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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】重荷重用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 15/06 20060101AFI20220830BHJP
   B60C 3/04 20060101ALI20220830BHJP
   B60C 9/18 20060101ALI20220830BHJP
   B60C 9/22 20060101ALI20220830BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
B60C15/06 C
B60C3/04 B
B60C9/18 K
B60C9/18 G
B60C9/22 C
B60C9/18 N
B60C11/00 F
B60C9/22 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021112529
(22)【出願日】2021-07-07
【審査請求日】2022-02-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】幸田 由莉子
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/042256(WO,A1)
【文献】特開2017-043281(JP,A)
【文献】特開2014-189178(JP,A)
【文献】特表2001-512390(JP,A)
【文献】特開2008-074250(JP,A)
【文献】特開2016-165934(JP,A)
【文献】特開2013-141943(JP,A)
【文献】国際公開第2017/208214(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/095099(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/053071(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
65%以下の偏平比の呼びを有し、
路面と接地するトレッドと、
前記トレッドの端に連なり、径方向において前記トレッドの内側に位置する一対のサイドウォールと、
径方向において前記サイドウォールの内側に位置し、リムと接触する一対のチェーファーと、
軸方向において前記チェーファーの内側に位置する一対のビードと、
径方向において前記トレッドの内側に位置し、螺旋状に巻かれたバンドコードを含むバンドと、
並列した多数のベルトコードを含むベルトと
を備え、
前記トレッドに少なくとも3本の周方向溝を刻むことで少なくとも4本の陸部が構成され、前記少なくとも3本の周方向溝のうち軸方向において外側に位置する周方向溝がショルダー周方向溝であり、軸方向において前記ショルダー周方向溝の外側に位置する陸部がショルダー陸部であり、
前記バンドが、赤道面を挟んで相対する両端を有するフルバンドと、径方向において前記フルバンドの端の外側に位置する一対のエッジバンドとを備え、
前記ベルトが3枚のベルトプライを備え、3枚の前記ベルトプライのうち、径方向において内側に位置するベルトプライが第一ベルトプライであり、前記第一ベルトプライの径方向外側に位置するベルトプライが第二ベルトプライであり、前記第二ベルトプライの径方向外側に位置するベルトプライが第三ベルトプライであり、
前記第二ベルトプライが最も広い軸方向幅を有し、
軸方向において、前記フルバンドの端が前記ショルダー周方向溝の外側に位置し、
軸方向において、前記エッジバンドの内端が前記フルバンドの端の内側に位置し、
軸方向において、前記エッジバンドの外端位置が前記フルバンドの端位置と一致する、又は、前記エッジバンドの外端が前記フルバンドの端の外側に位置し、
前記エッジバンドの外端が軸方向において前記第三ベルトプライの端の内側に位置し、
前記チェーファーの外面が、前記リムのフランジが嵌る嵌合窪みを有する、
重荷重用タイヤ。
【請求項2】
前記嵌合窪みが、子午線断面における輪郭が円弧である凹曲面を有し、
前記凹曲面の半径が、5.0mm以上40.0mm以下である、
請求項1に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項3】
前記トレッドの幅の断面幅に対する比が、0.60以上0.90以下である、
請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項4】
前記バンドの幅の前記トレッドの幅に対する比が、0.60以上0.90以下である、
請求項1から3のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
【請求項5】
前記ショルダー周方向溝から前記フルバンドの端までの軸方向距離の、前記ショルダー陸部の軸方向幅に対する比率が10%以上50%以下である、
請求項1からのいずれか一項に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項6】
前記フルバンドの端から前記エッジバンドの内端までの軸方向距離が10mm以上である、
請求項1からのいずれか一項に記載の重荷重用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
重荷重用タイヤにおいては、偏摩耗の発生を防止するためにタイヤの径成長を抑える技術の適用が検討されている。例えば、下記の特許文献1に開示されたタイヤでは、径成長を抑えるために、実質的に周方向に延びるバンドコードを含むバンドが採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2014/010091号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タイヤが膨張するとき、例えば、サイド部は径方向に伸びる。偏摩耗の発生防止のためにバンドを採用すると、バンドがサイド部の伸びを抑制する。抑制の程度によっては、サイド部に特異な歪が生じることが懸念される。
【0005】
重荷重用タイヤのビード部には大きな荷重が作用する。偏平比の呼びが65%以下である低偏平な重荷重用タイヤにおいては、高偏平タイヤに比べて、サイド部が短い。低偏平タイヤのサイド部は、ビード部に生じた歪みの影響を受けやすい。
【0006】
偏摩耗の発生防止にバンドの採用は有効である。低偏平タイヤにバンドを採用すると、そのサイド部に歪が生じやすい。歪に起因する損傷がサイド部に発生すること、言い換えれば、タイヤの耐久性が低下することが懸念される。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、耐久性の確保と、耐偏摩耗性の向上とを達成できる、重荷重用タイヤの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る重荷重用タイヤは、65%以下の偏平比の呼びを有する。このタイヤは、路面と接地するトレッドと、前記トレッドの端に連なり、径方向において前記トレッドの内側に位置する一対のサイドウォールと、径方向において前記サイドウォールの内側に位置し、リムと接触する一対のチェーファーと、軸方向において前記チェーファーの内側に位置する一対のビードと、径方向において前記トレッドの内側に位置し、螺旋状に巻かれたバンドコードを含むバンドと、を備える。前記トレッドに少なくとも3本の周方向溝を刻むことで少なくとも4本の陸部が構成され、前記少なくとも3本の周方向溝のうち軸方向において外側に位置する周方向溝がショルダー周方向溝であり、軸方向において前記ショルダー周方向溝の外側に位置する陸部がショルダー陸部である。前記バンドは、赤道面を挟んで相対する両端を有するフルバンドと、径方向において前記フルバンドの端の外側に位置する一対のエッジバンドとを備える。前記チェーファーの外面は、前記リムのフランジが嵌る嵌合窪みを有する。
【0009】
好ましくは、この重荷重用タイヤでは、前記嵌合窪みは子午線断面における輪郭が円弧である凹曲面を有する。前記凹曲面の半径は5.0mm以上40.0mm以下である。
【0010】
好ましくは、この重荷重用タイヤでは、前記トレッドの幅の断面幅に対する比は、0.60以上0.90以下である。
【0011】
好ましくは、この重荷重用タイヤでは、前記バンドの幅の前記トレッドの幅に対する比は、0.60以上0.90以下である。
【0012】
好ましくは、この重荷重用タイヤでは、軸方向において、前記フルバンドの端は前記ショルダー周方向溝の外側に位置する。
【0013】
好ましくは、この重荷重用タイヤでは、前記ショルダー周方向溝から前記フルバンドの端までの軸方向距離の、前記ショルダー陸部の軸方向幅に対する比率は10%以上50%以下である。
【0014】
好ましくは、この重荷重用タイヤでは、前記フルバンドの端から前記エッジバンドの内端までの軸方向距離は10mm以上である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、耐久性の確保と、耐偏摩耗性の向上とを達成できる、重荷重用タイヤが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る重荷重用タイヤの一部を示す断面図である。
