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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】重荷重用空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/18 20060101AFI20220830BHJP
   B60C 9/22 20060101ALI20220830BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
B60C9/18 N
B60C9/22 C
B60C11/03 100C
B60C9/22 D
B60C9/18 G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020154094
(22)【出願日】2020-09-14
(65)【公開番号】P2022047999
(43)【公開日】2022-03-25
【審査請求日】2022-02-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木谷 尚史
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/042256(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/208214(WO,A1)
【文献】特開2005-350023(JP,A)
【文献】特表2001-512390(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0334247(US,A1)
【文献】特開2005-254993(JP,A)
【文献】国際公開第2014/095099(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/053071(WO,A1)
【文献】特開2007-168554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
65%以下の偏平比の呼びを有し、
路面と接地するトレッドと、径方向において前記トレッドの内側に位置する補強層と、
を備え、
前記トレッドに少なくとも3本の周方向溝を刻むことで、軸方向に並列した少なくとも4本の陸部が構成され、前記少なくとも3本の周方向溝のうち軸方向において外側に位置する周方向溝がショルダー周方向溝であり、軸方向において前記ショルダー周方向溝の外側に位置する陸部がショルダー陸部であり、
前記補強層が、並列した多数のベルトコードを含むベルトと、螺旋状に巻かれたバンドコードを含むバンドとを備え、
前記ベルトが径方向に並ぶ複数のベルトプライを備え、
前記バンドが、赤道面を挟んで相対する両端を有するフルバンドと、径方向において前記フルバンドの端の外側に位置する一対のエッジバンドとを備え、
前記エッジバンドの内端が前記フルバンドの端の軸方向内側に位置し、
複数の前記ベルトプライが、第一ベルトプライと、前記第一ベルトプライの径方向外側に位置する第二ベルトプライと、前記第二ベルトプライの径方向外側に位置する第三ベルトプライとを備え、前記第二ベルトプライが最も広い幅を有し、
前記第一ベルトプライ、前記第二ベルトプライ及び前記第三ベルトプライが前記フルバンドの幅よりも広い幅を有し、
前記フルバンドの径方向内側に前記第一ベルトプライ及び前記第二ベルトプライが位置し、前記第二ベルトプライと前記第三ベルトプライとの間に前記フルバンドが位置し、
前記エッジバンドが径方向において前記第三ベルトプライを介して前記フルバンドの端と重複し、
前記エッジバンドの外端が前記第三ベルトプライの端の軸方向内側に位置し、
前記エッジバンドの外端が前記フルバンドの端の軸方向外側に位置する、又は、前記エッジバンドの外端位置が軸方向において前記フルバンドの端位置と一致し、
軸方向において、前記フルバンドの端が前記ショルダー周方向溝の外側に位置する、
重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記ショルダー周方向溝から前記フルバンドの端までの軸方向距離の、前記ショルダー陸部の軸方向幅に対する比率が10%以上50%以下である、
請求項1に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記フルバンドの端から前記エッジバンドの内端までの軸方向距離が10mm以上である、
請求項1又は2に記載の重荷重用空気入りタイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
重荷重用空気入りタイヤ(以下、タイヤ)のトレッドには、排水性の観点から、少なくとも3本の周方向溝が刻まれる。トレッドに刻まれる周方向溝のうち、軸方向において外側に位置する周方向溝がショルダー周方向溝である。
【0003】
トレッドとカーカスとの間には、ベルトやバンドが設けられる。ベルトは、径方向に並ぶ複数のベルトプライで構成される。それぞれのベルトプライは、並列した多数のベルトコードを含む。ベルトコードには通常、スチールコードが用いられる。バンドは、螺旋状に巻かれたバンドコードを含む。バンドコードには、ナイロン繊維等の有機繊維からなるコードや、スチールコードが用いられる。ベルト又はバンドの構成を調整することにより、トレッド部分の剛性がコントロールされる(例えば、下記の特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-105084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
