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特許7133724プラズマ発生装置、およびプラズマ処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】プラズマ発生装置、およびプラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/24 20060101AFI20220901BHJP
【FI】
H05H1/24
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021553194
(86)(22)【出願日】2019-10-22
(86)【国際出願番号】 JP2019041419
(87)【国際公開番号】W WO2021079420
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【弁理士】
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】岩田 卓也
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/194138(WO,A1)
【文献】実公昭36-021622(JP,Y1)
【文献】特開2005-302681(JP,A)
【文献】特開2015-144078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理ガスをプラズマ化させるための反応室が形成された装置本体と、
前記反応室に接続する少なくとも一つの排出通路と、
前記少なくとも一つの排出通路に接続する拡散室と、
前記拡散室に接続する複数の噴出通路であって、それら複数の噴出通路のうちの少なくとも一つの噴出通路の前記拡散室への開口にテーパ面が形成された前記反応室においてプラズマ化されたプラズマガスを噴出する複数の噴出通路と、
を備え
前記複数の噴出通路の全ての噴出通路の前記拡散室への開口にテーパ面が形成されず、前記複数の噴出通路のうちの一部の噴出通路の前記拡散室への開口にテーパ面が形成されたプラズマ発生装置。
【請求項2】
処理ガスをプラズマ化させるための反応室が形成された装置本体と、
前記装置本体に装着され、前記反応室においてプラズマ化されたプラズマガスを噴出するノズルと、
を備え、
前記装置本体は、
前記反応室においてプラズマ化されたプラズマガスを前記装置本体の外部に排出するための排出通路を有し、
前記ノズルは、
前記排出通路の前記装置本体の外壁面への開口を覆うように形成される拡散室と、
前記拡散室を経由してプラズマガスを噴出するための複数の噴出通路であって、それら複数の噴出通路のうちの1以上の噴出通路の前記拡散室への開口にテーパ面が形成された前記反応室においてプラズマ化されたプラズマガスを噴出する複数の噴出通路と、
を有し、
前記複数の噴出通路の全ての噴出通路の前記拡散室への開口にテーパ面が形成されず、前記複数の噴出通路のうちの一部の噴出通路の前記拡散室への開口にテーパ面が形成されたプラズマ発生装置。
【請求項3】
前記ノズルに複数の噴出通路が1列に並んで形成されており、
前記テーパ面が、前記複数の噴出通路の1列に並ぶ方向での中央を中心として対称的に位置するように形成された請求項2に記載のプラズマ発生装置。
【請求項4】
前記ノズルが、
前記装置本体に相対的に移動不能に装着された請求項2または請求項3に記載のプラズマ発生装置。
【請求項5】
処理ガスをプラズマ化させるための反応室が形成された装置本体と、
前記装置本体に装着され、前記反応室においてプラズマ化されたプラズマガスを噴出するノズルと、
を備え、
前記装置本体は、
前記反応室においてプラズマ化されたプラズマガスを前記装置本体の外部に排出するための排出通路を有し、
前記ノズルは、
前記排出通路の前記装置本体の外壁面への開口を覆うように形成される拡散室と、
前記拡散室を経由してプラズマガスを噴出するための複数の噴出通路であって、それら複数の噴出通路のうちの1以上の噴出通路の前記拡散室への開口にテーパ面が形成された前記反応室においてプラズマ化されたプラズマガスを噴出する複数の噴出通路と、
を有し、
前記複数の噴出通路の全ての噴出通路の前記拡散室への開口にテーパ面が形成されず、前記複数の噴出通路のうちの一部の噴出通路の前記拡散室への開口にテーパ面が形成されたプラズマ発生装置において、
