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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/08 20060101AFI20220905BHJP
【FI】
E03D11/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018178983
(22)【出願日】2018-09-25
(65)【公開番号】P2020051049
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】塩原 英司
(72)【発明者】
【氏名】高野 聡士
(72)【発明者】
【氏名】中津 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】久保田 有貴
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-44401(JP,A)
【文献】特開2015-190245(JP,A)
【文献】特開2013-44182(JP,A)
【文献】特開2005-113643(JP,A)
【文献】特開2020-51048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00- 7/00
E03D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、
ボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の上方に形成されるリム部と、上記汚物受け面の下方に設けられて溜水を貯留して封水を形成する壺部と、を備えたボウル部と、
上記壺部に入口が接続されて汚物を排出する排水トラップ部と、
上記ボウル部の左右方向の一方側の上記リム部に設けられ、洗浄水を前方に向かって吐水する第1リム吐水を行い、上記リム部に沿って旋回する旋回流を形成する第1リム吐水部と、
上記ボウル部の左右方向の他方側の上記リム部に設けられ、上記第1リム吐水部よりも小さい流量の洗浄水を吐水する第2リム吐水を行う第2リム吐水部と、を有し、
上記第1リム吐水部は、上記壺部の前端よりも前方に配置された第1リム吐水口を備えており、
上記第2リム吐水部は、上記第2リム吐水を上記第1リム吐水の旋回流の旋回方向に対して横断させて、上記第1リム吐水の旋回流と干渉させた洗浄水を上記壺部よりも後方側の上記ボウル部の後方領域に導くように構成された第2リム吐水口を備えており、
この第2リム吐水口は、上記第2リム吐水を上記第1リム吐水の旋回流よりも幅広で膜状に拡散させる拡散部を備えていることを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記拡散部は、上記第2リム吐水口から吐水される第2リム吐水を上記ボウル部の後方領域の左右方向に横断させるように導くように構成されている請求項1記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記拡散部は、上記第2リム吐水口から吐水された第2リム吐水の少なくとも一部を上記ボウル部の後方領域の左右方向を横断させた後、上記ボウル部の後方領域のリム部の壁面に沿って第1リム吐水口側に旋回可能に構成されている請求項1又は2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記拡散部は、その流路中心軸線の方向が上記リム部における上記第2リム吐水口の後端近傍のリム壁面の接平面に対して角度を成すように設けられている請求項1乃至3の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項5】
さらに、上記洗浄水源から供給された洗浄水を上記第2リム吐水部に導く第2リム導水路を有し、
この第2リム導水路は、その上流側から前方に向かって流れる洗浄水を後方に方向転換させる第1屈曲導水路と、この第1屈曲導水路の下流側後方に設けられた第2屈曲導水路と、を備えており、この第2屈曲導水路は、上記第1屈曲導水路によって後方に向かって流れる洗浄水を斜め後方に方向転換させる屈曲部を備え、この屈曲部よりも下流側に上記拡散部が設けられている請求項1乃至4の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項6】
上記拡散部は、上記第2屈曲導水路の屈曲部よりも下流側に形成される下流側導水路であり、この下流側導水路の幅は、上記第2屈曲導水路における上記屈曲部よりも上流側の導水路の幅よりも大きく設定されている請求項5記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係り、特に、洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する従来の水洗大便器として、例えば、特許文献1に記載されているように、第1リム吐水口及び第2リム吐水口の2つのリム吐水口を備えた水洗大便器が知られている。
このような従来の水洗大便器においては、第1リム吐水口が、便器本体を前方から見てボウル部の左側方のリム壁面で且つ溜水を貯留する壺部の前端よりも後方に配置されている。これにより、第1リム吐水口から大流量の洗浄水が前方に向けて第1リム吐水として吐水されて、ボウル部内で旋回流が形成されるようになっている。
一方、上述した従来の水洗大便器の第2リム吐水口は、便器本体のボウル部の右後方のリム壁面で且つ壺部の後端よりも後方に配置されている。これにより、第2リム吐水口から小流量の洗浄水が第1リム吐水口からの第1リム吐水の旋回流と同一方向に第2リム吐水として吐水されるようになっている。
これらの2つのリム吐水口によって、ボウル部内の全周に亘って洗浄水を供給し、ボウル部の全体を洗浄することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-166315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されている従来の水洗大便器のボウル部内には、汚物が付着し易い領域と付着し難い領域がある。
汚物が付着し易い領域としては、具体的には、溜水を貯留する壺部の後方側のボウル部の後方領域等があるため、このようなボウル部の後方領域の広範囲に対して、高速で大流量の洗浄水を供給することが好ましい。