図2図2は、補強層の構成を説明する概略図である。
図3図3は、図1のタイヤのトレッド部を示す拡大断面図である。
図4図4は、図1のタイヤのビード部を示す拡大断面図である。
図5図5は、本発明の他の実施形態に係る重荷重用タイヤのトレッド部を示す拡大断面図である。
図6図6は、補強層の構成を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0018】
本開示においては、タイヤを正規リムに組み込み、タイヤの内圧が正規内圧に調整され、このタイヤに荷重がかけられていない状態は、正規状態と称される。
【0019】
本開示においては、特に言及がない限り、タイヤ各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。正規リムにタイヤを組んだ状態で測定できない、タイヤの子午線断面における各部の寸法及び角度は、回転軸を含む平面に沿ってタイヤを切断することにより得られる、タイヤの断面において、左右のビード間の距離を、正規リムに組んだタイヤにおけるビード間の距離に一致させて、測定される。
【0020】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本開示におけるリムは、特に言及がない限り、正規リムを意味する。
【0021】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0022】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0023】
本開示において、「偏平比の呼び」は、JIS D4202「自動車用タイヤ-呼び方及び諸元」に規定された「タイヤの呼び」に含まれる「偏平比の呼び」である。
【0024】
本開示において、タイヤのトレッド部とは、路面と接地する、タイヤの部位である。ビード部とは、リムに嵌め合わされる、タイヤの部位である。サイド部とは、トレッド部とビード部との間を架け渡す、タイヤの部位である。タイヤは、部位として、トレッド部、一対のビード部及び一対のサイド部を備える。
リムは、シート(図1の符号Sで示される部材)とフランジ(図1の符号Fで示される部材)とを備える。タイヤがリムに組まれると、ビード部の内周面がシートに載せられ、ビード部の外側面がフランジに接触する。
【0025】
本開示において、並列したコードを含む、タイヤの要素5cm幅あたりに含まれるコードの本数が、この要素に含まれるコードの密度(単位は、エンズ/5cmである。)として表される。コードの密度は、特に言及がない限り、コードの長さ方向に対して垂直な面で切断することにより得られる要素の断面において得られる。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係る重荷重用タイヤ2(以下、単に「タイヤ2」とも称する。)の一部を示す。このタイヤ2は、トラック、バス等の車両に装着される。このタイヤ2の偏平比の呼びは65%以下である。言い換えれば、このタイヤ2は、65%以下の偏平比の呼びを有する。このタイヤ2は、低偏平タイヤである。
【0027】
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、タイヤ2の断面(以下、子午線断面とも称される。)の一部を示す。図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。
【0028】
図1において、タイヤ2はリムRに組まれている。リムRは正規リムである。タイヤ2の内部には空気が充填され、タイヤ2の内圧が調整される。リムRに組まれたタイヤ2は、タイヤ-リム組立体とも称される。タイヤ-リム組立体は、リムRと、このリムRに組まれたタイヤ2とを備える。
【0029】
図1において、符号PWで示される位置はタイヤ2の軸方向外端である。模様や文字等の装飾が外面にある場合、外端PWは、装飾がないと仮定して得られる仮想外面に基づいて特定される。
【0030】
図1において、符号WAで示される長さはタイヤ2の最大幅、すなわち断面幅(JATMA等参照)である。タイヤ2の断面幅WAは、一方の外端PWから他方の外端PWまでの軸方向距離である。外端PWは、このタイヤ2が最大幅を示す位置(以下、最大幅位置)である。
【0031】
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のチェーファー8、一対のビード10、カーカス12、一対のクッション層14、インナーライナー16、インスレーション18、一対のスチールフィラー20、一対の層間ストリップ22、一対のエッジストリップ24及び補強層26を備える。
【0032】
トレッド4は、その外面において路面と接地する。トレッド4の外面はトレッド面28である。図1において符号PCは、トレッド面28と赤道面との交点である。この交点PCはタイヤ2の赤道である。
【0033】
図1において、符号PEはトレッド面28の端である。符号WTで示される長さは、トレッド4の幅である。このトレッド4の幅WTは、一方のトレッド面28の端PEから他方のトレッド面28の端PEまでの軸方向距離である。外観上、トレッド面28の端PEが識別不能な場合には、正規状態のタイヤ2のキャンバー角を0°とした状態で正規荷重を縦荷重としてタイヤ2に負荷して、平面からなる路面にタイヤ2を接触させて得られる接地面の、軸方向外端に対応するトレッド面28上の位置がトレッド面28の端PEとして用いられる。
【0034】
トレッド4は架橋ゴムからなる。図示されないが、トレッド4は、キャップ層及びベース層を含む。キャップ層は、耐摩耗性及びグリップ性能が考慮された架橋ゴムからなり、トレッド面28を構成する。ベース層は、低発熱性の架橋ゴムからなり、キャップ層の内側に位置する。
【0035】
このタイヤ2では、少なくとも3本の周方向溝30がトレッド4に刻まれる。図1に示されたタイヤ2のトレッド4には、4本の周方向溝30が刻まれる。これら周方向溝30は、軸方向に並列され、周方向に連続して延びる。
【0036】
トレッド4に刻まれた4本の周方向溝30のうち、軸方向において外側に位置する周方向溝30がショルダー周方向溝30sである。軸方向において、このショルダー周方向溝30sの内側に位置する周方向溝30がミドル周方向溝30mである。このタイヤ2では、4本の周方向溝30は、一対のミドル周方向溝30mと一対のショルダー周方向溝30sとで構成される。
【0037】
このタイヤ2では、排水性及びトラクション性能への貢献の観点から、ミドル周方向溝30mの溝幅はトレッド4の幅WTの2%以上10%以下が好ましい。ミドル周方向溝30mの溝深さは、10mm以上25mm以下が好ましい。ショルダー周方向溝30sの溝幅は、トレッド4の幅WTの1%以上7%以下が好ましい。ショルダー周方向溝30sの溝深さDSは、10mm以上25mm以下が好ましい。
【0038】
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端に連なる。サイドウォール6は、径方向においてトレッド4の内側に位置する。サイドウォール6は架橋ゴムからなる。サイドウォール6はカーカス12を保護する。
【0039】
それぞれのチェーファー8は、径方向において、サイドウォール6の内側に位置する。チェーファー8は、リムRと接触する。チェーファー8は、耐摩耗性が考慮された架橋ゴムからなる。
【0040】
それぞれのビード10は、軸方向において、チェーファー8の内側に位置する。ビード10は、径方向において、サイドウォール6よりも内側に位置する。ビード10は、コア32と、エイペックス34とを備える。
【0041】
コア32は、周方向に延びる。コア32は、巻き回されたスチール製のワイヤを含む。コア32は略六角形の断面形状を有する。
【0042】
エイペックス34は、コア32の径方向外側に位置する。エイペックス34は、内側エイペックス34uと外側エイペックス34sとを備える。内側エイペックス34uはコア32から径方向外向きに延びる。外側エイペックス34sは内側エイペックス34uよりも径方向外側に位置する。内側エイペックス34uは硬質な架橋ゴムからなる。外側エイペックス34sは内側エイペックス34uよりも軟質な架橋ゴムからなる。
【0043】
カーカス12は、トレッド4、一対のサイドウォール6及び一対のチェーファー8の内側に位置する。カーカス12は一方のビード10と他方のビード10との間を架け渡す。カーカス12は、少なくとも1枚のカーカスプライ36を備える。このタイヤ2のカーカス12は、1枚のカーカスプライ36からなる。
【0044】
カーカスプライ36は、それぞれのコア32の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される。カーカスプライ36は、一方のコア32から他方のコア32に向かって延びるプライ本体36aと、このプライ本体36aに連なりそれぞれのコア32の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される一対の折り返し部36bとを有する。このタイヤ2の折り返し部36bの端は、従来タイヤのそれと同様の位置に配置される。