前記複数の噴出通路から噴出されるプラズマガスを被処理体に照射するプラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、噴出通路からプラズマガスを噴出するプラズマ発生装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマ発生装置には、反応室において処理ガスをプラズマ化させ、プラズマ化されたプラズマガスを、ノズルに形成された噴出通路から噴出する構造のものがある。下記特許文献には、そのようなプラズマ発生装置の一例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-068298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書は、プラズマガスを噴出通路から噴出する構造のプラズマ発生装置の実用性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本明細書は、処理ガスをプラズマ化させるための反応室が形成された装置本体と、前記反応室に接続する少なくとも一つの排出通路と、前記少なくとも一つの排出通路に接続する拡散室と、前記拡散室に接続する複数の噴出通路であって、それら複数の噴出通路のうちの少なくとも一つの噴出通路の前記拡散室への開口にテーパ面が形成された前記反応室においてプラズマ化されたプラズマガスを噴出する複数の噴出通路と、を備え、前記複数の噴出通路の全ての噴出通路の前記拡散室への開口にテーパ面が形成されず、前記複数の噴出通路のうちの一部の噴出通路の前記拡散室への開口にテーパ面が形成されたプラズマ発生装置を開示する。
【0006】
また、本明細書は、処理ガスをプラズマ化させるための反応室が形成された装置本体と、前記装置本体に装着され、前記反応室においてプラズマ化されたプラズマガスを噴出するノズルと、を備え、前記装置本体は、前記反応室においてプラズマ化されたプラズマガスを前記装置本体の外部に排出するための排出通路を有し、前記ノズルは、前記排出通路の前記装置本体の外壁面への開口を覆うように形成される拡散室と、前記拡散室を経由してプラズマガスを噴出するための複数の噴出通路であって、それら複数の噴出通路のうちの1以上の噴出通路の前記拡散室への開口にテーパ面が形成された前記反応室においてプラズマ化されたプラズマガスを噴出する複数の噴出通路と、を有し、前記複数の噴出通路の全ての噴出通路の前記拡散室への開口にテーパ面が形成されず、前記複数の噴出通路のうちの一部の噴出通路の前記拡散室への開口にテーパ面が形成されたプラズマ発生装置を開示する。
【0007】
また、本明細書は、処理ガスをプラズマ化させるための反応室が形成された装置本体と、前記装置本体に装着され、前記反応室においてプラズマ化されたプラズマガスを噴出するノズルと、を備え、前記装置本体は、前記反応室においてプラズマ化されたプラズマガスを前記装置本体の外部に排出するための排出通路を有し、前記ノズルは、前記排出通路の前記装置本体の外壁面への開口を覆うように形成される拡散室と、前記拡散室を経由してプラズマガスを噴出するための複数の噴出通路であって、それら複数の噴出通路のうちの1以上の噴出通路の前記拡散室への開口にテーパ面が形成された前記反応室においてプラズマ化されたプラズマガスを噴出する複数の噴出通路と、を有し、前記複数の噴出通路の全ての噴出通路の前記拡散室への開口にテーパ面が形成されず、前記複数の噴出通路のうちの一部の噴出通路の前記拡散室への開口にテーパ面が形成されたプラズマ発生装置において、前記複数の噴出通路から噴出されるプラズマガスを被処理体に照射するプラズマ処理方法を開示する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、噴出通路の拡散室への開口にテーパ面が形成されることで、例えば、その開口に異物が付着した場合であっても、その開口が異物により塞がれ難くなる。これにより、噴出通路からのプラズマガスの噴出を担保することが可能なり、プラズマガスを噴出通路から噴出する構造のプラズマ発生装置の実用性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】プラズマ装置を示す図である。
図2】プラズマヘッドを示す斜視図である。
図3】電極及び本体側プラズマ通路の位置においてX方向及びZ方向にプラズマヘッドを切断した断面図である。
図4図3のAA線における断面図である。
図5図3の拡大断面図である。
図6図3のノズルと異なるノズルが装着されたプラズマヘッドの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。
