾燥させることにより、トナー粒子(1X)を得た。
【0110】
得られたトナー粒子(1X)200質量部に、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm)2.0質量部を添加し、「ヘンシェルミキサー」(三井三池化工機社製)により回転翼周速30m/秒、32℃で20分間混合する外添処理を行い、シアントナー(A)を得た。
【0111】
また、トナー粒子(1X)200質量部に、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm)2.0質量部および疎水性酸化チタン(数平均一次粒子径=20nm)0.1質量部を添加し、「ヘンシェルミキサー」(三井三池化工機社製)により回転翼周速30m/秒、32℃で20分間混合する外添処理を行い、シアントナー(B1)を得た。
【0112】
得られたシアントナー(A)200質量部およびシアントナー(B1)0.2質量部を「ヘンシェルミキサー」(三井三池化工機社製)により回転翼周速30m/秒、32℃で5分間混合した後、45μmの目開きの篩を用いて粗大粒子を除去することにより、シアントナー(1)を得た。
【0113】
シアントナー(1)に対して、シクロヘキシルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合樹脂(モノマー質量比=1:1)を2質量部被覆した体積平均粒子径30μmのフェライトキャリアを用い、シアントナー(1)の濃度が7質量%となるようにして混合することにより、トナー(1)を得た。
【0114】
[トナー(2)~トナー(5)の製造]
シアントナー(B1)における二酸化チタンの添加量を0.3、1.5、2.5、5.0質量部に変更したこと以外は、シアントナー(B1)と同様にして、シアントナー(B2)~シアントナー(B5)を製造した。
【0115】
シアントナー(B1)~シアントナー(B5)における二酸化チタンの添加量を表1に示す。
【0116】
【0117】
トナー(1)におけるシアントナー(B1)0.2質量部を、下記の表2に示されるように変更すること以外は、トナー(1)と同様にしてトナー(2)~トナー(12)を製造した。
【0118】
トナー(1)~トナー(12)において使用したシアントナー(B)と、その添加量を表2に示す。
【0119】
【0120】
作製したトナー(1)~トナー(12)における二酸化チタンを含むトナー粒子の個数分率と、トナー一粒子あたりのチタンの質量分率とを表3に示す。
【0121】
【0122】
[評価方法]
(転写性の評価)
複写機「bizhub PRESS(登録商標) C1070」(コニカミノルタ株式会社製)を改造して温湿度補正の制御を無効にしたものを用い、作製したトナーをそれぞれ装填して評価を行った。まず、常温常湿(温度20℃、湿度50%RH)の環境下において、A4サイズの上質紙「CFペーパー」(コニカミノルタ株式会社製)上に各トナーの付着量を4.0g/m2に設定した。その後、高温高湿(温度30℃、湿度80%RH)環境下において、A4サイズの上質紙「CFペーパー」上に100mm×100mmサイズの画像を出力した。常温常湿下および高温高湿下で得られた画像のそれぞれについて、蛍光分光濃度計FD-7(コニカミノルタ社製)で反射濃度を測定し、常温常湿下での透過濃度から高温高湿下での反射濃度の差を算出し、以下の基準により評価した。
○ : 濃度差が0.04以下
△ : 濃度差が0.04より大きく0.07以下
× : 濃度差が0.07より大きい
【0123】
(クリーニング性の評価)
複写機「bizhub PRESS(登録商標) C1070」(コニカミノルタ株式会社製)を用いて、A4サイズの上質紙「CFペーパー」(コニカミノルタ株式会社製)上に幅3cmの縦帯状ベタ画像が5本あるテスト画像を1万枚連続印刷し、その後、全面ベタ画像を出力した。全面ベタ画像中の帯部に相当する部分5点と帯部に相当しない6点の反射濃度を蛍光分光濃度計FD-7(コニカミノルタ社製)にて計測し、最大濃度差にて評価を実施し、以下の基準により評価した。0.06以下を実用可能と判断した。
○ : 最大濃度差が0.03以下
△ : 最大濃度差が0.03より大きく0.06以下
× : 最大濃度差が0.06より大きい
【0124】
[結果]
トナー(1)~トナー(12)の評価結果を表4に示す。
【0125】
【0126】
表4に示されるように、二酸化チタンを含むトナー粒子の個数分率が0.1%未満のトナー(10)およびトナー(11)では、クリーニング性が十分でなかった。これは、感光体に付着するトナーが多くなりすぎてしまい、グリーニング部材で除去することができなくなったためと考えられる。二酸化チタンを含むトナー粒子の個数分率が2.0%超のトナー(12)では、転写性が十分でなかった。これは、トナー全体としての帯電性が低かったためと考えられる。
【0127】
一方、二酸化チタンを含むトナー粒子の個数分率が0.1%以上2.0%以下のトナー(1)~トナー(9)では、転写性およびクリーニング性が十分であった。これは、二酸化チタンを含むトナー粒子の含有量が適切であったため、各トナーが適切に帯電性を有し、かつ各トナーが感光体上の残トナーの除去を補助したためと考えられる。
【0128】
特に、二酸化チタンを含むトナー粒子の個数分率が0.3%以上1.0%以下であって、かつトナー粒子1個当たりの二酸化チタン中のチタン元素の含有量の平均値が0.04質量%以上0.50質量%以下であるトナー(6)~トナー(9)では、転写性およびクリーニング性がさらに十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明に係る静電潜像現像用トナーよって形成される画像形成では、転写性およびクリーニング性良好であるため、高品質な画像を形成できる。よって、本発明によれば、電子写真方式の画像形成方法におけるさらなる普及が期待される。