(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】弱音装置
(51)【国際特許分類】
G10D 9/06 20060101AFI20220831BHJP
G10D 7/14 20200101ALN20220831BHJP
【FI】
G10D9/06
G10D7/14
(21)【出願番号】P 2019567432
(86)(22)【出願日】2018-01-23
(86)【国際出願番号】 JP2018001988
(87)【国際公開番号】W WO2019146002
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000155975
【氏名又は名称】株式会社鈴木楽器製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002011
【氏名又は名称】特許業務法人井澤国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100072039
【氏名又は名称】井澤 洵
(74)【代理人】
【識別番号】100123722
【氏名又は名称】井澤 幹
(74)【代理人】
【識別番号】100157738
【氏名又は名称】茂木 康彦
(72)【発明者】
【氏名】井上 得一
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3153666(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0276615(US,A1)
【文献】米国特許第01705076(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 7/00-11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼気を流通させることによりリードを振動することで音を発生させる楽器に取り付け、前記リードが発生する音を流通させるための取り入れ部を具備する取り付け部と、
前記取り付け部に取り付けて、前記取り入れ部から取り入れられた音を通過させてその音の音量を減少させる通路部を具備する弱音部と、を有し、
前記通路部はその断面が段階的にあるいは無段階に減少する
とともに、
前記弱音部は、セルを有し、前記セルは、薄板で欠円状を呈する側部材と、壁部とを有し、前記通路部は、前記側部材と、前記壁部とによって構成され、前記セルの外部から内部に向かって渦巻状に巻き込む形状を呈することを特徴とする弱音装置。
【請求項2】
前記取り付け部は、取り付け上部と取り付け下部を有する請求項1記載の弱音装置。
【請求項3】
前記弱音部は、前記セルを複数有する請求項1または2記載の弱音装置。
【請求項4】
呼気を流通させることによりリードを振動することで音を発生させる楽器に取り付け、前記リードが発生する音を流通させるための取り入れ部を具備する取り付け部と、
前記取り付け部に取り付けて、前記取り入れ部から取り入れられた音を通過させてその音の音量を減少させる通路部を具備する弱音部と、を有し、
前記通路部はその断面が段階的にあるいは無段階に減少するとともに、
前記弱音部は、上部弱音部材と下部弱音部材と、を有し、
前記上部弱音部材は、少なくとも複数の上部障壁部と、
前記下部弱音部材は、少なくとも複数の下部障壁部と、をさらに有し、
前記複数の上部障壁部と、前記複数の下部障壁部とは、互い違いに組み合わせることによって前記通路部を構成する
弱音装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽器類に使用することにより、その楽器が発する音の音量を減ずることができる弱音装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
いわゆるリードを使用して音を発生させる楽器としていわゆる木管楽器や金管楽器が存在する。それらの楽器は、リードを振動させるための空気の流入量を減らことによりそのリードの振動を制限することで、その音量を下げることができる。これは楽器の練習時において騒音に配慮するために使用されている。
【0003】
