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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】モーター駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 5/46 20060101AFI20220906BHJP
【FI】
H02P5/46 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018217344
(22)【出願日】2018-11-20
(65)【公開番号】P2020088974
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091926
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 幸喜
(72)【発明者】
【氏名】白熊 拓美
(72)【発明者】
【氏名】泉宮 賢二
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-194186(JP,A)
【文献】特開2001-275395(JP,A)
【文献】特開2014-155294(JP,A)
【文献】国際公開第2014/045407(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 5/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の駆動軸を回転させる複数のモーターを駆動制御するモーター駆動装置であって、
前記複数のモーターのそれぞれに相等しい駆動電力を出力し、
前記複数のモーターのうちいずれか一つのモーターの回転数検知信号をフィードバック信号として、前記駆動電力を操作するモーター駆動制御部を備えるモーター駆動装置と、
前記モーターの回転数検知信号またはモーターの駆動電力より駆動異常を判断する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記モーターの駆動電力より、モーターの異常状態と、負荷の過負荷状態を判断することを特徴とするモーター駆動装置。
【請求項2】
前記制御部は、複数のモーターのうちいずれか一つのモーターにのみ駆動電力を出力し、回転数検知信号をフィードバック信号として、駆動電力を操作し、その際の操作された駆動電力の大きさよりモーターの異常状態と負荷の過負荷状態を判別することを特徴とする請求項1記載のモーター駆動装置。
【請求項3】
前記制御部は、操作された前記駆動動力に対する閾値を設けておき、操作された前記駆動電力が一つのモーターのみで前記閾値を超える場合は、前記モーターが異常状態であると判断することを特徴とする請求項2記載のモーター駆動装置。
【請求項4】
前記制御部は、操作された前記駆動動力に対する閾値を有しており、複数のモーターにおいて、操作された前記駆動動力が前記閾値を超える場合、複数のモーターにおける、操作された前記駆動動力の差が予め定められたバラツキ値よりも小さい場合、過負荷状態であると判定し、操作された前記駆動動力の差が前記バラツキ値以上である場合、操作された前記駆動動力の値が大きいモーターを異常状態であると判定することを特徴とする請求項2または3に記載のモーター駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のモーターを備えるモーター駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、共通の負荷(駆動軸)を2つのモーターで回転駆動する技術がある。従来技術では、負荷(出力軸)の回転を検出するセンサー(エンコーダー)からの情報に基づき、二つのモーターに対してそれぞれ制御された信号に基づき駆動電力を生成して当該2つのモーターを駆動している。
ところで、モーター駆動装置で駆動上の問題が生じた場合、原因を把握することが必要になる。
例えば、特許文献1では、モーターに対するPWM出力値をみて、過負荷状態にあるか否かを判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-163742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、モーター駆動に問題がある場合、負荷状態にあるかを見るだけではなく、モーターに異常がないかの判定を合わせて行うことが必要になる。
ところで、2つのモーター用いたダブル駆動構成においては、いずれのモーターで問題が生じているかを把握する必要があるが、片側のみのモーター故障の判断が以下2点の理由によりできない。
1)FG信号(回転検知信号)より判断する場合、片方のモーターが正常であれば所定の回転数で回っているため、片方のモーターが故障して出力がない或いは低くなっていてもFG信号は一見モーター正常時と同じように検出される。
通常のLock判断方法では、目標回転数に対して±7.5%の範囲外となる場合にエラーと判断する。
