(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】制御システム、制御システムの制御方法、および制御システムのプログラム
(51)【国際特許分類】
B25J 13/08 20060101AFI20220830BHJP
G05B 19/404 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
B25J13/08 A
G05B19/404 K
(21)【出願番号】P 2018137011
(22)【出願日】2018-07-20
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100122286
【氏名又は名称】仲倉 幸典
(72)【発明者】
【氏名】大倉 嵩史
(72)【発明者】
【氏名】呉 賢瑩
(72)【発明者】
【氏名】大谷 拓
(72)【発明者】
【氏名】島村 純児
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-102825(JP,A)
【文献】特開2009-208209(JP,A)
【文献】特開2011-011318(JP,A)
【文献】特開2014-140941(JP,A)
【文献】特開2011-110628(JP,A)
【文献】特開2014-006566(JP,A)
【文献】特開2014-034075(JP,A)
【文献】特開2014-151427(JP,A)
【文献】米国特許第09919427(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/10-15/04
G05B 19/18-19/414
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のワークを把持するロボットと、
第2のワークを支持する支持台と、
前記支持台を移動させる移動機構と、
前記ロボットの位置および前記支持台の位置を計測する計測部と、
前記ロボットおよび前記移動機構を制御する中央制御装置と、を備え、
前記中央制御装置は、
前記計測部により計測した前記ロボットおよび前記支持台の位置に基づいて、前記移動機構により前記支持台を移動させ、前記第1のワークの前記第2のワークに対する相対的な位置決めを調整する位置決め調整部を備
え、
前記ロボットおよび前記移動機構は、前記中央制御装置と産業用ネットワークにより通信可能に接続され、所定の制御周期により制御されており、
前記位置決め調整部は、前記位置決めの調整を、前記第2のワークに前記第1のワークを挿入するための前記第1のワークの軌道計算を行い、当該軌道計算に基づく前記制御周期ごとの前記ロボットの目標位置と現在位置との差を修正するように、前記移動機構の前記制御周期ごとの次の目標位置を設定することにより、前記ロボットおよび前記移動機構の前記所定の制御周期による制御中に行う、
制御システム。
【請求項2】
前記
計測部は、前記ロボットおよび前記移動機構に備えられたエンコーダ、または、前記第1のワークあるいは前記第2のワークを撮影するカメラを備える、
請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
第1のワークを把持するロボットと、第2のワークを支持する支持台の移動機構とを制御する制御システムの制御方法であって、
前記ロボットの位置、および前記支持台の位置を計測部により計測するステップと、
前記計測部により計測した前記ロボットおよび前記支持台の位置に基づいて、前記移動機構により前記支持台を移動させ、前記第1のワークの前記第2のワークに対する相対的な位置決めを中央制御装置の位置決め調整部により調整するステップと、
前記ロボットおよび前記移動機構を、前記中央制御装置と産業用ネットワークにより通信可能に接続され、所定の制御周期により制御するステップとを備え、
前記位置決め調整部により調整するステップは、前記位置決めの調整を、前記第2のワークに前記第1のワークを挿入するための前記第1のワークの軌道計算を行い、当該軌道計算に基づく前記制御周期ごとの前記ロボットの目標位置と現在位置との差を修正するように、前記移動機構の前記制御周期ごとの次の目標位置を設定することにより、
前記ロボットおよび前記移動機構の前記所定の制御周期による制御中に行う、
制御システムの制御方法。
【請求項4】
第1のワークを把持するロボットと、第2のワークを支持する支持台の移動機構とを制御する制御システムの
プログラムであって、
コンピュータに、
前記ロボットの位置、および前記支持台の位置を計測部により計測するステップと、