このようなものとして、特許第6101867号公報において音量を下げることができる弱音装置が開示されている。これはオカリナに装着することのできる、弱音装置に関するものであるが、「吹奏楽器の吹口に設けられている息圧調整弱音装置であって、前記吹奏楽器に息が到達する前であり、かつ、前記吹奏楽器の歌口の前に、息逃し孔と、ウィンドウェイ幅制御部と、を有することを特徴とする息圧調整弱音装置。」が開示されている。
【0004】
このようにあらかじめ楽器に流入する空気の量を制限して発生する音の音量を減ずる弱音装置が開示されているものの、楽器の演奏するための練習において、楽器に流入する空気の量を制限することは本来の楽器の演奏時における使用者の感覚とは異なるものであり、その楽器の練習に使用することは適当ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に鑑みなされたもので、その課題は、通常の楽器の演奏時において、その使用者の演奏する感覚とできるだけ異なることのない弱音装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
鋭意研究開発の結果前記の課題を解決するため、第1観点の弱音装置は、呼気を流通させることによりリードを振動することで音を発生させる楽器に取り付け、リードが発生する音を流通させるための取り入れ部を具備する取り付け部と、取り付け部に取り付けて、取り入れ部から取り入れられた音を通過させてその音の音量を減少させる通路部を具備する弱音部と、を有し、通路部はその断面が段階的にあるいは無段階に減少するというものである。
【0008】
また、第2観点の弱音装置は、第1観点において、取り付け部は、取り付け上部と取り付け下部を有するというものである。
【0009】
また、第3観点の弱音装置は、第1観点または、第2観点において、弱音部は、複数のセルを有し、複数のセルのうち少なくとも1のセルは、薄板で欠円状を呈する側部材と、壁部とを有し、通路部は、側部材と、壁部とによって構成され、セルの外部から内部に向かって渦巻状に巻き込む形状を呈するというものである。
【0010】
また、第4観点の弱音装置は、第1観点において、弱音部は、上部弱音部材と下部弱音部材と、を有し、上部弱音部材は、少なくとも複数の上部障壁部と、下部弱音部材は、少なくとも複数の下部障壁部と、をさらに有し、複数の上部障壁部と、複数の下部障壁部とは、互い違いに組み合わせることによって通路部を構成するというものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上記のように構成されかつ作用するものであるから、楽器の演奏時において、従来と演奏感覚が異なることのない弱音装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施例の弱音装置を楽器に取り付けた状態の斜視図。
【
図2】Aは楽器の平面図。Bは楽器の正面図。Cは楽器の底面図。
【
図3】楽器に取り付けた状態の第1の実施例における弱音装置の分解斜視図。
【
図4】Aは、楽器に、取り付け部を取り付けた状態において後部から見た後ろ正面図。Bは、楽器に、取り付け部を取り付けた状態の平面図。Cは、BのIVC-IVC線断面図。
【
図5】Aは、取り付け上部の斜視図。Bは、取り付け上部の平面図。Cは、取り付け上部の底面図。Dは、取り付け上部の側面図。
【
図6】Aは、取り付け下部の斜視図。Bは、取り付け下部の平面図。Cは、取り付け下部の底面図。Dは、取り付け下部の側面図。
【
図8】Aは、セルの斜視図。Bは、セルの左側面図。Cは、セルの右側面図。Dは、セルの正面図。
【
図9】第2の実施例の弱音装置を楽器の取り付けた状態の斜視図。
【
図10】第2の実施例の弱音装置を楽器の取り付けた状態において後部から見た状態の側面図。
【
図12】第2の実施例の弱音装置と楽器の分解斜視図。
【
図13】Aは、一体となった第2取り付け上部と、上部弱音部材との斜視図。Bは、一体となった第2取り付け上部と、上部弱音部材との平面図。Cは、一体となった第2取り付け上部と、上部弱音部材との側面図。Dは、一体となった第2取り付け上部と、上部弱音部材との底面図。
【
図14】Aは、一体となった第2取り付け下部と下部弱音部材との斜視図。Bは一体となった第2取り付け下部と下部弱音部材との平面図。Cは、一体となった第2取り付け下部と下部弱音部材との側面図。Dは、一体となった第2取り付け下部と下部弱音部材との底面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の実施例の弱音装置10について説明する。第1の実施例における弱音装置10は、楽器100に取り付けて使用するものであり、その楽器100が発する音の音量を小さくするいわゆる弱音化させるというものである。弱音装置10は、楽器100に取り付けるための取り付け部20と、その取り付け部20に取り付けて、楽器100が発生する音量を小さくするいわゆる弱音化する弱音部30と、を有する(
