(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】水栓装置
(51)【国際特許分類】
E03C 1/042 20060101AFI20220905BHJP
E03C 1/044 20060101ALI20220905BHJP
F16K 11/00 20060101ALI20220905BHJP
F16K 27/00 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
E03C1/042 B
E03C1/044
E03C1/042 C
F16K11/00 B
F16K27/00 D
(21)【出願番号】P 2018118512
(22)【出願日】2018-06-22
【審査請求日】2021-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 幸人
(72)【発明者】
【氏名】城戸 健司
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴文
(72)【発明者】
【氏名】金城 政信
(72)【発明者】
【氏名】畠山 真
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-530529(JP,A)
【文献】特開平10-237911(JP,A)
【文献】特開平08-177093(JP,A)
【文献】特開2013-083316(JP,A)
【文献】特開2016-142006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00- 1/10
F16K 11/00-11/24
F16K 27/00-27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給湯源から供給される湯と給水源から供給される水とを混合した湯水を吐止水可能にする水栓装置であって、
上記水栓装置が設置される設置面に固定される台座部材と、
上記水栓装置の種類に応じた形状に形成され、上記台座部材に取り付けられる概ね筒状の支柱部と、この支柱部から側方に伸びたスパウト部と、を備えた外殻部材と、
上記外殻部材の支柱部内に挿入可能な寸法で金属製の板材又は管材によって概ね少なくとも半筒状に形成され、その下方側が上記台座部材に固定されるケーシング部材と、
このケーシング部材の内部に設けられ、上記台座部材から下流側に延びて湯及び水をそれぞれ供給する一次側流路を形成する湯供給管及び水供給管と、
上記ケーシング部材の上方側に設けられたシングルレバーカートリッジであって、上記湯供給管及び上記水供給管よりも下流側の二次側流路を開閉可能にする開閉弁と、この開閉弁の開閉操作を可能にする単一のレバーと、を備えた上記シングルレバーカートリッジと、
上記ケーシング部材の内部に設けられ、上記湯供給管及び上記水供給管のそれぞれの下流端と上記シングルレバーカートリッジとを接続する接続部材と、
上記シングルレバーカートリッジを上記接続部材に固定する固定部材と、を有し、
上記ケーシング部材の側面において、上記シングルレバーカートリッジの二次側流路の流出口の近傍には、この流出口と連通する流出穴が形成されており、
上記ケーシング部材における上記流出穴よりも上方の外側面と上記外殻部材の支柱部の内側面との間には、水密にシールする上方シール部材が設けられ、
上記ケーシング部材における上記流出穴よりも下方の外側面と上記外殻部材の支柱部の内側面との間には、水密にシールする下方シール部材が設けられ、
上記ケーシング部材における上記流出穴よりも上方の側面には、上記上方シール部材を保持する上方シール保持部材が設けられ、この上方シール保持部材は、上記ケーシング部材の軸方向に対して垂直な横方向から上記ケーシング部材の側面に係合して上記上方シール部材を保持するように構成されていることを特徴とする水栓装置。
【請求項2】
上記上方シール保持部材は、上記上方シール部材に対して上側から接触して保持する上側上方シール保持部材と、上記上方シール部材に対して下側から接触して保持する下側上方シール保持部材と、を備えている請求項1記載の水栓装置。
【請求項3】
上記ケーシング部材における上記流出穴よりも下方の側面には、上記下方シール部材を保持する下方シール保持部材が設けられ、この下方シール保持部材は、上記ケーシング部材の軸方向に対して垂直な横方向から上記ケーシング部材の側面に係合して上記下方シール部材を保持するように構成されている請求項1又は2に記載の水栓装置。
【請求項4】
上記下方シール保持部材は、上記下方シール部材に対して上側から接触して保持する上側下方シール保持部材と、上記下方シール部材に対して下側から接触して保持する下側下方シール保持部材と、を備えている請求項3記載の水栓装置。
【請求項5】
上記上方シール保持部材は、上記上方シール部材に対して上側から接触して保持する上側上方シール保持部材と、上記上方シール部材に対して下側から接触して保持する下側上方シール保持部材と、を備えており、
上記上側下方シール保持部材及び上記下側上方シール保持部材は、互いに一体的に設けられている請求項4記載の水栓装置。
【請求項6】
上記上側下方シール保持部材及び上記下側上方シール保持部材のそれぞれは、互いに一体的に設けられたシール保持部材の一部であり、このシール
保持部材における上記上側下方シール保持部材と上記下側上方シール保持部材との間を一体的に接続する側壁部には、保持部材流出穴が配置されており、この保持部材流出穴と上記ケーシング部材の上記流出穴は、互いに対応する位置に配置されている請求項5記載の水栓装置。
【請求項7】
上記上方シール保持部材は、ほぼ円環状の部材の周方向の一部が切り欠かれたものであり、その平面視の形状が概ねC字形形状に形成されたCリング部材である請求項1乃至6の何れか1項に記載の水栓装置。
【請求項8】
上記ケーシング部材の外面及び上記Cリング部材の内面のそれぞれは、平面視において少なくともほぼ半円弧状に形成され、
上記ケーシング部材の外面の平面視における曲率半径は、上記ケーシング部材の外面に取り付けられる前の状態の上記Cリング部材の内面の平面視における曲率半径よりも大きく設定されている請求項7記載の水栓装置。
【請求項9】
上記Cリング部材の内面には、内側に突出する突起が設けられており、上記ケーシング部材の外面には、上記突起が挿入されて係合可能な係合穴が設けられている請求項7又は8に記載の水栓装置。
【請求項10】
上記係合穴に挿入された状態の上記突起の挿入量は、上記係合穴の深さ寸法よりも小さく設定されている請求項9記載の水栓装置。
【請求項11】
上記上方シール保持部材は、その周方向の一部が切れ目によって切断されており、この切れ目における上記上方シール部材と接触する角部は、曲がり面を形成している請求項7乃至10の何れか1項に記載の水栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓装置に係り、特に、給湯源から供給される湯と給水源から供給される水とを混合した湯水を吐止水可能にする水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、給湯源から供給される湯と給水源から供給される水とを混合した湯水を吐止水可能にする水栓装置として、例えば、特許文献1に記載されているように、水栓装置の種類に応じた形状に形成された外殻部材を備えているものが知られている。
また、この従来の水栓装置の外殻部材の内部には、別体のケーシング部材が挿入されている。このケーシング部材には、水栓機能ユニットが内蔵されており、この水栓機能ユニットは、給水源及び給水源のそれぞれから一次側流路により供給された湯と水とを混合し、この混合した湯水を吐止水する機能を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の水栓装置においては、外殻部材の内部に挿入されているケーシング部材が樹脂材料で形成されているため、水栓装置の種類に応じた外殻部材の寸法や形状に応じて、射出成形用の型を用意する必要があり、製造コストがかかるという問題がある。
また、従来の水栓装置の樹脂製のケーシング部材については、金属製のものに比べて強度が低く、経年変化等による耐久性も低いという問題もある。これにより、長期的な安全性を確保するためには、点検や部品交換等のメンテナンスにおいてもコストがかかるという問題がある。
【0005】
一方、従来の水栓装置のケーシング部材について、仮に、樹脂材料とは異なる銅合金等の金属を用いて鋳造した場合には、銅合金から鉛成分が溶出することを規制する対策が必要となるという問題や、ケーシング部材のサイズ自体も大型化するという問題、或いは、銅価格の相場変動に影響を受け易いという問題もある。
また、常時湯水に晒される水栓装置の事情を考慮し、ケーシング部材として耐食性が高いステンレス材料を採用した場合には、ステンレス材料が高い加工精度で加工することが難しいという問題もある。
したがって、脱銅合金や脱鋳物を実現し、銅合金以外の素材を活用し、水栓装置の種類に応じて様々な仕様に対しても、いかに製造コストを抑制しつつ、設計の自由度を高めていくかが、近年要請された課題となっている。
さらに、ケーシング部材の内部流路の水密性を確保するために、Оリング等のシール部材をケーシング部材の内部に設ける必要がある。しかしながら、ケーシング部材として薄肉の金属製の板材や管材等が用いられている場合には、ケーシング部材においてシール部材を保持するための溝を切削加工等で形成することが難しいという問題もある。
