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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】枠体及び家具
(51)【国際特許分類】
   A47B 47/06 20060101AFI20220901BHJP
   A47B 47/00 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
A47B47/06
A47B47/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022107416
(22)【出願日】2022-07-03
【審査請求日】2022-07-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521452050
【氏名又は名称】株式会社三協丸筒
(74)【代理人】
【識別番号】100126675
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 将彦
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼村 豪優
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3117319(JP,U)
【文献】実開昭64-035933(JP,U)
【文献】実開平01-073512(JP,U)
【文献】米国特許第5678706(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 47/00-47/06
F16B 12/00-12/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体であって、
複数の紙管と、
前記複数の紙管が多角形の連続した複数の辺を構成するように、前記複数の紙管を連結する複数の継ぎ手と、を備え、
前記複数の紙管のうちの少なくとも2つの紙管の各々は、軸に沿って延びかつ壁体を内外に貫通するスリットを有し、
前記枠体は、前記少なくとも2つの紙管の各々が有する前記スリットを貫くように、端部が前記少なくとも2つの紙管に挿入されることにより、前記少なくとも2つの紙管に支持される板体を、さらに備え、
前記板体は、
主面を有する板体本体と、
前記少なくとも2つの紙管のうちの少なくとも1つの紙管に挿入された前記端部において、前記板体本体の前記主面から突起し、挿入された前記紙管の軸方向に延在するリブと、を有する枠体。
【請求項2】
前記少なくとも1つの紙管は、軸方向両端のうち少なくとも一方端にまで、前記スリットが延び、
前記板体本体と前記リブとを含めた前記板体の端部の、前記主面に直交する方向の厚さは、前記リブが延在する前記板体の端部が挿入される前記紙管の前記スリットの幅よりも大きい、請求項1に記載の枠体。
【請求項3】
前記複数の紙管は4本の紙管であり、
前記複数の継ぎ手は、4個の継ぎ手であり、
前記多角形は矩形であり、
前記少なくとも2つの紙管は、前記4本の紙管であり、
前記少なくとも1つの紙管は、互いに対向する位置にある2本の紙管である、請求項1又は2に記載の枠体。
【請求項4】
前記板体本体は、前記互いに対向する位置にある2本の紙管の軸方向の前記板体本体の両端に開口し、当該軸方向に沿って延在する4本の溝を有し、
前記4本の溝は、前記4個の継ぎ手、又は前記2本の紙管の壁体、の挿入を受け入れることにより、前記4個の継ぎ手又は前記2本の紙管の壁体に係止され、それにより、前記互いに対向する位置にある前記2本の紙管から、挿入された前記板体の前記端部が抜け出る方向への前記板体の動きが制止される、請求項3に記載の枠体。
【請求項5】
前記リブは、鉤(かぎ)状部を有しており、
前記板体本体は、前記主面を貫通するように形成され、前記鉤状部の挿入を受け入れる貫通孔を有しており、
前記リブは、前記鉤状部が前記貫通孔に挿入され、さらに前記リブの延在方向に前記リブがスライドすることにより、前記鉤状部が前記貫通孔の縁部に係合し、それにより、前記板体本体から分離しないように前記板体本体に支持される、請求項1又は2に記載の枠体。
【請求項6】
前記リブは板状である、請求項5に記載の枠体。
【請求項7】
前記リブと前記板体本体との接触部の少なくとも一部に介在する剥離紙を、さらに備える、請求項6に記載の枠体。
【請求項8】
前記複数の紙管と前記複数の継ぎ手とは、互いに連結される紙管と継ぎ手との連結部の各々において、互いに重なるように設けられた楔挿通孔を有しており、