【0011】
図1に示すように、プラズマ装置10は、プラズマヘッド11、ロボット13、制御ボックス15を備えている。プラズマヘッド11は、ロボット13に取り付けられている。ロボット13は、例えば、シリアルリンク型ロボット(多関節型ロボットと呼ぶこともできる)である。プラズマヘッド11は、ロボット13の先端に保持された状態でプラズマガスを照射可能となっている。プラズマヘッド11は、ロボット13の駆動に応じて3次元的に移動可能となっている。
【0012】
制御ボックス15は、コンピュータを主体として構成され、プラズマ装置10を統括的に制御する。制御ボックス15は、プラズマヘッド11に電力を供給する電源部15A及びプラズマヘッド11へガスを供給するガス供給部15Bを有している。電源部15Aは、電源ケーブル(図示略)を介してプラズマヘッド11と接続されている。電源部15Aは、制御ボックス15の制御に基づいて、プラズマヘッド11の電極33(図3及び図4参照)に印加する電圧を変更する。
【0013】
また、ガス供給部15Bは、複数(本実施形態では4本)のガスチューブ19を介してプラズマヘッド11と接続されている。ガス供給部15Bは、制御ボックス15の制御に基づいて、後述する反応ガス、キャリアガス、ヒートガスをプラズマヘッド11へ供給する。制御ボックス15は、ガス供給部15Bを制御し、ガス供給部15Bからプラズマヘッド11へ供給するガスの量などを制御する。これにより、ロボット13は、制御ボックス15の制御に基づいて動作し、テーブル17の上に載置された被処理物Wに対してプラズマヘッド11からプラズマガスを照射する。
【0014】
また、制御ボックス15は、タッチパネルや各種スイッチを有する操作部15Cを備えている。制御ボックス15は、各種の設定画面や動作状態(例えば、ガス供給状態など)等を操作部15Cのタッチパネルに表示する。また、制御ボックス15は、操作部15Cに対する操作入力により各種の情報を受け付ける。
【0015】
図2に示すように、プラズマヘッド11は、プラズマ生成部21、ヒートガス供給部23等を備えている。プラズマ生成部21は、制御ボックス15のガス供給部15B(図1参照)から供給された処理ガスをプラズマ化して、プラズマガスを生成する。ヒートガス供給部23は、ガス供給部15Bから供給されたガスを加熱してヒートガスを生成する。本実施形態のプラズマヘッド11は、プラズマ生成部21において生成したプラズマガスを、ヒートガス供給部23によって生成したヒートガスとともに、図1に示す被処理物Wへ噴出する。プラズマヘッド11には、図2に示す矢印の方向に上流側から下流側へと処理ガスが供給される。なお、プラズマヘッド11は、ヒートガス供給部23を備えない構成でも良い。即ち、本開示のプラズマ装置は、ヒートガスを用いない構成でも良い。
【0016】
図3及び図4に示すように、プラズマ生成部21は、ヘッド本体部31、一対の電極33、プラズマ照射部35等を含む。なお、図3は、一対の電極33及び後述する複数の本体側プラズマ通路71の位置に合わせて切断した断面図であり、図4は、図3のAA線における断面図である。ヘッド本体部31は、耐熱性の高いセラミックにより成形されており、そのヘッド本体部31の内部には、プラズマガスを発生させる反応室37が形成されている。一対の電極33の各々は、例えば、円柱形状をなしており、その先端部を反応室37に突出させた状態で固定されている。以下の説明では、一対の電極33を、単に電極33と称する場合がある。また、一対の電極33が並ぶ方向をX方向、プラズマ生成部21とヒートガス供給部23とが並ぶ方向をY方向、円柱形状の電極33の軸方向をZ方向と称して説明する。なお、本実施形態では、X方向、Y方向、Z方向は互いに直交する方向である。
【0017】
ヒートガス供給部23は、ガス管41、ヒータ43、連結部45等を備えている。ガス管41及びヒータ43は、ヘッド本体部31の外周面に取り付けられ、図4に示すカバー47によって覆われている。ガス管41は、ガスチューブ19(図1参照)を介して、制御ボックス15のガス供給部15Bに接続されている。ガス管41には、ガス供給部15Bからガス(例えば、空気)が供給される。ヒータ43は、ガス管41の途中に取り付けられている。ヒータ43は、ガス管41を流れるガスを温めてヒートガスを生成する。
【0018】
図4に示すように、連結部45は、ガス管41をプラズマ照射部35に連結するものである。プラズマ照射部35がヘッド本体部31に取り付けられた状態では、連結部45は、一端部をガス管41に接続され、他端部をプラズマ照射部35に形成されたヒートガス通路51に接続される。ヒートガス通路51には、ガス管41を介してヒートガスが供給される。