【0006】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題や近年要請された課題を解決するためになされたものであり、水密性を確保しつつ、水栓装置の設計の自由度を向上させることができると共に、製造コストを抑制することができる水栓装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、給湯源から供給される湯と給水源から供給される水とを混合した湯水を吐止水可能にする水栓装置であって、上記水栓装置が設置される設置面に固定される台座部材と、上記水栓装置の種類に応じた形状に形成され、上記台座部材に取り付けられる概ね筒状の支柱部と、この支柱部から側方に伸びたスパウト部と、を備えた外殻部材と、上記外殻部材の支柱部内に挿入可能な寸法で金属製の板材又は管材によって概ね少なくとも半筒状に形成され、その下方側が上記台座部材に固定されるケーシング部材と、このケーシング部材の内部に設けられ、上記台座部材から下流側に延びて湯及び水をそれぞれ供給する一次側流路を形成する湯供給管及び水供給管と、上記ケーシング部材の上方側に設けられたシングルレバーカートリッジであって、上記湯供給管及び上記水供給管よりも下流側の二次側流路を開閉可能にする開閉弁と、この開閉弁の開閉操作を可能にする単一のレバーと、を備えた上記シングルレバーカートリッジと、上記ケーシング部材の内部に設けられ、上記湯供給管及び上記水供給管のそれぞれの下流端と上記シングルレバーカートリッジとを接続する接続部材と、上記シングルレバーカートリッジを上記接続部材に固定する固定部材と、を有し、上記ケーシング部材の側面において、上記シングルレバーカートリッジの二次側流路の流出口の近傍には、この流出口と連通する流出穴が形成されており、上記ケーシング部材における上記流出穴よりも上方の外側面と上記外殻部材の支柱部の内側面との間には、水密にシールする上方シール部材が設けられ、上記ケーシング部材における上記流出穴よりも下方の外側面と上記外殻部材の支柱部の内側面との間には、水密にシールする下方シール部材が設けられ、上記ケーシング部材における上記流出穴よりも上方の側面には、上記上方シール部材を保持する上方シール保持部材が設けられ、この上方シール保持部材は、上記ケーシング部材の軸方向に対して垂直な横方向から上記ケーシング部材の側面に係合して上記上方シール部材を保持するように構成されていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、シングルレバーカートリッジの流出口から流出した湯水は、シングルレバーカートリッジの二次側流路の流出口の近傍にあるケーシング部材の流出穴からケーシング部材の外部に流出する。
このとき、ケーシング部材における流出穴よりも上方の外側面と外殻部材の支柱部の内側面との間において、上方シール部材が設けられているため、両者間を水密にシールすることができる。
同様に、ケーシング部材における流出穴よりも下方の外側面と外殻部材の支柱部の内側面との間においても、下方シール部材が設けられているため、両者間を水密にシールすることができる。
また、ケーシング部材の流出穴よりも上方の側面に設けられた上方シール保持部材が、ケーシング部材の軸方向に対して垂直な横方向からケーシング部材の側面に係合することにより、上方シール部材を確実に保持することができる。
これにより、シングルレバーカートリッジが設けられるケーシング部材の上方側の周囲についても、上方シール保持部材が、上方シール部材と共に水密なシールを確実に行うことができる。
さらに、これらの上方シール部材及び下方シール部材により、ケーシング部材の流出穴よりも下流側のケーシング部材の周囲の領域においても、二次側流路を水密に設けることができる。
これらの結果、水密性を確保しつつ、水栓装置の設計の自由度を向上させることができると共に、製造コストを抑制することができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、上記上方シール保持部材は、上記上方シール部材に対して上側から接触して保持する上側上方シール保持部材と、上記上方シール部材に対して下側から接触して保持する下側上方シール保持部材と、を備えている。
このように構成された本発明においては、上側上方シール保持部材及び下側上方シール保持部材のそれぞれが上方シール部材に対して上下方向から接触して挟み込むことにより、上方シール部材を確実に安定して保持することができる。
したがって、上側上方シール保持部材及び下側上方シール保持部材により、上方シール部材が移動することが確実に規制されるため、安定した水密性を確保することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記ケーシング部材における上記流出穴よりも下方の側面には、上記下方シール部材を保持する下方シール保持部材が設けられ、この下方シール保持部材は、上記ケーシング部材の軸方向に対して垂直な横方向から上記ケーシング部材の側面に係合して上記下方シール部材を保持するように構成されている。
このように構成された本発明においては、ケーシング部材の流出穴よりも下方の側面に設けられた下方シール保持部材が、ケーシング部材の軸方向に対して垂直な横方向からケーシング部材の側面に係合することにより、下方シール部材を確実に保持することができる。
これにより、ケーシング部材の流出穴よりも下方側の周囲についても、下方シール保持部材が、下方シール部材と共に水密なシールを確実に行うことができる。
さらに、これらの上方シール部材及び下方シール部材により、ケーシング部材の周囲における二次側流路等の水が流れる領域について、上下方向の必要最低限の範囲に設定することができると共に、水密性を確保することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、上記下方シール保持部材は、上記下方シール部材に対して上側から接触して保持する上側下方シール保持部材と、上記下方シール部材に対して下側から接触して保持する下側下方シール保持部材と、を備えている。
このように構成された本発明においては、上側下方シール保持部材及び下側下方シール保持部材のそれぞれが下方シール部材に対して上下方向から接触して挟み込むことにより、下方シール部材を確実に安定して保持することができる。
したがって、上側下方シール保持部材及び下側下方シール保持部材により、下方シール部材が移動することが確実に規制されるため、安定した水密性を確保することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、上記上側下方シール保持部材及び上記下側上方シール保持部材は、互いに一体的に設けられている。
このように構成された本発明においては、下方シール部材に対して上側から接触して保持する上側下方シール保持部材と、上方シール部材に対して下側から接触して保持する下側上方シール保持部材とが互いに一体的に設けられているため、上方シール部材及び下方シール部材のそれぞれの位置決めが行い易くなる。
したがって、水栓装置の組立性を向上させることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、上記上側下方シール保持部材及び上記下側上方シール保持部材のそれぞれは、互いに一体的に設けられたシール保持部材の一部であり、このシール部材における上記上側下方シール保持部材と上記下側上方シール保持部材との間を一体的に接続する側壁部には、保持部材流出穴が配置されており、この保持部材流出穴と上記ケーシング部材の上記流出穴は、互いに対応する位置に配置されている。
このように構成された本発明においては、上側下方シール保持部材と下側上方シール保持部材とを一体的に接続するシール保持部材により部品点数を抑制することができる。
また、シール保持部材の側壁部に配置された保持部材流出穴が、ケーシング部材の側面の流出穴に対応しているため、上側下方シール保持部材と下側上方シール保持部材とが互いに一体的に接続されたシール保持部材であっても、上側下方シール保持部材及び下側上方シール保持部材のそれぞれがケーシング部材の流出穴に干渉したり、閉塞したりすることなく、ケーシング部材の流出穴を確保することができる。これにより、シングルレバーカートリッジの二次側流路の流出口から流出する湯水について、下流側に確実に流出させることができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、上記上方シール保持部材は、ほぼ円環状の部材の周方向の一部が切り欠かれたものであり、その平面視の形状が概ねC字形形状に形成されたCリング部材である。
このように構成された本発明においては、上側上方シール保持部材が、ほぼ円環状の部材の周方向の一部が切り欠かれたものであり、その平面視の形状が概ねC字形形状に形成されたCリング部材であるため、このCリング部材をケーシング部材に設ける際に、上側上方シール保持部材についてケーシング部材の外側から抱き着かせるようにして、簡単に取り付けることができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、上記ケーシング部材の外面及び上記Cリング部材の内面のそれぞれは、平面視において少なくともほぼ半円弧状に形成され、上記ケーシング部材の外面の平面視における曲率半径は、上記ケーシング部材の外面に取り付けられる前の状態の上記Cリング部材の内面の平面視における曲率半径よりも大きく設定されている。
このように構成された本発明においては、ケーシング部材の外面の平面視における曲率半径が、ケーシング部材の外面に取り付けられる前の状態のCリング部材の内面の平面視における曲率半径よりも大きく設定されているため、ケーシング部材の外面に取り付けられた状態のCリング部材は、その内面の平面視における曲率半径がケーシング部材の外面に取り付けられる前の状態の曲率半径よりも大きな曲率半径となるように弾性的に変形することになる。
