(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】車両の後部車体構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20220906BHJP
B60N 2/20 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
B62D25/08 K
B60N2/20
(21)【出願番号】P 2018168766
(22)【出願日】2018-09-10
【審査請求日】2021-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】木村 隆之
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 貴志
(72)【発明者】
【氏名】中條 登
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-099963(JP,A)
【文献】特開2014-054910(JP,A)
【文献】特表2018-523603(JP,A)
【文献】特開2000-071830(JP,A)
【文献】特開平10-226254(JP,A)
【文献】特開2013-035435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後部に上方が開口した荷台が設けられ、該荷台とその前方に有する車室とはバルクヘッドにより仕切られるとともに、上記荷台の側方に、該荷台のフロア面から上方、かつ、側壁面から車幅方向内側に突出するタイヤハウスインナが設けられた車両の後部車体構造であって、
上記バルクヘッドと上記タイヤハウスインナとの間に、トラス構造からなる補強部材を備え
、
上記補強部材が、複数のトラス面から成る3次元的な補強構造体を形成し、
上記補強構造体は、上記タイヤハウスインナの車幅方向内面より車幅方向外側に配設された
車両の後部車体構造。
【請求項2】
車体後部に上方が開口した荷台が設けられ、該荷台とその前方に有する車室とはバルクヘッドにより仕切られるとともに、上記荷台の側方に、該荷台のフロア面から上方、かつ、側壁面から車幅方向内側に突出するタイヤハウスインナが設けられた車両の後部車体構造であって、
上記バルクヘッドと上記タイヤハウスインナとの間に、トラス構造からなる補強部材を備え、
上記補強部材が、複数のトラス面から成る3次元的な補強構造体を形成し、
左右の上記補強構造体の車幅方向に延びる一辺を利用しつつ左右の車体側部の骨格部材間において、これら骨格部材を連結するクロスバーを上記補強部材に備え、
上記クロスバーから前方に延びて上記車室側に設けられたシートバックに備えたシートキャッチと係合するストライカを備えた
車両の後部車体構造。
【請求項3】
車体後部に上方が開口した荷台が設けられ、該荷台とその前方に有する車室とはバルクヘッドにより仕切られるとともに、上記荷台の側方に、該荷台のフロア面から上方、かつ、側壁面から車幅方向内側に突出するタイヤハウスインナが設けられた車両の後部車体構造であって、
上記バルクヘッドと上記タイヤハウスインナとの間に、トラス構造からなる補強部材を備え、
上記補強部材が、複数のトラス面から成る3次元的な補強構造体を形成し、
左右の上記補強構造体の車幅方向に延びる一辺を利用しつつ左右の車体側部の骨格部材間において、これら骨格部材を連結するクロスバーを上記補強部材に備え、
上記補強部材には、上記バルクヘッドに取り付けられるとともに上記クロスバーに対して互いに間隔を隔てて車幅方向に延びる取付け杆と、該取付け杆と上記クロスバーとの間において、これら取付け杆と上記クロスバーとに車幅方向に沿って行き来しながら連結する連結部材とを備えた
車両の後部車体構造。
【請求項4】
上記シートバックが起立状態から前倒状態に移行可能に形成され、
上記バルクヘッドに、上記荷台上方の荷室空間と上記車室内の乗員空間との間をアクセス可能とする開口部が形成された
請求項
2に記載の車両の後部車体構造。
【請求項5】
上記補強部材には、上記バルクヘッドに取り付けられるとともに上記クロスバーに対して互いに間隔を隔てて車幅方向に延びる取付け杆と、該取付け杆と上記クロスバーとの間において、これら取付け杆と上記クロスバーとに車幅方向に沿って行き来しながら連結する連結部材とを備えた
請求項
2に記載の車両の後部車体構造。
【請求項6】
上記連結部材と、上記クロスバーから前方に延びる上記ストライカの途中部との間に、これらを連結するストライカ補強部を備えた
請求項
5に記載の車両の後部車体構造。
【請求項7】
上記補強構造体は、上記タイヤハウスインナの車幅方向内面より車幅方向外側に配設された
請求項2乃至
5のいずれか1項に記載の車両の後部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車体後部に上方が開口された荷台が設けられた所謂オープンデッキ車両等の車両の後部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のオープンデッキ車両の中には、特許文献1に例示されるように、上方に開口した荷台の剛性を確保するために、車体後部の側部に補強部材を設けたものが知られている。
【0003】
特許文献1のオープンデッキ車両は、荷台の上方に、積載空間が形成されており、該積載空間の前側は、運転席および助手席を有する車室と、該車室の後壁を形成するバックパネル(22)(バルクヘッド)によって仕切られるとともに、積載空間の両サイドには、車体後部の側面を画成する側壁(31)が設けられている。そして車体後部の両サイドには、バックパネル(22)とその後部の側壁(31)とを連結するように、車両前後方向に延びるバー形状のロールケージ(33)が補強部材として設けられており、このロールケージ(33)によって、上方が開放された車体後部の剛性を確保している。
【0004】
