(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】マイクロレンズアレイ、光書き込み装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G02B 3/00 20060101AFI20220906BHJP
G02B 13/24 20060101ALI20220906BHJP
B41J 2/447 20060101ALI20220906BHJP
B41J 2/45 20060101ALI20220906BHJP
G03G 15/04 20060101ALI20220906BHJP
H04N 1/036 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
G02B3/00 A
G02B3/00 Z
G02B13/24
B41J2/447 101C
B41J2/45
G03G15/04 111
H04N1/036
(21)【出願番号】P 2018092719
(22)【出願日】2018-05-14
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】植村 英生
(72)【発明者】
【氏名】大木 誠
(72)【発明者】
【氏名】池田 和樹
【審査官】中村 和正
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-245083(JP,A)
【文献】特開2016-225584(JP,A)
【文献】米国特許第05719706(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0052751(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 3/00
G02B 13/24
B41J 2/447
B41J 2/45
G03G 15/04
H04N 1/036
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板と、
前記ガラス基板の第1基板面上において、同一形状の複数の第1樹脂レンズを第1の方向に沿って列設した樹脂レンズ列が、前記第1の方向とは異なる第2の方向に複数列並設されるとともに、
前記ガラス基板の第2基板面上において、複数の第2樹脂レンズがそれぞれ前記第1樹脂レンズに対応する位置に配設されたレンズ光学系と、
前記第1樹脂レンズと一体成形され、当該第1樹脂レンズと前記ガラス基板との間に挟まれた第1樹脂層と、
前記第2樹脂レンズと一体成形され、当該第2樹脂レンズと前記ガラス基板との間に挟まれた第2樹脂層と、を備え、
前記複数の樹脂レンズ列に属する第1樹脂レンズは、レンズ形状域の大きさが前記第2の方向で異なり、樹脂体積が異なる第1樹脂レンズどうしで、第1樹脂レンズと第1樹脂層とを合わせた樹脂体積の差を小さくなるように、前記第1樹脂レンズのレンズ形状域が大きい樹脂レンズ列ほど、当該樹脂レンズ列に属する第1樹脂レンズと前記ガラス基板との間に介在する第1樹脂層が薄い
ことを特徴とするマイクロレンズアレイ。
【請求項2】
前記第1樹脂レンズは、その形状に関わらず、いずれもガラス基板の基板面から当該第1樹脂レンズの頂部までの高さが等しい
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロレンズアレイ。
【請求項3】
前記第1樹脂レンズは、その形状に関わらず、任意の2つの第1樹脂レンズどうしで、
各第1樹脂レンズの光軸を通過して第1樹脂層と接しているレンズ部界面からレンズ光学面頂点までの距離がそれぞれL1、L2であり、
各第1樹脂レンズのレンズ形状域がφ1、φ2であり、
各第1樹脂レンズが占有する第1樹脂層の面積がS1、S2であり、当該第1樹脂層の厚さがT1、T2であるときに、
以下の関係式を満足する
【数1】
ことを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロレンズアレイ。
【請求項4】
前記第1樹脂層は、前記ガラス基板の第1基板面に沿って複数の第1樹脂レンズに亘って連続的に設けられており、厚さが前記第2の方向に沿って連続的に変化している
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマイクロレンズアレイ。
【請求項5】
前記第1基板面上に配設された第1樹脂レンズ及び第1樹脂層の体積の総和が、前記第2基板面上に配設された第2樹脂レンズ及び第2樹脂層の体積の総和に等しい
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のマイクロレンズアレイ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のマイクロレンズアレイと、
平面視における前記第1樹脂レンズに対応する位置ごとに、複数の発光点からなる発光点群が配設された光源基板と、を備え、
前記発光点群から当該発光点群に対応する前記第1樹脂レンズまでの距離は、当該第1樹脂レンズの形状ごとに異なっている
ことを特徴とする光書き込み装置。
【請求項7】
前記光源基板は、複数の単位基板からなっており、
形状が互いに異なる第1樹脂レンズに対応する発光点群どうしは、互いに異なる単位基板に配設される
ことを特徴とする請求項6に記載の光書き込み装置。
【請求項8】
前記発光点はOLEDである
ことを特徴とする請求項6または7に記載の光書き込み装置。
【請求項9】
請求項6から8のいずれかに記載の光書き込み装置を備える
