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特許7131890異方性磁石の成形用金型及びこれを用いた異方性磁石の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】異方性磁石の成形用金型及びこれを用いた異方性磁石の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/02 20060101AFI20220830BHJP
   B22F 3/00 20210101ALI20220830BHJP
   B22F 3/02 20060101ALI20220830BHJP
   H01F 7/02 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
H01F41/02 G
B22F3/00 C
B22F3/02 R
B22F3/02 S
H01F7/02 C
H01F7/02 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017081373
(22)【出願日】2017-04-17
(65)【公開番号】P2018182123
(43)【公開日】2018-11-15
【審査請求日】2020-03-23
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095223
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 章三
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】坪井 義博
【合議体】
【審判長】清水 稔
【審判官】山田 正文
【審判官】畑中 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-144627(JP,A)
【文献】特開昭57-37803(JP,A)
【文献】特開2014-82349(JP,A)
【文献】実開昭61-196516(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F7/02
H01F13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形すべき異方性磁石の材料を含む組成物が充填可能な空洞部を区画し、外部から作用する磁場中に前記空洞部を配置可能とする金型枠材を備え、
前記金型枠材は、前記空洞部を挟むように対向して配置され、前記空洞部を横切る方向の磁場を生成する磁性材からなる磁場生成枠材と、
前記空洞部を挟む磁場生成枠材いずれか一方の前記空洞部に面した部位全域を覆うように設けられ、成形すべき異方性磁石の表面磁束密度波形が所望の波形形状になるように磁化の方向を決める配向磁場を制御する非磁性材若しくは前記磁場生成枠材よりも飽和磁化が小さい磁性材からなる配向制御枠材と、を有し、
前記配向制御枠材成形すべき異方性磁石の各磁極に面していない側に設けられており、
前記配向制御枠材は、成形すべき異方性磁石の各磁極間隔と同じ周期で肉厚が滑らかに変化する凹凸を有し、肉厚が薄い凹状の薄肉部を前記各磁極の中間に対応する部位に配置すると共に、肉厚が厚い凸状の厚肉部を前記各磁極に対応する部位に配置し、前記空洞部を横切る配向磁場が前記各磁極に面する側から前記薄肉部に向けて傾くように制御する
ことを特徴とする異方性磁石の成形用金型。
【請求項2】
成形すべき異方性磁石の材料を含む組成物が充填可能な空洞部を区画し、外部から作用する磁場中に前記空洞部を配置可能とする金型枠材を備え、
前記金型枠材は、前記空洞部を挟むように対向して配置され、前記空洞部を横切る方向の磁場を生成する磁性材からなる磁場生成枠材と、
前記空洞部を挟む磁場生成枠材いずれか一方の前記空洞部に面した部位全域を覆うように設けられ、成形すべき異方性磁石の表面磁束密度波形が所望の波形形状になるように磁化の方向を決める配向磁場を制御する非磁性材若しくは前記磁場生成枠材よりも飽和磁化が小さい磁性材からなる配向制御枠材と、を有し、
前記配向制御枠材成形すべき異方性磁石の各磁極に面した側に設けられており、
前記配向制御枠材は、成形すべき異方性磁石の各磁極間隔と同じ周期で肉厚が滑らかに変化する凹凸を有し、肉厚が薄い凹状の薄肉部を前記各磁極に対応する部位に配置すると共に、肉厚が厚い凸状の厚肉部を前記各磁極の中間に対応する部位に配置し、前記空洞部を横切る配向磁場が前記薄肉部から前記各磁極に面していない側に向けて傾くように制御する
ことを特徴とする異方性磁石の成形用金型。
【請求項3】
成形すべき異方性磁石の材料を含む組成物が充填可能な空洞部を区画し、外部から作用する磁場中に前記空洞部を配置可能とする金型枠材を備え、
前記金型枠材は、前記空洞部を挟むように対向して配置され、前記空洞部を横切る方向の磁場を生成する磁性材からなる磁場生成枠材と、
前記空洞部を挟む磁場生成枠材の両方の前記空洞部に面した部位全域を覆うように夫々設けられ、成形すべき異方性磁石の表面磁束密度波形が所望の波形形状になるように磁化の方向を決める配向磁場を制御する非磁性材若しくは前記磁場生成枠材よりも飽和磁化が小さい磁性材からなる配向制御枠材と、を有し、
前記配向制御枠材は、成形すべき異方性磁石の各磁極間隔と同じ周期で肉厚が滑らかに変化する凹凸を有し、
前記配向制御枠材のうち、成形すべき異方性磁石の各磁極に面していない側に設けられた配向制御枠材は、肉厚が薄い凹状の薄肉部を前記各磁極の中間に対応する部位に配置すると共に、肉厚が厚い凸状の厚肉部を前記各磁極に対応する部位に配置し、
成形すべき異方性磁石の各磁極に面した側に設けられた配向制御枠材は、肉厚が薄い凹状の薄肉部を前記各磁極に対応する部位に配置すると共に、肉厚が厚い凸状の厚肉部を前記各磁極の中間に対応する部位に配置し、
前記空洞部を横切る配向磁場が一方の配向制御枠材の薄肉部から他方の配向制御枠材の薄肉部に向けて傾くように制御する
ことを特徴とする異方性磁石の成形用金型。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の異方性磁石の成形用金型において、
前記空洞部のうち成形すべき異方性磁石の磁極側と前記配向制御枠材との間を仕切る仕切り部材を備えることを特徴とする異方性磁石の成形用金型。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の異方性磁石の成形用金型において、
前記金型枠材は円環状又は円弧状空洞部を区画し、
外部から作用する磁場が前記空洞部に対して放射状に横切る方向から働くものであり、
前記配向制御枠材は前記円環状又は円弧状空洞部の外周側に配置され、当該空洞部内の内周側又は外周側に成形すべき異方性磁石の磁極を形成することを特徴とする異方性磁石の成形用金型。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の異方性磁石の成形用金型において、
前記金型枠材は円環状又は円弧状空洞部を区画し、
外部から作用する磁場が前記空洞部に対して放射状に横切る方向から働くものであり、
前記配向制御枠材は前記円環状又は円弧状空洞部の内周側に配置され、当該空洞部内の内周側又は外周側に成形すべき異方性磁石の磁極を形成することを特徴とする異方性磁石の成形用金型。
【請求項7】
請求項に記載の異方性磁石の成形用金型において、
前記金型枠材は円環状又は円弧状空洞部を区画し、
外部から作用する磁場が前記空洞部に対して放射状に横切る方向から働くものであり、
前記配向制御枠材は前記円環状又は円弧状空洞部の外周側及び内周側に夫々配置され、一方の配向制御枠材は前記空洞部内に成形すべき異方性磁石の磁極に対応した部位に前記薄肉部を有し、他方の配向制御枠材は前記磁極の中間に対応した部位に前記薄肉部を有することを特徴とする異方性磁石の成形用金型。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれかに記載の異方性磁石の成形用金型を用いて異方性磁石を製造するに際し、