前記計測部により計測した前記ロボットおよび前記支持台の位置に基づいて、前記移動機構により前記支持台を移動させ、前記第1のワークの前記第2のワークに対する相対的な位置決めを中央制御装置の位置決め調整部により調整するステップと
、
前記ロボットおよび前記移動機構を、前記中央制御装置と産業用ネットワークにより通信可能に接続され、所定の制御周期により制御するステップとを、実行させ、
前記位置決め調整部により調整するステップは、前記位置決めの調整を、前記第2のワークに前記第1のワークを挿入するための前記第1のワークの軌道計算を行い、当該軌道計算に基づく前記制御周期ごとの前記ロボットの目標位置と現在位置との差を修正するように、前記移動機構の前記制御周期ごとの次の目標位置を設定することにより、
前記ロボットおよび前記移動機構の前記所定の制御周期による制御中に行う、
制御システムの
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子部品等の組み立てを行うロボット等を制御装置により制御する制御システム、制御システムの制御方法、および制御システムのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の組み立てでは、基板に対して垂直方向だけではなく、水平方向および斜め方向からの部品の挿入が必要となる。このような多方向の部品挿入に対応するためには、垂直多関節ロボットが必要になる。
【0003】
例えば特許文献1のように、組み付け位置をテンプレートを用いて教示し、組み立てを行う装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の手法では、部品の位置決め誤差を予め静的に計測して修正し、組み立てを実行するものであり、ロボットの動作中における振動やたわみ等による位置決め誤差を修正することはできない。特に、垂直多関節ロボットは、高速で動かすと振動し、手先の位置決め精度が出ず、組み付けが実現できない。また、垂直多関節ロボットには、自重や手先の把持物体の重さにより、リンクにたわみが発生し、手先の位置決めに誤差が生じる。
【0006】
そこで、この発明の課題は、垂直多関節ロボットの手先の精度を補償し、高速高精度かつ多方向の挿入に対応した電子部品等の組み付けを可能とする制御システム、制御システムの制御方法、および制御システムのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この開示の制御システムは、
第1のワークを把持するロボットと、
第2のワークを支持する支持台と、
前記支持台を移動させる移動機構と、
前記ロボットの位置および前記支持台の位置を計測する計測部と、
前記ロボットおよび前記移動機構を制御する中央制御装置と、を備え、
前記中央制御装置は、
前記計測部により計測した前記ロボットおよび前記支持台の位置に基づいて、前記移動機構により前記支持台を移動させ、前記第1のワークの前記第2のワークに対する相対的な位置決めを調整する位置決め調整部を備える。
【0008】
上述の制御システムでは、支持台に支持される第2のワークに、ロボットに把持される第1のワークを挿入する等の組み立てを行う場合には、中央制御装置は、ロボットを所定の位置に移動させる。振動等によりロボットに位置決め誤差が生じた場合には、位置決め調整部は、計測部により計測したロボットおよび支持台の位置に基づいて、移動機構により前記支持台を移動させ、第1のワークの第2のワークに対する相対的な位置決めを調整する。
【0009】
上述の制御システムによれば、振動やたわみ等により垂直多関節ロボットの位置決め誤差が生じた場合でも、垂直多関節ロボットの手先の精度を補償し、高速高精度かつ多方向の挿入に対応した電子部品等の組み付けを行うことができる。
【0010】
一実施形態の制御システムは、
前記ロボットおよび前記移動機構は、前記中央制御装置と産業用ネットワークにより通信可能に接続され、所定の制御周期により制御されており、
前記位置決め調整部は、前記位置決めの調整を、前記第2のワークに前記第1のワークを挿入するための前記第1のワークの軌道計算を行い、当該軌道計算に基づく前記制御周期ごとの前記ロボットの目標位置と現在位置との差を修正するように、前記移動機構の前記制御周期ごとの次の目標位置を設定することにより行う。
【0011】
この一実施形態の制御システムでは、ロボットおよび移動機構は、中央制御装置と産業用ネットワークにより通信可能に接続され、所定の制御周期により制御されている。位置決め調整部は、第2のワークに第1のワークを挿入するための第1のワークの軌道計算を行う。そして、この軌道計算に基づく制御周期ごとのロボットの目標位置と現在位置との差を計測し、その差を修正するように、移動機構の前記制御周期ごとの次の目標位置を設定する。このようにして、位置決めの調整を行う。したがって、位置決めの調整が動的に行われるので、振動やたわみ等により垂直多関節ロボットの位置決め誤差が生じた場合でも、垂直多関節ロボットの手先の精度を補償し、高速高精度かつ多方向の挿入に対応した電子部品等の組み付けを行うことができる。