したがって、Cリング部材の内面は、ケーシング部材の外面に取り付けられると、弾性力でケーシング部材の外面に抱き着いた状態となる。これにより、Cリング部材がケーシング部材から外れ難くなるため、Cリング部材をケーシング部材に確実に保持することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、上記Cリング部材の内面には、内側に突出する突起が設けられており、上記ケーシング部材の外面には、上記突起が挿入されて係合可能な係合穴が設けられている。
このように構成された本発明においては、Cリング部材の内面には、内側に突出する突起が設けられており、ケーシング部材の外面には、Cリング部材の突起が挿入されて係合可能な係合穴が設けられているため、Cリング部材の内面をケーシング部材の外面に取り付ける際に、Cリング部材の内面の突起をケーシング部材の外面の係合穴に挿入して確実に係合させることができる。
これにより、ケーシング部材に対するCリング部材の上下方向の位置や周方向の位置を確実に位置決めすることができるため、水栓装置の組立性を向上させることができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、上記係合穴に挿入された状態の上記突起の挿入量は、上記係合穴の深さ寸法よりも小さく設定されている。
このように構成された本発明においては、ケーシング部材の外面の係合穴に挿入された状態のCリング部材の内面の突起の挿入量が、係合穴の深さ寸法よりも小さく設定されているため、Cリング部材の内面の突起をケーシング部材の外面の係合穴に挿入して係合させた状態では、突起がケーシング部材の内部に突出することを抑制することができる。
したがって、Cリング部材の突起がケーシング部材の内部のシングルレバーカートリッジ等に干渉することについても抑制することができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、上記上方シール保持部材は、その周方向の一部が切れ目によって切断されており、この切れ目における上記上方シール部材と接触する角部は、曲がり面を形成している。
このように構成された本発明においては、上方シール部材を保持する上方シール保持部材の切れ目における上方シール部材と接触する角部が曲がり面を形成しているため、上方シール保持部材が上方シール部材を保持している状態では、上方シール保持部材の切れ目の角部と上方シール部材とを滑らかに接触させることができる。これにより、上方シール部材が、上方シール保持部材の切れ目の角部との接触により破損することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の水栓装置によれば、水密性を確保しつつ、水栓装置の設計の自由度を向上させることができると共に、製造コストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態による水栓装置を斜め前方から見た概略斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態による水栓装置全体の分解斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態による水栓装置の中央側面断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態による水栓装置の水栓機能ユニットを分解した斜視図である。
【
図5】本発明の第1実施形態による水栓装置の水栓機能ユニットを斜め後方から見た斜視図である。
【
図6】本発明の第1実施形態による水栓装置の水栓機能ユニットの正面断面図であり、湯側及び水側のそれぞれの一次側流路の縦断面を示す。
【
図7】
図3に示す本発明の第1実施形態による水栓装置の中央側面断面図において、水栓機能ユニットの上方部分を拡大した部分拡大断面図である。
【
図8】本発明の第1実施形態による水栓装置のケーシング部材の分解斜視図である。
【
図10】本発明の第1実施形態による水栓装置の水栓機能ユニットに対して、下側下方シール保持部材、下方シール部材、上側下方シール保持部材、下側上方シール保持部材、上方シール部材、及び、上側上方シール保持部材のそれぞれを斜め後方から見た分解斜視図である。
【
図11A】
図10に示す本発明の第1実施形態による水栓装置の上側下方シール保持部材の斜視図である。
【
図11B】
図11Aに示す本発明の第1実施形態による水栓装置の上側下方シール保持部材の切れ目部分を拡大した部分拡大斜視図である。
【
図12A】
図10に示す本発明の第1実施形態による水栓装置の下側上方シール保持部材の斜視図である。
【
図12B】
図12Aに示す本発明の第1実施形態による水栓装置の下側上方シール保持部材の切れ目部分を拡大した部分拡大斜視図である。
【
図13】
図7に示す本発明の第1実施形態による水栓装置において、下側上方シール保持部材、上方シール部材、及び、上側上方シール保持部材のそれぞれの部分を拡大した部分拡大断面図である。
【
図14】本発明の第2実施形態による水栓装置の水栓機能ユニットの中央よりも上方部分を斜め後方から見た斜視図である。
【
図15】本発明の第2実施形態による水栓装置の水栓機能ユニットに対して、下側下方シール保持部材、下方シール部材、上側下方シール保持部材、下側上方シール保持部材、上方シール部材、及び、上側上方シール保持部材のそれぞれを斜め後方から見た分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明の第1実施形態による水栓装置について説明する。
まず、
図1は、本発明の第1実施形態による水栓装置を斜め前方から見た概略斜視図である。
図1に示すように、本発明の第1実施形態による水栓装置1は、給湯源(図示せず)から供給される湯と給水源(図示せず)から供給される水とを混合して吐止水する、いわゆる、「シングルレバー式」と呼ばれる水栓装置であり、台所のシンク又は洗面台のカウンター等の設置面F1上に設置されている。
すなわち、このシングルレバー式の水栓装置1においては、いわゆる、「シングルレバー」と呼ばれる単一の操作ハンドル2が手動で回動操作されることにより、流量と温度が調整された湯水がスパウト4の吐水口6から吐止水されるようになっている。
【0021】
例えば、
図1に示すように、本実施形態の水栓装置1において、まず、操作ハンドル2が最下方の止水操作位置に設定されている場合には、スパウト4の吐水口6から吐出される湯水が止水されるようになっている。
また、
図1に示すように、操作ハンドル2が止水操作位置から上方の操作位置に回動操作された場合には、スパウト4の吐水口6から吐出される湯水が吐水状態に設定されるようになっている。
すなわち、操作ハンドル2は、吐水状態において、より上方(
図1に示す矢印「開」の方向)に回動操作される程、湯水の流量が大きく設定され、より下方(
図1に示す矢印「閉」の方向)に回動操作される程、湯水の流量が小さく設定されるようになっている。
【0022】
さらに、
図1に示すように、操作ハンドル2は、水栓装置1の鉛直方向に延びる中心軸線(回転中心軸線A1)を中心に水側(
図1に示す矢印「C」側)に回動操作された場合には、スパウト4の吐水口6から吐出される湯水の温度が低温側に設定されるようになっている。
一方、
図1に示すように、操作ハンドル2が回転中心軸線A1を中心に湯側(
図1に示す矢印「H」側)に回動操作された場合には、スパウト4の吐水口6から吐出される湯水の混合比を湯が大きく設定されるなっている。
【0023】
つぎに、
図2~
図9により、本発明の第1実施形態による水栓装置の内部構造について具体的に説明する。
図2は、本発明の第1実施形態による水栓装置全体の分解斜視図である。また、
図3は、本発明の第1実施形態による水栓装置の中央側面断面図である。
まず、
図2及び
図3に示すように、本実施形態の水栓装置1は、その種類又は仕様に応じた形状に形成された中空の外殻部材8を備えている。この外殻部材8は、上下方向に概ね筒状に延びる支柱部8a、及び、この支柱部8aの側面から外側に延びるスパウト部8bをそれぞれ備えている。
なお、外殻部材8については、金属材料で形成されていてもよいし、樹脂材料で形成されていてもよい。
【0024】
つぎに、
図2及び
図3に示すように、本実施形態の水栓装置1は、外殻部材8の下方側(上流側)において、湯供給管10、水供給管12、固定金具14(把持金具14a、締結金具14b)、及び、台座部材16をそれぞれ備えている。
図2及び
図3に示すように、台座部材16は、水栓装置1の設置面F1に配置された状態で固定金具14の馬蹄形の把持金具14a及び締結金具14bにより固定されるようになっている。
また、
図2に示すように、台座部材16には、縦方向に貫く通湯穴16a及び通水穴16bがそれぞれ形成されている。通湯穴16aには、給湯器等の給湯源(図示せず)から湯を供給する湯供給管10が下方から接続されている。同様に、通水穴16bには、水道等の給水源(図示せず)から水を供給する水供給管12が下方から接続されている。
さらに、
図2及び
図3に示すように、本実施形態の水栓装置1は、外殻部材8の支柱部8aの内部において、詳細は後述する水栓機能ユニット18を備えている。
【0025】
つぎに、
図4は、本発明の第1実施形態による水栓装置1の水栓機能ユニット18を分解した斜視図である。また、
図5は、本発明の第1実施形態による水栓装置1の水栓機能ユニット18を斜め後方から見た斜視図である。
図4及び
図5に示すように、本実施形態の水栓装置1は、水栓機能ユニット18の外側において、下方から上方に向って、下側下方シール保持部材20、下方シール部材22、上側下方シール保持部材24、下側上方シール保持部材26、上方シール部材28、及び、上側上方シール保持部材30をそれぞれ備えているが、これらの詳細については後述する。
また、
図4及び