前記成形用金型の空洞部に成形すべき異方性磁石の材料を含む組成物を充填する充填工程と、
前記充填工程後において前記成形用金型に外部から磁場を作用させることで前記空洞部に充填された組成物を磁気的に配向させると共に所定の形状に成形する配向・成形工程と、
前記配向・成形工程にて成形された異方性磁石を冷却して前記成形用金型から取り出す取出工程と、を含むことを特徴とする異方性磁石の製造方法。
【請求項9】
請求項に記載の異方性磁石の製造方法において、
前記取出工程は、前記成形用金型に前記配向・成形工程時の磁場が反転させられた磁場を作用させて行われることを特徴とする異方性磁石の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性磁石の成形用金型に係り、特に、外部から作用する磁場中に配置されて異方性磁石を成形する異方性磁石の成形用金型及びこれを用いた異方性磁石の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
異方性磁石の成形用金型としては、成形機に設けられたコイルにより生じる磁場を利用した外部磁場方式、金型内に電磁石を埋め込んだ方式、金型内に永久磁石を埋め込んだ方式がある。
外部磁場方式の金型で作製される磁石の配向は一方向で、円筒状磁石の場合は軸方向、ラジアル方向、径方向などがある。配向された磁石は後工程の着磁工程で多極に着磁して使用できるが、磁石の波形制御が困難でモータ等で使用する場合はコギングが生じて振動や発熱の原因となる。反面、外部磁場方式の成形用金型では、金型内に永久磁石を内蔵させないので、外部磁場を調整することで成形された異方性磁石の脱磁が容易であり、成形された異方性磁石の磁力を低減することができる。
【0003】
前記コギングを低減する異方性磁石構成として、成形された異方性磁石の表面磁束密度波形を正弦波状にする極異方性の技術が既に知られている。
極異方性の円筒状磁石の成形用金型としては、例えば特許文献1で示すように電磁石式と永久磁石式とがある。
特許文献1において、電磁石を用いる方法は、キャビティ当たりの構成に必要な体積が大きいため多数個取りが困難となることが指摘されている。
一方、永久磁石を用いた成形用金型は、金型を比較的コンパクトにできて多数個取りが可能となる反面、キャビティ内磁界が低く、特に配向に大きな磁界を必要とする希土類系磁石材料を用いた成形では配向に十分な磁界が得られないことが指摘されている。
これを解決して成形された磁石の磁気特性の向上を図る手段として、円筒状キャビティの外周に沿って多分割した各扇形領域に、永久磁石片を、N,Sいずれかの磁極がキャビティ面に対向する向きで且つ各領域の隣接相互間で極性を互いに逆として密接配置すると共に、該永久磁石の外周に強磁性材料のバックヨークを配置する異方性磁石金型が開示されている。
【0004】
また、外部磁場方式としては、例えば特許文献2に示すように、リング状のキャビティに磁石粉を充填する充填工程と、互いに反発する磁場をキャビティの所定領域毎に印加することにより磁石粉をラジアル方向に配向しかつ、配向された磁石粉を加圧成形して成形体を得る磁場中成形工程とを備えた磁場中成形方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-144649号公報(発明の詳細な説明,図1
【文献】特開2006-19385号公報(発明を実施するための最良の形態,図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、永久磁石を用いた成形用金型で磁石成形を行った場合、配向用磁石を複雑形状に加工し、強い磁力を有する磁石を並べて配置する必要があり、キャビティ部を作成するために高価な配向用磁石材料と長期の作製期間を要し、金型費用のコストアップにつながる。加えて、成形すべき磁石の表面磁束密度波形を調整のために配向用磁石等を修正することは非常に困難で、再度はじめからキャビティ部を作り直す必要が生じる。また、成形された磁石は配向用磁石で着磁された状態となり、キャビティ部に吸着するため成形品の突出しに強い力が必要で、成形品の取り出しが困難である。更に、取り出した成形品は互いに吸着、反発するために割れ、欠けが生じる懸念もある。
【0007】
本発明が解決しようとする技術的課題は、異方性磁石を成形するに際し、内部に永久磁石を配置せずに金型の外部から作用する磁場のみでも、成形すべき異方性磁石の各磁極に対して強い配向磁場を与え、表面磁束密度波形を所望の波形形状に調整可能な成形用金型を提供し、更には、この成形用金型を用いた異方性磁石の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の技術的特徴は、成形すべき異方性磁石の材料を含む組成物が充填可能な空洞部を区画し、外部から作用する磁場中に前記空洞部を配置可能とする金型枠材を備え、前記金型枠材は、前記空洞部を挟むように対向して配置され、前記空洞部を横切る方向の磁場を生成する磁性材からなる磁場生成枠材と、前記空洞部を挟む磁場生成枠材いずれか一方の前記空洞部に面した部位全域を覆うように設けられ、成形すべき異方性磁石の表面磁束密度波形が所望の波形形状になるように磁化の方向を決める配向磁場を制御する非磁性材若しくは前記磁場生成枠材よりも飽和磁化が小さい磁性材からなる配向制御枠材と、を有し、前記配向制御枠材成形すべき異方性磁石の各磁極に面していない側に設けられており、前記配向制御枠材は、成形すべき異方性磁石の各磁極間隔と同じ周期で肉厚が滑らかに変化する凹凸を有し、肉厚が薄い凹状の薄肉部を前記各磁極の中間に対応する部位に配置すると共に、肉厚が厚い凸状の厚肉部を前記各磁極に対応する部位に配置し、前記空洞部を横切る配向磁場が前記各磁極に面する側から前記薄肉部に向けて傾くように制御することを特徴とする異方性磁石の成形用金型である。
本発明の第2の技術的特徴は、成形すべき異方性磁石の材料を含む組成物が充填可能な空洞部を区画し、外部から作用する磁場中に前記空洞部を配置可能とする金型枠材を備え、前記金型枠材は、前記空洞部を挟むように対向して配置され、前記空洞部を横切る方向の磁場を生成する磁性材からなる磁場生成枠材と、前記空洞部を挟む磁場生成枠材いずれか一方の前記空洞部に面した部位全域を覆うように設けられ、成形すべき異方性磁石の表面磁束密度波形が所望の波形形状になるように磁化の方向を決める配向磁場を制御する非磁性材若しくは前記磁場生成枠材よりも飽和磁化が小さい磁性材からなる配向制御枠材と、を有し、前記配向制御枠材成形すべき異方性磁石の各磁極に面した側に設けられており、前記配向制御枠材は、成形すべき異方性磁石の各磁極間隔と同じ周期で肉厚が滑らかに変化する凹凸を有し、肉厚が薄い凹状の薄肉部を前記各磁極に対応する部位に配置すると共に、肉厚が厚い凸状の厚肉部を前記各磁極の中間に対応する部位に配置し、前記空洞部を横切る配向磁場が前記薄肉部から前記各磁極に面していない側に向けて傾くように制御することを特徴とする異方性磁石の成形用金型である。
【0009】
本発明の第3の技術的特徴は、成形すべき異方性磁石の材料を含む組成物が充填可能な空洞部を区画し、外部から作用する磁場中に前記空洞部を配置可能とする金型枠材を備え、前記金型枠材は、前記空洞部を挟むように対向して配置され、前記空洞部を横切る方向の磁場を生成する磁性材からなる磁場生成枠材と、前記空洞部を挟む磁場生成枠材の両方の前記空洞部に面した部位全域を覆うように夫々設けられ、成形すべき異方性磁石の表面磁束密度波形が所望の波形形状になるように磁化の方向を決める配向磁場を制御する非磁性材若しくは前記磁場生成枠材よりも飽和磁化が小さい磁性材からなる配向制御枠材と、を有し、前記配向制御枠材は、成形すべき異方性磁石の各磁極間隔と同じ周期で肉厚が滑らかに変化する凹凸を有し、前記配向制御枠材のうち、成形すべき異方性磁石の各磁極に面していない側に設けられた配向制御枠材は、肉厚が薄い凹状の薄肉部を前記各磁極の中間に対応する部位に配置すると共に、肉厚が厚い凸状の厚肉部を前記各磁極に対応する部位に配置し、成形すべき異方性磁石の各磁極に面した側に設けられた配向制御枠材は、肉厚が薄い凹状の薄肉部を前記各磁極に対応する部位に配置すると共に、肉厚が厚い凸状の厚肉部を前記各磁極の中間に対応する部位に配置し、前記空洞部を横切る配向磁場が一方の配向制御枠材の薄肉部から他方の配向制御枠材の薄肉部に向けて傾くように制御することを特徴とする異方性磁石の成形用金型である。
