(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】顆粒状食品組成物及びこれを含む飲料、並びに顆粒状食品組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20220830BHJP
A23L 27/10 20160101ALI20220830BHJP
【FI】
A23L27/00 A
A23L27/10 C
(21)【出願番号】P 2018125638
(22)【出願日】2018-06-30
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000116297
【氏名又は名称】ヱスビー食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100145458
【氏名又は名称】秋元 正哉
(72)【発明者】
【氏名】中川 栄治
(72)【発明者】
【氏名】白山 慎
(72)【発明者】
【氏名】神山 愛
(72)【発明者】
【氏名】白築 和大
【審査官】飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/102325(WO,A1)
【文献】特開2004-357616(JP,A)
【文献】特開2008-104435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA(STN)
日経テレコン
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シナモン粉末と、乳化剤と、油脂と、造粒用バインダーとを含む顆粒状食品組成物であって、
前記顆粒状食品組成物全量に対する前記シナモン粉末の含有量は、40重量%から90重量%であり、
粒径75μm以下の前記シナモン粉末が、全シナモン粉末の90%以上を占める粒径分布となる、
顆粒状食品組成物。
【請求項2】
前記シナモン粉末の、前記粒径分布におけるピーク粒径値が、40μm以下である、
請求項1に記載の顆粒状食品組成物。
【請求項3】
前記乳化剤のHLB値が、6.0から9.0である、
請求項1又は2に記載の顆粒状食品組成物。
【請求項4】
粒径1.00mm以下の顆粒である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の顆粒状食品組成物。
【請求項5】
飲料用である、請求項1から4のいずれか一項に記載の顆粒状食品組成
物。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載の顆粒状食品組成物の製造方法であって、
シナモンを粉末状に粉砕するステップと、
少なくとも、得られたシナモン粉末と、乳化剤と、油脂とを混合するステップと、
得られた混合物に対して、造粒用バインダーを添加し、前記混合物を顆粒状に成形するステップと、
を含む、顆粒状食品組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顆粒状食品組成物及びこれを含む飲料、並びに顆粒状食品組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シナモンは、クスノキ科に属する常緑樹の樹皮を乾燥させて得られる香辛料であり、従来から利用されている。特に、シナモンは、含有成分に基づく血流改善作用、血糖値の安定化作用、抗酸化作用、殺菌・抗菌作用など、人体に好影響を与え得る効果効能を奏するものとして、近年の健康志向の高まりと相まって、更に注目を集めている。中でも、粉末状のシナモン(以下、「シナモン粉末」)を飲料に混ぜて飲食するなどの飲食形態が、広く普及している。
【0003】
前述のように、シナモンは疎水性の樹皮を乾燥させたものである。そのため、何らかの処理を施さなければ、飲料に添加されたシナモン粉末は、親水性に乏しいため、その中で速やかに分散しない。特に、添加されたシナモン粉末は、飲料表面に凝集し、所謂ダマと呼ばれるママコを形成する。このような事情から、シナモン粉末を飲料に速やかに分散させるための技術が求められている。
【0004】
ここで、温水や水に添加されるに際し、優れた溶解性を示すママコ形成性成分を含有する顆粒状組成物と、その製造方法が、特許文献1に開示されている。より具体的には、特許文献1に開示の技術は、予めママコ形成性成分と乳化剤とを混合した混合物を調製し、次いで残りの成分を前記混合物と混合し、更に造粒して得られる顆粒状組成物と、その製造方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1には、ママコ形成性成分として、油分を含む食品由来の成分が記載されているが、その例示として、ココアパウダーや粉ミルクが挙げられるに留まる。すなわち、特許文献1に記載の顆粒状組成物として、シナモンを含有することは想定されていない。また、特許文献1には、粉末のママコ形成性成分を顆粒状に成形することは、明示されていない。
