(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】計測装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20220906BHJP
【FI】
A61B6/00 350D
A61B6/00 330A
(21)【出願番号】P 2018218800
(22)【出願日】2018-11-22
【審査請求日】2021-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長尾 健司
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-018681(JP,A)
【文献】特開2018-110637(JP,A)
【文献】特開2012-115581(JP,A)
【文献】特開2003-290225(JP,A)
【文献】特開2005-237825(JP,A)
【文献】特開2011-125385(JP,A)
【文献】特開2014-119866(JP,A)
【文献】特開2002-109550(JP,A)
【文献】特開2006-346465(JP,A)
【文献】国際公開第2012/026146(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107665497(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0122480(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/14 、
G06T 7/00 - 7/90 、
G06V10/00 -20/90 、30/418、40/16 、
40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の胸部の動態を放射線撮影することにより取得された動態画像の複数のフレーム画像から深吸気時のフレーム画像を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された深吸気時のフレーム画像に対して心胸郭比計測を行う計測手段と、
前記抽出手段により深吸気時のフレーム画像が複数抽出された場合、前記抽出された複数の深吸気時のフレーム画像のうち、いずれのフレーム画像の心胸郭比の計測結果を前記被検体の心胸郭比とするかを選択する選択手段と、
を備える計測装置。
【請求項2】
前記抽出手段は、前記複数のフレーム画像のそれぞれから肺野領域を抽出し、抽出した肺野領域の特徴量を算出し、算出した特徴量に基づいて、深吸気時のフレーム画像を抽出する請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記抽出手段により抽出されたフレーム画像を表示手段に表示させる表示制御手段を備える請求項1又は2に記載の計測装置。
【請求項4】
前記表示制御手段は、前記複数のフレーム画像から算出された特徴量の時間変化を示すグラフを前記表示手段に表示させるとともに、前記グラフ上の前記計測手段による計測対象となるフレーム画像の位置にマーカーを表示させる請求項3に記載の計測装置。
【請求項5】
前記計測手段は、前記抽出手段により抽出されたフレーム画像を解析することにより心臓幅及び胸郭幅を計測し、計測した心臓幅と胸郭幅に基づいて心胸郭比を計測する請求項1~4のいずれか一項に記載の計測装置。
【請求項6】
前記選択手段は、ユーザー操作により選択されたフレーム画像
の心胸郭比の計測結果を前記被検体の心胸郭比とすることを選択する請求項
1~5のいずれか一項に記載の計測装置。
【請求項7】
前記選択手段は、予め設定された優先度に従って、
前記抽出された複数のフレーム画像のうち、いずれのフレーム画像の心胸郭比の計測結果を前記被検体の心胸郭比とするかを選択する請求項
1~5のいずれか一項に記載の計測装置。
【請求項8】
前記優先度は、前記複数の複数のフレーム画像のそれぞれに付与されているフレーム番号の昇順又は降順である請求項
7に記載の計測装置。
【請求項9】
前記選択手段は、前記抽出手段により抽出された複数のフレーム画像のそれぞれに心胸郭比計測を行って計測値を取得し、予め設定された条件に合致する計測値のフレーム画像の計測結果を前記被検体の心胸郭比とすることを選択する請求項
1~5のいずれか一項に記載の計測装置。
【請求項10】
ユーザー操作により前記抽出手段により抽出された深呼吸時のフレーム画像とは異なるフレーム画像が心胸郭比の計測対象として選択された場合、注意喚起を促す警告を出力する警告手段を備える請求項1~
