(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】体外衝撃波を用いた標的物質伝達装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/42 20060101AFI20220901BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
C12M1/42
C12M1/00 A
(21)【出願番号】P 2021507005
(86)(22)【出願日】2019-01-25
(86)【国際出願番号】 KR2019001058
(87)【国際公開番号】W WO2020105800
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-02-08
(31)【優先権主張番号】10-2018-0145023
(32)【優先日】2018-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519429842
【氏名又は名称】エクソレンス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】特許業務法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】クォン、キホワン
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-168495(JP,A)
【文献】米国特許第09914103(US,B1)
【文献】特開2008-017739(JP,A)
【文献】特開2005-287419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/42
C12M 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞または細胞外小胞体、及び標的物質が含まれた溶液が通過し、
断面積が他の部分より小さく形成される面積減少部を備える管状部と、
前記面積減少部に配置され、前記溶液に体外衝撃波を加え、前記標的物質を前記細胞または前記細胞外小胞体の内部に挿入させる衝撃波発生部とを含むことを特徴とする、標的物質伝達装置。
【請求項2】
細胞または細胞外小胞体が含まれた溶液が通過し、
断面積が他の部分より小さく形成される面積減少部を備える管状部と、
前記管状部の一側に連結され、前記溶液に標的物質を投入するノズル部と、及び
前記面積減少部に配置され、前記溶液に体外衝撃波を加え、前記標的物質を前記細胞または前記細胞外小胞体の内部に挿入させる衝撃波発生部と、を含むことを特徴とする標的物質伝達装置。
【請求項3】
細胞または細胞外小胞体が含まれた溶液が通過し、
断面積が他の部分より小さく形成される面積減少部を備える管状部と、
前記面積減少部に配置され、前記溶液に体外衝撃波を加える衝撃波発生部と、
前記管状部の一端に連結され、前記体外衝撃波が加えられた溶液が収容されるチャンバと、
前記チャンバの一側に連結され、前記チャンバに収容された溶液に標的物質を投入するノズル部と、を含み、
前記標的物質は、前記体外衝撃波が加えられた溶液に含まれた前記細胞又は前記細胞外小胞体の内部に挿入されることを特徴とする標的物質伝達装置。
【請求項4】
前記衝撃波発生部に連
結され、前記衝撃波発生部において前記溶液に加える体外衝撃波のエネルギーレベルと周期を制御する制御部をさらに含み、
前記制御部は、前記管状部に連結され、前記管状部内で前記溶液の流速を制御することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の標的物質伝達装置。
【請求項5】
前記管状部は、複数個が直列及び並列のうち少なくとも一つに配列して互いに連結されたことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の標的物質伝達装置。
【請求項6】
患者の血管から排出された血液細胞と、細胞外小胞体を含む血漿液に分離する分離部と、
前記分離部に連結され、前記分離部で分離された細胞が通過する連結部と、
前記分離部に連結され、前記分離部で分離された血漿液が通過し、
断面積が他の部分より小さく形成される面積減少部を備える管状部と、
前記管状部に連結され、前記分離部で分離された前記血漿液に標的物質を投入するノズル部と、
前記面積減少部に配置され、前記血漿液に体外衝撃波を加え、前記標的物質を前記細胞外小胞体の内部に挿入させる衝撃波発生部と、