前記楔挿通孔に紙管から切り出された楔が嵌め込まれており、それにより、前記複数の紙管と前記複数の継ぎ手とが互いに離れることを抑えつつ連結されている、請求項1又は2に記載の枠体。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の枠体を備える家具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙管を用いた枠体、及び当該枠体を用いたワゴン・椅子などの家具に関する。
【背景技術】
【0002】
「紙管(しかん)」とは、紙で作られた管であり、トイレットペーパーの芯、ガムテープの芯、賞状の収納筒、段ボールパレットなど、「巻く」・「包む」・「支える」という3機能を中心に、多様な用途がみられる(非特許文献1、2参照)。紙管は紙製であるため、軽量であり、廃棄後には土に戻すこともでき、環境にも優しいという利点がある。
【0003】
従来より、例えば特許文献1,2に開示されるように、支柱、横梁等に紙管を用いた棚、ラック等の家具が知られている。このような家具において、天板、棚板等の板体を配置するには、板体を支柱の上に置いたり、上下の支柱の間に挟んだり、横梁の上に置かれたりするのが通例であった。
【0004】
これに対して、本願発明者は、紙管にスリットを形成し、このスリットを通して紙管に板体を挿入することにより、美観を向上させ、かつ板体を安定して支持する構造の枠体を開示している(特許文献3)。枠体は家具の構成要素となり得る。しかし、板体に比較的重量の大きい物体を載せたり、あるいは人が座ったりすると、板体が湾曲する場合があり、板体の曲げ剛性を高めるための改善が望まれた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平09-168435号公報
【文献】実全昭60-134908号公報
【文献】特許第7038454号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】日本紙工業株式会社のウェブページ「紙管の知識」(https://www.nskg.co.jp/product/tube_chisiki.html)
【文献】日本紙管工業株式会社のウェブページ「紙管について」(http://n-shikan.co.jp/paper-core/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑み、紙管に形成されたスリットを通して板体の端部が紙管に挿入されることにより、板体が紙管に支持される構造の枠体、及び当該枠体を用いた家具に関し、板体の曲げ剛性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のうち第1の態様によるものは、枠体であって、複数の紙管と、前記複数の紙管が多角形の連続した複数の辺を構成するように、前記複数の紙管を連結する複数の継ぎ手と、を備えている。前記複数の紙管のうちの少なくとも2つの紙管の各々は、軸に沿って延びかつ壁体を内外に貫通するスリットを有している。前記枠体は、前記少なくとも2つの紙管の各々が有する前記スリットを貫くように、端部が前記少なくとも2つの紙管に挿入されることにより、前記少なくとも2つの紙管に支持される板体を、さらに備えている。また、前記板体は、主面を有する板体本体と、リブとを有している。前記リブは、前記少なくとも2つの紙管のうちの少なくとも1つの紙管に挿入された前記端部において、前記板体本体の前記主面から突起し、挿入された前記紙管の軸方向に延在する。
【0009】
この構成によれば、枠体の梁部分に紙管が用いられ、しかも板体を紙管に挿入して支持する枠体が実現する。かかる枠体は、ラック、棚、椅子のほか、様々な家具の構成要素として用いることができる。板体を支持する紙管の少なくとも1つに挿入された板体の端部に、板体本体の主面から突起し、かつ挿入された紙管の軸方向に延在するリブがあるので、板体の曲げ剛性が高められる。また、リブは紙管の中にあるので、枠体の美観が損なわれない。
【0010】
本発明のうち第2の態様によるものは、第1の態様による枠体であって、前記少なくとも1つの紙管は、軸方向両端のうち少なくとも一方端にまで、前記スリットが延びている。また、前記板体本体と前記リブとを含めた前記板体の端部の、前記主面に直交する方向の厚さは、前記リブが延在する前記板体の端部が挿入される前記紙管の前記スリットの幅よりも大きい。
【0011】
この構成によれば、板体本体とリブとを含めた板体の、主面に直交する方向の厚さは、リブが延在する板体の端部が挿入される紙管のスリットの幅よりも大きいので、スリットの幅を小さく抑えつつ、板体の端部の厚さを大きく設定することにより、板体の曲げ剛性を高めることができる。また、板体の端部が紙管から抜け出ることを妨げる構造が他になくても、リブが延在する板体の端部が紙管から抜け出ることが、リブにより妨げられる。リブが中にある紙管のスリットは、紙管の軸方向両端のうち少なくとも一方端にまで延びているので、リブを含む板体の端部を、当該少なくとも一方端から紙管の中に挿入することができる。