9のいずれか一項に記載の計測装置。
【請求項11】
コンピューターを、
被検体の胸部の動態を放射線撮影することにより取得された動態画像の複数のフレーム画像から深吸気時のフレーム画像を抽出する抽出手段、
前記抽出手段により抽出された深吸気時のフレーム画像に対して心胸郭比計測を行う計測手段、
前記抽出手段により深吸気時のフレーム画像が複数抽出された場合、前記抽出された複数の深吸気時のフレーム画像のうち、いずれのフレーム画像の心胸郭比の計測結果を前記被検体の心胸郭比とするかを選択する選択手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば心臓肥大や肥大型心筋症などの診断を行う場合に、被検体の胸部を放射線で撮影し、その撮影で得られた放射線画像を用いて、心臓の幅と胸郭の幅とを求め、それらの比(心胸郭比=心臓幅/胸郭幅)(CTR)を算出することが行われている。
一般的に、放射線撮影で得られた静止画像に表された心臓の陰影から、心胸郭比(CTR)を求めているが、静止画では心臓の鼓動による動きが考慮されていないため、撮影した瞬間の心臓が収縮状態なのか拡大状態なのかで正確に測れない恐れがある。そのため、被検体の胸部の動態を放射線撮影した動態画像における各フレーム画像にて心胸郭比計測を実施し、適切な値を取捨選択することで、より診断に適した情報を提供することが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数フレームのX線画像データを取得し、フレームごとに心胸郭比を求めることで、複数の時点における心胸郭比を提供することが記載されている。また、フレームごとに求められた心胸郭比のうち最大値を表示手段に表示させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、診断の決め手となる心胸郭比計測を実施する画像は、深吸気時の撮影画像である必要がある。特許文献1では、全フレーム画像に対して一様に心胸郭比計測を実施し、その中で単純に心胸郭比が最大値となるものを抽出している。しかし、単純な最大値が真に診断に適した(すなわち、深吸気時の)心胸郭比であるとは限らない。また複数回の呼吸を撮影した動態画像においては、一連のフレーム画像数が数百にも上るため、殆どの計測値が不要であるにも関わらず計測処理が行われ、無駄な時間が掛かってしまう。
【0006】
本発明の課題は、動態画像における、より適切なフレーム画像に対して効率的に心胸郭比計測を行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の計測装置は、
被検体の胸部の動態を放射線撮影することにより取得された動態画像の複数のフレーム画像から深吸気時のフレーム画像を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された深吸気時のフレーム画像に対して心胸郭比計測を行う計測手段と、
前記抽出手段により深吸気時のフレーム画像が複数抽出された場合、前記抽出された複数の深吸気時のフレーム画像のうち、いずれのフレーム画像の心胸郭比の計測結果を前記被検体の心胸郭比とするかを選択する選択手段と、
を備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記抽出手段は、前記複数のフレーム画像のそれぞれから肺野領域を抽出し、抽出した肺野領域の特徴量を算出し、算出した特徴量に基づいて、深吸気時のフレーム画像を抽出する。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、
前記抽出手段により抽出されたフレーム画像を表示手段に表示させる表示制御手段を備える。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、
前記表示制御手段は、前記複数のフレーム画像から算出された特徴量の時間変化を示すグラフを前記表示手段に表示させるとともに、前記グラフ上の前記計測手段による計測対象となるフレーム画像の位置にマーカーを表示させる。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1~4のいずれか一項に記載の発明において、
前記計測手段は、前記抽出手段により抽出されたフレーム画像を解析することにより心臓幅及び胸郭幅を計測し、計測した心臓幅と胸郭幅に基づいて心胸郭比を計測する。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1~5のいずれか一項に記載の発明において、