【0012】
一実施形態の制御システムは、計測部は、ロボットおよび移動機構に備えられたエンコーダ、または、第1のワークあるいは第2のワークを撮影するカメラを備える。
【0013】
この一実施形態の制御システムでは、エンコーダまたはカメラによりロボットおよび支持台の位置を計測するので、位置決めの調整が動的に行うことができる。その結果、振動やたわみ等により垂直多関節ロボットの位置決め誤差が生じた場合でも、垂直多関節ロボットの手先の精度を補償し、高速高精度かつ多方向の挿入に対応した電子部品等の組み付けを行うことができる。
【0014】
上記課題を解決するため、この開示の制御システムの制御方法は、
第1のワークを把持するロボットと、第2のワークを支持する支持台の移動機構とを制御する制御システムの制御方法であって、
前記ロボットの位置、および前記支持台の位置を計測部により計測するステップと、
前記計測部により計測した前記ロボットおよび前記支持台の位置に基づいて、前記移動機構により前記支持台を移動させ、前記第1のワークの前記第2のワークに対する相対的な位置決めを中央制御装置の位置決め調整部により調整するステップと、を備える。
【0015】
この開示の制御システムの制御方法によれば、振動やたわみ等により垂直多関節ロボットの位置決め誤差が生じた場合でも、垂直多関節ロボットの手先の精度を補償し、高速高精度かつ多方向の挿入に対応した電子部品等の組み付けを行うことができる。
【0016】
上記課題を解決するため、この開示の制御システムのプログラムは、上記制御システムの制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0017】
この開示のプログラムをコンピュータに実行させることによって、上記制御システムの制御方法を実施することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上より明らかなように、この開示の制御システムによれば、垂直多関節ロボットの手先の精度を補償し、高速高精度かつ多方向の挿入に対応した電子部品等の組み付けを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態における制御システムの概略構成を示す図である。
【
図3】制御システムにおける全体処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】制御システムにおける全体処理の流れを説明するための図である。
【
図5】制御システムにおける全体処理の流れを説明するための図である。
【
図6】制御システムにおける全体処理の流れを説明するための図である。
【
図7】制御システムにおける全体処理の流れを説明するための図である。
【
図8】制御システムの処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図9】制御システムの処理の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における制御システム1の概略構成を示す図である。
図1に示すように、制御システム1は、垂直多関節ロボット10と、カメラ20と、支持台としてのステージ30と、移動機構としてのXYZロボット40とを備えている。
【0022】
垂直多関節ロボット10は、一例として、6軸の垂直多関節ロボットであり、回転関節11~13および屈曲関節14~16を回転・屈曲させることにより、ロボット先端の位置を固定した状態で色々な姿勢をとることができる。垂直多関節ロボット10は、一例として、サーボモータを備えており、各サーボモータの近傍には、各サーボモータの回転量等を検出するための計測部としてのエンコーダ10a(
図2参照)が備えられている。
【0023】
垂直多関節ロボット10の先端部には、ハンド17が取り付けられており、ハンド17は、ハンド17内のサーボモータにより駆動される。ハンド17は、第1のワーク50を把持する機能を備えている。
【0024】
ステージ30は、平板状の部材であり、第2のワーク51を支持する支持台として機能する。ステージ30は、移動機構としてのXYZロボット40のZバー43に取り付けられている。
【0025】
XYZロボット40は、Xバー41、Yバー42、およびZバー43を備えており、Xバー41、Yバー42、およびZバー43は、それぞれサーボモータ93,94,95(