しかしながら、上述した特許文献1の水洗大便器においては、第1リム吐水口がボウル部の左側方のリム壁面で且つ壺部の前端よりも後方に配置されているため、第1リム吐水口から吐水された第1リム吐水の旋回流がボウル部内の前方側を経由して後方側に旋回し、ボウル部の後方領域に到達するまでに、第1リム吐水の大半が壺部に落下してしまう。
したがって、ボウル部の後方領域に到達した第1リム吐水は、小流量で流速が減速した状態でボウル部の後方領域に供給されることになる。
さらに、上述した特許文献1の水洗大便器においては、第2リム吐水口から吐水される第2リム吐水が第1リム吐水の旋回流と同一方向に旋回状に吐水されるため、ボウル部の後方領域に到達した第1リム吐水がボウル部の後方領域において第2リム吐水と合流しても、壺部に落下し難く、汚物が付着し易いボウル部の後方領域の洗浄性が不十分となるという問題がある。
よって、汚物が付着し易いボウル部の後方領域に対して十分な洗浄水を供給して、いかに洗浄力を向上させるかが重要な課題となっている。
【0005】
そこで、本発明は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、汚物が付着し易いボウル部の後方領域に対して高速で大流量の洗浄水を効率良く供給することができ、ボウル部の後方領域の広範囲の洗浄力を向上させることができる水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、ボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の上方に形成されるリム部と、上記汚物受け面の下方に設けられて溜水を貯留して封水を形成する壺部と、を備えたボウル部と、上記壺部に入口が接続されて汚物を排出する排水トラップ部と、上記ボウル部の左右方向の一方側の上記リム部に設けられ、洗浄水を前方に向かって吐水する第1リム吐水を行い、上記リム部に沿って旋回する旋回流を形成する第1リム吐水部と、上記ボウル部の左右方向の他方側の上記リム部に設けられ、上記第1リム吐水部よりも小さい流量の洗浄水を吐水する第2リム吐水を行う第2リム吐水部と、を有し、上記第1リム吐水部は、上記壺部の前端よりも前方に配置された第1リム吐水口を備えており、上記第2リム吐水部は、上記第2リム吐水を上記第1リム吐水の旋回流の旋回方向に対して横断させて、上記第1リム吐水の旋回流と干渉させた洗浄水を上記壺部よりも後方側の上記ボウル部の後方領域に導くように構成された第2リム吐水口を備えており、この第2リム吐水口は、上記第2リム吐水を上記第1リム吐水の旋回流よりも幅広で膜状に拡散させる拡散部を備えていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、第1リム吐水部の第1リム吐水口がボウル部の壺部の前端よりも前方に配置されているため、高速で大流量の第1リム吐水の旋回流をボウル部の後方領域(壺部よりも後方側の汚物受け面やリム部)に効率良く導くことができる。
また、第2リム吐水部の第2リム吐水口により、第1リム吐水部の第1リム吐水口から吐水された第1リム吐水の旋回流の旋回方向に対して横断させるように第2リム吐水を行うことができるため、高速で大流量の第1リム吐水の旋回流を第2リム吐水の水流に合流させて効率良く干渉させることができる。
これにより、第1リム吐水部の第1リム吐水口がボウル部の壺部の前端よりも前方に配置される程、第1リム吐水の旋回流がボウル部の後方領域により高速で大流量の状態で導かれたとしても、第2リム吐水と干渉した後の第1リム吐水の旋回流がボウル部の後方領域で落下し難くなることを抑制することができる。
したがって、ボウル部の壺部よりも後方領域の汚物受け面やリム部を洗浄する第1リム吐水や第2リム吐水の洗浄力を向上させることができる。
さらに、第2リム吐水口の拡散部により、第2リム吐水口から吐水される第2リム吐水を放射状に拡散させることができるため、第2リム吐水を第1リム吐水の旋回流よりも幅広で膜状にすることができる。これにより、高速で大流量の第1リム吐水の旋回流と第2リム吐水の幅広で膜状の水流とを干渉させつつ、ボウル部の後方領域に導くことができる。
よって、汚物が付着し易いボウル部の後方領域に対して、高速で大流量の第1リム吐水を第2リム吐水に干渉させた状態で効率良く供給することができるため、ボウル部の後方領域の広範囲の洗浄力を向上させることができる。
【0007】
本発明において、好ましくは、上記拡散部は、上記第2リム吐水口から吐水される第2リム吐水を上記ボウル部の後方領域の左右方向に横断させるように導くように構成されている。
このように構成された本発明においては、第2リム吐水口の拡散部により、第2リム吐水口から吐水された幅広で膜状の第2リム吐水について、高速で大流量の第1リム吐水の旋回流と干渉させつつ、ボウル部の後方領域の左右方向に横断させるように導くことができる
したがって、高速大流量の第1リム吐水の旋回流と第2リム吐水の幅広で膜状の水流とによりボウル部の後方領域の全体に亘って広範囲に洗浄することができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、上記拡散部は、上記第2リム吐水口から吐水された第2リム吐水の少なくとも一部を上記ボウル部の後方領域の左右方向を横断させた後、上記ボウル部の後方領域のリム部の壁面に沿って第1リム吐水口側に旋回可能に構成されている。
このように構成された本発明においては、第2リム吐水口の拡散部により、第2リム吐水口から吐水された第2リム吐水を第1リム吐水の旋回流と共にボウル部の後方領域に導くことにより、汚物が付着し易いボウル部の後方領域を確実に洗浄することができる。
加えて、第2リム吐水の少なくとも一部をボウル部の後方領域の左右方向を横断させた後、ボウル部の後方領域のリム部の壁面に沿って第1リム吐水口側に旋回させることもできるため、ボウル部の後方領域から少なくとも壺部の前端よりも前方の第1リム吐水口までの領域についても洗浄性を確保することができる。
したがって、第1リム吐水と第2リム吐水とを有効活用することにより、ボウル部の後方領域の洗浄力を向上させることができると共に、汚物が残存し易いボウル部の後方領域からその前方の領域についても十分に洗浄することができるため、ボウル部の全体に亘って洗浄性を確保することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記拡散部は、その流路中心軸線の方向が上記リム部における上記第2リム吐水口の後端近傍のリム壁面の接平面に対して角度を成すように設けられている。