前記選択手段は、ユーザー操作により選択されたフレーム画像の心胸郭比の計測結果を前記被検体の心胸郭比とすることを選択する。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1~5のいずれか一項に記載の発明において、
前記選択手段は、予め設定された優先度に従って、前記抽出された複数のフレーム画像のうち、いずれのフレーム画像の心胸郭比の計測結果を前記被検体の心胸郭比とするかを選択する。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、
前記優先度は、前記複数の複数のフレーム画像のそれぞれに付与されているフレーム番号の昇順又は降順である。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項1~5のいずれか一項に記載の発明において、
前記選択手段は、前記抽出手段により抽出された複数のフレーム画像のそれぞれに心胸郭比計測を行って計測値を取得し、予め設定された条件に合致する計測値のフレーム画像の計測結果を前記被検体の心胸郭比とすることを選択する。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項1~9のいずれか一項に記載の発明において、
ユーザー操作により前記抽出手段により抽出された深呼吸時のフレーム画像とは異なるフレーム画像が心胸郭比の計測対象として選択された場合、注意喚起を促す警告を出力する警告手段を備える。
【0018】
請求項11に記載の発明のプログラムは、
コンピューターを、
被検体の胸部の動態を放射線撮影することにより取得された動態画像の複数のフレーム画像から深吸気時のフレーム画像を抽出する抽出手段、
前記抽出手段により抽出された深吸気時のフレーム画像に対して心胸郭比計測を行う計測手段、
前記抽出手段により深吸気時のフレーム画像が複数抽出された場合、前記抽出された複数の深吸気時のフレーム画像のうち、いずれのフレーム画像の心胸郭比の計測結果を前記被検体の心胸郭比とするかを選択する選択手段、
として機能させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、動態画像における、より適切なフレーム画像に対して効率的に心胸郭比計測を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態における計測装置の機能的構成を示すブロック図である。
【
図2】心胸郭比計測の設定画面の一例を示す図である。
【
図3】
図1の制御部により実行される心胸郭比計測処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】肺尖及び横隔膜の位置の抽出手法を説明するための図である。
【
図5】
図3のステップS3において実行される自動心胸郭比計測処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】計測結果を表示した心胸郭比計測画面の一例を示す図である。
【
図9】
図3のステップS4において実行される手動心胸郭比計測処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0022】
〔計測装置1の構成〕
まず、本発明に係る計測装置1の構成について説明する。
計測装置1は、被検者の胸部を動態撮影することにより得られた動態画像から心胸郭比を計測する装置である。
動態撮影とは、被検者の対象部位(ここでは、胸部)に対し、X線等の放射線をパルス状にして所定時間間隔で繰り返し照射するか(パルス照射)、もしくは、低線量率にして途切れなく継続して照射する(連続照射)ことで、被写体の動態を示す複数の画像を取得することをいう。動態撮影により得られた一連の画像を動態画像と呼ぶ。また、動態画像を構成する複数の画像のそれぞれをフレーム画像と呼ぶ。
【0023】
図1は、計測装置1の機能的構成を示すブロック図である。
図1に示すように、計測装置1は、制御部11、記憶部12、操作部13、表示部14、通信部15等を備えて構成され、各部はバス16により接続されている。
