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  • 特許-ハイブリッド車両の走行制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/50 20160101AFI20220902BHJP
   B60K 6/44 20071001ALI20220902BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20220902BHJP
   B60W 20/10 20160101ALI20220902BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20220902BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20220902BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
B60W20/50 ZHV
B60K6/44
B60W10/06 900
B60W20/10
B60L50/16
B60L3/00 N
F02D29/02 321C
F02D29/02 321B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018173717
(22)【出願日】2018-09-18
(65)【公開番号】P2020044919
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 優也
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-101766(JP,A)
【文献】特開2010-105600(JP,A)
【文献】特開2010-111291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 20/50
B60K 6/44
B60W 10/06
B60W 20/10
B60L 50/16
B60L 3/00
F02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンおよびモータを駆動力源として有するハイブリッド車両において前記エンジンの動作を制御するエンジン制御部に記録されているプログラムの異常を検知する異常検知部と、
前記ハイブリッド車両において前記エンジンおよび前記モータの双方を駆動力源とした第1走行が行われている際において、前記異常検知部によって前記プログラムの異常が検知された場合に、前記ハイブリッド車両の運転者からの要求駆動力と、前記モータのトルク上限値とを比較する比較部と、
前記比較部における前記要求駆動力と前記トルク上限値との比較結果に応じて、前記プログラムの異常が検知された後における、前記エンジンの停止タイミングを制御する停止制御部と
を備えたハイブリッド車両の走行制御装置。
【請求項2】
前記停止制御部は、
前記要求駆動力が前記トルク上限値よりも大きいという前記比較結果が得られた場合には、
前記エンジンを停止させずに、前記ハイブリッド車両において前記第1走行が継続されるように制御し、
前記要求駆動力が前記トルク上限値以下であるという前記比較結果が得られた場合には、
前記エンジンを停止させることにより、前記ハイブリッド車両において、前記第1走行から、前記モータのみを駆動力源とした第2走行へと切り換わるように制御する
請求項1に記載のハイブリッド車両の走行制御装置。
【請求項3】
前記エンジンが停止して前記第1走行から前記第2走行へと切り換わった後においては、
前記要求駆動力が前記トルク上限値よりも再度大きくなった場合でも、前記エンジンの再始動が禁止されるようになっている
請求項2に記載のハイブリッド車両の走行制御装置。
【請求項4】
前記プログラムが、前記ハイブリッド車両の外部から通信を介して取得されたものであり、
前記異常検知部は、前記プログラムの異常として、前記外部からの前記プログラムの不正書き換えを検知する
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のハイブリッド車両の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハイブリッド車両の走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンと電動モータとを併用することによって車両の燃料消費率(燃費)を効果的に向上させるようにした、ハイブリッド自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)が広く実用化されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-152762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなハイブリッド自動車(ハイブリッド車両)では一般に、安定的な走行制限を実現することが求められている。