図5に示すように、下方シール部材22及び上方シール部材28のそれぞれは、水栓機能ユニット18の外側面と外殻部材8の支柱部8aの内側面との間を水密にシールするものである。
さらに、
図4及び
図5に示すように、下側下方シール保持部材20及び上側下方シール保持部材24のそれぞれは、下方シール部材22を保持するためのものでもあり、一方、下側上方シール保持部材26及び上側上方シール保持部材30のそれぞれは、上方シール部材28を保持するためのものである。
【0026】
さらに、
図2及び
図3に示すように、本実施形態の水栓装置1は、外殻部材8とその上方の操作ハンドル2との上下方向の間において、下方から上方に向って、Cリング32、シール部材34、固定部材36、及び、留め具38(ビス38a、キャップ38b)をそれぞれ備えている。
これらの部材32,34,36,38については、外殻部材8の支柱部8a内に挿入された水栓機能ユニット18について、上方から水密に保持するものである。
【0027】
つぎに、
図6は、本発明の第1実施形態による水栓装置1の水栓機能ユニット18の正面断面図であり、湯側及び水側のそれぞれの一次側流路の縦断面を示す。また、
図7は、
図3に示す本発明の第1実施形態による水栓装置1の中央側面断面図において、水栓機能ユニット18の上方部分を拡大した部分拡大断面図である。
まず、
図3~
図7に示すように、本実施形態の水栓装置1の水栓機能ユニット18は、詳細については後述する金属製のケーシング部材40を備えている。この金属製のケーシング部材40は、外殻部材8の支柱部8a内に挿入された状態で、その一端側(下端側)が台座部材16に対して固定されている。
【0028】
つぎに、
図4及び
図6に示すように、水栓機能ユニット18は、ケーシング部材40の内部において、下方から上方に且つ内側から外側に向って(或いは、上流側から下流側に向って)、軸シール部材42(湯側軸シール部材42a、水側軸シール部材42b)、湯供給管44、水供給管46、軸シール部材48(湯側軸シール部材48a、水側軸シール部材48b)、一次側アダプタ部材50、弁座部材52、シングルレバーカートリッジ54(固定弁体54a、可動弁体54b、単一のレバー54c)、及び、カートリッジ押さえ部材56をそれぞれ備えている。
また、
図4及び
図5に示すように、水栓機能ユニット18は、ケーシング部材40の外側面において、台座部材保持用の機械的係合ピン58、及び、一次側アダプタ部材保持用の機械的係合ピン60をそれぞれ備えている。
【0029】
また、
図4及び
図6に示すように、湯供給管44及び水供給管46のそれぞれは、下方の台座部材16の通湯穴16a及び通水穴16bのそれぞれと、上方の一次側アダプタ部材50の通湯穴50a及び通水穴50bのそれぞれとを互いに連通させる一次側通湯路及び一次側通水路を形成している。
また、
図6に示すように、湯供給管44は、下側被接続部44a及び上側被接続部44bをそれぞれ備えている。湯供給管44の下側被接続部44aは、台座部材16の通湯穴16aの上端(下流端)の湯側接続受け部16c内に湯側軸シール部材42aを介して差し込まれて水密に接続され、いわゆる、軸シールされている。一方、湯供給管44の上側被接続部44bは、一次側アダプタ部材50の通湯穴50aの下端(上流端)の湯側接続受け部50c内に湯側軸シール部材48aを介して差し込まれて水密に接続され、いわゆる、軸シールされている。
同様に、
図6に示すように、水供給管46は、下側被接続部46a及び上側被接続部46bをそれぞれ備えている。水供給管46の下側被接続部46aは、台座部材16の通水穴16bの上端(下流端)の水側接続受け部16d内に水側軸シール部材42bを介して差し込まれて水密に接続され、いわゆる、軸シールされている。一方、水供給管46の上側被接続部46bは、一次側アダプタ部材の通水穴50bの下端(上流端)の水側接続受け部50d内に水側軸シール部材48bを介して水密に接続され、いわゆる、軸シールされている。
【0030】
つぎに、
図6に示すように、台座部材16及び一次側アダプタ部材50の各接続受け部16c,16d,50c,50dにおいて、湯供給管44及び水供給管46の各被接続部44a,44b,46a,46bに対するクリアランスd1,d2,d3,d4がそれぞれ設けられている。
これらのクリアランスd1,d2,d3,d4により、湯供給管44の各被接続部44a,44b及び水供給管46の各被接続部46a,46bが、台座部材16の各接続受け部16c,16d及び一次側アダプタ部材50の各接続受け部50c,50dにおける各クリアランスd1~d4の範囲内で水密状態を保ちながら移動することができるようになっている。
【0031】
つぎに、
図4~
図7に示すように、一次側アダプタ部材50の上面には、弁座部材52が水密に接続されており、この弁座部材52の上面には、シングルレバーカートリッジ54が水密に接続されている。これらの一次側アダプタ部材50及び弁座部材52のそれぞれは、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂材料で概ね円柱状に形成されており、互いに別部材となっている。
また、これらの一次側アダプタ部材50及び弁座部材52は、詳細は後述する上側ケーシング部材74の底部74aを間に挟みつつ、湯供給管44及び水供給管46のそれぞれの下流端とシングルレバーカートリッジ54とを互いに水密に接続する接続部材として機能するようになっている。
ここで、
図4~
図7に示すように、シングルレバーカートリッジ54の構造については、周知のシングルレバーカートリッジの構造と同様であるため、詳細な説明は省略するが、代表的には、下方から上方に向って、固定弁体54a、可動弁体54b、及び、レバー54cをそれぞれ備えている。
【0032】
また、
図4~
図7に示すように、固定弁体54aは、シングルレバーカートリッジ54内の底部に固定されている。
つぎに、
図6及び
図7に示すように、可動弁体54bは、固定弁体54aの上面に対して並進及び回転する摺動が可能に配置されている。
さらに、
図6及び
図7に示すように、レバー54cは、その下端が可動弁体54bに連結されており、上端が操作ハンドル2に連結されている単一の軸部材となっている。
なお、
図6に示すように、固定弁体54a及び可動弁体54bのそれぞれには、弁座部材52の通湯穴52a及び通水穴52bのそれぞれと連通する一次側流路である通湯路54d及び通水路54eがそれぞれ形成されている。
また、
図7に示すように、固定弁体54a及び可動弁体54bのそれぞれには、通湯路54d及び通水路54eのそれぞれから供給された湯と水を混合する二次側流路である湯水混合路54fがそれぞれ形成されている。通湯路54d及び通水路54eから湯水混合路54fに供給される湯水の混合比と流量は、可動弁体54bの位置に応じて調整されるようになっている。
また、
図5及び
図7に示すように、シングルレバーカートリッジ54の湯水混合路54fの流出口54gは、詳細は後述するケーシング部材40の上側ケーシング部材74の側面の流出穴74fと連通している。
【0033】
つぎに、
図3及び
図7に示すように、本実施形態の水栓装置1は、シングルレバーカートリッジ54の側方のケーシング部材40の外側と外殻部材8の支柱部8aの内側との間において、二次側流路形成部材62、二次側アダプタ部材64、及び、スペーサ部材66をそれぞれ備えている。
また、
図3及び
図7に示すように、本実施形態の水栓装置1は、外殻部材8のスパウト部8b内において、スパウト流路68aを形成するスパウト側流路形成部材68と、吐水口6を形成する吐水口形成部材70と、をそれぞれ備えている。
【0034】
つぎに、
図8及び
図9を参照して、本実施形態による水栓装置1のケーシング部材40の詳細について、このケーシング部材40の加工方法と共に説明する。
図8は、本発明の第1実施形態による水栓装置1のケーシング部材40の分解斜視図である。また、
図9は、
図8のIX-IX線に沿った断面図である。
図4、
図8及び
図9に示すように、本実施形態による水栓装置1の金属製のケーシング部材40は、下方から上方に向って、下側ケーシング部材72、上側ケーシング部材74、及び、上部円環部材76をそれぞれ備えている。
また、これらの部材72,74,76の金属材料としては、耐食性が比較的高く、耐久性や強度等も比較的高いステンレス材料(例えば、SUS304等)等が用いられている。
しかしながら、本実施形態による水栓装置1の金属製のケーシング部材40に用いられる金属材料については、耐食性が比較的高く、耐久性や強度等も比較的高い材料であれば、ステンレス材料以外の他の金属材料であってもよい。
そして、
図4、
図8及び
図9に示すように、下側ケーシング部材72の上端と上側ケーシング部材74の下端とは、溶接加工等により互いに一体的に接続されていると共に、上側ケーシング部材74の上端と上部円環部材76の下端とは、溶接加工等により互いに一体的に接続されている。
【0035】
ここで、
図8及び
図9に示すように、上側ケーシング部材74と溶接される前の状態の下側ケーシング部材72おいては、外殻部材8の支柱部8a内に挿入可能な寸法で金属製の板材又は管材によってほぼ円筒状に形成されている。
例えば、ほぼ円筒状の金属製の下側ケーシング部材72を成形する際には、金属製の薄板材について、ロール成形等の曲げ加工を行うことにより湾曲状に成形し、最終的には、外殻部材8の支柱部8a内に挿入可能な寸法でほぼ円筒状に形成する。
或いは、予め外殻部材8の支柱部8a内に挿入可能な寸法径の金属製の管材を用意し、この管材について、切断加工又は切削加工を行うことにより、外殻部材8の支柱部8a内に挿入可能な軸方向の長さ寸法に調整する。
すなわち、金属製の下側ケーシング部材72を成形する際には、鋳型等を用いる鋳造加工は採用されていないため、水栓装置1の種類に応じた外殻部材8の形状毎に下側ケーシング部材72の成形用の型を用意する必要がない。