【0024】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等により構成される。制御部11のCPUは、操作部13の操作に応じて、記憶部12に記憶されているシステムプログラムや各種処理プログラムを読み出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って、計測装置1各部の動作を集中制御する。例えば、制御部11は、後述する心胸郭比計測処理を実行し、抽出手段、計測手段、表示制御手段、選択手段、警告手段として機能する。
【0025】
記憶部12は、不揮発性の半導体メモリーやハードディスク等により構成される。記憶部12は、システムプログラムや制御部11で実行される各種プログラム、プログラムにより処理の実行に必要なパラメーター等のデータを記憶する。例えば、記憶部12は、後述する心胸郭比計測処理を実行するためのプログラム等を記憶している。各種プログラムは、読取可能なプログラムコードの形態で格納され、制御部11は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
【0026】
また、記憶部12は、画像DB(Data Base)121を有している。画像DB121は、例えば、図示しない撮影装置から送信された動態画像の各フレーム画像に患者情報(例えば、患者ID、患者の氏名、身長、体重、年齢、性別等)、検査情報(例えば、検査ID、検査日、撮影部位(ここでは、胸部)、撮影方向(正面、側面)等)、画像情報(画像ID、放射線照射条件、画像読取条件、撮影順を示す番号(フレーム番号)等)を対応付けて記憶する。
【0027】
操作部13は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、ユーザーによるキーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された指示信号を制御部11に出力する。また、操作部13は、表示部14の表示画面にタッチパネルを備えても良く、この場合、タッチパネルを介して入力された指示信号を制御部11に出力する。
【0028】
表示部14は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等のモニターにより構成され、制御部11から入力される表示信号の指示に従って、操作部13からの入力指示やデータ等を表示する。
【0029】
通信部15は、LANアダプターやモデムやTA(Terminal Adapter)等を備え、通信ネットワークに接続された図示しない撮影装置等の外部装置との間のデータ送受信を制御する。
【0030】
〔計測装置1の動作〕
次に、本実施形態における計測装置1の動作について説明する。
計測装置1において、制御部11は、ユーザーによる操作部13の操作に応じて
図2に示す設定画面141を表示部14に表示させ、設定画面141から心胸郭比計測に係る各種設定を受け付ける。
【0031】
図2に示すように、設定画面141には、心胸郭比計測を自動適用するか否かを選択するためのチェックボックス41と、心胸郭比計測の対象候補となるフレーム画像が複数候補抽出された場合に、実際に計測対象とするフレーム画像(計測結果の元となるフレーム画像)を手動で選択する(手動選択)か自動で選択する(自動選択)かを選択するためのラジオボタン42と、自動選択が選択された場合に、フレーム番号順優先で選択するか計測値順優先で選択するかを選択するためのラジオボタン43と、が設けられている。また、フレーム順を選択するラジオボタン43が押下された場合に昇順で選択するか降順で選択するかを指定するためのプルダウンメニュー44と、計測値順が選択された場合にどのような条件(例えば、最大値、最小値、平均値等)に合致する計測値を被検者の心胸郭比として選択するかを指定するためのプルダウンメニュー45とが設けられている。
【0032】
ラジオボタン42は、チェックボックス41にチェックが入った場合にのみ入力が可能となる。また、ラジオボタン43は、ラジオボタン42で自動選択が選択された場合にのみ入力が可能となる。さらに、プルダウンメニュー44は、ラジオボタン43でフレーム順が選択された場合にのみ入力が可能となり、プルダウンメニュー45は、ラジオボタン43で計測値順が選択された場合にのみ入力が可能となる。
【0033】
設定画面141から入力された設定情報は、制御部11により記憶部12に記憶される。制御部11は、操作部13により画像DB121に記憶されている動態画像の中から心胸郭比の計測対象の動態画像が選択されると、制御部11と記憶部12に記憶されているプログラムとの協働により心胸郭比計測処理(
図3参照)を実行し、記憶部12に記憶されている設定情報に基づいて心胸郭比の計測を行う。