図1参照)。
【0014】
楽器100はハーモニカが好ましく、本体110の上下に、図示しない使用者が、息を吹いたときに発音する、吹音リード121aと、使用者が息を吸った時に発音する吸音リード122aを有する。上記吹音リード121aと、吸音リード122aとは、使用者が歌口となる1の開口部111aに図示しない使用者が、息を吹き込んだり、空気を吸引することで音を発するように配置されている。
【0015】
また歌口となる1の開口部111aと隣接する歌口となる開口部111bは、隔壁によってその1の開口部111aと分離されており、そのそれぞれに上記吹音リード121bと、上記吸音リード122bとが配置されている。同様に、隣接する開口部111cは、隔壁によって分離されており、そのそれぞれに吹音リード121cと、吸音リード122cとが配置されている。さらに隣接する開口部111dも、隔壁によって分離されており、そのそれぞれに吹音リード121dと、吸音リード122dとが配置されている。なお以下同様にそれぞれの開口部111e、111f、111g、111h、111i、111jについても同様であり、それぞれが吹音リード121e、121f、121g、121h、121i、121jと、吸音リード122e、122f、122g、122h、122i、122jを有し、それぞれが異なる音階の音を発生させる(
図2参照)。なお、これらの構成については公知である。なお、楽器100における開口部111a、111b,111c,111d、111e、111f、111g、111h、111i、111jと10の開口部を有しているがこれに限られないのは言うまでもない。
【0016】
取り付け部20は、取り付け上部210と取り付け下部220とを有する。取り付け上部210は、文字通り楽器100の上部にビス等の固定具を用いて取り付けることができるカバーである。従って楽器100の上部を覆うように、取り付けることができる。よって、楽器100とほぼ同形状を呈することが好ましい。
【0017】
また、取り付け部20における取り付け上部210は、楽器100における各吹音リード121a、121b、121c、121d、121e、121f、121g、121h、121i、121jがそれぞれ発生する音を取り入れる上取り入れ部211a、211b、211c、211d、211e、211f、211g、211h、211i、211jをそれぞれ有する。また、弱音部30と接続するための接続部215、215をそれらの両端に配置している。なお、上記各上取り入れ部は、独立し、楽器100に取り付けたときに周囲が壁に囲まれた通路である。従って、上取り入れ部211a、211b、211c、211d、211e、211f、211g、211h、211i、211jは、各吹音リードが発生する音を、それぞれ、弱音部30に伝達する通路としての役割を果たすものである。
【0018】
また、取り付け上部210は、断面視フック状の係合上部216を複数有している。このうちの1の係合上部216は、弱音部30のセル310aにおけるセル係合上部331と係合し、接続するためのものである。なお、後述するとおり、他のセル310b、310c、310d、310e、310f、310g、310h、310i、310jについても同様である。
【0019】
取り付け下部220は、文字通り楽器100の下部にあてがうようにビス等の固定具を用いて取り付けることができるカバーである。従って、楽器100の下部を覆うように取り付けることができる。よって、楽器100とほぼ同形状を呈することが好ましい。
【0020】
取り付け部20における取り付け下部220は、楽器100における各吸音リード122a、122b、122c、122d、122e、122f、122g、122h、122i、122jがそれぞれ発生する音を取り入れる下取り入れ部221a、221b、221c、221d、221e、221f、221g、221h、221i、221jを有する。また、弱音部30と接続するための第2接続部225、225をその両端に配置している。なお、上記各下取り入れ部は、独立し、楽器100に取り付けたときに周囲が壁に囲まれた通路である。従って、下取り入れ部221a、221b、221c、221d、221e、221f、221g、221h、221i、221jは、各吸音リードが発生する音を、それぞれ弱音部30に伝達する通路としての役割を果たすものである。