2)片側のモーターの駆動電力に依存して動作するため、フィードバック制御により駆動電力(PWM操作量)が上がるが、負荷側の劣化や突発的な異常によるトルク上昇も想定され、一概にモーターの故障と特定ができない。
【0005】
本願発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、複数のモーターを用いたモーター駆動装置において、駆動に問題がある場合、個別のモーターの異常や過負荷状態を適正に判定することができるモーター駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のモーター駆動装置のうち、第1の形態は、共通の駆動軸を回転させる複数のモーターを駆動制御するモーター駆動装置であって、
前記複数のモーターのそれぞれに相等しい駆動電力を出力し、
前記複数のモーターのうちいずれか一つのモーターの回転数検知信号をフィードバック信号として、前記駆動電力を操作するモーター駆動制御部を備えるモーター駆動装置と、
前記モーターの回転数検知信号またはモーターの駆動電力より駆動異常を判断する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記モーターの駆動電力より、モーターの異常状態と、負荷の過負荷状態を判断することを特徴とする。
【0007】
他の形態のモーター駆動装置の発明は、前記形態の発明において、前記制御部は、複数のモーターのうちいずれか一つのモーターにのみ駆動電力を出力し、回転数検知信号をフィードバック信号として、駆動電力を操作し、その際の操作された駆動電力の大きさよりモーターの異常状態と負荷の過負荷状態を判別することを特徴とする。
【0008】
他の形態のモーター駆動装置の発明は、前記形態の発明において、前記制御部は、操作された前記駆動動力に対する閾値を有しており、操作された前記駆動電力が一つのモーターのみで前記閾値を超える場合は、前記モーターが異常状態であると判断することを特徴とする。
【0009】
他の形態のモーター駆動装置の発明は、前記形態の発明において、前記制御部は、操作された前記駆動動力に対する閾値を有しており、複数のモーターにおいて、操作された前記駆動動力が前記閾値を超える場合、複数のモーターにおける、操作された前記駆動動力の差が予め定めたバラツキ値よりも小さい場合、過負荷状態であると判定し、操作された前記駆動動力の差が前記バラツキ値以上である場合、操作された前記駆動動力の値が大きいモーターを異常状態であると判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数のモーターを用いた駆動装置において、駆動異常が生じた際に、個別のモーターの異常と負荷の過負荷状態を判別することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るモーター駆動回路の回路ブロック図および二つのモーターによる回転駆動機構の模式図である。
図2】2つのモーターを起動した時の一方のモーターの回転数の変動を示す波形図であり、(a)は初期、(b)は経年劣化後のものである。
図3】切替制御例2に係る制御切替シーケンスのフローチャートである。
図4】切替制御例2に係り、2つのモーターを起動した時の一方のモーターの回転数の変動を示す波形図である。
図5】切替制御例2に係り、2つのモーターを起動した時の他方のモーターの回転数の変動を示す波形図である。
図6】切替制御例3に係る制御切替シーケンスのフローチャートである。
図7】切替制御例3に係り、2つのモーターを起動した時の一方のモーターの回転数と駆動電力の変動を示す波形図である。
図8】切替制御例3に係り、2つのモーターを起動した時の他方のモーターの回転数と駆動電力の変動を示す波形図である。
図9】本発明の実施形態において、駆動異常が生じた際の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0013】
図1に示すように、本実施形態のモーター駆動装置1は、共通の駆動軸3を回転させる2つのモーターM1、M2を駆動制御する。例えば、図示するように各モーターの出力軸に固定されたギアG1,G2が、駆動軸3に固定されたギアG3に噛合連結された伝動機構により2つのモーターM1、M2が駆動軸3に接続されるが、この伝動機構は一例であってこれに限定されるものではない。例えば減速歯車を追加してもよい。
駆動軸3とローラー2とが同軸に一体となっている。ローラー2、駆動軸3及びギアG3が共通の負荷となる。
なお、この実施形態では、モーターが2つの装置について説明しているが、本発明としては、モーターの数が二つに限定されるものではなく、3つ以上のモーターを備えるものであってもよい。
【0014】
モーター駆動装置1は、モーター駆動制御部10と、システム制御部20とを備える。
モーター駆動制御部10は、PWM方式の駆動電力をモーターM1、M2に出力するモーター駆動アンプを含んだものであり、2つのモーターM1、M2のそれぞれに相等しい駆動電力PWMを出力する。
また、モーター駆動制御部10には、モーターM1から出力される回転数検出信号M1_FGと、モーターM2から出力される回転数検出信号M2_FGとがそれぞれ入力される。