【0012】
本発明のうち第3の態様によるものは、第1又は第2の態様による枠体であって、前記複数の紙管は4本の紙管であり、前記複数の継ぎ手は、4個の継ぎ手であり、前記多角形は矩形であり、前記少なくとも2つの紙管は、前記4本の紙管であり、前記少なくとも1つの紙管は、互いに対向する位置にある2本の紙管である。
【0013】
この構成によれば、複数の紙管が、4本であり矩形の4辺を構成するので、ラック、棚、椅子のほか、様々な組立体の構成要素への応用に特に便宜である。板体が矩形の4辺を構成する4本の紙管に支持されるので、板体がより堅固に支持される。互いに対向する位置にある2本の紙管に挿入された板体の端部にリブがあるので、板体の曲げ剛性が効果的に高められる。
【0014】
本発明のうち第4の態様によるものは、第3の態様による枠体であって、前記板体本体は、前記互いに対向する位置にある2本の紙管の軸方向の前記板体本体の両端に開口し、当該軸方向に沿って延在する4本の溝を有している。前記4本の溝は、前記4個の継ぎ手、又は前記2本の紙管の壁体、の挿入を受け入れることにより、前記4個の継ぎ手又は前記2本の紙管の壁体に係止され、それにより、前記互いに対向する位置にある前記2本の紙管から、挿入された前記板体の前記端部が抜け出る方向への前記板体の動きが制止される。
【0015】
この構成によれば、板体本体に形成された4本の溝が4個の継ぎ手又は2本の紙管の壁体に係止されることにより、互いに対向する位置にある2本の紙管に挿入される板体の端部が、これらの紙管から抜け出る方向への、板体の動きが制止される。
【0016】
本発明のうち第5の態様によるものは、第1から第4のいずれかの態様による枠体であって、前記リブは、鉤(かぎ)状部を有している。また、前記板体本体は、前記主面を貫通するように形成され、前記鉤状部の挿入を受け入れる貫通孔を有している。更に、前記リブは、前記鉤状部が前記貫通孔に挿入され、さらに前記リブの延在方向に前記リブがスライドすることにより、前記鉤状部が前記貫通孔の縁部に係合し、それにより、前記板体本体から分離しないように前記板体本体に支持される。
【0017】
この構成によれば、板体本体とリブとを一体の部材として製造する必要がないので、製造コストが節減される。
【0018】
本発明のうち第6の態様によるものは、第5の態様による枠体であって、前記リブは板状である。
この構成によれば、リブが板状であるので、製造コストが更に節減される。
【0019】
本発明のうち第7の態様によるものは、第6の態様による枠体であって、前記リブと前記板体本体との接触部の少なくとも一部に介在する剥離紙を、さらに備えている。
【0020】
この構成によれば、板体本体に荷重が印加されたときの摩擦音が低減ないし消去される。剥離紙は、板体本体の主面又は板状であるリブの主面に、製造工程において保護シートとして付される剥離紙を、一部残すことによって、リブと板体本体との接触部に介在させることができる。
【0021】
本発明のうち第8の態様によるものは、第1から第7のいずれかの態様による枠体であって、前記複数の紙管と前記複数の継ぎ手とは、互いに連結される紙管と継ぎ手との連結部の各々において、互いに重なるように設けられた楔挿通孔を有している。前記楔挿通孔に紙管から切り出された楔が嵌め込まれており、それにより、前記複数の紙管と前記複数の継ぎ手とが互いに離れることを抑えつつ連結されている。
【0022】
この構成によれば、紙管との継ぎ手との連結状態を保持するのに、紙管から切り出された楔が用いられるので、紙管との継ぎ手との連結状態を保持するための製造コストが節減される。
【0023】
本発明のうち第9の態様によるものは、家具であって、第1から第8のいずれかの態様による枠体を備えている。
この構成によれば、家具を構成する板体の曲げ剛性が高められる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように本発明によれば、紙管に形成されたスリットを通して板体の端部が紙管に挿入されることにより、板体が紙管に支持される構造の枠体、及び当該枠体を用いた家具に関し、板体の曲げ合成が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施の形態による家具について、外観を例示する写真である。
図2】本発明の一実施の形態による枠体について、構成を例示する平面図である。
図3図2の枠体に用いられる紙管について、構成を例示する斜視図である。