【0021】
また、取り付け下部220は、断面視フック状の係合下部226を有している。この係合下部226は、弱音部30のセル310aにおけるセル係合下部332と係合し、接続するためのものである。なお、後述するとおり、他のセル310b、310c、310d、310e、310f、310g、310h、310i、310jについても同様である。
【0022】
弱音部30は、複数のセル310a、310b、310c、310d、310e、310f、310g、310h、310i、310jを有する。これは楽器100における開口部111a、111b、111c、111d、111e、111f、111g、111h、111i、111jを通じて、取り付け上部210における取り入れ部211a、211b、211c、211d、211e、211f、211g、211h、211i、211jと、取り付け下部220における取り入れ部221a、221b、221c、221d、221e、221f、221g、221h、221i、221jとそれぞれ対応するものである。ここで対応するとは、取り付け上部210における取り入れ部211aを使用者が、息を吹き込んだり、空気を吸引した場合において、吹音リード121aまたは、吸音リード122aが音を発する。このとき吹音リード121aが音を発した場合において、取り付け部20における取り付け上部210の、上取り入れ部211aが、その音を取り入れて、後述するセル310aに、その音を伝達することであり、また、吸音リード122aが音を発した場合において、取り付け部20における取り付け下部220の、下取り入れ部221aが、その音を取り入れて、後述するセル310aに、その音を伝達することである。このように、上記それらの各吹音リードおよび各吸音リードが発する音を、それぞれのセルがその音を取り入れるために配置されていることを言うものである。
【0023】
従って、セル310aは、取り付け上部210における上取り入れ部211aと、取り付け下部220における下取り入れ部221aと、に対応しているために、吹音リード121aおよび吸音リード122aが発生する音を、そのセル310aが取り入れることができるのである。
【0024】
すなわちセル310aは、取り付け上部210における上取り入れ部211aと、取り付け下部220における下取り入れ部221aと、から、吹音リード121aおよび吸音リード122aが発生する音を、取り入れることができるものである。また、その取り入れた音の音量を減ずることができるものである。また、セル310bも同様に、取り付け上部210における上取り入れ部211bと、取り付け下部220における下取り入れ部221bと対応し、吹音リード121bおよび吸音リード122bが発生する音を、取り入れることができるものである。また、その取り入れた音の音量を減ずることができるものである。310c、310d、310e、310f、310g、310h、310i、310jについても同様である。
【0025】
セル310a、310b、310c、310d、310e、310f、310g、310h、310i、310jの構成は同様であるために、セル310aの構成について説明し(
図8参照)、その他のセル310b、310c、310d、310e、310f、310g、310h、310i、310jの説明は省略する。
【0026】
セル310aは、全体として側面視欠円状を呈し、セル開口部320は、取り付け上部210における上取り入れ部211aと、取り付け下部220における下取り入れ部221aと接続されるというものであり、それぞれ、吹音リード121aおよび吸音リード122aから発生された音をともに取り込むことができる大きさを有している。すなわち、楽器100に、取り付け上部210と取り付け下部220とを取り付けたときに、隙間なく取り付けるように構成されている。
【0027】