図2参照)によって、X,Y,Z方向に自在に移動可能となっている。XYZロボット40の各サーボモータ93,94,95(
図2参照)近傍には、各サーボモータの回転量等を検出するためのエンコーダ93a,94a,95a(
図2参照)が備えられている。
【0026】
カメラ20は、ステージ30の上方における任意の位置に取り付けられ、ステージ30上の第2のワーク51を撮影可能となっている。
【0027】
第1のワーク50は、例えば、電子部品であり、プリント基板等に挿入するための端子を有している。
【0028】
第2のワーク51は、例えば、プリント基板であり、第1のワーク50の端子が挿入される部品52が取り付けられている。
【0029】
図2は、制御システム1の機能ブロック図である。
図2に示すように、制御システム1は、中央制御装置60と、ロボットアンプ70と、ハンドドライバ80と、サーボモータドライバ90,91,92と、画像処理装置100とを備えている。
【0030】
中央制御装置60は、一例として、PLC(Programmable Logic Controller)であり、垂直多関節ロボット10の動作を制御するロボット制御プログラムと、垂直多関節ロボット10に取り付けられたハンド17の動作およびXYZロボット40の動作を制御するシーケンス制御プログラムとを実行し、制御信号を出力する。
【0031】
中央制御装置60は、垂直多関節ロボット10のエンコーダ10a、XYZロボット40のサーボモータ93,94,95のエンコーダ93a,94a,95aにより計測した垂直多関節ロボット10およびステージ30の位置に基づいて、XYZロボット40によりステージ30を移動させ、第1のワーク50の第2のワーク51に対する相対的な位置決めを調整する位置決め調整部61の機能を有する。
【0032】
ロボットアンプ70は、中央制御装置60からの制御信号に基づいて、垂直多関節ロボット10のサーボモータを駆動する。また、垂直多関節ロボット10のエンコーダ10aのカウンタ値を中央制御装置60に送信する。
【0033】
ハンドドライバ80は、中央制御装置60からの制御信号に基づいて、ハンド17を駆動する。
【0034】
サーボモータドライバ90,91,92は、中央制御装置60からの制御信号に基づいて、XYZロボット40のサーボモータ93,94,95を駆動する。また、サーボモータドライバ90,91,92は、エンコーダ93a,94a,95aのカウンタ値を中央制御装置60に送信する。
【0035】
画像処理装置100は、カメラ20と接続されている。カメラ20は、ステージ30上の第2のワーク51を撮影し、画像処理装置100は、撮影された画像を中央制御装置60に送信する。
【0036】
中央制御装置60は、産業用ネットワークであるEtherCAT(登録商標)により、ロボットアンプ70、ハンドドライバ80、サーボモータドライバ90,91,92、および画像処理装置100と接続されている。
【0037】
中央制御装置60は、例えば1msの制御周期でロボットアンプ70、ハンドドライバ80、サーボモータドライバ90,91,92に制御信号を送信し、1msの制御周期でエンコーダ10a,93a,94a,95aからの信号を受信している。つまり、垂直多関節ロボット10、ハンド17、およびXYZロボット40は、1msの周期で同期して動作している。なお、中央制御装置60は、画像処理装置100からの信号を所望のタイミングで受信することができる。
【0038】
(全体処理の流れ)
次に、本実施形態の制御システム1における全体処理の流れを
図3から
図7を参照しつつ説明する。
図3は、制御システム1における全体処理の流れを示すフローチャートである。
図4から
図7は、制御システム1における全体処理の流れを説明するための図である。
【0039】
まず、中央制御装置60は、カメラ20を用いてステージ30上における第2のワーク51の画像を撮影し、画像処理装置100からこの画像を受信して、第2のワーク51のステージ30上の位置を計算する(S10)。
【0040】
第2のワーク51のステージ30上の位置を画像から計算する方法としては、例えば、
図4に示すように、第2のワーク51上にマーカ53,54を設け、マーカ53,54をカメラ20により撮影する方法が挙げられる。
【0041】
次に、中央制御装置60は、第1のワーク50を第2のワーク51に挿入する軌道を計算する(S20)。
図5に軌道Sの一例を示す。
【0042】
ステップS30からステップS75までは、制御ループとなり、第1のワーク50と第2のワーク51の組み立てが完了したら、この制御ループを終了する。
【0043】
まず、中央制御装置60は、