前記連結部及び前記管状部に連結され、前記標的物質が挿入された細胞外小胞体を含む血漿液を再び患者の血管に循環させる循環部と、を含むことを特徴とする標的物質伝達装置。
【請求項7】
前記衝撃波発生部に連結され、
前記衝撃波発生部において前記血漿液に加える体外衝撃波のエネルギーレベルと周期を制御する制御部をさらに含み、
前記制御部は、前記連結部及び前記管状部のうち少なくとも一つに連結され、前記細胞及び前記血漿液のうち少なくとも一つが流れる速度を制御することを特徴とする請求項6に記載の標的物質伝達装置。
【請求項8】
前記管状部は、複数個が直列及び並列のうち少なくとも一つに配列して互いに連結されたことを特徴とする請求項6に記載の標的物質伝達装置。
【請求項9】
前記細胞外小胞体は、エクソソーム(exosome)、エクトソーム(ectosome)、マイクロベシクル(microvesicle)、アポトーシス
小体(apopototic body)、細胞や生命体に由来する嚢胞(vesicle)型物質、細胞外小胞体や細胞を用いて人工的に製造された嚢胞型物質からなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項1~3、6のいずれかに記載の標的物質伝達装置。
【請求項10】
前記標的物質は、核酸、蛋白質及び化合物からなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項1~3、6のいずれかに記載の標的物質伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的物質伝達装置に関するものであって、具体的には、体外衝撃波を用いて、細胞または細胞外小胞体内に標的物質を効果的に伝達することができる標的物質伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
衝撃波は、特定の音波発生器によって生成される連続した単一音波であって、100MPaまでの高ピーク圧力振幅を有し、1μs未満の短い持続時間を有し、0.005~0.32mJ/mm2範囲のエネルギー密度で特定の標的部位に伝達することができる。
高エネルギーの体外衝撃波結石破砕術(extracorporeal shock-wave lithotripsy、ESWL)は、35~100MPaの圧力を人体の特定部位に照射する治療方法であって、腎臓と胆管の結石破砕に使用されて以来、様々な分野で新しい治療方法で試みられている(Chaussy 、C. et al。First clinical experience with extracorporeally induced destruction of kidney stones by shock waves.J Urol 127、417.420(1982))。近来、体外衝撃波結石破砕術が筋骨格系疾患治療に利用され、抗炎症作用及び血流増加に効果を奏すると報告されている。
一方、細胞外小胞体(Extracellular vesicles)は、二重脂質膜からなる数十nm~数百nmのサイズのナノ小胞体であって、タンパク質、脂質、及び遺伝子などの生物学的活性を有する物質からなる。従来は、このような細胞外小胞体は、細胞から分泌される残渣であるとされてきたが、最近は細胞外小胞体の臨床学的意味が台頭してきており、様々な研究が進められている。特に、細胞によって排出される球状小嚢であるエクソソームは、母細胞タンパク質、DNAなどの諸々の情報を有しているので、これをバイオマーカーとして活用した癌検出用マーカー及びセンサーの開発に活発に取り組んでいる。一例として、患者の血液中に存在する細胞外小胞体から変異した形であるEGFRVIII遺伝子の検出に基づいて、膠芽腫の診断可能性を提示した研究結果がある。また、患者の尿中に存在する細胞外小胞体の中から、癌細胞に由来する細胞外小胞体の誘電体解析を通じて前立腺癌の生体マーカーPCA-3及びTMPRSS2:ERGの存在を確認した研究結果もある。併せて、体液内の細胞外小胞体内に存在する炎症性疾患に関連する遺伝子発現量を解析し、炎症性疾患を診断する方法が特許登録第10-1704828号に開示されている。