【0036】
つぎに、
図4、
図8及び
図9に示すように、下側ケーシング部材72の側面の下方において、穴開け加工等により径方向に貫く下方ピン係合穴72aが周方向に間隔を置いて複数形成されている。
これにより、
図3、
図4、
図8及び
図9に示すように、台座部材保持用の機械的係合ピン58は、下方ピン係合穴72aに対して外側から挿入されるようになっている。そして、この機械的係合ピン58は、下方ピン係合穴72aに係合した後、その内側端部が台座部材16の側面の係合穴16eに係合するようになっている。
したがって、これらの下側ケーシング部材72の下方ピン係合穴72a、台座部材保持用の機械的係合ピン58、及び、台座部材16の係合穴16eは、下側ケーシング部材72が機械的係合により台座部材16を保持可能にする機械的係合手段として機能するようになっている。
【0037】
同様に、
図4、
図8及び
図9に示すように、下側ケーシング部材72の側面の上方においても、穴開け加工等により径方向に貫く上方ピン係合穴72bが周方向に複数形成されている。
これにより、
図3、
図4、
図8及び
図9に示すように、一次側アダプタ部材保持用の機械的係合ピン60は、上方ピン係合穴72bに対して外側から挿入されるようになっている。そして、この機械的係合ピン60は、上方ピン係合穴72bに係合した後、その内側端部が一次側アダプタ部材50の側面の係合穴50eに係合するようになっている。
したがって、これらの下側ケーシング部材72の上方ピン係合穴72b、一次側アダプタ部材保持用の機械的係合ピン60、及び、一次側アダプタ部材50の係合穴50eは、下側ケーシング部材72が機械的係合により一次側アダプタ部材50を保持可能にする機械的係合手段として機能するようになっている。
【0038】
つぎに、
図8及び
図9に示すように、下側ケーシング部材72と溶接される前の状態の上側ケーシング部材74は、底部74aを備えており、その上方が開放された有底のカップ状の部材である。
また、
図8及び
図9に示すように、上側ケーシング部材74は、その底部74aから上方にほぼ円筒状に延びるように形成されている。
さらに、上側ケーシング部材74の上縁には、外側に突出するフランジ部74bが形成されている。
例えば、このような有底のカップ状の上側ケーシング部材74を成形する際には、金属製の薄板材について絞り加工等を行うことにより、外殻部材8の支柱部8a内に挿入可能な寸法で有底のカップ状に成形する。
すなわち、金属製の上側ケーシング部材74を成形する際には、鋳型等を用いる鋳造加工は採用されていないため、水栓装置1の種類に応じた外殻部材8の形状毎に上側ケーシング部材74の成形用の型を用意する必要がない。
【0039】
つぎに、
図6、
図7及び
図9に示すように、上側ケーシング部材74の底部74aにおいて、湯側連通穴74c、水側連通穴74d、及び、取付穴74eのそれぞれが穴開け加工により形成されている。
ちなみに、
図6に示すように、上側ケーシング部材74の底部74aの湯側連通穴74cにより、その下方の一次側アダプタ部材50の通湯穴50aと上方の弁座部材52の通湯穴52aとが連通可能となっている。
また、
図6及び
図9に示すように、上側ケーシング部材74の底部74aの水側連通穴74dにより、その下方の一次側アダプタ部材50の通水穴50bと弁座部材52の通水穴52bとが連通可能となっている。
さらに、
図7~
図9に示すように、上側ケーシング部材74の底部74aの取付穴74eにおいて、その上方の弁座部材52の底面から下側に突出する突起52cが挿入された後、その下方の一次側アダプタ部材50の取付穴50fに挿入されるようになっている。これにより、弁座部材52が上側ケーシング部材74の底部74aに固定されるようになっている。
【0040】
つぎに、
図8及び
図9に示すように、上側ケーシング部材74の側面において、複数(例えば、2個)の流出穴74fが、穴開け加工により互いに周方向に隣接して形成されている。
また、
図8及び
図9に示すように、上側ケーシング部材74の側面において、各流出穴74fに対して互いに周方向に離間する側には、複数(例えば、2個)の下方突起係合穴74gのそれぞれが、穴開け加工により互いに対角線上に形成されている。
ちなみに、
図2、
図5及び
図8に示すように、上側ケーシング部材74の側面の各下方突起係合穴74gについては、上側下方シール保持部材24の内周面に対角線上に設けられた、複数(例えば、2個)の突起24aのそれぞれが嵌合されるようになっている。これにより、上側下方シール保持部材24の内周面が上側ケーシング部材74の外周面上に対して保持されるようになっている。
さらに、
図8及び
図9に示すように、上側ケーシング部材74の側面において、各流出穴74f及び各下方突起係合穴74gよりも上方には、複数(例えば、2個)の上方突起係合穴74hのそれぞれが、穴開け加工により互いに対角線上に形成されている。
ちなみに、
図2、
図5及び
図9に示すように、上側ケーシング部材74の側面の各上方突起係合穴74hについては、下側上方シール保持部材26の内周面に対角線上に設けられた複数(例えば、2個)の突起26aのそれぞれが嵌合されるようになっている。これにより、下側上方シール保持部材26の内周面が、上側下方シール保持部材24よりも上方の位置で上側ケーシング部材74の外周面に対して保持されるようになっている。
これらの穴開け加工の後、
図8及び
図9に示すように、有底のカップ状の上側ケーシング部材74の底部74aの外縁且つ下縁部分が下側ケーシング部材72の上方開口縁部72c内に挿入された状態で、この上側ケーシング部材74の底部74aの外縁且つ下縁部分と下側ケーシング部材72の上方開口縁部72cとが互いに溶接加工される。これにより、下側ケーシング部材72の上端と上側ケーシング部材74の下端とが互いに一体的に接続されるようになっている。
【0041】
つぎに、
図8及び
図9に示すように、上側ケーシング部材74と溶接される前の状態の上部円環部材76は、外殻部材8の支柱部8a内に挿入可能な寸法で金属製の板材又は管材によってほぼ円環状に形成されている。
例えば、ほぼ円環状の金属製の上部円環部材76を成形する際には、予め外殻部材8の支柱部8a内に挿入可能な寸法径の金属製の管材を用意し、この管材について切断加工又は切削加工を行うことにより、外殻部材8の支柱部8a内に挿入可能な軸方向の長さ寸法に調整する。
すなわち、金属製の上部円環部材76を成形する際には、鋳型等を用いる鋳造加工は採用されていないため、水栓装置1の種類に応じた外殻部材8の形状毎に上部円環部材76の成形用の型を用意する必要がない。
【0042】
つぎに、
図8及び
図9に示すように、上部円環部材76の内周面において、雌ねじ加工により雌ねじ76aが形成されている。
また、
図6及び
図7に示すように、上部円環部材76の雌ねじ76aにより、カートリッジ押さえ部材56の外周面に形成された雄ねじ56aが螺合可能であり、カートリッジ押さえ部材56がケーシング部材40の上端部(上部円環部材76)に対して固定されるようになっている。
このような雌ねじ加工の後、
図8及び
図9に示すように、上部円環部材76の下縁部分と上側ケーシング部材74のフランジ部74bの外縁部分とが互いに溶接加工され、上側ケーシング部材74の上端と上部円環部材76の下端とが互いに一体的に接続されている。
なお、本実施形態の水栓装置1では、上部円環部材76の内周面に雌ねじ76aを形成して雌側部材とし、カートリッジ押さえ部材56の外周面に雄ねじ56aを形成して雄側部材として互いに螺合させる形態を採用している。しかしながら、このような形態に限られず、上部円環部材76の外周面に雄ねじを形成して雄側部材とし、カートリッジ押さえ部材56の内周面に雌ねじを形成して雌側部材として互いに螺合させる形態を採用してもよい。
【0043】
つぎに、
図4及び
図7に示すように、一次側アダプタ部材50は、機械的係合ピン60により下側ケーシング部材72内の上方に保持されており、弁座部材52は、上側ケーシング部材74内の底部74aに保持されている。
また、
図7に示すように、概ね円柱状の一次側アダプタ部材50の外径D1は、弁座部材52の外径D2よりも大きく設定されている(D1>D2)。
【0044】
つぎに、
図7に示すように、上側ケーシング部材74内の弁座部材52の上方には、シングルレバーカートリッジ54が配置されている。
また、
図7に示すように、シングルレバーカートリッジ54の上方において、カートリッジ押さえ部材56の雄ねじ56aが上部円環部材76の雌ねじ76aに螺合されることにより、シングルレバーカートリッジ54が上側ケーシング部材74内の弁座部材52の上方において押圧された状態で保持されている。すなわち、カートリッジ押さえ部材56は、シングルレバーカートリッジ54を弁座部材52に固定する固定部材となる。
このとき、
図5及び
図7に示すように、シングルレバーカートリッジ54の湯水混合路54fの流出口54gは、上側ケーシング部材74の流出穴74fと連通している。
また、
図5及び
図7に示すように、上側ケーシング部材74の外周面とその外側の二次側流路形成部材62の内周面との間には、二次側流路78が形成されている。シングルレバーカートリッジ54の湯水混合路54fの流出口54gから流出した湯水は、上側ケーシング部材74の流出穴74fを介して二次側流路78に流出するようになっている。
さらに、
図7に示すように、二次側流路78内の湯水は、二次側流路形成部材62のスパウト側の側面に形成された流出穴62aから二次側アダプタ部材64内の流路64aに流出した後、スパウト側流路形成部材68内のスパウト流路68aに流出するようになっている。
【0045】
つぎに、
図2、
図5、
図7~