図4図2の枠体に用いられる板体について、構成を例示する斜視図である。
図5図4の板体のうち、リブに沿った切断部端面の形状を例示する切断部端面図である。
図6図2の枠体のうち、継ぎ手の付近の内部構造について、一例を示す平面断面図である。
図7図2の枠体のうち、リブを有する板体端部と、この板体端部を受け入れる紙管との一例を示す垂直断面図である。
図8図2の枠体のうち、リブを有する板体端部と、この板体端部を受け入れる紙管との別の例を示す垂直断面図である。
図9図2の枠体のうち、リブを有する板体端部と、この板体端部を受け入れる紙管とについて、図8の垂直断面図とは別の切断面に沿った断面を例示する垂直断面図である。
図10図2の枠体のうち、継ぎ手の付近の内部構造について、別の一例を示す平面断面図である。
図11】本発明の別の実施の形態による枠体について、継ぎ手の付近の内部構造を例示する平面断面図である。
図12】紙管の構成について、別の例を示す斜視図である。
図13】本発明の更に別の実施の形態による枠体について、継ぎ手の付近の内部構造を例示する平面断面図である。
図14】紙管の構成について、更に別の例を示す斜視図である。
図15】本発明の更に別の実施の形態による枠体について、継ぎ手の付近の内部構造を例示する平面断面図である。
図16】紙管複合体の構成を例示する斜視図である。
図17】本発明の更に別の実施の形態による枠体について、継ぎ手の付近の内部構造を例示する平面断面図である。
図18】本発明の更に別の実施の形態による枠体について、構成を例示する平面図である。
図19】本発明の別の実施の形態による家具について、外観を例示する写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明の一実施の形態による家具について、外観を例示する写真である。図示例の家具101は、椅子として構成されている。家具101では、多数の紙管10が多数の継ぎ手11によって連結されることにより、骨組が形成されている。4本の紙管10が四角形の連続した4辺を構成するように、4個の継ぎ手11により連結されることにより、矩形の枠体が形成されている。家具101の骨組みは、このような枠体が紙管10及び継ぎ手11を共有することにより連結されてなる複数の枠体によって、構成されている。図示例では、継ぎ手11には、2本の紙管10を連結する2方向継ぎ手のほか、3本の紙管10を連結する3方向継ぎ手、及び4本の紙管10を連結する4方向継ぎ手が含まれる。図示例では、継ぎ手11は、一例として合成樹脂製である。図示例では、紙管10の外面には、金属光沢を付与する塗料が塗布されている。
【0027】
一部の枠体には、板体13が支持されている。板体13のうち、板体13Aは椅子の背板を構成し、板体13Bは座板を構成し、板体13Cは物品を載置するための載置板を構成している。板体13A、13B、13Cは、一例として合成樹脂板、特に透明アクリル板である。板体13A、13B、13Cのうち、座板を構成する板体13Bは、使用者が座することによる荷重を受ける。以下に述べる本発明の実施の形態による枠体は、荷重を受ける座板として機能する板体13B、板体13Bを支持する4本の紙管10、及びこれら4本の紙管10を連結する4個の継ぎ手11により構成される枠体に適している。
【0028】
図2は、本発明の一実施の形態による枠体について、構成を例示する平面図である。図示例の枠体102は、長短2種類の4本の紙管10を有している。4本の紙管10は、四角形の連続した4辺を構成するように、4個の継ぎ手11により連結されている。また、4本の紙管10には、板体13が支持されている。継ぎ手11は、一例として合成樹脂製である。また、板体13は、一例として合成樹脂板、特に透明アクリル板である。図示例では、継ぎ手11は、2本の紙管10を連結する2方向継ぎ手である。枠体102は、単独で使用することも可能であるが、継ぎ手11に、4本の紙管10を連結する4方向継ぎ手など、3本以上の紙管10を連結する継ぎ手を用いることにより、図1に例示した家具101など様々な家具の構成要素とすることが可能である。
【0029】
図3は、枠体102に用いられる紙管10について、構成を例示する斜視図である。図示例の紙管10は、筒状の壁体1に形成されたスリット3を有している。スリット3は、軸5に沿って壁体1の一端から他端にわたって延びている。紙管10の形状は、丸筒状である。以下の実施の形態においても、紙管10の形状が丸筒状である例を示すが、本発明において紙管の形状は丸筒状に限られない。
【0030】