【0007】
従って、特許文献1に開示の顆粒状組成物は、シナモン、特にその粉末を造粒することに関して、開示も示唆もしていない。このようなことから、シナモン粉末を含む食品組成物を飲料に均一に分散させるためには、特許文献1に開示の技術に加えて、更に相応の試行錯誤が必要となる。
【0008】
更には、シナモン粉末を飲料に含有させる場合、それに起因する口腔内でのザラツキ感(以下、単に「ザラツキ感」と言う。)が生じ得るところ、特許文献1には、それを解決するための技術事項は一切開示されていない。すなわち、特許文献1に記載の技術は、そのような課題を解決することを目的とせず、これをそのまま用いたとしても、ザラツキ感を解消することができない。
【0009】
上記課題に鑑み、本発明は、飲料に添加された際の分散性を向上させると共に、シナモン粉末を用いた場合に生じ得るザラツキ感を感じさせない顆粒状食品組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、前記顆粒状食品組成物を含む飲料を提供することを目的とする。更に、前記顆粒状食品組成物の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る顆粒状食品組成物は、
シナモン粉末と、乳化剤と、油脂と、造粒用バインダーとを含み、
前記顆粒状食品組成物全量に対する前記シナモン粉末の含有量は、40重量%から90重量%であり、
粒径75μm以下の前記シナモン粉末が、全シナモン粉末の90%以上を占める粒径分布となることを特徴とする。
また、本発明に係る顆粒状食品組成物は、
前記シナモン粉末の、前記粒径分布におけるピーク粒径値が、40μm以下であることが好ましい。
更に、本発明に係る顆粒状食品組成物は、
前記乳化剤のHLB値が、6.0から9.0であることが好ましい。
更に、本発明に係る顆粒状食品組成物は、
粒径1.00mm以下の顆粒であることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る飲料は、前記した顆粒状食品組成物を含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る顆粒状食品組成物の製造方法は、
前記した顆粒状食品組成物を製造する方法であって、
シナモンを粉末状に粉砕するステップと、
少なくとも、得られたシナモン粉末と、乳化剤と、油脂とを混合するステップと、
得られた混合物に対して、造粒用バインダーを添加し、前記混合物を顆粒状に成形するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、シナモン粉末、乳化剤、油脂を含む混合物を造粒用バインダーによって顆粒化することで、粉末そのままの状態に比べて表面積を少なくした顆粒状食品組成物を提供することができる。そのため、例えば、飲料に添加された顆粒状食品組成物と、その近傍に位置する他の顆粒状食品組成物との接点を減らすことができる。これと、混合物に含有される油脂の作用との相乗によって、複数の顆粒状食品組成物が凝集してママコが形成される事態を防ぐことができる。すなわち、本発明に係る顆粒状食品組成物は、飲料中に速やかに分散される。
【0014】
また、造粒用バインダーは飲料に溶解するため、飲料中で速やかに分散された顆粒状食品組成物が崩壊し、これに含まれるシナモン粉末が等方的にばらけることとなる。その結果、顆粒状食品組成物に含有されるシナモン粉末に関して、飲料での分散性をより向上させることができる。
【0015】
更に、本発明は、粒径75μm以下のシナモン粉末の割合が、全シナモン粉末の90%以上となるような粒径分布を有するため、飲用された際のザラツキ感を大きく低減させることができる。
【0016】
また、本発明に係る飲料は、前記した顆粒状食品組成物を含むため、顆粒状食品組成物を均一に分散させ、且つ飲用された際のザラツキ感を低減可能とする技術的効果を奏する。更に、本発明に係る顆粒状食品組成物の製造方法は、飲料への速やかな分散が可能で、飲用された際のザラツキ感を低減可能な顆粒状食品組成物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[顆粒状食品組成物]
本発明の一実施形態に係る顆粒状食品組成物を詳細に説明する。本実施形態に係る顆粒状食品組成物は、飲料に添加されることが好ましい。ただし、添加される飲料の種類は、特に限定されるものではない。飲料の種類として、例えば、コーヒー、紅茶、ココア、飲料水、牛乳、豆乳などが挙げられる。
【0018】
本実施形態に係る顆粒状食品組成物は、シナモン粉末、乳化剤、油脂、造粒用バインダーを含む。また、本実施形態に係る顆粒状食品組成物は、必要に応じて、糖類、塩類、各種添加剤、香辛料、デキストリンなど他の成分を含んでもよい。