【0045】
図示されないが、カーカスプライ36は並列された多数のカーカスコードを含む。これらカーカスコードは、トッピングゴムで覆われる。それぞれのカーカスコードは、赤道面と交差する。カーカスコードが赤道面に対してなす角度は70°以上90°以下である。カーカス12はラジアル構造を有する。スチールコードがカーカスコードとして用いられる。
【0046】
それぞれのクッション層14は、補強層26の端において、この補強層26とカーカス12との間に位置する。クッション層14は、軟質な架橋ゴムからなる。
【0047】
インナーライナー16はカーカス12の内側に位置する。インナーライナー16は、タイヤ2の内面を構成する。インナーライナー16は、気体透過係数が低い架橋ゴムからなる。インナーライナー16は、タイヤ2の内圧を保持する。
【0048】
インスレーション18は、カーカス12とインナーライナー16との間に位置する。インスレーション18は、カーカス12と接合し、インナーライナー16と接合する。言い換えれば、インナーライナー16は、インスレーション18を介してカーカス12に接合される。インスレーション18は、接着性が考慮された架橋ゴムからなる。
【0049】
それぞれのスチールフィラー20は、ビード10の部分に位置する。スチールフィラー20は、カーカスプライ36に沿って、コア32の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される。
【0050】
このタイヤ2では、スチールフィラー20の一方の端(以下、内端)は径方向において内側エイペックス34uの外端とコア32との間に位置する。スチールフィラー20の他方の端(以下、外端)は、径方向において折り返し部36bの端とコア32との間に位置する。径方向において、スチールフィラー20の外端はその内端よりも内側に位置する。
【0051】
図示されないが、スチールフィラー20は並列した多数のフィラーコードを含む。スチールフィラー20においてフィラーコードはトッピングゴムで覆われる。スチールコードがフィラーコードとして用いられる。
【0052】
それぞれの層間ストリップ22は、ビード10の外側エイペックス34sとチェーファー8との間に位置する。層間ストリップ22は、折り返し部36bの端、そしてスチールフィラー20の外端を覆う。層間ストリップ22は架橋ゴムからなる。
【0053】
それぞれのエッジストリップ24は、ビード10の外側エイペックス34sと層間ストリップ22との間に位置する。エッジストリップ24と層間ストリップ22との間に折り返し部36bの端が挟まれる。エッジストリップ24は架橋ゴムからなる。このタイヤ2のエッジストリップ24の材質は層間ストリップ22の材質と同じである。
【0054】
補強層26は径方向においてトレッド4の内側に位置する。補強層26は、カーカス12とトレッド4との間に位置する。補強層26は、ベルト38とバンド40とを備える。
【0055】
ベルト38は、径方向に並ぶ複数のベルトプライ42を備える。各ベルトプライ42は、両端が赤道面を挟んで相対するように配置される。このタイヤ2のベルト38は、3枚のベルトプライ42を備える。3枚のベルトプライ42のうち、径方向において内側に位置するベルトプライ42が第一ベルトプライ42Aである。第一ベルトプライ42Aの外側に位置するベルトプライ42が第二ベルトプライ42Bである。第二ベルトプライ42Bの外側に位置するベルトプライ42が第三ベルトプライ42Cである。このベルト38は、第一ベルトプライ42A、第二ベルトプライ42B及び第三ベルトプライ42Cを含む。このベルト38が2枚のベルトプライ42で構成されてもよい。
【0056】
図1に示されるように、第一ベルトプライ42Aの端42Aeは、軸方向において、ショルダー周方向溝30sの外側に位置する。第二ベルトプライ42Bの端42Beは、軸方向において、ショルダー周方向溝30sの外側に位置する。第三ベルトプライ42Cの端42Ceは、軸方向において、ショルダー周方向溝30sの外側に位置する。
【0057】
図1において、符号W1で示される長さは第一ベルトプライ42Aの軸方向幅である。符号W2で示される長さは、第二ベルトプライ42Bの軸方向幅である。符号W3で示される長さは、第三ベルトプライ42Cの軸方向幅である。各ベルトプライ42の軸方向幅は、ベルトプライ42の一方の端42eから他方の端42eまでの軸方向距離である。
【0058】
このタイヤ2では、第二ベルトプライ42Bが最も広い軸方向幅W2を有する。第一ベルトプライ42Aは第三ベルトプライ42Cの軸方向幅W3と同等の軸方向幅W1を有する。第一ベルトプライ42Aの軸方向幅W1が第三ベルトプライ42Cの軸方向幅W3よりも広くてもよい。第一ベルトプライ42Aの軸方向幅W1が第三ベルトプライ42Cの軸方向幅W3よりも狭くてもよい。
【0059】
このタイヤ2では、トレッド部の剛性確保の観点から、トレッド4の幅WTに対する第一ベルトプライ42Aの軸方向幅W1の比(W1/WT)は0.80以上が好ましく、0.90以下が好ましい。トレッド4の幅WTに対する第二ベルトプライ42Bの軸方向幅W2の比(W2/WT)は0.85以上が好ましく、0.95以下が好ましい。トレッド4の幅WTに対する第三ベルトプライ42Cの軸方向幅W3の比(W3/WT)は0.80以上が好ましく、0.90以下が好ましい。
【0060】
このタイヤ2のベルト38の端38eは、ベルト38を構成する複数のベルトプライ42のうち、最も広い軸方向幅を有するベルトプライ42の端42eで表される。前述したように、このタイヤ2では、第二ベルトプライ42Bが最も広い軸方向幅を有する。このタイヤ2のベルト38の端38eは第二ベルトプライ42Bの端42Beで表される。このタイヤ2では、ベルト38の端38eは補強層26の端26eでもある。
【0061】
バンド40は、フルバンド44と、一対のエッジバンド46とを備える。図1に示されるように、フルバンド44は、赤道面を挟んで相対する両端44eを有する。一対のエッジバンド46は、赤道面を挟んで軸方向に離間して配置される。
【0062】
このタイヤ2では、それぞれのエッジバンド46は、トレッド4とフルバンド44との間に位置する。エッジバンド46は、径方向において、フルバンド44の端44eの外側に位置する。軸方向において、エッジバンド46の内端46ueはフルバンド44の端44eの内側に位置する。このタイヤ2では、エッジバンド46の外端46se位置は、軸方向においてフルバンド44の端44e位置と一致する。エッジバンド46の外端46seが、軸方向において、フルバンド44の端44eの外側に位置してもよい。エッジバンド46は、径方向においてフルバンド44の端44eと重複する。エッジバンド46の外端46seは、軸方向において、ベルト38の端38eの内側に位置する。このタイヤ2のエッジバンド46の外端46seは、軸方向において、第三ベルトプライ42Cの端42Ceの内側に位置する。
【0063】
図2は、補強層26の構成を示す。図2において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の周方向である。図2の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の径方向である。図2の紙面の表側が径方向外側である。図2の紙面の裏側が径方向内側である。
【0064】
図2に示されるように、ベルト38を構成する各ベルトプライ42は並列した多数のベルトコード48を含む。図2では、説明の便宜のため、ベルトコード48は実線で表されるが、ベルトコード48はトッピングゴム50で覆われる。このタイヤ2のベルトコード48はスチールコードである。このタイヤ2では、各ベルトプライ42におけるベルトコード48の密度は、15エンズ/5cm以上30エンズ/5cm以下である。
【0065】
各ベルトプライ42においてベルトコード48は、周方向に対して傾斜する。第一ベルトプライ42Aに含まれるベルトコード48の傾斜の向き(以下、第一ベルトコード48Aの傾斜方向)は、第二ベルトプライ42Bに含まれるベルトコード48の傾斜の向き(以下、第二ベルトコード48Bの傾斜方向)と同じである。第一ベルトコード48Aの傾斜方向が第二ベルトコード48Bの傾斜方向と逆であってもよい。第二ベルトコード48Bの傾斜方向は、第三ベルトプライ42Cに含まれるベルトコード48の傾斜の向き(以下、第三ベルトコード48Cの傾斜方向)と逆である。
【0066】
図2において、角度θ1aは、第一ベルトコード48Aが赤道面に対してなす角度(以下、第一傾斜角度θ1a)である。角度θ2aは、第二ベルトコード48Bが赤道面に対してなす角度(以下、第二傾斜角度θ2a)である。角度θ3aは、第三ベルトコード48Cが赤道面に対してなす角度(以下、第三傾斜角度θ3a)である。
【0067】
このタイヤ2では、第一傾斜角度θ1a、第二傾斜角度θ2a及び第三傾斜角度θ3aは、10°以上が好ましく、60°以下が好ましい。タイヤ2の動きが効果的に拘束され、接地面の形状安定性が確保される観点から、第一傾斜角度θ1aは40°以上が好ましく、60°以下が好ましい。第二傾斜角度θ2aは、10°以上が好ましく、20°以下が好ましい。第三傾斜角度θ3aは、10°以上が好ましく、20°以下が好ましい。
【0068】