しかしながら、特許文献1のロールケージ(33)は、車体後部の両サイドにおいて車両前後方向に直線状に延びる構造であるため、この点で車体後部の捩じれ剛性の向上は期待できない。一方、また、単純に補強部材によって車体後部の捩じれ剛性を高めようとした場合には、補強部材が大型化する等して荷台に搭載した搭載物との干渉が懸念されるため、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、車体後部に設けられた荷台に搭載した搭載物と干渉することなく、該車体後部の剛性を高めることができる補強部材を備えた車両の後部車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による車両の後部車体構造は、車体後部に上方が開口した荷台が設けられ、該荷台とその前方に有する車室とはバルクヘッドにより仕切られるとともに、上記荷台の側方に、該荷台のフロア面から上方、かつ、側壁面から車幅方向内側に突出するタイヤハウスインナが設けられた車両の後部車体構造であって、上記バルクヘッドと上記タイヤハウスインナとの間に、トラス構造からなる補強部材を備え、上記補強部材が、複数のトラス面から成る3次元的な補強構造体を形成し、上記補強構造体は、上記タイヤハウスインナの車幅方向内面より車幅方向外側に配設されたものである。
【0008】
上記構成によれば、トラス構造により車体後部の剛性を飛躍的に向上できる。
また、上記補強部材が、複数のトラス面から成る3次元的な補強構造体を形成したものであるから、3次元的な補強を効率的に行うことができる。
【0009】
しかも、上記補強部材は、上記タイヤハウスインナの車幅方向内面より車幅方向外側に配設されたものであるから、荷台への搭載物との干渉を避けつつ上記補強部材によって車体後部を補強できる。
【0010】
この発明による車両の後部車体構造は、また、車体後部に上方が開口した荷台が設けられ、該荷台とその前方に有する車室とはバルクヘッドにより仕切られるとともに、上記荷台の側方に、該荷台のフロア面から上方、かつ、側壁面から車幅方向内側に突出するタイヤハウスインナが設けられた車両の後部車体構造であって、上記バルクヘッドと上記タイヤハウスインナとの間に、トラス構造からなる補強部材を備え、上記補強部材が、複数のトラス面から成る3次元的な補強構造体を形成し、左右の上記補強構造体の車幅方向に延びる一辺を利用しつつ左右の車体側部の骨格部材間において、これら骨格部材を連結するクロスバーを上記補強部材に備え、上記クロスバーから前方に延びて上記車室側に設けられたシートバックに備えたシートキャッチと係合するストライカを備えたものである。
【0011】
上記構成によれば、トラス構造により車体後部の剛性を飛躍的に向上できる。
また、上記補強部材が、複数のトラス面から成る3次元的な補強構造体を形成したものであるから、3次元的な補強を効率的に行うことができる。
【0012】
さらに、左右の上記補強構造体の車幅方向に延びる一辺を利用しつつ左右の車体側部の骨格部材間において、これら骨格部材を連結するクロスバーを上記補強部材に備えたものであるから、車体後部の車幅方向の剛性を効率的に向上できる。
【0013】
しかも、上記クロスバーから前方に延びて上記車室側に設けられたシートバックに備えたシートキャッチと係合するストライカを備えたものであるから、補強構造体の上記一辺を利用しつつ骨格部材間に連結することで補強された上記クロスバーによってストライカを支持することができる。
【0014】
この発明による車両の後部車体構造は、さらに、車体後部に上方が開口した荷台が設けられ、該荷台とその前方に有する車室とはバルクヘッドにより仕切られるとともに、上記荷台の側方に、該荷台のフロア面から上方、かつ、側壁面から車幅方向内側に突出するタイヤハウスインナが設けられた車両の後部車体構造であって、上記バルクヘッドと上記タイヤハウスインナとの間に、トラス構造からなる補強部材を備え、上記補強部材が、複数のトラス面から成る3次元的な補強構造体を形成し、左右の上記補強構造体の車幅方向に延びる一辺を利用しつつ左右の車体側部の骨格部材間において、これら骨格部材を連結するクロスバーを上記補強部材に備え、上記補強部材には、上記バルクヘッドに取り付けられるとともに上記クロスバーに対して互いに間隔を隔てて車幅方向に延びる取付け杆と、該取付け杆と上記クロスバーとの間において、これら取付け杆と上記クロスバーとに車幅方向に沿って行き来しながら連結する連結部材とを備えたものである。
【0015】
上記構成によれば、トラス構造により車体後部の剛性を飛躍的に向上できる。
また、上記補強部材が、複数のトラス面から成る3次元的な補強構造体を形成したものであるから、3次元的な補強を効率的に行うことができる。
【0016】
さらに、左右の上記補強構造体の車幅方向に延びる一辺を利用しつつ左右の車体側部の骨格部材間において、これら骨格部材を連結するクロスバーを上記補強部材に備えたものであるから、車体後部の車幅方向の剛性を効率的に向上できる。
【0017】
しかも、上記補強部材には、上記バルクヘッドに取り付けられるとともに上記クロスバーに対して互いに間隔を隔てて車幅方向に延びる取付け杆と、該取付け杆と上記クロスバーとの間において、これら取付け杆と上記クロスバーとに車幅方向に沿って行き来しながら連結する連結部材とを備えたものであるから、バルクヘッドの剛性を向上させることができる。
【0018】
この発明の態様として、上記シートバックが起立状態から前倒状態に移行可能に形成され、上記バルクヘッドに、上記荷台上方の荷室空間と上記車室内の乗員空間との間をアクセス可能とする開口部が形成されたものである。
【0019】
上記構成によれば、バルクヘッドを補強部材により補強することで該バルクヘッドに開口部を設けることによる剛性低下を抑制しつつ、開口部を通じた荷室空間と乗員空間との間のアクセスを、シートバックに阻害されることなく可能とすることができる。
【0020】
この発明の態様として、上記補強部材には、上記バルクヘッドに取り付けられるとともに上記クロスバーに対して互いに間隔を隔てて車幅方向に延びる取付け杆と、該取付け杆と上記クロスバーとの間において、これら取付け杆と上記クロスバーとに車幅方向に沿って行き来しながら連結する連結部材とを備えたものである。
上記構成によれば、バルクヘッドの剛性を向上させることができる。
【0021】
この発明の態様として、上記連結部材と、上記クロスバーから前方に延びる上記ストライカの途中部との間に、これらを連結するストライカ補強部を備えたものである。
上記構成によれば、ストライカ補強部によってストライカを効率的に補強できる。
【0022】
この発明の態様として、上記補強部材は、上記タイヤハウスインナの車幅方向内面より車幅方向外側に配設されたものである。
上記構成によれば、荷台への搭載物との干渉を避けつつ上記補強部材によって車体後部を補強できる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、補強部材が車体後部に設けられた荷台に搭載した搭載物と干渉することなく、該補強部材によって車体後部の剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施形態の後部車体構造を備えた車両を後方から視た斜視図。
【