一方、登録特許登録第10-1719569号において、本発明者らは、本発明に先立って体外衝撃波を処理した細胞から目的の標的物質が導入されたエクソソーム、エクトソーム、マイクロペシクルまたはアポトーシスなどの細胞外小胞体の生成及び分泌が増加することを確認することによって、標的物質を含有する細胞外小胞体を生成する方法を確立した。しかし、前記の特許文献には、細胞または細胞外小胞体内に標的物質を効率的に伝達し、治療剤を大量生産することができる装置については、全く開示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前述した従来の諸問題点を解決すべく見出されたものであって、本発明が目的とするところは、体外衝撃波を用いて、細胞または細胞外小胞体内に標的物質を効果的に伝達することによって治療剤を大量生産することができる標的物質伝達装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記のような目的を達成するための本発明の第1の実施例は、細胞または細胞外小胞体と、標的物質が含まれた溶液が通過する管状部と、前記管状部の一側に配置され、前記溶液に体外衝撃波を加え、前記標的物質を前記細胞または前記細胞外小胞体の内部に挿入させる衝撃波発生部とを含むことを特徴とする、標的物質伝達装置を提供する。
ここで、本願発明の標的物質伝達装置は、細胞または細胞外小胞体に標的物質を挿入させる装置であり、前記細胞は体外衝撃波処理によって標的物質を内包して伝達することができる当分野で知られている様々な分化細胞または未分化細胞を両方含むことができ、例えば、前記の分化細胞または未分化細胞は、体細胞、癌細胞、気管内組織細胞、誘導多能性幹細胞または胚性幹細胞を全部含むことができる。
また、本願発明の標的物質伝達装置は、好ましくは、様々な細胞外小胞体に標的物質を挿入させる装置であり、前記細胞外小胞体は、エクソソーム(exosome)、エクトソーム(ectosome)、マイクロベシクル(microvesicle)、アポトーシス(apopototic body)、細胞や生命体に由来する嚢胞(vesicle)型物質、細胞外小胞体や細胞を用いて人工的に製造された嚢胞型物質からなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする。
また、前記標的物質は、核酸、蛋白質及び化合物からなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする。
加えて、前記衝撃波発生部に連結部され、前記衝撃波発生部において前記溶液に加える体外衝撃波のエネルギーレベルと周期を制御する制御部をさらに含み、前記制御部は、前記管状部に連結され、前記管状部内で前記溶液が流れる速度を制御することを特徴とする。
また、前記菅状部は、複数個が直列及び並列のうち少なくとも一つに配列して互いに連結されることを特徴とする。
一方、本発明の第2の実施例は、細胞または細胞外小胞体が含まれた溶液が通過する管状部と、前記管状部の一側に連結され、前記溶液に標的物質を投入するノズル部と、前記管状部の一側に配置され、前記溶液に体外衝撃波を加え、前記標的物質を前記細胞または前記細胞外小胞体の内部に挿入させる衝撃波発生部とを含むことを特徴とする標的物質伝達装置を提供する。
一方、本発明の第3の実施例は、細胞または細胞外小胞体が含まれた溶液が通過する管状部と、前記管状部の一側に配置され、前記溶液に体外衝撃波を加える衝撃波発生部と、前記管状部の一端に連結され、前記体外衝撃波が加えられた溶液が収容されているチャンバと、前記チャンバの一側に連結され、前記チャンバに収容された溶液に標的物質を投入するノズル部を含み、前記標的物質は、前記体外衝撃波が加えられた溶液に含まれた前記細胞又は前記細胞外小胞体の内部に挿入されることを特徴とする標的物質伝達装置を提供する。
一方、本発明の第4の実施例は、患者の血管から排出された血液細胞と、前記細胞を除いた細胞外小胞体を含む血漿液に分離する分離部と、前記分離部に連結され、前記分離部で分離された細胞が通過する連結部と、前記分離部に連結され、前記分離部で分離された血漿液が通過する管状部と、前記連結部及び前記管状部のうち少なくとも一つに連結され、前記分離部で分離された前記細胞及び前記血漿液のうち少なくとも1つに標的物質を投入するノズル部と、前記連結部及び前記管状部のうち少なくとも一つの一側に配置され、前記細胞及び前記血漿液のうち少なくとも1つに体外衝撃波を加え、前記標的物質を前記細胞の内部、及び前記細胞外小胞体の内部のうち少なくとも1つに挿入させる衝撃波発生部と、前記連結部及び前記管状部に連結され、前記標的物質が挿入された細胞と、前記標的物質が挿入された細胞外小胞体を含む血漿液の少なくとも一つを再び患者の血管に循環させる循環部とを含むことを特徴とする標的物質伝達装置を提供する。