安定的な走行制限を実現することが可能な、ハイブリッド車両の走行制御装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施の形態に係るハイブリッド車両の走行制御装置は、エンジンおよびモータを駆動力源として有するハイブリッド車両においてエンジンの動作を制御するエンジン制御部に記録されているプログラムの異常を検知する異常検知部と、ハイブリッド車両においてエンジンおよびモータの双方を駆動力源とした第1走行が行われている際において、異常検知部によってプログラムの異常が検知された場合に、ハイブリッド車両の運転者からの要求駆動力とモータのトルク上限値とを比較する比較部と、この比較部における要求駆動力とトルク上限値との比較結果に応じて、プログラムの異常が検知された後におけるエンジンの停止タイミングを制御する停止制御部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一実施の形態に係るハイブリッド車両の走行制御装置によれば、安定的な走行制限を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一実施の形態に係る走行制御装置を備えたハイブリッド車両の概略構成例を表すブロック図である。
図2】実施の形態に係る走行制御処理(走行制限処理)の一例を表す流れ図である。
図3】実施の形態に係る走行制限処理の一例(具体的な適用例)を表すタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(プログラムの異常検知後におけるエンジンの停止タイミング制御の例)
2.変形例
【0009】
<1.実施の形態>
[概略構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係る走行制御装置(後述するエンジン制御部132)を備えたハイブリッド車両(HEV1)の概略構成例を、ブロック図で表したものである。
【0010】
HEV1は、図1に示したように、主に、駆動力源10、バッテリ11、アクセル開度センサ12および制御部13を備えている。なお、このHEV1は、本開示における「ハイブリッド車両」の一具体例に対応している。
【0011】
(A.駆動力源10)
駆動力源10としては、このHEV1では図1に示したように、エンジン10a(内燃機関)およびモータ10b(電動モータ)が設けられている。すなわち、HEV1は、エンジン10aおよびモータ10bを駆動力源10として有する、ハイブリッド車両として構成されている。
【0012】
したがって、このHEV1には、エンジン10aおよびモータ10bの双方を駆動力源としたハイブリッド走行と、エンジン10aのみを駆動力源としたエンジン走行と、モータのみを駆動力源としたモータ走行と、の3種類の走行モードが設けられている。そして、HEV1の走行条件等に応じて、これら3種類の走行モードが、随時切り換えて使用されるようになっている。
【0013】
なお、これらの走行モードのうち、ハイブリッド走行は、本開示における「第1走行」の一具体例に対応し、モータ走行は、本開示における「第2走行」の一具体例に対応している。
【0014】
(B.バッテリ11)
バッテリ11は、HEV1において使用される電力を貯蔵するものであり、例えばリチウムイオン電池等の各種の2次電池を用いて構成されている。なお、このバッテリ11には、HEV1の外部からの充電により得られる電力(充電電力)の他、例えば、モータ10bから供給される回生電力が貯蔵されるようになっている。
【0015】
(C.アクセル開度センサ12)
アクセル開度センサ12は、HEV1の運転者から要求されるHEV1の駆動力に相当する、アクセル開度Pa(運転者によるアクセルペダルの踏み込み量)を検知するセンサである。なお、このようにしてアクセル開度センサ12において検知されたアクセル開度Paは、制御部13内の後述するエンジン制御部132へと出力されるようになっている(図1参照)。
【0016】
ここで、このようなアクセル開度Paは、本開示における「ハイブリッド車両の運転者からの要求駆動力」の一具体例に対応している。
【0017】
(D.制御部13)
制御部13は、HEV1における各種動作を統括的に制御したり、各種の演算処理を行ったりする部分である。具体的には、制御部13は、演算を行うマイクロプロセッサ、このマイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)、演算結果などの各種データを記憶するRAM(Random Access Memory)、その記憶内容が保持されるバックアップRAM、および、入出力I/F(Interface)等を含んで構成されている。
【0018】
このような制御部13は、図1に示した例では、情報取得部131、エンジン制御部132およびモータ制御部133を有している。なお、エンジン制御部132は、本開示における「走行制御装置」の一具体例に対応している。
【0019】
(D-1.情報取得部131)