図2に示されるように、バンド40を構成する、フルバンド44及び一対のエッジバンド46は、螺旋状に巻かれたバンドコード52を含む。図2では、説明の便宜のため、バンドコード52は実線で表されるが、このバンドコード52はトッピングゴム54で覆われる。
【0069】
このタイヤ2では、バンドコード52はスチールコード又は有機繊維からなるコード(以下、有機繊維コード)である。バンドコード52として有機繊維コードが用いられる場合、この有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、及びアラミド繊維が例示される。このタイヤ2では、フルバンド44のバンドコード52と、エッジバンド46のバンドコード52とに同じコードが用いられてもよく、異なるコードが用いられてもよい。タイヤ2の仕様に応じて、フルバンド44及びエッジバンド46に用いられるバンドコード52が決められる。
【0070】
前述したように、フルバンド44は螺旋状に巻かれたバンドコード52を含む。フルバンド44はジョイントレス構造を有する。フルバンド44において、バンドコード52が周方向に対してなす角度は、好ましくは5°以下、より好ましくは2°以下である。フルバンド44のバンドコード52は実質的に周方向に延びる。
【0071】
フルバンド44におけるバンドコード52の密度は、20エンズ/5cm以上35エンズ/5cm以下である。フルバンド44におけるバンドコード52の密度は、子午線断面に含まれるフルバンド44の断面において、フルバンド44の5cm幅あたりに含まれるバンドコード52の断面数により表される。
【0072】
前述したように、エッジバンド46は螺旋状に巻かれたバンドコード52を含む。エッジバンド46はジョイントレス構造を有する。エッジバンド46において、バンドコード52が周方向に対してなす角度は、好ましくは5°以下、より好ましくは2°以下である。エッジバンド46のバンドコード52は実質的に周方向に延びる。
【0073】
エッジバンド46におけるバンドコード52の密度は、20エンズ/5cm以上35エンズ/5cm以下である。エッジバンド46におけるバンドコード52の密度は、子午線断面に含まれるエッジバンド46の断面において、エッジバンド46の5cm幅あたりに含まれるバンドコード52の断面数により表される。
【0074】
図3は、図1に示された、タイヤ2の断面の一部を示す。この図3は、このタイヤ2のトレッド部を示す。図3において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。図3の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
【0075】
このタイヤ2では、第二ベルトプライ42Bの端42Beと、第三ベルトプライ42Cの端42Ceとはそれぞれ、ゴム層56で覆われる。ゴム層56で覆われた第二ベルトプライ42Bの端42Beと第三ベルトプライ42Cの端42Ceとの間には、さらに2枚のゴム層56が配置される。このタイヤ2では、第二ベルトプライ42Bの端42Beと第三ベルトプライ42Cの端42Ceとの間に、計4枚のゴム層56からなるエッジ部材58が構成される。エッジ部材58は架橋ゴムからなる。エッジ部材58は、第二ベルトプライ42Bの端42Beと第三ベルトプライ42Cの端42Ceとの間隔維持に貢献する。このタイヤ2では、走行による、第二ベルトプライ42Bの端42Beと第三ベルトプライ42Cの端42Ceとの位置関係の変化が抑えられる。エッジ部材58は、補強層26の一部である。このタイヤ2の補強層26は、ベルト38及びバンド40に加え、一対のエッジ部材58を備える。
【0076】
前述したように、トレッド4には少なくとも3本の周方向溝30が刻まれる。これにより、トレッド4には少なくとも4本の陸部60が構成される。図1及び3に示されるように、このタイヤ2では、4本の周方向溝30をトレッド4に刻むことで5本の陸部60が構成される。本開示においては、陸部60の外面と周方向溝30との境界が陸部60の端として表される。陸部60の端は周方向溝30の溝幅の基準点としての溝口でもある。
【0077】
トレッド4に構成された5本の陸部60のうち、軸方向において外側に位置する陸部60がショルダー陸部60sである。ショルダー陸部60sは軸方向においてショルダー周方向溝30sの外側に位置し、トレッド面28の端PEを含む。図3において、符号WSで示される長さはショルダー陸部60sの軸方向幅である。軸方向幅WSは、ショルダー陸部60sの内端から外端(言い換えれば、トレッド面28の端PE)までの軸方向距離である。
【0078】
軸方向において、ショルダー陸部60sの内側に位置する陸部60がミドル陸部60mである。ミドル陸部60mとショルダー陸部60sとの間がショルダー周方向溝30sである。図3において、符号WMで示される長さはミドル陸部60mの軸方向幅である。軸方向幅WMは、ミドル陸部60mの内端から外端までの軸方向距離である。
【0079】
軸方向において、ミドル陸部60mの内側に位置する陸部60がセンター陸部60cである。センター陸部60cとミドル陸部60mとの間がミドル周方向溝30mである。このタイヤ2では、センター陸部60cは赤道面上に位置する。図3において、符号WCで示される長さはセンター陸部60cの軸方向幅である。軸方向幅WCは、センター陸部60cの一方の端から、図示されない他方の端までの軸方向距離である。
【0080】
このタイヤ2では、5本の陸部60は、センター陸部60cと、一対のミドル陸部60mと、一対のショルダー陸部60sとで構成される。
【0081】
このタイヤ2では、センター陸部60cの軸方向幅WCはトレッド4の幅WTの10%以上18%以下である。ミドル陸部60mの軸方向幅WMはトレッド4の幅WTの10%以上18%以下である。ショルダー陸部60sの軸方向幅WSはトレッド4の幅WTの15%以上25%以下である。
【0082】
前述したように、フルバンド44は赤道面を挟んで相対する両端44eを有する。フルバンド44は、赤道面からそれぞれの端44eに向かって軸方向に延びる。
【0083】
このタイヤ2では、フルバンド44がトレッド部の動きを効果的に拘束する。タイヤ2の形状、例えば、カーカス12の輪郭(以下、ケースラインとも称される。)の変化が抑制されるので、接地形状が変化しにくい。
【0084】
このタイヤ2ではさらに、エッジバンド46が、径方向において、フルバンド44の端44eの外側に位置する。エッジバンド46はフルバンド44の端44eを拘束する。フルバンド44に含まれるバンドコード52の張力変動が抑制されるので、この張力変動によるバンドコード52の破断が生じにくい。このタイヤ2のフルバンド44は、形状変化の抑制機能を安定に発揮できる。なお、エッジバンド46はフルバンド44に比して狭い。このため、エッジバンド46のバンドコード52にフルバンド44のような張力変動は生じにくい。エッジバンド46のバンドコード52に破断は生じにくい。
【0085】
このタイヤ2では、フルバンド44及びエッジバンド46が、走行によるタイヤ2の形状変化を抑制する。このバンド40は耐偏摩耗性の向上に貢献する。
【0086】
タイヤのビード部には大きな荷重が作用する。前述したように、このタイヤ2は低偏平タイヤである。このタイヤ2のサイド部は、偏平比の呼びが65%を超える高偏平タイヤのサイド部に比べて短い。このタイヤ2のサイド部は、ビード部に生じた歪みの影響を受けやすい。しかも、タイヤ2が膨張する際のサイド部の伸びを、バンド40が抑制する。このタイヤ2のサイド部は、特異な歪が生じやすい状況にある。このタイヤ2では、耐偏摩耗性の向上のためにバンド40を採用したものの、歪に起因する損傷がサイド部に発生することが懸念される。
【0087】
図1に示されるように、リムRに嵌め合わされたタイヤ2においては、チェーファー8の外面がリムRと接触する。
【0088】
図4は、図1に示された、タイヤ2の断面の一部を示す。この図4は、このタイヤ2のビード部を示す。図4において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。図4の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。図4において、軸方向に延びる実線BBLはビードベースラインである。このビードベースラインは、リムRのリム径(JATMA等参照)を規定する線である。
【0089】
図4に示されるように、このタイヤ2では、チェーファー8の外面に窪み62が設けられる。この窪み62は、周方向に伸びる。窪み62は、軸方向において、ビード10のコア32と重複する。図4に示されるように、径方向において、後述する、接点PS及び接点PUの間に、コア32は位置する。
【0090】
図4において、実線LBは、窪み62の径方向外側とその径方向内側においてタイヤ2の外面に接する直線である。符号PSで示される位置は、窪み62の径方向外側での実線LBとタイヤ2の外面との接点である。符号PUで示される位置は、窪み62の径方向内側での実線LBとタイヤ2の外面との接点である。実線LBは、接点PS及び接点PUのそれぞれにおいてタイヤ2の外面と接する直線である。接点PS及び接点PUの間の部分が窪み62であり、この窪み62が嵌合窪みと称される。実線LBは、窪み基準線とも称される。
【0091】