本発明の第の技術的特徴は、第1乃至第3のいずれかの技術的特徴を備えた異方性磁石の成形用金型において、前記空洞部のうち成形すべき異方性磁石の磁極側と前記配向制御枠材との間を仕切る仕切り部材を備えることを特徴とする異方性磁石の成形用金型である
本発明の第の技術的特徴は、第1又は第2の技術的特徴を備えた異方性磁石の成形用金型において、前記金型枠材は円環状又は円弧状空洞部を区画し、外部から作用する磁場が前記空洞部に対して放射状に横切る方向から働くものであり、前記配向制御枠材は前記円環状又は円弧状空洞部の外周側に配置され、当該空洞部内の内周側又は外周側に成形すべき異方性磁石の磁極を形成することを特徴とする異方性磁石の成形用金型である。
本発明の第の技術的特徴は、第1又は第2の技術的特徴を備えた異方性磁石の成形用金型において、前記金型枠材は円環状又は円弧状空洞部を区画し、外部から作用する磁場が前記空洞部に対して放射状に横切る方向から働くものであり、前記配向制御枠材は前記円環状又は円弧状空洞部の内周側に配置され、当該空洞部内の内周側又は外周側に成形すべき異方性磁石の磁極を形成することを特徴とする異方性磁石の成形用金型である。
本発明の第の技術的特徴は、第の技術的特徴を備えた異方性磁石の成形用金型において、前記金型枠材は円環状又は円弧状空洞部を区画し、外部から作用する磁場が前記空洞部に対して放射状に横切る方向から働くものであり、前記配向制御枠材は前記円環状又は円弧状空洞部の外周側及び内周側に夫々配置され、一方の配向制御枠材は前記空洞部内に成形すべき異方性磁石の磁極に対応した部位に前記薄肉部を有し、他方の配向制御枠材は前記磁極の中間に対応した部位に前記薄肉部を有することを特徴とする異方性磁石の成形用金型である。
【0010】
本発明の第の技術的特徴は、第1乃至第の技術的特徴のいずれかを備えた異方性磁石の成形用金型を用いて異方性磁石を製造するに際し、前記成形用金型の空洞部に成形すべき異方性磁石の材料を含む組成物を充填する充填工程と、前記充填工程後において前記成形用金型に外部から磁場を作用させることで前記空洞部に充填された組成物を磁気的に配向させると共に所定の形状に成形する配向・成形工程と、前記配向・成形工程にて成形された異方性磁石を冷却して前記成形用金型から取り出す取出工程と、を含むことを特徴とする異方性磁石の製造方法である。
本発明の第の技術的特徴は、第の技術的特徴を備えた異方性磁石の製造方法において、前記取出工程は、前記成形用金型に前記配向・成形工程時の磁場が反転させられた磁場を作用させて行われることを特徴とする異方性磁石の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1又は第2の技術的特徴によれば、異方性磁石を成形するに際し、内部に永久磁石を配置せずに金型の外部から作用する磁場のみでも、成形すべき異方性磁石の各磁極に対して強い配向磁場を与え、表面磁束密度波形を所望の波形形状に調整可能な成形用金型を提供することができる。特に、配向制御枠材の断面形状を工夫することで、配向磁場の制御作用を簡単、かつ、スムーズに変化させながら実現することができる。
本発明の第3の技術的特徴によれば、異方性磁石を成形するに際し、内部に永久磁石を配置せずに金型の外部から作用する磁場のみでも、成形すべき異方性磁石の各磁極に対して強い配向磁場を与え、表面磁束密度波形を所望の波形形状に調整可能な成形用金型を提供することができる。特に、配向制御枠材の断面形状を工夫することで、配向磁場の制御作用をスムーズに変化させながら簡単に実現することができるほか、一方にのみ配向制御枠材を配置する場合に比べて、空洞部を横切る配向磁場のパターンの形成精度を高めることができる。
本発明の第の技術的特徴によれば、仕切り部材を用いない態様に比べて、成形された異方性磁石の外観を良好に保ち、かつ、成形品を金型から取り出しやすい
本発明の第の技術的特徴によれば、円環状又は円弧状の異方性磁石を成形するに際し、既存の成形用金型の外周側の金型枠材を工夫することで、円環状又は円弧状の異方性磁石を高精度に配向・成形することができる。
本発明の第の技術的特徴によれば、円環状又は円弧状の異方性磁石を成形するに際し、既存の成形用金型の内周側の金型枠材を工夫することで、円環状又は円弧状の異方性磁石を高精度に配向・成形することができる。
本発明の第の技術的特徴によれば、円環状又は円弧状の異方性磁石を成形するに際し、円環状又は円弧状空洞部の内周側又は外周側の一方に配向制御枠材を配置する態様に比べて、成形すべき異方性磁石の磁極に対する配向磁場を細かく制御することができる。
本発明の第の技術的特徴によれば、配向制御枠材の断面形状を工夫することで、異方性磁石に対して強い配向磁場で表面磁束密度波形を所望の波形形状に調整可能な成形用金型を利用し、外部から磁場を作用させる方式で配向磁場の制御作用を簡単、かつ、スムーズに変化させながら実現し、磁力が高い高品質の異方性磁石を容易に製造することができる。
本発明の第の技術的特徴によれば、本構成を有さない態様に比べて、成形用金型から成形された異方性磁石を取り出す作業時の操作力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)は本発明が適用された異方性磁石の成形用金型の実施の形態の概要を示す説明図、(b)は(a)中Bで示す領域の拡大説明図、(c)は(a)で示す成形用金型を用いた異方性磁石の製造方法を示す説明図である。
図2】(a)は実施の形態1に係る異方性磁石の製造装置を示す説明図、(b)は成形・配向工程で金型に作用する外部磁場の一例を示す説明図、(c)は取出工程で金型に作用する外部磁場の一例を示す説明図である。
図3】(a)は図2(a)中III-III線で切断した方向から見た実施の形態1に係る成形用金型の全体構成を示す説明図、(b)は(a)中Bで示す領域の拡大説明図、(c)は比較の形態における図3(b)に相当する拡大説明図である。
図4】(a)は実施の形態1に係る成形用金型に外部磁場を作用させたときに当該成形用金型に充填された組成物に対する配向磁場の一例を示す説明図、(b)は比較の形態に係る成形用金型に充填された組成物に対する配向磁場の一例を示す説明図である。
図5】(a)は実施の形態1で用いられる金型枠材としての磁場生成枠材及び成形すべき異方性磁石の磁気ヒステリシス特性の一例を示す説明図、(b)は取出工程時において成形用金型に作用する外部磁場の一例を示す説明図である。
図6】(a)は実施の形態1に係る異方性磁石の成形用金型の変形の形態の要部を示す説明図、(b)は(a)中Bで示す領域の拡大説明図である。
図7】(a)は実施の形態2に係る異方性磁石の成形用金型の要部を示す説明図、(b)は(a)中Bで示す領域の拡大説明図である。
図8】(a)は実施の形態3に係る異方性磁石の成形用金型の要部を示す説明図、(b)は(a)中Bで示す領域の拡大説明図である。
図9】(a)は実施の形態4に係る異方性磁石の成形用金型の要部を示す説明図、(b)は(a)中Bで示す領域の拡大説明図である。
図10】(a)は実施例1にて成形された異方性磁石の着磁後の表面磁束密度分布のシミュレーション結果例を示す説明図、(b)は同磁石の着磁後の表面磁束密度波形の一例を示す説明図である。
図11】実施例2にて成形された異方性磁石の着磁後の表面磁束密度波形の一例を示す説明図である。
図12】(a)は実施例3にて成形された異方性磁石の着磁後の表面磁束密度波形の一例を示す説明図、(b)は(a)に示す表面磁束密度波形と、正弦波形との対比を示す説明図である。
図13】(a)は比較例1に係る異方性磁石の成形用金型の一例を示す説明図、(b)は比較例1にて成形された異方性磁石の着磁後の表面磁束密度波形の一例を示す説明図である。