図2】本実施形態の後部車体構造の要部を後方から見た斜視図。
【
図3】本実施形態の後部車体構造を車幅方向の中央位置にて切断して示した縦断面図。
【
図4】本実施形態のバルクヘッドおよび補強構造体の右側半分を後方から見た斜視断面図。
【
図5】本実施形態の補強構造体を後方から見た斜視断面図。
【
図7】
図3中の領域Zaの拡大図(a)
、および領域Zcの拡大図(b)。
【
図9】
図3中の領域Zbの拡大図(a)
、および
図9(a)のD-D線に沿った要部断面図(b)。
【
図10】
図2中のB-B線に沿った要部断面図(a)
、および
図2中のC-C線に沿った要部断面図(b)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両右方を示し、矢印Lは車両左方を示し、矢印Uは車両上方を示し、矢印outは車幅方向外側を示し、矢印inは車幅方向内側を示すものとする。
【0026】
本実施形態の車両1は、以下、特に示す場合を除いて左右対称形状に構成されているものとする。なお、
図2において後席シート6Rの図示は省略するものとする。
図8において連結バー63f,63eは、断面視せずに示すものとし、
図3および
図9以外は、取付け杆68を車両後方から覆うトリム57は取り外した状態で示すものとする。
【0027】
本実施形態の車両1の後部車体構造の説明に先立って、その前提構造について説明する。
本実施形態の車両1は、
図1に示すように、車室内に構成される乗員空間2Fと、車体後部の荷台の上方に設けられる荷室空間2Rとが、車体の前後各側に設けられ、これら乗員空間2Fと荷室空間2Rとは、隔壁としてのバルクヘッド40により仕切られている。
【0028】
また
、図1に示すように、乗員空間2Fの両サイドには、サイドドア開口部4が設けられている。
サイドドア開口部4は、乗員が乗降する乗降口であって、車両前側のヒンジピラー(図示省略)に上下一対のドアヒンジ28Fを介して開閉可能に取り付けられたフロントドア29Fと、リヤボディに上下一対のドアヒンジ11Rを介して開閉可能に取り付けられたリヤドア29Rとで構成されるサイドドア29を備えている(
図1参照)。サイドドア29(29F,29R)は、フロントドア29Fとリヤドア29Rとで観音開き式ドアとして構成されている。
【0029】
また
、図1に示すように、乗員空間2Fにおける車体の底面を形成するフロントフロアパネル5F上には、運転席および助手席用の前席シート6Fと、後席シート6Rが前後各側に配設されている。
各シート6F,6Rは、シートクッション6aとシートバック6bとを備えている(
図1、
図3参照)。シートクッション6aとシートバック6bは、骨格部材としてのフレーム6f(
図9参照)と該フレーム6fを覆うように設けられ表皮を形成するクッション材とを備えている。シートクッション6aとシートバック6bとは、夫々独立して不図示のシートブラケットを介してフロントフロアパネル5Fに固定されている。シートバック6bは、シートブラケットの揺動軸(図示省略)を支点として起立状態と前倒状態とに揺動可能に支持されている。
【0030】
また
、図1、
図3、
図7(b)、
図9(a)、
図10(a)に示すように、本実施形態における後席シート6Rのシートバック6bは、背面(後面)が略鉛直方向に立ち上がる面状に形成されており、この背面には、防水パネル7が取り付けられている。
【0031】
図1~
図3に示すように、荷室空間2Rの下部には、該荷室空間2Rの床面(荷台)を構成するリヤフロアパネル5R(以下、単に「フロアパネル5R」と略記する)が設けられている。フロアパネル5Rの両サイドには、車両前後方向に延びるリヤサイドフレーム8が設けられている。
【0032】
図2、
図3に示すように、リヤサイドフレーム8は、荷室空間2Rにおいて車両前後方向に水平かつ直線状に延びている。
【0033】
図1に示すように、荷室空間2Rは、上方から後方にかけて荷室開口10が設けられている。荷室開口10は、荷室空間2Rの出入り口であって、上方に位置する上方開口部11と、該上方開口部11よりも下方(換言すると荷室空間2Rの後面)に位置する下方開口部12とが上下方向(車両前後方向)に互いに連続して開口形成されている。
【0034】
図1に示すように、上記の上方開口部11は、乗員空間2Fの天井を構成するルーフ部13の後端にて車幅方向に延びるリヤヘッダ14によって上縁が形成され、後方程下方に位置するように傾斜して延びる両サイド縁が、リヤピラー15によって形成されている。なお、ルーフ部13の両サイドには、車両前後方向に延びるルーフサイドレール13aを備えている(
図2において右側のみ図示)。
【0035】
一方、上記の下方開口部12は、荷室空間2Rの両サイドの後壁を構成するリヤエンドパネル17の車幅方向内縁によって両サイド縁が形成され、フロアパネル5Rの後縁によって下縁が形成されている。
【0036】
また
、図1に示すように、車体後部には、下方開口部12を開閉するためのリヤゲート9が設けられている。
リヤゲート9は、その車幅方向の一端(当例では右端)が、上下方向に延びる回動軸を有する不図示のヒンジ部を介して車体の下方開口部12の車幅方向の一端(当例では右端)に、回動自在に連結支持されている。
【0037】
また、本実施形態の車両1は、上方開口部11を開閉するためのドアを備えておらず、荷室空間2Rの上方、すなわち上方開口部11が常時開口した荷台が車体後部に設けられた所謂オープンデッキ車両として構成している。
【0038】
続いて
、荷室空間2Rの床面を形成するフロアパネル5Rについて詳述する。
フロアパネル5Rは、
図1~
図3に示すように、中央部に左右のリヤサイドフレーム8の下面よりも下方に窪んだ窪み部16が形成されている。
【0039】
同図に示すように、窪み部16は、平坦な深底部16aと、深底部16aの後端を除く周縁(左右側面および前面)から立ち上がり、該周縁を覆う略縦壁状の壁部16bとで一体に形成されている。
【0040】
窪み部16の後端には、壁部16bを設けずに上記の下方開口部12を有して形成されている。さらに、荷室空間2Rの後壁を構成するリヤエンドパネル17は、フロアパネル5R(窪み部16内の空間)の後方には設けられておらず、フロアパネル5Rに対して両サイドに分断するように立設されている。
【0041】
これにより、本実施形態のフロアパネル5Rは、リヤゲート9が開状態において窪み部16が後方に向けて開放され、かつ低床(深底)の所謂掃出しフロアとして構成されている。
【0042】
図2~