走行状態にあるタイヤでは、変形と復元とが繰り返される。これにより、タイヤの形状が変化する。接地形状が変化するので、耐偏摩耗性の低下が懸念される。
【0006】
タイヤの走行状態において、トレッド端部分はアクティブに動く。周方向溝が刻まれている部分の剛性は、そうでない部分の剛性よりも低い。偏平比が65%以下である、低偏平なタイヤには、幅広のトレッド面を有するタイヤがある。このタイヤでは、高偏平なタイヤに比べて、ショルダー周方向溝が軸方向において外側に位置する。このタイヤでは、ショルダー周方向溝付近における形状変化が大きい。
【0007】
形状変化を抑えるために、螺旋状に巻かれたバンドコードを含むフルバンドの採用が検討される。低偏平なタイヤでは、走行時の形状変化が大きくなる傾向にあり、フルバンドだけでは形状変化を十分に抑制できない恐れがある。
【0008】
フルバンドに含まれるバンドコードは実質的に周方向に延びる。走行状態にあるタイヤのバンドコードにはこのバンドコードを引っ張る方向に力が作用する。
【0009】
タイヤは路面と接地すると撓む。これにより、バンドコードに作用する力が低下するので、バンドコードの張力は低下する。路面から離れタイヤが復元すると、バンドコードに作用する力が高まり、バンドコードの張力は高まる。走行状態にあるタイヤのバンドコードでは、張力の変動が繰り返される。張力の変動の程度によっては、バンドコードに破断が生じることが懸念される。この張力の変動はフルバンドの端において大きい。前述したように、タイヤの走行状態において、トレッド端部分はアクティブに動く。フルバンドの端を軸方向において外側に配置するほど、このフルバンドにおいてバンドコードの破断が生じやすい。
【0010】
バンドコードが破断すると、拘束力が低下する。この場合、接地形状が変化し、耐偏摩耗性や操縦安定性が低下する恐れがある。
【0011】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、走行による形状変化を抑え、耐偏摩耗性の向上を達成できる、重荷重用空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様に係る重荷重用空気入りタイヤは、65%以下の偏平比の呼びを有する。この重荷重用空気入りタイヤは、路面と接地するトレッドと、径方向において前記トレッドの内側に位置する補強層とを備える。前記トレッドに少なくとも3本の周方向溝を刻むことで、軸方向に並列した少なくとも4本の陸部が構成され、前記少なくとも3本の周方向溝のうち軸方向において外側に位置する周方向溝がショルダー周方向溝であり、軸方向において前記ショルダー周方向溝の外側に位置する陸部がショルダー陸部である。前記補強層は、並列した多数のベルトコードを含むベルトと、螺旋状に巻かれたバンドコードを含むバンドとを備える。前記ベルトは径方向に並ぶ複数のベルトプライを備える。前記バンドは、赤道面を挟んで相対する両端を有するフルバンドと、径方向において前記フルバンドの端の外側に位置する一対のエッジバンドとを備える。軸方向において、前記フルバンドの端は前記ショルダー周方向溝の外側に位置する。
【0013】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記ショルダー周方向溝から前記フルバンドの端までの軸方向距離の、前記ショルダー陸部の軸方向幅に対する比率は10%以上50%以下である。
【0014】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記フルバンドの端から前記エッジバンドの内端までの軸方向距離は10mm以上である。
【0015】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、軸方向において、前記フルバンドの端は前記ベルトの端の内側に位置する。
【0016】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記複数のベルトプライのうち、少なくとも一枚のベルトプライは、径方向において、前記フルバンドの内側に位置する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、走行による形状変化を抑え、耐偏摩耗性の向上を達成できる、重荷重用空気入りタイヤが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る重荷重用空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
図2図2は、補強層の構成を説明する概略図である。
図3図3は、図1のタイヤの一部が示された拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0020】
本開示においては、タイヤを正規リムに組み込み、タイヤの内圧が正規内圧に調整され、このタイヤに荷重がかけられていない状態は、正規状態と称される。本発明では、特に言及がない限り、タイヤ各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
【0021】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0022】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0023】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る重荷重用空気入りタイヤ2(以下、単に「タイヤ2」とも称する。)の一部を示す。このタイヤ2は、トラック、バス等の車両に装着される。このタイヤ2の偏平比の呼びは65%以下である。言い換えれば、このタイヤ2は、65%以下の偏平比の呼びを有する。このタイヤ2は、低偏平タイヤである。