このように構成された本発明においては、第2リム吐水口の拡散部の流路中心軸線の方向がリム部における第2リム吐水口の後端近傍のリム壁面の接平面に対して角度を成しているため、第2リム吐水口から斜め後方のボウル部の後方領域に向けて第2リム吐水を吐水することができる。
また、この吐水された第2リム吐水について、第1リム吐水の旋回流の旋回方向に対して効果的に横断させるように放射状に拡散させて、幅広で膜状の水流を形成することができる。
さらに、第2リム吐水がリム部における第2リム吐水口の前後近傍のリム壁面に引き寄せられる現象(いわゆる、コアンダ現象)を抑制することができる。よって、第2リム吐水が、第1リム吐水の旋回流と共に同一の旋回方向に流れて、ボウル部の後方領域において、合流後の洗浄水のすべてが一切落下することなく、単純に旋回してしまうことを抑制することができる。
これらにより、高速で大流量の第1リム吐水の旋回流と斜め後方に吐水された幅広で膜状の第2リム吐水とを合流させて適度に干渉させつつ、ボウル部の後方領域の左右方向及び前後方向の全体に亘って効果的に導くことができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、さらに、上記洗浄水源から供給された洗浄水を上記第2リム吐水部に導く第2リム導水路を有し、
この第2リム導水路は、その上流側から前方に向かって流れる洗浄水を後方に方向転換させる第1屈曲導水路と、この第1屈曲導水路の下流側後方に設けられた第2屈曲導水路と、を備えており、この第2屈曲導水路は、上記第1屈曲導水路によって後方に向かって流れる洗浄水を斜め後方に方向転換させる屈曲部を備え、この屈曲部よりも下流側に上記拡散部が設けられている。
このように構成された本発明においては、洗浄水源から第2リム導水路に供給された洗浄水は、その上流側から前方に向かって流れ、第1屈曲導水路によって後方に向かって流れる。その後、第1屈曲導水路を通過した洗浄水は、第2屈曲導水路の屈曲部において斜め後方に方向転換された後、第2リム吐水口の拡散部を通過する。
このとき、第1屈曲導水路から第2屈曲導水路へ後方に流れた洗浄水が第2屈曲導水路の屈曲部で斜め後方に方向転換された際に洗浄水の流速を低下させることができる。これにより、第2リム吐水口の拡散部を通過して第2リム吐水口から第2リム吐水が吐水された際には、この第2リム吐水が第2リム吐水口から斜め後方に放射状に拡散し易くなるため、幅広で膜状の第2リム吐水を形成することができる。
これらによって、第1リム吐水に比べて幅広で膜状の第2リム吐水を高速で大流量の第1リム吐水の旋回流の旋回方向に対して横断させることができるため、第2リム吐水を第1リム吐水に効果的に干渉させることができる。
また、第2リム吐水口から吐水された第2リム吐水がリム部における第2リム吐水口の前後近傍のリム壁面に引き寄せられる現象(いわゆる、コアンダ現象)についても効果的に抑制することができる。よって、第2リム吐水が、第1リム吐水の旋回流と共に同一の旋回方向に流れて、ボウル部の後方領域において、合流後の洗浄水のすべてが一切落下することなく、単純に旋回してしまうことを効果的に抑制することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、上記拡散部は、上記第2屈曲導水路の屈曲部よりも下流側に形成される下流側導水路であり、この下流側導水路の幅は、上記第2屈曲導水路における上記屈曲部よりも上流側の導水路の幅よりも大きく設定されている。
このように構成された本発明においては、拡散部が、第2屈曲導水路の屈曲部よりも下流側に形成される下流側導水路であり、この下流側導水路の幅について、第2屈曲導水路における屈曲部よりも上流側の導水路の幅よりも大きく、幅広に設定することができる。
これにより、第1屈曲導水路から第2屈曲導水路へ後方に流れた洗浄水について、第2屈曲導水路の屈曲部で斜め後方に方向転換させた後、第2屈曲導水路の下流側導水路を通過させることにより、第2リム吐水口から斜め後方に吐水された第2リム吐水を効果的に放射状に拡散させて、幅広で膜状にすることができる。
これにより、高速で大流量の第1リム吐水の旋回流と斜め後方に吐水された第2リム吐水の幅広で膜状の水流とを合流させて適度に干渉させつつ、ボウル部の後方領域の左右方向及び前後方向の全体に亘ってより効果的に導くことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水洗大便器によれば、汚物が付着し易いボウル部の後方領域に対して高速で大流量の洗浄水を効率良く供給することができ、ボウル部の後方領域の広範囲の洗浄力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態による水洗大便器の概略平面図である。
図2図1のII-II線に沿った断面図である。
図3図1のIII-III線に沿った断面図である。
図4図1のIV-IV線に沿った断面図である。
図5図1に示す本発明の一実施形態による水洗大便器の便器本体における第2リム導水路及び第2リム吐水口を含むボウル部の部分を拡大した部分拡大平面図である。
図6図3に示す本発明の一実施形態による水洗大便器の便器本体における第2リム吐水口の部分を拡大した部分拡大図である。
図7A】本発明の一実施形態による水洗大便器のボウル部内における第1リム吐水の旋回流が第2リム吐水の水流に合流する前の状態の洗浄水の流れを概略的に説明した概略平面図である。
図7B】本発明の一実施形態による水洗大便器のボウル部内における第1リム吐水の旋回流が第2リム吐水の水流に合流した後の状態の洗浄水の流れを概略的に説明した概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
つぎに、図1図7Bを参照して、本発明の一実施形態による水洗大便器について説明する。
まず、図1は、本発明の一実施形態による水洗大便器の概略平面図である。
図1に示すように、本発明の一実施形態による水洗大便器1は、陶器製の便器本体2を備えている。この便器本体2は、上流側から下流側に向かって、導水路4と、ボウル形状のボウル部6と、排水トラップ管路8とを備えている。
なお、便器本体2については、陶器製以外の樹脂製等であってもよい。
【0015】
つぎに、図1に示す本実施形態の水洗大便器1の便器本体2の上面においては、便座(図示せず)及び便蓋(図示せず)等が設けられているが、従来の水洗大便器の構造と同様であるため、具体的な説明については省略する。