嵌合窪み62は、子午線断面における輪郭が円弧である凹曲面64を有する。図4において、符号BCで示される位置は、この凹曲面64の輪郭を表す円弧の中心である。符号Rbはこの円弧の半径である。
【0092】
嵌合窪み62は、外側境界部66と、内側境界部68とをさらに有する。外側境界部66は、凹曲面64の径方向外側においてこの凹曲面64と接点PSとを繋ぐ。子午線断面において、外側境界部66の輪郭は円弧で表され、この円弧は、凹曲面64と外側境界部66との境界(図示されず)において、凹曲面64の円弧と接する。この円弧は、接点PSにおいて、タイヤ2の外面の輪郭線と接する。内側境界部68は、凹曲面64の径方向内側においてこの凹曲面64と接点PUとを繋ぐ。子午線断面において、内側境界部68の輪郭は円弧で表され、この円弧は、凹曲面64と内側境界部68との境界(図示されず)において、凹曲面64の円弧と接する。この円弧は、接点PUにおいて、タイヤ2の外面の輪郭線と接する。
【0093】
このタイヤ2では、チェーファー8の外面は、周方向に伸びる嵌合窪み62を有する。図1に示されるように、タイヤ2をリムRに組むと、このリムRのフランジFがこの嵌合窪み62に嵌る。
【0094】
このタイヤ2では、嵌合窪み62にフランジFが嵌るので、リムRに対してビード部は動きにくい。ビード部の変形が抑制されるので、ビード部に生じる歪が低減される。ビード部に生じる歪の低減は、サイド部に生じる歪の低減に貢献する。このタイヤ2では、サイド部における、歪に起因する損傷の発生リスクが低減される。
【0095】
このタイヤ2では、バンド40が設けられているにも関わらず、必要な耐久性が確保される。前述したように、バンド40はこのタイヤ2の耐偏摩耗性の向上に貢献する。このタイヤ2では、耐久性の確保と、耐偏摩耗性の向上とが達成される。
【0096】
前述したように、このタイヤ2の嵌合窪み62は、子午線断面における輪郭が円弧である凹曲面64を有する。このタイヤ2では、この凹曲面64の輪郭を表す円弧の半径Rb(以下、凹曲面64の半径Rb)は5.0mm以上40.0mm以下が好ましい。
【0097】
半径Rbが5.0mm以上に設定されることにより、フランジFが嵌合窪み62にぴったり嵌る。このタイヤ2では、ビード部が十分にリムRに拘束されるので、ビード部の変形が抑制される。ビード部に生じる歪が低減されるので、ビード部に生じた歪みの、サイド部への影響も低減される。このタイヤ2では耐久性の向上が図れる。この観点から、この半径Rbは10.0mm以上がより好ましく、15.0mm以上がさらに好ましい。
【0098】
半径Rbが40.0mm以下に設定されることにより、フランジFが嵌合窪み62に十分に密着する。フランジFに対するビード部の動きが抑制されるので、サイド部に生じる歪が低減される。このタイヤ2では耐久性の向上が図れる。この観点から、この半径Rbは35.0mm以下がより好ましく、30.0mm以下がさらに好ましい。
【0099】
図4において、符号PBは、窪み基準線LBから嵌合窪み62までの長さが最大となる位置、すなわち、嵌合窪み62の底である。両矢印Dで示される長さは、窪み基準線LBから嵌合窪み62の底PBまでの距離である。長さDは嵌合窪み62の深さである。両矢印Wで示される長さは、接点PSから接点PUまでの距離である。この距離Wは、嵌合窪み62の幅である。
【0100】
このタイヤ2では、フランジFが嵌合窪み62に十分に密着し、フランジFに対するビード部の動きが効果的に抑制される観点から、嵌合窪み62の深さDの、この嵌合窪み62の幅Wに対する比(D/W)は0.05以上が好ましく、0.06以上がより好ましい。フランジFが嵌合窪み62にぴったり嵌り、ビード部の変形が効果的に抑制される観点から、この比(D/W)は0.09以下が好ましく、0.08以下がより好ましい。
【0101】
サイド部に生じる歪の低減の観点から、嵌合窪み62の深さDは0.5mm以上が好ましく、3.0mm以下が好ましい。
【0102】
このタイヤ2では、トレッド4の幅WTの、断面幅WAに対する比(WT/WA)は0.60以上0.90以下が好ましい。この比(WT/WA)が0.60以上に設定されることにより、タイヤ2の内部容積が適切に維持される。タイヤ2の径成長をバンド40が効果的に抑制する。タイヤ2の接地形状が変化しにくいので、このタイヤ2では、良好な耐偏摩耗性が得られる。この観点から、この比(WT/WA)は、0.75以上がより好ましい。この比(WT/WA)が0.90以下に設定されることにより、バンド40の拘束力が適切に維持される。サイド部に歪が集中することにより生じる損傷の発生が防止されるので、このタイヤ2は良好な耐久性を有する。この観点から、この比(WT/WA)は0.85以下がより好ましい。
【0103】
図1において、符号WBで示される長さはバンド40の幅である。このバンド40の幅WBは、一方のバンド40の端40eから他方のバンド40の端40eまでの軸方向距離である。軸方向においてエッジバンド46の外端46seがフルバンド44の端44eの外側に位置する場合は、このバンド40の幅WBは、一方のエッジバンド46の外端46seから他方のエッジバンド46の外端46seまでの軸方向距離で表される。
【0104】
このタイヤ2では、バンド40の幅WBの、トレッド4の幅WTに対する比(WB/WT)は0.60以上0.90以下が好ましい。この比(WB/WT)が0.60以上に設定されることにより、タイヤ2の径成長をバンド40が効果的に抑制する。タイヤ2の接地形状が変化しにくいので、このタイヤ2では、良好な耐偏摩耗性が得られる。この観点から、この比(WB/WT)は、0.75以上がより好ましい。この比(WB/WT)が0.90以下に設定されることにより、バンド40の拘束力が適切に維持される。バンド40の拘束を起因とする歪の増大が防止されるので、サイド部における損傷の発生リスクが低減される。このタイヤ2は良好な耐久性を有する。この観点から、この比(WB/WT)は0.85以下がより好ましい。
【0105】
前述したように、フルバンド44は赤道面を挟んで相対する両端44eを有する。フルバンド44は、赤道面からそれぞれの端44eに向かって軸方向に延びる。そして、フルバンド44の端44eは、軸方向において、ショルダー周方向溝30sの外側に位置する。径方向において、ショルダー周方向溝30sの内側にフルバンド44が位置する。
【0106】
このタイヤ2では、ショルダー周方向溝30s付近の変形を、フルバンド44が効果的に抑制する。タイヤ2の形状変化が抑制されるので、接地形状が変化しにくい。このタイヤ2では、偏摩耗の発生が抑制される。この観点から、フルバンド44の端44eは、軸方向において、ショルダー周方向溝30sの外側に位置するのが好ましい。
【0107】
図3において、符号SFで示される長さはショルダー周方向溝30s、言い換えれば、ショルダー陸部60sの内端からフルバンド44の端44eまでの軸方向距離である。
【0108】
このタイヤ2では、ショルダー周方向溝30sからフルバンド44の端44eまでの軸方向距離SFの、ショルダー陸部60sの軸方向幅WSに対する比率(SF/WS)は50%以下が好ましい。これにより、走行状態においてアクティブに動くトレッド4の端に対してフルバンド44の端44eが適切な距離をあけて配置される。バンドコード52における張力変動が抑えられるので、このタイヤ2では、バンドコード52の破断の発生が抑えられる。このタイヤ2のフルバンド44は形状変化の抑制に貢献する。この観点から、この比率(SF/WS)は35%以下がより好ましく、25%以下がさらに好ましい。
【0109】
比率(SF/WS)が10%以上に設定されることにより、フルバンド44の端44eがショルダー周方向溝30s、具体的には、ショルダー周方向溝30sの底から適切な距離をあけて配置される。このタイヤ2では、ショルダー周方向溝30sの底を起点とする損傷の発生が抑えられる。フルバンド44の幅が確保されるので、このフルバンド44がタイヤ2の形状変化の抑制に貢献する。この観点から、この比率(SF/WS)は15%以上がより好ましい。
【0110】
図3において、符号Weで示される長さはフルバンド44の端44eからエッジバンド46の内端46ueまでの軸方向距離である。
【0111】
このタイヤ2では、フルバンド44の端44eからエッジバンド46の内端46ueまでの軸方向距離Weは10mm以上が好ましい。これにより、エッジバンド46がフルバンド44の端44eを効果的に拘束する。フルバンド44に含まれるバンドコード52の張力変動が抑えられるので、この張力変動によるバンドコード52の破断の発生が抑えられる。このタイヤ2のフルバンド44は、形状変化の抑制機能をより安定に発揮できる。この観点から、この軸方向距離Weは20mm以上が好ましい。
【0112】
このタイヤ2では、エッジバンド46の内端46ue位置は、ショルダー周方向溝30sの底を起点とする損傷の発生への関与が考慮され、適宜決められる。このため、この軸方向距離Weの好ましい上限は設定されない。ショルダー周方向溝30sの底を起点とする損傷の発生が効果的に抑えられる観点から、軸方向において、エッジバンド46の内端46ueは、ショルダー周方向溝30sの底よりも外側に位置するのが好ましく、ショルダー周方向溝30sよりもさらに外側に位置するのがより好ましい。このタイヤ2では、軸方向において、エッジバンド46の内端46ueがショルダー周方向溝30sの底よりも内側に位置してもよい。この場合、エッジバンド46の内端46ueは、軸方向において、ショルダー周方向溝30sよりもさらに内側に位置するのがより好ましい。