【0025】
本開示において、「偏平比の呼び」及び「断面幅の呼び」は、JIS D4202「自動車用タイヤ-呼び方及び諸元」に規定された「タイヤの呼び」に含まれる「偏平比の呼び」及び「断面幅の呼び」である。
【0026】
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面の一部を示す。図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。
【0027】
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のビード8、一対のチェーファー10、カーカス12、一対のクッション層14、インナーライナー16、一対のスチールフィラー18、及び補強層20を備える。
【0028】
トレッド4は、その外面において路面と接地する。この外面は、トレッド面22である。図1において符号PCは、トレッド面22と赤道面との交点である。この交点PCはタイヤ2の赤道である。
【0029】
図1において、符号PEはトレッド面22の端である。両矢印WTは、トレッド面22の幅である。このトレッド面22幅WTは、一方のトレッド面22の端PEから他方のトレッド面22の端PEまでの軸方向距離により表される。なお、タイヤ2において、外観上、トレッド面22の端PEが識別不能な場合には、正規状態のタイヤ2に正規荷重を負荷して、キャンバー角を0゜としタイヤ2を平面に接触させて得られる接地面の軸方向外側端がトレッド面22の端PEとして定められる。
【0030】
トレッド4は、ベース部24と、このベース部24の径方向外側に位置するキャップ部26とを備える。ベース部24は、低発熱性の架橋ゴムからなる。キャップ部26は、耐摩耗性及びグリップ性能が考慮された架橋ゴムからなる。図1に示されるように、ベース部24は補強層20全体を覆う。キャップ部26は、ベース部24全体を覆う。
【0031】
このタイヤ2では、少なくとも3本の周方向溝28がトレッド4に刻まれる。図1に示されたタイヤ2のトレッド4には、4本の周方向溝28が刻まれる。これら周方向溝28は、軸方向に並列され、周方向に連続して延びる。
【0032】
トレッド4に刻まれた4本の周方向溝28のうち、軸方向において外側に位置する周方向溝28がショルダー周方向溝28sである。軸方向において、このショルダー周方向溝28sの内側に位置する周方向溝28がミドル周方向溝28mである。このタイヤ2では、4本の周方向溝28は、一対のミドル周方向溝28mと一対のショルダー周方向溝28sとで構成される。
【0033】
このタイヤ2では、排水性及びトラクション性能への貢献の観点から、ミドル周方向溝28mの軸方向幅はトレッド面22幅WTの2~10%程度が好ましい。ミドル周方向溝28mの深さは、13~25mmが好ましい。ショルダー周方向溝28sの軸方向幅はトレッド面22幅TWの1~7%程度が好ましい。ショルダー周方向溝28sの深さは、13~25mmが好ましい。
【0034】
前述したように、トレッド4には少なくとも3本の周方向溝28が刻まれる。これにより、このトレッド4には少なくとも4本の陸部30が構成される。図1に示されたタイヤ2のトレッド4には4本の周方向溝28が刻まれ5本の陸部30が構成されている。これら陸部30は、軸方向に並列され、周方向に連続して延びる。
【0035】
トレッド4に構成された5本の陸部30のうち、軸方向において外側に位置する陸部30がショルダー陸部30sである。ショルダー陸部30sは軸方向においてショルダー周方向溝28sの外側に位置し、トレッド面22の端PEを含む。軸方向において、ショルダー陸部30sの内側に位置する陸部30がミドル陸部30mである。ミドル陸部30mとショルダー陸部30sとの間がショルダー周方向溝28sである。軸方向において、ミドル陸部30mの内側に位置する陸部30がセンター陸部30cである。センター陸部30cとミドル陸部30mとの間がミドル周方向溝28mである。このタイヤ2では、5本の陸部30は、センター陸部30cと、一対のミドル陸部30mと、一対のショルダー陸部30sとで構成される。
【0036】
このタイヤ2では、センター陸部30cの軸方向幅はトレッド面22幅TWの10%以上18%以下である。ミドル陸部30mの軸方向幅はトレッド面22幅TWの10%以上18%以下である。ショルダー陸部30sの軸方向幅はトレッド面22幅TWの15%以上25%以下である。陸部30の軸方向幅は、トレッド面22の一部をなす陸部30の頂面の軸方向幅により表される。
【0037】
このタイヤ2では、トレッド4に構成される陸部30のうち、軸方向において中央に位置する陸部30、すなわちセンター陸部30cが赤道面上に位置する。トレッド4に刻まれる周方向溝28が軸方向において中央に位置する周方向溝28を含み、この周方向溝28が赤道面上に位置するように、トレッド4が構成されてもよい。
【0038】
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端に連なる。サイドウォール6は、トレッド4の端から径方向内向きに延びる。サイドウォール6は、架橋ゴムからなる。
【0039】
それぞれのビード8は、サイドウォール6よりも径方向内側に位置する。ビード8は、コア32と、エイペックス34とを備える。
【0040】
コア32は、周方向に延びる。コア32は、巻き回されたスチール製のワイヤを含む。コア32は略六角形の断面形状を有する。
【0041】