図13を参照して、水栓機能ユニット18の外側において、下方から上方に向って、下側下方シール保持部材20、下方シール部材22、上側下方シール保持部材24、下側上方シール保持部材26、上方シール部材28、及び、上側上方シール保持部材30のそれぞれの詳細について説明する。
図10は、本発明の第1実施形態による水栓装置1の水栓機能ユニット18に対して、下側下方シール保持部材20、下方シール部材22、上側下方シール保持部材24、下側上方シール保持部材26、上方シール部材28、及び、上側上方シール保持部材30のそれぞれを斜め後方から見た分解斜視図である。
【0046】
まず、
図5、
図7及び
図10に示すように、下方シール部材22は、上側ケーシング部材74の外側面において流出穴74fよりも下方の位置に配置されている。この下方シール部材22により、上側ケーシング部材74における流出穴74fよりも下方の外側面と外殻部材8の支柱部8a内の二次側流路形成部材62の内側面との間が水密にシール可能になっている。
一方、
図5、
図7及び
図10に示すように、上方シール部材28は、上側ケーシング部材74の外側面において流出穴74fよりも上方の位置に配置されている。この上方シール部材28により、上側ケーシング部材74における流出穴74fよりも上方の外側面と外殻部材8の支柱部8a内の二次側流路形成部材62の内側面との間が水密にシール可能になっている。
ここで、これらのシール部材22,28としては、ゴム材料等により円環状に形成され且つその横断面形状が概ねX字状である、いわゆる、Xリングが採用されている。
しかしながら、これらのシール部材22,28としては、Xリングに限られず、横断面形状が円形である、いわゆる、Oリング等が採用されてもよい。
【0047】
つぎに、
図5、
図7及び
図10に示すように、下側下方シール保持部材20及び上側下方シール保持部材24のそれぞれは、上側ケーシング部材74における流出穴74fよりも下方の外側面において、上側ケーシング部材74の軸方向に対して垂直な横方向(上側ケーシング部材74の径方向外側)から係合した状態となっている。また、この状態では、下側下方シール保持部材20が下方シール部材22に対して下側から接触して保持している状態となっており、上側下方シール保持部材24が下方シール部材22に対して上側から接触して保持している状態となっている。
すなわち、下側下方シール保持部材20及び上側下方シール保持部材24は、下方シール部材22を下側及び上側から挟み込むことにより保持している状態となっている。
【0048】
また、
図5、
図7及び
図10に示すように、下側上方シール保持部材26及び上側上方シール保持部材30のそれぞれは、上側ケーシング部材74における流出穴74fよりも上方の外側面において、上側ケーシング部材74の軸方向に対して垂直な横方向(上側ケーシング部材74の径方向外側)から係合した状態となっている。また、この状態では、下側上方シール保持部材26が上方シール部材28に対して下側から接触して保持している状態となっており、上側上方シール保持部材30が上方シール部材28に対して上側から接触して保持している状態となっている。
すなわち、下側上方シール保持部材26及び上側上方シール保持部材30は、上方シール部材28を下側及び上側から挟み込むことにより保持している状態となっている。
【0049】
つぎに、
図10に示すように、下側下方シール保持部材20、上側下方シール保持部材24、下側上方シール保持部材26、及び、上側上方シール保持部材30のそれぞれは、ほぼ円環状に形成された部材の周方向の一部が軸方向(鉛直方向)の各切れ目B1~B4によって切り欠かれたものである。
すなわち、
図10に示すように、下側下方シール保持部材20及び上側上方シール保持部材30は、その平面視の形状が概ねC字形形状に形成された、いわゆる、Cリング部材となっており、互いに同一の形状となっている。しかしながら、これらの部材20,30は、上側下方シール保持部材24及び下側上方シール保持部材26とは異なった形状のCリング部材となっている。
また、
図10に示すように、上側下方シール保持部材24及び下側上方シール保持部材26についても、その平面視の形状が概ねC字形形状に形成された、いわゆる、Cリング部材となっており、互いに同一の形状となっている。しかしながら、下側上方シール保持部材26は、
図10に示す上側下方シール保持部材24について上面と下面とを反転させた状態と同じ状態で配置されている。
さらに、各Cリング部材20,24,26,30は、樹脂や金属等弾性変形が可能な材料によって形成されており、上側ケーシング部材74の外側面に対して外側から抱き着かせるようにして、弾性的に取り付けることができるようになっている。
なお、本実施形態では、各Cリング部材20,24,26,30については、ほぼ円弧状に一周するようなリング形状であるが、上側ケーシング部材74の外側面に対して外側から弾性的に取り付け可能であれば、ほぼ一円弧状の形状でなくてもよい。要するに、各Cリング部材20,24,26,30については、半円弧以上で一円弧未満の形状のリング形状であってもよい。
【0050】
また、
図10に示すように、上側ケーシング部材74の外周面の平面視の曲率半径ρ1は、上側ケーシング部材74の外周面に弾性的に取り付けられる前(弾性変形前)の状態の各Cリング部材20,24,26,30の内面における平面視の各曲率半径ρ2~ρ5よりも大きく設定されている(ρ1>ρ2,ρ3,ρ4,ρ5)。
【0051】
つぎに、
図11Aは、
図10に示す本発明の第1実施形態による水栓装置1の上側下方シール保持部材24の斜視図である。また、
図11Bは、
図11Aに示す本発明の第1実施形態による水栓装置1の上側下方シール保持部材24の切れ目B2部分を拡大した部分拡大斜視図である。
さらに、
図12Aは、
図10に示す本発明の第1実施形態による水栓装置1の下側上方シール保持部材26の斜視図である。また、
図12Bは、
図12Aに示す本発明の第1実施形態による水栓装置1の下側上方シール保持部材26の切れ目B3部分を拡大した部分拡大斜視図である。
【0052】
まず、
図2、
図5、
図10~
図11Aに示すように、上側下方シール保持部材24の内面には、内側に突出する複数(例えば、2個)の突起24aのそれぞれが互いに対角線上に設けられている。各突起24aは、その径方向内側に対向する上側ケーシング部材74の各下方突起係合穴74gに挿入されて係合可能となっている。
また、
図11Aに示すように、一方の突起24aは、軸方向(鉛直方向)に延びる切れ目B2によって周方向の左右に分断された2つの小突起24b,24cを備えている。
同様に、
図2、
図5、
図10及び
図12Aに示すように、下側上方シール保持部材26の内面には、内側に突出する複数(例えば、2個)の突起26aのそれぞれが互いに対角線上に設けられている。各突起26aは、その径方向内側に対向する上側ケーシング部材74の各上方突起係合穴74hに挿入されて係合可能となっている。
また、
図12Aに示すように、一方の突起26aは、軸方向(鉛直方向)に延びる切れ目B3によって周方向の左右に分断された2つの小突起26b,26cを備えている。
【0053】
さらに、
図5及び
図7に示すように、上側下方シール保持部材24及び下側上方シール保持部材26のそれぞれは、各突起24a,26aが上側ケーシング部材74の各係合穴74g,74hに係合することにより、上側ケーシング部材74の外周面上に保持された状態となる。この状態では、上側下方シール保持部材24及び下側上方シール保持部材26のそれぞれが、上側ケーシング部材74を介して互いに一体的に設けられた状態となっている。
また、
図5及び
図7に示すように、上側下方シール保持部材24及び下側上方シール保持部材26のそれぞれが上側ケーシング部材74の外周面上に保持された状態では、上側ケーシング部材74の流出穴74fが、上側下方シール保持部材24と下側上方シール保持部材26との上下方向の間に位置するようになっている。
【0054】
つぎに、
図13は、
図7に示す本発明の第1実施形態による水栓装置1において、下側上方シール保持部材26、上方シール部材28、及び、上側上方シール保持部材30のそれぞれの部分を拡大した部分拡大断面図である。
図13に示すように、上側ケーシング部材74の各上方突起係合穴74hは、上側ケーシング部材74の側壁を径方向に貫いている。
また、
図13に示すように、下側上方シール保持部材26の各突起26aが上側ケーシング部材74の各上方突起係合穴74hに完全に挿入されて係合している状態であって、下側上方シール保持部材26における各突起26a以外の内周面と上側ケーシング部材74の外周面とが当接している状態では、各係合穴74hに挿入された状態の各突起26aの挿入量t1は、各係合穴74hの深さ寸法T0よりも小さく設定されている(t1<T0)。
なお、図示は省略しているが、上側下方シール保持部材24の各突起24aが上側ケーシング部材74の各下方突起係合穴74gに完全に挿入されて係合している状態であって、上側下方シール保持部材24における各突起24a以外の内周面と上側ケーシング部材74の外周面とが当接している状態では、各係合穴74gに挿入された状態の各突起24aの挿入量についても、各係合穴74gの深さ寸法よりも小さく設定されている。
【0055】
つぎに、
図11Bに示すように、上側下方シール保持部材24の切れ目B2の下端付近における下方シール部材22の上面と接触する角部R1は、曲がり面を形成している。
同様に、
図12Bに示すように、下側上方シール保持部材26の切れ目B3の上端端付近における上方シール部材28の下面と接触する角部R2は、曲がり面を形成している。
さらに、同様に、
図10に示すように、下側下方シール保持部材20の切れ目B1の上端付近における下方シール部材22の下面と接触する角部R3や、上側上方シール保持部材30の切れ目B4の下端付近における上方シール部材28の上面と接触する角部R4についても、上述した角部R1,R2と同様な曲がり面を形成している。