【0034】
以下、
図3を参照して、心胸郭比計測処理について説明する。
まず、制御部11は、選択された動態画像の中から深吸気時のフレーム画像を抽出する(ステップS1)。
ここで、診断の決め手となる心胸郭比計測を実施するには、深吸気時に撮影された画像で計測を行う必要がある。そこで、ステップS1では、心胸郭比計測の対象となるフレーム画像として、深吸気時のフレーム画像を抽出する。なお、本実施形態において、深吸気時とは、深呼吸により最大吸気位となっている時点をさす。
【0035】
ステップS1において、制御部11は、例えば、まず、先頭のフレーム画像における肺野領域の外縁部を抽出する。肺野領域は、公知の手法を用いて抽出することができる。例えば、特開平8-335271号公報に記載されているように、先頭のフレーム画像の水平方向及び垂直方向を順次走査してそれぞれの方向における信号値のプロファイルを作成し、プロファイルにおける変曲点に基づいて肺野領域の外縁部を抽出する。
次いで、制御部11は、各フレーム画像の肺野領域の肺尖の位置と横隔膜の位置を求める。例えば、
図4(a)に示す先頭のフレーム画像(G)から抽出された肺野領域(H)のうち、最小y座標となる点を肺尖の位置(H1)として自動的に抽出する(
図4(b)参照)。また、肺野領域(H)が存在するx座標の範囲(X1-X2)の内、その中央x座標(X3)であり、かつ、最大y座標となる点(H2)を横隔膜の位置として自動的に抽出する(
図4(c)参照)。あるいは、表示部14に先頭のフレーム画像を表示し、操作部13によりユーザーが肺尖及び横隔膜の位置を直接指定することとしてもよい。そして、先頭のフレーム画像から求めた肺尖及び横隔膜の位置をパターンマッチングにて残りのフレーム画像に対して追跡していくことで、各フレーム画像の肺尖の位置と横隔膜の位置を求める。
図4(a)~(c)は右肺のみを示しているが、左肺も同様である。
そして、制御部11は、肺尖の位置と横隔膜の位置の垂直方向の距離が最も大きいフレーム画像を深吸気時のフレーム画像として抽出する。
なお、深吸気時のフレーム画像の抽出手法は上述したものに限定されず、例えば、制御部11は、各フレーム画像の肺野領域の他の特徴量、例えば、面積を求め、面積が最も大きいフレーム画像を深吸気時のフレーム画像として抽出することとしてもよい。
【0036】
次いで、制御部11は、記憶部12を参照し、心胸郭比計測の自動適用が設定されているか否かを判断する(ステップS2)。
心胸郭比計測の自動適用が設定されていると判断した場合(ステップS2;YES)、制御部11は、自動心胸郭比計測処理を実行する(ステップS3)。
【0037】
図5は、自動心胸郭比計測処理の流れを示すフローチャートである。自動心胸郭比計測処理は、制御部11と記憶部12に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0038】
まず、制御部11は、ステップS1において複数の深吸気時のフレーム画像(複数候補と呼ぶ)が抽出されたか否かを判断する(ステップS301)。ここで、例えば、深吸気時に息を止めて撮影された動態画像や、複数の呼吸周期が撮影された動態画像の場合には、ステップS1において複数の深吸気時のフレーム画像が抽出される。
【0039】
複数候補が抽出されていないと判断した場合(ステップS301;NO)、制御部11は、抽出されたフレーム画像を計測対象としてステップS307に移行する。
【0040】
ステップS1において複数候補が抽出されたと判断した場合(ステップS301;YES)、制御部11は、記憶部12を参照し、計測対象のフレーム画像(計測結果の元となるフレーム画像)の自動選択が設定されているか否かを判断する(ステップS302)。
【0041】
自動選択が設定されていないと判断した場合(ステップS302;NO)、制御部11は、表示部14に、ステップS1で抽出された複数のフレーム画像を並べて表示させる(ステップS303)。ユーザーによる操作部13の操作により、表示された複数のフレーム画像の中から計測対象のフレーム画像が選択されると(ステップS304;YES)、制御部11は、ステップS307に移行する。
【0042】
自動選択が抽出されていると判断した場合(ステップS302;YES)、制御部11は、記憶部12を参照し、計測対象のフレーム画像(計測結果の元となるフレーム画像)をフレーム順で選択することが設定されているか計測値順で選択することが設定されているかを判断する(ステップS305)。
【0043】
