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特許7136213インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20220906BHJP
   B41J 2/17 20060101ALI20220906BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
B41J2/14 301
B41J2/14 611
B41J2/17 201
B41J2/14 603
B41J2/14 605
B41J2/18
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020540964
(86)(22)【出願日】2018-09-07
(86)【国際出願番号】 JP2018033162
(87)【国際公開番号】W WO2020049710
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸林 純
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-090627(JP,A)
【文献】特開平08-252924(JP,A)
【文献】特開2014-087983(JP,A)
【文献】特開2016-129169(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0135219(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するノズルの開口部がインク吐出面に設けられており、前記ノズルの開口部からインクを吐出させるための動作を行う動作素子を有するインク吐出部と、
前記動作素子を駆動するための駆動回路が設けられた駆動基板と、
前記インク吐出部に供給されるインクを貯留するインクタンクと、
前記駆動基板の少なくとも一部を覆うカバー部材と、
を備え、
前記カバー部材は、前記駆動基板の一方の面に対向し当該一方の面に沿って設けられた第1部分と、前記駆動基板の他方の面に対向し当該他方の面に沿って設けられた第2部分と、前記第1部分及び前記第2部分を繋ぐ第3部分とを有し、
前記第1部分は、前記インクタンクと前記駆動基板との間に位置しており、
前記インクタンクは、当該インクタンクの外面のうち所定の面が前記駆動基板及び前記第1部分に沿って設けられており、かつ、前記駆動基板の熱が前記第1部分を介して前記所定の面に伝わる態様で設けられているインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記カバー部材の前記第1部分と前記インクタンクとの間には、前記第1部分及び前記インクタンクに接触する放熱部材が設けられている請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記インク吐出部を内部に格納する外装部材を備え、
前記カバー部材の前記第1部分、前記第2部分及び前記第3部分は、前記外装部材の端部に接続されている、請求項1又は2に記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
インクを吐出するノズルの開口部がインク吐出面に設けられており、前記ノズルの開口部からインクを吐出させるための動作を行う動作素子を有するインク吐出部と、
前記動作素子を駆動するための駆動回路が設けられた駆動基板と、
前記インク吐出部に供給されるインクを貯留するインクタンクと、
を備え、
前記インクタンクは、当該インクタンクの外面のうち所定の面が前記駆動基板に沿って設けられており、かつ、前記駆動基板の熱が前記所定の面に伝わる態様で設けられており、
前記インクタンクには、
前記インク吐出部に供給されるインクが所定の供給方向に流れるタンク内流路と、
前記タンク内流路の内部に前記所定の面に沿って設けられ、前記タンク内流路を流れるインクが通過する第1のフィルターと、
が設けられており、
前記インク吐出部は、前記タンク内流路から流入したインクの一部が流出する流出口を有し、
前記インク吐出部の前記流出口から流出したインクを外部に導くインク排出流路と、
前記タンク内流路と、前記インク排出流路とを前記インク吐出部を介さずに繋ぐバイパス流路と、
前記バイパス流路の内部に設けられ、当該バイパス流路を流れるインクが通過する第2のフィルターと、
前記インク排出流路における前記バイパス流路との接続位置と前記インク排出流路の出口との間に設けられ、前記出口に向かう方向と反対方向にはインクを通過させない逆流防止手段と、
を備えるインクジェットヘッド。
【請求項5】
前記駆動基板は、前記インク吐出部の前記インク吐出面とは反対側において前記インク吐出面に交差する方向に沿って設けられている請求項1~4のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項6】