エイペックス34は、コア32の径方向外側に位置する。エイペックス34は、内側エイペックス34uと外側エイペックス34sとを備える。内側エイペックス34uはコア32から径方向外向きに延びる。外側エイペックス34sは内側エイペックス34uよりも径方向外側に位置する。内側エイペックス34uは硬質な架橋ゴムからなる。外側エイペックス34sは内側エイペックス34uよりも軟質な架橋ゴムからなる。外側エイペックス34sは内側エイペックス34uに比して軟質である。
【0042】
それぞれのチェーファー10は、ビード8の軸方向外側に位置する。チェーファー10は、サイドウォール6よりも径方向内側に位置する。チェーファー10は、リム(図示されず)と接触する。チェーファー10は、耐摩耗性が考慮された架橋ゴムからなる。
【0043】
カーカス12は、トレッド4、サイドウォール6、及びチェーファー10の内側に位置する。カーカス12は、少なくとも1枚のカーカスプライ36を備える。このタイヤ2のカーカス12は、1枚のカーカスプライ36からなる。カーカスプライ36は、それぞれのコア32の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される。
【0044】
図示されないが、カーカスプライ36は並列された多数のカーカスコードを含む。これらカーカスコードは、トッピングゴムで覆われる。それぞれのカーカスコードは、赤道面と交差する。このタイヤ2では、カーカスコードが赤道面に対してなす角度は70°以上90°以下である。このカーカス12はラジアル構造を有する。このタイヤ2では、カーカスコードとしてスチールコードが用いられる。
【0045】
それぞれのクッション層14は、補強層20の端において、この補強層20とカーカス12との間に位置する。クッション層14は、軟質な架橋ゴムからなる。
【0046】
インナーライナー16は、カーカス12の内側に位置する。インナーライナー16は、タイヤ2の内面を構成する。インナーライナー16は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー16は、タイヤ2の内圧を保持する。
【0047】
それぞれのスチールフィラー18は、ビード8の部分に位置する。スチールフィラー18は、カーカスプライ36に沿って、コア32の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される。
【0048】
図示されないが、スチールフィラー18は並列した多数のフィラーコードを含む。スチールフィラー18においてフィラーコードはトッピングゴムで覆われる。このタイヤ2では、フィラーコードとしてスチールコードが用いられる。
【0049】
補強層20は径方向においてトレッド4の内側に位置する。補強層20は、カーカス12とトレッド4との間に位置する。補強層20は、ベルト38とバンド40とを備える。
【0050】
図2には、補強層20の構成が示される。図2において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の周方向である。紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の径方向である。紙面の表側が径方向外側であり、裏側が径方向内側である。
【0051】
ベルト38は、径方向に並ぶ複数のベルトプライ42を備える。各ベルトプライ42は、両端が赤道面を挟んで相対するように配置される。このタイヤ2のベルト38は、4枚のベルトプライ42を備える。4枚のベルトプライ42は、径方向において内側に位置する第一ベルトプライ42A、第一ベルトプライ42Aの外側に位置する第二ベルトプライ42B、第二ベルトプライ42Bの外側に位置する第三ベルトプライ42C、そして第三ベルトプライ42Cの外側に位置する第四ベルトプライ42Dからなる。
【0052】
このタイヤ2では、第二ベルトプライ42Bが最も広い軸方向幅を有し、第四ベルトプライ42Dが最も狭い軸方向幅を有する。第一ベルトプライ42Aと第三ベルトプライ42Cとは同等の軸方向幅を有するか、第一ベルトプライ42Aの軸方向幅が第三ベルトプライ42Cの軸方向幅よりも広い。
【0053】
このタイヤ2のベルト38の端38eは、ベルト38を構成する複数のベルトプライ42のうち、最も広い軸方向幅を有するベルトプライ42の端で表される。このタイヤ2では、前述したように、ベルト38を構成する4枚のベルトプライ42のうち、第二ベルトプライ42Bが最も広い軸方向幅を有する。このタイヤ2のベルト38の端38eは、最も広い軸方向幅を有する第二ベルトプライ42Bの端42Beで表される。このベルト38の端38eは補強層20の端20eでもある。
【0054】
図1に示されるように、第一ベルトプライ42Aの端42Aeは、軸方向において、ショルダー周方向溝28sの外側に位置する。第二ベルトプライ42Bの端42Beは、軸方向において、ショルダー周方向溝28sの外側に位置する。第三ベルトプライ42Cの端42Ceは、軸方向において、ショルダー周方向溝28sの外側に位置する。第四ベルトプライ42Dの端42Deは、軸方向において、ショルダー周方向溝28sの外側に位置する。
【0055】
図1において、両矢印W1は第一ベルトプライ42Aの軸方向幅である。両矢印W2は、第二ベルトプライ42Bの軸方向幅である。両矢印W3は、第三ベルトプライ42Cの軸方向幅である。両矢印W4は、第四ベルトプライ42Dの軸方向幅である。各ベルトプライ42の軸方向幅は、ベルトプライ42の一方の端42eから他方の端42eまでの軸方向距離により表される。
【0056】
このタイヤ2では、トレッド4の部分の剛性確保の観点から、トレッド面22幅TWに対する第一ベルトプライ42Aの軸方向幅W1の比(W1/TW)は0.80以上が好ましく、0.90以下が好ましい。トレッド面22幅TWに対する第二ベルトプライ42Bの軸方向幅W2の比(W2/TW)は0.85以上が好ましく、0.95以下が好ましい。トレッド面22幅TWに対する第三ベルトプライ42Cの軸方向幅W3の比(W3/TW)は0.80以上が好ましく、0.90以下が好ましい。トレッド面22幅TWに対する第四ベルトプライ42Dの軸方向幅W4の比(W4/TW)は0.55以上が好ましく、0.65以下が好ましい。