フレーム順で選択することが設定されていると判断した場合(ステップS305;フレーム順)、制御部11は、ステップS1で選択された深吸気位のフレーム画像の中から最もフレーム番号が小さいフレーム画像(昇順の場合)又は最もフレーム番号が大きいフレーム画像(降順の場合)を心胸郭比の計測対象のフレーム画像として選択し(ステップS306)、ステップS307に移行する。
【0044】
ステップS307において、制御部11は、計測対象のフレーム画像を含む心胸郭比計測画面142を表示部14に表示させる(ステップS307)。
【0045】
図6は、心胸郭比計測画面142の一例を示す図である。
図6に示すように、心胸郭比計測画面142には、画像表示領域51と、グラフ表示領域52が設けられている。画像表示領域51には、計測対象のフレーム画像(深吸気時のフレーム画像)が表示される。また、フレーム画像上には、肺尖の位置と横隔膜の位置を示すアノテーション511が表示される。グラフ表示領域52には、計測対象の動態画像の肺尖の位置と横隔膜の位置の時間変化を示すグラフが表示される。なお、グラフ表示領域52において、線521は右肺尖、線522は左肺尖、線523は右横隔膜、線524は左横隔膜の位置の時間変化を示している。グラフ上には、心胸郭比計測を適用するフレーム画像の位置を示すマーカー53と、候補となったフレーム画像が存在する場合には、その位置を示すマーカー54が表示されている。また、グラフの左下には、計測対象のフレーム画像のフレーム番号及び肺尖と横隔膜の位置の座標が表示されている。
【0046】
次いで、制御部11は、計測対象のフレーム画像に自動で心胸郭比計測を行う(ステップS308)。
ステップS308において、制御部11は、計測対象のフレーム画像の心臓領域の輪郭を抽出し、心臓領域の輪郭に基づいて、心臓幅W1を測定する。例えば、
図7に示すように、心臓輪郭の左右の最も外側の位置を基準位置A、Bとして、A-B間の長さ(水平方向の長さ)を心臓幅W1として算出する。心臓領域の抽出方法は、例えば、心臓のテンプレート画像を用いたテンプレートマッチング処理等の、公知のいずれの方法を用いてもよい。また、制御部11は、計測対象のフレーム画像の肺野領域の輪郭を抽出し、肺野輪郭に基づいて、胸郭幅W2を測定する。例えば、
図7に示すように、一方の肺野の輪郭の最も外側の位置と他方の肺野の輪郭の最も外側の位置を基準位置C、Dとして、C-D間の長さ(水平方向の長さ)を胸郭幅W2として算出する。そして、制御部11は、W1/W2を心胸郭比として算出する。
【0047】
心胸郭比計測が終了すると、制御部11は、表示部14により心胸郭比の計測結果を心胸郭比計測画面142に表示させ(ステップS309)、自動心胸郭比計測処理を終了する。
図8に、計測の基準位置A~Dが表示されたフレーム画像及び計測結果55が表示された心胸郭比計測画面142の一例を示す。
なお、心胸郭比計測画面142においてフレーム画像上に表示された基準位置A~Dをユーザーが操作部13により微調整できるようにしてもよい。そして、微調整が行われた場合、制御部11は、調整後の基準位置A~Dに基づいて、心臓幅W1及び胸郭幅W2を算出して心胸郭比を計測しなおすこととしてもよい。
【0048】
一方、ステップS303において、計測値順が選択されたと判断した場合(ステップS303;計測値順)、制御部11は、ステップS1で抽出された深吸気時のフレーム画像の全てに自動で心胸郭比計測を行い(ステップS310)、記憶部12に設定されている条件に合致する計測値を被検者の心胸郭比の計測値として決定する(ステップS311)。ここでいう条件に合致する計測値には、条件に最も近い計測値が含まれる。
そして、決定した計測値を計測結果として、その計測値の計測元となったフレーム画像とともに心胸郭比計測画面142に表示させ(ステップS312)、自動心胸郭比計測処理を終了する。ステップS312で表示される心胸郭比計測画面142は、
図8に示したものと同様である。
【0049】
一方、
図3のステップS2において、心胸郭比計測の自動適用が設定されていないと判断した場合(ステップS2;NO)、制御部11は、手動心胸郭比計測処理を実行する(ステップS4)。
図9は、手動心胸郭比計測処理の流れを示すフローチャートである。手動心胸郭比計測処理は、制御部11と記憶部12に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0050】
まず、制御部11は、ステップS1において複数の深吸気時のフレーム画像(複数候補と呼ぶ)が抽出されたか否かを判断する(ステップS401)。
