(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】ワックス含有ウレタン系複合粒子
(51)【国際特許分類】
C08J 3/03 20060101AFI20220831BHJP
C08G 18/00 20060101ALN20220831BHJP
【FI】
C08J3/03 CFF
C08G18/00 C
(21)【出願番号】P 2020169005
(22)【出願日】2020-10-06
(62)【分割の表示】P 2016049563の分割
【原出願日】2016-03-14
【審査請求日】2020-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000211020
【氏名又は名称】ジャパンコーティングレジン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100117400
【氏名又は名称】北川 政徳
(72)【発明者】
【氏名】宮田 進也
(72)【発明者】
【氏名】畠山 恵理
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-206848(JP,A)
【文献】特開2004-143418(JP,A)
【文献】特開2011-079962(JP,A)
【文献】特開平10-109376(JP,A)
【文献】米国特許第05538531(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87,71/00-71/04
C08J 3/00-3/28
C09D
C09J
A61K 8/00-8/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワックスを主体とする目的成分の存在下、ポリオールとポリイソシアネートとをウレタン化反応させることによりウレタンプレポリマーを製造し、次いで、水性媒体を加えることにより鎖延長反応を
行って、ワックス含有ウレタン系複合粒子を有する複合分散液を製造し、
この複合分散液中の水性媒体100重量部あたりの前記ワックスの含有量が10重量部以上135重量部以下であることを特徴とする、
複合分散液の製造方法。
【請求項2】
上記ポリオールが、エーテル基を有するポリアルキレングリコール由来の構成単位を主
成分とするポリオールである請求項1に記載の
複合分散液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワックスを含有したウレタン系複合粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムや膜等に耐水性等を付与したり、インクに熱溶融性を付与する目的で、フィルムや膜等にワックスを塗工する場合や、インクにワックスを混合させることが知られている(特許文献1、2)。
特許文献1に記載のフィルムは、多糖フィルムに、天然ワックスの混合物を塗工した複合フィルムであり、良好な耐透湿性や温水溶解性を有する。また、特許文献2に記載のワックス分散液は、均一な積層塗布が可能である特徴を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平07-184562号公報
【文献】特開平03-033161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の天然ワックスの混合物は、塗工時に加熱が必要であり、また、特許文献2に記載のワックス分散液は、有機溶剤を用いており、生産上、環境上に負荷を有している。
また、いずれの場合も、得られる塗膜は、室温で固形のワックスそのものに近いため、室温では硬く柔軟性に欠け、適用できる用途、基材が限られてしまう。
【0005】
そこで、この発明は、有機溶剤を使用せず、室温で塗工が可能となり、かつ、それにより得られる皮膜が柔軟性に富む皮膜となるワックス複合体を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の要旨は、下記の[1]~[9]に存する。
[1](A)ポリウレタンによって、(B)ワックスを主体とする目的成分を複合化した粒子であって、上記(A)成分と(B)成分の組成比率(重量比)が(A)/(B)=95/5~20/80であることを特徴とするワックス含有ウレタン系複合粒子。
[2]上記(B)成分の60重量%以上が上記ワックスであることを特徴とする[1]に記載のワックス含有ウレタン系複合粒子。
【0007】
[3]上記(B)成分に不飽和単量体を重合して得られる重合体が含まれることを特徴とする[1]又は[2]に記載のワックス含有ウレタン系複合粒子。
[4]上記ワックスがカルナバロウ及び/又はキャンデリラロウであることを特徴とする[1]~[3]のいずれか1項に記載のワックス含有ウレタン系複合粒子。
[5]上記(A)成分を構成するポリオールが、ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールである[1]~[4]のいずれか1項に記載のワックス含有ウレタン系複合粒子。
【0008】
[6]上記[1]~[5]のいずれか1項に記載のワックス含有ウレタン系複合粒子が水性媒体中に分散されてなる複合分散液。
[7]水100重量部あたりのワックスの含有割合が、2.5~60重量部である[6]に記載の複合分散液。