図3に示すように、荷室空間2Rの側面は、リヤサイドパネル18と、該リヤサイドパネル18に対して下方かつ前方に位置するリヤホイルハウスインナ20(以下、「リヤホイルハウス20」と略記する)とでもって画成されている。リヤホイルハウス20は、その車幅方向内壁がリヤサイドフレーム8の車幅方向外縁に略至るまでリヤサイドパネル18に対して荷室空間2R側(車幅方向内側)へ膨出形成され(
図1、
図2参照)、前部が乗員空間2Fに至るまでバルクヘッド40を跨いで車両前後方向に延びている(
図3参照)。このリヤホイルハウス20の上面、すなわち
図2、
図3に示すように、車幅方向内側への膨出部分の上面は、車両側面視で車両前後方向の中間部が上方へ凸の頂部20aとなるアーチ形状に形成されている。
【0043】
図2、
図3、
図8に示すように、リヤホイルハウス20の頂部20aには、リヤサスペンションに備えたダンパ21の上端21a(ダンパトップ21a)(
図8参照)を支持するダンパ支持ブラケット22がガセット23を介して取り付けられている。
【0044】
図2、
図3に示すように、乗員空間2Fと荷室空間2Rとの境界位置には、左右のリヤサイドフレーム8を、この間において車幅方向に橋渡しするリヤクロスメンバ24(所謂No.4クロスメンバ)が設けられている。
【0045】
リヤクロスメンバ24は、車幅方向の略全体に渡って上方へ凸の断面ハット形状のリヤクロスメンバアッパ25(
図2、
図3、
図7(b)参照)と、下方へ凸の断面ハット形状のリヤクロスメンバロア26(
図3、
図7(b)参照)等を備えた骨格部材である。
図7(b)に示すように、これらリヤクロスメンバアッパ25とリヤクロスメンバロア26とは、夫々の車両前後両端に接合フランジ部25a,26aが形成されており、これら接合フランジ部25a,26aによって乗員空間2Fの床面を形成するフロントフロアパネル5Fの後端5Faを挟み込んだ状態で溶接にて3重接合されている(同図参照)。
【0046】
また
、図1、
図2に示すように、荷室空間2Rの側壁の前側位置には、リヤサイドフレーム8の上面部とリヤサイドパネル18とをリヤホイルハウス20を介して上下方向に連結するピラー27(以下、「Cピラー27」と称する)が設けられている。このCピラー27は、リヤホイルハウス20との間に、サイドドア開口部4の後縁に沿って上下方向に延びる閉断面27A(
図3参照)を有してサイドドア開口部4の後縁を補強する骨格部材である。
【0047】
そして
、図2、
図3に示すように、上述したリヤクロスメンバ24(詳しくはリヤクロスメンバアッパ25)は、リヤサイドフレーム8との接合部において、上述したCピラー27の下端部にも接合されており、これにより、リヤクロスメンバ24(特にリヤクロスメンバアッパ25)とCピラー27とは、リヤサイドフレーム8に交差するように連続して延びている。
【0048】
ところで、所謂オープンデッキ車両として構成された本実施形態の車両1の車体後部は、複数の補強部材31~38によって補強される。続いて、これら補強部材31~38について
図2、
図3を参照しながら簡単に説明する。
【0049】
車体後部の少なくとも左右のリヤサイドフレーム8間には、フロアパネル5Rの後端に沿って第1補強部材31を備えている。第1補強部材31には、車幅方向の両端部が左右のリヤサイドフレーム8よりも車幅方向外側に位置するように車幅方向に延びるとともに、内部に延在方向に沿って閉断面31Aが構成されている。
【0050】
第1補強部材31は、車幅方向に略水平に延びる中央部131と、該中央部131の車幅方向外端から上方に延びる側部132とで車両後面視略U字形状に一体に形成されている。
【0051】
さらに、車体後部の両サイドには、第1補強部材31の側部132と、リヤホイルハウス20の頂部20aとを連結する第2補強部材32を備えている。第2補強部材32は、リヤホイルハウス20の頂部20aを介して、さらに車体前方に位置するCピラー27に連結されている。
【0052】
第2補強部材32は、その車両前後方向における、リヤホイルハウス20の頂部20aの直上部分が、該リヤホイルハウス20の頂部20aに取り付けられたダンパ支持ブラケット22に連結されている。
【0053】
さらに、車体後部には、第2補強部材32と、該第2補強部材32の上方に位置するリヤピラー15とを連結する第3補強部材33を備えている。
【0054】
さらに、車体後部には、第2補強部材32の前部と、リヤサイドフレーム8の後部とを連結する第4補強部材34を備えている。
【0055】
さらに、車体後部には、リヤホイルハウス20の直上部分において、第2補強部材32と、その上方の車体後部側壁を形成するリヤサイドパネル18とを連結する第5補強部材35を備えている。
【0056】
さらに、車体後部には、フロアパネル5Rの窪み部16の前縁16f(前側の壁部16bの上端)に沿って平面視略U字形状の第6補強部材36を備えている。
【0057】
ところで
、図3に示すように、乗員空間2Fの床下(フロントフロアパネル5Fの下方)には、電池格納空間137が画成されており、該電池格納空間137の後端には、電池支持クロスメンバ138が車幅方向に沿って配設されている。
【0058】
そして
、図2、
図3に示すように、車体後部には、電池支持クロスメンバ138の車幅方向の中央部と、該電池支持クロスメンバ138に対して後方かつ上方に位置する左右のリヤサイドフレーム8とを連結するブレース部材37を左右一対備えている(車体右側のみ図示)。
【0059】
また、車体後部には、フロアパネル5Rの窪み部16に形成された深底部16aの前部と、該深底部16aに対して前方に備えた、車幅方向に延びる電池支持クロスメンバ138とを連結するアンダーステー38を備えている。
【0060】
(バルクヘッド40について)
続いて、上記のバルクヘッド40および該バルクヘッド40の車体への取り付け構造について説明する。
【0061】
図4、
図6に示すように、バルクヘッド40は、上壁部41と
、下壁部42と
、これらの左右両端を上下方向に連結する左壁部43(
図6参照)および右壁部44と
、を備えて車両後面視で中央部に開口部46を有する枠状に形成するとともに、左右各壁部43,44の上下方向の中間部を連結するように車幅方向に直線状に延びて開口部46を上下各側に仕切る(区分けする)仕切り壁45を形成している。
【0062】
仕切り壁45によって仕切られた開口部46のうち上側の開口部46u(「上側開口部46u」と称する)には、ウインドガラス47を備えている。また、上側開口部46uの周縁には、段部48を介して該周縁に対して車両前方にオフセットした位置から上側開口部46uの側へ延びるガイド壁49が設けられており、上記のウインドガラス47は、不図示のシール部材(ウェザストリップ)を介してガイド壁49にガイドされた状態で段部48に嵌合装着されている(
