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特許7136001オルガノポリシロキサン生ゴムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】オルガノポリシロキサン生ゴムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/08 20060101AFI20220906BHJP
【FI】
C08G77/08
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019095818
(22)【出願日】2019-05-22
(65)【公開番号】P2020189923
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】特許業務法人牛木国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(72)【発明者】
【氏名】原 立栄
(72)【発明者】
【氏名】森岡 想
(72)【発明者】
【氏名】大石 和弘
(72)【発明者】
【氏名】須藤 智彦
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-183394(JP,A)
【文献】特開平07-090083(JP,A)
【文献】特開平06-228313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均重合度が3,000~10,000のオルガノポリシロキサン生ゴムの製造方法であって、
(A)ケイ素原子に結合したヒドロキシ基を1分子中に少なくとも2個有し、25℃における粘度が100~100,000mPa・sであり、かつ低分子の環状シロキサン(D3~D20)の総含有量が(A)成分中500ppm以下であるオルガノポリシロキサンを、
(B)水酸化ナトリウム触媒又はナトリウムのオルガノシラノレート触媒の存在下で縮重合することを特徴とする、
環状シロキサンD4、D5及びD6の含有量が各々1,000ppm以下であり、低分子の環状シロキサン(D3~D20)の総含有量が5,000ppm以下であるオルガノポリシロキサン生ゴムの製造方法。
【請求項2】
重合反応の時間が1~12時間である、請求項1記載のオルガノポリシロキサン生ゴムの製造方法。
【請求項3】
縮重合の温度が80~120℃である、請求項1又は2に記載のオルガノポリシロキサン生ゴムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルガノポリシロキサン生ゴムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にシリコーンゴムは耐候性、耐久性、耐熱性、着色性に優れ、また生理的に不活性であるため、建築材料、電気電子部品、事務機器、自動車部品、医療器具など様々な分野で使用されている。
【0003】
シリコーンゴムの原料として用いられる直鎖状オルガノポリシロキサンの製造方法としては、低分子量の環状又は直鎖状のオルガノポリシロキサンを、酸性又は塩基性の触媒を用いて、平衡化反応を利用して重合する方法が知られている。しかし、該重合法においては、シロキサン結合の生成と開裂が同時に起こる結果、得られる高分子量の直鎖状オルガノポリシロキサンは低分子量の環状シロキサンを多く含有したものになる。
【0004】
現在の化学物質規制では、蓄積性をBCF(Bioconcentration Factor(生物濃縮係数))で評価することが一般的である。実際の環境下でデータを取る方が、自然界での蓄積性を正確に評価することが可能であるが、多くの化学物質を評価しなければならず、労力や費用の面から、BCFという実験室データが蓄積性の指標として用いられている。
【0005】
BCFは、水中の魚に化学物質がどの程度蓄積するかを試験する方法であり、化学物質の濃度一定下で実験を実施する。そのため、難水溶性の物質や、揮発性が高い物質の蓄積性を評価することには不向きな方法である。四量体、五量体及び六量体の低分子環状シロキサン(D4-6)は、実際の環境下では蓄積性が低く有害性がほとんどないことが明らかになっているものの、BCFは高い値を示し、規制される状況となっている。
【0006】
欧州では、D4-6はSVHC(Substances of Very High Concern(高懸念物質))に指定されている。日本でも十分なデータを有していたD5は監視化学物質とはならなかったが、データが不足しているD4及びD6は監視化学物質に指定された。その様な世界的な化学物質規制の潮流の中で、低分子環状シロキサンの低減が求められている。
【0007】