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロレンズアレイ、光書き込み装置及び画像形成装置に関し、特に、マイクロレンズアレイの歪みに起因する画像劣化を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置においては、感光体上に静電潜像を形成する光書き込み装置としてライン光学型の光書き込み装置を用いたものがある。ライン光学型の光書き込み装置は、マイクロレンズアレイを用いて多数の発光素子の出射光を感光体上に結像させる。
【0003】
このマイクロレンズアレイは、例えば、ガラス基板上に多数の樹脂レンズを形成したものである。樹脂レンズは硬化する際に収縮するため、この収縮によってガラス基板が反ると、樹脂レンズの位置が変化し得る。すると、感光体上での結像状態が変化するので、画像品質が劣化する恐れがある。
【0004】
このような問題に対して、例えば、ガラス基板の面外方向の反りについては、ガラス基板の両面に同一形状の樹脂レンズを形成する技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。このようにすれば、ガラス基板に作用する樹脂の収縮力がガラス基板の両面で同じになるので、反りを防止することができる。
【0005】
また、ガラス基板の面内方向の反りについては、樹脂レンズの個数が十分多い場合には、樹脂レンズの形状をランダムに変化させることによって、反りを抑制することができる(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-118423号公報
【文献】特開2005-148427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
マイクロレンズアレイの光軸方向からの平面視において、発光素子を周期的に2次元配列した光書き込み装置は、発光素子から感光体までの距離が発光素子どうしで異なっている場合がある。例えば、主走査方向に延設された発光素子列が副走査方向に複数並設されており、発光素子列どうしで発光素子から感光体までの距離が異なっている場合、当該発光素子列に対応させて、主走査方向に延設された樹脂レンズ列を副走査方向に発光素子列と同数並設すると、同じ樹脂レンズ列に属する樹脂レンズどうしは形状が同じになる一方、異なる樹脂レンズ列に属する樹脂レンズどうしは形状を異ならせる必要がある。
【0008】
このような場合には、すべての樹脂レンズを同一の形状にすることもできなければ、樹脂レンズの形状をランダムに変化させることもできないため、上記従来技術を適用するだけではガラス基板の反りを抑制することができない。
【0009】
ガラス基板において面内方向の反りが発生すると、樹脂レンズどうしの位置関係が変化することによって、発光素子と発光素子に対応する樹脂レンズの位置関係がばらつくので、樹脂レンズごとに結像性能がばらついてしまう。樹脂レンズの形状の変化に周期性があると、結像性能のばらつきによる濃度変化にも周期性が表れて視認し易くなるので、画像品質の低下を免れない。
【0010】
本発明は、上述のような問題に鑑みて為されたものであって、ガラス基板の歪みに起因する画像劣化を抑制することができるマイクロレンズアレイ、光書き込み装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係るマイクロレンズアレイは、ガラス基板と、前記ガラス基板の第1基板面上において、同一形状の複数の第1樹脂レンズを第1の方向に沿って列設した樹脂レンズ列が、前記第1の方向とは異なる第2の方向に複数列並設されるとともに前記ガラス基板の第2基板面上において、複数の第2樹脂レンズがそれぞれ前記第1樹脂レンズに対応する位置に配設されたレンズ光学系と、前記第1樹脂レンズと一体成形され、当該第1樹脂レンズと前記ガラス基板との間に挟まれた第1樹脂層と、前記第2樹脂レンズと一体成形され、当該第2樹脂レンズと前記ガラス基板との間に挟まれた第2樹脂層と、を備え、前記複数の樹脂レンズ列に属する第1樹脂レンズは、レンズ形状域の大きさが前記第2の方向で異なり、樹脂体積が異なる第1樹脂レンズどうしで、第1樹脂レンズと第1樹脂層とを合わせた樹脂体積の差を小さくなるように、前記第1樹脂レンズのレンズ形状域が大きい樹脂レンズ列ほど、当該樹脂レンズ列に属する第1樹脂レンズと前記ガラス基板との間に介在する第1樹脂層が薄いことを特徴とする。
【0012】
この場合において、前記第1樹脂レンズは、その形状に関わらず、いずれもガラス基板の基板面から当該第1樹脂レンズの頂部までの高さが等しいのが望ましい。
【0013】
更に、前記第1樹脂レンズは、その形状に関わらず、任意の2つの第1樹脂レンズどうしで、各第1樹脂レンズの光軸を通過して第1樹脂層と接しているレンズ部界面からレンズ光学面頂点までの距離がそれぞれL1、L2であり、各第1樹脂レンズのレンズ形状域がφ1、φ2であり、各第1樹脂レンズが占有する第1樹脂層の面積がS1、S2であり、当該第1樹脂層の厚さがT1、T2であるときに、以下の関係式を満足するが等しいのが望ましい。
【0014】
【数1】
また、前記
第1樹脂層は、前記ガラス基板の
第1基板面に沿って複数の
第1樹脂レンズに亘って連続的に設けられており、厚さが
前記第2の方向に沿って連続的に変化していてもよい。
【0015】
また、前記第1基板面上に配設された第1樹脂レンズ及び第1樹脂層の体積の総和が、前記第2基板面上に配設された第2樹脂レンズ及び第2樹脂層の体積の総和に等しくてもよい。
【0016】
また、本発明に係る光書き込み装置は、本発明に係るマイクロレンズアレイと、平面視における前記第1樹脂レンズに対応する位置ごとに、複数の発光点からなる発光点群が配設された光源基板と、を備え、前記発光点群から当該発光点群に対応する前記第1樹脂レンズまでの距離は、当該第1樹脂レンズの形状ごとに異なっていることを特徴とする。