また、便器本体2の上面においては、便座(図示せず)及び便蓋(図示せず)の後方側には、使用者の局部を洗浄する衛生洗浄部(図示せず)や便器本体2への給水機能に関与する給水系機能部等の機能部(図示せず)も設けられていてもよいが、これらについても、従来の水洗大便器の構造と同様であるため、具体的な説明については省略する。
【0016】
つぎに、図1に示すように、本発明の一実施形態による水洗大便器1は、便器洗浄に使用される洗浄水を貯水して便器本体2へ給水する洗浄水源である重力給水式の貯水タンク10を備えており、便器本体2のボウル部6内の水の落差による流水作用で汚物を押し流す、いわゆる、「洗い落とし式の水洗大便器」である。
なお、本実施形態では、便器本体2へ洗浄水を供給する洗浄水源としては、上述した重力給水式の貯水タンク10のようなタンク式の形態に限定されず、他の形態でも適用可能である。すなわち、便器本体2へ洗浄水を供給する洗浄水源として、水道水の給水圧を直接利用した水道直圧式の形態やフラッシュバルブ式の形態であってもよいし、或いは、ポンプの補圧を利用して洗浄水を供給する形態であってもよい。
【0017】
つぎに、図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。また、図3は、図1のIII-III線に沿った断面図である。さらに、図4は、図1のIV-IV線に沿った断面図である。
なお、図2図4に示す本実施形態の水洗大便器1においては、便器本体2の外形部分や貯水タンク10については省略しており、詳細は後述する便器本体2のボウル部6、導水路4、及び、排水トラップ管路8等の便器本体2の主要部分のみを図示している。
【0018】
ここで、図1に示す本発明の一実施形態による水洗大便器1においては、便器本体2のボウル部6の平面視において、ボウル部6を前後方向に二等分するように水平左右方向に延びる中心軸線を「X」で示し、ボウル部6を左右方向に二等分するように水平前後方向に延びる中心軸線を「Y」で示している。
また、図1では、中心軸線X,Yの互いの交点を平面視のボウル部6の中心Oとし、この中心Oを通る鉛直方向に延びる中心軸線を「Z」で示している。
これらにより、図2及び図3に示す本発明の一実施形態による水洗大便器1においては、便器本体2のボウル部6の側面視において、ボウル部6を前後方向に二等分するように鉛直方向に延びる中心軸線を「Z」で示している。
さらに、図1図3に示すように、水洗大便器1の前後左右の方向については、「前」、「後」、「左」、「右」でそれぞれ示している。
【0019】
つぎに、図1図4に示すように、便器本体2の上流側に位置する導水路4は、ボウル部6の後方側に形成され、貯水タンク10から供給された洗浄水をボウル部6に導くようになっている。
また、図1図4に示すように、便器本体2の導水路4の下流側に位置するボウル部6は、下方から上方に向かって、壺部12、汚物受け面14、棚部16、及び、リム部18を備えている。
【0020】
まず、図1図4に示すように、ボウル部6の壺部12は、ボウル部6の下方に設けられており、その内部に溜水W0を貯留し、封水(封水面WL)を形成している。
また、図1図4に示すように、壺部12は、底壁12aと、この底壁12aの左右側方に設けられた側壁(左側壁12b及び右側壁12c)と、底壁12aの後方に設けられた後壁12dとを備えている。
さらに、図1に示すように、壺部12の両側の側壁12b,12cの前方側は、平面視において、後方から前方に向かう程、互いに近接する先細り形状となっており、壺部12の前端が先端部Tとなっている。
【0021】
ここで、図1図3に示すように、本実施形態の水洗大便器1においては、ボウル部6内の領域について、壺部12の両側壁12b,12cの上縁且つ前端位置P1(先端部T)よりも前方側の領域を「ボウル部6の前方領域F」と定義する。また、このボウル部6の前方領域Fにおいて、ボウル部6の水平前後方向の中心軸線Yに対して左側領域L、右側領域Rのそれぞれを「ボウル部6の左前方領域LF」、「ボウル部6の右前方領域RF」と定義する。
同様に、壺部12の上縁且つ後端位置P2よりも後方側の領域を「ボウル部6の後方領域B」と定義する。また、このボウル部6の後方領域Bにおいて、ボウル部6の水平前後方向の中心軸線Yに対して左側領域L、右側領域Rのそれぞれを「ボウル部6の左後方領域LB」、「ボウル部6の右後方領域RB」と定義する。
つぎに、図1図3に示すように、本実施形態の水洗大便器1においては、ボウル部6内の前方領域Fと後方領域Bとの間を「ボウル部6の中間領域M」と定義する。また、このボウル部6の中間領域Mにおいて、壺部12の左側壁12bの上縁よりも左側の領域を「ボウル部6の左側方領域LM」と定義し、壺部12の右側壁12cの上縁よりも右側の領域を「ボウル部6の右側方領域RM」と定義する。
【0022】
つぎに、図1図4に示すように、ボウル部6の汚物受け面14は、壺部12の上縁に接続される下縁から棚部16の棚面16a及びリム部18のリム内壁面18aと共に、ボウル状のボウル面を形成しており、汚物を受ける面となっている。
なお、図1図4では、壺部12と汚物受け面14との境界線(壺部12の上縁及び汚物受け面14の下縁)を「L1」としている。
また、ボウル部6のリム部18は、ボウル部6の上縁を形成しており、リム部18の内周面(リム内壁面18a)は、図1に示す平面視において、概ね卵形の形状に形成されている。
さらに、ボウル部6の棚部16は、汚物受け面14の外縁とリム部18の下端との間に形成されている。導水路4内の洗浄水は、詳細は後述する2つのリム吐水口(第1リム吐水口20及び第2リム吐水口22)のそれぞれに導かれるようになっている。これにより第1リム吐水口20及び第2リム吐水口22のそれぞれから第1リム吐水及び第2リム吐水のそれぞれが吐水されるようになっている。
なお、本発明においては、必ずしも棚部16を設ける必要はなく、第1リム吐水口20及び第2リム吐水口22のそれぞれから第1リム吐水及び第2リム吐水のそれぞれが汚物受け面14の上縁部に吐水されても良い。
【0023】
つぎに、図1図4に示すように、導水路4は、共通導水路24と、第1リム導水路26と、第2リム導水路28とを備えている。
まず、共通導水路24は、貯水タンク10に接続される後方の入口4aから前方のボウル部6の背面側近傍まで延びるようにボウル部6の後方側の便器本体2の内部に形成されている。
【0024】
つぎに、図1図2及び図4に示すように、第1リム吐水口20は、ボウル部6内の左前方領域LFのリム部18に設けられており、壺部12の前端位置P1よりも前方に配置されている。