特許文献1では、分子末端に少なくとも一つのヒドロキシ基をもつオルガノポリシロキサンに、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウムおよび水酸化バリウムから選択された水酸化物を添加し、縮重合反応させ重合体を得る方法が開示されている。しかし、この方法では、得られる生成物の重合度が低く、生ゴム状物質を得ることは難しい。
【0008】
特許文献2では、分子鎖両末端にシラノール基を持つオルガノポリシロキサン及びトリオルガノシラノール等に2官能ジアルキルアミノシリル基を持つシランもしくはシロキサンを添加し、縮重合反応させ重合体を得る方法が開示されている。しかし、この方法では、中和時、取り除くことが困難なアミノ化合物が副生し、生成物に残存するため、副生するアミノ化合物由来の臭気が問題となる。
【0009】
特許文献3では、分子両末端に水酸基を持つオルガノポリシロキサンに、特定の酸性化合物を添加し、縮重合反応させ重合体を得る方法が開示されている。しかし、この方法では、中和時、フッ素化合物が副生するため、生成物である直鎖状オルガノポリシロキサンの用途が制限されうるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第2857202号
【文献】特許第2824953号
【文献】特許第2838352号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
低分子の環状シロキサンの溜去方法について、オイル状の主成分中に低分子の環状シロキサンが含まれる場合は、高温下減圧処理を行うことにより溜去が可能だが、主成分が生ゴムのような高重合体に低分子の環状シロキサンが含まれる場合は、該処理を長時間行う必要があるため、工業的には問題を有している。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、低分子の環状シロキサンやフッ素化合物がほとんど副生せず、工業的に有利で、かつ臭気のしない直鎖状オルガノポリシロキサンの重合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、低分子の環状シロキサン(D3~D20)の総合計含有量が500ppm以下であるヒドロキシ基含有オルガノポリシロキサンを、水酸化ナトリウム又はナトリウムのオルガノシラノレートの存在下で重縮合反応させることで、低分子の環状シロキサンD4、D5及びD6の含有量が各々1,000ppm以下であるオルガノポリシロキサン生ゴムを製造する方法を見出した。
【0014】
従って、本発明は、以下のオルガノポリシロキサン生ゴムの製造方法を提供するものである。
【0015】
〔1〕
平均重合度が3,000~10,000のオルガノポリシロキサン生ゴムの製造方法であって、
(A)ケイ素原子に結合したヒドロキシ基を1分子中に少なくとも2個有し、25℃における粘度が100~100,000mPa・sであり、かつ低分子の環状シロキサン(D3~D20)の総含有量が(A)成分中500ppm以下であるオルガノポリシロキサンを、
(B)水酸化ナトリウム触媒又はナトリウムのオルガノシラノレート触媒の存在下で縮重合することを特徴とする、
環状シロキサンD4、D5及びD6の含有量が各々1,000ppm以下であるオルガノポリシロキサン生ゴムの製造方法。
〔2〕
得られるオルガノポリシロキサン生ゴム中の、低分子の環状シロキサン(D3~D20)の総含有量が5,000ppm以下である〔1〕に記載のオルガノポリシロキサン生ゴムの製造方法。
〔3〕
縮重合の温度が80~120℃である、〔1〕又は〔2〕に記載のオルガノポリシロキサン生ゴムの製造方法。
【0016】
なお、本発明において、室温又は常温とは20℃±10℃、特には25℃を意味する。また、生ゴムとは、オルガノポリシロキサンの平均重合度が3,000~10,000であり、室温において自己流動性のない(あるいはほとんどない)非液状物(固体状又はペースト状物)であることを意味する。
【0017】
なお、本発明においては、粘度は、JIS K 7117-1:1999に記載の方法で測定した25℃における粘度であり、BH型回転粘度計で測定した値である。
また、本発明において、ケイ素原子数Xの環状シロキサンを「DX」と表記する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低分子環状シロキサンやフッ素化合物がほとんど副生せず、工業的に有利で、かつ臭気のしない無色透明な直鎖状オルガノポリシロキサンの重合方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
【0020】