【0017】
この場合において、前記光源基板は、複数の単位基板からなっており、形状が互いに異なる第1樹脂レンズに対応する発光点群どうしは、互いに異なる単位基板に配設されてもよい。
【0018】
また、前記発光点はOLEDであってもよい。
【0019】
また、本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る光書き込み装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
このようにすれば、樹脂レンズのレンズ形状域が大きい樹脂レンズ列ほど樹脂層が薄いので、ガラス基板の基板面上における樹脂体積の分布を均一化することによってマイクロレンズアレイの歪みを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の主要な構成を示す図である。
【
図2】光書き込み装置100の主要な構成を示す図である。
【
図3】光源基板230の主要な構成を示す図である。
【
図4】レンズアレイ200aを光源基板200側から見た平面図である。
【
図5】樹脂層262cを光軸方向から見た平面図である。
【
図6】レンズアレイ200aの寸法を説明する図である。
【
図7】レンズアレイ200aの寸法を例示する表である。
【
図8】本発明の変形例に係るマイクロレンズアレイの構成を示す図である。
【
図9】P方向とQ方向とが直交するマイクロレンズアレイを例示する平面図である。
【
図10】樹脂レンズをP方向に沿って列設した樹脂レンズ列が4列あるマイクロレンズアレイを例示する平面図である。
【
図11】(a)は樹脂レンズ並びに樹脂層の寸法を設計するための前提条件を例示する表であり、(b)は(a)に示す前提条件に適合した樹脂レンズ並びに樹脂層の寸法を例示する表である。
【
図12】(a)はコアブロックどうしで高さが同じである金型を例示する断面斜視図であり、(b)は樹脂層の厚さに合わせてコアブロックの高さを調整した金型を例示する断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るマイクロレンズアレイ、光書き込み装置及び画像形成装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
[1]画像形成装置の構成
まず、本実施の形態に係る画像形成装置の構成について説明する。
【0023】
図1に示すように、画像形成装置1は、所謂タンデム方式のカラープリンターである。画像形成装置1は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)各色のトナー像を形成する作像部110Y、110M、110C及び110Kを備えている。作像部110Y、110M、110C及び110Kは、それぞれ矢印A方向に回転する感光体ドラム101Y、101M、101C及び101Kを有している。
【0024】
感光体ドラム101Y、101M、101C及び101Kの周囲には、その外周面に沿って、矢印A方向に順に帯電装置102Y、102M、102C及び102K、光書き込み装置100Y、100M、100C及び100K、現像装置103Y、103M、103C及び103K、1次転写ローラー104Y、104M、104C及び104K及びクリーニング装置105Y、105M、105C及び105Kが配設されている。
【0025】
帯電装置102Y、102M、102C及び102Kは感光体ドラム101Y、101M、101C及び101Kの外周面を一様に帯電させる。光書き込み装置100Y、100M、100C及び100Kは、有機EL(Electro- Luminescence)を用いた所謂OLED-PH(Organic Light Emitting Diode - Print Head)であって、感光体ドラム101Y、101M、101C及び101Kの外周面を露光して静電潜像を形成する。
【0026】
有機ELは発光部に面積を有しているため、結像点におけるビーム径は発光面積×光学倍率で決まる点がLED等の他の発光方式と大きく異なる。OLED-PHでは、共役長が異なることで設計的に光学倍率を発光点毎に変えなくてはならない場合でも、光学倍率に合わせて発光面積・形状を最適化することでビーム径を均一化することができる。
【0027】
また、面積を有する発光部をアレイ状に配列すると、光源基板が大型化してしまう傾向があるが、本実施の形態においては後述のように光源基板を複数の単位基板に分割して配線等の回路部品の実装面積を稼ぐことによって、光軸方向からの平面視における光源基板の基板面積の小型化を図っている。
【0028】
現像装置103Y、103M、103C及び103KはYMCK各色のトナーを供給して静電潜像を顕像化し、YMCK各色のトナー像を形成する。1次転写ローラー104Y、104M、104C及び104Kは感光体ドラム101Y、101M、101C及び101Kが担持するトナー像を中間転写ベルト106へ静電転写する(1次転写)。
【0029】
クリーニング装置105Y、105M、105C及び105Kは、1次転写後に感光体ドラム101Y、101M、101C及び101Kの外周面上に残留する電荷を除電すると共に残留トナーを除去する。なお、以下において、作像部110Y、110M、110C及び110Kに共通する構成について説明する際にはYMCKの文字を省略する。
【0030】
中間転写ベルト106は、無端状のベルトであって、2次転写ローラー対107及び従動ローラー108、109に張架されており、矢印B方向に回転走行する。この回転走行に合わせて1次転写することによって、YMCK各色のトナー像が互いに重ね合わされカラートナー像が形成される。中間転写ベルト106はカラートナー像を担持した状態で回転走行することによって、カラートナー像を2次転写ローラー対107の2次転写ニップまで搬送する。