図2に戻って、4本の紙管10のスリット3は、4本の紙管10が形作る四角形の内側に面するように配向している。板体13は、その端部52、54がこれら4本の紙管10のスリット3を貫いて、4本の紙管10の内部に達している。このように板体13は、4本の紙管10に端部52、54が挿入されることにより、4本の紙管10によって支持されている。
【0031】
スリット3の幅(図3において垂直方向の幅、あるいは図2において紙面に垂直な方向の幅)は、例えば、板体13の厚さと同一に設定される。あるいは、スリット3の幅は板体13の厚さよりも小さく設定され、板体13の端部52、54がスリット3に押し込められることにより、板体13が紙管10に嵌め込まれるようにしてもよい。それにより、板体13が安定して紙管10に支持される。あるいは、スリット3の幅は板体13の厚さよりも大きく設定され、板体13の端部52、54がスリット3を遊びをもって貫通することにより、板体13が紙管10に支持されてもよい。本開示において、「スリットを貫く」とは、特に断らない限りいずれの形態をも含む趣旨である。
【0032】
枠体102を、家具101などの構成要素として使用するためには、枠体102を構成する紙管10は一定の剛性を有することが望ましい。例えば、紙管10は、厚さが1.5mm以上、内径が15mm以上であることが望ましい。また、枠体102としての有用性を高める上では、紙管10の長さは90mm以上であることが望ましい。
【0033】
図4は、枠体102に用いられる板体13について、構成を例示する斜視図である。板体13は、板体本体51とリブ53とを有している。図示例では、板体本体51及びリブ53はいずれも、主面を有する板状である。板体本体51は主面の形状が略矩形である。リブ53は、互いに対向する2本の紙管10に挿入される板体13の端部52に相当する板体本体51の領域において、板状本体51の主面から起立し、かつ、挿入される紙管10の軸方向に延びるように設けられている。リブ53は、板体13の曲げ剛性を高めるために設けられる。なお本開示において、板体本体51のうち、板体13の端部52、54に相当する領域を、それぞれ板体本体51の端部52、54とも、便宜上記載する。
【0034】
リブ53は、鉤状部55を有している。一方、板体本体51は、鉤状部55の挿入を受け入れる貫通孔57を端部52に有している。貫通孔57は、板状本体51の表裏の主面を貫通するように形成されている。
【0035】
図5は、板体13のうち、リブ53に沿った切断部端面の形状を例示する切断部端面図である。リブ53の鉤状部55が貫通孔57に挿入され、更に、リブ53の延在方向にリブ53がスライドすることにより、鉤状部55が貫通孔57の縁部59に係合する。その結果、リブ53は、板体本体51から分離しないように、板体本体51に支持される。板体本体51とリブ53とは、互いに接着剤により固着させても良い。
【0036】
図4に戻って、図示例では、主面が略矩形である板体本体51のうち、板体13の端部52が挿入される2本の紙管10とは対辺をなす別の2本の紙管10に挿入される端部54には、リブ53は設置されない。板体本体51が図示例のように略長方形である場合には、板体13の曲げ剛性を高める上で、リブ53は、短辺に沿う端部54よりも、長辺に沿う端部52に設ける方が有利である。
【0037】
板体本体51には、4本の溝61が形成されている。4本の溝61は、板体本体51のうち、板体13の端部52が挿入される2本の紙管10の軸方向の両端に開口し、この軸方向に沿って延びている。溝61は紙管10の軸よりも、板体本体51の中心寄りに位置している。
【0038】
図6は、枠体102のうち、継ぎ手11の付近の内部構造について、一例を示す平面断面図である。継ぎ手11は、図示例では、本体部17から互いに直交する2方向に向かって、筒状の突出部63が突出している。紙管10の外周面に突出部63が嵌め込まれることにより、紙管10と継ぎ手11とが連結される。紙管10と突出部63とは、接着剤によって固着されていても良い。紙管10のスリット3は、軸5に沿って壁体1の一端から他端にわたって延びているので、リブ53を有する板体13の端部52を、軸5の方向の紙管10の両端のいずれかから、紙管10の中に挿入することが可能である。
【0039】
板体本体51が有する溝61は、継ぎ手11の突出部63の挿入を受け入れることにより、突出部63に係止される。その結果、板体13の端部52が紙管10から抜け出る方向に板体13が位置ずれする動きが制止される。突出部63に当接して係止されるのは、溝61の内周面であっても、溝61が係止される、という表現をも本開示では用いる。
【0040】