薄板で欠円状を呈する側部材311と、その側部材311の内部において、その側部材311と壁状の壁部321によって構成される通路部322が側面視において、外部から内部に向かって渦巻状に巻き込む形状を呈し、その壁部321同士の距離z1、z2、z3、z4が、内部に向かうに従いその距離が接近する構成である。すなわち通路部322の断面が無段階に減少するのである。また、その壁部321によって構成されたと渦巻状の中心部は、音を伝達させるように孔となる孔部330を有する。このように、内部に向かうに従いその距離が接近する構成である通路部322の断面が段階を経て減少するものであっても好ましい。
【0028】
側部材311に対して壁部321が取り付けられている反対側においては、側部材311の外形を縁取るように、途中に隙間を有するほぼ半円状の接続部312を配置し、若干外方(反対側)に突出した壁状を呈するものである。後述する外蓋部350とは嵌合するためのものである。なお、隣接する他のセル310bにおいても同様に、接続部312を有し,その接続部312は、隣接するセル310aとの接続に用いられるものであり、隣接するセル310aにおける壁部321と嵌合することで他のセル310bとセル310aが接続される。また、上記のとおり、セル係合上部331は、取り付け上部210における1の断面視フック状の係合上部216と係合し、接続するためのものである。また、セル係合下部332は、取り付け下部220における係合下部226と係合し、接続するためのものである。
【0029】
弱音部30は、さらに、外蓋部350、350と中蓋部360と、を有する。外蓋部350は、全体として側面視欠円状を呈し、通気孔となる外蓋開口部351を有する。また、外蓋部350に中心には、孔となる外蓋孔部352を有し、後述する心棒370が挿入される。また、外蓋部350は、半円状を呈し、その外蓋部350の周囲を取り囲む壁部353を有し、セル310aにおける接続部312と嵌合するように構成されている。また、外蓋部350は、取り付け部20の取り付け上部210における接続部215、215および取り付け部20の取り付け下部220における第2接続部225、225と係合して接続する被取り付け部355、355を有する。
【0030】
中蓋部360は、薄板状であって、全体としてほぼ半円状を呈し、セル310aと接続するために、中蓋部360の半円状の外形を縁取るように、立設され、かつほぼ半円状のセル接続部361と、外蓋部350と接続するために、中蓋部360の半円状の外形を縁取るように立設され、かつほぼ半円状の外蓋接続部362と、を有する。また、中蓋開口部363は、外蓋部350と組み合わせたときに、通気孔となる外蓋開口部351と1の開口部を構成する。また、中蓋部360のほぼ中心に、孔となる中蓋孔部364を有する。
【0031】
上記構成の外蓋部350と、セル310a、310b、310c、310d、310e、310f、310g、310h、310i、310jと、中蓋部360と、外蓋部350と、を順に配置し、それらの中心を貫通するように心棒370が挿入し、ナット371で固定することで、弱音部30が構成される(
図7参照)。すなわち、セル310a、310b、310c、310d、310e、310f、310g、310h、310i、310jにおけるそれぞれの孔部330と、中蓋孔部364と外蓋孔部352、352を貫通するように心棒370を挿入し、ナット371で固定する。このとき心棒370の径よりもそれぞれの孔部330の径が大であるためにたとえば、セル310aにおける孔部330から隣接する他のセル310bに、充分に音量が小さくなり弱音化した音が、そのセル310a、310b、310c、310d、310e、310f、310g、310h、310i、310jにおけるそれぞれの孔部330を伝って伝播し、中蓋孔部364を伝播しさらに中蓋開口部363および通気孔となる外蓋開口部351から漏出することができる。
【0032】
上記構成の弱音装置10を、楽器100に取り付ける。図示しない使用者が、たとえば、歌口となる開口部111aに息を吹き込むと、吹音リード121aが振動し音を発生させる。この音が、上取り入れ部211aに伝播され、弱音部30におけるセル310aの通路部322に入り込む。通路部322は上記のとおり、外部から内部に向かって渦巻状に巻き込む形状を呈し、その壁部321同士の距離z1、z2、z3、z4が、内部に向かうに従いその距離が接近する構成であるので、通路部322の断面が徐々に減少することにより、徐々に音量が小さくなり、セル310aにおける孔部330から音が漏出するころには、弱音化が達成されている。この弱音化された音が、そのセル310a、310b、310c、310d、310e、310f、310g、310h、310i、310jにおけるそれぞれの孔部330を伝って伝播し、中蓋孔部364を伝播しさらに中蓋開口部363および通気孔となる外蓋開口部351から漏出することができる。このように中蓋開口部363および通気孔となる外蓋開口部351から音が漏出するときには、充分に弱音化が達成されている。なお、中蓋開口部363および通気孔となる外蓋開口部351が、開口しているのは、上記のとおり弱音化した音を漏出させるだけでなく、各吹音リードおよび各吸音リードを振動させるため空気の流入及び流出を妨げないようにするためでもある。