【0113】
このタイヤ2では、軸方向において、フルバンド44の端44eはベルト38の端38eの内側に位置する。ベルト38はフルバンド44よりも広い。このベルト38は、フルバンド44の端44eを拘束する。このベルト38は、フルバンド44に含まれるバンドコード52の張力変動の抑制に貢献する。張力変動によるバンドコード52の破断の発生が抑えられるので、フルバンド44は、形状変化の抑制機能を安定に発揮できる。この観点から、軸方向において、フルバンド44の端44eはベルト38の端38eの内側に位置するのが好ましい。
【0114】
このタイヤ2では、ベルト38を構成する、第一ベルトプライ42A、第二ベルトプライ42B及び第三ベルトプライ42Cは、フルバンド44の幅よりも広い幅を有する。このベルト38は、フルバンド44の端44eを効果的に拘束する。このベルト38は、フルバンド44に含まれるバンドコード52の張力変動の抑制に貢献する。張力変動によるバンドコード52の破断の発生が抑えられるので、フルバンド44は、形状変化の抑制機能を安定に発揮できる。この観点から、ベルト38を構成する、第一ベルトプライ42A、第二ベルトプライ42B及び第三ベルトプライ42Cは、フルバンド44の幅よりも広い幅を有するのが好ましい。
【0115】
タイヤ2のフルバンド44には、径方向において内側から外側に向かって広がるように力が作用する。この力によって、フルバンド44のバンドコード52には張力が発生する。このタイヤ2では、フルバンド44の径方向内側に、ベルト38が位置する。
【0116】
このタイヤ2では、ベルト38がフルバンド44に作用する力を抑制するので、このフルバンド44に含まれるバンドコード52の張力が適切に維持される。このベルト38は、バンドコード52の張力変動の抑制に貢献する。ベルト38はフルバンド44よりも広いので、バンドコード52の張力変動が効果的に抑制される。このタイヤ2では、フルバンド44のバンドコード52に破断は生じにくい。フルバンド44は、形状変化の抑制機能を安定に発揮できる。この観点から、このタイヤ2では、ベルト38が径方向においてフルバンド44の内側に位置するのが好ましい。ベルト38が径方向においてフルバンド44の内側に位置し、このベルト38がフルバンド44の幅よりも広い幅を有するのがより好ましい。
【0117】
図5は、本発明の他の実施形態に係る重荷重用タイヤ72(以下、単に「タイヤ72」とも称する。)の子午線断面を示す。この図5には、このタイヤ72のトレッド部が示される。図5において、左右方向はタイヤ72の軸方向であり、上下方向はタイヤ72の径方向である。図5の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ72の周方向である。
【0118】
このタイヤ72では、図1に示されたタイヤ2の補強層26の構成が異なる以外は、この図1に示されたタイヤ2の構成と同等の構成を有する。したがって、この図5において、図1のタイヤ2の構成要素と同一の構成要素には同一符号を付して、その説明は省略する。
【0119】
このタイヤ72においても、補強層74は径方向においてトレッド4の内側に位置する。補強層74は、カーカス12とトレッド4との間に位置する。補強層74は、ベルト76とバンド78とを備える。
【0120】
このタイヤ72のベルト76は、4枚のベルトプライ80を備える。4枚のベルトプライ80は、径方向において内側に位置する第一ベルトプライ80A、第一ベルトプライ80Aの外側に位置する第二ベルトプライ80B、第二ベルトプライ80Bの外側に位置する第三ベルトプライ80C、そして第三ベルトプライ80Cの外側に位置する第四ベルトプライ80Dである。図5に示されるように、第一ベルトプライ80Aの端80Ae、第二ベルトプライ80Bの端80Be、第三ベルトプライ80Cの端80Ce及び第四ベルトプライ80Dの端80Deは、軸方向において、ショルダー周方向溝30sの外側に位置する。
【0121】
このタイヤ72では、第二ベルトプライ80Bが最も広い軸方向幅を有し、第四ベルトプライ80Dが最も狭い軸方向幅を有する。第一ベルトプライ80Aは第三ベルトプライ80Cの軸方向幅と同等の軸方向幅を有する。第一ベルトプライ80Aの軸方向幅が第三ベルトプライ80Cの軸方向幅よりも広くてもよい。
【0122】
このタイヤ72では、トレッド部の剛性確保の観点から、トレッド4の幅WTに対する第一ベルトプライ80Aの軸方向幅の比は0.80以上が好ましく、0.90以下が好ましい。トレッド4の幅WTに対する第二ベルトプライ80Bの軸方向幅W2の比(W2/WT)は0.85以上が好ましく、0.95以下が好ましい。トレッド4の幅WTに対する第三ベルトプライ80Cの軸方向幅W3の比(W3/WT)は0.80以上が好ましく、0.90以下が好ましい。トレッド4の幅WTに対する第四ベルトプライ80Dの軸方向幅W4の比(W4/WT)は0.55以上が好ましく、0.65以下が好ましい。
【0123】
バンド78は、フルバンド82と、一対のエッジバンド84とを備える。フルバンド82は、赤道面を挟んで相対する両端82eを有する。一対のエッジバンド84は、赤道面を挟んで軸方向に離間して配置される。このタイヤ72では、一対のエッジバンド84の間にベルト76の一部をなす第四ベルトプライ80Dが位置する。
【0124】
このタイヤ72では、それぞれのエッジバンド84は、トレッド4とフルバンド82との間に位置する。エッジバンド84は、径方向において、フルバンド82の端82eの外側に位置する。軸方向において、エッジバンド84の内端84ueはフルバンド82の端82eの内側に位置する。エッジバンド84の外端84seは、軸方向において、フルバンド82の端82eの外側に位置する。エッジバンド84は、径方向においてフルバンド82の端82eと重複する。このエッジバンド84の外端84seは、軸方向において、ベルト76の端76eの内側に位置する。このタイヤ72のエッジバンド84の外端84seは、軸方向において、第三ベルトプライ80Cの端80Ceの内側に位置する。
【0125】
図6は、補強層74の構成を示す。図6において、左右方向はタイヤ72の軸方向であり、上下方向はタイヤ72の周方向である。図6の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ72の径方向である。図6の紙面の表側が径方向外側であり、この紙面の裏側が径方向内側である。
【0126】
図6に示されるように、ベルト76を構成する各ベルトプライ80は並列した多数のベルトコード86を含む。ベルトコード86はトッピングゴム88で覆われる。このベルトコード86はスチールコードである。各ベルトプライ80におけるベルトコード86の密度は、15エンズ/5cm以上30エンズ/5cm以下である。
【0127】
各ベルトプライ80においてベルトコード86は、周方向に対して傾斜する。第一ベルトコード86Aの傾斜方向は、第二ベルトコード86Bの傾斜方向と同じである。第二ベルトコード86Bの傾斜方向は、第三ベルトコード86Cの傾斜方向と逆である。第三ベルトコード86Cの傾斜方向は、第四ベルトコード86Dの傾斜方向と同じである。なお、第一ベルトコード86Aの傾斜方向が第二ベルトコード86Bの傾斜方向と逆であってもよく、第四ベルトコード86Dの傾斜方向が第三ベルトコード86Cの傾斜方向と逆であってもよい。このタイヤ72では、形状変化が抑えられた接地面が得られる観点から、第二ベルトコード86Bの傾斜方向は第三ベルトコード86Cの傾斜方向と逆であるのが好ましい。
【0128】
図6において、角度θ1bは、第一ベルトコード86Aが赤道面に対してなす傾斜角度(以下、第一傾斜角度θ1b)である。角度θ2bは、第二ベルトコード86Bが赤道面に対してなす傾斜角度(以下、第二傾斜角度θ2b)である。角度θ3bは、第三ベルトコード86Cが赤道面に対してなす傾斜角度(以下、第三傾斜角度θ3b)である。角度θ4bは、第四ベルトコード86Dが赤道面に対してなす傾斜角度(以下、第四傾斜角度θ4b)である。
【0129】
このタイヤ72では、第一傾斜角度θ1b、第二傾斜角度θ2b、第三傾斜角度θ3b、及び第四傾斜角度θ4bは、10°以上が好ましく、60°以下が好ましい。タイヤ72の動きが効果的に拘束され、接地面の形状安定性が確保される観点から、第一傾斜角度θ1bは40°以上が好ましく、60°以下が好ましい。第二傾斜角度θ2bは、10°以上が好ましく、20°以下が好ましい。第三傾斜角度θ3bは、10°以上が好ましく、20°以下が好ましい。第四傾斜角度θ4bは10°以上が好ましく、60°以下が好ましい。
【0130】
図6に示されるように、バンド78を構成する、フルバンド82及び一対のエッジバンド84は、螺旋状に巻かれたバンドコード90を含む。このバンドコード90はトッピングゴム92で覆われる。
【0131】
このタイヤ72では、バンドコード90はスチールコード又は有機繊維コードである。バンドコード90として有機繊維コードが用いられる場合、この有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、及びアラミド繊維が例示される。