図6に示すように、第1のワーク50を周期毎の目標位置へ垂直多関節ロボット10を用いて移動させる(S40)。
【0044】
次に、中央制御装置60は、垂直多関節ロボット10、およびXYZロボット40の各軸のエンコーダ情報を取得する(S50)。
【0045】
中央制御装置60は、垂直多関節ロボット10のエンコーダ値から、手先の位置を計算し、第1のワーク50の実際の位置を計算する(S60)。
【0046】
中央制御装置60は、垂直多関節ロボット10のエンコーダ値から、垂直多関節ロボット10の各リンクにかかるトルクを計算し、垂直多関節ロボット10のたわみ量を計算する(S70)。
【0047】
中央制御装置60は、垂直多関節ロボット10のたわみによる第1のワーク50の実際の位置を計算する(S71)。
【0048】
中央制御装置60は、最終的な第1のワーク50の実際の位置を計算する(S72)。
【0049】
中央制御装置60は、第1のワーク50の目標位置と実際の位置とに誤差がないかどうかを判断する(S73)。
【0050】
中央制御装置60は、第1のワーク50の目標位置と実際の位置とに誤差がある場合には(S73:NO)、XYZテーブル40を誤差分移動し、修正する(S74)。一方、中央制御装置60は、第1のワーク50の目標位置と実際の位置とに誤差がない場合には(S73:YES)、制御ループが終了するまで、ステップと40からステップS73までの処理を繰り返す。
【0051】
そして、
図7に示すように、第1のワーク50が第2のワーク51に挿入され、組み付けが完了すると、制御ループが終了する。
【0052】
(処理の詳細)
次に、
図8を参照しつつ、制御システム1の処理の詳細について説明する。
図8は、制御システム1の処理の詳細を示すフローチャートである。
【0053】
まず、中央制御装置60は、任意の位置に固定されたカメラ20で第2のワーク51のマーカ53,54を撮影し、画像処理装置100から撮影画像を受信して、ステージ30上の第2のワーク51の初期位置として時刻0における現在位置PW2(0)を計算する(S100)。ここで、第2のワーク51の時刻tにおける現在位置はPW2(t)で表される。
【0054】
次に、中央制御装置60は、第1のワーク50の初期位置として時刻0における現在位置PW1(0)と、計算した第2のワーク51の初期位置として時刻0における現在位置PW2(0)を用いて第1のワーク50を第2のワーク51に挿入する軌道を計算する(S110)。ここで、第1のワーク50の時刻tにおける現在位置はPW1(t)で表される。
【0055】
中央制御装置60は、垂直多関節ロボット10の時刻0における初期位置目標Rd(0)を、垂直多関節ロボット10の時刻0における現在位置R(0)とする(S120)。ここで、垂直多関節ロボット10の時刻tにおける初期位置目標はRd(t)で表され、垂直多関節ロボット10の時刻tにおける現在位置はR(t)で表される。
【0056】
ステップS130からステップS200までは、制御ループとなっており、第1のワーク50と第2のワーク51との組み立てが完了すると制御ループは終了する。
【0057】
制御ループが開始されると、中央制御装置60は、垂直多関節ロボット10の時刻tにおけるエンコーダ値ER(t)と、XYZロボット40の時刻tにおけるエンコーダ値ES(t)とを取得する。そして、中央制御装置60は、これらのエンコーダ値ER(t),ES(t)に基づいて、垂直多関節ロボット10の時刻tにおける現在位置R(t)と、XYZロボット40の時刻tにおける現在位置S(t)とを計算する(S140)。
【0058】
次に、中央制御装置60は、垂直多関節ロボット10の時刻tにおける現在位置R(t)に基づいて、第1のワーク50の時刻tにおける現在位置PW1(t)を計算する(S150)。
【0059】
中央制御装置60は、垂直多関節ロボット10の振動に起因する第1のワーク50の補正量σV(t)を以下のように時刻tにおける第1のワーク50の目標位置PdW1(t)と、第1のワーク50の時刻tにおける現在位置PW1(t)とから計算する(S160)。
【0060】
σV(t)=Pdw1(t)-PW1(t)
【0061】
中央制御装置60は、垂直多関節ロボット10の関節の現在角度より各関節のトルクτ(t)を以下のように計算する(S170)。
【0062】
【0063】
中央制御装置60は、計算した各関節のトルクτ(t)から各リンクのたわみ量δ(t)を計算する(S180)。
【0064】
中央制御装置60は、各リンクのたわみ量δ(t)に起因する第1のワーク50の補正量σf(t)を計算する(S190)。
【0065】