【0057】
図2に示されるように、このタイヤ2では、ベルト38を構成する各ベルトプライ42は並列した多数のベルトコード44を含む。図2では、説明の便宜のためベルトコード44は実線で表されるが、ベルトコード44はトッピングゴム46で覆われる。このタイヤ2のベルトコード44はスチールコードである。
【0058】
このタイヤ2では、各ベルトプライ42におけるベルトコード44の密度は、15エンズ/5cm以上30エンズ/5cm以下である。このベルトコード44の密度は、ベルトコード44の延在方向に対して垂直な面に沿った、ベルトプライ42の断面において、このベルトプライ42の5cm幅あたりに含まれるベルトコード44の断面数により表される。
【0059】
各ベルトプライ42においてベルトコード44は、周方向に対して傾斜する。第一ベルトプライ42Aに含まれるベルトコード44の周方向に対する傾斜の向き(以下、第一ベルトプライ42Aの傾斜方向)は、第二ベルトプライ42Bに含まれるベルトコード44の周方向に対する傾斜の向き(以下、第二ベルトプライ42Bの傾斜方向)と同じである。第二ベルトプライ42Bの傾斜方向は、第三ベルトプライ42Cに含まれるベルトコード44の周方向に対する傾斜の向き(以下、第三ベルトプライ42Cの傾斜方向)と逆である。第三ベルトプライ42Cの傾斜方向は、第四ベルトプライ42Dに含まれるベルトコード44の周方向に対する傾斜の向き(以下、第四ベルトプライ42Dの傾斜方向)と同じである。なお、第一ベルトプライ42Aの傾斜方向が第二ベルトプライ42Bの傾斜方向と逆であってもよく、第四ベルトプライ42Dの傾斜方向が第三ベルトプライ42Cの傾斜方向と逆であってもよい。安定な接地形状の確保の観点から、第二ベルトプライ42Bの傾斜方向は、第三ベルトプライ42Cの傾斜方向と逆であるのが好ましい。
【0060】
図2において、角度θ1は、第一ベルトプライ42Aに含まれるベルトコード44が赤道面に対してなす傾斜角度(以下、第一傾斜角度θ1)である。角度θ2は、第二ベルトプライ42Bに含まれるベルトコード44が赤道面に対してなす傾斜角度(以下、第二傾斜角度θ2)である。角度θ3は、第三ベルトプライ42Cに含まれるベルトコード44が赤道面に対してなす傾斜角度(以下、第三傾斜角度θ3)である。角度θ4は、第四ベルトプライ42Dに含まれるベルトコード44が赤道面に対してなす傾斜角度(以下、第四傾斜角度θ4)である。
【0061】
このタイヤ2では、第一傾斜角度θ1、第二傾斜角度θ2、第三傾斜角度θ3、及び第四傾斜角度θ4は、10°以上が好ましく、60°以下が好ましい。タイヤ2の動きが効果的に拘束され、安定な接地形状が確保される観点から、第一傾斜角度θ1は40°以上が好ましく、60°以下が好ましい。第二傾斜角度θ2は、10°以上が好ましく、20°以下が好ましい。第三傾斜角度θ3は、10°以上が好ましく、20°以下が好ましい。第四傾斜角度θ4は10°以上が好ましく、60°以下が好ましい。
【0062】
バンド40は、フルバンド48と、一対のエッジバンド50とを備える。図1に示されるように、フルバンド48は、赤道面を挟んで相対する両端48eを有する。一対のエッジバンド50は、赤道面を挟んで軸方向に離間して配置される。このタイヤ2では、左右のエッジバンド50の間にベルト38の一部をなす第四ベルトプライ42Dが位置する。
【0063】
このタイヤ2では、それぞれのエッジバンド50は、トレッド4とフルバンド48との間に位置する。エッジバンド50は、径方向において、フルバンド48の端48eの外側に位置する。軸方向において、エッジバンド50の内端50ueはフルバンド48の端48eの内側に位置する。エッジバンド50の外端50seは、軸方向において、フルバンド48の端48eの外側に位置する。エッジバンド50の外端50se位置が、軸方向においてフルバンド48の端48e位置と一致していてもよい。エッジバンド50は、径方向においてフルバンド48の端48eと重複する。
【0064】
図2に示されるように、バンド40を構成する、フルバンド48及び一対のエッジバンド50は螺旋状に巻かれたバンドコード52を含む。図2では、説明の便宜のためバンドコード52は実線で表されるが、バンドコード52はトッピングゴム54で覆われる。
【0065】
このタイヤ2では、バンドコード52はスチールコード、又は有機繊維からなるコード(以下、有機繊維コード)である。バンドコード52として有機繊維コードが用いられる場合、この有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、及びアラミド繊維が例示される。このタイヤ2では、フルバンド48のバンドコード52と、エッジバンド50のバンドコード52とに同じコードが用いられてもよく、異なるコードが用いられてもよい。タイヤ2の仕様に応じて、フルバンド48及びエッジバンド50に用いられるバンドコード52が決められる。
【0066】
前述したように、フルバンド48は螺旋状に巻かれたバンドコード52を含む。フルバンド48はジョイントレス構造を有する。フルバンド48において、バンドコード52が周方向に対してなす角度は、好ましくは5°以下、より好ましくは2°以下である。フルバンド48のバンドコード52は実質的に周方向に延びる。
【0067】
フルバンド48におけるバンドコード52の密度は、20エンズ/5cm以上35エンズ/5cm以下である。このバンドコード52の密度は、このバンドコード52の延在方向に対して垂直な面に沿った、フルバンド48の断面において、このフルバンド48の5cm幅あたりに含まれるバンドコード52の断面数により表される。