【0019】
本実施形態において、シナモン粉末の含有量は、顆粒状食品組成物全量に対して、40重量%から90重量%とする。また、シナモン粉末の含有量は、45重量%から80重量%であることがより好ましく、50重量%から70重量%であることが更に好ましい。特に、シナモン粉末の含有量の条件を45重量%から80重量%とすれば、十分なシナモン風味を担保しつつ、飲料中での分散性の向上とザラツキ感の低減を図ることができる。
【0020】
また、含有されるシナモン粉末は、粒径75μmのシナモン粉末が、全シナモン粉末の90%以上を占める粒径分布となるように調製される。このとき、前記粒径分布におけるシナモン粉末のピーク粒径値が、40μm以下であることが好ましい。更に、ピーク粒径値が、20μmから40μmであることが好ましい。シナモン粉末のピーク粒径値を40μm以下とすることで、この条件外のものと比べ、ザラツキ感を著しく低減させることができる。ただし、シナモン粉末が微細すぎると(例えば、20μmを下回るような粒径となる場合)、シナモン粉末、乳化剤、油脂を含む混合物を造粒すること(顆粒化)が困難となる。
【0021】
含有される乳化剤は、シナモン粉末などの成分と混合されて使用される。乳化剤の種類は、特に限定されるものではないが、例えば、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、レシチン、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルなどが例示される。この中で、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、又はショ糖脂肪酸エステルであることが好ましく、モノグリセリン脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステルであることがより好ましい。これらの乳化剤の一種を用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0022】
本実施形態に係る乳化剤のHLB(Hydrophilic Lipophilic Balance)値は、特に限定されるものではないが、6.0から9.0であることが好ましい。また、乳化剤のHLBは、7.0から8.0であることが更に好ましい。上記条件のHLB値を有する乳化剤を用いることで、顆粒状食品組成物の各種飲料中での分散性を向上させることができる。
【0023】
また、乳化剤の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、後述する油脂の含有量に対して、5.0重量%から15.0重量%であることが好ましい。また、油脂に対する乳化剤の含有量は、8.0重量%から12.0重量%であることがより好ましい。乳化剤の含有量を上記条件とすることで、シナモン粉末、乳化剤、及び油脂をより均一に混合することができる。
【0024】
含有される油脂は、シナモン粉末、乳化剤などの成分と混合されて使用される。油脂の状態は、特に限定されるものではないが、シナモン粉末、乳化剤及び他の含有成分との均一混合の観点から、常温で液体のもの(液体油脂)が好ましい。
【0025】
油脂の種類は、特に限定されるものではないが、例えば、コーン油、綿実油、ピーナッツオイル、菜種油、紅花油、ごま油、大豆油、ヒマワリ油、こめ油などが挙げられる。この中で、菜種油、コーン油、又は大豆油であることが好ましく、菜種油であることが更に好ましい。
【0026】
油脂の含有量は、特に限定されるものではないが、顆粒状食品組成物全量に対して、0.1重量%から10.0重量%であることが好ましく、2.0重量%から9.0重量%であることがより好ましく、4.0重量%から8.0重量%であることが更に好ましい。
【0027】
上記油脂の含有量が0.1重量%より少ない場合、油脂が、シナモン粉末、乳化剤、その他含有成分を含む混合物に均一になじまず、これらの成分の均一混合を阻害する可能性が生じる。これに対して、上記油脂の含有量が10.0重量%を超える場合、上記混合物の湿潤性が過度に高まることから、混合物の顆粒化が困難となる。
【0028】
また、油脂を上記条件で含有させることで、飲料中における分散性を向上させることができる。このような効果の発現機序は、現時点では特定されていないが、例えば、シナモン粉末の表面が油脂に均一に覆われる結果、乳化剤がシナモン粉末に付着しやすい環境が創出されたためと考えられる。すなわち、シナモン粉末に付着する乳化剤の割合が増えるため、シナモン粉末表面の大部分が乳化剤によって覆われる。これにより、乳化剤によって覆われた粉末体の外側が親水化されることとなり、飲料中での分散性が向上すると考えられる。
【0029】