また、図1図2及び図4に示すように、第1リム導水路26は、ボウル部6の背面側近傍で共通導水路24からボウル部6の左側に分岐した後、ボウル部6の外周面を迂回しながら前方の第1リム吐水口20まで延びるようにリム部18の内部に形成されている。
これにより、共通導水路24から第1リム導水路26に供給された洗浄水は、第1リム吐水口20から前方の棚部16に第1リム吐水として吐水された後、ボウル部6内の左前方領域LFから右前方領域RFを経て右側方領域RMへと旋回する旋回流を形成するようになっている。
【0025】
一方、図1図3及び図4に示すように、第2リム吐水口22は、ボウル部6内の右側方領域RMのリム部18に設けられており、壺部12の前端位置P1よりも後方且つ後端位置P2よりも前方に配置されている。
また、第2リム吐水口22は、壺部12の前後方向の中央(図1に示す壺部12の前後後方向の中心O1)よりも後方に配置されている。
さらに、図1図2及び図4に示すように、第2リム導水路28は、詳細については後述するが、ボウル部6の背面側近傍で共通導水路24からボウル部6の右側に分岐した後、ボウル部6の外周面を迂回しながら前方のボウル部6の右側方領域RMのリム部18まで延びるように形成されている。
その後、第2リム導水路28は、ボウル部6の右側方領域RMのリム部18の内部において、後方側にUターンして後方に延びた後、第2リム吐水口22に向けて斜め後方に屈曲して第2リム吐水口22まで延びるように形成されている。
【0026】
つぎに、図1図4に示すように、便器本体2の下流側に位置する排水トラップ管路8は、ボウル部6の下方から後方に形成され、ボウル部6内の汚物を排出する排水路(排水トラップ部)である。
また、排水トラップ管路8の入口8aは、ボウル部6の壺部12の下方(底壁12a)の排水口hに接続されている。そして、排水トラップ管路8は、その入口8aから下方且つ後方に下降する下降路8bと、この下降路8bの下流端から上方且つ後方に上昇する上昇路8cと、を備えている。
【0027】
つぎに、図1及び図3図6を参照して、本実施形態の水洗大便器1における第2リム導水路28及び第2リム吐水口22の詳細について説明する。
まず、図5は、図1に示す本発明の一実施形態による水洗大便器の便器本体における第2リム導水路及び第2リム吐水口を含むボウル部の部分を拡大した部分拡大平面図である。また、図6は、図3に示す本発明の一実施形態による水洗大便器の便器本体における第2リム吐水口の部分を拡大した部分拡大図である。
図5に示すように、第2リム導水路28は、その入口28aから下流側に向かって、外側導水路30と、第1屈曲導水路32と、第2屈曲導水路34と、を備えている。
【0028】
図5に示すように、第2リム導水路28の外側導水路30は、その入口28aが後方側(上流側)の共通導水路24に接続され、ボウル部6の外周面を迂回しながら前方のボウル部6の右側方領域RMのリム部18内に形成されている。
つぎに、図5に示すように、第2リム導水路28の第1屈曲導水路32は、外側導水路30の前端(下流端)E1から前方に延びた後、屈曲部B1において、後方に向って屈曲するように形成されている。すなわち、第1屈曲導水路32の屈曲部B1は、図5の平面視においてU字形形状にターンする部分となっている。これにより、上流側の外側導水路30から前方に向かって第1屈曲導水路32に流れ込んだ洗浄水は、第1屈曲導水路32を通過することにより、後方に方向転換されるようになっている。
また、図5に示すように、第2リム導水路28の第2屈曲導水路34は、第1屈曲導水路32の下流側後方に設けられている。この第2屈曲導水路34は、第1屈曲導水路32の下流端E2から後方の屈曲部B2まで延びる上流側導水路34aと、屈曲部B2により斜め後方のボウル部6の右後方領域RBに向って屈曲した後、第2リム吐水口22まで延びる下流側導水路34bと、を備えている。
これにより、第1屈曲導水路32の下流端E2から後方に向って第2屈曲導水路34の上流側導水路34aに流れ込んだ洗浄水は、第2屈曲導水路34の屈曲部B2を通過することにより、ボウル部6の右後方領域RBに向って斜め後方に方向転換されるようになっている。そして、下流側導水路34bを通過した洗浄水が、第2リム吐水口22から第2リム吐水として吐水されるようになっている。
【0029】
ここで、図1及び図5に示すように、第2リム導水路28の入口28aから第2リム吐水口22までの経路長さは、第1リム導水路26の入口26aから第1リム吐水口20までの経路長さよりも短い長さに設定されている。
また、第2リム導水路28の入口28aから第2リム吐水口22までの経路における平均流路断面積は、第1リム導水路26の入口26aから第1リム吐水口20までの経路における平均流路断面積よりも小さく設定されている。
これらにより、第2リム吐水口22から吐水される第2リム吐水の吐水量V2[L]及び流量Q2(瞬間流量)[L/min]のそれぞれは、第1リム吐水口20から吐水される第1リム吐水の吐水量V1[L]及び流量Q1(瞬間流量)[L/min]のそれぞれよりも小さく設定されるようになっている(V2<V1、Q2<Q1)。
ちなみに、本実施形態の水洗大便器1において、例えば、貯水タンク10から共通導水路24に供給される洗浄水Wの総吐水量V[L]を100%とすると、共通導水路24から第1リム導水路26に供給される第1リム吐水W1の吐水量V1[L]は、総吐水量V[L]の70%~80%に設定されることが好ましく、共通導水路24から第2リム導水路28に供給される第2リム吐水W2の吐水量V2[L]は、総吐水量V0[L]の20%~30%に設定されることが好ましい。
【0030】
図5に示すように、第2リム吐水口22は、第2リム吐水W2の水流f2を第1リム吐水W1の旋回流f1よりも幅広で膜状に拡散させる拡散部Dを備えている。
この拡散部Dは、第2リム吐水W2の水流f2の一部がボウル部6の右後方領域RBを経由して壺部12に落下する内側水流f2aの形成を促進する落流促進部としても機能するようになっている。
また、拡散部Dは、第1リム吐水口20から吐水された第1リム吐水W1の旋回流f1と第2リム吐水口22から吐水された第2リム吐水W2の水流f2とが合流して干渉した後のボウル部6の後方領域Bの洗浄水W3の旋回性を維持する旋回維持部としても機能するようになっている。これにより、ボウル部6の後方領域Bの合流後の洗浄水W3は、ボウル部6の左側方領域LMへ旋回した後、第1リム吐水口20付近のボウル部6の左前方領域LFまで旋回可能となっている。