【0051】
複数候補が抽出されていないと判断した場合(ステップS401;NO)、制御部11は、抽出されたフレーム画像を計測対象としてステップS404に移行する。
【0052】
ステップS1において複数候補が抽出されたと判断した場合(ステップS401;YES)、制御部11は、表示部14に、ステップS1で抽出された複数のフレーム画像を並べて表示させる(ステップS402)。ユーザーによる操作部13の操作により、表示された複数のフレーム画像から計測対象のフレーム画像が選択されると(ステップS403;YES)、制御部11は、ステップS404に移行する。
【0053】
ステップS404において、制御部11は、計測対象のフレーム画像を含む心胸郭比計測画面142を表示部14に表示させる(ステップ404)。
【0054】
ステップS404において表示される心胸郭比計測画面142は、
図6に示したものと同様であるが、例えば、以下の追加の機能を有する。
例えば、画像表示領域51には、心臓幅W1の2つの基準位置の入力を指示するための心臓位置入力ボタンが設けられ、操作部13により心臓位置入力ボタンが押下されて画像表示領域51により2点が指定されると、制御部11は、指定された2点を心臓幅の基準位置に設定する。同様に、画像表示領域51には、胸郭幅W2の2つの基準位置の入力を指示するための胸郭基準位置入力ボタンが設けられ、操作部13により胸郭基準位置入力ボタンが押下されて画像表示領域51により2点が指定されると、制御部11は、指定された2点を胸郭幅の基準位置に設定する。
また、グラフ表示領域52のグラフの時間軸(横軸)上の一点が操作部13により指定されると、制御部11は、グラフ上で指定された位置に心胸郭比計測を適用するフレーム画像の位置を示すマーカー53を表示するとともに、指定された位置に対応するフレーム画像を画像表示領域51に切り替え表示する。すなわち、心胸郭比の計測対象のフレーム画像をユーザーが変更することが可能である。なお、指定されたフレーム画像が深吸気時のフレーム画像でない場合、深吸気時のフレーム画像でないことをユーザーに注意喚起するための警告メッセージを心胸郭比計測画面142に表示するか又は音声により出力することが好ましい。また、警告音を出力することとしてもよい。また、操作部13によりマーカー53が押下されると、制御部11がマーカー53に対応するフレーム画像に対して自動で心胸郭比を計測してもよい。
【0055】
次いで、制御部11は、操作部13により心臓幅の基準位置及び胸郭幅の基準位置が指定されたか否かを判断する(ステップS405)。
操作部13により心臓幅の基準位置及び胸郭幅の基準位置が指定されたと判断した場合(ステップS405;YES)、制御部11は、指定された基準位置に基づいて、心胸郭比を自動計測する(ステップS406)。すなわち、指定された心臓幅の基準位置間の水平方向の長さを計測して心臓幅W1とし、指定された胸郭幅の基準位置間の水平方向の長さを計測して胸郭幅W2とし、W1/W2を心胸郭比として算出する。
【0056】
心胸郭比計測が終了すると、制御部11は、表示部14により心胸郭比の計測結果を心胸郭比計測画面142に表示させ(ステップS407)、手動心胸郭比計測処理を終了する。
ステップS407において表示される心胸郭比計測画面142は、
図8に示すものと同様である。
【0057】
心胸郭比計測処理による心胸郭比の計測結果は、制御部11により動態画像(計測元のフレーム画像)に対応付けて画像DB121に記憶される。
【0058】
以上説明したように、計測装置1によれば、制御部11は、胸部の動態画像の複数のフレーム画像から深吸気時のフレーム画像を抽出し、抽出した深吸気時のフレーム画像に対して心胸郭比計測を行う。したがって、動態画像のうち、診断の決め手となる深吸気時のフレーム画像のみに対して心胸郭比計測を行うので、適切なフレーム画像に対して効率的に心胸郭比計測を実施することが可能となる。
【0059】
また、制御部11は、動態画像の複数のフレーム画像のそれぞれから肺野領域を抽出し、抽出した肺野領域の特徴量を算出し、算出した特徴量に基づいて、深吸気時のフレーム画像を抽出する。したがって、肺野領域の特徴量の変化に基づき深吸気時のフレーム画像を抽出することができる。
【0060】
また、制御部11は、抽出された深吸気時のフレーム画像を表示部14に表示させる。したがって、ユーザーは、心胸郭比計測の対象となるフレーム画像を確認することができる。
【0061】