【0056】
つぎに、上述した本発明の第1実施形態による水栓装置1の作用について、水栓装置1の組立方法を交えながら説明する。
まず、本実施形態による水栓装置1によれば、
図5及び
図7に示すように、シングルレバーカートリッジ54の流出口54gから流出した湯水は、シングルレバーカートリッジ54の二次側流路(湯水混合路54f)の流出口54gの近傍にある上側ケーシング部材74の流出穴74fから上側ケーシング部材74の外部の二次側流路78に流出する。
このとき、
図5、
図7及び
図13に示すように、上側ケーシング部材74における流出穴74fよりも上方の外側面と外殻部材8の支柱部8a内の二次側流路形成部材62の内側面との間において、上方シール部材28が設けられているため、両者74,62間を水密にシールすることができる。
同様に、上側ケーシング部材74における流出穴74fよりも下方の外側面と外殻部材8の支柱部8a内の二次側流路形成部材62の内側面との間においても、下方シール部材22が設けられているため、両者74,62間を水密にシールすることができる。
また、上側ケーシング部材74の流出穴74fよりも上方の側面に設けられた上方シール保持部材26,30が、上側ケーシング部材74の軸方向に対して垂直な横方向(上側ケーシング部材74の径方向外側)から上側ケーシング部材74の外側面に係合することにより、上方シール部材28を上下方向から確実に保持することができる。
これにより、シングルレバーカートリッジ54が設けられる上側ケーシング部材74の上方側の周囲についても、上方シール保持部材26,30が、上方シール部材28と共に水密なシールを確実に行うことができる。
さらに、これらの上方シール部材28及び下方シール部材22により、上側ケーシング部材74の流出穴74fよりも下流側の上側ケーシング部材74の周囲の領域においても、二次側流路78を水密に設けることができる。
これらの結果、水密性を確保しつつ、水栓装置1の設計の自由度を向上させることができると共に、製造コストを抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態による水栓装置1によれば、上側上方シール保持部材30及び下側上方シール保持部材26のそれぞれが上方シール部材28に対して上下方向から接触して挟み込むことにより、上方シール部材28を確実に安定して保持することができる。
したがって、上側上方シール保持部材30及び下側上方シール保持部材26により、上方シール部材28が移動することが確実に規制されるため、安定した水密性を確保することができる。
【0058】
さらに、本実施形態による水栓装置1によれば、上側ケーシング部材74の流出穴74fよりも下方の側面に設けられた下方シール保持部材20,24が、上側ケーシング部材74の軸方向に対して垂直な横方向(上側ケーシング部材74の径方向外側)から上側ケーシング部材74の外側面に係合することにより、下方シール部材22を確実に保持することができる。
これにより、上側ケーシング部材74の流出穴74fよりも下方側の周囲についても、下方シール保持部材20,24が、下方シール部材22と共に水密なシールを確実に行うことができる。
さらに、これらの上方シール部材28及び下方シール部材22により、上側ケーシング部材74の周囲における二次側流路78等の水が流れる領域について、上下方向の必要最低限の範囲に設定することができると共に、水密性を確保することができる。
【0059】
また、本実施形態による水栓装置1によれば、上側下方シール保持部材24及び下側下方シール保持部材20のそれぞれが下方シール部材22に対して上下方向から接触して挟み込むことにより、下方シール部材22を確実に安定して保持することができる。
したがって、上側下方シール保持部材24及び下側下方シール保持部材20により、下方シール部材22が移動することが確実に規制されるため、安定した水密性を確保することができる。
【0060】
さらに、本実施形態による水栓装置1によれば、下方シール部材22に対して上側から接触して保持する上側下方シール保持部材24と、上方シール部材28に対して下側から接触して保持する下側上方シール保持部材26とが上側ケーシング部材74を介して互いに一体的に設けられている。これにより、上方シール部材28及び下方シール部材22のそれぞれの位置決めが行い易くなる。
したがって、水栓装置1の組立性を向上させることができる。
【0061】
また、本実施形態による水栓装置1によれば、上側下方シール保持部材24と下側上方シール保持部材26との間を接続する上側ケーシング部材74の側面に流出穴74fが配置されている。
これにより、上側下方シール保持部材24と下側上方シール保持部材26との間が上側ケーシング部材74の側面により互いに一体的に接続された状態であっても、上側下方シール保持部材24及び下側上方シール保持部材26のそれぞれが、上側ケーシング部材74の流出穴74fに干渉したり、閉塞したりすることなく、上側ケーシング部材74の流出穴74fを確保することができる。
したがって、シングルレバーカートリッジ54の二次側流路(湯水混合路54f)の流出口54gから流出する湯水について、上側ケーシング部材74の流出穴74fから下流側の二次側流路78に確実に流出させることができる。
【0062】
さらに、本実施形態による水栓装置1によれば、各シール保持部材20,24,26,30が、ほぼ円環状の部材の周方向の一部が切り欠かれたものであり、その平面視の形状が概ねC字形形状に形成されたCリング部材である。これにより、このようなCリング部材20,24,26,30を上側ケーシング部材74の外側面に設ける際に、各シール保持部材20,24,26,30について、上側ケーシング部材74の外側から抱き着かせるようにして弾性的に取り付けることができるため、簡単に組み付けることができる。
【0063】
また、本実施形態による水栓装置1によれば、上側ケーシング部材74の外周面の平面視の曲率半径ρ1は、上側ケーシング部材74の外周面に弾性的に取り付けられる前(弾性変形前)の状態の各Cリング部材20,24,26,30の内面における平面視の各曲率半径ρ2~ρ5よりも大きく設定されている(ρ1>ρ2,ρ3,ρ4,ρ5)。
これにより、上側ケーシング部材74の外周面に取り付けられた状態の各Cリング部材20,24,26,30は、その内面の平面視における曲率半径が上側ケーシング部材74の外面に取り付けられる前の状態の曲率半径ρ2~ρ5よりも大きな上側ケーシング部材74の外周面の平面視の曲率半径ρ1となるように、径方向外側に弾性的に変形し、或いは、切れ目B1~B4の幅が大きくなる方向に弾性的に変形することになる。
したがって、各Cリング部材20,24,26,30の内面は、上側ケーシング部材74の外面に取り付けられると、弾性力で上側ケーシング部材74の外面に抱き着いた状態となる。
これにより、各Cリング部材20,24,26,30が上側ケーシング部材74から外れ難くなるため、各Cリング部材20,24,26,30を上側ケーシング部材74に確実に保持することができる。
【0064】
さらに、本実施形態による水栓装置1によれば、上側下方シール保持部材24及び下側上方シール保持部材26のそれぞれの内面には、内側に突出する突起24a,26aがそれぞれ設けられている。また、上側ケーシング部材74の外面には、各シール保持部材24,26の各突起24a,26aが挿入されて係合可能な係合穴74g,74hがそれぞれ設けられている。
これらにより、各シール保持部材24,26の内面を上側ケーシング部材74の外面に取り付ける際に、各シール保持部材24,26の内面の各突起24a,26aを上側ケーシング部材74の外面の各係合穴74g,74hに挿入して確実に係合させることができる。
したがって、上側ケーシング部材74に対する各シール保持部材24,26の上下方向の位置や周方向の位置を確実に位置決めすることができるため、水栓装置1の組立性を向上させることができる。
【0065】
また、本実施形態による水栓装置1によれば、上側ケーシング部材74の外面の各係合穴74g,74hに挿入された状態の各シール保持部材24,26の内面の各突起24a,26aの挿入量t1が、上側ケーシング部材74の外面の各係合穴74g,74hの深さ寸法T0よりも小さく設定されている(t1<T0)。
これにより、各シール保持部材24,26の内面の各突起24a,26aを上側ケーシング部材74の外面の各係合穴74g,74hに挿入して係合させた状態では、各突起24a,26aが上側ケーシング部材74の内部(上側ケーシング部材74の内周面よりも内側)に突出することを抑制することができる。
したがって、各シール保持部材24,26の内面の各突起24a,26aが上側ケーシング部材74の内部(上側ケーシング部材74の内周面よりも内側)のシングルレバーカートリッジ54等に干渉することについても抑制することができる。
【0066】
さらに、本実施形態による水栓装置1によれば、
図10~
図12Bに示すように、上側下方シール保持部材24の切れ目B2の下端付近における下方シール部材22の上面と接触する角部R1は、曲がり面を形成している。同様に、
図12Bに示すように、下側上方シール保持部材26の切れ目B3の上端端付近における上方シール部材28の下面と接触する角部R2は、曲がり面を形成している。
さらに、同様に、図示は省略しているが、
図10に示す下側下方シール保持部材20の切れ目B1の上端付近における下方シール部材22の下面と接触する角部や、上側上方シール保持部材30の切れ目B4の下端付近における上方シール部材28の上面と接触する角部についても、上述した角部R1,R2と同様な曲がり面を形成している。
これらにより、各シール保持部材20,24,26,30が各シール部材22,28を保持している状態では、各切れ目B1~B4の各角部R1~R4と各シール部材22,28とを滑らかに接触させることができる。