図4、
図6、
図7(a)、
図9(a)、
図10(b)参照)。
【0063】
仕切り壁45によって仕切られた開口部46のうち下側の開口部46d(「下側開口部46d」と称する)は、ウインドガラス47を備えずに車両前後方向に連通している(
図4、
図6、
図7(b)、
図9(a)、
図10(a)参照)。下側開口部46dの周縁、詳しくは、仕切り壁45の下端、右壁部44の車幅方向内端、左壁部43(
図6参照)の車幅方向内端および下壁部42の上端には、車両前方へ向けて延びる前方延出部51が形成されており、該前方延出部51の前端部(先端部)には、シール部材52(ウェザストリップ)が嵌装されている。
【0064】
ここで
、図1、
図3、
図7(b)、
図9(a)、
図10(a)に示すように、後席シート6Rのシートバック6bの背面に備えた上記の防水パネル7(
図3参照)は、車両後面視でバルクヘッド40の少なくとも下側開口部46dに対応する部位に、該下側開口部46dよりも一回り大きな大きさで備えている。
【0065】
そして、同図に示すように、下側開口部46dの全周に亘って形成した前方延出部51は、その前端部が、後席シート6Rのシートバック6bの背面(後面)に備えた防水パネル7に後側からシール部材52を介して当接し、この間7,52の防水性を確保している。
【0066】
図4、
図6に示すように、上壁部41の上縁には、上方へ延出する上側フランジ部41uが、該上壁部41の車幅方向の略全体に亘って一体形成されている。この上側フランジ部41uには、その車幅方向に沿ってボルト挿通用の貫通孔41aが複数形成されている。これにより
図2、
図3、
図7(a)に示すように、上側フランジ部41uは、骨格部材として車幅方向に延びるリヤヘッダ14の前壁14aに前方側からボルト等により締結固定される。
【0067】
下壁部42および左右各壁部43,44には、これら壁部42,43,44の車両後面視で外端(下壁部42の下縁、左壁部43の左端および右壁部44の右端)から後方へ延出する後方延出フランジ部53が一体形成されている
(図4、図6参照)。
【0068】
後方延出フランジ部53は、下壁部42と左右各壁部43,44とのコーナー部を含めてこれら壁部42,43,44の外縁全体に亘って形成され、その外縁に沿ってボルト挿通用の貫通孔53aが複数形成されている(
図4参照)。
【0069】
図2、
図3、
図7(b)に示すように、後方延出フランジ部53のうち、下壁部42(左右各壁部43,44とのコーナー部分は除く)に相当する部
位は、骨格部材として車幅方向に延びるリヤクロスメンバ24の上壁部(上面)に支持され、該上壁部に対してボルト等により締結固定されている。
【0070】
図2、
図3に示すように、後方延出フランジ部53のうち、下壁部42と左右各壁部43,44とのコーナー部分に相当する部位は、リヤクロスメンバ24の車幅方向外端から骨格部材として上方へ延びるCピラー27の車幅方向内壁に車幅方向内側から当接し、該車幅方向内壁に対してボルト等により締結固定されている。
【0071】
ここで、Cピラー27は、車両後方にオフセットしながら上方向に延びている(同図参照)。このため
図2、
図10(a)(b)に示すように、後方延出フランジ部53のうち、左右各壁部43,44(下壁部42とのコーナー部分は除く)に相当する部位は、Cピラー27に締結固定されずに、Cピラー27の前方に位置するリヤサイドパネル18(インナパネル)に、その車幅方向内側からリヤサイドブラケット55を介して連結されている。
【0072】
特に
、図10(a)(b)に示すように、リヤサイドブラケット55は、リヤサイドパネル18に対して溶接等により取り付けるリヤサイドパネル取付けフランジ部55aと、バルクヘッド40とリヤサイドパネル18との間に有する車幅方向の隙間を埋めるようにリヤサイドパネル取付けフランジ部55aの前端から車幅方向内側に延びる縦壁部55bと、縦壁部55bの車幅方向内端から車両前方に延びて左右各壁部43,44の後方延出フランジ部53(車両右側のみ図示)にボルト等により締結するバルクヘッド取付けフランジ部55cと
、で一体に形成されている。
【0073】
なお
、本実施形態のバルクヘッド40は、
図6中の車幅方向に直線状に延びる破線で示した2本の分割ラインLdに沿って
、例えば、上下方向に3分割可能な構成部材から構成されている。これにより、バルクヘッド40を、3分割した状態で車体後部の乗員空間2Fと荷室空間2Rとの境界部まで搭載し、その後、ボルト等を用いて一枚のパネル状に組み立てるとともに
、車体後部に組み付けることで、車体への搭載性を高めたものである。
【0074】
また
、図3、
図9(a)に示すように、後席シート6Rとバルクヘッド40には、後席シート6Rのシートバック6bをバルクヘッド40に係脱可能に連結して支持する連結支持部90が設けられている。
【0075】
連結支持部90は、補強構造体60側に設けられた後述するストライカ91と、シートバック6b側に設けられたラッチ92a(「シートキャッチ」とも称する)とで構成される。
【0076】
図9(a)に示すように、ラッチ92aは、シートバック6bに備えたフレーム6fに、その後方側から取付けられたロックブラケット92に備えている。
【0077】
ロックブラケット92には、ストライカ91の挿入を許容する不図示の溝部が後方へ向けて開口形成されており、ラッチ92aは、溝部に挿入したストライカ91に対して係合姿勢(
図9中に示すラッチ92aの姿勢)と非係合姿勢との間で揺動可能にロックブラケット92に軸支されている。さらに、ロックブラケット92には、ラッチ92aを非係合姿勢に付勢する付勢手段(図示省略)と、付勢手段に抗してラッチ92aを係合姿勢にロックするロック部(図示省略)を備えている。
【0078】
また、後席シート6Rは、シートクッション6a(
図1参照)の側部とシートバック6bの背面部とに、夫々ロック部(図示省略)によるロックを解除するロック解除操作部93が設けられている(シートバック6bの背面部に設けたロック解除操作部93のみ
図9(a)にて図示)。このうち、シートクッション6aの側部に設けられたロック解除操作部(図示省略)は、乗員が後席シート6Rに着席した状態で操作可能に設けられている。一方、シートバック6bの背面部に設けられたロック解除操作部93(
図9(a)参照)は、後席シート6Rの後方の荷室空間2R側から操作可能に設けられている。
【0079】