図14】比較例2にて成形された異方性磁石の着磁後の表面磁束密度波形の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
◎実施の形態の概要
図1(a)(b)は本発明が適用された異方性磁石の成形用金型の実施の形態の概要を示す。
同図において、異方性磁石の成形用金型1は、成形すべき異方性磁石の材料を含む組成物Cmが充填可能な空洞部3を区画し、外部から作用する磁場中に空洞部3を配置可能とする金型枠材2を備え、金型枠材2は、空洞部3を挟むように対向して配置され、空洞部3を横切る方向の磁場を生成する磁性材からなる磁場生成枠材4(具体的には4a,4b)と、空洞部3を挟む磁場生成枠材4の少なくともいずれか一方(例えば4b)の空洞部3に面した部位に設けられ、成形すべき異方性磁石の表面磁束密度波形が所望の波形形状になるように磁化の方向を決める配向磁場Hを制御する非磁性材若しくは磁場生成枠材4よりも飽和磁化が小さい磁性材からなる配向制御枠材5と、を有するものである。
本実施の形態において、配向制御枠材5が少なくとも成形すべき異方性磁石の各磁極Mpに面していない側に設けられている態様では、配向制御枠材5は、成形すべき異方性磁石の各磁極Mp間隔と同じ周期で他に比べて磁束を集中させるように形成される集束部6を有し、各磁極Mpの中間に対応した部位に集束部6を配置するようにすればよい。
また、配向制御枠材5が少なくとも成形すべき異方性磁石の各磁極Mpに面した側に設けられている態様では、配向制御枠材5は、成形すべき異方性磁石の各磁極Mp間隔と同じ周期で他に比べて磁束を集中させるように形成される集束部6を有し、各磁極Mpに対応した部位に集束部6を配置するようにすればよい。
【0014】
このような技術的手段において、異方性磁石は成形材料として異方性磁石材料を用いるものであれば、異方性ボンド磁石を始めとして広く含む。
また、金型枠材2は、成形すべき異方性磁石の形状に対応した空洞部3を区画するものであればよく、空洞部3としては円環状、円柱状、直線板状など適宜選定して差し支えない。ここで、金型枠材2としては、例えば異方性磁石が円環状である場合には、円環状の空洞部3を内側、外側から区画する内枠材と外枠材とが用いられるが、金型内に別の部品を挿入して成形するいわゆるインサート成形や一体成形と呼ばれる成形の場合でも、空洞部3を区画するものを広く含む。
【0015】
更に、金型枠材2は、磁場生成枠材4と、配向制御枠材5とを含むものであればよい。
本例では、磁場生成枠材4は空洞部3を挟んで対向して配置される磁性材からなるもので、外部から磁場を作用させたときに磁化し、空洞部3を横切るような磁場を生成する機能を有していればよい。
また、配向制御枠材5は非磁性材が好ましいが、非磁性材でなくても、磁場生成枠材4を構成する磁性材よりも飽和磁化が小さい例えばELMAX(登録商標)などの磁性材でも構成可能である。
本例では、配向制御枠材5は空洞部3を挟む磁場生成枠材4の少なくとも一方に設けられていればよいが、空洞部3内で成形すべき異方性磁石の表面磁束密度波形が所望の波形形状になるように磁化の方向を決める配向磁場Hを制御する機能を有することが必要である。このとき、いずれか一方に配向制御枠材5を設ける態様では、異方性磁石の磁極Mpに面した側に設けていてもよいし、磁極Mpに面していない側に設けていてもよく、磁極Mpに対応する磁束の粗密を制御することで所望の配向磁場Hを形成することが必要である。
ここで、配向制御枠材5については、当該配向制御枠材5の肉厚を周期的に変化させ、厚肉部に比べて薄肉部の方が磁場が透過し易いことを利用して磁束を集中させる集束部6とし、成形すべき異方性磁石の磁極Mpに対応する磁束の粗密を制御する態様が代表的であるが、これに限られず、例えば板状の配向制御枠材5のうち異方性磁石の磁極Mpと同じ周期で開口を形成し、当該開口を磁束が集中する集束部6とする態様でもよい。
【0016】
このように、本例では、外部から磁場を作用させることで、磁場生成枠材4にて空洞部3に磁場を生成し、更に、配向制御枠材5にて各磁極Mpに対する配向磁場Hを制御するものであり、これにより、成形すべき磁石の各磁極Mpに強い配向磁場Hを与え、成形後の着磁時に、成形すべき磁石の表面磁束密度波形を所望の波形形状(例えば正弦波形状に近似した波形)に形成するように、成形材料である組成物Cmに対し所望の配向特性を与えることが可能になる。
【0017】
次に、本実施の形態に係る異方性磁石の成形用金型の代表的態様又は好ましい態様について説明する。
先ず、配向制御枠材5の代表的態様としては、成形すべき異方性磁石の各磁極Mp間隔と同じ周期で肉厚が変化する薄肉部を有する態様が挙げられる。本例は、配向制御枠材5の肉厚を周期的に変化させ、薄肉部7に磁束を集中させることで各磁極Mpに対する配向磁場Hを制御することができる。
ここで、配向制御枠材5の好ましい態様としては、成形すべき異方性磁石の各磁極Mp間隔と同じ周期で肉厚が滑らかに変化する凹凸を有する態様が挙げられる。本例は、配向制御枠材5の肉厚が滑らかに変化する凹凸を有し、凹部を薄肉部7、凸部を厚肉部8とし、しかも、凹部と凸部との変化部分をスムーズにするものであり、成形すべき異方性磁石の表面磁束密度波形を周期的に変化する滑らかな波形形状に形成する上で有効である。
【0018】
また、成形用金型1の好ましい態様としては、空洞部3のうち成形すべき異方性磁石の磁極Mp側と配向制御枠材5との間を仕切る仕切り部材9を備える態様が挙げられる。本例において、仕切り部材9は空洞部3内の組成物Cmと配向制御枠材5との間を仕切るものである。このような仕切り部材9を用いると、配向制御枠材5に組成物Cmが直接接触しないことから、配向制御枠材5の集束部6と他の部分とで例えば段差部が生じたとしても、成形された磁石の外観が損なわれることなく、成形された磁石が取り出しやすい等の効果を奏する。尚、仕切り部材9は磁性材、非磁性材のいずれでもよい。
【0019】
更に、円環状又は円弧状の異方性磁石を成形する態様では、金型枠材2は円環状又は円弧状空洞部3を区画し、外部から作用する磁場が空洞部3に対して放射状に横切る方向から働く態様が代表的である。
このような成形用金型1における配向制御枠材5の代表的態様としては、円環状又は円弧状空洞部3の外周側に配置され、当該空洞部3内の内周側又は外周側に成形すべき異方性磁石の磁極Mpを形成する態様が挙げられる。本例は、円環状又は円弧状空洞部3の外周側に配向制御枠材5を配置し、成形すべき異方性磁石の磁極Mpに対する配向磁場Hを制御するものである。
また、配向制御枠材5の他の代表的態様としては、円環状又は円弧状空洞部3の内周側に配置され、当該空洞部3内の内周側又は外周側に成形すべき異方性磁石の磁極Mpを形成する態様が挙げられる。本例は、円環状又は円弧状空洞部3の内周側に配向制御枠材5を配置し、成形すべき異方性磁石の磁極Mpに対する配向磁場Hを制御するものである。
更に、配向制御枠材5の別の代表的態様としては、配向制御枠材5は円環状又は円弧状空洞部3の外周側及び内周側に夫々配置され、一方の配向制御枠材5は空洞部3内に成形すべき異方性磁石の磁極Mpに対応した部位に磁束が集中する集束部6を有し、他方の配向制御枠材5は磁極Mp間に対応した部位に集束部6を有する態様が挙げられる。本例は、円環状又は円弧状空洞部3の内周側及び外周側に夫々配向制御枠材5を配置し、両方の配向制御枠材5にて成形すべき異方性磁石の磁極Mpに対する配向磁場Hを制御するものである。
【0020】
また、前述した成形用金型1を用いて異方性磁石を製造する製造方法の代表的態様としては、図1(c)に示すように、成形用金型1の空洞部3に成形すべき異方性磁石の材料を含む組成物Cmを充填する充填工程と、充填工程後において成形用金型1に外部から磁場Hを作用させることで空洞部3に充填された組成物Cmを磁気的に配向させると共に所定の形状に成形する配向・成形工程と、配向・成形工程にて成形された異方性磁石を冷却して成形用金型1から取り出す取出工程と、を含む態様が挙げられる。