次に、中央制御装置60は、XYZロボット40の次の目標位置、つまり、時刻t+1における目標位置Sd(t+1)を、XYZロボット40の時刻tにおける現在位置S(t)と、振動に起因する第1のワーク50の補正量σV(t)と、たわみ量δ(t)に起因する第1のワーク50の補正量σf(t)とに基づいて計算する(S200)。つまり、XYZロボット40の次の目標位置である時刻t+1における目標位置Sd(t+1)は以下のようになる。
【0066】
Sd(t+1)=S(t)+σV(t)+σf(t)
【0067】
中央制御装置60は、上述のようにして計算した第1のワーク50を第2のワーク51に挿入する軌道から、第1のワーク50の次の目標位置、つまり時刻t+1における目標位置PdW1(t+1)を求め、この第1のワーク50の時刻t+1における目標位置PdW1(t+1)から、垂直多関節ロボット10の次の目標位置、つまり時刻t+1における目標位置Rd(t+1)を計算する(S210)。
【0068】
中央制御装置60は、垂直多関節ロボット10、およびXYZロボット40を、それぞれの次の目標位置、つまり時刻t+1における目標位置Rd(t+1),Sd(t+1)に移動させる(S220)。
【0069】
中央制御装置60は、時刻tが次の周期である時刻t+1になると(S230)、第1のワーク50と第2のワーク51との組み立てが完了するまで、ステップS130からステップS240までの制御ループを繰り返す。
【0070】
そして、中央制御装置60は、第1のワーク50と第2のワーク51との組み立てが完了すると、制御ループを終了し、処理を終了する。
【0071】
以上のように、本実施形態の制御システム1は、垂直多関節ロボット10およびXYZロボット40は、中央制御装置60と産業用ネットワークであるEtherCATにより通信可能に接続されて制御され、高速で動くことになる。このように高速で動いた場合には、振動等により垂直多関節ロボット10の位置決めにずれが生じる。また、垂直多関節ロボット10には、自重や手先の把持物体の重さにより、リンクにたわみが発生し、手先の位置決めに誤差が生じる。
【0072】
しかしながら、中央制御装置60の位置決め調整部61は、第2のワーク51に第1のワーク50を挿入するために、第1のワーク50の軌道計算を行い、この軌道計算に基づいて、制御周期ごとの垂直多関節ロボット10の目標位置と、振動やたわみに起因する現在位置との差を求める。そして、位置決め調整部61は、この差を修正するように、XYZロボット40の制御周期ごとの次の目標位置を設定する。このようにして、垂直多関節ロボット10の位置決めの調整を行っている。
【0073】
XYZロボット40は、高速で動作させても高精度で動作可能なため、以上のような位置決めの調整が可能となっている。
【0074】
したがって、本実施形態によれば、中央制御装置60により、垂直多関節ロボット10の位置決め誤差を、XYZロボット40で補償するように、両者を同期させて制御することで、高速かつ高精度の電子部品等の組み立て作業を行うことができる。
【0075】
また、垂直多関節ロボット10の位置決め誤差の補償を、垂直多関節ロボット10の動作中に動的に行うため、静的な補償しかしていなかった従来の方法に比べて、高精度な位置決め誤差の補償が可能である。
【0076】
(変形例)
上述した実施形態においては、ステージ30およびXYZロボット40を用いた態様について説明したが、ステージ30およびXYZロボット40の代わりに、UVWステージと、Z軸駆動機構を用いてもよい。
【0077】
上述した実施形態においては、垂直多関節ロボット10の位置、およびステージ30の位置を計測する計測部として、エンコーダ10a,93a,94a,95aを用いた態様について説明した。しかし、本発明は、このような態様に限定される訳ではなく、計測部としてカメラを用いることも可能である。
【0078】
上述した実施形態においては、一例として、電子部品の組み立てを行う場合の制御について説明した。しかし、本発明は、このような態様に限定される訳ではなく、あらゆる部品の組み立て作業全般に適用可能である。
【0079】
以上の実施形態は例示であり、この発明の範囲から離れることなく様々な変形が可能である。上述した複数の実施の形態は、それぞれ単独で成立し得るものであるが、実施の形態同士の組みあわせも可能である。また、異なる実施の形態の中の種々の特徴も、それぞれ単独で成立し得るものであるが、異なる実施の形態の中の特徴同士の組みあわせも可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 制御システム
10 垂直多関節ロボット
17 ハンド
20 カメラ
30 ステージ
40 XYZロボット
50 第1のワーク
51 第2のワーク
60 中央制御装置
100 画像処理装置