また、前記衝撃波発生部に連結部され、前記衝撃波発生部において前記細胞及び前記血漿液のうち少なくとも一つに加える体外衝撃波のエネルギーレベルと周期を制御する制御部をさらに含み、前記制御部は、前記連結部及び前記管状部のうち少なくとも一つに連結され、前記細胞及び前記血漿液のうち少なくとも一つが流れる速度を制御することを特徴とする。
また、前記菅状部は、複数個が直列及び並列のうち少なくとも一つに配列して互いに連結されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明に係る標的物質伝達装置は、管状部で体外衝撃波を加え、標的物質を細胞または細胞外小胞体に取り込むことにより、多量の細胞または細胞外小胞体に標的物質を伝達する過程が迅速に行われるので、治療剤の商業的な大量生産が容易である。
また、本発明に係る標的物質伝達装置は、溶液の種類、細胞または細胞外小胞体、標的物質の種類及び濃度等によって溶液が流れる速度、体外衝撃波のエネルギーレベル及び周期を調節することができるので、一つの装置で様々な細胞または細胞外小胞体に色んな標的物質を最大限効率的に伝達することができる。
また、本発明に係る標的物質伝達装置は、患者の血液からリアルタイムで細胞及び細胞外小胞体を含む血漿液に分離し、細胞及び血漿液に含まれている細胞外小胞体のうち少なくとも1つに標的物質を挿入させ、標的物質が挿入された細胞と標的物質が挿入された細胞外小胞体を含む血漿液のうち少なくとも一つを再び患者の血管にすぐに注入することができるので、免疫反応による副作用なしに標的物質を患者の標的細胞または標的臓器に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の第1の実施例に係る標的物質伝達装置を示す概略図である。
【
図2】本発明の第2の実施例に係る標的物質伝達装置を示す概略図である。
【
図3】本発明の第3の実施例に係る標的物質伝達装置を示す概略図である。
【
図4】本発明の第4の実施例に係る標的物質伝達装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施例を添付された図面を参照にしながら詳細に説明する。まず、各図面の構成要素に参照符号を付加するにおいて、同一の構成要素については、たとえ他の図面上に表示されても、可能な限り同一符号を付けていることに留意しなければならない。また、本発明の要旨を曖昧にしうると判断される場合には、その詳細な説明は省略する。なお、以下では、本発明の実施例について説明するが、本発明の技術的思想はこれに限定または制限されることなく、当業者によって実施されうることは、もちろんである。
図1は、本発明の第1の実施例に係る標的物質伝達装置を示す概略図であり、
図2は、本発明の第2の実施例に係る標的物質伝達装置を示す概略図であり、
図3は、本発明の第3の実施例に係る標的物質伝達装置を示す概略図であり、
図4は、本発明の第4の実施例に係る標的物質伝達装置を示す概略図である。
以下、
図1を参照に、本発明の第1の実施例に係る標的物質伝達装置を説明する。
管状部100は、細胞または細胞外小胞体10及び標的物質20が含まれた溶液が通過するように管状構造の内部空間が形成される。ここで、管状部100の断面は、円形、楕円形、長方形、六角形、三角形などに形成されることができる。管状部100の材質は、シリコン、ステンレス鋼等の金属、ポリスチレン等のプラスチック等で形成されることができるが、これに限定されない。
一方、管状部100の内部を通過する溶液は、細胞または細胞外小胞体10及び標的物質20を含むのに適したバッファーであることができ、例えば、生理食塩水などであることができるが、これに限定されない。
一方、溶液に含まれる細胞または細胞外小胞体10の中、細胞は、体外衝撃波処理によって標的物質を内包して伝達することがでできる、当分野で知られている様々な分化細胞または未分化細胞を両方含むことができ、例えば、前記分化または未分化細胞は、体細胞、癌細胞、気管内組織細胞、誘導多能性幹細胞または胚性幹細胞を全部含むことができる。
また、溶液に含まれる細胞または細胞外小胞体10の中、細胞外小胞体は、何らかの生物または細胞に由来するものであることができ、前記生物は、植物または動物であることができる。また、細胞外小胞体は、オブジェクトから分離された細胞であることができる。すなわち、細胞外小胞体は、ヒト及び非ヒト哺乳類を含む任意の動物に由来するものであることができ、様々な種類の免疫細胞、腫瘍細胞などに由来するものであることもできる。