本例は、成形材料の充填工程、配向・成形工程及び取出工程を有するものであればよく、配向・成形工程としては、射出成形、押出成形などが含まれる。
また、異方性磁石の製造方法の好ましい態様としては、取出工程は、成形用金型1に配向・成形工程時の磁場Hが反転させられた磁場Hを作用させて行われる態様が挙げられる。本例は、成形用金型1から成形された異方性磁石(成形品)を取り出す際に、外部から反転磁場Hを作用させることで磁場生成枠材4の着磁状態を消磁すると共に、成形品の磁力を脱磁し成形品の取出しを阻害する磁力を抑制する。
【0021】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいて本発明をより詳細に説明する。
◎実施の形態1
-異方性磁石の製造装置-
図2は実施の形態1に係る異方性磁石の製造装置の全体構成を示す。
同図において、異方性磁石の製造装置は、射出成形にて異方性磁石を製造する射出成形機であって、異方性磁石を成形する成形用金型(以下金型と略記する)30と、異方性磁石の材料を含む組成物Cmを金型30内に射出注入する射出ユニット20と、金型30内に射出注入された組成物Cmに対して外部から磁場を作用させる外部磁場器50と、を備えている。
本例では、異方性磁石はボンド磁石を対象としており、磁石の材料としては、フェライト系、Sm-Co系、Sm-Fe-N系、Nd-Fe-B系等及び/若しくはそれらの混合系から適宜選択することが可能であるが、各材料の飽和磁化に留意することが必要である。すなわち、例えばフェライト系材料で成形した磁石は所望の表面磁束密度波形が得られても、同じ金型で例えばSm-Fe-N系材料で成形した磁石は表面磁束密度波形が異なる場合がある。本例では、磁石の材料を含む組成物Cmとして、例えば異方性Sm-Fe-N微粉末や異方性Nd-Fe-B微粉末等の希土類異方性磁石粉体を1種類以上と熱可塑性樹脂との混合物を使用したものとする。
<射出ユニット>
本例では、射出ユニット20は、磁石の材料を含む組成物Cmをホッパ22からシリンダ21内に投入し、シリンダ21内に投入された組成物Cmをヒータ23にて加熱溶融すると共に、シリンダ21内で進退可能なスクリューロッド24で溶融した組成物Cmをシリンダ21の射出口25側に所定量貯めた後、金型30内に射出するものである。
【0022】
<金型>
本例では、金型30は、図2(a)及び図3(a)に示すように、金型枠材40内に成形すべき異方性磁石の形状に対応した空洞部(本例では円環状空洞部)41を確保するようにしたものである。
ここで、金型30の設置箇所に対向した部位には射出ユニット20に接続可能な接続ユニット31が固定側取付板32で射出成形機に取り付けられ、射出ユニット20の射出口25に連通し且つ空洞部41に通じる供給経路26を有している。
また、金型30は図示外の型締めユニットにて矢印方向に進退可能な可動側取付板34に取り付けられており、型締めユニットの進退で金型30が接続ユニット31に接離し、接触時には図示外の位置合せ機構により位置合せされるようになっている。尚、本例では金型30と接続ユニット31との境界面が金型分離面PLとして機能するようになっている。
【0023】
また、金型30は可動側取付板34に固定された可動側型板35に金型枠材40を取り付けることで構成されている。本例では、金型枠材40は、円環状空洞部41の内側を区画する磁性材からなる円柱状の内枠材42と、円環状空洞部41の外側を区画する磁性材からなる外枠材43と、円環状空洞部41と外枠材43との間に設けられ、円環状空洞部41の外周部を仕切る例えば非磁性材からなる仕切り部材としての円環状スリーブ44と、この円環状スリーブ44と外枠材43との間に設けられ、円環状空洞部41に充填された組成物Cmに作用する配向磁場Hを制御する非磁性材からなる配向制御枠材45と、を有している。
ここで、内枠材42及び外枠材43を構成する磁性材としては、特には限定されないが、S50C等の普通鋼やSKD11等のダイス鋼のような飽和磁化の大きい強磁性体が好ましい。
また、円環状スリーブ44や配向制御枠材45を構成する非磁性材としては、公知のものを広く使用することができ、例えばSUS304等のオーステナイト系ステンレス鋼、IPA75等の時効処理鋼、非磁性超鋼を用いるようにすればよい。そしてまた、円環状スリーブ44としては、厚さが0.3~1.5mm程度の薄いものが用いられる。このとき、円環状スリーブ44の厚さが1.5mm以下の厚さであれば、外部から作用する磁場が円環状空洞部41内の組成物Cmに作用し易く、円環状スリーブ44の剛性を確保するという観点からすれば、厚さが0.3mm以上であることが好ましい。尚、円環状スリーブ44は磁性材を用いるようにしてもよく、また、配向制御枠材45は内枠材42、外枠材43に比べて飽和磁化が小さい磁性材を用いるようにしてもよい。
【0024】
更に、本例では、成形すべき異方性磁石は、図4(a)に示すように、例えば内周面に複数の磁極Mp(本例では8磁極)を所定の角度間隔(本例では45度間隔)毎に形成するものである。
そして、配向制御枠材45は、図3(a)(b)に示すように、円環状スリーブ44の外周面に接触する円環状部材からなり、当該円環状部材の外周部形状が異方性磁石の各磁極Mp間隔と同じ周期で肉厚が滑らかに変化する凹凸状になっており、各磁極Mpの中間に位置する箇所には凹部からなる薄肉部45aを配置すると共に、各磁極Mpに対応した箇所には凸部からなる厚肉部45bを配置するようになっている。ここで、薄肉部45a、厚肉部45bの肉厚や形状は成形すべき異方性磁石の目標表面磁束密度波形により様々で、特に一意に定まるものではない。
また、外枠材43は断面正方形状の四角柱に孔部43cを有する形状であり、この孔部43c周面は配向制御枠材45の薄肉部45a及び厚肉部45bに対応して接触する凹凸部43dを有している。
更に、金型枠材40としての内枠材42、外枠材43、円環状スリーブ44及び配向制御枠材45は、例えばワイヤカット等の機械加工で所望の形状に加工された後、焼き嵌めや接着などの方法で組み上げられている。また、本例では、配向制御枠材45の薄肉部45a、厚肉部45bや外枠材43の凹凸部43dは滑らかに変化する凹凸状に形成されているため、円環状空洞部41に組成物Cmが充填され、内枠材42、外枠材43、円環状スリーブ44、配向制御枠材45に強い圧力が加わったとしても、局部的に応力が集中してクラックが発生する懸念はない。尚、以下の態様においても同様である。
【0025】
<外部磁場器>
外部磁場器50は、図2(a)に示すように、金型30を挟んだ部位に励磁コイル51,52を対向して配設し、図2(b)に示すように、これらの励磁コイル51,52の予め決められた巻き方向である正方向に通電することで金型30に対して外部から互いに反発する磁場を加えることにより、金型30の円環状空洞部41を横切る放射方向(ラジアル方向)に向かって外部磁場Hを作用させるようになっている。
また、図2(c)に示すように、両方の励磁コイル51,52の正方向とは逆方向に通電することで金型30の空洞部41を横切る方向が反転する外部磁場Hを作用させることが可能である。
【0026】
次に、本実施の形態に係る異方性磁石の製造方法について説明する。
先ず、図示外の型嵌めユニットにより金型30を締めた状態にセットし、この後、射出ユニット20により異方性磁石の材料を含む組成物Cmを金型30の円環状空洞部41に射出注入して保圧する。
この後、図2(b)に示すように、外部磁場器50の励磁コイル51,52による外部磁場Hを作用させると、図3(a)(b)に示すように、当該外部磁場Hは互いに反発して金型30の円環状空洞部41に対して放射方向(ラジアル方向)に向かい、磁性材である内枠材42及び外枠材43を磁化することになり、円環状空洞部41を横切る方向の磁場が生成される。