【0033】
また、吸音リード122aが振動して音を発生する場合もほぼ同様であり、取り付け下部220における下取り入れ部221aに、その音が伝播され、弱音部30におけるセル310aの通路部322に入り込む。後は同様である。なお、他の開口部111b、111c、111d、111e、111f、111g、111h、111i、111jについても同様である。このように、楽器100に弱音装置10を取り付けることで、楽器を演奏する際に生じる音の音量を減らすことができる。なお、後述するように楽器100が、ハーモニカのみならず図示しない鍵盤ハーモニカまたはアコーディオンについて使用する場合に適するものである。
【0034】
次に、第2の実施例の弱音装置50について説明する。第2の実施例における弱音装置50は、楽器100に取り付けて使用するものであり、その楽器100が発する音の音量を小さくするいわゆる弱音化させるというものである。第2の弱音装置50は、楽器100に取り付けるための第2取り付け部60と、その楽器100が発生する音量を小さくするいわゆる弱音化する第2弱音部70と、を有する(
図9参照)。なお、楽器100においてはすでに説明したので同一の符号を付しその説明は省略する。
【0035】
第2取り付け部60は、第2取り付け上部61と第2取り付け下部62とを有する。第2取り付け上部61は、文字通り楽器100の上部にビス等の固定具を用いて取り付けることができるカバーである。従って、楽器100の上部を覆うように取り付けることができる。取り付け部60における第2取り付け上部61は、楽器100における各吹音リード121a、121b、121c、121d、121e、121f、121g、121h、121i、121jがそれぞれ発生する音を取り入れる第2取り入れ部61a、61b、61c、61d、61e、61f、61g、61h、61i、61jを有する。なお、上記各第2取り入れ部は、独立し、かつ周囲が壁に囲まれた通路である。従って、上記各第2取り入れ部は、各吹音リードが発生する音を取り入れて、それぞれ、第2弱音部70に伝達するそれぞれの通路としての役割を果たすものである。
【0036】
第2取り付け下部62は、文字通り楽器100の下部にビス等の固定具を用いて取り付けることができるカバーである。従って、楽器100の下部にあてがうように取り付けることができる。取り付け部60における第2取り付け下部62は、楽器100における各吸音リード122a、122b、122c、122d、122e、122f、122g、122h、122i、122jがそれぞれ発生する音を取り入れる第3取り入れ部62a、62b、62c、62d、62e、62f、62g、62h、62i、62jを有する。なお、上記各第3取り入れ部は、独立し、かつ周囲が壁に囲まれた通路である。従って、上記各第3取り入れ部は、各吸音リードが発生する音を、取り入れて、それぞれ、上記各第3取り入れ部は第2弱音部70に伝達するそれぞれの通路としての役割を果たすものである。
【0037】
第2弱音部70は、上部弱音部材71と下部弱音部材72とを有するものである。なお、第2取り付け上部61と、上部弱音部材71と、が一体となり、さらに第2取り付け下部62と下部弱音部材72とが一体となる構成である。それらは、それぞれケースの1部を構成する。
【0038】
また第2弱音部70の後部には、第2取り入れ部61a、61b、61c、61d、61e、61f、61g、61h、61i、61jおよび第3取り入れ部62a、62b、62c、62d、62e、62f、62g、62h、62i、62j、とそれぞれ接続して通路となる他の通路部75a、75b、75c、75d、75e、75f、75g、75h、75i、75jを通過して音を排出するための排出口となる後部開口部77a、77b、77c、77d、77e、77f、77g、77h、77i、77jを有する。なお、後部開口部77a、77b、77c、77d、77e、77f、77g、77h、77i、77jが、開口しているのは、上記のとおり弱音化した音を漏出させるだけでなく、各吹音リードおよび各吸音リードを振動させるため空気の流入及び流出を妨げないようにするためでもある。