【0031】
2次転写ローラー対107を構成する2つのローラーは互いに圧接されることによって2次転写ニップを形成する。これらのローラー間には2次転写電圧が印加されている。中間転写ベルト106によるカラートナー像の搬送にタイミングを合わせて給紙トレイ120から記録シートSが供給されると、2次転写ニップにおいてカラートナー像が記録シートSに静電転写される(2次転写)。
【0032】
記録シートSは、カラートナー像を担持した状態で定着装置130まで搬送され、カラートナー像を熱定着された後、排紙トレイ140上へ排出される。
【0033】
画像形成装置1は、更に制御部150を備えている。制御部150は、PC(Personal Computer)等の外部装置から印刷ジョブを受け付けると、画像形成装置1の動作を制御して画像形成を実行させる。
[2]光書き込み装置100の構成
次に、光書き込み装置100の構成について説明する。
【0034】
光書き込み装置100は、
図2に示すように、マイクロレンズアレイ200と光源基板230とを備えており、マイクロレンズアレイ200と光源基板230は不図示のホルダーによって支持されている。
【0035】
光源基板230は、
図3に示すように、単位基板231、232および233を光軸方向に積層したものである。単位基板231、232および233にはそれぞれ発光点群241、242および243が主走査方向に沿って列設されており、発光点群列251、252および253を構成する。発光点群243は発光点303を千鳥状に配列したものであり、発光点群241、242もまた同様である。
【0036】
本実施の形態においては、発光点303としてOLED(Organic Light Emitting Diode)を用いる。OLEDは発光領域を面状に形成することができるため、OLEDの発光領域の面積と光学倍率との乗算値を設定することによって、当該OLEDに対応する結像点におけるビーム径を設定することができる。従って、共役長が異なることで設計的に光学倍率を発光点毎に変えなくてはならない場合でも、光学倍率に合わせてOLEDの発光領域の面積および形状を最適化すれば、結像点におけるビーム径を均一化することができるという利点がある。なお、発光点としてOLED以外の発光素子を用いてもよい。
【0037】
一般的には、発光点は全て同一平面内に配設されるが、発光基板における配線の制約、製造上の制約、発光基板を配置する際の空間的な制約等によって発光点は全て同一平面内に配設することが適わない場合には、本実施の形態のように、複数の平面に分けて発光点を配設するのが有効である。
【0038】
また、光源基板230が発光点群列251、252および253毎に単位基板231、232および233に分かれており、単位基板231、232および233は、感光体ドラム101からの距離がL1、L2およびL3になるように、不図示のホルダーによって個別に位置決めされている。距離L1、L2およびL3はいわゆる共役長である。
【0039】
このため、単位基板231、232および233は個別に共役長を調整することができる。例えば、マイクロレンズアレイ200や光源基板230の製造時に寸法などの誤差が発生した場合、光源基板230が複数の単位基板に分かれておらず、共役長が異なる発光点が同一基板上に実装されていると、共役長の水準毎に調整値が異なる条件下ではいずれかの航路における結像性能を犠牲にしなければならなくなる。
【0040】
一方、本実施の形態のように、共役長の水準毎に発光点をグループ化して、グループ毎に異なる単位基板に発光点を実装すれば、共役長の水準毎に調整値を個別に設定することができるので、他の水準の結像性能を犠牲にすることなく、各水準の結像性能を最適化することができる。このような構成は、単位基板が3枚である場合に限定されることなく、また、光路長さに相当する共役長だけでなく、光軸方向に直交する主走査方向や副走査方向への変位であるシフト成分や、光軸方向に対する基板面の傾き成分の誤差を調整する場合にも有効である。
【0041】
また、共役長だけでなく、シフト成分や傾き成分の誤差についても単位基板231、232および233毎に個別に修正することができる。従って、これらの誤差に起因する画質の劣化を抑制することができるので、高い画像品質を達成することができる。
【0042】
また、OLEDは発光点の面積が比較的大きくなることに加えて、多数のOLEDをアレイ状に配列することから、光源基板230を単一基板にすると大型化してしまう。一方、上記のように複数の単位基板231、232および233基板どうしで重なり合う箇所にOLED以外の配線等の回路を配設すれば、光軸方向から見た光源基板230の面積を小型化することができる。
[3]マイクロレンズアレイ200の構成
次に、マイクロレンズアレイ200の構成について説明する。
【0043】
マイクロレンズアレイ200は、
図2に示すように、レンズアレイ200a、200bを組み合わせたテレセントリック光学系である。レンズアレイ200aは、ガラス基板220の光源基板230に対向する基板面220aに樹脂レンズ211a、212aおよび213aが形成されている。樹脂レンズ211a、212aおよび213aは、ガラス基板220との間に樹脂層261a、262aおよび263aを挟んでいる。樹脂レンズ211a、212aおよび213aと、樹脂層261a、262aおよび263aとを一体成形すれば、成形の工程を削減することができるので低コスト化を図ることができる。
【0044】