【0019】
図4に示すように電極33の一部の外周部は、セラミックス等の絶縁体で製造された電極カバー53によって覆われている。電極カバー53は、略中空筒状をなし、長手方向の両端部に開口が形成されている。電極カバー53の内周面と電極33の外周面との間の隙間は、ガス通路55として機能する。電極カバー53の下流側の開口は、反応室37に接続されている。電極33の下端は、電極カバー53の下流側の開口から突出している。
【0020】
また、ヘッド本体部31の内部には、反応ガス流路61と、一対のキャリアガス流路63とが形成されている。反応ガス流路61は、ヘッド本体部31の略中央部に設けられ、ガスチューブ19(図1参照)を介してガス供給部15Bと接続され、ガス供給部15Bから供給される反応ガスを反応室37へ流入させる。また、一対のキャリアガス流路63は、X方向において反応ガス流路61を間に挟んだ位置に配置されている。一対のキャリアガス流路63の各々は、ガスチューブ19(図1参照)を介してガス供給部15Bと接続され、ガス供給部15Bからキャリアガスが供給される。キャリアガス流路63は、ガス通路55を介してキャリアガスを反応室37へ流入させる。
【0021】
反応ガス(種ガス)としては、酸素(O2)を採用できる。ガス供給部15Bは、例えば、反応ガス流路61を介して、酸素と窒素(N2)との混合気体(例えば、乾燥空気(Air))を、反応室37の電極33の間に流入させる。以下、この混合気体を、便宜的に反応ガスと呼び、酸素を種ガスと呼ぶ場合がある。キャリアガスとしては、窒素を採用できる。ガス供給部15Bは、ガス通路55の各々から、一対の電極33の各々を取り巻くようにキャリアガスを流入させる。
【0022】
一対の電極33には、制御ボックス15の電源部15Aから交流の電圧が印加される。電圧を印加することによって、例えば、図4に示すように、反応室37内において、一対の電極33の下端の間に、擬似アークAが発生する。この擬似アークAを反応ガスが通過する際に、反応ガスは、プラズマ化される。従って、一対の電極33は、擬似アークAの放電を発生させ、反応ガスをプラズマ化し、プラズマガスを発生させる。
【0023】
また、ヘッド本体部31における反応室37の下流側の部分には、X方向に間隔を隔てて並び、Z方向に伸びて形成された複数(本実施例においては、6本)の本体側プラズマ通路71が形成されている。複数の本体側プラズマ通路71の上流側の端部は、反応室37に開口しており、複数の本体側プラズマ通路71の下流側の端部は、ヘッド本体部31の下端面に開口している。
【0024】
プラズマ照射部35は、ノズル73、ノズルカバー75等を備えている。ノズル73は、X方向からの側面視において概してT字形をなし、ノズル本体77とノズル先端79とにより構成されている。なお、ノズル73は、ノズル本体77とノズル先端79とによる一体物であり、耐熱性の高いセラミックにより成形されている。ノズル本体77は、概してフランジ形状をなし、ボルト80により、ヘッド本体部31の下面に固定されている。このため、ノズル73は、ヘッド本体部31に着脱可能とされており、種類の異なるノズルに変更することができる。また、ノズル先端79は、ノズル本体77の下面から下方に向って延び出す形状とされている。
【0025】
ノズル73には、ノズル本体77の上端面に開口する一対の溝81が形成されている。一対の溝81は、X方向に延びるように1列に並んで形成されており、ノズル73がヘッド本体部31に装着された状態において、一対の溝81の各々に、ヘッド本体部31の下端面に開口する3本の本体側プラズマ通路71が連通している。つまり、6本の本体側プラズマ通路71のうちの3本の本体側プラズマ通路71の下端の開口が、一対の溝81の一方に連通し、残りの3本の本体側プラズマ通路71の下端の開口が、一対の溝81の他方に連通している。
【0026】
さらに、ノズル73には、ノズル本体77とノズル先端79とを上下方向、つまり、Z方向に貫通する複数(本実施例においては、10本)のノズル側プラズマ通路82が形成されており、それら複数のノズル側プラズマ通路82は、X方向に間隔を隔てて並んでいる。なお、10本のノズル側プラズマ通路82のうちの5本のノズル側プラズマ通路82の上端が、一対の溝81の一方の底面に開口し、残りの5本のノズル側プラズマ通路82の上端が、一対の溝81の他方の底面に開口している。
【0027】