また、制御部11は、複数のフレーム画像から算出された特徴量の時間変化を示すグラフを表示部14に表示させるとともに、グラフ上の計測対象となるフレーム画像の位置にマーカーを表示させる。したがって、計測対象となるフレーム画像が、算出された特徴量の時間変化の中のどのような状態で撮影されたものであるかをユーザーが認識することができる。
【0062】
また、制御部11は、抽出された深吸気時のフレーム画像を解析することにより心臓幅及び胸郭幅を計測し、計測した心臓幅と胸郭幅に基づいて心胸郭比を計測する。したがって、ユーザーが心臓幅や胸郭幅の基準位置を設定する手間を省略することができる。
【0063】
また、制御部11は、動態画像から深吸気時のフレーム画像が複数抽出された場合、抽出された複数のフレーム画像の中から心胸郭比計測の対象とするフレーム画像を選択する。
例えば、制御部11は、ユーザー操作により選択されたフレーム画像を心胸郭比計測の対象とするフレーム画像として選択する。したがって、深吸気時のフレーム画像のうち、例えば、前回撮影時の心臓の拍動状態と同じ状態のフレーム画像等、ユーザーが所望するフレーム画像を計測対象として選択することができる。
また、例えば、制御部11は、予め設定された優先度に従って、複数のフレーム画像の中から心胸郭比計測の対象とするフレーム画像を自動的に選択する。例えば、複数の複数のフレーム画像のそれぞれに付与されているフレーム番号の昇順又は降順で計測対象とするフレーム画像を選択する。したがって、ユーザーが計測対象を選択する手間を省くことができる。
【0064】
または、制御部11は、深吸気時のフレーム画像が複数抽出された場合、抽出された複数のフレーム画像のそれぞれに心胸郭比計測を行って計測値を取得し、予め設定された条件に合致する計測値を被検体の心胸郭比として決定する。したがって、所定の条件を満たす計測値(例えば、算出された計測値の最大値、最小値、平均値等)を被検体の心胸郭比として求めることが可能となる。また、例えば、前回撮影時と同じ条件を設定して計測を行うことにより、前回の撮影時と同じ条件の計測値を算出して比較することが可能となる。
【0065】
また、制御部11は、ユーザー操作により、抽出された深呼吸時のフレーム画像とは異なるフレーム画像が心胸郭比の計測対象として選択された場合、注意喚起を促す警告を出力させる。したがって、深吸気時以外のフレーム画像で心胸郭比を計測してしまうことを抑制することができる。
【0066】
なお、上記実施形態における記述内容は、本発明の好適な一例であり、これに限定されるものではない。
【0067】
例えば、上記実施形態においては、計測装置において動態画像の各フレーム画像から深吸気時のフレーム画像を抽出するための特徴量(例えば、肺尖と横隔膜の位置及び距離)を算出することとして説明したが、別の装置で算出された各フレーム画像の特徴量のデータを用いて深吸気時のフレーム画像を算出することとしてもよい。
【0068】
また、上記実施形態においては、計測装置内の記憶部に動態画像が記憶されている場合を例にとり説明したが、動態画像は画像サーバー等の他の装置に記憶されている構成としてもよい。そして、他の装置から取得した動態画像に心胸郭比計測処理を行う構成としてもよい。例えば、PACS(Picture Archiving and Communication System)の読影端末に上述の心胸郭比計測処理を実行する機能を備え、読影端末においてPACSのサーバーから取得した動態画像に心胸郭比計測処理を行う構成としてもよい。この場合においても、動態画像に各フレーム画像から深吸気時のフレーム画像を抽出するための特徴量は予め算出されて動態画像に付帯されていることとしてもよい。また、サーバーが上記心胸郭比計測処理を実行する機能を備え、操作や表示については読影端末を介して行うこととしてもよい。
【0069】
また、例えば、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピューター読み取り可能な媒体としてハードディスクや半導体の不揮発性メモリー等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピューター読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【0070】
その他、計測装置の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 計測装置
11 制御部
12 記憶部
121 画像DB
13 操作部
14 表示部
15 通信部
16 バス