I.(A)ケイ素原子に結合したヒドロキシ基を1分子中に少なくとも2個有し、25℃における粘度が100~100,000mPa・s、かつ低分子の環状シロキサンD3~D20の総含有量が500ppm以下であるヒドロキシ基含有オルガノポリシロキサンの製造
【0021】
(A)成分は、公知の方法で得られ、例えば、環状オルガノシロキサンと水をアルカリ性触媒の存在下で重合することで得られる。具体的には、該重合は、環状オルガノシロキサン及び水に少量のアルカリ性触媒を添加し、又は環状オルガノシロキサンに少量のアルカリ性触媒を含む水溶液を添加し、100~180℃の密閉条件下で平衡化反応させることによって行われる。平衡化反応時に水の量を適宜調整することにより、目的のケイ素原子に結合したヒドロキシ基を1分子中に少なくとも2個有し、粘度が100~100,000mPa・sであるオルガノポリシロキサンが得られる。
ここで、環状オルガノシロキサンとしては、下記式(2)で示されるものを挙げることができる。
【化1】
(式(2)中、R2は互いに独立に非置換又は置換の炭素数1~10の1価炭化水素基を表し、nは3~8の整数である。)

上記一般式(2)中、R2は互いに独立に非置換又は置換の炭素数1~10の、好ましくは炭素数1~6の1価炭化水素基を表す。例えば、メチル基、エチル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基などやこれらの基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子、メルカプト基、グリシド基、(メタ)アクリロキシ基、アミノ基等で置換され基が挙げられる。R2は、好ましくは、メチル基、ビニル基、フェニル基であり、一般式(2)で表される化合物としては、一分子中の全R2のうち、好ましくは25~100%、より好ましくは50~100%がメチル基である化合物が好ましい。nは3~8の整数、好ましくは3~5の整数である。
【0022】
上記環状オルガノシロキサンは、その1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。環状オルガノシロキサン2種以上を併用する場合は、一般式(2)において、すべてのR2がメチル基である化合物、全R2のうち好ましくは25~100%、より好ましくは50~100%がメチル基であり残りのR2がビニル基等のアルケニル基である化合物及び全R2のうち好ましくは25~100%、より好ましくは50~100%がメチル基であり残りのR2がフェニル基等のアリール基である化合物を、適宜組み合わせることが好ましい。
【0023】
アルカリ性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属化合物或いはそれらのシラノレートが例示される。また、これらの触媒は、酸性中和剤により失活させる場合があるが、130~150℃の高温下において分解し、活性を失う(n-C49)POHなどの第4級ホスホニウム、(CH34NOHなどの第4級アンモニウム或いはそれらのシラノレートを使用することもできる。なお、上記平衡化反応において、アルカリ性触媒は水溶液として用いることが好ましい。
【0024】
アルカリ性触媒の配合量は、環状オルガノシロキサンに対し1~1,000ppm、特に10~500ppmとすることが好ましく、上記範囲内であれば、十分な重合性が得られる。
【0025】
上記平衡化反応は、通常の条件で行うことができ、例えば100~180℃で30分~6時間、密閉又は調圧条件下で反応させることが好ましい。
【0026】
上記反応後は、アルカリ性触媒を、酸性中和剤、例えば塩酸、エチレンクロルヒドリン、酢酸、二酸化炭素等で中和したり、熱分解するなどして失活させる。また、その後、低揮発分を溜去することが好ましい。
【0027】
なお(A)成分の粘度は100~100,000mPa・s、好ましくは100~50,000mPa・s、より好ましくは100~30,000mPa・sである。粘度が100mPa未満であると、上記低揮発分溜去時に、目的物も溜去されるおそれがあり、100,000mPaを超えると下記に示す低分子シロキサンを除去するのが困難になり、得られた生ゴム中に低分子シロキサンが残存してしまうおそれがある。
【0028】
(A)成分中の低分子の環状シロキサン(D3~D20)は500ppm以下、好ましくは450ppm以下、更に好ましくは400ppm以下である。(A)成分中の環状シロキサンの総含有量を500ppm以下にすることにより、縮重合後の生ゴム中の低分子の環状シロキサンの含有量を少なくすることが可能になる。(A)成分中の低分子の環状シロキサンが500ppmを超えると、縮重合して生ゴムとした際に、生ゴム中に低分子環状シロキサンが残存し、除去が困難になる。なお、本発明において、上記低分子の環状シロキサンの量はガスクロマトグラフィー分析により定量した値である。
【0029】