ノズルカバー75は、X方向からの側面視において概してT字形をなし、カバー本体85とカバー先端87とにより構成されている。なお、ノズルカバー75は、カバー本体85とカバー先端87とによる一体物であり、耐熱性の高いセラミックにより成形されている。カバー本体85は、板厚の概して板形状とされており、カバー本体85には、上面に開口するとともに、Z方向に凹んだ形状の凹部89が形成されている。そして、その凹部89にノズル73のノズル本体77が収納されるように、カバー本体85が、ボルト90によりヘッド本体部31の下面に固定されている。このため、ノズルカバー75は、ヘッド本体部31に着脱可能とされており、ノズル73の交換時などに、ヘッド本体部31から取り外される。さらに、カバー本体85には、Y方向に延びるように、ヒートガス通路51が形成されており、そのヒートガス通路51の一端部が、凹部89に開口し、ヒートガス通路51の他端部が、カバー本体85の側面に開口している。そして、カバー本体85の側面に開口するヒートガス通路51の端部が、上記したヒートガス供給部23の連結部45に連結されている。
【0028】
カバー先端87は、カバー本体85の下面から下方に向って延び出している。カバー先端87には、Z方向に貫通する1つの貫通孔93が形成されており、その貫通孔93の上端部は、カバー本体85の凹部89に連通している。そして、その貫通孔93に、ノズル73のノズル先端79が挿入されている。これにより、ノズル73は、ノズルカバー75により全体的に覆われている。なお、ノズル73のノズル先端79の下端と、ノズルカバー75のカバー先端87の下端とは、同じ高さに位置している。
【0029】
また、ノズル73がノズルカバー75により覆われた状態において、ノズルカバー75の凹部89の内部にノズル73のノズル本体77が位置し、ノズルカバー75の貫通孔93の内部にノズル73のノズル先端79が位置する。このような状態において、凹部89とノズル本体77との間及び、貫通孔93とノズル先端79との間に隙間が存在し、その隙間がヒートガス出力通路95として機能する。ヒートガス出力通路95には、ヒートガス通路51を経てヒートガスが供給される。
【0030】
このような構造により、反応室37で発生したプラズマガスは、キャリアガスとともに、本体側プラズマ通路71を経由して溝81の内部に噴出される。そして、プラズマガスは、溝81の内部において拡散し、ノズル側プラズマ通路82を経由して、ノズル側プラズマ通路82の下端の開口82Aから噴出される。また、ガス管41からヒートガス通路51へ供給されたヒートガスは、ヒートガス出力通路95を流れる。このヒートガスは、プラズマガスを保護するシールドガスとして機能するものである。ヒートガスは、ヒートガス出力通路95を流れ、ヒートガス出力通路95の下端の開口95Aからプラズマガスの噴出方向に沿って噴出される。この際、ヒートガスは、ノズル側プラズマ通路82の開口82Aから噴出されるプラズマガスの周囲を取り巻くように噴出される。このように、加熱したヒートガスをプラズマガスの周囲に噴出することで、プラズマガスの効能(濡れ性など)を高めることができる。
【0031】
このように、プラズマヘッド11では、反応室37において放電が生じ、プラズマが発生することで、そのプラズマガスがノズル73の先端から噴出され、被処理物Wに対してプラズマ処理が施される。ただし、反応室37での放電により、反応室37を区画するヘッド本体部31の内壁面,電極33等が炭化し、異物が生じる。このように、反応室37において異物が生じると、その異物は、本体側プラズマ通路71を経由して、溝81に排出される。この際、溝81の内部において、その溝81に開口するノズル側プラズマ通路82の開口に、異物が付着し、堆積していく。そして、そのノズル側プラズマ通路82の開口に堆積した異物が、ノズル側プラズマ通路82の開口を塞ぐ場合があり、そのような場合には、反応室37の内部圧力が上昇し、適切な放電を担保することができなくなる。このようなことを防ぐためには、ノズル73をヘッド本体部31から取り外し、ノズル側プラズマ通路82の溝81の内部への開口を清掃すればよいが、清掃の度に、プラズマヘッド11の作動を停止させる必要があり、生産性が低下する。
【0032】