また、ガラス基板220のレンズアレイ200bに対向する基板面220b上の樹脂レンズ211a、212aおよび213aに対応する位置には、樹脂レンズ211b、212bおよび213bが形成されている。樹脂レンズ212b、213bは、ガラス基板220との間に樹脂層262b、263bを挟んでいる。
【0045】
一方、樹脂レンズ211bは、樹脂レンズ212b、213b、211a、212aおよび213aよりも樹脂体積が大きい樹脂レンズであって、樹脂層を挟むことなく、ガラス基板220の基板面220b上に直接形成されている。このようにすれば、マイクロレンズアレイ200における樹脂体積を最小化することができるので、樹脂の収縮や膨張によってマイクロレンズアレイ200に加わる応力を最小化することができる。また、マイクロレンズアレイ200に用いる樹脂量を削減して低コスト化したり、マイクロレンズアレイ200を小型軽量化することができる
樹脂レンズ211a、211bは発光点群241の出射光を平行光にする。また、樹脂レンズ212a、212bは発光点群242の出射光を平行光にし、樹脂レンズ213a、213bは発光点群243の出射光を平行光にする。当該平行光はレンズアレイ200bによって感光体ドラム101の外周面上に結像させられる。レンズアレイ200bは、ガラス基板250の両面220aに樹脂レンズ251を形成したものである。
【0046】
単位基板231、232および233からガラス基板220までの距離は単位基板231、232および233毎に異なる一方、ガラス基板250から感光体ドラム101までの距離は樹脂レンズ251の如何に関わらず一定している。このため、樹脂レンズ251はすべて同一形状である。従って、樹脂レンズ251が収縮したり膨張したりしても、樹脂レンズどうしで収縮量や膨張量が等しいので、ガラス基板250は反らない。一方、ガラス基板220上に形成された樹脂レンズ211、212および213は互いに形状が異なっている。
【0047】
図4に示すように、樹脂レンズ211a、212aおよび213aは、それぞれ主走査方向に列設されており、樹脂レンズ列401、402および403を構成する。
【0048】
樹脂レンズ列401、402および403は互いに副走査方向に並設されている。また、樹脂レンズ列401、402および403は互いに主走査方向にずれており、樹脂レンズ列401、402および403の各主走査方向端部の樹脂レンズ211、212および213の光軸中心を結んだ方向Qは樹脂レンズ211、212および213の列設方向P(主走査方向)に斜交する。
図4においては、方向P、Qの交差角度が30度である場合を例示したが、方向P、Qが平行でなければ、交差角度が90度(
図5)など、30度以外の角度であってもよい。
【0049】
このように、樹脂レンズ211a、212aおよび213aは、ガラス基板220上で二次元的かつ周期的に複数配置されており、感光体ドラム101の外周面上での書き込み幅に対応するように並んでいる。方向Qに沿って隣り合う樹脂レンズどうしは形状が異なる。これらの樹脂レンズは、像担持体(感光体)までの距離(共役長)が異なる発光点群からの出射光を結像させるためである。
【0050】
樹脂層261a、262aおよび263aもまた樹脂レンズ211a、212aおよび213aと同様に配置されている。光軸方向からの平面視において各樹脂層が占める領域は、
図5に示すように、当該樹脂層262cに対応する樹脂レンズ212cの中心212ccと、方向Pにおいて隣り合う樹脂レンズ212r、212lの中心212rc、212lcとの各中点
501b、
501dを通り、かつ方向Qに沿った直線502r、502lと、中心212ccと、方向Qにおいて樹脂レンズ212cと隣り合う樹脂レンズ211、213の各中心211c、213cとの各中点
501a、
501cを通り、かつ方向Pに沿った直線502b、502tに囲まれた領域である。樹脂層が占める領域は、光軸方向からの平面視において、すべて同じ形状になっている。
【0051】
一方、樹脂層261a、262a、263aの厚みは互いに異なっており、また、樹脂層262b、263bの厚みは互いに異なっている。なお、本実施の形態においては、樹脂レンズ211bに対応する樹脂層が無い場合を例にとっており、その意味において、樹脂レンズ211b、212bおよび213bに対応する樹脂層の厚みは互いに異なっている。
【0052】
これは、発光点群241、242および243から感光体ドラム101の外周面までの共役長が互いに異なるために、樹脂レンズ211a、212aおよび213aの形状が互いに異なり、かつ樹脂レンズ211b、212bおよび213bの形状が互いに異なることから、これらの樹脂レンズの体積が互いに異なっていることに対応している。
【0053】
各樹脂層の厚みは、樹脂レンズと、当該樹脂レンズとガラス基板220とに挟まれた樹脂層とを合わせた体積が、樹脂レンズどうしで同じになっており、樹脂レンズの体積が小さいほど、樹脂層の厚みが大きくなる。このようにすれば、樹脂体積が大きいほど樹脂の収縮力が大きくなるところ、樹脂レンズどうしで樹脂体積が同じになっているので、光源基板200の面内方向および面外方向のいずれについても歪みを抑制することができる。
【0054】
また、マイクロレンズアレイ200は、ガラス基板220の一方の基板面にしか樹脂レンズを形成しない場合は樹脂-ガラスの2層構造となる。この2層構造では、温度変化が生じると、ガラスと樹脂との線膨張の差で面外方向へガラス基板220がたわむように歪みが生じてしまう。一方、ガラス基板220を挟みこむように両方の基板面に樹脂レンズを形成すれば、樹脂-ガラス-樹脂の3層構造となり、ガラスを挟んで線膨張係数の同じ層が存在することとなる。
【0055】