具体的には、細胞外小胞体は、エクソソーム(exosome)、エクトソーム(ectosome)、マイクロベシクル(microvesicle)とアポトーシス(apopototic body)、細胞や生命体に由来する嚢胞(vesicle)型物質、細胞外小胞体や細胞を用いて人工的に製造された嚢胞型物質からなる群から選択される少なくとも一つであることができる。
一方、溶液に含まれた標的物質20は、核酸、蛋白質及び化合物からなる群から選択される少なくとも一つの物質であることができる。ここで、核酸は、自然界に存在する核酸や、人工的に製造することができる核酸をすべて含むことができ、好ましくは、DNA、RNA、マイクロRNA(microRNA、miRNA)、小さなRNA(Small RNA、smRNA)、小さな干渉RNA(small interfering RNA、siRNA)、パイRNA(Piwi -interacting RNA、piRNA)、小核小体RNA(small nucleolar RNA、snoRNA)、t-RNA-由来小さなRNA(tRNA -derived small RNA、tsRNA)、小さなrDNA -由来RNA(small rDNA -derived RNA、srRNA)、小核RNA(small nuclear RNA、U-RNA)及び長い非暗号化RNA(long noncoding RNA、lncRNA)であることができ、特定シーケンスを内包しているplasmid vectorであることができるが、これらに制限されない。
衝撃波発生部200は、管状部100の一側に配置され、管状部100を通過する溶液に体外衝撃波を加えて標的物質20を、細胞または細胞外小胞体10の内部に挿入させるように備えられる。このように体外衝撃波が加えられた細胞または細胞外小胞体10は、標的物質20が内部に挿入されることができる。
ここで、衝撃波発生部200が管状部100に加える体外衝撃波のエネルギーレベルと周期は、衝撃波発生部200と管状部100との間の間隙、細胞または細胞外小胞体、標的物質の種類と濃度等の条件に応じて異なることができる。例えば、体外衝撃波は、0.05~0.9mJ/mm
2 、具体的には、0.05~0.89mJ/mm
2 、更に具体的には、0.05~0.70mJ/mm
2のエネルギー範囲で処理されることができるが、これらに限定されない。
制御部300は、衝撃波発生部200に連結され、衝撃波発生部200において管状部100を通過する溶液に加える体外衝撃波のエネルギーレベルと周期を調節することができる。すなわち、制御部300は、上述した様々な条件に応じて異なることができる最適のエネルギーレベルと周期を算出し、衝撃波発生部200に伝送し、衝撃波発生部200は、制御部300から伝送された最適化のエネルギーレベルと周期による体外衝撃波を管状部100を通過する溶液に加えるように構成することができる。
また、制御部300は、管状部100に連結され、管状部100内で溶液が流れる速度を調節するように構成することができる。すなわち、制御部300は、溶液が流れる速度を制御し、この速度に応じて体外衝撃波のエネルギーレベルと周期を調節することができるので、溶液の種類、細胞または細胞外小胞体、標的物質の種類及び濃度等によって溶液が流れる速度が変わっても流速に最適なエネルギーレベルと周期で体外衝撃波を加えることができる。したがって、最大の効率で細胞または細胞外小胞体の内部に標的物質を挿入させることが可能であり、これにより、大量の細胞または細胞外小胞体に標的物質を伝達する過程が迅速に行われるので、治療剤の商業的な大量生産が容易である。
一方、衝撃波発生部200により体外衝撃波が加えられる管状部100は、密閉されるように構成することが好ましい。すなわち、管状部100が完全に密閉されなければ、管状部100内に空気が流入して体外衝撃波が溶液内に完全に伝達されないため、体外衝撃波を用いて細胞の内部に標的物質を挿入させる過程が正常に行われなくなる。したがって、管状部100は、空気が流入されないように、完全に密閉されることが好ましい。
また、管状部100の断面積は、内部を通過する溶液に含まれた細胞または細胞外小胞体、標的物質の種類、衝撃波発生部200の配置位置によって決定されることができる。すなわち、衝撃波発生部200で発生された体外衝撃波が管状部100の内部を通過する溶液に均一に伝達され得る距離内で、管状部100の断面積が形成されることが好ましい。
衝撃波発生部200で体外衝撃波が発生される部分が、管状部100から一定距離以上離れれば離れるほど、管状部100の内部に到達することができる体外衝撃波エネルギーも減少する。したがって、衝撃波発生部200の配置位置、管状部100の断面積は、これを考慮して適宜設計されることが好ましい。