ここで、第2リム吐水口22の拡散部Dの具体的な構造としては、図5に示す平面視において、第2屈曲導水路34の下流側導水路34b及び第2リム吐水口22の流路中心軸線C1の方向が、リム部18における第2リム吐水口22の後端近傍のリム内壁面18aの接平面T1に対して所定角度α1(0°<α1<90°)を成すように設けられている。
なお、図5に示す平面視における流路中心軸線C1と接平面T1とが成す所定角度α1については、10度~25度に設定されていることが好ましく、15度~20度に設定されていることが最も好ましい。上述した構成により、第2リム吐水口22からの第2リム吐水W2は、第1リム吐水口30からの旋回流f1の旋回方向に対して10~25度、より好ましくは15から20度の角度で斜めに横断して合流するようになっている。
【0031】
すなわち、図5に示すように、上述した第2リム吐水口22の拡散部Dにより、第2リム吐水口22の開口端面A1は、ボウル部6の右後方領域RBに向けて斜め後方に差し向けられている。
これにより、第2リム吐水口22から予めボウル部6の右後方領域RBに吐水された第2リム吐水W2の水流f2の一部が、壺部12内に後方側から流下することができ、第2リム吐水W2の水流f2の残部が、ボウル部6の右後方領域RBから左後方領域LBまで左右方向を横断することができるようになっている。
一方、図1及び図5に示すように、第1リム吐水口20から前方に吐水された第1リム吐水W1は、ボウル部6内の左前方領域LFから右前方領域RFを経て右側方領域RMに旋回して第2リム吐水口22付近に到達すると、予めボウル部6の右後方領域RBに向けて吐水されて第1リム吐水W1の旋回方向に対して横断している第2リム吐水W2の水流f2に合流して干渉することができるようになっている。
【0032】
つぎに、図5に示すように、第2リム吐水口22の拡散部Dとしては、第2屈曲導水路34の下流側導水路34bの流路幅d2が第2屈曲導水路34の上流側導水路34aの流路幅d1よりも大きく設定されている。
これにより、第1屈曲導水路32から第2屈曲導水路34へ後方に流れた洗浄水について、第2屈曲導水路34の屈曲部B2で斜め後方に方向転換させた後、第2屈曲導水路の下流側導水路34bを通過させることにより、第2リム吐水口22から斜め後方に吐水された第2リム吐水W2を効果的に放射状に拡散させて、幅広で膜状にすることができるようになっている。
【0033】
つぎに、図3図6に示すように、ボウル部6の右後方領域RBの汚物受け面14において、第2リム吐水口22から斜め後方に向って形成される傾斜面S1が後方側程上昇傾斜している。
また、図3図6に示すように、ボウル部6の右後方領域RBにおいて、第2リム吐水口22の底面22aからボウル部6の周方向後方側に形成される汚物受け面14の上縁14a及び棚部16の棚面16aが前方側からリム内壁面18aの後端(リム内壁面後端18b)に向かって上昇傾斜している。
【0034】
さらに、図5及び図6に示すように、第2リム吐水口22は、リム部18のリム内壁面後端18bから周方向の前方上流側の所定リム内壁面18cに配置されている。この所定リム内壁面18cの平面視の曲率半径ρ1は、リム内壁面後端18bの平面視の曲率半径ρ2よりも大きく設定されている(ρ1>ρ2)。
【0035】
つぎに、図1図7Bを参照して、本発明の一実施形態による水洗大便器1の作用について説明する。
図7Aは、本発明の一実施形態による水洗大便器のボウル部内における第1リム吐水の旋回流が第2リム吐水の水流に合流する前の状態の洗浄水の流れを概略的に説明した概略平面図である。
また、図7Bは、本発明の一実施形態による水洗大便器のボウル部内における第1リム吐水の旋回流が第2リム吐水の水流に合流した後の状態の洗浄水の流れを概略的に説明した概略平面図である。
まず、図1及び図7Aに示すように、便器洗浄が開始され、貯水タンク10内の洗浄水が便器本体2の導水路4の入口4aから共通導水路24に供給される。この共通導水路24内の洗浄水Wは、第1洗浄水W1及び第2洗浄水W2のそれぞれとして第1リム導水路26及び第2リム導水路28のそれぞれに分岐する。
【0036】
図1及び図7Aに示すように、第1リム導水路26の第1洗浄水W1は、下流側の第1リム吐水口20から前方に第1リム吐水W1として吐水される。この第1リム吐水W1は、ボウル部6内の左前方領域LFから右前方領域RFを経て右側方領域RMへと旋回する旋回流f1を形成する。
一方、図1図5及び図7Aに示すように、第2リム導水路28の第2洗浄水W2は、外側導水路30から前方の第1屈曲導水路32に流れ込み、この第1屈曲導水路32の屈曲部B1を通過することにより後方に方向転換して流れる。
その後、第1屈曲導水路32を通過した第2洗浄水W2は、その後方の第2屈曲導水路34の上流側導水路34aに流れ込み、この第2屈曲導水路34の屈曲部B2において斜め後方の下流側導水路34bに方向転換された後、第2リム吐水口22の拡散部Dである下流側導水路34bを通過する。
そして、第2洗浄水W2は、第2リム吐水口22から第2リム吐水W2として吐水される。この第2リム吐水W2は、ボウル部6内の右後方領域RBに向けて拡散され、第1リム吐水W1の旋回流f1よりも幅広で膜状の水流f2を形成する。
ここで、第2リム導水路28が第1リム導水路26の経路長さよりも短い経路長さに設定されているため、第1リム吐水W1の旋回流f1がボウル部6の右後方領域RBにおける第2リム吐水W2の水流f2と合流して干渉する領域に到達する前に、予め第2リム吐水口22から第2リム吐水W2が早いタイミングで行われる。
【0037】
また、図5及び図7Aに示すように、第2リム吐水口22からの吐水開始直後の第2リム吐水W2の水流f2においては、平面視において上流側から下流側に向って概ね扇形形状に広がるような幅広で膜状の形状となっている。
さらに、このような吐水開始直後の第2リム吐水W2の水流f2は、概ね内側水流f2aと外側水流f2bとの間の範囲で幅広で膜状の水流を形成する。
図5及び図7Aに示すように、第2リム吐水W2aの内側水流f2aは、第2リム吐水口22からボウル部6の後方領域Bに向けた第1方向の第2リム吐水W2aの水流である。
一方、第2リム吐水W2の外側水流f2bは、第1リム吐水W1の旋回流f1の旋回方向と同一の第2方向の第2リム吐水W2bの水流である。
また、第2リム吐水W2aの内側水流f2aは、その流量(第1流量Q2a[L/min])が外側水流f2bの流量(第2流量Q2b[L/min])よりも大きい状態(Q2a>Q2b)となる。
【0038】
つぎに、図1図5及び図7Bに示すように、第1リム吐水口20から吐水された第1リム吐水W1の旋回流f1が、ボウル部6内の左前方領域LFから右前方領域RFを経て右側方領域RMに旋回して第2リム吐水口22付近に到達すると、予めボウル部6の右後方領域RBに向けて吐水されて第1リム吐水W1の旋回方向に対して横断している第2リム吐水W2の水流f2に合流して干渉する。