シートバック6bを前倒状態から起立状態に移行させる際には、シートバック6bを起立させるに伴ってラッチ92aが、後述する補強構造体60に備えたストライカ91に押動されて非係合姿勢から係合姿勢まで回動する。その結果、ラッチ92aは、ロックブラケット92の溝部内に進入したストライカ91を係合した状態でロック部にロックされ、シートバック6bは起立状態に拘束される。
【0080】
一方、シートバック6bを起立状態から前倒状態に移行させる際には、ロック解除操作部93を操作することにより、ロック部によるラッチ92aのロックが不図示のケーブルを介して解除され、ラッチ92aは、付勢手段の付勢力によって非係合姿勢まで回動する。その結果、ストライカ91をロックブラケット92の溝部外へ退避させることができ、シートバック6bは前倒状態に移行することができる。
【0081】
ここで
、例えば
、図3、
図9(a)に示すように、シートバック6bのフレーム6fに後方側から設けたロック解除操作部93は、シートバック6bが起立状態において車両後面視で下側開口部46dに含まれる部位に設けられている。すなわち、ロック解除操作部93は、起立状態のシートバック6bの背面側から下側開口部46dを介して荷室空間2Rに臨むように形成されている。これにより
、ロック解除操作部93は、バルクヘッド40に阻害されることなく
、上述したように、荷室空間2Rからロック解除操作をしてシートバック6bを前倒状態にすることが可能に形成されている。
【0082】
なお、
図9(a)に示すように、防水パネル7における車両後面視でロックブラケット92やロック解除操作部93に相当する部位には、開口部7a,7bが貫通形成されている。これにより、ロックブラケット92やロック解除操作部93は、シートバック6bの背面側から開口部7a,7bを通じて後方を臨むように形成されている。
【0083】
(補強構造体60について)
図1、
図2に示すように、本実施形態の車体後部には、バルクヘッド40とリヤホイルハウス20との間に、所謂オープンデッキ構造の車体後部を補強する補強構造体60を備えている。以下、補強構造体60および車体への取付け構造について詳述する。
【0084】
補強構造体60は、荷室空間2Rを隔てた両サイドに設けられるとともに3次元的なトラス構造から成る三角錐構造体61と、左右の三角錐構造体61を車幅方向に連結する連結構造体65から構成される。
【0085】
図4に示すように、三角錐構造体61は、主に車両前方を向く前側トラス面Sfと、主に車幅方向内側を向く車幅内側トラス面Siと、主に車幅方向外側を向く車幅外側トラス面Soと、主に下側を向く下側トラス面Sdとの4つのトラス構造から成る三角錐形状で構成される。
【0086】
図4、
図5に示すように、三角錐構造体61は、三角錐形状の各頂部に配設される複数(当例では4つ)のジョイント部62と、三角錐形状の各辺に配設される複数(当例では6本)の直線状の連結バー63とで構成される。
なお、連結バー63は、鋼材等により中実(円柱状)又は中空(円筒状)のバー形状で形成されている。
【0087】
詳しくは
、図2、
図3、
図8に示すように、4つのジョイント部62のうち、三角錐構造体61の後端(後側の頂部)に位置する後端ジョイント部62rは、リヤホイルハウス20の頂部20aにボルトB(
図8参照)等により締結固定されている。
【0088】
図4、
図5に示すように、4つのジョイント部62のうち、三角錐構造体61の車幅方向内端(車幅方向内側の頂部)に位置する車幅内端ジョイント部62iは、連結構造体65の車幅方向外端に連結されている。4つのジョイント部62のうち、三角錐構造体61の車幅方向外端(車幅方向外側の頂部)に位置する車幅外端ジョイント部62eは、骨格部材としてのCピラー27にボルト等を用いて締結固定されている(
図2、
図3参照)。4つのジョイント部62のうち、三角錐構造体61の上端(上側の頂部)に位置する上端ジョイント部62uは、
図2、
図3に示すように、骨格部材としてのリヤヘッダ14における、ルーフサイドレール13a(
図2参照)およびリヤピラー15との結合部分(付根部分)の下面にボルト等を用いて締結固定されている。
【0089】
図4、
図5に示すように、上端ジョイント部62uと車幅内端ジョイント部62iとは、6つの連結バー63のうち、三角錐構造体61の前方かつ車幅方向内側に位置する前内連結バー63aによって連結され、上端ジョイント部62uと車幅外端ジョイント部62eとは、6つの連結バー63のうち、三角錐構造体61の前方かつ車幅方向外側に位置する前外連結バー63bによって連結され、車幅内端ジョイント部62iと車幅外端ジョイント部62eとは、6つの連結バー63のうち、三角錐構造体61の前方かつ下側に位置する前下連結バー63cによって連結され、後端ジョイント部62rと車幅外端ジョイント部62eとは、6つの連結バー63のうち、三角錐構造体61の下方かつ車幅方向外側に位置する下外連結バー63dによって連結され、後端ジョイント部62rと車幅内端ジョイント部62iとは、6つの連結バー63のうち、三角錐構造体61の下方かつ車幅方向内側に位置する下内連結バー63eによって連結され、上端ジョイント部62uと後端ジョイント部62rとは、6つの連結バー63のうち、三角錐構造体61の上方かつ後側に位置する後上連結バー63fによって連結されている。
【0090】
そして、前内連結バー63a、前外連結バー63bおよび前下連結バー63cによって前側トラス面Sfが構成され、下外連結バー63d、下内連結バー63eおよび前下連結バー63cによって下側トラス面Sdが構成され、前内連結バー63a、下内連結バー63eおよび後上連結バー63fによって車幅内側トラス面Siが構成され、前外連結バー63b、下外連結バー63dおよび後上連結バー63fによって車幅外側トラス面Soが構成される。
【0091】
上端ジョイント部62uは、前内連結バー63a、前外連結バー63bおよび後上連結バー63fの各上端を接合可能に3口に分岐しており、これら3つの分岐部は、夫々に対応する連結バー63a,63b,63fの上端に向けて突出形成されるとともに、
図3、
図5に示すように、リヤヘッダ14の下面にボルト等により締結固定可能なフランジ部62aが形成されている。
【0092】
図4、
図5に示すように、車幅外端ジョイント部62eは、前外連結バー63b、前下連結バー63cおよび下外連結バー63dの各車幅方向外端を接合可能に3口に分岐しており、これら3つの分岐部は、夫々に対応する連結バー63b,63c,63dの車幅方向外端に向けて突出形成されるとともに、
図2、
図5に示すように、Cピラー27の車幅方向内面にボルト等により締結固定可能なフランジ部62bが形成されている。
【0093】