含有される造粒用バインダーは、シナモン粉末、乳化剤、油脂を含む混合物を顆粒化するために用いられる。それに加え、シナモン粉末の高分散性を図る観点から、含有される造粒用バインダーは、飲料添加後のいずれかの段階でその飲料に溶解する性質を備える。
【0030】
本実施形態に係る造粒用バインダーは、このような役割を果たすことができれば、特に限定されるものではない。造粒用バインダーの種類として、例えば、澱粉、加工デンプン、キサンタンガム、タマリンドガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、タラガムのいずれか一種又は複数種を含有する水溶液が挙げられる。この中で、澱粉、加工デンプン、又はキサンタンガムがより好ましい。造粒用バインダーとして、これらを用いることで、原料コストを低減することが可能であると共に、飲料に添加された際に容易に溶解し、シナモン粉末の分散性向上に大きく寄与する。
【0031】
造粒用バインダーとして澱粉水溶液を用いる場合、澱粉(溶質)の濃度は、1%から3%とするなどが例示される。ただし、これに限定されるものではなく、溶質として澱粉以外の成分を用いる場合、その濃度は適宜調整可能である。また、造粒用バインダーの量に関しても特に限定されるものではなく、適宜調整可能である。
【0032】
[顆粒状食品組成物を含む飲料]
前述のように、本実施形態に係る顆粒状食品組成物は、飲料に添加されることが好ましい。ここで、本実施形態に係る飲料の容器(ボトル)への収容態様は、特に限定されるものではないが、例えば下記が考えられる。
【0033】
(1)例えば、コーヒー、紅茶、ココア、飲料水、牛乳、豆乳などの飲料基液と、顆粒状食品組成物とを予め混合し、この混合液を飲料用容器に充填する形態。
(2)容器本体と、密封状態のカートリッジ部とを備え、容器本体とカートリッジ部とが空間的に分離される構造の飲料用容器において、容器本体側に飲料基液を充填し、カートリッジ部側に顆粒状食品組成物を充填する形態。
【0034】
特に、本実施形態に係る飲料を前記(2)のような形態とすることで、シナモンの良好な風味を実際に消費者に飲用されるまで保持することができる。また、顆粒状食品組成物は、カートリッジ部内に密封されるため、大気に触れて劣化しにくい環境を作ることができる。
【0035】
[顆粒状食品組成物及び飲料の製造方法]
次に、前述の顆粒状食品組成物の製造方法について説明する。まず、乾燥させたシナモン樹皮を粉末状に粉砕する。粉砕手段は、特に限定されるものではないが、乳棒と乳鉢を用いて人的にシナモン樹皮を粉砕する手段や、各種粉砕装置を用いてシナモン樹皮を粉砕する手段などが挙げられる。
【0036】
続いて、得られたシナモン粉末と、乳化剤と、油脂と(必要に応じて他の成分と)を各々所定量計量し、これらを混合する。混合手段は、各成分が均一に混合されるものであれば、特に限定されるものではない。混合手段の一例として、フードプロセッサ、ビーター、その他の各種混合装置が挙げられる。
【0037】
続いて、得られた混合物に造粒用バインダーを添加する。これにより、混合物を顆粒状に成形する。造粒(顆粒)手段は、特に限定されるものではないが、湿式造粒法によるものが好ましい。造粒用バインダーとして、前述したような水溶液を用いる場合、この水溶液の溶媒を瞬時に乾燥させることが可能な流動層造粒法によるものが、より好ましい。
【0038】
上記各工程を経ることで、本実施形態に係る顆粒状食品組成物が製造される。ここで、製造された顆粒状食品組成物は、任意の包装体に充填されてもよいし、飲料用容器に充填されてもよい。
【0039】
本実施形態に係る顆粒状食品組成物が飲料用容器に充填される場合、例えば、コーヒー、紅茶、ココア、飲料水、牛乳、豆乳などの飲料基液に、前記顆粒状食品組成物を混合する。更に、飲料基液と顆粒状食品組成物を混ぜ合わせた飲料を飲料用容器に充填する。飲料の混合と充填の手段は任意であるが、一例として、従来から用いられている飲料ボトリングシステムなどが挙げられる。
【0040】
更に、前述したような飲料基液と顆粒状食品組成物とを別々に収容する飲料用容器を用いる場合、人的又は機械的な手段によって、容器本体に飲料基液を充填し、カートリッジ部に顆粒状食品組成物を充填する。最終的に、顆粒状食品組成物を充填したカートリッジ部を密封した上で、これを容器本体と一体化させ、飲料製品を製造する。
【実施例】
【0041】
以上説明した顆粒状食品組成物において、具体的な実施の例を以下に示す。なお、本発明は、下記の実施例により限定及び制限されるものではない。
【0042】
本実施例として、シナモン粉末、ポリグリセリン脂肪酸エステル(乳化剤)、菜種油(油脂)、デキストリン、澱粉水溶液(造粒用バインダー)、を含む顆粒状食品組成物を用いた。ここで、シナモン粉末の粒径(前記粒径分布において、ピークを示す粒径値)は、40μmである。また、乳化剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル)は、HLB値が7.0から8.0のものを用いた(実施例1)。