こうすれば、樹脂-ガラスの片側で発生する線膨張差は、反対側のガラス-樹脂層で発生する線膨張差と打ち消しあう方向に作用するので、ガラス基板220の歪みの発生を解消することができる。特に、本実施の形態においては、ガラス基板220の基板面220aと基板面220bとの間で樹脂体積の総和が同じになっており、ガラス基板220の両方の基板面どうしで線膨張差が等しくなるので、ガラス基板220の歪みを更に精度よく解消することができる。
【0056】
図6においては、ガラス基板220の基板面220aでは、樹脂レンズ211aは芯厚L1a、レンズ形状域φ1aになっている。また、樹脂レンズ212aは芯厚L2a、レンズ形状域φ2aになっており、樹脂レンズ213aは芯厚L3a、レンズ形状域φ3aになっている。芯厚Lは、樹脂レンズの光軸位置における厚さであり、樹脂層の上面からの飛び出し量に等しい。また、レンズ形状域φは、ガラス基板220上で樹脂レンズが形状を有する領域の外径である。
【0057】
樹脂レンズの体積は、光軸を含む断面における断面積の自乗で決まり、当該断面積は芯厚Lとレンズ形状域φの積に比例するので、形状の異なる樹脂レンズどうしの体積比は芯厚Lとレンズ形状域φの積の自乗(L×φ)2に比例する。また、樹脂層の体積は、樹脂層の厚さTに、光軸方向からの平面視における樹脂レンズごとの樹脂層の面積Sを乗算したT×Sである。上述のように、樹脂層の面積Sは対応する樹脂レンズによらず一定であるので、樹脂層の体積比は樹脂層の厚さTに比例する。従って、樹脂レンズと樹脂層とを合わせた樹脂体積が等しいためには、これらの比率の和
(L×φ)2 + T …(2)
が樹脂レンズどうしで等しくなるように樹脂層の厚さTを設定する必要がある。
【0058】
図7は、本実施の形態に係る樹脂レンズおよび樹脂層の寸法を例示する表である。なお、レンズ面高さはガラス基板220の主面から樹脂レンズの最も高い位置までの高さである。
図7に示すように、本実施の形態に係る寸法を採用すれば、樹脂レンズどうしでの樹脂レンズと樹脂層とを合算した樹脂体積の比を1.00にすることができる。従って、マイクロレンズアレイの反りを抑制することができるので、優れた画質を達成することができる。
[4]変形例
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明が上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例を実施することができる。
(4-1)上記実施の形態においては、樹脂レンズどうしで、樹脂レンズと当該樹脂レンズに対応する樹脂層とを合わせた樹脂体積が同じ場合を例にとって説明したが、本発明がこれに限定されないのは言うまでもなく、これに加えて次のようにしてもよい。
【0059】
例えば、樹脂レンズの樹脂体積が大きいほど、当該樹脂レンズに対応する樹脂層の樹脂体積を小さくしてもよい。このようなマイクロレンズアレイでは、レンズ形状域φ1の樹脂レンズと、レンズ形状域φ2の樹脂レンズとがあって、
φ1 > φ2 …(3)
であるとき、レンズ形状域φ1の樹脂レンズに対応する樹脂層の厚みT1と、レンズ形状域φ2の樹脂レンズに対応する樹脂層の厚みT2とは、
T1 < T2 …(4)
のような関係になる。
【0060】
このようにすれば、樹脂体積が異なる樹脂レンズどうしで、樹脂レンズと樹脂層とを合わせた樹脂体積の差を小さくすることができる。従って、樹脂体積の差に起因して発生する樹脂の収縮力や膨張力の差を小さくなるので、射出成形後の冷却収縮量や熱が加わった際の膨張量がマイクロレンズの任意の箇所で等方的になり、マイクロレンズアレイの面内歪みを抑制することができる。
【0061】
言うまでもなく、樹脂レンズと樹脂層とを合わせた樹脂体積の差が小さいほど、マイクロレンズアレイの面内歪みを抑制する効果が高くなる。従って、マイクロレンズアレイの歪みに起因する画像品質の劣化が視認できない程度に樹脂体積の差を小さくすればよく、樹脂体積を厳密に同じにしなくても実用上は十分である。
【0062】
なお、マイクロレンズアレイを構成する樹脂レンズのレンズ形状域φを測定する場合、樹脂レンズと樹脂層との境界が円形ならば、当該境界の直径がレンズ形状域φに相当し、顕微鏡等を用いて光学的に観察すれば、測定することができる。また、樹脂レンズと樹脂層との境界が多角形状である場合には、当該多角形を円形で近似して、近似円の直径を測定すればレンズ形状域φを得ることができる。
【0063】
また、樹脂層の厚みTに関しては、マイクロレンズアレイを切断し、顕微鏡等を用いてマイクロレンズアレイの断面を光学的に観察すれば、高精度に樹脂層の厚みTを測定することができる。マイクロレンズアレイを破壊することなく樹脂層の厚みTを測定する方法としては、白色干渉計を用いた厚み測定が挙げられる。
【0064】
以上のような方法を用いて樹脂レンズのレンズ形状域φと樹脂層の厚みTとを測定すれば、測定値が上式(1)、(2)の関係を充足しているか否かを確認することができる。
(4-2)上記実施の形態においては特に言及しなかったが、ガラス基板220の基板面から樹脂レンズの頂部までの高さを、樹脂レンズどうしで同じにしてもよい。
【0065】
金型を用いた射出成形によって樹脂レンズおよび樹脂層を成形する場合、コアブロックを金型に嵌め込んで樹脂レンズの光学面を形成する。このコアブロックの位置を調整することによって、樹脂レンズの頂部の高さが調整される。マイクロレンズアレイを成形する場合には、樹脂レンズの個数と同じ個数のコアブロックを金型に嵌め込んで樹脂レンズを成形することになる。このため、樹脂レンズ毎に頂部の高さが異なっていると、コアブロックの高さを樹脂レンズ毎に調整しなければならないので、製造時に手間がかかるだけでなく、樹脂レンズの頂部の高さを精度よく調整することが難しくなる。
【0066】