前記インクタンクには、
前記インク吐出部に供給されるインクが所定の供給方向に流れるタンク内流路と、
前記タンク内流路の内部に前記所定の面に沿って設けられ、前記タンク内流路を流れるインクが通過する第1のフィルターと、
が設けられている請求項1~3、5のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項7】
前記タンク内流路は、
前記供給方向について前記第1のフィルターの上流側に隣接する上流側インク室と、
前記供給方向について前記第1のフィルターの下流側に隣接する下流側インク室と、
を有し、
前記第1のフィルターの前記所定の面側に前記上流側インク室が設けられている請求項4又は6に記載のインクジェットヘッド。
【請求項8】
前記タンク内流路は、
前記供給方向について前記第1のフィルターの上流側に隣接する上流側インク室と、
前記供給方向について前記第1のフィルターの下流側に隣接する下流側インク室と、
を有し、
前記第1のフィルターの前記所定の面側に前記下流側インク室が設けられている請求項4又は6に記載のインクジェットヘッド。
【請求項9】
前記インク吐出部は、前記タンク内流路から流入したインクの一部が流出する流出口を有し、
当該インクジェットヘッドは、前記インク吐出部の前記流出口から流出したインクを当該インクジェットヘッドの外部に導くインク排出流路を備える請求項6~8のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項10】
前記タンク内流路と、前記インク排出流路とを前記インク吐出部を介さずに繋ぐバイパス流路と、
前記バイパス流路の内部に設けられ、当該バイパス流路を流れるインクが通過する第2のフィルターと、
前記インク排出流路における前記バイパス流路との接続位置と前記インク排出流路の出口との間に設けられ、前記出口に向かう方向と反対方向にはインクを通過させない逆流防止手段と、
を備える請求項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項11】
前記バイパス流路は、前記インクタンクの内部に設けられており、
前記第1のフィルター及び前記第2のフィルターが一体的に設けられている請求項4又は10に記載のインクジェットヘッド。
【請求項12】
前記インクタンクを着脱可能に固定する取付部材を備える請求項4、6~11のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項13】
前記インクタンクと前記駆動基板との間には、前記駆動基板の少なくとも一部を覆うカバー部材が設けられており、
記カバー部材と前記インクタンクとの間には、前記カバー部材及び前記インクタンクに接触する放熱部材が設けられている請求項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項14】
前記駆動回路の動作時における前記駆動基板の一方の面からの放熱量が、前記駆動基板の他方の面からの放熱量より大きく、
前記インクタンクが前記駆動基板の前記一方の面側に設けられている請求項1~13のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドを備えるインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットヘッドのインク吐出面に設けられたノズルの開口部からインクを吐出させて所望の位置に着弾させることで画像を形成するインクジェット記録装置がある。インクジェット記録装置のインクジェットヘッドは、ノズルに連通するインク貯留部内の圧力を変動させる圧電素子といった動作素子の動作に応じてノズルの開口部からインクを吐出させるインク吐出部を備える。また、インクジェットヘッドは、動作素子を駆動させるための駆動回路が設けられた駆動基板を備えるのが一般的である(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-004767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、駆動基板の温度が駆動回路の動作熱により上昇すると、当該駆動基板の熱がインク吐出部内のインクに伝わってインクの粘度が低下することにより適正なインク吐出が行なえなくなったり、インク吐出部が駆動基板の熱により膨張してノズルの位置が変動したりするため、記録画像の画質低下に繋がる。
【0005】
この発明の目的は、駆動基板の熱に起因する画質低下を効果的に抑制することができるインクジェットヘッド及びインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載のインクジェットヘッドの発明は、
インクを吐出するノズルの開口部がインク吐出面に設けられており、前記ノズルの開口部からインクを吐出させるための動作を行う動作素子を有するインク吐出部と、