管状部100の一部は、他の部分よりも相対的に断面積が減った面積減少部110が形成されることができる。具体的には、面積減少部110は、管状部100において衝撃波発生部200が配置され、体外衝撃波が加えられる部分のみに形成されることができる。すなわち、衝撃波発生部200から体外衝撃波が最大限均一に加えられるように断面積を最大限に減らした面積減少部110を含む管状部100が形成されることができる。
また、図示してはいないが、管状部100は、面積減少部110なしで全体的に同一断面積を有するように形成されることもできる。このように面積減少部110を含まない管状部100の全体的な断面積は、体外衝撃波が最大限均一に加えられる範囲内で形成されることが好ましい。
一方、管状部100内で溶液の流れを誘導する方法は、ポンプ(未図示)などを用いた圧力差を利用する方法があるが、これに限定されない。
また、
図1に示す管状部100内で溶液が通過する流れ(flow)方向は、右方向に示されているが、これに限定されず、溶液は左方向にも流れることができる。
一方、図示してはいないが、管状部100は、複数個が直列及び並列のうち少なくとも一つに配列して互いに連結されることができる。ここで、それぞれの管状部100は、互いに異なる細胞または細胞外小胞体10を含む溶液が通過することができ、細胞または細胞外小胞体10内に挿入したい標的物質20もまたそれぞれ変えられるように具現することができる。
複数の管状部100が並列に配置して連結された場合、体外衝撃波により標的物質20が細胞または細胞外小胞体10の内部に挿入される過程が、並列に配置して連結された複数の管状部100を介して同時に行うことができるので、生産性が上がるという利点がある。
また、複数の管状部100が直列に配列して連結された場合、体外衝撃波により標的物質20が細胞または細胞外小胞体10の内部に挿入される過程を連続して行うことができる。
したがって、直列に配列して連結された複数の管状部100において、それぞれの管状部100に連結された後述するノズル部400を介して同じ標的物質20を連続して注入することにより、細胞または細胞外小胞体10内に挿入される標的物質20をより高濃度なものとすることができる。また、それぞれの管状部100に連結されたノズル部400を介して互いに異なる標的物質20を連続して注入することにより、細胞または細胞外小胞体10内に種々の標的物質20が挿入されるようにすることもできる。
上述したように、複数の管状部100が直列及び並列のうちの少なくとも一つに配置され互いに連結された場合、複数の管状部100それぞれは、制御部300に連結されることができる。すなわち、制御部300は、複数の管状部100それぞれに連結され、管状部100を通過する溶液が流れる速度をそれぞれの管状部100別に異ならして調節するように構成されることができる。
以下、
図2を参照にしながら、本発明の第2の実施例に係る標的物質伝達装置の構造について説明する。説明の便宜上、
図1に示す第1の実施例と同一構成要素についての説明は省略し、以下において相違点を中心に説明する。
図2を参照すると、標的物質伝達装置はノズル部400をさらに含む。ノズル部400は、管状部100の一側に連結され、管状部100を通過する溶液内に標的物質20を投入するように備えることができる。
すなわち、
図1の第1の実施例において、標的物質20が細胞または細胞外小胞体10が含まれた溶液内に一緒に含まれた状態で管状部100を通過することとは異なり、
図2の第2の実施例において、細胞または細胞外小胞体10を含む溶液が管状部100を通過する際に、標的物質20はノズル部400を介して溶液内に投入されることができる。
ここで、図に示してはいないが、ノズル部400は、細胞または細胞外小胞体10を含む溶液が衝撃波発生部200を通過する直前またはそれ以前に標的物質20を投入するように菅状部100に連結されたり、細胞または細胞外小胞体10を含む溶液が体外衝撃波が加えられる区間を通過する間、標的物質20を投入するように管状部100に連結されたり、細胞または細胞外小胞体10を含む溶液が衝撃波発生部200を通過した直後またはその後に目標物質20を投入するように管状部100に連結されることができる。
また、ノズル部400から管状部100内に投入される標的物質20の量は、細胞または細胞外小胞体10及び標的物質20の種類、溶液の流量、流速などによって調整されることができる。このとき、ノズル部400は、一側に調節部(未図示)が連結されるように備えられることができる。これらの調節部(未図示)は、ノズル部400を介して投入される標的物質の量を調節するように構成されることができる。