[8]化粧料、接着剤、塗料、コーティング剤、又はシーリング剤として用いられる上記[1]~[5]のいずれか1項に記載のワックス含有ウレタン系複合粒子。
[9]化粧料、接着剤、塗料、コーティング剤、又はシーリング剤として用いられる上記[6]又は[7]に記載の複合分散液。
【発明の効果】
【0009】
ワックスとポリウレタンとを複合化するので、室温での成膜化が可能となり、また、得られる膜はサラッとした触感となり、室温で柔軟な膜となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明について詳細に説明する。
この発明にかかるワックス含有ウレタン系複合粒子は、ポリウレタン(以下、「(A)成分」と称する。)と、ワックスを主体とする目的成分(以下、「(B)成分」と称する。)とを複合化させた粒子である。
【0011】
((A)成分)
上記(A)成分を構成するポリウレタンは、ポリイソシアネートとポリオールとの重縮合体である。上記ポリイソシアネートとしては、各種の脂肪族、脂環式、芳香族等の有機系のポリイソシアネート化合物等の多価イソシアネート化合物を用いることができる。このポリイソシアネート化合物の具体例としては、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0012】
上記ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、メチルペンタンジオールアジペート等の比較的低分子量のポリオールや、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリアクリル酸エステルポリオール、これらのポリオール類にプロピレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオール等を用いることができる。
【0013】
上記ポリエステルポリオールは、ポリオール成分由来の構成単位とジカルボン酸成分由来の構成単位とからなる化合物である。上記のポリオール成分由来の構成単位とは、1分子中に2つ以上のヒドロキシル基を有する有機化合物からなる単位であり、ポリオール単位を構成するポリオールの具体例としては、上記した比較的低分子量のポリオールの少なくとも一種と、アジピン酸、セバシン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸の少なくとも一種とを重縮合して得られる化合物が挙げられる。
【0014】
このようなポリエステルポリオールのうち、構成単位としてイソフタル酸を用いたポリエステルポリオールとしては、例えばクラレポリオールP-1012、2012、530、1030、2030等((株)クラレ製、商品名)、テスラック2474(日本化成ポリマー(株)製、商品名)、OD-X-2560(DIC(株)製、商品名)、HS2F-136P(豊国製油(株)製、商品名)等を挙げることができ、また、テレフタル酸由来の構成単位を有するポリエステルポリオールとしては、例えばクラレポリオールP-1011、2011、2013、520、1020、2020等((株)クラレ製、商品名)を挙げることができる。
【0015】
上記のポリエーテルポリオールは、エーテル基を有するポリアルキレングリコール由来の構成単位を主成分とするポリオール、すなわち、ポリアルキレングリコールエーテル成分である。具体例としては、上記した比較的低分子量のポリオール等を重縮合させたポリエーテルポリオール類、すなわち、ポリエチレングリコールエーテル、ポリプロピレングリコールエーテル、ポリプロピレングリコールエーテル、ポリブチレングリコールエーテル、ポリペンタンジオールエーテル、ポリヘキサンジオールエーテル、ポリヘプタンジオールエーテル、ポリオクタンジオールエーテル等があげられる。なお、ポリアルキレングリコールエーテル成分として、単独のジオールの重縮合物を例示したが、複数種のジオールの重縮合物を用いてもよい。
【0016】
また、上記した比較的低分子量のポリオール等と共に、ジメチロールプロパン酸等のカルボキシル基含有ジオールを用いると、カルボキシル基含有ポリエーテルポリオールを得ることができる。
【0017】
このポリアルキレングリコールエーテル成分の分子量は、250以上がよく、500以上が好ましい。250より小さいと、柔軟性が不足する場合がある。一方、分子量の上限は、3000がよく、2500が好ましい。3000より大きいと、分散安定性が低下するという問題点を生じる場合がある。
【0018】
((B)成分)
上記(B)成分であるワックスを主体とする目的成分は、この発明によって目的の効果を付与する成分をいい、ワックス、防虫剤、抗菌防カビ剤、芳香剤等があげられる。
【0019】
上記のような複合粒子とすることで、ワックス単独では分散が困難であったり、仮に分散したとしても分散安定性が劣るため、従来ワックスの分散液を得ることが難しかったものを、安定な分散液とすることができる。しかも、得られる膜はサラッとした触感となり、ベタつきも抑えられた膜となる。
【0020】
このようなワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、及びそれらの酸化物、塩化パラフィン、ミツロウ、カルナバロウ、キャンデリラロウ、ライスワックス、モンタンワックス等があげられる。これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