前記動作素子を駆動するための駆動回路が設けられた駆動基板と、
前記インク吐出部に供給されるインクを貯留するインクタンクと、
前記駆動基板の少なくとも一部を覆うカバー部材と、
を備え、
前記カバー部材は、前記駆動基板の一方の面に対向し当該一方の面に沿って設けられた第1部分と、前記駆動基板の他方の面に対向し当該他方の面に沿って設けられた第2部分と、前記第1部分及び前記第2部分を繋ぐ第3部分とを有し、
前記第1部分は、前記インクタンクと前記駆動基板との間に位置しており、
前記インクタンクは、当該インクタンクの外面のうち所定の面が前記駆動基板及び前記第1部分に沿って設けられており、かつ、前記駆動基板の熱が前記第1部分を介して前記所定の面に伝わる態様で設けられている。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記カバー部材の前記第1部分と前記インクタンクとの間には、前記第1部分及び前記インクタンクに接触する放熱部材が設けられている。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記インク吐出部を内部に格納する外装部材を備え、
前記カバー部材の前記第1部分、前記第2部分及び前記第3部分は、前記外装部材の端部に接続されている。
上記目的を達成するため、請求項4に記載のインクジェットヘッドの発明は、
インクを吐出するノズルの開口部がインク吐出面に設けられており、前記ノズルの開口部からインクを吐出させるための動作を行う動作素子を有するインク吐出部と、
前記動作素子を駆動するための駆動回路が設けられた駆動基板と、
前記インク吐出部に供給されるインクを貯留するインクタンクと、
を備え、
前記インクタンクは、当該インクタンクの外面のうち所定の面が前記駆動基板に沿って設けられており、かつ、前記駆動基板の熱が前記所定の面に伝わる態様で設けられており、
前記インクタンクには、
前記インク吐出部に供給されるインクが所定の供給方向に流れるタンク内流路と、
前記タンク内流路の内部に前記所定の面に沿って設けられ、前記タンク内流路を流れるインクが通過する第1のフィルターと、
が設けられており、
前記インク吐出部は、前記タンク内流路から流入したインクの一部が流出する流出口を有し、
前記インク吐出部の前記流出口から流出したインクを外部に導くインク排出流路と、
前記タンク内流路と、前記インク排出流路とを前記インク吐出部を介さずに繋ぐバイパス流路と、
前記バイパス流路の内部に設けられ、当該バイパス流路を流れるインクが通過する第2のフィルターと、
前記インク排出流路における前記バイパス流路との接続位置と前記インク排出流路の出口との間に設けられ、前記出口に向かう方向と反対方向にはインクを通過させない逆流防止手段と、
を備える。
【0007】
請求項に記載の発明は、請求項1~4のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記駆動基板は、前記インク吐出部の前記インク吐出面とは反対側において前記インク吐出面に交差する方向に沿って設けられている。
【0008】
請求項に記載の発明は、請求項1~3、5のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記インクタンクには、
前記インク吐出部に供給されるインクが所定の供給方向に流れるタンク内流路と、
前記タンク内流路の内部に前記所定の面に沿って設けられ、前記タンク内流路を流れるインクが通過する第1のフィルターと、
が設けられている。
【0009】
請求項に記載の発明は、請求項4又は6に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記タンク内流路は、
前記供給方向について前記第1のフィルターの上流側に隣接する上流側インク室と、
前記供給方向について前記第1のフィルターの下流側に隣接する下流側インク室と、
を有し、
前記第1のフィルターの前記所定の面側に前記上流側インク室が設けられている。
【0010】
請求項に記載の発明は、請求項4又は6に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記タンク内流路は、
前記供給方向について前記第1のフィルターの上流側に隣接する上流側インク室と、
前記供給方向について前記第1のフィルターの下流側に隣接する下流側インク室と、
を有し、
前記第1のフィルターの前記所定の面側に前記下流側インク室が設けられている。
【0011】
請求項に記載の発明は、請求項6~8のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記インク吐出部は、前記タンク内流路から流入したインクの一部が流出する流出口を有し、
当該インクジェットヘッドは、前記インク吐出部の前記流出口から流出したインクを当該インクジェットヘッドの外部に導くインク排出流路を備える。
【0012】