情報取得部131は、例えば図1に示したように、HEV1の外部(例えば外部サーバ等)から通信(無線や有線の通信)等を介して、各種の外部情報Ieを取得するものである。このような外部情報Ieとしては、例えば、以下説明するエンジン制御部132において用いられる、後述するプログラム132a等のソフトウェアの情報などが挙げられる(図1参照)。
【0020】
(D-2.エンジン制御部132)
エンジン制御部132は、エンジン10aにおける各種動作を制御するものである(図1参照)。すなわち、このエンジン制御部132は、いわゆる「ECU(Engine Control Unit)」として動作する部分となっている。このようなエンジン制御部132は、図1に示した例では、プログラム(ソフトウェア)132a、異常検知部132b、比較部132cおよび停止制御部132dを有している。
【0021】
プログラム132aは、エンジン制御部132に記録されており、このエンジン制御部132における各種動作(エンジン10aの制御動作等)を実行するためのプログラムとして機能するものである。また、このプログラム132aは、例えば上記したように、HEV1の外部から通信を介して(情報取得部131によって)取得されたものとなっている。すなわち、このプログラム132aは、例えば、いわゆるOTA(Over The Air)を用いて取得されたプログラムとなっている。
【0022】
異常検知部132bは、上記したプログラム132aにおける異常を検知するものである。具体的には、異常検知部132bは、そのようなプログラム132aの異常として、例えば、HEV1の外部からの通信を介した、プログラム132aの不正書き換えを検知するようになっている。
【0023】
比較部132cは、HEV1においてエンジン10aおよびモータ10bの双方を駆動力源とした走行(前述したハイブリッド走行)が行われている際において、異常検知部132bによってプログラム132aの異常が検知された場合に、以下の比較を行うものである。すなわち、そのような場合に、比較部132cは、HEV1の運転者からの要求駆動力(前述したアクセル開度センサ12において検知されたアクセル開度Pa)と、モータ10bのトルク上限値Tmaxと、を比較するようになっている。なお、このような比較部132cにおける比較処理の詳細については、後述する(図2図3参照)。
【0024】
停止制御部132dは、比較部132cにおける上記した比較処理の結果(アクセル開度Paとトルク上限値Tmaxとの比較結果)に応じて、プログラム132aの異常が検知された後における、エンジン10aの停止タイミングを制御するものである。なお、このような停止制御部132dにおける制御処理の詳細については、後述する(図2図3参照)。
【0025】
(D-3.モータ制御部133)
モータ制御部133は、モータ10bにおける各種動作を制御するものである(図1参照)。具体的には、モータ制御部133は、例えば、モータ10bによるHEV1の車輪の駆動動作や、モータ10bにおける回生動作等を、制御するようになっている。
【0026】
[動作および作用・効果]
続いて、本実施の形態のHEV1における動作および作用・効果について説明する。
【0027】
(A.ECUにおけるプログラムの異常検知後の走行制限について)
最初に、一般的なハイブリッド車両のエンジン制御部(ECU)において、例えば前述したようなプログラムの異常が検知された場合の、その後のハイブリッド車両の走行制限(走行距離の制限)について、説明する。
【0028】
まず、ECUにおいてそのようなプログラムの異常が検知された場合に、ハイブリッド車両におけるエンジンを、即時に停止させる(前述したハイブリッド走行からモータ走行へと即時に切り換える)という制御手法が考えられる(比較例)。
【0029】
ところが、この比較例のように、プログラムの異常検知後にエンジンを即時に停止させる(ハイブリッド走行からモータ走行へと即時に切り換える)と、駆動力源の即時切り換え制御に起因して、ハイブリッド車両において車両挙動の乱れが生じるおそれがある。したがってこの比較例では、ハイブリッド走行中において、ECUにおけるプログラムの異常が検知された場合、安定的な走行制限が困難となってしまうことになる。
【0030】
(B.本実施の形態の走行制限処理)
そこで本実施の形態では、HEV1の走行中においてエンジン制御部132のプログラム132aに異常が検知された場合に、以下詳述する手法を用いて、HEV1の走行制御処理(走行制限処理)を行うようにしている。
【0031】
以下、図1に加えて図2図3を参照して、本実施の形態に係るHEV1の走行中(前述したハイブリッド走行による走行中)における、エンジン制御部132での走行制限処理の一例について、詳細に説明する。
【0032】
図2は、そのような本実施の形態の走行制限処理の一例を、流れ図で表したものである。また、図3は、そのような本実施の形態の走行制限処理の一例(具体的な適用例)を、時間(HEV1の走行中の経過時間)に沿って示した、タイミング図で表したものである。なお、図3中に示した縦軸は、HEV1における駆動力(エンジン10a,モータ10bによる駆動力)を示している。