【0015】
モーター駆動制御部10は、PIDコントローラー11を含み、2つのモーターのうち、いずれか一つモーターの回転数検知信号M1_FG又はM2_FGのうちセレクター12によって切替えられる回転数検出信号がフィードバック信号としてPIDコントローラー11に入力され、駆動電力PWMを操作するフィードバック制御(PID制御)を行う。モーター駆動制御部10は、PIDコントローラー11から出力される選択信号SELに従ったセレクター12の動作によってフィードバック信号を2つのモーターM1,M2の回転数検出信号の間で切替え可能である。
【0016】
システム制御部20からPIDコントローラー11には、上記フィードバック制御(PID制御)の目標値を指定する速度指令信号、上記選択信号SELが入力される。
PIDコントローラー11からシステム制御部20には、上記フィードバック制御(PID制御)における駆動電力(PWM)の操作量(デューティー比)及びフィードバック信号(回転数検出信号)が入力される。
【0017】
システム制御部20は、速度指令信号、選択信号SELをPIDコントローラー11に出力して、モーターM1,M2の駆動制御を実行させるとともに、モーターM1、M2の駆動制御時にPIDコントローラー11から入力された情報に基づき計算処理して、選択信号SELを決定する。その具体的制御例を以下に挙げる。
【0018】
(1)切替制御例1
切替制御例1では、モーターM1、M2の起動又は停止の累積回数が所定値を超えたら切替える。
システム制御部20は、速度指令信号又はフィードバック信号(回転数検出信号)に基づき、モーターM1,M2の起動の回数を累計する。
システム制御部20は、モーターM1、M2の起動の累積回数が所定値を超えたら、選択信号SELを切替える。
すなわち、システム制御部20は、モーターM1の回転数検出信号M1_FGをフィードバック信号として選択した制御でのモーターM1,M2の起動の累積回数が所定値を超えたら、モーターM2の回転数検出信号M2_FGをフィードバック信号とする選択信号SELに切替える。これに応じてその選択信号SELをPIDコントローラー11がセレクター12に入力してフィードバック信号をモーターM2の回転数検出信号M2_FGに切替える。
同様に、システム制御部20は、モーターM2の回転数検出信号M2_FGをフィードバック信号として選択した制御でのモーターM1,M2の起動の累積回数が所定値を超えたら、モーターM1の回転数検出信号M1_FGをフィードバック信号とする選択信号SELに切替える。これに応じてその選択信号SELをPIDコントローラー11がセレクター12に入力してフィードバック信号をモーターM1の回転数検出信号M1_FGに切替える。
起動の累積回数に代えて、停止の累積回数により実施してもよいし、双方の累積回数で実施してもよい。
以上のようにして、一定の累積駆動回数毎にフィードバック信号を切替えることで、2つのモーターM1,M2の均衡を取って円滑で効率の良い駆動を維持することができる。
【0019】
(2)切替制御例2
切替制御例2は、2つのモーターM1,M2の回転数検出信号のうち、フィードバック信号としたときに応答性がより良くなる回転数検出信号に、フィードバック信号を切替える。
モーターM1、M2の起動時の回転数が変動すると速度リップルが生じる、すなわち、回転数がオーバーシュート、アンダーシュートを繰り返す。速度リップルの振幅が次第に小さくなっていき、回転数が目標回転数rGに収束する。
ギアの摩耗などの経年劣化により負荷条件が変化するので、速度リップルの最大振幅が大きくなり、速度リップルが一定範囲に収束するまでの整定時間Tが図2(b)に示すように伸びる。整定時間Tは、例えば所定の収束判定時間tS(例50msec)連続で回転数検出信号(FG)が目標回転数rGを中心とした所定の収束範囲rS(例±5%)以内になった時点(図2(a)の時点ta、図2(b)の時点tb)までとする。整定時間Tの起点は起動開始時点t0である。
【0020】
システム制御部20は、以上の整定時間Tの長短により応答性の良し悪しを判断して選択信号SELを決定するための以下の制御切替シーケンスを実行する。以下は電源ONを契機に制御切替シーケンスを実行する例であり、制御切替シーケンスは待機時間等その他の時機に実行してもよい。また、モーター駆動装置1がプリンターに組み込まれている場合を例とする。図3のフローチャートを参照する。
システム制御部20は、プリンターの主電源が入り、電源がONとなったら(S11)、プリント準備処理の一つである制御切替シーケンスを起動し(S12)、制御切替シーケンスとしてまず、モーターM1の回転数検出信号M1_FGをフィードバック信号とする選択信号SELをPIDコントローラー11に入力して、モーターM1の回転数検出信号M1_FGをフィードバック信号として選択させる(S13)。
【0021】
その上でシステム制御部20は、速度指令(目標回転数)をPIDコントローラー11に入力してモーターM1,M2を同時に回転起動させる(S14)。