【0039】
上部弱音部材71は、第2取り入れ部61a、61b、61c、61d、61e、61f、61g、61h、61i、61jからの音がそれぞれ流入する他の通路部75a、75b、75c、75d、75e、75f、75g、75h、75i、75jの一部を有する。また、下部弱音部材72においても第3取り入れ部62a、62b、62c、62d、62e、62f、62g、62h、62i、62j、からの音がそれぞれ流入する他の通路部75a、75b、75c、75d、75e、75f、75g、75h、75i、75jの一部を有する。従って、上部弱音部材71と、下部弱音部材72とを組み合わせることで、他の通路部75a、75b、75c、75d、75e、75f、75g、75h、75i、75jが構成される。なお
図13、14において、それぞれ他の通路部75a、75b、75c、75d、75e、75f、75g、75h、75i、75jを示しているが、それはその他の通路部75a、75b、75c、75d、75e、75f、75g、75h、75i、75jの一部を示している。
【0040】
上部弱音部材71は、曲面状を呈するものである。もっともこの形状に限られることはない。また、上部弱音部材71は、板状を呈する、第1上部障壁部76、第2上部障壁部77、第3上部障壁部78、を有する。また、第1上部障壁部76、第2上部障壁部77、第3上部障壁部78、の順に、上部弱音部材71から垂れ下がる距離が短くなっている。また、これは各他の通路部75a、75b、75c、75d、75e、75f、75g、75h、75i、75jにおいても、幅方向において整列するように第1上部障壁部76、第2上部障壁部77、第3上部障壁部78、はそれぞれ同様の位置に配置されている。また、第1上部障壁部76、第2上部障壁部77、第3上部障壁部78、はそれぞれ、上部弱音部材71から垂れ下がるように配置されているが、下部弱音部材72と接することはなく所定の隙間が生じている。
【0041】
下部弱音部材72は、曲面状を呈するものである。もっともこの形状に限られることはない。また、下部弱音部材72は、板状を呈する、第1下部障壁部86、第2下部障壁部87、第3下部障壁部88、を有する。また、第1下部障壁部86、第2下部障壁部87、第3下部障壁部88、の順に、下部弱音部材72から屹立する高さが徐々に低くなっている。また、これは各他の通路部75a、75b、75c、75d、75e、75f、75g、75h、75i、75jにおいても、幅方向において整列するように同様の位置に配置されている。また、第1下部障壁部86、第2下部障壁部87、第3下部障壁部88、それぞれ、下部弱音部材72から屹立するように配置されているが、上部弱音部材71と接することはなく所定の隙間が生じている。上記の通り、第1上部障壁部76、第2上部障壁部77、第3上部障壁部78、はそれぞれ、上部弱音部材71から垂れ下がるように配置されているが、下部弱音部材72と接することはなく所定の隙間が生じている。
【0042】
このように、他の通路部75aは、第1下部障壁部86と上部弱音部材71の隙間と、第1下部障壁部86と第1上部障壁部76との断面(z10)と、第1上部障壁部76と下部弱音部材72との隙間と、第1上部障壁部76と第2下部障壁部87との断面(z11)と、第2下部障壁部87と上部弱音部材71との隙間と、第2下部障壁部87と第2上部障壁部77との断面(z12)と、第2上部障壁部77と下部弱音部材72との隙間と、第2上部障壁部77と第3下部障壁部88との断面(z13)と、第3下部障壁部88と上部弱音部材71の隙間と、第3下部障壁部88と第3上部障壁部78との断面(z14)と、第3上部障壁部78と下部弱音部材72との隙間と、を経て、後部開口部77aに至る。なお、各他の通路部75a、75b、75c、75d、75e、75f、75g、75h、75i、75jも同様である。
【0043】