そこで、プラズマヘッド11では、図5に示すように、ノズル側プラズマ通路82の溝81の内部への開口にテーパ面100が形成されている。つまり、ノズル側プラズマ通路82の溝81の内部への開口が面取りされており、ノズル側プラズマ通路82の溝81の内部への開口側の端部の内径が徐々に大きくされている。なお、ノズル側プラズマ通路82のテーパ面100が形成されていない箇所の内径は均一とされている。このように、ノズル側プラズマ通路82の溝81への開口にテーパ面100が形成されることで、異物がノズル側プラズマ通路82の開口に付着し、堆積した場合であっても、その開口が塞がれ難くなる。これにより、ノズル側プラズマ通路82の開口の清掃頻度を少なくすることが可能となり、生産性の低下を抑制することができる。
【0033】
また、プラズマヘッド11では、複数のノズル側プラズマ通路82の全てにテーパ面100は形成されておらず、複数のノズル側プラズマ通路82のうちの一部のノズル側プラズマ通路82にのみ、テーパ面100が形成されている。詳しくは、反応室37で生じたプラズマガスが、本体側プラズマ通路71から溝81の内部に流入し、溝81の内部において拡散する。そして、溝81の内部から複数のノズル側プラズマ通路82に流出する。この際に、溝81の内部でのプラズマガスの拡散時、及び、溝81から複数のノズル側プラズマ通路82の各々へのプラズマガスの流入時において、プラズマガスの流れが異なるため、プラズマガスの流れによって渦が発生する箇所に異物が留まり易いことが判明している。
【0034】
そこで、ノズル73の製造時において、本体側プラズマ通路71,溝81,ノズル側プラズマ通路82等の寸法,数,配置、プラズマガスの流量などに基づいて、プラズマヘッド11でのプラズマガスの流れがコンピュータ解析によりシミュレートされる。この際、シミュレートされたプラズマガスの流れにおいて、10本のノズル側プラズマ通路82のうちのX方向での両端から2番目および3番目の開口付近に渦が生じる。このため、10本のノズル側プラズマ通路82のうちのX方向での両端から2番目および3番目に位置する4本のノズル側プラズマ通路82の溝81への開口に、テーパ面100が形成される。つまり、10本のノズル側プラズマ通路82の並ぶ方向での中央を中心として、対称的に、その中心から3番目および4番目に位置する4本のノズル側プラズマ通路82の溝81への開口に、テーパ面100が形成される。
【0035】
このように、複数のノズル側プラズマ通路82のうちの一部のノズル側プラズマ通路82の開口にテーパ面100が形成されることで、異物が堆積しやすいノズル側プラズマ通路82の開口が大きくなる。これにより、ノズル側プラズマ通路82の溝81への開口に経時的に異物が堆積した場合であっても、異物が堆積し易い開口のノズル側プラズマ通路82と、異物が堆積し難い開口のノズル側プラズマ通路82とにおいてプラズマガスの流量の差が小さくなり、適切なプラズマ処理が担保される。
【0036】
また、プラズマヘッド11では、上述したように、ノズル73を交換することが可能とされており、例えば、ノズル73の代わりに、図6に示すノズル110を、ヘッド本体部31に装着することが可能とされている。ノズル110には、1対の溝112と、6本のノズル側プラズマ通路114とが形成されている。そして、6本のノズル側プラズマ通路114のうちの3本のノズル側プラズマ通路114が、1対の溝112の一方に開口し、残りの3本のノズル側プラズマ通路114が、1対の溝112の他方に開口している。
【0037】
また、ノズル110の製造時においても、本体側プラズマ通路71,溝112,ノズル側プラズマ通路114等の寸法,数,配置、プラズマガスの流量などに基づいて、プラズマヘッド11でのプラズマガスの流れがコンピュータ解析によりシミュレートされている。この際、シミュレートされたプラズマガスの流れにおいて、6本のノズル側プラズマ通路114のうちのX方向での両端から2番目の開口付近に渦が生じる。このため、6本のノズル側プラズマ通路114のうちのX方向での両端から2番目に位置する2本のノズル側プラズマ通路114の溝112への開口に、テーパ面120が形成される。つまり、6本のノズル側プラズマ通路114の並ぶ方向での中央を中心として、対称的に、その中心から2番目に位置する2本のノズル側プラズマ通路114の溝112への開口に、テーパ面120が形成される。
【0038】
このように、ノズル73,110の種類毎に、複数のノズル側プラズマ通路82,114のうちの一部のノズル側プラズマ通路82,114の開口にテーパ面100,120が形成されている。これにより、複数種類のノズル73,110の各々において、異物の堆積による生産性の低下の防止,適切なプラズマ処理の担保などが図られている。
【0039】