このように、本発明に係る標的物質伝達装置は、管状部100を通過する溶液内に投入される標的物質20の量を管状部100に連結されたノズル部400及び調節部(未図示)により調節することができる。したがって、高価な核酸、タンパク質などの標的物質20の使用量を最小限に抑えながら、治療剤を効率的に生産することができるという長所がある。
一方、
図2に示すノズル部400の形状は、例示的なものであって、これに限定されず、ノズル部400の形状は、当業者によっていくらでも変更可能である。
以下、
図3を参照にしながら、本発明の第3の実施例に係る標的物質伝達装置の構造について説明する。説明の便宜上、
図2に示す第2の実施例と同一構成要素についての説明は省略し、以下において相違点を中心に説明する。
図3を参照すると、標的物質伝達装置は、チャンバ500をさらに含む。チャンバ500は、管状部100の一端に連結され、体外衝撃波が加えられた溶液が収容される。
この時、
図2の第2の実施例におけるノズル部400が管状部100の一側に連結されたものとは異なり、
図3の第3の実施例において、ノズル部400は、チャンバ500の一側に連結され、チャンバ500に収容された溶液に標的物質20を投入する。
すなわち、細胞または細胞外小胞体10を含む溶液が管状部100を通過しながら衝撃波発生部200によって体外衝撃波が加えられた後、チャンバ500に収容されると、ノズル部400を介して標的物質20がチャンバ500に収容された溶液に投入される。このように、ノズル部400を介して投入された標的物質20は、体外衝撃波が加えられた細胞または細胞外小胞体10の内部に挿入されることができる。
以下、
図4を参照にしながら、本発明の第4の実施例に係る標的物質伝達装置の構造を説明する。説明の便宜上、
図2に示す第2の実施例と同一構成要素についての説明は省略し、以下において相違点を中心に説明する。
図4を参照すると、標的物質伝達装置は、血液を細胞分画と血漿分画に分離する血漿搬出(plasmapheresis)法を用いた分離部600、循環部700、及び連結部800をさらに含む。
分離部600は、患者の血管から排出された血液細胞(未図示)と、前記細胞を除いた細胞外小胞体を含む血漿液に分離するように備えられる。分離部600で分離された血漿液は、分離部600に連結された管状部100を通過し、分離部600で分離された細胞成分は、分離部600に連結された連結部800を通過する。
詳しくは図示していないが、ノズル部400は、連結部800及び管状部100のうちの少なくとも一つに連結され、分離部600で分離された細胞及び分離部600で分離された血漿液のうち少なくとも1つに標的物質20を投入する。
このとき、詳しくは図示されていないが、衝撃波発生部200は、連結部800と管状部100のうちの少なくとも一つの一側に配置されることができ、分離部600で分離された細胞と分離部600で分離された血漿液のうち少なくとも1つに体外衝撃波を加えることができる。
体外衝撃波が加えられると、標的物質20は、連結部800を通過する細胞、及び管状部100を通過する血漿液に含まれた細胞外小胞体10の内部のうちの少なくとも一つに挿入されることができる。
循環部700は、連結部800と管状部100のうちの少なくとも一つに連結され、標的物質20が挿入された細胞、及び標的物質20が挿入された細胞外小胞体10を含む血漿液のうちの少なくとも一つを再び患者の血管に循環させることができる。
このように、本発明の第4の実施例に係る標的物質伝達装置は、患者の血液からリアルタイムで細胞、及び細胞外小胞体を含む血漿液に分離し、細胞及び血漿液に含まれた細胞外小胞体のうちの少なくとも一つに標的物質20を挿入させ、標的物質20が挿入された細胞、及び標的物質20が挿入された細胞外小胞体10を含む血漿液のうちの少なくとも一つを再び患者の血管にすぐに注入することができるので、免疫反応による副作用なしに標的物質20を患者の標的細胞または標的臓器に伝達することができる。
以上、本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施例に限定されず、特許請求の範囲によって解釈されるべきである。このとき、この技術分野における通常の知識を習得した者であれば、本発明の範囲から逸脱しない、且つ多様な修正と変形が可能であることを考慮する必要がある。