従って上記構成の上部弱音部材71と下部弱音部材72とを組み合わせると、たとえば、他の通路部75aは、第1下部障壁部86を乗り越えつつ、第1上部障壁部76を潜り抜け、さらに第2下部障壁部87を乗り越えつつ、第2上部障壁部77を潜り抜け、さらに第3下部障壁部88を乗り越えつつ、第3上部障壁部78を潜り抜け、後部開口部77aに至るのである。このとき、第1下部障壁部86と第1上部障壁部76との距離z10、第1上部障壁部76と第2下部障壁部87との距離z11、第2下部障壁部87と第2上部障壁部77との距離z12、第2上部障壁部77と第3下部障壁部88との距離z13、第3下部障壁部88と第3上部障壁部78との距離z14の距離が徐々に段階を経て接近するように配置している。すなわち、上述の複数の各上部障壁部と、複数の各下部障壁部とは、互い違いに組み合わせることによって他の通路部75aを構成し、さらにこの他の通路部75aの断面(z10、z11、z12、z13、z14)が徐々に減少する。これにより音量を減ずることができるものと考える。なお各他の通路部75b、75c、75d、75e、75f、75g、75h、75i、75jにおいても同様である。さらに上記のとおり、後部開口部77a、77b、77c、77d、77e、77f、77g、77h、77i、77jが、開口しているのは、上記のとおり弱音化した音を漏出させるだけでなく、各吹音リードおよび各吸音リードを振動させるため空気の流入及び流出を妨げないようにするためでもある。
【0044】
上記構成の第2の実施例の弱音装置50を、楽器100に取り付ける。図示しない使用者が、たとえば、歌口となる開口部111aに息を吹き込むと、吹音リード121aが振動し音を発生させる。この音が、第2取り付け部60の、第2取り付け上部61における第2取り入れ部61aに伝播され、第2弱音部70における上部弱音部材71の第2取り入れ部61aと接続する他の通路部75aに入り込む。他の通路部75aは、上記のとおり第1下部障壁部86を乗り越えつつ、第1上部障壁部76を潜り抜け、さらに第2下部障壁部87を乗り越えつつ、第2上部障壁部77を潜り抜け、さらに第3下部障壁部88を乗り越えつつ、第3上部障壁部78を潜り抜け、後部開口部77aに至るのである。
【0045】
このとき、第1下部障壁部86と第1上部障壁部76との距離z10、第1上部障壁部76と第2下部障壁部87との距離z11、第2下部障壁部87と第2上部障壁部77との距離z12、第2上部障壁部77と第3下部障壁部88との距離z13、第3下部障壁部88と第3上部障壁部78との距離z14の距離が徐々に段階を得て接近するように配置している。従って弱音装置50の後部に向かうに従いそれらの距離(z10、z11、z12、z13、z14)が徐々に接近する構成であるので、他の通路部75aの断面が徐々に減少する。すなわち他の通路部75aの断面が段階的に減少することにより、徐々に音量が小さくなり、後部開口部77aから音が漏出するころには、弱音化が達成されている。吸音リード122aが振動して音を発生する場合もほぼ同様であり、下部弱音部材72における第3取り入れ部62aに、その音が伝播され、第2弱音部70における下部弱音部材72の第3取り入れ部62aと接続する他の通路部75aに入り込む。後は同様である。なお、他の開口部111b、111c、111d、111e、111f、111g、111h、111i、111jについても同様である。このように、楽器100に第2の実施例の弱音装置50を取り付けることで、楽器を演奏する際に生じる音の音量を減らすことができる。特に楽器100が、ハーモニカを使用する場合に適するものであることも同様である。
【0046】
なお、上記実施例においては、楽器100の例としてハーモニカを示したが、そのほかに鍵盤ハーモニカまたはアコーディオンについても使用することができる。また、発音源となる各吹音リードおよび各吸音リードと、弱音装置における各通路部が独立しているために、発音源から出た音が他へ流出することなく弱音装置におけるその各通路部に流入することができる。なお、複数の発音源から出た音を1の通路部にまとめて流入することを妨げるものではない。
【符号の説明】
【0047】
10 弱音装置
20 取り付け部
210 取り付け上部
220 取り付け下部
30 弱音部
310a セル
311 側部材
321 壁部
322 通路部
50 第2の実施例の弱音装置
60 第2取り付け部
70 第2弱音部
71 上部弱音部材
72 下部弱音部材
75a 他の通路部
76 第1上部障壁部
77 第2上部障壁部
78 第3上部障壁部
86 第1下部障壁部
87 第2下部障壁部
88 第3下部障壁部