このとき、円環状空洞部41と外枠材43との間には非磁性材からなる配向制御枠材45が設けられており、配向制御枠材45の薄肉部45aが厚肉部45bに比べて磁場が透過し易いことから、配向制御枠材45の薄肉部45aが磁束を集中させる集束部46として機能する。このため、円環状空洞部41内に充填された組成物Cmに対して内枠材42から放射方向に入射する磁力線(磁束)は配向制御枠材45の集束部46(薄肉部45a)を通じて外枠材43へ向かうことになり、円環状空洞部41内の組成物Cmには配向制御枠材45の集束部46に向かって磁束が集中するという磁束の粗密パターンを具備する配向磁場Hが得られる。
この結果、成形すべき異方性磁石となる組成物Cmには放射方向から傾斜した配向磁場Hに沿うように磁気的に配向が揃えられ、かつ、組成物Cmは内周側に所定数の磁極Mp、具体的には配向制御枠材45の集束部46間に対応する部位に磁極Mpを有する異方性磁石として成形される。
【0027】
この後、異方性磁石を冷却、固化させた後、図示外の型締めユニットにて金型30を開き、金型30から異方性磁石の成形品を取り出すようにすればよい。
このとき、配向・成形工程時の外部磁場Hとは異なり、図5(b)に示すように、成形品の取出工程において、外部磁場Hを反転させた外部磁場Hを作用させることが好ましい。この場合、内枠材42及び外枠材43の磁性材が図5(a)に示すような磁気ヒステリシス特性を有していると仮定すると、配向・成形工程において、外部磁場Hにて内枠材42及び外枠材43がMレベルに磁化することになるが、外部磁場Hの作用を停止しただけでは内枠材42、外枠材43には残留磁化が残ってしまう。尚、図5(a)中、横軸Houtは外部磁場を示し、縦軸Mは磁化レベルを示す。
しかしながら、外部磁場Hを反転させた外部磁場Hを作用させると、内枠材42及び外枠材43の残留磁化が消磁されるほか、異方性磁石からなる成形品についても脱磁することが可能である。このため、取出工程において、金型30と成形品との間には磁力による拘束力が低減することから、図示外の突出し機構にて金型30から成形品を簡単に取り出すことが可能である。
このような製造過程で得られた異方性磁石の成形品については、後述する実施例で示すように、着磁装置にて異方性磁石からなる成形品の各磁極Mpに着磁すると、従前のラジアル方向に配向した異方性磁石では困難であった表面磁束密度波形として所望の波形形状(例えば正弦波形に近似した波形形状)に簡単に調整することができる。
更に、本例では、配向制御枠材45と円環状空洞部41との間に円環状スリーブ44が設けられているため、円環状空洞部41に充填された組成物Cmと配向制御枠材45とが直接接触することはない。このため、配向制御枠材45の内周面の一部に段差部などが仮にあったとしても、金型30から成形品を取り出す際に成形品の表面性が損なわれる懸念は少ない。尚、本例では、円環状スリーブ44を用いているが、配向制御枠材45の内周面が滑らかな段差のない面であれば、円環状スリーブ44を用いなくてもよい。
【0028】
◎比較の形態1
本実施の形態に係る金型30の性能を評価する上で比較の形態1に係る金型30’を例に挙げて説明する。
比較の形態1に係る金型30’は、図3(c)に示すように、磁性材からなる内枠材42’と外枠材43’とで円環状空洞部41’を区画し、更に、外枠材43’と円環状空洞部41’との間に円環状スリーブ44’を設置し、実施の形態1の配向制御枠材45を取り除いたものである。
この場合において、金型30’に外部磁場Hを作用させると、図3(c)及び図4(b)に示すように、円環状空洞部41’内に充填された組成物Cmにはラジアル方向の配向磁場H’が働くことになり、成形すべき異方性磁石の表面磁束密度波形として所望の波形形状のものが得られないことが確認された。
【0029】
◎変形の形態1
図6(a)は実施の形態1に係る異方性磁石の成形用金型の変形の形態を示す説明図である。
同図において、金型30の基本的構成は、実施の形態1と略同様に、円環状の異方性磁石の内周面に複数(本例では8つ)の磁極Mpを所定間隔(本例では45度)毎に形成するものであり、金型枠材40として、円環状空洞部41の内側を区画する磁性材からなる円柱状の内枠材42と、円環状空洞部41の外側を区画する磁性材からなる外枠材43と、円環状空洞部41と外枠材43との間に設けられ、円環状空洞部41の外周部を仕切る例えば非磁性材からなる仕切り部材としての円環状スリーブ44と、を有しているが、実施の形態1とは異なる配向制御枠材45を用い、更に、配向制御枠材45に接触する外枠材43の内周面形状を実施の形態1とは異なる構成にしたものである。尚、実施の形態1と同様な構成要素については実施の形態1と同様な符号を付してここではその詳細な説明を省略する。
本例において、配向制御枠材45は、例えば非磁性材からなる肉厚一定の円環状部材47を備え、成形すべき異方性磁石の磁極Mp角度間隔と同じ周期間隔でスリット状開口48を開設するようにしたものである。ここで、スリット状開口48は成形すべき異方性磁石の各磁極Mpの中間に位置する箇所に開設されている。また、配向制御枠材45の外周面形状が断面円形であることから、外枠材43の孔部43c内周面が断面円形状に形成されている。
【0030】
本変形の形態によれば、外部磁場器50の励磁コイル51,52から外部磁場Hが金型30の円環状空洞部41に作用すると、実施の形態1と同様に、外部磁場Hは円環状空洞部41を放射方向に横切ろうとする。このとき、図6(a)(b)に示すように、金型30の円環状空洞部41の外周側には配向制御枠材45が設置されており、配向制御枠材45のスリット状開口48が円環状部材47の他の部分に比べて磁束が透過し易いことから、スリット状開口48が磁束を集中させる集束部46として機能する。このため、円環状空洞部41内に充填された組成物Cmに対して内枠材42から放射方向に入射する磁力線(磁束)は配向制御枠材45の集束部46(スリット状開口48)を通じて外枠材43へ向かうことになり、円環状空洞部41内の組成物Cmには配向制御枠材45の集束部46に向かって磁束が集中するという磁束の粗密パターンを具備する配向磁場Hが得られる。
この結果、成形すべき異方性磁石となる組成物Cmには放射方向から傾斜した配向磁場Hに沿うように磁気的に配向が揃えられ、かつ、組成物Cmは内周側に所定数の磁極Mp、具体的には配向制御枠材45の集束部46間の中間に位置する部位に磁極Mpを有する異方性磁石として成形される。
この後、実施の形態1と同様に、異方性磁石を冷却、固化させた後、外部磁場Hを反転させた外部磁場Hを作用させた後に図示外の型締めユニットにて金型30を開き、金型30から異方性磁石の成形品を取り出すようにすればよい。
また、本例では、配向制御枠材45はスリット状開口48が所定角度間隔で開設されているため、スリット状開口48と当該スリット状開口48縁部との間には段差部が生ずることになるが、組成物Cmと配向制御枠材45との間は円環状スリーブ44で仕切られているため、実施の形態1と同様に、異方性磁石の成形品を取り出す際に、成形品の表面性が損なわれる懸念はない。
【0031】
◎実施の形態2
図7(a)は実施の形態2に係る異方性磁石の成形用金型の要部を示す。
同図において、金型30の基本的構成は、実施の形態1と略同様に、円環状の異方性磁石の内周面に複数(本例では8つ)の磁極Mpを所定間隔(本例では45度)毎に形成するものであり、金型枠材40として、実施の形態1と略同様に、内枠材42及び外枠材43で円環状空洞部41を区画するものであるが、実施の形態1とは異なり、円環状空洞部41と内枠材42との間に設けられ、円環状空洞部41の内周部を仕切る例えば非磁性材からなる仕切り部材としての円環状スリーブ44と、この円環状スリーブ44と内枠材42との間に設けられ、円環状空洞部41に充填された組成物Cmに作用する配向磁場Hを制御する非磁性材からなる配向制御枠材49と、を有している。
本例において、配向制御枠材49は、図7(a)(b)に示すように、円環状スリーブ44の内周面に接触する円環状部材からなり、当該円環状部材の内周部形状が異方性磁石の各磁極Mp間隔と同じ周期で肉厚が滑らかに変化する凹凸状になっており、各磁極Mpに対応した箇所には凹部からなる薄肉部49aを配置すると共に、各磁極Mpの中間に位置する箇所には凸部からなる厚肉部49bを配置するようになっている。