また、樹脂レンズ毎に頂部の高さが異なっていると、樹脂レンズ毎に樹脂の肉厚が異なってしまう。これによって、マイクロレンズアレイの成形時における加圧方向に肉厚の異なる樹脂レンズが配列されることになると、成形時にガラス基板にかかる荷重が不均一になる。その結果、ガラス基板に割れが発生すると、収率が低下する、という問題もある。
【0067】
これらの問題に対して、ガラス基板220の基板面から樹脂レンズの頂部までの高さを、樹脂レンズどうしで同じにすれば、樹脂レンズ毎にコアブロックの高さを調整する手間が不要になり、マイクロレンズアレイの寸法精度も向上させることができる。また、成形時にガラス基板にかかる荷重を均一化することができるので、ガラス基板の割れを抑制して、成形安定性を高めることができる。
(4-2)上記実施の形態においては、樹脂レンズ列どうしで不連続的に樹脂層の厚みが変化する場合を例にとって説明したが、本発明がこれに限定されないのは言うまでもなく、これに代えて次のようにしてもよい。
【0068】
例えば、
図8に示すように、ガラス基板220の基板面220a上では、互いに異なる樹脂レンズ列に属する樹脂レンズ211a、212aおよび213aが、基板面220aに沿って連続的に設けられている樹脂層260a上に配設されており、樹脂層260aの厚さは副走査方向に沿って連続的に変化している。同様に、ガラス基板220の基板面220b上でも、互いに異なる樹脂レンズ列に属する樹脂レンズ211b、212bおよび213bが、基板面220aに沿って連続的に設けられている樹脂層260b上に配設されており、樹脂層260bの厚さは副走査方向に沿って連続的に変化している。
【0069】
従って、言うまでもないが、光軸方向からの平面視において、樹脂層260a、260bの樹脂レンズ以外の部分は厚さが連続的に変化していることになる。なお、このように樹脂層260a、260bの高さを連続的に変化させるためには、共役長が副走査方向に沿って単調に変化しているのが望ましい。
【0070】
このようにすれば、レンズアレイを射出成形する際の抜き抵抗を減少させることができるので、離型性を向上させることができる。従って、同じ金型を繰り返し用いて多数のマイクロレンズアレイを連続して成形する際に、これらのマイクロレンズアレイの形状を安定化させることができるとともに、金型の寿命を延長することができる。
(4-3)上記実施の形態においては、樹脂レンズ211bがガラス基板220の基板面220b上に直接形成されている場合を例にとって説明したが、本発明がこれに限定されないのは言うまでもなく、これに代えてマイクロレンズアレイのすべての樹脂レンズがガラス基板との間に樹脂層を挟んだ構成にしてもよい。
【0071】
このような構成にすれば、同じ基板面に形成されたすべての樹脂レンズどうしで樹脂層が連続的になるので、樹脂の収縮や膨張に起因してガラス基板220に加わる応力の分布を基板面に沿って均一にすることができる。従って、ガラス基板220の面内方向における歪みの発生を更に効果的に抑制することができる。
(4-4)上記実施の形態においては、互いに形状が異なる3種類の樹脂レンズ211a、212aおよび213aが、互いに主走査方向にずれて配設された樹脂レンズ列401、402および403をなす場合を例にとって説明したが、本発明がこれに限定されないのは言うまでもなく、これに代えて次のようにしてもよい。
【0072】
例えば、
図9に示すように、樹脂レンズ列401、402および403が主走査方向にずれておらず、樹脂レンズ列401、402および403の各主走査方向端部の樹脂レンズ211、212および213の光軸中心を結んだ方向Qが副走査方向に一致するように配設してもよい。
【0073】
また、
図10に示すように、互いに形状が異なる4種類の樹脂レンズ1011a、1012a、1013aおよび1014aが、互いに主走査方向にずれて配設された樹脂レンズ列1001、1002、1003および1004をなしていてもよい。いずれの場合においても、樹脂レンズと当該樹脂レンズに対応する樹脂層とを合わせた樹脂体積が樹脂レンズどうしで同じになるように樹脂層の厚さを設定すれば、本発明の効果を得ることができる。
(4-5)上記実施の形態においては、樹脂レンズ列401、402および403が互いに異なる単位基板231、232、233上に配設される場合を例にとって説明したが、本発明がこれに限定されないのは言うまでもなく、これに代えて次のようにしてもよい。例えば、共役長が同じ樹脂レンズ列が複数ある場合には、これら共役長が同じ樹脂レンズ列どうしはおなじ単位基板に配設するのが望ましい。このようにすれば、共役長が同じ樹脂レンズ列について単位基板の位置や傾きをまとめて調整することができるので、調整の手間を省いて効率よくマイクロレンズアレイ200を製造することができる。
(4-6)上記実施の形態においては、樹脂レンズ並びに樹脂層の寸法例を記載したが、本発明がこれに限定されないのは言うまでもなく、これに代えて次のようにしてもよい。
図11(a)は、樹脂レンズ並びに樹脂層の寸法を決定する際に考慮すべき前提条件となる寸法であって、例えば、物体高は光軸方向からの平面視における発光点群の外径であり、NAOはFナンバーであり、NAは有効Fナンバーである。また、パネル厚、パネル屈折率nおよびパネル-レンズ距離は光源基板に関する寸法であり、レンズ直径Rはレンズ面を京面としたときの曲率直径である。
【0074】
図11(b)は、上記前提条件に適合した樹脂レンズ並びに樹脂層の寸法を例示したもので、例えば、レンズ面頂点間隔は隣り合う樹脂レンズどうしのP方向における距離を表している。また、レンズ部面頂点間隔(副)は隣り合う樹脂レンズどうしのQ方向における距離である。このようにすれば、樹脂レンズと樹脂層とを合わせた樹脂体積を、有効数字2桁で完全に一致させることができるので、マイクロレンズアレイの歪みを抑制して優れた画像品質を実現することができる。