本発明の製造方法に供するオルガノポリシロキサンの低分子環状シロキサンD3~D20の総含有量が500ppmを超える場合、下記の方法により、D3~D20の総含有量が500ppm以下になるまで低分子環状シロキサンを低減する。低分子環状シロキサンを除去する方法は、加熱蒸留法、減圧蒸留法、薄膜蒸留法などが挙げられる。効率よく低分子の環状シロキサンを除去するために、系の圧力は低い方が、温度は高い方が好ましいが、温度については高すぎるとオルガノポリシロキサンが酸化、分解等を起こすため、100~300℃が好ましい。上記方法のなかでも、オルガノポリシロキサンが長時間高温にさらされず、シロキサン鎖が切断されにくい、薄膜蒸留法が、好ましい。低分子環状シロキサンの除去方法は2つ以上を組み合わせてもよく、例えば加熱減圧蒸留で粗蒸留を行った後、薄膜蒸留を行ってもよい。
【0030】
薄膜蒸留の条件は、例えば、温度は150~300℃、好ましくは200~300℃、更に好ましくは260℃であり、圧力は10×10-2mmHg以下、好ましくは5×10-2mmHgの減圧下である。減圧するに際して用いる真空ポンプは、適宜選択してよいが、回転ポンプ、拡散ポンプ、ターボポンプ等が挙げられる。
【0031】
(B)水酸化ナトリウム又はナトリウムのオルガノシラノレート
(B)成分は本発明の縮重合反応の触媒として作用し、水酸化ナトリウム又はナトリウムのオルガノシラノレートのいずれでも使用でき、粒径、性状等に制限はない。なお、ナトリウムのオルガノシラノレートは公知の方法で調製可能であり、例えば、両末端に水酸基を有するポリジアルキルシロキサンに水酸化ナトリウムを添加し、不活性ガスの吹き込み等により水分を溜去しつつ、100~150℃で3~6時間平衡化反応させる。反応終了後、100~150℃、6~10時間、減圧下で低揮発分を溜去し、ナトリウムシラノレートを得ることが可能である。また、上記反応にはトルエン等の有機溶媒を使用してもよい。
【0032】
II.オルガノポリシロキサン生ゴムの製造方法
本発明は、(A)ケイ素原子に結合したヒドロキシ基を1分子中に少なくとも2個含有し、粘度が100~100,000mPa・sであり、かつ低分子の環状シロキサンD3~D20の総含有量が500ppm以下であるオルガノポリシロキサンを、(B)水酸化ナトリウム又はナトリウムのオルガノシラノレート触媒の存在下で縮重合し、低分子の環状シロキサンD4、D5及びD6の含有量が各々1,000ppm以下であるオルガノポリシロキサン生ゴムを得るものである。
【0033】
(B)成分の配合量は、(A)ヒドロキシ基含有オルガノポリシロキサンの総量に対し1~1,000ppm、特に10~500ppmとすることが好ましく、上記範囲内であれば、十分な重合性が得られる。上記範囲内で触媒の使用量を増加することにより、反応時間を短縮することも可能である。
【0034】
上記縮重合反応の温度は、80~120℃が好ましく、より好ましくは90~110℃である。反応温度が80℃未満であると、所望の縮重合反応の進行が遅く、反応温度が120℃を超えると、平衡化反応が進行するおそれがある。
【0035】
上記重合反応の時間は、通常、1~12時間の範囲、好ましくは3~9時間である。
【0036】
上記縮重合反応は常圧又は減圧下で行ってよいが、縮重合時に生成する水の除去や、原料中に含まれる低揮発分を除去する点から減圧下で行うことが好ましい。減圧下で縮重合反応を行う場合の圧力は20mmHg以下、好ましくは10mmHg以下である。
【0037】
上記反応後は、水酸化ナトリウム又はナトリウムのオルガノシラノレートを、酸性中和剤、例えば塩酸、エチレンクロルヒドリン、酢酸、二酸化炭素等で中和し失活させる。中和剤の添加量は(B)成分中のナトリウムに対して、モル比で1~20倍モル、好ましくは2~10倍モルである。上記範囲内であれば触媒を十分に中和することが可能である。
【0038】
また、その後、低揮発分を溜去することが好ましい。低揮発分を溜去する条件は、温度は100~170℃、好ましくは120~150℃で、時間は1~4時間である。上記低揮発分を溜去する反応は常圧又は減圧下で行ってよく、減圧する場合は20mmHg以下、好ましくは10mmHg以下である。
【0039】
本発明の重合方法は、バッチプロセスで行っても、連続プロセスで行ってもよい。
【0040】
得られたオルガノポリシロキサン生ゴム中の低分子の環状シロキサンD4、D5及びD6は、それぞれ1,000ppm以下である。低分子の環状シロキサンD4~D6がそれぞれ1,000ppmを超えると、化学物質規制の観点で規制される可能性がある。
【0041】
以下に本発明の実施例を示す。本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