また、内枠材42は円柱状部材の周面に配向制御枠材49の薄肉部49a及び厚肉部49bに対応して接触する凹凸部42dを有している。
【0032】
本実施の形態によれば、外部磁場器50の励磁コイル51,52による外部磁場Hを作用させると、図7(a)(b)に示すように、当該外部磁場Hは互いに反発して金型30の円環状空洞部41に対して放射方向(ラジアル方向)に向かい、磁性材である内枠材42及び外枠材43を磁化することになり、円環状空洞部41を横切る方向の磁場が生成される。
このとき、円環状空洞部41と内枠材42との間には非磁性材からなる配向制御枠材49が設けられており、配向制御枠材49の薄肉部49aが厚肉部49bに比べて磁場が透過し易いことから、配向制御枠材49の薄肉部49aが磁束を集中させる集束部46として機能する。このため、円環状空洞部41内に充填された組成物Cmに対して内枠材42から放射方向に入射する磁力線(磁束)は配向制御枠材49の集束部46(薄肉部49a)を通じて外枠材43へ向かうことになり、円環状空洞部41内の組成物Cmには配向制御枠材49の集束部46で一旦集中した磁束が拡散するという磁束の粗密パターンを具備する配向磁場Hが得られる。
この結果、成形すべき異方性磁石となる組成物Cmには放射方向から傾斜した配向磁場Hに沿うように磁気的に配向が揃えられ、かつ、組成物Cmは内周側に所定数の磁極Mp、具体的には配向制御枠材49の集束部46に対応する部位に磁極Mpを有する異方性磁石として成形される。
【0033】
◎実施の形態3
図8(a)は実施の形態3に係る異方性磁石の成形用金型の要部を示す。
同図において、金型30の基本的構成は、実施の形態1と略同様に、円環状の異方性磁石の内周面に複数(本例では8つ)の磁極Mpを所定間隔(本例では45度)毎に形成するものであり、金型枠材40として、実施の形態1と略同様に、内枠材42、外枠材43、円環状スリーブ44を有しているが、実施の形態1と異なり、円環状スリーブ44と外枠材43との間に設けられ、円環状空洞部41に充填された組成物Cmに作用する配向磁場Hを制御する非磁性材からなる外側配向制御枠材45と、円環状空洞部41と内枠材42との間に設けられ、円環状空洞部41に充填された組成物Cmに作用する配向磁場Hを制御する非磁性材からなる内側配向制御枠材49(実施の形態2の配向制御枠材に相当)と、を有している。
本例において、外側配向制御枠材45は実施の形態1で用いられた配向制御枠材45に相当する薄肉部45a及び厚肉部45bを備えており、外枠材43の孔部43c内周面には外側配向制御枠材45の薄肉部45a及び厚肉部45bと接触する凹凸部43dが形成されている。
一方、内側配向制御枠材49は実施の形態2で用いられた配向制御枠材49に相当する薄肉部49a及び厚肉部49bを備えており、内枠材42の外周面には内側配向制御枠材49の薄肉部49a及び厚肉部49bと接触する凹凸部42dが形成されている。
そして、外側配向制御枠材45の薄肉部45a、厚肉部45bは夫々内側配向制御枠材49の厚肉部49b、薄肉部49aに対向して配置されている。尚、本例では、実施の形態2と異なり、内側配向制御枠材49と円環状空洞部41との間には円環状スリーブは設けられていない。
【0034】
本実施の形態によれば、外部磁場器50の励磁コイル51,52による外部磁場Hを作用させると、図8(a)(b)に示すように、当該外部磁場Hは互いに反発して金型30の円環状空洞部41に対して放射方向(ラジアル方向)に向かい、磁性材である内枠材42及び外枠材43を磁化することになり、円環状空洞部41を横切る方向の磁場が生成される。
このとき、円環状スリーブ44と外枠材43との間には非磁性材からなる外側配向制御枠材45が設けられており、外側配向制御枠材45の薄肉部45aが厚肉部45bに比べて磁場が透過し易いことから、外側配向制御枠材45の薄肉部45aが磁束を集中させる集束部46として機能する。
更に、円環状空洞部41と内枠材42との間には非磁性材からなる内側配向制御枠材49が設けられており、内側配向制御枠材49の薄肉部49aが厚肉部49bに比べて磁場が透過し易いことから、内側配向制御枠材49の薄肉部49aが磁束を集中させる集束部46として機能する。
このため、円環状空洞部41内に充填された組成物Cmに対して内枠材42から放射方向に入射する磁力線(磁束)は、内側配向制御枠材49の集束部46(薄肉部49a)及び外側配向制御枠材45の集束部46(薄肉部45a)を通じて外枠材43へ向かうことになる。
つまり、本例では、円環状空洞部41内の組成物Cmには、内側配向制御枠材49の集束部46で一旦集中した磁束が外側配向制御枠材45の集束部46を通じて外枠材43へと向かうという磁束の粗密パターンを具備する配向磁場Hが得られる。
この結果、成形すべき異方性磁石となる組成物Cmには放射方向から傾斜した配向磁場Hに沿うように磁気的に配向が揃えられ、かつ、組成物Cmは内周側に所定数の磁極Mp、具体的には内側配向制御枠材49の集束部46に対応する部位に磁極Mpを有する異方性磁石として成形される。
特に、本例では、円環状空洞部41を挟むように対構成の外側配向制御枠材45及び内側配向制御枠材49が設置されているため、実施の形態1,2のように、円環状空洞部41の外側又は内側の一方に配向制御枠材45又は49を設置する態様に比べて、組成物Cmに対する配向磁場Hのパターンの形成精度が高められる。
【0035】
◎実施の形態4
図9(a)は実施の形態4に係る異方性磁石の成形用金型の要部を示す。
本例に係る金型30は、板状の異方性磁石に複数の磁極Mpを配列する態様に適用されるものであり、異方性磁石の材料を含む組成物Cmが充填される直線状空洞部61を有し、金型枠材40としては、直線状空洞部61を挟むように磁性材からなる磁場生成枠材62,63を対向して設置し、更に、直線状空洞部61と磁場生成枠材63との間に仕切り部材としての仕切り板64を設置すると共に、当該仕切り板64と一方の磁場生成枠材62との間には直線状空洞部61に充填された組成物Cmに作用する配向磁場Hが制御可能な配向制御枠材65を設置したものである。
本例において、配向制御枠材65は成形すべき異方性磁石の磁極Mpに面していない側に設置されており、磁極Mpの間隔と同じ周期で肉厚が滑らかに変化するものであり、磁極Mpの中間に位置する部位に薄肉部65aを配置すると共に、磁極Mpに対応する部位に厚肉部65bを配置したものである。
更に、本例では、図示外の外部磁場器は直線状空洞部61と交差する所定の一方向に向かって外部磁場Hを作用させるものであり、必要に応じて外部磁場Hを反転させた外部磁場をも作用させることを可能とするものである。
【0036】
本実施の形態によれば、図示外の外部磁場器による外部磁場Hを作用させると、図9(a)(b)に示すように、当該外部磁場Hは直線状空洞部61を交差する方向に向かい、磁性材からなる磁場生成枠材62,63を磁化する。このとき、外部磁場Hは直線状空洞部61に充填された組成物Cmを横切る磁束を生成することになるが、配向制御枠材65の薄肉部65aが厚肉部65bに比べて磁場を透過し易いことから、配向制御枠材65の薄肉部65aが磁束を集中させる集束部66として機能する。
このため、直線状空洞部61内に充填された組成物Cmに対して一方の磁場生成枠材62から所定方向に入射する磁力線(磁束)は配向制御枠材65の集束部66(薄肉部65aに相当)を通じて他方の磁場生成枠材63へ向かうことになり、直線状空洞部61内の組成物Cmには配向制御枠材65の集束部66に向かって磁束が集中するという磁束の粗密パターンを具備する配向磁場Hが得られる。
この結果、成形すべき異方性磁石となる組成物Cmには所定方向から傾斜した配向磁場Hに沿うように磁気的に配向が揃えられ、かつ、組成物Cmは一側に所定数の磁極Mp、具体的には配向制御枠材65の集束部66の中間に対応する部位に磁極Mpを有する異方性磁石として成形される。
この後、実施の形態1と同様に、異方性磁石を冷却、固化させた後、外部磁場Hを反転させた外部磁場(図示せず)を作用させた後に図示外の型締めユニットにて金型30を開き、金型30から異方性磁石の成形品を取り出すようにすればよい。