図7は、枠体102のうち、リブ53を有する板体13の端部52と、この端部52を受け入れる紙管10との一例を示す垂直断面図である。切断面の位置は、図5のA-A切断線により表される。図示例ではリブ53は、紙管10の中心軸5の位置において、板体本体51と交差し、かつ板体本体51の主面に直交する方向に、紙管10の内壁面に接するまで延びている。また、板体本体51の端縁65も紙管10の内壁面に接している。このように板体本体51とリブ53とを配置することにより、板体13の動きが紙管10の内壁により制止される。同時に、板体13の曲げ剛性が効果的に高められる。一方、図示例とは異なり、板体本体51と紙管10の内壁との間、及びリブ53と紙管10の内壁との間に、隙間を設けても良い。
【0041】
図8及び図9は、枠体102のうち、リブ53を有する板体13の端部52と、この端部52を受け入れる紙管10との別の例を示す垂直断面図である。切断面の位置は、図8では図5のA-A切断線により表され、図9ではB-B切断線により表される。図8及び図9の例では、剥離紙67が、板体本体51の端部52の主面、及びリブ53の主面に貼着されている。
【0042】
剥離紙67は、合成樹脂板、金属板などの製品を保護するために、製品出荷時に、これらの板製品の主面に貼着するのに用いられる紙材であり、一方の面が粘着性であり他方の面が非粘着性である。剥離紙67は、粘着性の面を板製品の主面に粘着させて使用されるが、製品を使用するときなど不要なときには容易に剥がすことができるように、粘着力が調整されている。枠体102の部品としての板製品である板体本体51及びリブ53の入荷時に、これらの板製品に貼着されている剥離紙67を、部分的に残すのみで、図8及び図9に例示する形態で、剥離紙67が端部52及びリブ53に貼着された状態にすることができる。
【0043】
枠体102に外力が加わったときに、端部52とリブ53との間の接触面において発生する摩擦音が、接触面に剥離紙67が介在することにより、低減ないし消去される。剥離紙67は、端部52とリブ53との間の接触面に貼着されておれば足りる。但し、端部52とリブ53の主面全体に残す方が、枠体102の製造上、容易である。また、端部52とリブ53との間の接触面のうちの一部にのみ、剥離紙67を貼着してもよい。例えば、端部52の主面にのみ、剥離紙67を貼着してもよい。その場合においても、摩擦音は相応に低減される。
【0044】
図10は、枠体102のうち、継ぎ手11の付近の内部構造について、別の一例を示す平面断面図である。図示例では、継ぎ手11と紙管10とが、楔69により係止されている。楔69は、紙管10と同様の紙管から切り出すことよって容易に作られる。楔69を嵌め込むために、継ぎ手11の突出部63には楔挿通孔71が設けられ、紙管10の対応する部位に楔挿通孔73が設けられている。これらの楔挿通孔71、73に楔69を嵌め込むことにより、楔69の脱落を防ぎつつ、継ぎ手11と紙管10とが互いに離れないように連結される。楔69は、接着剤により楔挿通孔71、73に固着されてもよい。
【0045】
図11は、本発明の別の実施の形態による枠体について、継ぎ手の付近の内部構造を例示する平面断面図である。図示例の枠体103では、板体本体51に溝61(図6参照)が設けられない。板体本体51を継ぎ手11の突出部63に係止する溝61が無くても、リブ53が紙管10の壁体1に係止されることにより、板体13の端部52は、紙管10から抜け出ることが妨げられる。
【0046】
図12は、紙管の構成について、別の例を示す斜視図である。図示例の紙管75では、壁体1に形成されるスリット3は、壁体1の両端部の双方(図において左端部と右端部の双方)を残して、軸5に沿って延びている。紙管75は、軸5の方向の両端部の双方にスリット3が無いので、強度及び形状保持性が高められる。
【0047】
図13は、本発明の更に別の実施の形態による枠体について、継ぎ手の付近の内部構造を例示する平面断面図である。図示例の枠体104では、枠体103(図11参照)において、板体13の端部54が挿入される紙管10が、図12に例示する紙管75に置き換えられている。端部54は、紙管75のスリット3を貫通することにより、紙管75に挿入されている。紙管75が用いられるので、枠体104の強度が高められる。
【0048】
図14は、紙管の構成について、更に別の例を示す斜視図である。図示例の紙管77では、壁体1に形成されるスリット3は、壁体1の両端部のうち、一方(図において右端部)のみを残して軸5に沿って延びている。紙管77は、軸5の方向の両端部のうちの一方にスリット3が無いので、強度及び形状保持性が相応に高められる。
【0049】