車幅内端ジョイント部62iは、前内連結バー63a、前下連結バー63cおよび下内連結バー63eの各車幅方向内端に加えて連結構造体65の車幅方向外端を接合可能に4口に分岐しており、これら4つの分岐部は、夫々に対応する連結バー63a,63c,63eの車幅方向内端および連結構造体65の車幅方向外端に向けて突出形成されている。
【0094】
但し、本実施形態においては、連結構造体65に備えた後述する第1クロスバー66は、三角錐構造体61の車幅方向内端に位置する車幅内端ジョイント部62iよりも車幅方向外側に至るまでに車幅方向に直線状に延設されており、上記の前下連結バー63cが該第1クロスバー66の一部を成すようにして一体形成されている。
【0095】
このため、車幅内端ジョイント部62iは、4つの分岐部のうち、前下連結バー63cの車幅方向内端と連結構造体65の車幅方向外端とに対応して車幅方向内外各側に向けて分岐する2つの分岐部に、第1クロスバー66が嵌挿されている。
【0096】
図8に示すように、後端ジョイント部62rは、リヤホイルハウス20の頂部20a(サスタワー)に設置される下壁部161と、該頂部20aをその上方から覆う前壁部162および上壁部163を備えた箱形状に形成されている。
【0097】
図2、
図4、
図5の特に
図4、
図5に示すように、後端ジョイント部62rは、下内連結バー63e、下外連結バー63dおよび後上連結バー63fの各後端を接合可能に3口に分岐しており、これら3つの分岐部は、夫々に対応する連結バー63e,63d,63fの各後端に向けて突出した下内分岐部164、下外分岐部165、後上分岐部166とで形成されている。
【0098】
図4、
図5、図
8に示すように、このうち、下内分岐部164、下外分岐部165は、後端ジョイント部62rの前壁部162の車幅方向内外各側に形成されるとともに、後上分岐部166は、後端ジョイント部62rの上壁部163に形成されている。
【0099】
さらに図8に示すように、後端ジョイント部62rの下壁部161は、スペーサ64を介してダンパ支持ブラケット22にボルトB等を用いて締結されている。
【0100】
このボルトBは、ダンパトップ21aをダンパ支持ブラケット22に締結するダンパ締結用のボルトであり、該ダンパ締結用のボルトB等を用いてダンパトップ21aと、後端ジョイント部62rの下壁部161およびスペーサ64とをダンパ支持ブラケット22に対して共締めしている。
【0101】
図1、
図2に示すように、上述した三角錐構造体61は、リヤホイルハウス20の縦壁状の車幅方向内面20iよりも車幅外側に配設されている。
詳しくは、三角錐構造体61のうち、車幅内端ジョイント部62iおよび後端ジョイント部62rがリヤホイルハウス20の縦壁状の車幅方向内面20iよりも車幅外側に配設され、下内連結バー63eが車両前後方向と略一致する方向に延びている。
【0102】
図4、
図5、
図9(a)に示すように、連結構造体65は、第1クロスバー66、第2クロスバー67、取付け杆68および連結部材69を備え、何れも車幅方向に延びている。
【0103】
第1クロスバー66は、上述したように、車幅内端ジョイント部62iよりも、換言すると、連結部材69に備えた第1クロスバー66以外の部材(第2クロスバー67、取付けプレートおよび連結部材69等)よりも車幅方向外側に直線状に延びている。そして、第1クロスバー66は、三角錐構造体61の車幅方向に延びる一辺としての前下連結バー63cを利用しつつ(つまり前下連結バー63cを一部に備えた一体に形成されており)、左右の車体側部に備えたCピラー27間において、これらCピラー27を、車幅外端ジョイント部62eを介して連結している(
図2参照)。
【0104】
図4、
図5に示すように、取付け杆68は、連結構造体65をバルクヘッド40に連結する部材であって、左右各側の側端フランジ部間にかけて車幅方向に直線状に延びている。
図4、
図9(a)に示すように、取付け杆68は、バルクヘッド40の上下方向の仕切り壁45に相当する高さの後面に、ボルト等を用いて取り付けられる取付け杆本体部68aと、該取付け杆本体部68aの下端から下方程後方に位置するように傾斜して延びる舌片部68bとで一体に形成されている。
【0105】
図4、
図5、
図9(a)に示すように、第2クロスバー67は、舌片部68bの上端部にその後面から溶接等により接合されており、第1クロスバー66に対して前方かつ上方位置にて平行に車幅方向に直線状に延びている。
【0106】
第2クロスバー67は、第1クロスバー66よりも細いが第1クロスバー66と同様に円柱状に形成しており、取付け杆68と略同じ車幅方向長さを有している(
図4、
図5参照)。
【0107】
図4、
図5に示すように、連結部材69は、第1クロスバー66と、第2クロスバー67および舌片部68bとの間を車幅方向に沿って繰り返し橋渡しするようにジグザグに延びる円柱状の部材であって、取付け杆68と略同じ車幅方向長さを有して形成されている。
【0108】
第1クロスバー66と第2クロスバー67との間には、これらクロスバー66,67と連結部材69とによって、車幅方向に沿って平面視で複数のトラス構造が構成される。
なお、当例では、連結部材69の前端(上端)を第2クロスバー67および舌片部68bに溶接等により接合したが(
図9(a)参照)、第1クロスバー66を省略して連結部材69の前端を舌片部68bのみに接合した構成を採用してもよい。
【0109】
図4、
図5、
図9(a)(b)に示すように、連結構造体65には、第1クロスバー66から前方に延びて乗員空間2F側に設けられた後席シート6Rのシートバック6bに備えたラッチ92aと係合するストライカ91を備えている。
【0110】
ストライカ91は、連結支持部90の一方を成す部材であって、
図9(a)(b)に示すように、車両前方に略水平に延びる左右一対の前方延在部91aと、これら前方延在部91aの前端を車幅方向に連結する連結部91bとで平面視でコ字状に一体形成されている。
【0111】
ところで
、図4、
図5、
図9(a)に示すように、第1クロスバー66は、シートバック6bに備えた左右一対のラッチ92aと略同じ高さにおいて、下側開口部46dの上部を横切るように車幅方向に水平に架設されている。
【0112】
図9(a)に示すように、ストライカ91は、左右一対の前方延在部91aの後端部(基端部)が上記第1クロスバー66の車幅方向における、ラッチ92aに対応する位置に溶接等により接合され、ラッチ92aに至るまで車両前方に延びている。
【0113】
ストライカ91は、ストライカ補強部94を介して連結部材69によって補強されている。