【0033】
図2に示した一連の各処理では、まず、異常検知部132bが、プログラム132aの異常(例えば、前述したプログラム132aの不正書き換えなど)が有るのか否かを、判定する(図2のステップS11)。ここで、プログラム132aの異常が無いと判定された場合には(ステップS11:N)、再び、このステップS11の判定を行うことになる。
【0034】
一方、プログラム132aの異常が有ると判定された場合には(ステップS11:Y)、次に比較部132cが、前述した要求駆動力(アクセル開度Pa)とモータ10bのトルク上限値Tmaxとの大小関係についての比較を行う。具体的には、比較部132cは、アクセル開度Paがトルク上限値Tmax以下であるのか否か(Pa≦Tmaxを満たすのか否か)の判定を行う(ステップS12)。
【0035】
ここで、アクセル開度Paがトルク上限値Tmaxよりも大きい(Pa>Tmax)という比較結果が得られた場合には(ステップS12:N)、以下のようになる。すなわち、停止制御部132dは、この場合にはエンジン10aを停止させずに、HEV1においてハイブリッド走行(エンジン10aおよびモータ10bでの走行)が継続されるように、制御を行う(ステップS13)。なお、その後は、ステップS12へと再び戻ることになる。
【0036】
一方、アクセル開度Paがトルク上限値Tmax以下である(Pa≦Tmax)という比較結果が得られた場合には(ステップS12:Y)、以下のようになる。すなわち、停止制御部132dは、この場合にはエンジン10aを停止させることにより、HEV1においてハイブリッド走行からモータ走行(モータ10bのみでの走行)へと切り換わるように、制御を行う(ステップS14)。つまり、モータ10bのみでHEV1の駆動力が補える状態にてエンジン10aが停止され、強制的にモータ10bのみでの走行へと切り換えられることになる。
【0037】
また、ステップS14中の括弧書きで示したように、このようにしてエンジン10aが停止してハイブリッド走行からモータ走行へと切り換わった後においては、詳細は図3において後述するが、エンジン10aの再始動が禁止されるようになっている。
【0038】
以上で、図2に示した一連の各処理(走行制限処理)が終了となる。
【0039】
続いて、図3を参照して、図2に示したこのような走行制限処理における具体的な適用例について説明する。
【0040】
この図3に示した適用例では、HEV1におけるハイブリッド走行(エンジン10aおよびモータ10bでの走行)の際に、上記したようにしてプログラム132aの異常が検知されると(図3のタイミングt1)、以下のようになる。
【0041】
すなわち、この段階では図3に示したように、要求駆動力(アクセル開度Pa)が、モータ10bのトルク上限値Tmaxよりも依然として大きくなっている(Pa>Tmax)。したがって、例えば上記した比較例とは異なり、プログラム132aの異常が検知されたタイミングt1以降も、ハイブリッド走行が継続されることになる。
【0042】
そして、アクセル開度Paがトルク上限値Tmax以下(Pa≦Tmax)となったタイミング(図3のタイミングt2)で、エンジン10aが停止され、ハイブリッド走行からモータ走行(モータ10bのみでの走行)へと切り換わることになる。
【0043】
なお、このようにしてエンジン10aが停止して、ハイブリッド走行からモータ走行へと切り換わった後においては、以下のようになる。すなわち、例えば、アクセル開度Paがトルク上限値Tmaxよりも再度大きくなった場合(図3中の破線で示した部分参照)でも、エンジン10aの再始動が禁止されるようになっている(図3中に示した「×(バツ)」印を参照)。
【0044】
(C.作用・効果)
このようにして本実施の形態では、HEV1においてエンジン10aおよびモータ10bの双方を駆動力源としたハイブリッド走行が行われている際において、プログラム132aの異常が検知された場合に、エンジン制御部132において以下のような制御が行われる。すなわち、HEV1の運転者からの要求駆動力(アクセル開度Pa)とモータ10bのトルク上限値Tmaxとの比較結果に応じて、プログラム132aの異常が検知された後における、エンジン10aの停止タイミングが制御される。
【0045】
このようにして本実施の形態では、プログラム132aの異常検知後にエンジン10aが停止され、ハイブリッド走行からモータ走行(モータ10bのみを駆動力源とした走行)へと切り換えられることで、HEV1の走行制限が図られる。すなわち、エンジン10aからの駆動力を断つことで、プログラム132aの異常検知後において、HEV1の走行可能距離が制限される。
【0046】
また、アクセル開度Paとモータ10bのトルク上限値Tmaxとの比較結果に応じて、エンジン10aの停止タイミング(ハイブリッド走行からモータ走行への切り換えのタイミング)が制御されることで、以下のようになる。すなわち、例えば前述した比較例のように、プログラム132aの異常検知後にエンジン10aを即時に停止させる(ハイブリッド走行からモータ走行へと即時に切り換える)場合等とは異なり、HEV1における車両挙動の乱れが、低減もしくは回避される。