【0068】
前述したように、エッジバンド50は螺旋状に巻かれたバンドコード52を含む。エッジバンド50はジョイントレス構造を有する。エッジバンド50において、バンドコード52が周方向に対してなす角度は、好ましくは5°以下、より好ましくは2°以下である。エッジバンド50のバンドコード52は実質的に周方向に延びる。
【0069】
エッジバンド50におけるバンドコード52の密度は、20エンズ/5cm以上35エンズ/5cm以下である。このバンドコード52の密度は、このバンドコード52の延在方向に対して垂直な面に沿った、エッジバンド50の断面において、このエッジバンド50の5cm幅あたりに含まれるバンドコード52の断面数により表される。
【0070】
図3は、図1に示された、タイヤ2の断面の一部を示す。図3において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。図3の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
【0071】
このタイヤ2では、第二ベルトプライ42Bの端42Be、及び第三ベルトプライ42Cの端42Ceはそれぞれゴム層56で覆われる。ゴム層56で覆われた第二ベルトプライ42Bの端42Beと第三ベルトプライ42Cの端42Ceとの間には、さらに2枚のゴム層56が配置される。このタイヤ2では、第二ベルトプライ42Bの端42Beと第三ベルトプライ42Cの端42Ceとの間に、計4枚のゴム層56からなるエッジ部材58が構成される。エッジ部材58は架橋ゴムからなる。エッジ部材58は、第二ベルトプライ42Bの端42Beと第三ベルトプライ42Cの端42Ceとの間隔維持に貢献する。このタイヤ2では、走行による、第二ベルトプライ42Bの端42Beと第三ベルトプライ42Cの端42Ceとの位置関係の変化が抑えられる。エッジ部材58は、補強層20の一部である。このタイヤ2の補強層20は、ベルト38及びバンド40に加え、一対のエッジ部材58を備える。
【0072】
前述したように、フルバンド48は赤道面を挟んで相対する両端48eを有する。フルバンド48は、赤道面からそれぞれの端48eに向かって軸方向に延びる。そして、フルバンド48の端48eは、軸方向において、ショルダー周方向溝28sの外側に位置する。径方向において、ショルダー周方向溝28sの内側にフルバンド48が位置する。
【0073】
このタイヤ2は、低偏平であるにもかかわらず、ショルダー周方向溝28s付近の変形を、フルバンド48が効果的に抑える。タイヤ2の形状、例えば、カーカス12の輪郭(以下、ケースラインとも称される。)の変化が抑えられるので、接地形状の変化が抑えられる。
【0074】
このタイヤ2ではさらに、エッジバンド50が、径方向において、フルバンド48の端48eの外側に位置する。エッジバンド50はフルバンド48の端48eを拘束する。フルバンド48に含まれるバンドコード52の張力変動が抑えられるので、この張力変動によるバンドコード52の破断の発生が抑えられる。このタイヤ2のフルバンド48は、形状変化の抑制機能を安定に発揮できる。なお、エッジバンド50はフルバンド48に比して狭い。このため、エッジバンド50のバンドコード52にフルバンド48のような張力変動は生じにくい。エッジバンド50のバンドコード52に破断は生じにくい。
【0075】
このタイヤ2では、フルバンド48及びエッジバンド50が、走行によるタイヤ2の形状変化を抑制する。特に、ショルダー周方向溝28s付近における形状変化が効果的に抑えられる。このタイヤ2では、従来タイヤで懸念された偏摩耗の発生が抑えられる。このタイヤ2は、走行による形状変化を抑え、耐偏摩耗性の向上を達成できる。
【0076】
図3において、両矢印SFはショルダー周方向溝28s、詳細には、ショルダー周方向溝28sの外縁からフルバンド48の端48eまでの軸方向距離である。両矢印WSは、ショルダー陸部30sの軸方向幅である。この軸方向幅WSは、ショルダー陸部30sの頂面の内端(すなわち、ショルダー周方向溝28sの外縁)から、この頂面の外端(このタイヤ2では、トレッド面22の端PE)までの軸方向距離により表される。
【0077】
このタイヤ2では、ショルダー周方向溝28sからフルバンド48の端48eまでの軸方向距離SFの、ショルダー陸部30sの軸方向幅WSに対する比率(SF/WS)は50%以下が好ましい。これにより、走行状態においてアクティブに動くトレッド4端部分からフルバンド48の端48eが離れて配置されるので、バンドコード52における張力変動が抑えられる。このタイヤ2では、バンドコード52の破断の発生が抑えられる。このタイヤ2のフルバンド48は形状変化の抑制に貢献する。この観点から、この比率(SF/WS)は35%以下がより好ましく、25%以下がさらに好ましい。
【0078】
比率(SF/WS)が10%以上に設定されることにより、フルバンド48の端48eがショルダー周方向溝28s、具体的には、ショルダー周方向溝28sの底から適当な間隔をあけて配置される。このタイヤ2では、ショルダー周方向溝28sの底を起点とする損傷の発生が抑えられる。フルバンド48の幅が確保されるので、このフルバンド48がタイヤ2の形状変化の抑制に貢献する。この観点から、この比率(SF/WS)は15%以上がより好ましい。
【0079】
図3において、両矢印Weはフルバンド48の端48eからエッジバンド50の内端50ueまでの軸方向距離である。
【0080】