上記ワックスとしては、常温で流動性を示さない固形状のものが好ましく、特に軟化点が50℃以上のものを用いることが好ましい。上記軟化点とは、JIS K7234で規定される環球法で測定した値をいう。常温で流動性を示す液状のワックスを用いると、得られる複合粒子を成膜させた後、表面がべたつき、フィルムなどは巻き取ることが出来なくなったり、フィルムの滑り性が悪くなったり、塵芥が表面に付着して品質が低下する場合があるからである。
【0022】
上記のワックス以外の目的成分(以下、「他の成分」と記することがある。)を添加する場合、全体の中に占めるワックスの含有割合は、60重量%以上がよく、70重量%以上が好ましい。60重量%より少ないと、サラっとした感触が得られない場合がある。ワックス含有割合の上限は100重量%である。
【0023】
(この発明にかかるワックス含有ウレタン系複合粒子の製造)
この発明にかかるワックス含有ウレタン系複合粒子は、(B)成分の存在下、ポリオールとポリイソシアネートとをウレタン化反応させることにより、ウレタンプレポリマーを製造し、次いで、後述する水性媒体を加えることにより鎖延長反応を行い、ポリウレタンを製造することができる。
【0024】
上記ウレタン化反応は、無溶剤下でも行い得るが、反応を均一に行わせるために、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のイソシアネート基に対して不活性で水との親和性の大きい有機溶剤を使用してもよい。
【0025】
上記のポリオールとポリイソシアネートとの使用割合は、当量比で、ポリオール:ポリイソシアネート=1:1.1~2.5がよく、1:1.2~2.0が好ましい。ポリオールが少なすぎると、未反応のイソシアネートが多く残留し、水分散時に、凝集したり、粗大粒子を生成することがある。一方、ポリオールが多すぎると、反応時の粘度が高くなり、水への良好な分散が困難となることがある。
【0026】
上記の反応は、通常、30~120℃で0.1~20時間、好ましくは、50~100℃で0.5~10時間行なえばよい。
【0027】
前記の(B)成分の含有量は、上記のウレタン化反応で得られる(A)成分との組成比率(重量比)として、(A)/(B)が95/5以下がよく、90/10以下が好ましい。95/5より大きいと、(B)成分を用いることによる効果が十分に得られない場合がある。一方、組成比率の下限は、20/80がよく、25/75が好ましい。20/80より小さいと、成膜性が不足する場合がある。
【0028】
上記のウレタン化反応で得られる反応液を、水や水とメタノールやエタノール等の水溶性溶媒等混合液である水性媒体と混合することにより、ウレタンプレポリマーを水性分散液中に分散させて、複合分散液とすることができる。また、水や活性水素を一分子中に2個以上有する物質によって鎖延長反応を行うことができ、この鎖延長反応は、40~90℃で0.5~5時間撹拌することで行うことができる。
【0029】
なお、上記の活性水素を一分子中に2個以上有する物質としては、多価アルコール類、ポリオール類、ジアミン類、ポリアミン類等が例示できる。
具体的には、上記多価アルコールとしては、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
上記ポリオール類としては低分子ジオールが脱水縮合した構造を持つ、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等が挙げられ、その繰り返し単位数としては、常温での取扱い性等の点から、2~20程度が好ましく用いられる。
【0030】
上記ジアミン類としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン、N-アミノエチル-N-エタノールアミン等が挙げられる。
また、一分子中に2以上のアミノ基を有するポリアミンとしては、ポリエチレンイミンが例示でき、例えばエポミンSP-003、同SP-006(商品名、いずれも日本触媒(株)製)等が挙げられる。
さらに、上記した鎖延長剤以外に、水、ヒドラジン等も鎖延長剤として用いることができる。
【0031】
この鎖延長・分散工程において、必要に応じて、乳化剤が用いられる。この乳化剤としては、例えば、アニオン性、カチオン性、両イオン性等のイオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等があげられる。
【0032】
また、ポリオールとして、カルボキシル基を有するポリオールを用いる場合、このポリオールの中のカルボキシル基を中和することが好ましい。これにより、得られる複合分散液がより安定化する。
【0033】
このようにして得られたワックス含有ウレタン系複合粒子は、水性媒体に分散されたエマルジョンとなっており、そのまま、又は必要に応じて、水をさらに加えて、エマルジョンとして使用することができる。さらに、得られたエマルジョンからワックス含有ウレタン系複合粒子を分取し、別の水やその他の媒体に分散させて、エマルジョンとしてもよい。
【0034】
この複合分散液中に含まれる水100重量部あたりのワックスの含有量は、2.5重量部以上がよく、10重量部以上が好ましい。2.5重量部より少ないと、ワックスを添加した効果が十分得られない場合がある。一方、含有量の上限は、135重量部がよく、60重量部が好ましい。135重量部より多いと、複合化しても成膜性が不十分となる場合がある。
【0035】