(4-7)上記変形例においては、樹脂レンズの頂部を揃えることによってコアブロックの高さの調整を容易にする場合を例にとって説明したが、本発明がこれに限定されないのは言うまでもなく、これに代えて或いはこれに加えて次のようにしてもよい。
【0075】
図12(a)に示すように、金型1201、1202とコアブロック1200a、1200bおよび1200cを用いてマイクロレンズアレイを成形する場合に、樹脂層の厚さの異なる樹脂レンズどうしで、当該樹脂レンズの成形に用いるコアブロックがいずれも高さhになっていると、コアブロックごとに樹脂層の厚さ分だけ高さを調整しなければならない。
【0076】
例えば、コアブロック1200aは上面が金型1202の上面から高さHaになり、コアブロック1200bは上面が金型1202の上面から高さHbになり、コアブロック1200cは上面が金型1202の上面から高さHcになるように、個別にコアブロック1200a、1200bおよび1200cの高さを調整しなければならない。このため、高さ調整に手間が掛かり、また高い精度で高さを調整するのも難しい。
【0077】
一方、
図12(b)に示すように、成形すべき樹脂レンズに対応する樹脂層の厚さに応じてコアブロック1200a、1200bおよび1200cの高さha、hbおよびhcを設定すれば、コアブロック1200a、1200bおよび1200cの上面がいずれも金型1202の上面から高さHになるように、個別にコアブロック1200a、1200bおよび1200cの高さを調整すれば足りる。このため、高さ調整の手間を省き、また高さ精度を向上させることができる。
(4-8)上記実施の形態においては、樹脂レンズ毎の樹脂層の形状が、光軸方向からの平面視において、平行四辺形である場合を例にとって説明したが、本発明がこれに限定されないのは言うまでもなく、平行四辺形以外の形状であってもよい。また、樹脂レンズ毎に当該樹脂レンズに対応する樹脂層の厚さが一定である必要はなく、樹脂レンズの樹脂体積が小さいほど、当該樹脂レンズに対応する樹脂層の樹脂体積が大きくなっていれば、樹脂の膨張収縮によるマイクロレンズアレイの歪みを抑制する効果を得ることができる。
【0078】
なお、樹脂レンズの光学特性に影響を与えないようにするためには、樹脂レンズのレンズ面を通過する光線が、樹脂層の界面のうち、樹脂層とガラス基板との界面以外の界面を通過しないように、樹脂層の形状を設計するのが望ましい。具体的には、樹脂レンズの下面(ガラス基板側に対向する仮想的な平面)がすべて樹脂層の上面(樹脂レンズに接する仮想的な面)に接しているのが好適である。
(4-9)上記実施の形態においては特に言及しなかったが、樹脂レンズどうしで、当該樹脂レンズと樹脂層とを合わせた樹脂体積が等しいためには、以下の条件を満たす必要がある。
【0079】
樹脂レンズの樹脂体積VLは、当該樹脂レンズの光軸を通過して樹脂層と接しているレンズ部界面からレンズ光学面頂点までの距離がLであり、樹脂レンズのレンズ形状域がφであるときに、
【0080】
【0081】
また、樹脂層の樹脂体積VTは、面積がSであり、厚さがTであるときに、
【0082】
【数3】
であるので、樹脂レンズと樹脂層とを合わせた樹脂体積は、
【0083】
【0084】
従って、互いに異なる樹脂レンズどうしで樹脂レンズと樹脂層とを合わせた樹脂体積が等しくなるためには、以下の関係式が満足されなければならない。
【0085】
【数5】
ここで、各樹脂レンズの光軸を通過して樹脂層と接しているレンズ部界面からレンズ光学面頂点までの距離がそれぞれL1、L2であり、各樹脂レンズのレンズ形状域がφ1、φ2であり、各樹脂レンズが占有する樹脂層の面積がS1、S2であり、当該樹脂層の厚さがT1、T2である。
【0086】
このようにすれば、樹脂レンズどうしで樹脂体積の差を最小化する際の樹脂層の厚さとレンズパラメータを最適化することが可能となる。
(4-10)上記実施の形態においては、画像形成装置1がタンデム方式のカラープリンターである場合を例にとって説明したが、本発明がこれに限定されないのは言うまでもなく、タンデム方式以外の方式のカラープリンターであってもよいし、モノクロプリンターであってもよい。また、スキャナーを備えた複写装置や更にファクシミリ通信機能を備えたファクシミリ装置といった単機能機、或いはこれらの機能を兼ね備えた複合機(MFP: Multi-Function Peripheral)に本発明を適用しても同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明に係るマイクロレンズアレイ、光書き込み装置および画像形成装置は、特に、樹脂の収縮や膨張に伴ってマイクロレンズアレイが歪むことに起因する画像劣化を防止することができる装置として有用である。
【符号の説明】
【0088】
1………………………………………………………………画像形成装置
100…………………………………………………………光書き込み装置
101…………………………………………………………感光体ドラム
200…………………………………………………………マイクロレンズアレイ
220、250………………………………………………ガラス基板
211a、212a、213a……………………………樹脂レンズ
211b、212b、213b、251…………………樹脂レンズ
261a、262a、263a、262b、263b…樹脂層
230…………………………………………………………光源基板
231、232、233……………………………………単位基板
241、242、243……………………………………発光点群
303…………………………………………………………発光点(OLED)
L1、L2、L3……………………………………………共役長