請求項10に記載の発明は、請求項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記タンク内流路と、前記インク排出流路とを前記インク吐出部を介さずに繋ぐバイパス流路と、
前記バイパス流路の内部に設けられ、当該バイパス流路を流れるインクが通過する第2のフィルターと、
前記インク排出流路における前記バイパス流路との接続位置と前記インク排出流路の出口との間に設けられ、前記出口に向かう方向と反対方向にはインクを通過させない逆流防止手段と、
を備える。
【0013】
請求項11に記載の発明は、請求項4又は10に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記バイパス流路は、前記インクタンクの内部に設けられており、
前記第1のフィルター及び前記第2のフィルターが一体的に設けられている。
【0014】
請求項12に記載の発明は、請求項4、6~11のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記インクタンクを着脱可能に固定する取付部材を備える。
【0015】
請求項13に記載の発明は、請求項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記インクタンクと前記駆動基板との間には、前記駆動基板の少なくとも一部を覆うカバー部材が設けられており、
記カバー部材と前記インクタンクとの間には、前記カバー部材及び前記インクタンクに接触する放熱部材が設けられている。
【0016】
請求項14に記載の発明は、請求項1~13のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記駆動回路の動作時における前記駆動基板の一方の面からの放熱量が、前記駆動基板の他方の面からの放熱量より大きく、
前記インクタンクが前記駆動基板の前記一方の面側に設けられている。
【0017】
また、上記目的を達成するため、請求項15に記載のインクジェット記録装置の発明は、
請求項1~14のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドを備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明に従うと、駆動基板の熱に起因する画質低下を効果的に抑制することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】インクジェット記録装置の概略構成を示す図である。
図2】ヘッドユニットの構成を示す模式図である。
図3】インクジェットヘッドの斜視図である。
図4】インクジェットヘッドのYZ平面に沿った断面を示す図である。
図5】インク吐出部の構成を示す拡大模式断面図である。
図6】インクジェットヘッドのXY平面に沿った断面を示す図である。
図7】インクタンクの内部構造を示すインクジェットヘッドの斜視図である。
図8A図7における位置X1でのYZ平面に沿ったインクタンクの断面を示す図である。
図8B図7における位置X2でのYZ平面に沿ったインクタンクの断面を示す図である。
図8C図7における位置X3でのYZ平面に沿ったインクタンクの断面を示す図である。
図9】インクジェットヘッドにおけるインクの流動経路を説明する模式図である。
図10】インク循環機構の構成を示す模式図である。
図11】インクジェット記録装置の主要な機能構成を示すブロック図である。
図12】変形例に係る下流側インク室におけるインクの流動方向を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のインクジェットヘッド及びインクジェット記録装置に係る実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態であるインクジェット記録装置1の概略構成を示す図である。
インクジェット記録装置1は、搬送部2と、ヘッドユニット3などを備える。
【0021】
搬送部2は、図1のX方向に延びる回転軸を中心に回転する2本の搬送ローラー2a、2bにより内側が支持された輪状の搬送ベルト2cを備える。搬送部2は、搬送ベルト2cの搬送面上に記録媒体Mが載置された状態で搬送ローラー2aが図示略の搬送モーターの動作に応じて回転して搬送ベルト2cが周回移動することで記録媒体Mを搬送ベルト2cの移動方向(搬送方向;図1のY方向)に搬送する。
【0022】
記録媒体Mは、一定の寸法に裁断された枚葉紙とすることができる。記録媒体Mは、図示略の給紙装置により搬送ベルト2c上に供給され、ヘッドユニット3からインクが吐出されて画像が記録された後に搬送ベルト2cから所定の排紙部に排出される。なお、記録媒体Mとしては、ロール紙が用いられてもよい。また、記録媒体Mとしては、普通紙や塗工紙といった紙のほか、布帛又はシート状の樹脂等、表面に着弾したインクを定着させることが可能な種々の媒体を用いることができる。