上記の方法で得られるエマルジョン中のワックス含有ウレタン系複合粒子の平均粒子径は、10nm以上がよく、50nm以上が好ましい。10nmより小さいと、経時安定性が不足する場合がある。一方、平均粒子径の上限は、5000nmがよく、2000nmが好ましい。5000nmより大きいと、水との比重差によりクリーミング現象が発生する場合がある。
【0036】
(不飽和単量体の使用)
この発明にかかるワックス含有ウレタン系複合粒子には、必要に応じて、不飽和単量体を重合して得られる重合体を含んでもよい。
この不飽和単量体は、不飽和基を有する単量体であり、不飽和基を1つ有する単官能性不飽和単量体や不飽和基を2つ以上有する多官能性不飽和単量体等が挙げられる。
この単官能性不飽和単量体としては、(メタ)アクリル系単量体、ハロゲン化ビニル系化合物、芳香族ビニル化合物等があげられる。なお、この明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル又はメタクリル」を意味する。
【0037】
上記(メタ)アクリル系単量体とは、(メタ)アクリル酸又はそのエステル化合物等をいい、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル等があげられ、その1種を用いても、それらの2種以上の混合物を用いてもよい。
【0038】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等があげられる。
【0039】
上記(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2- メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-
ブトキシエチル等があげられる。
【0040】
上記ハロゲン化ビニル系化合物としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル等があげられ、芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン等があげられる。
【0041】
また、上記多官能性不飽和単量体としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン及びそれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物等があげられる。
【0042】
さらに、上記の他、N,N-ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホンや、3個以上のビニル基を持つ化合物があげられる。
なお、上記のビニル基を有する単量体は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0043】
これらの中でも、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、及びスチレンからなる群から選ばれる少なくとも一種の単量体の重合体、すなわち、アクリル酸エステルの単独重合体又は共重合体、メタクリル酸エステルの単独重合体又は共重合体、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとの共重合体、スチレンの単独重合体、アクリル酸エステル及び/ 又はメタクリル酸エステルと、スチレンとの共重合体がより好ましい。
【0044】
この不飽和単量体を用いる場合、(A)成分との混合割合(重量比)は、(A)/不飽和単量体で99.9/0.1~20/80がよく、99.5/0.5~30/70が好ましい。99.9/0.1を超過して(A)成分が多くなると、不飽和単量体を用いることによる効果が十分得られない場合がある。一方、20/80よりも(A)成分が少なくなると、成膜時の触感が悪化する場合がある。
【0045】
また、この不飽和単量体を用いる場合、(B)成分との混合割合(重量比)は、(B)/不飽和単量体で99.9/0.1~20/80がよく、99.5/0.5~30/70が好ましい。99.9/0.1を超過して(B)成分が多くなると、不飽和単量体を用いることによる効果が十分得られない場合がある。一方、20/80よりも(B)成分が少なくなると、水分散したときの安定性が不十分となる場合がある。
【0046】
この不飽和単量体を用いる場合、(B)成分に上記不飽和単量体を混合し、ウレタン化反応、及び水性媒体により分散させる工程(兼鎖延長反応工程)の後、この水分散液を用いて、これに含まれる不飽和単量体を重合させる重合工程に供される。
【0047】
この重合工程において、乳化重合は、重合開始剤を添加して行われる。この重合開始剤としては、通常の乳化重合で使用される重合開始剤を特に限定することなく使用することができる。この重合開始剤の例としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物、過酸化水素、t-ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物等のラジカル重合開始剤があげられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、これらラジカル重合開始剤と、例えば亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、酒石酸、L-アスコルビン酸等の還元剤とを併用してレドックス系重合開始剤として用いることもできる。
【0048】