【実施例
【0037】
◎実施例1
本実施例は実施の形態1に係る異方性磁石の成形用金型(図3参照)を具現化したものであり、円環状の異方性磁石の内周面に8つの磁極Mpを形成するものである。
本例において、円環状空洞部41は外径φ25×内径φ21×長さL7mm、内枠材42、外枠材43を構成する磁性材はNAK55、円環状スリーブ44、配向制御枠材45を構成する非磁性材はSUS303をそれぞれ加工して組み込んだ。また、円環状スリーブ44の厚さは0.5mmとした。
本例の異方性磁石の成形用金型30を用いて住友金属鉱山株式会社製Sm-Fe-N系磁石成形用ペレット(商品名:WellmaxS4A-7M)原料を、シリンダ温度を210~260℃、金型温度60~80℃で射出成形して異方性磁石の作製を行った。
成形後に金型30内で反転磁場(外部磁場H)を加えて異方性磁石(成形品)の脱磁を行った。脱磁後の成形品は金型30の図示外の突出し機構で簡単に取り出せ、トレーに並べた成形品は互いに僅かに吸着する程度の磁力であった。尚、脱磁処理の効果については実施例2,3も同様である。
得られた異方性磁石(成形品)を内周8極の着磁治具で着磁した後、成形品の表面磁束密度分布をシミュレーションしたところ、図10(a)に示す結果が得られた。
同図によれば、着磁後の成形品は8磁極の極異方性配向に沿って着磁されていることが理解される。
また、ガウスメータのプローブを成形品の内周面に接触し、成形品を回転しながら、着磁後の成形品の表面磁束密度波形Brを測定したところ、図10(b)に示すような正弦波形に近似した波形形状が得られることが確認でき、そのピーク値は113mT(1.13kOeと同じ)であった。
【0038】
◎実施例2
本実施例は実施の形態2に係る異方性磁石の成形用金型(図7参照)を具現化したものであり、円環状の異方性磁石の内周面に8つの磁極Mpを形成するものである。
本例において、円環状空洞部41は外径φ25×内径φ21×長さL7mm、内枠材42、外枠材43を構成する磁性材はNAK55、円環状スリーブ44、配向制御枠材49を構成する非磁性材はSUS303をそれぞれ加工して組み込んだ。また、円環状スリーブ44の厚さは0.5mmとした。
本例の異方性磁石の成形用金型30を用いて住友金属鉱山株式会社製Sm-Fe-N系磁石成形用ペレット(商品名:WellmaxS4A-7M)原料を、シリンダ温度を210~260℃、金型温度60~80℃で射出成形して異方性磁石の作製を行った。
得られた異方性磁石(成形品)を内周8極の着磁治具にて着磁した後、前述したようにガウスメータを用いて成形品の表面磁束密度波形Brを測定したところ、図11に示すような正弦波形に近似した波形形状が得られることが確認でき、そのピーク値は199mT(1.99kOeと同じ)であった。
【0039】
◎実施例3
本実施例は実施の形態3に係る異方性磁石の成形用金型(図8参照)を具現化したものであり、円環状の異方性磁石の内周面に8つの磁極Mpを形成するものである。
本例において、円環状空洞部41は外径φ25×内径φ21×長さL7mm、内枠材42、外枠材43を構成する磁性材はNAK55、円環状スリーブ44、外側配向制御枠材45及び内側配向制御枠材49を構成する非磁性材はSUS303をそれぞれ加工して組み込んだ。また、円環状スリーブ44の厚さは0.5mmとした。
本例の異方性磁石の成形用金型30を用いて住友金属鉱山株式会社製Sm-Fe-N系磁石成形用ペレット(商品名:WellmaxS4A-7M)原料を、シリンダ温度を210~260℃、金型温度60~80℃で射出成形して異方性磁石の作製を行った。
得られた異方性磁石(成形品)を内周8極の着磁治具にて着磁した後、ガウスメータを用いて成形品の表面磁束密度波形Brを測定したところ、図12(a)に示すような正弦波形に近似した波形形状が得られることが確認でき、そのピーク値は196mT(1.96kOeと同じ)であった。
更に、ピーク値Bpで規格化した成形品の表面磁束密度波形Br/Bpは図12(b)に示すように正弦波形に極めて近似した極異方性を示す波形であることが確認された。
【0040】
◎比較例1
本比較例は、永久磁石を組み込んだ異方性磁石の成形用金型であって、円環状の異方性磁石の外周面に4つの磁極Mpを形成するものである。
本例において、金型30’は、図13(a)に示すように、金型枠材70で円環状空洞部71を区画し、例えば円環状空洞部71の外周に面した部位にN,Sが2つずつ交互に配列される配向用永久磁石72を複数(本例では8つ)組み込み、円環状空洞部71に充填した組成物Cmに対して配向用永久磁石72による配向磁場を与えるものである。尚、本例では、金型枠材70は、円環状空洞部71の内側を区画する内枠材73と、配向用永久磁石72の外周側を保持する外枠材74と、円環状空洞部71の外周を区画し、配向用永久磁石72の内周側を保持する円環状スリーブ75とを備えている。
本例において、円環状空洞部71は外径φ27.6×内径φ19×長さL27mmで配向用永久磁石72はNdFeB焼結磁石(42MGOe)を8個用いた。
そして、作製した異方性磁石の成形用金型を母型に組み込み、住友金属鉱山株式会社製Sm-Fe-N系磁石成形用ペレット(商品名:WellmaxS3A-12M)原料を、シリンダ温度を210~260℃、金型温度60~80℃で射出成形して異方性磁石を作製した。
得られた異方性磁石(成形品)を外周4極の着磁治具で着磁し、ガウスメータを用いて成形品の表面磁束密度波形Brを測定したところ、図13(b)に示すように正弦波形に近似した波形形状が得られ、そのピーク値は206mT(2.06kOeと同じ)であった。
但し、成形後の成形品は金型30’の突出し機構だけでは容易に取り出せなかったため、手で成形品を掴んで取り出しを行った。取り出した成形品をトレーに並べる際には、並んだ成形品に強く吸着するため筒状に吸着させた。吸着させる際には衝撃に因る割れや欠けに注意して吸着させた。
本金型は、実施例1に対して1.7倍の費用と2倍の期間を要した。
【0041】
◎比較例2
本比較例は、実施の形態1に示す異方性磁石の成形用金型から配向制御枠材45を取り除いた態様であり、外部磁場を作用させることで異方性磁石を成形するものである。但し、本比較例では、円環状空洞部41は外径φ25×内径φ21×長さL30mmとした。
本比較例において、実施例1と同様に、着磁後の成形品の表面磁束密度波形Brを測定したところ、図14に示すように、正弦波形には近似しない波形形状になることが理解される。これにより、成形品の表面磁束密度波形を所望のものにするには、異方性磁石の成形用金型の構成要件として配向制御枠材45又は49が必要不可欠であることが理解された。
【符号の説明】
【0042】
1 成形用金型
2 金型枠材
3 空洞部
4(4a,4b) 磁場生成枠材
5 配向制御枠材
6 集束部
7 薄肉部
8 厚肉部
9 仕切り部材
Cm 組成物
H,H’ 配向磁場
外部磁場
外部磁場
Mp 磁極
20 射出ユニット
21 シリンダ
22 ホッパ
23 ヒータ
24 スクリューロッド
25 射出口
26 供給経路
30,30’ 金型
31 接続ユニット
32 固定側取付板
34 可動側取付板
35 可動側型板
PL 金型分離面
40 金型枠材
41,41’ 円環状空洞部
42,42’ 内枠材
42d 凹凸部
43,43’ 外枠材
43c 孔部
43d 凹凸部
44,44’ 円環状スリーブ
45 配向制御枠材
45a 薄肉部
45b 厚肉部
46 集束部
47 円環状部材
48 スリット状開口
49 配向制御枠材
49a 薄肉部
49b 厚肉部
50 外部磁場器
51 励磁コイル
52 励磁コイル
61 直線状空洞部
62 磁場生成枠材
63 磁場生成枠材
64 仕切り板
65 配向制御枠材
65a 薄肉部
65b 厚肉部
66 集束部
70 金型枠材
71 円環状空洞部
72 配向用永久磁石
73 内枠材
74 外枠材
75 円環状スリーブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14