【0047】
これらのことから本実施の形態では、HEV1の走行中(ハイブリッド走行中)において、エンジン制御部132におけるプログラム132aの異常が検知された場合であっても、安定的な走行制限を実現することが可能となる。
【0048】
また、エンジン制御部132における停止制御部132dは、具体的には以下のようにして、HEV1における走行制限処理を行う。すなわち、アクセル開度Paがトルク上限値Tmaxよりも大きいという比較結果が得られた場合には、停止制御部132dは、エンジン10aを停止させずに、HEV1においてハイブリッド走行が継続されるように制御する(図2のステップS12,S13参照)。一方、アクセル開度Paがトルク上限値Tmax以下であるという比較結果が得られた場合には、停止制御部132dは、エンジン10aを停止させることにより、HEV1においてハイブリッド走行からモータ走行へと切り換わるように制御する(図2のステップS12,S14参照)。このようにして、上記した比較結果に応じて、HEV1における走行モードの適切な制御が行われることで、HEV1における安定的な走行制限を、容易に実現することが可能となる。
【0049】
更に、エンジン10aが停止してハイブリッド走行からモータ走行へと切り換わった後においては、アクセル開度Paがトルク上限値Tmaxよりも再度大きくなった場合でも、エンジン10aの再始動が禁止されるようにしたので、以下のようになる。すなわち、エンジン10aが一旦停止した後にはそのようなエンジン10aの再始動が停止されることで、HEV1において、更に安定的な走行制限を実現することが可能となる。
【0050】
加えて、プログラム132aが、HEV1の外部から通信を介して取得されたものである場合において、上記したプログラム132aの異常として、HEV1の外部からのプログラム132aの不正書き換えを検知するようにした場合には、以下のようになる。すなわち、例えば前述したOTAを用いてプログラム132aが取得されたような場合において、プログラム132aの不正書き換えがなされたような場合であっても、HEV1において、安定的な走行制限を実現することが可能となる。
【0051】
<2.変形例>
以上、実施の形態を挙げて本開示を説明したが、本開示はこの実施の形態に限定されず、種々の変形が可能である。
【0052】
例えば、HEV1における各部材の構成(形式、形状、配置、個数等)については、上記実施の形態で説明したものには限られない。すなわち、これらの各部材における構成については、他の形式や形状、配置、個数等であってもよい。また、上記実施の形態で説明した各種パラメータの値や範囲、大小関係等についても、上記実施の形態で説明したものには限られず、他の値や範囲、大小関係等であってもよい。
【0053】
具体的には、例えば、上記実施の形態では、HEV1内に1つのモータ(モータ10b)が設けられている場合を例に挙げて説明したが、この例には限られない。すなわち、HEV1内に、例えば複数(2つ以上)のモータが設けられているようにしてもよい。
【0054】
また、上記実施の形態では、HEV1の走行制御処理(走行制限処理:図2図3参照)について、具体例を挙げて説明したが、これらの具体例には限られない。すなわち、他の手法を用いて、このような走行制限処理等を行うようにしてもよい。具体的には、例えば上記実施の形態では、エンジンが停止してハイブリッド走行からモータ走行へと切り換わった後においては、要求駆動力がトルク上限値よりも再度大きくなった場合でも、エンジンの再始動が禁止される場合を例に挙げて説明したが、この例には限られない。また、上記実施の形態では、異常検知部がプログラムの異常として、HEV1の外部からのプログラムの不正書き換えを検知する場合を例に挙げて説明したが、プログラムの異常の例としては、この例には限られない。
【0055】
更に、上記実施の形態で説明した一連の処理は、ハードウェア(回路)で行われるようにしてもよいし、ソフトウェア(プログラム)で行われるようにしてもよい。ソフトウェアで行われるようにした場合、そのソフトウェアは、各機能をコンピュータにより実行させるためのプログラム群で構成される。各プログラムは、例えば、上記コンピュータに予め組み込まれて用いられてもよいし、ネットワークや記録媒体から上記コンピュータにインストールして用いられてもよい。
【0056】
加えて、これまでに説明した各種の例を、任意の組み合わせで適用させるようにしてもよい。
【0057】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…HEV、10…駆動力源、10a…エンジン、10b…モータ、11…バッテリ、12…アクセル開度センサ、13…制御部、131…情報取得部、132…エンジン制御部、132a…プログラム(ソフトウェア)、132b…異常検知部、132c…比較部、132d…停止制御部、133…モータ制御部、Ie…外部情報、Pa…アクセル開度、Tmax…トルク上限値、t1,t2,t3…タイミング。
図1
図2
図3