上記乳化重合の重合温度は、通常50~100℃ 程度、反応時間は、通常2~16時
間程度とすることが好ましい。
【0049】
このようにして得られたワックス含有ウレタン系複合粒子は、水に分散されたエマルジ
ョンとなっており、そのまま、又は必要に応じて、水をさらに加えて、エマルジョンとして使用することができる。さらに、得られたエマルジョンから上記ワックス含有ウレタン系複合粒子を分取し、別の水に分散させて、エマルジョンとしてもよい。
【0050】
上記の方法で得られたワックス含有ウレタン系複合粒子又はこれを含有する複合分散液は、化粧料組成物、接着剤組成物、塗料組成物、コーティング剤組成物、シーリング剤組成物に加えることにより、化粧料、接着剤、塗料、コーティング剤、シーリング剤等として使用することができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。まず、評価方法及び使用した原材料について説明する。
【0052】
(評価方法)
[貯蔵安定性]
得られた分散液を室温で1か月間保管した後、外観を目視判定した。
○:異物・凝集・沈降等無し。
×:異物・凝集・沈降いずれかの現象を確認した。
【0053】
[室温フィルム化]
得られた分散液を23℃/50%RH環境下にて乾燥させ、連続的な皮膜を形成するかを目視にて確認した。
○:柔軟な皮膜が得られた。
×:割れやすく連続的な皮膜が得られなかった。
××:室温では造膜せず、融点以上の加熱が必要であった。
【0054】
[柔軟性]
(1)皮膜の作成
得られた分散液を0.1mmアプリケーターにてPETフィルム(25μm厚,コロナ処理面)へ塗工する。そして、基材のPETフィルムごと塗工膜を半分に折り、外観を目視にて観察した。
◎:割れ・剥がれ等が無い。
○:ほぼ割れ・剥がれ等が無い。
△:一部白化したような微細な割れが確認されるが大きなものは無い。
×:割れ・剥がれが顕著に表れた。
【0055】
(原材料)
[ポリオール成分]
・PPG2000…三洋化成工業(株)製:ポリプロピレングリコール、数平均分子量:2000
・PPG1000…三洋化成工業(株)製:ポリプロピレングリコール、数平均分子量:1000
・N4073…東ソー(株)製:ポリエステルポリオール、数平均分子量:2000
・DMPA…パーストープ社製:ジメチロールプロパン酸
【0056】
[ポリイソシアネート成分]
・IPDI…(株)テグサジャパン製:イソホロンジイソシアネート、商品名:ベスタナートIPDI
【0057】
[不飽和単量体]
・MMA…三菱レイヨン(株)製:メタクリル酸メチル
・BA…三菱化学(株)製:アクリル酸ブチル
【0058】
[重合触媒]
・ジブチルチンジラウレート…和光純薬工業(株)製:試薬
[重合安定剤]
・ハイドロキノン…和光純薬工業(株)製:試薬、以下、「HQ」と称する。
【0059】
[ワックス]
・ミツロウ…日本精蝋(株)製、動物性ワックス、引火点:258℃、融点:60~67℃
・キャンデリラロウ…ミツバ貿易(株)製、植物性ワックス、引火点:266℃、融点:66~80℃
・マイクロクリスタリンワックスディスパージョン…サンノプコ(株)製:ノプコ1245-M-SN、固形分46重量%水性分散液(融点(ワックス):77℃)
【0060】
[中和剤]
・トリエチアルミン…ダイセル化学工業(株)製
・トリエタノールアミン…ダウケミカル日本(株)製
・KOH…和光純薬工業(株)製
【0061】
(実施例1~7、9)
温度計、撹拌装置及び還流冷却管を備えた4つ口フラスコに、表1に示すポリオール成分、ワックスを加えた。そして、内温50℃とし、表1に示すポリイソシアネート成分、及びジブチルチンジラウレート0.02重量部を加えた。次に、内温を90℃に加温し、この温度で5時間反応させて、(B)成分を含有するウレタンプレポリマーを得た。
【0062】
得られたウレタンプレポリマーに、必要に応じて、50℃にて、表1に示す中和剤を加えて、この分散液中にカルボキシル基を有する場合は、これを中和した。
次いで、そして、この溶液に表1に示す水(蒸留水)を50℃で15分間かけて滴下し、ウレタンの鎖延長反応を行うと共に水分散を行い、ポリウレタンとワックスとを有する、乳白色透明性の分散液を得た。
得られた分散液を用いて、上記の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0063】
(実施例8)
実施例1の4つ口フラスコに、さらに表1に示す不飽和単量体と初期反応制御のための重量禁止剤とを加えたこと以外は、実施例1と同様にして、分散液(ポリウレタン分散液)を得た。
得られたポリウレタン分散液を50℃に保温し、この温度で、7重量%t-ブチルハイドロパーオキサイド水溶液4.6重量部と、1重量%アスコルビン酸水溶液16.6重量部からなるレドックス開始剤を添加して、ラジカル重合性単量体の重合を開始した。発熱終了後、さらに80℃に昇温して2時間保持することによって、ポリウレタンと不飽和重合体とワックスとを含む水分散液を得た。また、得られた水分散液の平均粒子径は700nmであった。得られた分散液を用いて、上記の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0064】
(比較例1~2)
表1に示すキャンデリラロウ、又はマイクロクリスタリンワックスディスパージョン単独で用いて上記の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0065】