また、本発明で言及する平均重合度とは、下記測定条件によるテトラヒドロフラン(THF)を展開溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算の数平均重合度等として求めたものである。
【0042】
[測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.6mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:TSK Guardcolumn SuperH-L
TSKgel SuperH4000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH3000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH2000(6.0mmI.D.×15cm×2)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:20μL(濃度0.5重量%のTHF溶液)
【0043】
また、以下実施例で製造したオルガノポリシロキサンに含まれる、重合度が3~20の低分子環状シロキサン(D3~D20)は、下記測定条件により測定した。
【0044】
[測定条件]
装置:島津製作所製ガスクロマトグラフ Nexis GC-2030
流体:空気、水素、ヘリウム
流量:0.6mL/min
検出器:水素炎イオン化検出器
カラム:DB-5MS
(いずれも島津社製)
カラム温度:320℃
試料注入量:1.0μL
【0045】
調製例1
2%ナトリウムシラノレートの合成
攪拌器、還流冷却器及び温度計を備えた300mlセパラブルフラスコに、両末端に水酸基を有するポリジメチルシロキサン(粘度5,000mPa・s)、171g及びトルエン23.3gを添加し、さらに、水酸化ナトリウム4.0gを添加し、窒素ガスを吹き込み、水分を溜去しつつ150℃で3時間平衡化反応させた。反応終了後、150℃、5mmHg以下で、窒素ガスを吹き込みながら6時間、低揮発分を溜去し、2%ナトリウムシラノレート105gを得た。
【0046】
調製例2
3%カリウムシラノレートの合成
攪拌器、還流冷却器及び温度計を備えた300mlセパラブルフラスコに、両末端に水酸基を有するポリジメチルシロキサン(粘度5,000mPa・s)、171g及びトルエン23.3gを添加し、さらに、水酸化カリウム4.0gを添加し、窒素ガスを吹き込み、水分を溜去しつつ150℃で3時間平衡化反応させた。反応終了後、150℃、5mmHg以下で、窒素ガスを吹き込みながら6時間、低揮発分を溜去し、3%カリウムシラノレート112gを得た。
【0047】
調製例3
オルガノポリシロキサン(A)の合成
攪拌器、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた3Lセパラブルフラスコに、オクタメチルシクロテトラシロキサン1,986g及び1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロシロキサン2.9gからなる混合物を添加し、さらに、0.5%水酸化カリウム水溶液9.5gを添加し、密閉条件下、150℃で6時間平衡化反応させた。
反応終了後、80℃まで冷却し、エチレンクロルヒドリン0.53gを添加、密閉条件下、150℃で2時間中和した。中和終了後、150℃、20mmHg以下でおよそ6時間、粗蒸留をし、得られた生成物を260℃、5×10-2mmHg以下、9分の条件で3回、薄膜式分子蒸留装置を用いて低揮発分を溜去した。
得られたオルガノポリシロキサン(A)1,521gは、ジメチルシロキサン単位が99.850モル%、メチルビニルシロキサン単位が0.125モル%、及びジメチルヒドロキシシロキサン単位が0.025モル%であり、平均重合度が243、粘度が1.08Pa・s、低分子環状シロキサン(D3~D20)の総含有量が20ppmで、無色透明であった。
【0048】
実施例1
オルガノポリシロキサン生ゴムの合成
攪拌器、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた200mlセパラブルフラスコに、オルガノポリシロキサン(A)100g、0.5%水酸化ナトリウム水溶液0.64gを添加し、100℃、20mmHg以下の条件で5時間縮重合反応させた。反応終了後、80℃まで冷却し、エチレンクロルヒドリン0.06gを添加、密閉条件下、150℃で1時間中和させた。中和終了後、150℃、10mmHg以下の条件で1時間、低揮発分を溜去し、オルガノポリシロキサン生ゴムを87g得た。
得られたオルガノポリシロキサン生ゴムは、粘度が12,000Pa・s、平均重合度が4,500、D4、D5及びD6の含有量は、それぞれ287ppm、166ppm、893ppm、D3~D20の総含有量が3,268ppmで、無色透明・無臭であった。平均重合度、及び低分子の環状シロキサン(D3~D20)の量を測定した結果を表1に示す。