【0023】
ヘッドユニット3は、搬送部2により搬送される記録媒体Mに対して画像データに基づいて適切なタイミングでインクを吐出して画像を記録する。本実施形態のインクジェット記録装置1では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクにそれぞれ対応する4つのヘッドユニット3が記録媒体Mの搬送方向上流側からY、M、C、Kの色の順に所定の間隔で並ぶように配列されている。なお、ヘッドユニット3の数は3つ以下又は5つ以上であってもよい。
【0024】
図2は、ヘッドユニット3の構成を示す模式図であり、ヘッドユニット3を搬送ベルト2cの搬送面に相対する側から見た平面図である。ヘッドユニット3は、板状の支持部3aと、支持部3aに設けられた貫通孔に篏合した状態で支持部3aに固定された複数の(ここでは8つの)インクジェットヘッド100とを有する。インクジェットヘッド100は、ノズル111の開口部が設けられたインク吐出面112が支持部3aの貫通孔から-Z方向に向けて露出した状態で支持部3aに固定されている。
【0025】
インクジェットヘッド100では、複数のノズル111が記録媒体Mの搬送方向と交差する方向(本実施形態では搬送方向と直交する幅方向、すなわちX方向)に等間隔にそれぞれ配列されている。本実施形態では、各インクジェットヘッド100は、X方向に等間隔に一次元配列されたノズル111の列(ノズル列)を4つ有している。これらの4つのノズル列は、ノズル111のX方向についての位置が重ならないようにX方向の位置が互いにずらされて配置されている。なお、インクジェットヘッド100が有するノズル列の数は4つに限られず、3つ以下又は5つ以上であっても良い。
【0026】
ヘッドユニット3における8つのインクジェットヘッド100は、ノズル111のX方向についての配置範囲が連続するように千鳥格子状に配置されている。ヘッドユニット3に含まれるノズル111のX方向についての配置範囲は、搬送ベルト2cにより搬送される記録媒体Mのうち画像が記録可能な領域のX方向の幅をカバーしている。ヘッドユニット3は、画像の記録時には位置が固定されて用いられ、記録媒体Mの搬送に応じて搬送方向についての所定間隔(搬送方向間隔)の各位置に対してノズル111からインクを吐出することで、シングルパス方式で画像を記録する。
【0027】
図3は、インクジェットヘッド100の斜視図である。
インクジェットヘッド100は、インク吐出面112を有するインク吐出部10(図4)を内部に格納する外装部材51と、外装部材51の上端で外装部材51と篏合するカバー部材52と、カバー部材52の外側の一部を覆う位置に取り付けられているインクタンク60と、外部からインクが供給されるインレット71(インク供給口)と、インクが外部に排出されるアウトレット72(インク排出口)などを備える。
【0028】
外装部材51は、インク吐出部10のインクの流入口101(図9)に供給されるインクが流入するオリフィス511(図7)と、インク吐出部10の流出口102(図9)から流出したインクが排出されるオリフィス512(図7)と、を有する。また、外装部材51には、インクジェットヘッド100をヘッドユニット3の支持部3aに取り付けるための複数の取付穴513が設けられている。
外装部材51及びカバー部材52の材質は、特には限られないが、例えば機械的強度及びインクに対する耐薬品性に優れたPPS樹脂等の各種樹脂や、金属、合金などを用いることができる。
【0029】
インレット71及びアウトレット72は、カバー部材52の長手方向についての両端に設けられている。すなわち、インレット71は、カバー部材52の+X方向側に設けられ、アウトレット72は、カバー部材52の-X方向側に設けられている。
【0030】
インクタンク60は、一端側がインレット71に接続されるとともに他端側がアウトレット72に接続されており、インレット71から流入したインクを貯留して、当該インクを外装部材51内のインク吐出部10に供給する。また、インクタンク60は、上記の一端側と他端側との間を繋ぐ平板状の部分(インクが主に貯留される部分)がカバー部材52の前方側の面(+Y方向側に向く面)の上半分を覆うように設けられている。
インクタンク60は、上記平板状の部分の前方側(+Y方向側)を構成する蓋部602と、蓋部602と対向する基部601と、基部601のX方向両端から下方に延びて外装部材51に固定される固定部603とを有する。このうち固定部603は、複数の取付ネジ54(取付部材)により外装部材51に着脱可能に固定されている。すなわち、インクタンク60は、インクジェットヘッド100から取り外して交換することができるようになっている。
【0031】
図4は、図3のインクジェットヘッド100のYZ平面に沿った断面を示す図である。
図4に示されるように、外装部材51及びカバー部材52により構成される内部空間には、下面がインク吐出面112となっているインク吐出部10と、インク吐出部10に接続された配線部材40と、配線部材40が接続されている駆動基板30などが格納されている。