これにより、図7Bに示すように、第1リム吐水W1と第2リム吐水W2との合流後の洗浄水W3は、壺部12よりも後方側のボウル部6の右後方領域RBに導かれ、この洗浄水W3の一部の水流f3が壺部12内に後方側から流下する。
また、図7Bに示すように、ボウル部6の右後方領域RBに導かれた合流後の洗浄水W3の一部の水流f4は、ボウル部6の左後方領域LRから左側方領域LMに旋回した後、壺部12内に左側方から流れ込む。
一方、図7Bに示すように、ボウル部6の右後方領域RBの合流後の洗浄水W3の残部の水流f5は、ボウル部6の左後方領域LBから左側方領域LMを経て前方領域Fまで旋回する。
そして、図7Bに示すように、このボウル部6の前方領域Fの水流f5は、ボウル部6の前方領域Fで第1リム吐水W1の旋回流f1から早々と分岐して流下している水流と合流することにより水流f6となり、この水流f6が壺部12内に前方側から流れ込む。
これらにより、汚物が付着し易いボウル部6の後方領域Bの汚物受け面やリム部18が合流後の洗浄水W3により広範囲に洗浄されると共に、ボウル部6内で洗浄された汚物が壺部12から排水トラップ管路8へと排出される。
【0039】
上述した本発明の一実施形態による水洗大便器1によれば、第1リム吐水口20がボウル部6の壺部12の前端Tよりも前方に配置されている。
これにより、高速で大流量の第1リム吐水W1の旋回流f1をボウル部6の後方領域Bの壺部12よりも後方側の汚物受け面14やリム部18に効率良く導くことができる。
また、第2リム吐水口22により、第1リム吐水口20から吐水された第1リム吐水W1の旋回流f1の旋回方向に対して横断させるように第2リム吐水W2を行うことができる。よって、高速で大流量Q1[L/min]の第1リム吐水W1の旋回流f1を第2リム吐水W2の水流f2に合流させて効率良く干渉させることができる。
これにより、第1リム吐水口20がボウル部6の壺部12の前端Tよりも前方に配置される程、第1リム吐水W1の旋回流f1がボウル部6の後方領域Bにより高速で大流量の状態で導かれたとしても、第2リム吐水W2と干渉した後の第1リム吐水W1の旋回流f1がボウル部6の後方領域Bで落下し難くなることを抑制することができる。
したがって、ボウル部6の壺部12よりも後方領域Bの汚物受け面14やリム部18を洗浄する第1リム吐水W1や第2リム吐水W2の洗浄力を向上させることができる。
さらに、第2リム吐水口22の拡散部Dにより、第2リム吐水口22から吐水される第2リム吐水W2を放射状に拡散させることができるため、第2リム吐水W2を第1リム吐水W1の旋回流f1よりも幅広で膜状にすることができる。これにより、高速で大流量の第1リム吐水W1の旋回流f1と幅広で膜状の第2リム吐水W2とを干渉させつつ、ボウル部6の後方領域Bに導くことができる。
よって、汚物が付着し易いボウル部6の後方領域Bに対して、高速で大流量の第1リム吐水W1を第2リム吐水W2に干渉させた状態で効率良く供給することができるため、ボウル部6の後方領域Bの広範囲の洗浄力を向上させることができる。
【0040】
つぎに、本実施形態による水洗大便器1によれば、第2リム吐水口22の拡散部Dにより、第2リム吐水口22から吐水された幅広で膜状の第2リム吐水W2について、高速で大流量の第1リム吐水W1の旋回流f1と干渉させつつ、ボウル部6の後方領域Bの左右方向に横断させるように導くことができる。
したがって、高速大流量の第1リム吐水W1の旋回流f1と第2リム吐水W2の幅広で膜状の水流f2とによりボウル部6の後方領域Bの全体に亘って広範囲に洗浄することができる。
【0041】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、第2リム吐水口22の拡散部Dにより、第2リム吐水口22から吐水された第2リム吐水W2を第1リム吐水W1の旋回流f1と共にボウル部6の後方領域Bに導くことにより、汚物が付着し易いボウル部6の後方領域Bを確実に洗浄することができる。
加えて、第2リム吐水W2の少なくとも一部をボウル部6の後方領域Bの左右方向を横断させた後、ボウル部6の後方領域Bのリム部18のリム内壁面18aに沿って第1リム吐水口20側に旋回させることもできる。これにより、ボウル部6の後方領域Bから少なくとも壺部12の前端Tよりも前方の第1リム吐水口20までの領域についても洗浄性を確保することができる。
したがって、第1リム吐水W1と第2リム吐水W2とを有効活用することにより、ボウル部6の後方領域Bの洗浄力を向上させることができると共に、汚物が残存し易いボウル部6の左後方領域LBからその前方の左側方領域LMについても十分に洗浄することができるため、ボウル部6の全体に亘って洗浄性を確保することができる。
【0042】
さらに、上述した本実施形態の水洗大便器1によれば、第2リム吐水口22の拡散部Dの流路中心軸線(第2屈曲導水路34の下流側導水路34b及び第2リム吐水口22の流路中心軸線C1)の方向が、リム部18における第2リム吐水口22の後端近傍のリム内壁面18aの接平面T1に対して角度α1を成している。これにより、第2リム吐水口22から斜め後方のボウル部6の右後方領域RBに向けて第2リム吐水W2を吐水することができる。
また、この吐水された第2リム吐水W2について、第1リム吐水W1の旋回流f1の旋回方向に対して効果的に横断させるように放射状に拡散させて、幅広で膜状の水流f2を形成することができる。
さらに、第2リム吐水W2がリム部18における第2リム吐水口22の前後近傍のリム内壁面18aに引き寄せられる現象(いわゆる、コアンダ現象)を抑制することができる。よって、第2リム吐水W2が、第1リム吐水W1の旋回流f1と共に同一の旋回方向に流れて、ボウル部6の後方領域Bにおいて、合流後の洗浄水W3のすべてが一切落下することなく、単純に旋回してしまうことを抑制することができる。
これらにより、高速で大流量の第1リム吐水W1の旋回流f1と斜め後方に吐水された幅広で膜状の第2リム吐水W2とを合流させて適度に干渉させつつ、ボウル部6の後方領域Bの左右方向及び前後方向の全体に亘って効果的に導くことができる。
【0043】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、洗浄水源である貯水タンク10から共通導水路24に供給された洗浄水Wは、第1リム導水路26に供給される第1洗浄水W1と、第2リム導水路28に供給される第2洗浄水W2とに分岐する。