因みに、プラズマ装置10は、プラズマ発生装置の一例である。ヘッド本体部31は、装置本体の一例である。反応室37は、反応室の一例である。ノズル73は、ノズルの一例である。本体側プラズマ通路71は、排出通路の一例である。溝81は、拡散室の一例である。ノズル側プラズマ通路82は、噴出通路の一例である。テーパ面100は、テーパ面の一例である。ノズル110は、ノズルの一例である。溝112は、拡散室の一例である。ノズル側プラズマ通路114は、噴出通路の一例である。テーパ面120は、テーパ面の一例である。
【0040】
以上、上記した本実施形態では、以下の効果を奏する。
【0041】
プラズマヘッド11では、複数のノズル側プラズマ通路82,114のうちの1以上のノズル側プラズマ通路82,114の開口にテーパ面100,120が形成されている。これにより、ノズル側プラズマ通路82の開口の清掃頻度を少なくすることが可能となり、生産性の低下を抑制することができる。
【0042】
また、プラズマヘッド11では、複数のノズル側プラズマ通路82,114の全てにテーパ面100,120は形成されておらず、複数のノズル側プラズマ通路82,114のうちの一部のノズル側プラズマ通路82,114にのみ、テーパ面100,120が形成されている。これにより、異物が堆積し易い開口のノズル側プラズマ通路82,114と、異物が堆積し難い開口のノズル側プラズマ通路82,114とにおいてプラズマガスの流量の差を小さくし、適切なプラズマ処理を担保することが可能とされている。
【0043】
また、プラズマヘッド11では、複数のノズル側プラズマ通路82,114の並ぶ方向での中央を中心として、対称的に位置するように、テーパ面100,120が形成されている。これにより、複数のノズル側プラズマ通路82,114の全体において好適にノズル詰まりを抑制することができる。
【0044】
また、プラズマヘッド11では、ノズル73,110がヘッド本体部31に相対的に移動不能に装着されている。これにより、安定的にプラズマガスを被処理物Wに噴出することができる。さらに言えば、プラズマヘッド11では、上述したように、ヒートガスが、噴出されるプラズマガスの周囲を取り巻くように噴出される。このため、ノズル73,110がヘッド本体部31に相対的に移動不能に装着されることで、プラズマガスをヒートガスにより適切に覆われた状態で噴出することができる。
【0045】
尚、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。具体的には、例えば、プラズマヘッド11では、複数のノズル側プラズマ通路82,114のうちの一部のノズル側プラズマ通路82,114にのみ、テーパ面100,120が形成されているが、複数のノズル側プラズマ通路82,114の全てにテーパ面100,120が形成されてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、拡散室として溝81が採用されているが、本体側プラズマ通路71に連通するものであれば、凹部,通路,区画された空間など、種々のものを、拡散室として採用することが可能である。
【0047】
また、上記実施形態では、ヘッド本体部31に、本体側プラズマ通路71が形成され、ノズル73に溝81とノズル側プラズマ通路82とが形成されているが、ヘッド本体部31に、本体側プラズマ通路71と溝81とが形成され、ノズル73にノズル側プラズマ通路82が形成されてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、ヘッド本体部31とノズル73とが着脱可能とされているが、ヘッド本体部31とノズル73とが一体的に形成されていてもよい。つまり、一体的な装置本体の内部に、反応室37と本体側プラズマ通路71と溝81とノズル側プラズマ通路82とが形成されていてもよい。
【0049】
また、プラズマヘッド11では、プラズマガスの流れがシミュレートされ、シミュレートされたプラズマガスの流れに基づいて、テーパ面が形成されるノズル側プラズマ通路が決定されているが、別の手法に基づいて、テーパ面が形成されるノズル側プラズマ通路が決定されてもよい。例えば、経験則に基づいて、異物が堆積しやすい位置のノズル側プラズマ通路を、テーパ面が形成されるノズル側プラズマ通路に決定してもよい。
【符号の説明】
【0050】
10:プラズマ装置(プラズマ発生装置)、31:ヘッド本体部(装置本体)、37:反応室、71:本体側プラズマ通路(排出通路)、73:ノズル、81:溝(拡散室)、82:ノズル側プラズマ通路(噴出通路)、100:テーパ面、110:ノズル、112:溝(拡散室)、114:ノズル側プラズマ通路(噴出通路)、120:テーパ面
図1
図2
図3
図4
図5
図6