また、カバー部材52の前方側の面には、当該面の上半分が下半分より-Y方向側にずれるように段差が設けられており、インクタンク60は、この段差に収まるように取り付けられている。詳しくは、インクタンク60は、カバー部材52の前方側の面のうち下半分がなす平面よりも-Y方向側の範囲内に収まるように設けられている。このような構成により、Y方向についてのインクジェットヘッド100の幅を増大させることなくインクタンク60を設けることが可能となっている。
【0032】
駆動基板30は、インク吐出部10のインク吐出面112とは反対側(すなわち+Z方向側)において、インク吐出部10のインク吐出面112と交差する方向(本実施形態では、インク吐出面112に垂直な垂直方向、すなわち+Z方向)に沿って設けられている。詳しくは、駆動基板30は、このような向き及び位置に配置されるように、図示略の固定部材によってカバー部材52に対する相対位置が固定されている。また、駆動基板30は、上端の一部を除く部分がカバー部材52によって覆われるように配置されている。
駆動基板30は、ガラスエポキシ基板といった絶縁性の基材の表面に金属の回路配線が形成されたリジッド基板である。なお、駆動基板30は、カバー部材52に対して安定的に固定できる範囲で可撓性を有していても良い。
【0033】
インク吐出部10は、ノズル111が設けられておりインク吐出面112を構成するノズル基板11(ノズルプレート)と、ノズル基板11の+Z方向側に積層され、ノズル111の開口部からインクを吐出させるための動作を行うアクチュエーター(動作素子)が設けられたアクチュエーター基板12と、アクチュエーター基板12に供給されるインクを一時的に貯留する共通インク室13(共通液室)とを有している。共通インク室13には、インクタンク60からオリフィス511を介してインクが流入するようになっている。
【0034】
図5は、インク吐出部10の構成を示す拡大模式断面図である。図5では、図2に示された4つのノズル列にそれぞれ含まれる4つのノズル111を含む断面が示されている。
【0035】
ノズル基板11及びアクチュエーター基板12からなるヘッドチップHCは、ノズル111からインクを吐出させるための構成であり、複数、ここでは、4枚の板状の基板が積層形成されている。ヘッドチップHCにおける最下方の基板は、ノズル基板11である。ノズル基板11には複数のノズル111が設けられて、当該ノズル111の開口部からノズル基板11の露出面(インク吐出面112)に対して略垂直にインクが吐出可能とされる。ノズル基板11のインク吐出面112とは反対側には、上方に向かって順番に圧力室基板12a(チャンバープレート)、スペーサー基板12b及び配線形成基板12cが接着されて積層されている。圧力室基板12a、スペーサー基板12b及び配線形成基板12cによりアクチュエーター基板12が構成される。
【0036】
ヘッドチップHCには、ノズル111に連通するインク流路が設けられており、配線形成基板12cの露出される側(上方側)の面で開口されている。この配線形成基板12cの露出面上には、全ての開口を覆うように共通インク室13が設けられている。詳しくは、共通インク室13は、第1の共通インク室131と、第1の共通インク室131の下層(-Z方向側)に設けられた第2の共通インク室132とを有しており、このうち第2の共通インク室132がインク流路の全ての開口に共通に連通している。第2の共通インク室132内のインクは、配線形成基板12cの開口から各ノズル111へ供給される。
【0037】
インク流路の途中には、圧力室121が設けられている。圧力室121は、圧力室基板12aを上下方向に貫通して設けられており、圧力室121の上面は、圧力室基板12aとスペーサー基板12bとの間に設けられた振動板122により形成されている。圧力室121内のインクには、振動板122を介して圧力室121と隣り合って設けられている格納部124内の圧電素子123(アクチュエーター、動作素子)の変位(変形)によって振動板122(圧力室121)が変形することで、圧力変化が付与される。圧力室121内のインクに適切な圧力変化が付与されることで、圧力室121に連通するノズル111からインク流路内のインクが液滴として吐出される。
【0038】
保持基板133は、ヘッドチップHCの上面に接合されており、共通インク室13を保持している。保持基板133には、第2の共通インク室132の下面の開口とほぼ同じ大きさ及び形状の開口が設けられており、第2の共通インク室132内のインクは、第2の共通インク室132の下面の開口、及び保持基板133の開口を通ってヘッドチップHCの上面に供給される。
【0039】