図15は、本発明の更に別の実施の形態による枠体について、継ぎ手の付近の内部構造を例示する平面断面図である。図示例の枠体105では、枠体104(図13参照)において板体13の端部52が挿入される紙管10が、図14に例示する紙管77に置き換えられている。端部52は、紙管77のスリット3を貫通することにより、紙管77に挿入されている。紙管77のスリット3は、壁体1の両端部のうち、一方(図において左端部)のみを残して軸5に沿って延びているので、リブ53を有する板体13の端部52を、軸5の方向の紙管77の一端(図において図示されない右端)から、紙管77の中に挿入することが可能である。紙管77が用いられるので、枠体105の強度が高められる。
【0050】
図16は、紙管複合体の構成を例示する斜視図である。図示例の紙管複合体79は、紙管10と紙管15とを有している。図16(a)は、紙管複合体79を例示し、図16(b)は、紙管15を例示している。紙管10は、図3に例示した紙管10と同じであり、スリット3は、軸5に沿って壁体1の一端から他端にわたって延びている。紙管15は、紙管10の軸5に沿った一部に配置され、この一部の外周面に接するように、この一部を囲む紙管である。図示例では、紙管15は、軸5の方向の紙管10の両端部に配置されている。紙管複合体79は、紙管10のスリット3が一端から他端まで延びているにも拘わらず、紙管15によって強度及び形状保持性が高められる。すなわち、紙管15は、紙管10を補強する補強体として機能する。
【0051】
図17は、本発明の更に別の実施の形態による枠体について、継ぎ手の付近の内部構造を例示する平面断面図である。図示例の枠体106では、枠体102(図11参照)において、紙管10に代えて図16に例示する紙管複合体79が用いられ、継ぎ手11に代えて継ぎ手81が用いられる。継ぎ手81においては、本体部17から互いに直交する2方向に向かって、筒状の突出部19が突出している。紙管10の内側空洞に突出部19が嵌め込まれることにより、紙管10と継ぎ手11とが連結される。紙管10と突出部19とは、接着剤によって互いに固着されても良い。同様に、紙管複合体79の構成要素である紙管15と紙管10とは、接着剤によって互いに固着されても良い。継ぎ手81は、例えば合成樹脂製である。
【0052】
紙管10のスリット3は、軸5に沿って壁体1の一端から他端にわたって延びているので、紙管15を紙管10の両端部に配置する前に、リブ53を有する板体13の端部52を、軸5の方向の紙管10の一端から、紙管10の中に挿入することが可能である。枠体106においては紙管79が用いられるので、枠体106の強度が高められる。なお、枠体106においても、紙管10が使用されていることは、枠体102等と変わりない。
【0053】
図18は、本発明の更に別の実施の形態による枠体について、構成を例示する平面図である。図示例の枠体107は、長短2種類の3本の紙管10と、同一長さの2本の紙管20とを有している。合計5本の紙管10,20は、六角形の連続した5辺を構成するように、4個の継ぎ手11により連結されている。3本の紙管10には、スリット3(図示略)が形成されている。これらのスリット3を板体13の端部52、54が貫くように、3本の紙管10に挿入されることにより、板体13が3本の紙管10に支持されている。板体13の端部52は、リブ53を有している。板体13を支持しない2本の紙管20には、スリット3は形成されていなくてもよい。枠体107を構成する紙管10,20の望ましい厚さ、内径、長さは、枠体102を構成する紙管10について述べたところと同じである。
【0054】
図6図17等に例示した継ぎ手11、81は、2つの突出部63、19を互いに直交する2方向に延びるように形成するだけでなく、様々な角度で交差する2方向に延びるように形成することも可能である。それにより、図18に例示するように、紙管10,20が四角形以外の多角形(三角形を含む)の連続した複数辺を構成するように、継ぎ手11により紙管10,20を連結することも可能となる。
【0055】
図示例では、短い2本の紙管10の一端には、継ぎ手11が接続されない代わりに、キャップ21が接続されている。キャップ21は、例えば、半球状の本体部の平坦な底面から、図6に例示した継ぎ手11の突出部63と同様の突出部が突出した形状を有し、この突出部が紙管10の一端から紙管10の外周面に嵌め込まれている。キャップ21は、例えば合成樹脂製である。
【0056】
図18に例示した枠体107では、板体13は、3本の紙管10に支持されている。これに対して、板体13を2本の紙管10により支持することも可能である。例えば、図18において、紙管20をそれと同一長さの紙管10に置き換え、紙管10をそれと同一長さの紙管20に置き換え、置き換え後の2本の紙管10(図18において紙管20の位置に配置された紙管10)のスリット3を板体13の端部52が貫くように、板体13が紙管10に挿入されることにより、板体13が2本の紙管10に支持されても良い。また、図2に例示した枠体102において、板体13は、一例として四角形の長辺をなす2本の紙管10(図2において上下2本の紙管10)に端部52が挿入されることによってのみ、支持されてもよい。