【0043】
上記実施例1に係る顆粒状食品組成物の各成分の含有量(顆粒状食品組成物全量に対する重量%)を下表1に示す。また、顆粒化されていない試料(比較例1)、顆粒化されているが、乳化剤と油脂を用いない試料(比較例2)、シナモン粉末のみを用いた試料(比較例3)の各々に関する成分含有量(重量%)を併せて下表1に示す。
【0044】
【0045】
<冷水での分散性評価>
表1に示す各試料を冷水に添加した際の分散性評価試験の結果を下表2に示す。ここで、試験方法の詳細は、下記の通りである。すなわち、試料の数分だけビーカーを用意し、10℃以下に冷却された水200mlを各ビーカーに注いだ。続いて、実施例1から比較例3までの4つの試料(各0.6g)の夫々を冷水の注がれた各ビーカーに添加し、スターラーを用いてこれを撹拌した。そのときの分散状況を目視で確認した。
【0046】
【0047】
表2の評価指標は、下記の通りである。
・評価「○」:添加後冷水内に漂う状態となり、冷水内に分散した。
・評価「△」:添加後撹拌を開始しなければ、冷水内に分散する状態とはならず、冷水表面に凝集し浮いた状態となるが、撹拌を始めれば冷水に分散した。
・評価「×」:30秒以上撹拌しても、撹拌を止めるとすぐに冷水表面に凝集し浮いた状態となった。
【0048】
表2に示されるように、実施例1のみ評価「○」となった。すなわち、シナモン粉末と油脂と乳化剤とを混ぜ、その混合物を顆粒化させることで初めて、高い分散性の組成物を得られることが示された。また、実施例1は、一般的に分散性が低下すると考えられる冷水に添加されても、高い分散性を示した。
【0049】
<複数種の飲料基液における分散性評価>
実施例1と比較例3の試料を、複数種の飲料基液(10℃以下の冷水、80℃以上の温水、80℃以上のコーヒー、80℃以上の紅茶、10℃以下の豆乳、10℃以下の牛乳)に添加し、それぞれの分散性を評価した。この評価試験の結果を下表3に示す。
【0050】
ここで、試験方法の詳細は、下記の通りである。すなわち、実施例1及び比較例3の試料(各0.6g)を、ホット系基液(温水、コーヒー、紅茶)に関しては150ml、コールド系基液(冷水、豆乳、牛乳)関しては200mlをビーカーに入れ、必要に応じてスターラーを用い試料を含む基液を撹拌した。そのときの分散状況を目視で確認した。
【0051】
【0052】
表3の評価指標は、下記の通りである。
・評価「◎」:撹拌しなくても、基液内に分散した。
・評価「○」:10秒程度の撹拌で基液内に分散した。
・評価「△」:30秒程度撹拌を継続しなければ、基液内に分散しなかった。
・評価「×」:30秒以上撹拌し、その後撹拌を止めると、基液表面に試料が凝集した(すなわち、分散しなかった。)。
【0053】
表3に示されるように、実施例1は、ホット系、コールド系を問わず、全ての基液で高い分散性を示した。これに対して、比較例3は、一般に分散し易い傾向を持つホット系の基液では、ある程度の分散性を示したが、コールド系の基液では、分散しなかった。
【0054】
<ザラツキ感の評価>
実施例1の試料と、配合量は実施例1と共通であるが、含有されるシナモン粉末の粒径(前記粒径分布において、ピークを示す粒径値)が80μmである試料(比較例4)を各々温水に添加し、これを飲用した際の口腔内でのザラツキ感の評価試験を行った。その官能評価の結果を下表4に示す。
【0055】
ここで、試験方法の詳細は、下記の通りである。すなわち、試料の数分だけビーカーを用意し、80℃以上の温水150mlを各ビーカーに注いだ。続いて、実施例1及び比較例4の試料(各0.6g)の夫々を温水の注がれたビーカーに添加し、スターラーを用いて撹拌し、試料を均一に分散させた。この状態の各試料を8名のパネラーが飲用した。
【0056】
【0057】
表4の評価指標は、下記の通りである。
・評価「○」:ザラツキ感を感じなかった。
・評価「×」:ザラツキ感が口腔内に残った。
【0058】
表4に示されるように、シナモン粉末の粒径が40μm程度にまで至ると、ザラツキ感が大きく低減されることが示された。これに対して、シナモン粉末の粒径が80μm程度であると、ザラツキ感が口腔内に残ることが示された。
【0059】
以上、本発明に係る顆粒状食品組成物及びこれを含む飲料、並びに顆粒状組成物の製造方法の詳細を説明した。ただし、上記説明は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定する趣旨で記載されたものではない。本発明には、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るものを含み得る。また、本発明にはその等価物が含まれる。