このタイヤ2では、フルバンド48の端48eからエッジバンド50の内端50ueまでの軸方向距離Weは10mm以上が好ましい。これにより、エッジバンド50がフルバンド48の端48eを効果的に拘束する。フルバンド48に含まれるバンドコード52の張力変動が抑えられるので、この張力変動によるバンドコード52の破断の発生が抑えられる。このタイヤ2のフルバンド48は、形状変化の抑制機能をより安定に発揮できる。この観点から、この軸方向距離Weは20mm以上が好ましい。
【0081】
このタイヤ2では、エッジバンド50の内端50ue位置は、ショルダー周方向溝28sの底を起点とする損傷の発生への関与が考慮され、適宜決められる。このため、この軸方向距離Weの好ましい上限は設定されない。ショルダー周方向溝28sの底を起点とする損傷の発生が効果的に抑えられる観点から、軸方向において、エッジバンド50の内端50ueは、ショルダー周方向溝28sの底よりも外側に位置するのが好ましく、ショルダー周方向溝28sよりもさらに外側に位置するのがより好ましい。
【0082】
このタイヤ2では、軸方向において、フルバンド48の端48eはベルト38の端38eの内側に位置する。ベルト38はフルバンド48よりも広い。このベルト38は、フルバンド48の端48eを拘束する。このベルト38は、フルバンド48に含まれるバンドコード52の張力変動の抑制に貢献する。張力変動によるバンドコード52の破断の発生が抑えられるので、フルバンド48は、形状変化の抑制機能を安定に発揮できる。この観点から、軸方向において、フルバンド48の端48eはベルト38の端38eの内側に位置するのが好ましい。
【0083】
タイヤ2のフルバンド48には、径方向において内側から外側に向かって広がるように力が作用する。この力によって、フルバンド48のバンドコード52には張力が発生する。このタイヤ2では、フルバンド48の径方向内側に、第二ベルトプライ42Bが位置する。
【0084】
このタイヤ2では、第二ベルトプライ42Bがフルバンド48に作用する力を抑制するので、このフルバンド48に含まれるバンドコード52の張力が適切に維持される。この第二ベルトプライ42Bは、バンドコード52の張力変動の抑制に貢献する。第二ベルトプライ42Bはフルバンド48よりも広いので、バンドコード52の張力変動が効果的に抑制される。このタイヤ2では、フルバンド48のバンドコード52に破断は生じにくい。フルバンド48は、形状変化の抑制機能を安定に発揮できる。この観点から、ベルト38を構成する複数のベルトプライ42のうち、少なくとも一枚のベルトプライ42が径方向においてフルバンド48の内側に位置するのが好ましい。このフルバンド48の内側に位置する少なくとも一枚のベルトプライ42は、フルバンド48の幅よりも広い幅を有するのがより好ましい。
【0085】
このタイヤ2では、径方向においてフルバンド48の内側に第一ベルトプライ42A及び第二ベルトプライ42Bが位置する。この第一ベルトプライ42A及び第二ベルトプライ42Bは、バンドコード52の張力変動の抑制に貢献する。第一ベルトプライ42A及び第二ベルトプライ42Bはフルバンド48よりも広いので、バンドコード52の張力変動がより効果的に抑制される。このタイヤ2では、フルバンド48のバンドコード52に破断は生じにくい。フルバンド48は、形状変化の抑制機能を安定に発揮できる。この観点から、ベルト38を構成する複数のベルトプライ42のうち、少なくとも二枚のベルトプライ42が径方向においてフルバンド48の内側に位置するのがより好ましい。このフルバンド48の内側に位置する少なくとも二枚のベルトプライ42は、フルバンド48の幅よりも広い幅を有するのがさらに好ましい。
【0086】
このタイヤ2では、径方向においてフルバンド48の内側に第二ベルトプライ42Bが位置し、このフルバンド48の外側に第三ベルトプライ42Cが位置する。このタイヤ2では、フルバンド48は第二ベルトプライ42Bと第三ベルトプライ42Cとの間に挟まれる。前述したように、第二ベルトプライ42Bはフルバンド48よりも広い。第三ベルトプライ42Cも、フルバンド48よりも広い。このタイヤ2のベルト38を構成する複数のベルトプライ42は、フルバンド48の幅よりも広い幅を有する2枚のベルトプライ42を含み、この広い幅を有する2枚のベルトプライ42でフルバンド48は挟まれる。このタイヤ2では、フルバンド48に含まれるバンドコード52の張力変動がより効果的に抑制されるので、このフルバンド48のバンドコード52に破断は生じにくい。このタイヤ2のフルバンド48は、形状変化の抑制機能を安定に発揮できる。この観点から、このタイヤ2では、ベルト38を構成する複数のベルトプライ42は、フルバンド48の幅よりも広い幅を有する2枚のベルトプライ42を含み、この広い幅を有する2枚のベルトプライ42でフルバンド48が挟まれるのが好ましい。
【0087】
このタイヤ2では、第一ベルトプライ42A、第二ベルトプライ42B及び第三ベルトプライ42Cはフルバンド48の幅よりも広い幅を有する。径方向において、第一ベルトプライ42A及び第二ベルトプライ42Bはフルバンド48の内側に位置し、第三ベルトプライ42Cはフルバンド48の外側に位置する。一対のエッジバンド50はそれぞれ、径方向において第三ベルトプライ42Cの外側に位置する。前述したように、エッジバンド50は、径方向において、フルバンド48の端48eの外側に位置する。エッジバンド50は、径方向において、第三ベルトプライ42Cを介して、フルバンド48の端48eと重複する。
【0088】
このタイヤ2では、フルバンド48が形状変化の抑制機能を安定に発揮でき、耐偏摩耗性の向上が達成される。この観点から、このタイヤ2では、ベルト38を構成する複数のベルトプライ42が、径方向において、内側に位置する第一ベルトプライ42Aと、この第一ベルトプライ42Aの外側に位置する第二ベルトプライ42Bと、この第二ベルトプライ42Bの外側に位置する第三ベルトプライ42Cとを備え、第一ベルトプライ42A、第二ベルトプライ42B及び第三ベルトプライ42Cがフルバンド48の幅よりも広い幅を有し、径方向において、第一ベルトプライ42A及び第二ベルトプライ42Bがフルバンド48の内側に位置し、第三ベルトプライ42Cがフルバンド48の外側に位置し、径方向において、フルバンド48の外側に位置するエッジバンド50が、第三ベルトプライ42Cを介してフルバンド48の端48eと重複するのが好ましい。