【0049】
実施例2
攪拌器、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた200mlセパラブルフラスコに、オルガノポリシロキサン(A)100g、調製例1で得られた2%Naシラノレート0.16gを添加し、100℃、20mmHg以下の条件で5時間縮重合反応させた。反応終了後、80℃まで冷却し、エチレンクロルヒドリン0.06gを添加、密閉条件下、150℃で1時間中和させた。中和終了後、150℃、10mmHg以下の条件で1時間、低揮発分を溜去し、オルガノポリシロキサン生ゴムを88g得た。
得られたオルガノポリシロキサン生ゴムは、粘度10,000Pa・s、平均重合度4,300、D4、D5及びD6の含有量は、それぞれ287ppm、179ppm、879ppm、D3~D20の総含有量が3,896ppmで、無色透明・無臭であった。平均重合度、及び低分子の環状シロキサン(D3~D20)の量を測定した結果を表1に示す。
【0050】
比較例1
攪拌器、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた200mlセパラブルフラスコに、オルガノポリシロキサン(A)100g、3%カリウムシラノレート0.18gを添加し、100℃、20mmHg以下の条件で5時間縮重合反応させた。反応終了後、80℃まで冷却し、エチレンクロルヒドリン0.06gを添加、密閉条件下、150℃で1時間中和させた。中和終了後、150℃、20mmHg以下の条件で1時間、低揮発分を溜去し、オルガノポリシロキサン生ゴムを87g得た。
得られたオルガノポリシロキサン生ゴムは、粘度12,500Pa・s、平均重合度5,500で、D4、D5及びD6の含有量は、それぞれ1,487ppm、1,368ppm、2,121ppm、D3~D20の総含有量が30,818ppm、無色透明・無臭であった。平均重合度、及び低分子の環状シロキサン(D3~D20)の量を測定した結果を表1に示す。
【0051】
比較例2
攪拌器、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた200mlセパラブルフラスコに、オルガノポリシロキサン(A)100g、0.5%水酸化リチウム水溶液0.64gを添加し、100℃、20mmHg以下の条件で5時間縮重合反応させた。平均重合度243と十分な重合性が得られず、液状の生成物が得られた。
【0052】
比較例3
攪拌器、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた200mlセパラブルフラスコに、オルガノポリシロキサン(A)100g、0.5%水酸化ストロンチウム水溶液0.64gを添加し、100℃、20mmHg以下の条件で5時間縮重合反応させた。平均重合度282と十分な重合性が得られず、液状の生成物が得られた。
【0053】
比較例4
攪拌器、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた200mlセパラブルフラスコに、オルガノポリシロキサン(A)100g、0.5%水酸化バリウム水溶液0.64gを添加し、100℃、20mmHg以下の条件で5時間縮重合反応させた。平均重合度420と十分な重合性が得られず、液状の生成物が得られた。
【0054】
比較例5
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた200mLセパラブルフラスコに、オクタメチルシクロテトラシロキサン126g、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン0.050g及び1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロシロキサ0.18gからなる混合物に、10%水酸化テトラ-n-ブチルホスホニウムのジメチルポリシロキサネート0.21gを添加し、110℃で1時間重合反応させた。重合反応後、150℃で2時間保温し、水酸化テトラ-n-ブチルホスホニウムを熱分解させた後、140~150℃の保温/減圧下で2mmHg以下になるまでおよそ5時間、低揮発分を溜去し、オルガノポリシロキサン生ゴムを113g得た。
得られたオルガノポリシロキサン生ゴムは、粘度が14,000Pa・s、平均重合度が5,000、D4、D5及びD6の含有量は、それぞれ1,624ppm、1,546ppm、2,452ppm、D3~D20の総含有量が34,548ppmで、無色透明・無臭であった。平均重合度、及び低分子の環状シロキサン(D3~D20)の量を測定した結果を表1に示す。
【0055】
【表1】