【0057】
図19は、本発明の別の実施の形態による家具について、外観を例示する写真である。図示例の家具108は、4本の支柱に3段の枠体106(図17参照)を連結した構造を成している。家具108は、例えばラックとして使用することができる。家具108では、図17に例示した紙管複合体79及び継ぎ手81が用いられている。3段に配置される板体13は、透明アクリル板である。図示例では、紙管79の外周面には、金属光沢を付与する塗料が塗布されている。継ぎ手81として、3方向継ぎ手と4方向継ぎ手を使用することにより、このような3次元構造の家具108が実現可能となる。
【0058】
(その他の実施の形態)
(1) 以上に述べた発明の実施の形態では、図7に例示するように、リブ53を含めた板体13の端部52の厚さ(図7ではリブ53の上端から下端までの幅)は、端部52が挿入される紙管10のスリット3の幅(軸5に沿って伸びるスリット3の一対の側壁の間の間隔)よりも大きく設定される。それにより、スリット3の幅を小さく抑えつつ、端部52の厚さを大きくして、板体13の曲げ剛性を高くすることができる。また、板体13に溝61(図4図6参照)が無くても、板体13の端部52が紙管10から抜け出ることが妨げられる。
【0059】
これに対して、端部52が挿入される紙管10のスリット3の幅を、板体13の端部52の厚さ以上に設定することも可能である。この場合には、リブ53を有する板体13の端部52を、スリット3の正面からスリット3を通過させて紙管10の中に挿入することが可能となる。従って、板体13の端部52を支持する紙管として、図12に例示した紙管75を用いることも可能となる。
【0060】
(2) 以上に述べた発明の実施の形態では、図4及び図5に例示するように、リブ53は板体本体51に係合することにより、板体本体51に支持された。これに対して、リブ53は、板体本体51から起立するように、板体本体51とともに一体成型される板状体として構成されても良い。また、リブ53は板状体でなくてもよく、例えば断面半月形など、他の形状を採ることも可能である。また、リブ53は、板体本体51の端部52の双方の主面から起立するのではなく、一方の主面からのみ起立するものであってもよい。
【0061】
(3) 板体本体51に設けられた溝61は、図6に例示するように、継ぎ手11の突出部63の挿入を受け入れ、突出部63に係止されることにより、板体13の端部52が紙管10から抜け出る方向への板体13の動きが制止された。これに対して、図15及び図17に例示するように、端部にスリット3が設けられない紙管77、あるいは紙管複合体79が用いられる枠体105、106においては、板体本体51に、壁体1と突出部63の双方、あるいは壁体1と紙管15の双方の挿入を受け入れる溝61を形成することにより、端部52が紙管10から抜け出る方向への板体13の動きを制止することが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 壁体、 3 スリット、 5 軸、 10 紙管、 11 継ぎ手、 13,13A,13B,13C 板体、 15 紙管、 17 本体部、 19 突出部、 20 紙管、 21 キャップ、 52,54 端部、 51 板体本体、 53 リブ、 55 鉤状部、 57 貫通孔、 59 縁部、 61 溝、 63 突出部、 65 端縁、 67 剥離紙、 69 楔、 71,73 楔挿通孔、 75,77,79 紙管、 81 継ぎ手、101 家具、102,103,104,105,106,107 枠体、 108 家具。
【要約】
【課題】 紙管に形成されたスリットを通して板体の端部が紙管に挿入されることにより、板体が紙管に支持される構造の枠体に関し、板体の曲げ剛性を高めることを目的とする。
【解決手段】 本開示による枠体は、複数の紙管と、複数の紙管が多角形の連続した複数の辺を構成するように、複数の紙管を連結する複数の継ぎ手と、を備えている。複数の紙管のうちの少なくとも2つの紙管の各々は、軸に沿って延びかつ壁体を内外に貫通するスリットを有している。枠体は、少なくとも2つの紙管の各々が有するスリットを貫くように、端部が少なくとも2つの紙管に挿入されることにより、少なくとも2つの紙管に支持される板体を、さらに備えている。また板体は、主面を有する板体本体と、リブとを有している。リブは、少なくとも2つの紙管のうちの少なくとも1つの紙管に挿入された端部において、板体本体の主面から突起し、挿入された紙管の軸方向に延在する。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19