そして、第2リム導水路28に供給された第2洗浄水W2は、外側導水路30から前方の第1屈曲導水路32に流れ込み、この第1屈曲導水路32の屈曲部B1を通過することにより後方に方向転換して流れる。
その後、第1屈曲導水路32を通過した第2洗浄水W2は、その後方の第2屈曲導水路34の上流側導水路34aに流れ込み、この第2屈曲導水路34の屈曲部B2において斜め後方の下流側導水路34bに方向転換された後、第2リム吐水口22の拡散部Dである下流側導水路34bを通過する。
このとき、第1屈曲導水路32の屈曲部B1から第2屈曲導水路34の上流側導水路34aへ後方に流れた第2洗浄水W2は、第2屈曲導水路34の屈曲部B2で斜め後方に方向転換された際に、第2洗浄水W2の流速を低下させることができる。
これにより、第2リム吐水口22の拡散部Dである下流側導水路34bを通過して第2リム吐水口22から第2リム吐水W2が吐水された際には、この第2リム吐水W2が第2リム吐水口22から斜め後方に放射状に拡散し易くなるため、第2リム吐水W2の幅広で膜状の水流f2を形成することができる。
これらによって、第1リム吐水W1に比べて幅広で膜状の第2リム吐水W2を高速で大流量の第1リム吐水W1の旋回流f1の旋回方向に対して横断させることができるため、第1リム吐水W1と第2リム吐水W2とを効果的に干渉させることができる。
また、第2リム吐水口22から吐水された第2リム吐水W2がリム部18における第2リム吐水口22の前後近傍のリム壁面に引き寄せられる現象(いわゆる、コアンダ現象)についても効果的に抑制することができる。
よって、第2リム吐水W2が、第1リム吐水W1の旋回流f1と共に同一の旋回方向に流れて、ボウル部6の後方領域Bにおいて、合流後の洗浄水W3のすべてが一切落下することなく、単純に旋回してしまうことを効果的に抑制することができる。
【0044】
さらに、本実施形態による水洗大便器1によれば、拡散部Dが、第2屈曲導水路34の屈曲部B2よりも下流側に形成される下流側導水路34bであり、この下流側導水路34bの幅について、第2屈曲導水路34における屈曲部B2よりも上流側の導水路の幅よりも大きく、幅広に設定することができる。
これにより、第1屈曲導水路から第2屈曲導水路34へ後方に流れた洗浄水W2について、第2屈曲導水路34の屈曲部B2で斜め後方に方向転換させた後、第2屈曲導水路34の下流側導水路34bを通過させることにより、第2リム吐水口22から斜め後方に吐水された第2リム吐水を効果的に放射状に拡散させて、幅広で膜状にすることができる。
したがって、ボウル部6の右後方領域RBにおいて高速で大流量の第1リム吐水W1の旋回流f1と斜め後方に吐水された第2リム吐水W2の幅広で膜状の水流f2とを合流させて適度に干渉させつつ、ボウル部6の後方領域Bの左右方向及び前後方向の全体に亘ってより効果的に洗浄水を導くことができる。
【符号の説明】
【0045】
1 水洗大便器
2 便器本体
4 導水路
4a 導水路の入口
6 ボウル部
8 排水トラップ管路(排水トラップ部)
8a 排水トラップ管路の入口
8b 排水トラップ管路の下降路
8c 排水トラップ管路の上昇路
10 貯水タンク(洗浄水源)
12 壺部
12a 壺部の底壁
12b 壺部の左側壁
12c 壺部の右側壁
12d 壺部の後壁
14 汚物受け面
14a 汚物受け面の上縁
16 棚部
16a 棚面
18 リム部
18a リム内壁面(リム壁面)
18b リム内壁面後端
18c 所定のリム内壁面(所定のリム壁面)
20 第1リム吐水口(第1リム吐水部)
22 第2リム吐水口(第2リム吐水部)
22a 第2リム吐水口の底面
24 共通導水路
26 第1リム導水路
28 第2リム導水路
28a 第2リム導水路の入口
30 第2リム導水路の外側導水路
32 第2リム導水路の第1屈曲導水路
34 第2リム導水路の第2屈曲導水路
34a 第2屈曲導水路の上流側導水路
34b 第2屈曲導水路の下流側導水路
A1 第2リム吐水口の開口端面
B ボウル部の後方領域
B1 第1屈曲導水路の屈曲部
B2 第2屈曲導水路の屈曲部
C1 第2リム吐水口及び第2屈曲導水路の下流側導水路の流路中心軸線
D 拡散部(落流促進部、旋回維持部)
d1 第2屈曲導水路の上流側導水路の流路幅
d2 第2屈曲導水路の下流側導水路の流路幅
E1 外側導水路の前端(下流端)、第1屈曲導水路の上流端
E2 第1屈曲導水路の下流端
F ボウル部の前方領域
f1 第1リム吐水の旋回流
f2 第2リム吐水の水流
f2a 第2リム吐水の内側水流(第1方向の第2リム吐水の水流)
f2b 第2リム吐水の外側水流(第1方向の第2リム吐水の水流)
f3 第1リム吐水と第2リム吐水の合流後の洗浄水の一部の流れ
f4 第1リム吐水と第2リム吐水の合流後の洗浄水の一部の流れ
f5 第1リム吐水と第2リム吐水の合流後の洗浄水の一部の流れ
f6 第1リム吐水と第2リム吐水の合流後の洗浄水の一部の流れ
h 排水口
L ボウル部の左側領域
LB ボウル部の左後方領域
LF ボウル部の左前方領域
LM ボウル部の左側方領域
L1 壺部と汚物受け面との境界線、壺部の上縁、汚物受け面の下縁
M ボウル部の前方領域と後方領域との間の中間領域
O ボウル部の中心
O1 壺部の前後方向の中心
P1 壺部の上縁且つ前端位置
P2 壺部の上縁且つ後端位置
Q1 第1リム吐水の流量(瞬間流量)
Q2 第2リム吐水の流量(瞬間流量)
Q2a 第1方向の第2リム吐水の流量(瞬間流量)
Q2b 第2方向の第2リム吐水の流量(瞬間流量)
R ボウル部の右側領域
RB ボウル部の右後方領域
RF ボウル部の右前方領域
RM ボウル部の右側方領域
S1 傾斜面(ボウル部の右後方領域の汚物受け面における第2リム吐水口から斜め後方に向って形成される面)
T 壺部の先端部(壺部の前端)
T1 接平面
u1 流速
u2 流速
V1 吐水量
V2 吐水量
W 洗浄水
W0 溜水
W1 第1洗浄水、第1リム吐水
W2 第2洗浄水、第2リム吐水
W2a 第1方向の第2リム吐水
W2b 第2方向の第2リム吐水
W3 第1リム吐水と第2リム吐水との合流後の洗浄水
WL 溜水の水位(溜水面)
X ボウル部の水平左右方向の中心軸線
Y ボウル部の水平前後方向の中心軸線
Z ボウル部の中心を通る鉛直方向の中心軸線
α1 角度
ρ1 第2リム吐水口が配置されている所定のリム内壁面の平面視の曲率半径
ρ2 リム部のリム内壁面後端の平面視の曲率半径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B