【0132】
フルバンド82のバンドコード90は実質的に周方向に延びる。このフルバンド82におけるバンドコード90の密度は、20エンズ/5cm以上35エンズ/5cm以下である。エッジバンド84のバンドコード90は実質的に周方向に延びる。このエッジバンド84におけるバンドコード90の密度は、20エンズ/5cm以上35エンズ/5cm以下である。
【0133】
このタイヤ72においても、図5に示されるように、第二ベルトプライ80Bの端80Beと、第三ベルトプライ80Cの端80Ceとはそれぞれ、ゴム層94で覆われる。ゴム層94で覆われた第二ベルトプライ80Bの端80Beと第三ベルトプライ80Cの端80Ceとの間には、さらに2枚のゴム層94が配置される。このタイヤ72では、第二ベルトプライ80Bの端80Beと第三ベルトプライ80Cの端80Ceとの間に、計4枚のゴム層94からなるエッジ部材96が構成される。エッジ部材96は架橋ゴムからなる。エッジ部材96は、第二ベルトプライ80Bの端80Beと第三ベルトプライ80Cの端80Ceとの間隔維持に貢献する。このタイヤ72では、走行による、第二ベルトプライ80Bの端80Beと第三ベルトプライ80Cの端80Ceとの位置関係の変化が抑えられる。
【0134】
前述したように、フルバンド82は赤道面を挟んで相対する両端82eを有する。フルバンド82は、赤道面からそれぞれの端82eに向かって軸方向に延びる。
【0135】
このタイヤ72では、フルバンド82がトレッド部の動きを効果的に拘束する。ケースラインの変化が抑制されるので、接地形状が変化しにくい。
【0136】
このタイヤ72ではさらに、径方向において、フルバンド82の端82eの外側に位置するエッジバンド84がフルバンド82の端82eを拘束する。フルバンド82に含まれるバンドコード90の張力変動が抑制されるので、この張力変動によるバンドコード90の破断が生じにくい。このタイヤ72のフルバンド82は、形状変化の抑制機能を安定に発揮できる。
【0137】
このタイヤ72では、フルバンド82及びエッジバンド84が、走行によるタイヤ72の形状変化を抑制する。このバンド78は耐偏摩耗性の向上に貢献する。
【0138】
図示されないが、このタイヤ72においても、チェーファー8の外面は、周方向に伸びる嵌合窪み62を有する。タイヤ72をリムRに組むと、フランジFがこの嵌合窪み62に嵌る。
【0139】
このタイヤ72では、嵌合窪み62にフランジFが嵌るので、リムRに対してビード部は動きにくい。ビード部の変形が抑制されるので、ビード部に生じる歪が低減される。ビード部に生じる歪の低減は、サイド部に生じる歪の低減に貢献する。このタイヤ72においても、サイド部における、歪に起因する損傷の発生リスクが低減される。
【0140】
このタイヤ72では、バンド78が設けられているにも関わらず、必要な耐久性が確保される。前述したように、バンド78はこのタイヤ72の耐偏摩耗性の向上に貢献する。このタイヤ72では、耐久性の確保と、耐偏摩耗性の向上とが達成される。
【0141】
前述したように、フルバンド82は赤道面を挟んで相対する両端82eを有する。フルバンド82は、赤道面からそれぞれの端82eに向かって軸方向に延びる。そして、フルバンド82の端82eは、軸方向において、ショルダー周方向溝30sの外側に位置する。径方向において、ショルダー周方向溝30sの内側にフルバンド82が位置する。
【0142】
このタイヤ72では、ショルダー周方向溝30s付近の変形を、フルバンド82が効果的に抑制する。タイヤ72の形状変化が抑制されるので、接地形状が変化しにくい。このタイヤ72では、偏摩耗の発生が抑制される。この観点から、フルバンド82の端82eは、軸方向において、ショルダー周方向溝30sの外側に位置するのが好ましい。
【0143】
図5において、符号SFで示される長さはショルダー周方向溝30sからフルバンド82の端82eまでの軸方向距離である。
【0144】
このタイヤ72では、ショルダー周方向溝30sからフルバンド82の端82eまでの軸方向距離SFの、ショルダー陸部60sの軸方向幅WSに対する比率(SF/WS)は50%以下が好ましい。これにより、走行状態においてアクティブに動くトレッド4の端に対してフルバンド82の端82eが適切な距離をあけて配置される。バンドコード90における張力変動が抑えられるので、このタイヤ72では、バンドコード90の破断の発生が抑えられる。このタイヤ72のフルバンド82は形状変化の抑制に貢献する。この観点から、この比率(SF/WS)は35%以下がより好ましく、25%以下がさらに好ましい。
【0145】
比率(SF/WS)が10%以上に設定されることにより、フルバンド82の端82eがショルダー周方向溝30s、具体的には、ショルダー周方向溝30sの底から適切な距離をあけて配置される。このタイヤ72では、ショルダー周方向溝30sの底を起点とする損傷の発生が抑えられる。フルバンド82の幅が確保されるので、このフルバンド82がタイヤ72の形状変化の抑制に貢献する。この観点から、この比率(SF/WS)は15%以上がより好ましい。
【0146】
において、符号Weで示される長さはフルバンド82の端82eからエッジバンド84の内端84ueまでの軸方向距離である。
【0147】
このタイヤ72では、フルバンド82の端82eからエッジバンド84の内端84ueまでの軸方向距離Weは10mm以上が好ましい。これにより、エッジバンド84がフルバンド82の端82eを効果的に拘束する。フルバンド82に含まれるバンドコード90の張力変動が抑えられるので、この張力変動によるバンドコード90の破断の発生が抑えられる。このタイヤ72のフルバンド82は、形状変化の抑制機能をより安定に発揮できる。この観点から、この軸方向距離Weは20mm以上が好ましい。
【0148】
このタイヤ72では、エッジバンド84の内端84ue位置は、ショルダー周方向溝sの底を起点とする損傷の発生への関与が考慮され、適宜決められる。このため、この軸方向距離Weの好ましい上限は設定されない。ショルダー周方向溝30sの底を起点とする損傷の発生が効果的に抑えられる観点から、軸方向において、エッジバンド84の内端84ueは、ショルダー周方向溝30sの底よりも外側に位置するのが好ましく、ショルダー周方向溝30sよりもさらに外側に位置するのがより好ましい。このタイヤ72では、軸方向において、エッジバンド84の内端84ueがショルダー周方向溝30sの底よりも内側に位置してもよい。この場合、エッジバンド84の内端84ueは、軸方向において、ショルダー周方向溝30sよりもさらに内側に位置するのがより好ましい。
【0149】
このタイヤ72では、軸方向において、フルバンド82の端82eはベルト76の端76eの内側に位置する。ベルト76はフルバンド82よりも広い。このベルト76は、フルバンド82の端82eを拘束する。このベルト76は、フルバンド82に含まれるバンドコード90の張力変動の抑制に貢献する。張力変動によるバンドコード90の破断の発生が抑えられるので、フルバンド82は、形状変化の抑制機能を安定に発揮できる。この観点から、軸方向において、フルバンド82の端82eはベルト76の端76eの内側に位置するのが好ましい。
【0150】
このタイヤ72では、フルバンド82の径方向内側に、第二ベルトプライ80Bが位置する。第二ベルトプライ80Bがフルバンド82に作用する力を抑制するので、このフルバンド82に含まれるバンドコード90の張力が適切に維持される。この第二ベルトプライ80Bは、バンドコード90の張力変動の抑制に貢献する。第二ベルトプライ80Bはフルバンド82よりも広いので、バンドコード90の張力変動が効果的に抑制される。このタイヤ72では、フルバンド82のバンドコード90に破断は生じにくい。フルバンド82は、形状変化の抑制機能を安定に発揮できる。この観点から、ベルト76を構成する複数のベルトプライ80のうち、少なくとも一枚のベルトプライ80が径方向においてフルバンド82の内側に位置するのが好ましい。このフルバンド82の内側に位置する少なくとも一枚のベルトプライ80は、フルバンド82の幅よりも広い幅を有するのがより好ましい。
【0151】
このタイヤ72では、径方向においてフルバンド82の内側に第一ベルトプライ80A及び第二ベルトプライ80Bが位置する。この第一ベルトプライ80A及び第二ベルトプライ80Bは、バンドコード90の張力変動の抑制に貢献する。第一ベルトプライ80A及び第二ベルトプライ80Bはフルバンド82よりも広いので、バンドコード90の張力変動がより効果的に抑制される。このタイヤ72では、フルバンド82のバンドコード90に破断は生じにくい。フルバンド82は、形状変化の抑制機能を安定に発揮できる。この観点から、ベルト76を構成する複数のベルトプライ80のうち、少なくとも二枚のベルトプライ80が径方向においてフルバンド82の内側に位置するのがより好ましい。このフルバンド82の内側に位置する少なくとも二枚のベルトプライ80は、フルバンド82の幅よりも広い幅を有するのがさらに好ましい。
【0152】