図9(a)に示すように、ストライカ補強部94は、連結部材69から車両側面視で前下状に傾斜した姿勢で直線状に延在し、その前下端が第1クロスバー66から前方に延びる前方延在部91aの車両前後方向の中間部(途中部)に溶接等により接合されている。これにより、ストライカ補強部94は、ストライカ91における、左右一対の前方延在部91aの途中部と、連結部材69との間において、これらを連結している。
【0114】
上述した本実施形態の車両の後部車体構造は、車体後部に上方が開口した荷台上方に有する荷室空間2Rが設けられ、該荷室空間2Rと、その前方に有する乗員空間2F(車室)とはバルクヘッド40により仕切られるとともに、荷室空間2Rの側方に、該荷室空間2Rのフロアパネル5Rの上面(フロア面)に対して上方、かつ、リヤサイドパネル18(側壁面)に対して車幅方向内側に突出するリヤホイルハウス20(タイヤハウスインナ)が設けられた車両の後部車体構造であって、バルクヘッド40とリヤホイルハウス20との間に、トラス構造からなる補強構造体60(補強部材)を備えたものである(
図1~
図3参照)。
【0115】
上記構成によれば、トラス構造から成る補強構造体60により、荷台上方に有する荷室空間2Rを圧迫することなくバルクヘッド40を含めた車体後部の剛性を、捩じり剛性等も含めて効率よく高めることができる。
【0116】
この発明の態様として、補強構造体60には、三角錐構造体61(3次元的な補強構造体)を備え、三角錐構造体61は、複数(当例では4つ)のトラス面Sf,Si,So,Sdから成るものである(
図4参照)。
【0117】
上記構成によれば、車体後部の3次元的な補強を効率的に行うことができる。すなわち、三角錐構造体61によってバルクヘッド40を含めた車体後部を、車両前後方向、車幅方向および上下方向の荷重に対して効率的に補強することができる。
【0118】
この発明の態様として、左右の三角錐構造体61(3次元的な補強構造体)の車幅方向に延びる前下連結バー63c(一辺)を利用しつつ左右の車体側部の骨格部材としてのCピラー27間において、これらCピラー27を連結する第1クロスバー66(クロスバー)を補強構造体60(上記補強部材)に備えたものである(
図2、
図4、
図5参照)。
【0119】
上記構成によれば、左右の三角錐構造体61の一辺を利用しつつCピラー27間に連結する第1クロスバー66を補強構造体60に備えることで、車体後部の車幅方向の剛性をさらに効率的に向上できる。
【0120】
この発明の態様として、第1クロスバー66から前方に延びて乗員空間2F側の後席シート6Rに設けられたシートバック6bに備えたラッチ92a(シートキャッチ)と係合するストライカ91を備えたものである(
図3~
図5、
図9(a)(b)参照)。
【0121】
上記構成によれば、三角錐構造体61の上記一辺を利用しつつCピラー27間に連結することにより補強された第1クロスバー66によってストライカ91をしっかりと支持することができる
この発明の態様として、上記シートバック6bが起立状態から前倒状態に移行可能(折り畳み可能)に形成され、上記バルクヘッド40に、上記荷台上方の荷室空間2Rと上記車室内の乗員空間2Fとの間をアクセス可能とする下側開口部46d(開口部)が形成されたものである。
【0122】
上記構成によれば、バルクヘッド40を補強構造体60により補強することで、該バルクヘッド40に下側開口部46dを設けることによる剛性低下を抑制しつつ、該下側開口部46dを通じた荷室空間2Rと乗員空間2Fとの間のアクセスを、シートバック6bに阻害されることなく可能とすることができる。
【0123】
この発明の態様として、補強構造体60(上記補強部材)には、バルクヘッド40に取り付けられるとともに第1クロスバー66に対して互いに間隔を隔てて車幅方向に延びる取付け杆68と、取付け杆68と第1クロスバー66との間において、これら取付け杆68と第1クロスバー66とに車幅方向に沿って交互に行き来しながら連結する連結部材69とを備えたものである(
図2~
図5、
図9(a)参照)。
【0124】
上記構成によれば、バルクヘッド40に取り付ける取付け杆68と第1クロスバー66とを、連結部材69で車幅方向に沿って複数箇所にて連結することにより、夫々の一体性が増し協働してバルクヘッド40をより効果的に補強することができる。
【0125】
この発明の態様として、上記連結部材69と、第1クロスバー66から前方に延びるストライカ91の途中部との間に、これらを連結するストライカ補強部94を備えたものである。
【0126】
上記構成によれば、ストライカ補強部94によってストライカ91を効率的に補強できる。
【0127】
この発明の態様として、三角錐構造体61は、リヤホイルハウス20の車幅方向内面20iより車幅方向外側に配設されたものである(
図1~
図5の特に
図1、
図2参照)。
【0128】
上記構成によれば、荷台への搭載物との干渉を避けつつ上記補強部材によって車体後部を補強できる。
【0129】
なお、本実施形態においては左右の三角錐構造体61を車幅方向に連結する連結構造体65は、バルクヘッド40の直後に配設しているため(
図1~
図5参照)、連結構造体65による、荷台への搭載物との干渉も避けることができる。
【0130】
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく様々な実施形態で形成することができる。
例えば、三角錐構造体61に備えた、複数の連結バー63を連結するジョイント部62は、一部材により形成したものに限らず、例えば図示省略するが、略2分割に構成したブラケット(ジョイント構成部材)によって連結バー63を挟み込むようにして一体化する構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0131】
2R…荷室空間(荷台)
2F…乗員空間(車室)
5R…リヤフロアパネル
6b…シートバック
18…リヤサイドパネル(側壁面)
20…リヤホイルハウス(タイヤハウスインナ)
20i…リヤホイルハウスの車幅方向内面
27…Cピラー(左右の車体側部の骨格部材)
40…バルクヘッド
46d…下側開口部(開口部)
60…補強構造体(補強部材)
61…三角錐構造体(3次元的な補強構造体)
63c…前下連結バー(3次元的な補強構造体の車幅方向に延びる一辺)
66…第1クロスバー(クロスバー)
68…取付け杆
69…連結部材
92a…ラッチ(シートキャッチ)
91…ストライカ
94…ストライカ補強部
Sf…前側トラス面(トラス構造)
Si…車幅内側トラス面(トラス構造)
So…車幅外側トラス面(トラス構造)
Sd…下側トラス面(トラス構造)