システム制御部20は、PIDコントローラー11から返される回転数検出信号(FG信号)に基づき、図4に可視化するような整定時間T1を測定する(S15)。この整定時間T1(図4の区間t0-t1に相当)は、モーターM1の回転数検出信号M1_FGがフィードバック信号である時の整定時間である。
システム制御部20は、整定時間T1の測定が終われば、速度指令(目標回転数:0)をPIDコントローラー11に入力してモーターM1,M2をともに停止させる(S16)。
【0022】
次に、システム制御部20は、モーターM2の回転数検出信号M2_FGをフィードバ
ック信号とする選択信号SELをPIDコントローラー11に入力して、モーターM2の回転数検出信号M2_FGをフィードバック信号として選択させる(S17)。
その上でシステム制御部20は、速度指令(S14と同じ目標回転数)をPIDコントローラー11に入力してモーターM1,M2を同時に回転起動させる(S18)。
システム制御部20は、PIDコントローラー11から返される回転数検出信号(FG信号)に基づき、図5に可視化するような整定時間T2を測定する(S19)。この整定時間T2(図5の区間t0-t2に相当)は、モーターM2の回転数検出信号M2_FGがフィードバック信号である時の整定時間である。
システム制御部20は、整定時間T2の測定が終われば、速度指令(目標回転数:0)をPIDコントローラー11に入力してモーターM1,M2をともに停止させる(S20)。
【0023】
次に、システム制御部20は、整定時間T1より整定時間T2が長ければ(S21でYES)、モーターM1の回転数検出信号M1_FGをフィードバック信号とする選択信号に決定し(S22)、整定時間T2より整定時間T1が長ければ(S21でNO)、モーターM2の回転数検出信号M2_FGをフィードバック信号とする選択信号に決定し(S23)、制御切替シーケンスを終了する(S24)。図4図5に示した例では、モーターM1の回転数検出信号M1_FGをフィードバック信号とする選択信号に決定する。
なお、システム制御部20は、プリント準備処理をすべて実行して、プリント準備完了状態に移行する(S25)。
システム制御部20は、ステップS22,S23で決定した選択信号をPIDコントローラー11に入力して、次の制御切替シーケンスが行われるまでは、その選択信号に従った回転数検出信号をフィードバック信号として選択させ、PIDコントローラー11はプリント動作等に伴うモーターM1,M2の駆動を制御する。
【0024】
以上のようにして、応答性がより良くなる回転数検出信号にフィードバック信号を切替えることで、2つのモーターM1,M2の均衡を取って円滑で効率の良い駆動を維持することができる。
なお、以上の例では、応答性の良し悪しを整定時間Tの長短により判断したが、他の指標により判断してもよい。例えば、起動後、オーバーシュートとアンダーシュートが1回ずつあると、最大振幅が測定できるから、これを判断指標としてもよい。また、起動後、オーバーシュートが1回あると、目標回転数rGに対するオバーフロー量が測定できるか
ら、これを判断指標としてもよい。
【0025】
(3)切替制御例3
切替制御例3は、2つのモーターM1,M2の回転数検出信号のうち、フィードバック信号としたときに所定回転数(本例では0)から目標回転数に達するまでの駆動電力の積分値がより小さくなる回転数検出信号に、フィードバック信号を切替える。図6のフローチャートを参照する。上記の切替制御例2と同じステップは同じ符号を付して説明を省略する。
【0026】
図6に示すようにステップS14の後、システム制御部20は、PIDコントローラー11から返される操作量(デューティー比)に基づき、図7に可視化するような駆動電力PWMの積分値S1を測定する(S15B)。この積分値S1は、図7の区間t0-t3のデューティー比の時間積分値に相当し、モーターM1の回転数検出信号M1_FGがフィードバック信号である時の積分値である。
【0027】
同様に、ステップS18の後、システム制御部20は、PIDコントローラー11から返される操作量(デューティー比)に基づき、図8に可視化するような駆動電力PWMの積分値S2を測定する(S19B)。この積分値S2は、図8の区間t0-t4のデューティー比の時間積分値に相当し、モーターM2の回転数検出信号M2_FGがフィードバック信号である時の積分値である。
【0028】
システム制御部20は、積分値S1より積分値S2が大きければ(S21BでYES)、モーターM1の回転数検出信号M1_FGをフィードバック信号とする選択信号に決定し(S22)、積分値S2より積分値S1が大きければ(S21BでNO)、モーターM2の回転数検出信号M2_FGをフィードバック信号とする選択信号に決定し(S23)、制御切替シーケンスを終了する(S24)。図7図8に示した例では、モーターM2の回転数検出信号M2_FGをフィードバック信号とする選択信号に決定する。
その他、上記の切替制御例2と同様に実施する。
【0029】
以上のようにして、駆動電力の積分値がより小さくなる回転数検出信号にフィードバック信号を切替えることで、2つのモーターM1,M2の均衡を取って円滑で効率の良い駆動を維持することができる。
【0030】