このタイヤ72では、径方向においてフルバンド82の内側に第二ベルトプライ80Bが位置し、このフルバンド82の外側に第三ベルトプライ80Cが位置する。このタイヤ72では、フルバンド82は第二ベルトプライ80Bと第三ベルトプライ80Cとの間に挟まれる。前述したように、第二ベルトプライ80Bはフルバンド82よりも広い。第三ベルトプライ80Cも、フルバンド82よりも広い。このタイヤ72のベルト76を構成する複数のベルトプライ80は、フルバンド82の幅よりも広い幅を有する2枚のベルトプライ80を含み、この広い幅を有する2枚のベルトプライ80でフルバンド82は挟まれる。このタイヤ72では、フルバンド82に含まれるバンドコード90の張力変動がより効果的に抑制されるので、このフルバンド82のバンドコード90に破断は生じにくい。このタイヤ72のフルバンド82は、形状変化の抑制機能を安定に発揮できる。この観点から、このタイヤ72では、ベルト76を構成する複数のベルトプライ80は、フルバンド82の幅よりも広い幅を有する2枚のベルトプライ80を含み、この広い幅を有する2枚のベルトプライ80でフルバンド82が挟まれるのが好ましい。
【0153】
このタイヤ72では、第一ベルトプライ80A、第二ベルトプライ80B及び第三ベルトプライ80Cはフルバンド82の幅よりも広い幅を有する。径方向において、第一ベルトプライ80A及び第二ベルトプライ80Bはフルバンド82の内側に位置し、第三ベルトプライ80Cはフルバンド82の外側に位置する。一対のエッジバンド84はそれぞれ、径方向において第三ベルトプライ80Cの外側に位置する。前述したように、エッジバンド84は、径方向において、フルバンド82の端82eの外側に位置する。エッジバンド84は、径方向において、第三ベルトプライ80Cを介して、フルバンド82の端82eと重複する。
【0154】
このタイヤ72では、フルバンド82が形状変化の抑制機能を安定に発揮でき、耐偏摩耗性の向上が達成される。この観点から、このタイヤ72では、ベルト76を構成する複数のベルトプライ80が、径方向において、内側に位置する第一ベルトプライ80Aと、この第一ベルトプライ80Aの外側に位置する第二ベルトプライ80Bと、この第二ベルトプライ80Bの外側に位置する第三ベルトプライ80Cとを備え、第一ベルトプライ80A、第二ベルトプライ80B及び第三ベルトプライ80Cがフルバンド82の幅よりも広い幅を有し、径方向において、第一ベルトプライ80A及び第二ベルトプライ80Bがフルバンド82の内側に位置し、第三ベルトプライ80Cがフルバンド82の外側に位置し、径方向において、フルバンド82の外側に位置するエッジバンド84が、第三ベルトプライ80Cを介してフルバンド82の端82eと重複するのが好ましい。
【0155】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、耐久性の確保と、耐偏摩耗性の向上とを達成できる、重荷重用タイヤが得られる。本発明は、65%以下の偏平比の呼びを有する、低偏平な重荷重用タイヤにおいて、顕著な効果を奏する。
【実施例
【0156】
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0157】
[実施例1]
図1に示された基本構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた重荷重用空気入りタイヤ(タイヤサイズ=355/50R22.5)を得た。
【0158】
実施例1の補強層は、図3に示された構成を有する。フルバンドの端が軸方向においてショルダー周方向溝の外側に位置することが、下記の表1の「フルバンド端」の欄に「OUT」で表されている。バンドがエッジバンドを有することが、表1の「エッジバンド」の欄に「Y」で表されている。
この実施例1では、トレッドの幅WTの断面幅WAに対する比(WT/WA)は0.80であった。バンドの幅WBのトレッドの幅WTに対する比(WB/WT)は0.80であった。チェーファーの外面に設けられた嵌合窪みの凹曲面の輪郭を表す円弧の半径Rbは28mmであった。
この実施例1では、フルバンドの端からエッジバンドの内端までの軸方向距離Weは25mmであった。ショルダー周方向溝からフルバンドの端までの軸方向距離SFの、ショルダー陸部の軸方向幅WSに対する比率(SF/WS)は15%であった。
【0159】
[比較例1]
エッジバンド及び嵌合窪みを設けず、フルバンドの端を軸方向においてショルダー周方向溝の内側に配置した他は実施例1と同様にして、比較例1のタイヤを得た。
【0160】
[比較例2]
エッジバンド及び嵌合窪みを設けなかった他は実施例1と同様にして、比較例2のタイヤを得た。
【0161】
[比較例3]
嵌合窪みを設けなかった他は実施例1と同様にして、比較例3のタイヤを得た。
【0162】
[実施例2-3]
トレッドの幅WTを変えて比(WT/WA)を下記の表1及び2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2-3のタイヤを得た。
【0163】
[実施例4]
トレッドの幅WT及びバンドの幅WBを変えて比(WT/WA)及び比(WB/WT)を下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例4のタイヤを得た。
【0164】
[実施例5-6]
凹曲面の半径Rbを下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例5-6のタイヤを得た。
この実施例5-6では、嵌合窪みの底PBの位置、そして嵌合窪みの深さDは実施例1と同様に設定された。
【0165】
[実施例7]
図5に示された構成の補強層を採用した他は実施例1と同様にして、実施例7のタイヤを得た。
この実施例7では、実施例1と同様、フルバンドの端からエッジバンドの内端までの軸方向距離Weは25mmであった。ショルダー周方向溝からフルバンドの端までの軸方向距離SFの、ショルダー陸部の軸方向幅WSに対する比率(SF/WS)は15%であった。
【0166】
[プロファイル変化]
タイヤをリム(11.75×22.5)に組み込み、空気を充填しタイヤの内圧を正規内圧に調整した。このタイヤをドラム試験機において80km/hの速度で1000km走行させ、ショルダー周方向溝の内側におけるケースラインのプロファイルを得た。このケースラインのプロファイルを走行前のケースラインのプロファイルと対比させて、走行前後のプロファイルの変化を確認した。その結果が、下記の格付けにしたがった指数で下記の表1及び2に表されている。数値が大きいほど、プロファイルの変化が抑えられていることを表す。この走行試験では、正規荷重がタイヤに付与された。
変化量 指数
0.0mm~0.5mm 100
0.6mm~1.0mm 95
1.1mm~1.5mm 90
1.6mm~2.0mm 85
2.1mm~2.5mm 80
【0167】
[サイド部表面歪]
タイヤの膨張時にサイド部の表面に生じる歪を計測した。タイヤをリム(11.75×22.5)に組み込み、空気を充填し、タイヤの内圧を正規内圧の5%に調整した。これにより、タイヤの状態が基準状態に調整された。基準状態のタイヤに空気をさらに充填し、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、タイヤを膨張させた。これにより、タイヤの状態が正規状態に調整された。基準状態から正規状態にタイヤの状態を調整する過程においてサイド部表面に発生する径方向の歪のピーク値を計測した。その結果が、実施例1を100にした指数で下記の表1及び2に表されている。数値が大きいほど、サイド部表面に生じる歪が小さいことを表す。
【0168】
【表1】
【0169】
【表2】
【0170】
表1及び2に示されるように、実施例では、プロファイル変化が抑えられ、サイド部に生じる歪が低減されており、耐久性の確保と、耐偏摩耗性の向上とが達成されている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0171】
以上説明された、耐久性の確保と、耐偏摩耗性の向上とを達成するための技術は、種々のタイヤに適用されうる。
【符号の説明】
【0172】
2、72・・・タイヤ
4・・・トレッド
6・・・サイドウォール
8・・・チェーファー
10・・・ビード
12・・・カーカス
26、74・・・補強層
28・・・トレッド面
30、30s、30m・・・周方向溝
38、76・・・ベルト
40、78・・・バンド
42、42A、42B、42C、80、80A、80B、80C、80D・・・ベルトプライ
44、82・・・フルバンド
46、84・・・エッジバンド
48、48A、48B、48C、86、86A、86B、86C、86D・・・ベルトコード
52、90・・・バンドコード
60、60s、60m、60c・・・陸部
62 窪み(嵌合窪み)
64 凹曲面
【要約】
【課題】耐久性の確保と、耐偏摩耗性の向上とを達成できる、重荷重用タイヤ2の提供。
【解決手段】このタイヤ2は、65%以下の偏平比の呼びを有する。このタイヤ2は、トレッド4と、一対のサイドウォール6と、一対のチェーファー8と、一対のビード10と、バンド40と、を備える。バンド40は、赤道面を挟んで相対する両端44eを有するフルバンド44と、径方向においてフルバンド44の端44eの外側に位置する一対のエッジバンド46とを備える。チェーファー8の外面は、リムRのフランジFが嵌る嵌合窪み62を有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6