配線部材40は、例えば、FPC(Flexible Printed Circuits)などであり、配線形成基板12cの表面の配線層127に接続されている。この配線層127を介して格納部124内の配線126及び接続部125に伝えられる駆動信号により圧電素子123が変位動作する。配線部材40は、ヘッドチップHCの前方側(+Y方向側)及び後方側(-Y方向側)からそれぞれ1つずつ、保持基板133を貫通して引き出されている。図4に示されるように、これらの一対の配線部材40は、駆動基板30の+Y方側の面(以下では前面とも記す)及び-Y方向側の面(以下では後面とも記す)に各々設けられた第1のコネクター32を介して、それぞれ駆動基板30の前面の回路配線及び後面の回路配線に接続される。
【0040】
図4に示されるように、駆動基板30の前面には、第1のコネクター32の他に、駆動素子31や第2のコネクター33などが実装されている。
駆動素子31は、インクジェット記録装置1の制御部20(図11)やヘッドユニット3の駆動制御回路81(図11)から第2のコネクター33を介して供給される制御信号を受けて、各ノズル111からのインク吐出動作や非吐出動作に応じて、圧電素子123の適切な駆動信号を駆動基板30上の配線に出力する。駆動素子31は、IC(Integrated Circuit)などで構成されている。また、駆動基板30には、駆動素子31の他に、回路配線によって駆動素子31に直接又は間接的に接続された図示しない各種電子部品が実装されている。これらの電子部品及び駆動素子31により、動作素子としての圧電素子123を駆動するための「駆動回路」が構成される。
【0041】
駆動回路を構成する駆動素子31や電子部品の多くは、駆動基板30の前面に実装されている。駆動回路からの駆動信号の一部は、駆動基板30の前面に設けられた回路配線を介して前面側の第1のコネクター32に供給される。また、前面側の回路配線の一部はスルーホール等を介して背面側の回路配線に導通されており、駆動回路からの駆動信号の一部は、この背面側に引き回された回路配線を介して背面側の第1のコネクター32に供給される。
また、駆動素子31や電子部品の多くが駆動基板30の前面に実装されていることにより、駆動回路の動作時における駆動基板30の前面からの放熱量が、後面からの放熱量より大きくなる。
【0042】
図6は、インクジェットヘッド100の、駆動素子31を通る位置でのXY平面に沿った断面を示す図である。
図6に示されるように、カバー部材52は、駆動基板30の前面に対向し当該前面に沿って設けられた平面部分521と、駆動基板30の後面に対向し当該後面に沿うように設けられた平面部分522と、これらの平面部分521、522を繋ぎ駆動基板30の側方を覆う側面部分523とを有しており、駆動基板30の第2のコネクター33の近傍部分を除く大部分を覆っている。
【0043】
また、図4及び図6に示されるように、インクタンク60は、カバー部材52のうち駆動基板30の前面側を覆う平面部分521に沿って設けられている。すなわち、インクタンク60は、当該インクタンク60の外面のうちカバー部材52と対向する対向面60a(-Y方向に向いた面)(所定の面)が、駆動基板30に沿って設けられている。
【0044】
また、インクタンク60の対向面60aとカバー部材52の平面部分521との間には、インクタンク60及びカバー部材52と接触するシート状の放熱部材53が設けられている。放熱部材53としては、空気より熱伝導率が高い任意の部材を用いることができるが、カバー部材52からインクタンク60へ効率良く熱が伝わるように、シリコーンやアクリル樹脂といった高い熱伝導率を有する部材を用いることが望ましい。
【0045】
このように、インクタンク60は、駆動基板30から放射される熱が、カバー部材52及び放熱部材53を介して対向面60aに伝わる態様で設けられている。すなわち、インクタンク60は、駆動基板30の熱を受けて外部に排出するヒートシンクとしても機能する。駆動基板30からインクタンク60に伝わった熱の一部は、インクタンク60の外面から外部空間に排出され、また、インクタンク60から外装部材51を介してヘッドユニット3の支持部3aに排出される。また、インクタンク60に伝わった熱の一部は、インクタンク60内のインクに伝わって、後述するインクの流動経路を経由してインクとともにアウトレット72から排出される。
【0046】
また、図6に示されるように、インクタンク60の基部601のうち+X方向側の端部には、+Z方向に延びる筒状の貫通孔が設けられており、当該貫通孔がインク供給流路711を構成している。このインク供給流路711は、一方側の端部がインレット71に接続されており、他方側の端部が後述する開口A1(図7)に接続されている。
他方で、インクタンク60の基部601のうち-X方向側の端部には、+Z方向に延びる筒状の貫通孔が設けられており、当該貫通孔がインク排出流路721を構成している。このインク排出流路721は、一方側の端部が外装部材51のオリフィス512に接続されており、他方側の端部がアウトレット72に接続されている。
【0047】
ここで、図4図6図7及び図8A図8Cを参照して、インクタンク60の内部構造、及び当該内部構造におけるインクの流動経路について説明する。