したがって、各シール部材22,28が、各シール保持部材20,24,26,30の切れ目B1~B4の上下端付近の角部R1~R4との接触により破損することを抑制することができる。
【0067】
つぎに、
図14及び
図15を参照して、本発明の第2実施形態による水栓装置について説明する。
図14は、本発明の第2実施形態による水栓装置の水栓機能ユニットの中央よりも上方部分を斜め後方から見た斜視図である。また、
図15は、本発明の第2実施形態による水栓装置の水栓機能ユニットに対して、下側下方シール保持部材、下方シール部材、上側下方シール保持部材、下側上方シール保持部材、上方シール部材、及び、上側上方シール保持部材のそれぞれを斜め後方から見た分解斜視図である。
ここで、
図14及び
図15に示す本発明の第2実施形態による水栓装置100において、本発明の第1実施形態による水栓装置1と同一部分については同一の符号を付し、これらの説明については省略する。
【0068】
まず、
図14及び
図15に示すように、本発明の第2実施形態による水栓装置100においては、下方シール部材22の上側及び上方シール部材28の下側をそれぞれ保持するシール保持部材124の構造のみが、上述した本発明の第1実施形態による水栓装置1の上側下方シール保持部材24及び下側上方シール保持部材26の構造と異なっている。
すなわち、
図14及び
図15に示すように、本発明の第2実施形態による水栓装置100のシール保持部材124は、本発明の第1実施形態による水栓装置1の上側下方シール保持部材24及び下側上方シール保持部材26が互いに一体的に設けられた単一のシール保持部材となっている。
【0069】
具体的には、
図14及び
図15に示すように、シール保持部材124は、概ね円筒状に形成されて、その周方向の一部が軸方向(鉛直方向)の切れ目B101によって切り欠かれたものであり、下方から上方に向って、下方シール保持部124a、側壁部124b、及び、上方シール保持部124cをそれぞれ備えている。
これらにより、下方シール部材22は、下側下方シール保持部材20とシール保持部材124の下方シール保持部124aとの間に保持されている。一方、上方シール部材28は、シール保持部材124の上方シール保持部124cと上側上方シール保持部材30との間に保持されている。
また、シール保持部材124の側壁部124bは、その周方向の全区間に亘って上下端部の軸方向(鉛直方向)の距離H101が一定であるため、シール保持部材124は、下方シール部材22と上方シール部材28との軸方向(鉛直方向)の距離についても一定に保つことができるスペーサとしても機能するようになっている。
【0070】
つぎに、
図14及び
図15に示すように、シール保持部材124の側壁部124bには、保持部材流出穴124dがシール保持部材124の径方向に貫くように形成されている。
また、
図14及び
図15に示すように、シール保持部材124の側壁部124bの内周面には、複数(例えば、2個)の突起124e,124fが対角上に設けられている。これらの突起124e,124fは、シール保持部材124が水栓機能ユニット18に取り付けられる際に、上側ケーシング部材74の各上方突起係合穴74hに挿入されて係合可能となっている。
さらに、
図14に示すように、シール保持部材124が水栓機能ユニット18に取り付けられた状態では、保持部材流出穴124dが、上側ケーシング部材74の側面の流出穴74fに対して径方向外側の隣接した位置に配置され、互いの流出穴74f,124d同士が対応して一致するようになっている。
【0071】
上述した本発明の第2実施形態による水栓装置100によれば、下方シール保持部124aと上方シール保持部124cとが側壁部124bを介して互いに一体的に接続されたシール保持部材124により部品点数を抑制することができる。
また、シール保持部材124が水栓機能ユニット18に取り付けられた状態においては、シール保持部材124の側壁部124bの保持部材流出穴124dを上側ケーシング部材74の側面の流出穴74fに容易に一致させることができる。
これにより、下方シール保持部124aと上方シール保持部124cとが側壁部124bを介して互いに一体的に接続されたシール保持部材124であっても、下方シール保持部124a及び上方シール保持部124cのそれぞれが、上側ケーシング部材74の流出穴74fに干渉したり、閉塞したりすることがないため、上側ケーシング部材74の流出穴74fを確保することができる。
したがって、シングルレバーカートリッジ54の二次側流路(湯水混合路54f)の流出口54gから流出する湯水について、下流側に確実に流出させることができる。
【0072】
なお、上述した本発明の第1実施形態及び第2実施形態による水栓装置1,100に用いられる金属製のケーシング部材40においては、外殻部材8の支柱部8a内に挿入可能な寸法で金属製の板材又は管材によって概ね円筒形状に形成されている形態について説明した。
しかしながら、本実施形態では、金属製のケーシング部材の形状については、必ずしも全周に亘って連続的に形成された完全な円筒形状に限られず、半円筒形状であってもよいし、この半円筒よりも周方向に延びて且つ完全な円筒未満の形状や、半円筒未満の形状等であってもよい。要するに、金属製のケーシング部材の形状については、少なくとも半円筒形状に形成された形状であってもよいし、半円筒形状未満の板形状であってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 本発明の第1実施形態による水栓装置
2 操作ハンドル
4 スパウト
6 吐水口
8 外殻部材
8a 支柱部
8b スパウト部
10 湯供給管(一次側流路)
12 水供給管(一次側流路)
14 固定金具
14a 把持金具
14b 締結金具
16 台座部材
16a 通湯穴
16b 通水穴
16c 湯側接続受け部
16d 水側接続受け部
16e 係合穴
18 水栓機能ユニット
20 下側下方シール保持部材(下方シール保持部材)
22 下方シール部材
24 上側下方シール保持部材(下方シール保持部材)
24a 突起
24b 突起
24c 突起
26 下側上方シール保持部材(上方シール保持部材、Cリング部材)
26a 突起
26b 突起
26c 突起
28 上方シール部材
30 上側上方シール保持部材(上方シール保持部材、Cリング部材)
32 Cリング
34 シール部材
36 固定部材
38 留め具
38a ビス
38b キャップ
40 ケーシング部材
42 軸シール部材
42a 湯側軸シール部材
42b 水側軸シール部材
44 湯供給管(一次側流路)
44a 下側被接続部
44b 上側被接続部
46 水供給管(一次側流路)
46a 下側接続部
46b 上側接続部
48 軸シール部材
48a 湯側軸シール部材
48b 水側軸シール部材
50 一次側アダプタ部材(接続部材)
50a 通湯穴
50b 通水穴
50c 湯側接続部
50d 水側接続部
50e 係合穴
50f 取付穴
52 弁座部材(接続部材)
52a 通湯穴
52b 通水穴
52c 突起
54 シングルレバーカートリッジ
54a シングルレバーカートリッジの固定弁体
54b シングルレバーカートリッジの可動弁体(開閉弁)
54c シングルレバーカートリッジのレバー操作部
54d シングルレバーカートリッジ内の通湯路(一次側流路)
54e シングルレバーカートリッジ内の通水路(一次側流路)
54f シングルレバーカートリッジ内の湯水混合路(二次側流路)
54g シングルレバーカートリッジの湯水混合路の流出口
56 カートリッジ押さえ部材(固定部材)
56a 雄ねじ
58 台座部材保持用の機械的係合ピン
60 一次側アダプタ部材保持用の機械的係合ピン
62 二次側流路形成部材
62a 流出穴
64 二次側アダプタ部材
64a 流路
66 スペーサ部材
68 スパウト側流路形成部材
68a スパウト流路
70 吐水口形成部材
72 下側ケーシング部材
72a 下方ピン係合穴
72b 上方ピン係合穴
72c 上方開口縁部
74 上側ケーシング部材
74a 上側ケーシング部材の底部(上側ケーシング部材の底面)
74b 上側ケーシング部材のフランジ部
74c 上側ケーシング部材の底部の湯側連通穴
74d 上側ケーシング部材の底部の水側連通穴
74e 上側ケーシング部材の底部の取付穴
74f 上側ケーシング部材の側面の流出穴
74g 上側ケーシング部材の側面の下方突起係合穴(ケーシング部材の側面の係合穴)
74h 上側ケーシング部材の側面の上方突起係合穴(ケーシング部材の側面の係合穴)
76 上部円環部材
76a 雌ねじ
78 二次側流路
100 本発明の第2実施形態による水栓装置
124 シール保持部材
124a 下方シール保持部(上側下方シール保持部材)
124b 側壁部
124c 上方シール保持部(下側上方シール保持部材)
124d 保持部材流出穴
124e 突起
124f 突起
A1 回転中心軸線
B1 切れ目
B2 切れ目
B3 切れ目
B4 切れ目
B101 切れ目
D1 一次側アダプタ部材の外径
D2 弁座部材の外径
d1 クリアランス
d2 クリアランス
d3 クリアランス
d4 クリアランス
F1 設置面
H101 距離
R1 曲がり面
R2 曲がり面
R3 曲がり面
R4 曲がり面
T0 上側ケーシング部材の下方突起係合穴の深さ寸法
t1 上側ケーシング部材の下方突起係合穴に挿入される上側上方シール保持部材の突起の挿入量
ρ1 上側ケーシング部材の外周面の平面視の曲率半径
ρ2 下側下方シール保持部材の内面の取付前状態の平面視の曲率半径
ρ3 上側下方シール保持部材の内面の取付前状態の平面視の曲率半径
ρ4 下側上方シール保持部材の内面の取付前状態の平面視の曲率半径
ρ5 上側上方シール保持部材の内面の取付前状態の平面視の曲率半径