【0089】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、走行による形状変化を抑え、耐偏摩耗性の向上を達成できる、重荷重用空気入りタイヤ2が得られる。本発明は、65%以下の偏平比の呼びを有する、低偏平な重荷重用空気入りタイヤ2において、顕著な効果を奏する。
【実施例
【0090】
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0091】
[実施例1]
図1-3に示された基本構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた重荷重用空気入りタイヤ(タイヤサイズ=355/50R22.5)を得た。
【0092】
実施例1では、軸方向において、フルバンドの端はショルダー周方向溝の外側に配置された。このことが、表1の「フルバンド端」の欄に「Y]で表されている。フルバンドの端からエッジバンドの内端までの軸方向距離Weは25mmであった。ショルダー周方向溝からフルバンドの端までの軸方向距離SFの、ショルダー陸部の軸方向幅WSに対する比率(SF/WS)は15%であった。フルバンドの径方向内側には2枚のベルトプライが設けられた。このことが、表1の「ベルトプライ数」の欄に「2]で表されている。
【0093】
[比較例1]
軸方向においてショルダー周方向溝の内側にフルバンドの端を配置させるとともに、エッジバンドを設けなかった他は実施例1と同様にして、比較例1のタイヤを得た。軸方向においてフルバンドの端がショルダー周方向溝の内側に位置することが、表1の「フルバンド端」の欄に「N]で表されている。
【0094】
[実施例2-4]
距離We及び比率(SF/WS)を下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2-4のタイヤを得た。
【0095】
[実施例5-8]
フルバンドの径方向内側に位置するベルトプライの枚数、並びに、距離We及び比率(SF/WS)を下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例5-8のタイヤを得た。
【0096】
[プロファイル変化]
試作タイヤをリム(11.75×22.5)に組み込み、空気を充填しタイヤの内圧を正規内圧に調整した。このタイヤをドラム試験機において80km/hの速度で1000km走行させ、ショルダー周方向溝の内側におけるケースラインのプロファイルを得た。このケースラインのプロファイルを走行前のケースラインのプロファイルと対比させて、走行前後のプロファイルの変化を確認した。その結果が、下記の格付けにしたがった指数で下記の表1及び表2に表されている。数値が大きいほど、プロファイルの変化が抑えられていることを表す。この走行試験では、正規荷重がタイヤに付与された。
変化量 指数
0.0mm~0.5mm 100
0.6mm~1.0mm 95
1.1mm~1.5mm 90
1.6mm~2.0mm 85
2.1mm~2.5mm 80
【0097】
[耐偏摩耗性]
試作タイヤをリム(11.75×22.5)に組み込み,空気を充填しタイヤの内圧を正規内圧に調整した。このタイヤを試験車両(トラックターヘッド)のドライブ軸に装着した。荷物を積載したトレーラーをこの試験車両に牽引させて、一般道路でこの試験車両を走行させた。質量換算でタイヤの摩耗率が30%に達した時点で、試作タイヤのショルダー陸部の摩耗量とミドル陸部の摩耗量との差を算出した。その結果が、比較例1を100とした指数で下記の表1及び表2に表されている。数値が大きいほど、摩耗量の差は小さく、耐偏摩耗性に優れることを表す。
【0098】
[耐JLB破断性]
前述の耐偏摩耗性の評価を行ったタイヤを、シアログラフィ又はX線により検査し、内部損傷の有無を確認した。内部損傷が確認された場合は、タイヤを解体し、この内部損傷がフルバンドのバンドコードの破断であるかを確認した。その結果が、下記の格付けにしたがって下記の表1及び表2に表されている。
バンドコードの破断箇所がない場合・・・・・・・・A
バンドコードの破断箇所が1か所ある場合・・・・・B
バンドコードの破断箇所が2か所以上ある場合・・・C
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
表1及び表2に示されるように、実施例では、バンドコードの破断の発生が抑えられるとともに、走行による形状変化が抑えられ、耐偏摩耗性の向上が達成されている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0102】
以上説明された、走行による形状変化を抑え、耐偏摩耗性の向上を達成するための技術は、種々のタイヤに適用されうる。
【符号の説明】
【0103】
2・・・タイヤ
4・・・トレッド
20・・・補強層
20e・・・補強層20の端
22・・・トレッド面
28、28s、28m・・・周方向溝
30、30s、30m、30c・・・陸部
38・・・ベルト
40・・・バンド
40e・・・バンド40の端
42・・・ベルトプライ
44・・・ベルトコード
48・・・フルバンド
48e・・・フルバンド48の端
50・・・エッジバンド
50se・・・エッジバンド50の外端
50ue・・・エッジバンド50の内端
52・・・バンドコード
図1
図2
図3