以上の実施形態にあっては、共通の駆動軸を回転させる複数のモーターを2つとしたが、3つ以上にして実施してもよい。その場合、各モーターの回転数検出信号をフィードバック信号としたときの整定時間や駆動電力の積分値を測定して最も整定時間の短いもの、最も駆動電力の積分値の小さいものを選択して実施するとよい。また、制御切替シーケンスの実行ごとに、3つ以上から2つをランダムに選択して、上記実施形態と同様に実施してもよい。
【0031】
次に、上記駆動装置において、駆動異常が生じた際の対応について説明する。
なお、モーターの駆動動作における前提および故障判定について以下の通りに定める。
1) 一方のモーターの回転数から、両モーターに同一のPWM制御を行う駆動構成をとる。
2) モーターを起動し、定常状態時のPWM出力量を監視する。
3) PWMの出力値が正常範囲外だった場合に、故障特定モードに遷移する。
4) 所定の回転数になるよう、モーターを個別にFB制御を行い、定常時のPWM出力値を予め定めたリファレンス値(WRR_PWM)と比較する。
[M1特性測定時]
M1:M1_FG信号によるFB制御、M2:PWM出力 OFF(0%)
[M2特性測定時]
M1:PWM出力 OFF、M2:M2_FG信号によるFB制御
なお、通常時と、故障判定時における駆動電力の関係を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
異常判定に伴う手順では、図9に示すフローチャートによりモーター異常、負荷異常を判定する。以下のフローチャートは、システム制御部20の制御によって実行される。したがって、この実施形態では、システム制御部20が本発明の制御部に相当する。また、モーター駆動制御部を本発明の制御部に含むものであってもよい。
【0034】
故障特定モードを開始すると、M1特性測定モードとなり、モーターM1のPWMの出力値が、リファンレンス値(WRR_PWM)よりも大きいかを判定する(ステップs30)。
モーターM1のPWMの出力値が、リファンレンス値よりも大きくはない場合(ステップ)s30、N)、M2特性測定モードとなり、モーターM2のPWMの出力値が、リファンレンス値(WRR_PWM)よりも大きいかを判定する(ステップs31)。モーターM2のPWMの出力値が、リファンレンス値(WRR_PWM)よりも大きければ、M2モーターのみが異常であると判定する(ステップs32)。
【0035】
モーターM1のPWMの出力値が、リファンレンス値よりも大きい場合(ステップs30、Y)、モーターM2のPWMの出力値が、リファンレンス値(WRR_PWM)よりも大きいかを判定する(ステップs33)。モーターM2のPWMの出力値が、リファンレンス値(WRR_PWM)よりも大きくない場合(ステップs33、N)、M1モーターのみが異常であると判定する(ステップs34)。
【0036】
モーターM1のPWMの出力値が、リファンレンス値よりも大きい場合(ステップs33、Y)、モーターM1とモーターM2のPWMの出力値の差が、予め定められた両モーター間の特性バラツキ値よりも小さいかを判定する(ステップs35)。
PWMの出力値の差が、予め定められた両モーター間の特性バラツキ値よりも小さい場合(ステップs35、Y)、過負荷状態であると判定する(ステップs37)。
PWMの出力値の差が、予め定められた両モーター間の特性バラツキ値よりも小さくない場合(ステップs35、N)、M1特性測定モードにおけるモーターM1のPWM値が、M2特性測定モードにおけるモーターM2のPWM値よりも大きいかを判定する(ステップs36)。
【0037】
M1特性測定モードにおけるモーターM1のPWM値が、M2特性測定モードにおけるモーターM2のPWM値よりも大きい場合(ステップs36、Y)、M1モーターが異常であると判定する(ステップ38。
M1特性測定モードにおけるモーターM1のPWM値が、M2特性測定モードにおけるモーターM2のPWM値よりも大きくない場合(ステップs36、N)、M2モーターが異常であると判定する(ステップs39)。
【0038】
上記手順により、複数モーターを備えるモーター駆動装置において、駆動異常があった場合に、いずれのモーターに異常があるか、過負荷であるかを適正に判定することが可能になる。
【0039】
なお、本発明のモーター駆動装置は、例えば画像形成装置における用紙搬送や定着器において用いることができるが、本発明としては、モーター駆動装置の適用範囲が上記に限定されるものではなく、画像形成装置外においても当然に適用することができる。
【0040】
以上、本発明について上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記説明の内容に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りは上記実施形態に対する適宜の変更が可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 モーター駆動装置
2 モーター
3 駆動軸
10 モーター駆動制御部
20 システム制御部
M1、M2 モーター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9