図7は、インクタンク60の内部構造を示すインクジェットヘッド100の斜視図である。図7では、インクタンク60の外面を構成する部材が透明に描かれている。
図8Aは、図7における位置X1でのYZ平面に沿ったインクタンク60の断面を示す図である。
図8Bは、図7における位置X2でのYZ平面に沿ったインクタンク60の断面を示す図である。
図8Cは、図7における位置X3でのYZ平面に沿ったインクタンク60の断面を示す図である。
図7図8A図8Cでは、インクの流動方向が矢印で示されている。
【0048】
インクタンク60の内部には、対向面60aに沿って設けられた平板状のフィルター61(第1のフィルター、第2のフィルター)と、フィルター61により仕切られた上流側インク室62及び下流側インク室63と、下流側インク室63に連通する引き回し流路64と、フィルター61(第2のフィルター)により仕切られた上流側補助インク室65及び下流側補助インク室66と、下流側補助インク室66に連通する連通流路67と、インレット71に連通するインク供給流路711(図6)と、アウトレット72に連通するインク排出流路721などが設けられている。
【0049】
図4図6図7及び図8Aに示されるように、上流側インク室62及び下流側インク室63は、対向面60aに沿う平坦な略直方体形状のインク室であり、間に設けられたフィルター61を介して上流側インク室62から下流側インク室63にインクが移動できるようになっている。上流側インク室62は、フィルター61の-Y方向側(対向面60a側)に隣接して設けられ、下流側インク室63は、フィルター61の+Y方向側に隣接して設けられている。
【0050】
フィルター61は、インクに混入した異物を捕捉してインクをろ過するための部材である。フィルター61の材質は、異物を捕捉可能な大きさのメッシュ構造を有するものであれば特には限られないが、例えばステンレス鋼が織り込まれた部材や、ポリプロピレン等の樹脂繊維による不織布などを用いることができる。
フィルター61のうち上流側インク室62と下流側インク室63との間に設けられている部分が、「第1のフィルター」を構成する。
【0051】
図7に示されるように、上流側インク室62のうち+X方向側の側面の下端には、インク供給流路711に連通する開口A1が設けられている。上流側インク室62には、インレット71からインク供給流路711及び開口A1を介してインクが流入する。
【0052】
また、図7及び図8Bに示されるように、下流側インク室63の上面(+Z方向側の面)のうち-X方向側の端部には、引き回し流路64に連通する開口A2が設けられている。
上流側インク室62及び下流側インク室63では、図7図8A及び図8Bの矢印a1が示すとおり、インクは、上流側インク室62からフィルター61を通過して下流側インク室63に移動しつつ、開口A1から開口A2に向かって-X方向及び+Z方向に流動する。
【0053】
図7図8A及び図8Bに示されるように、引き回し流路64は、上流側インク室62及び下流側インク室63の上部において+X方向に延びる第1部分と、第1部分の+X方向側の端部から上流側インク室62及び下流側インク室63の+X方向側の側方において下方向(-Z方向)に延びる第2部分とを有し、第2部分の端部が、外装部材51に設けられたオリフィス511に接続されている。オリフィス511は、インク吐出部10の共通インク室13に連通している。このように、引き回し流路64は、下流側インク室63から流入したインクを+X方向(図7図8A及び図8Bの矢印a2)及び-Z方向に引き回してオリフィス511に導く。
【0054】
上記の上流側インク室62、下流側インク室63及び引き回し流路64により、「タンク内流路F1」(図9)が構成される。タンク内流路F1における、上流側インク室62から下流側インク室63、引き回し流路64を経てオリフィス511に向かうインクの流動方向が、「所定の供給方向」に相当する。
【0055】
また、図7に示されるように、上流側インク室62及び下流側インク室63の-X方向側には、上流側補助インク室65及び下流側補助インク室66が設けられている。上流側補助インク室65及び下流側補助インク室66は、対向面60aに沿う平坦な略直方体形状のインク室であり、上流側インク室62及び下流側インク室63と同一の厚さ(Y方向の長さ)及び高さ(Z方向の長さ)を有し、上流側インク室62及び下流側インク室63よりも幅(X方向の長さ)が小さくなっている。上流側補助インク室65は、基部601と一体的に設けられた第1の仕切部材681によって上流側インク室62と仕切られており、下流側補助インク室66は、蓋部602と一体的に設けられた第2の仕切部材682によって下流側インク室63と仕切られている。
【0056】
図7及び図8Cに示されるように、第1の仕切部材681の上端部には、開口A3が設けられている。よって、上流側インク室62に流入したインクのうち下流側インク室63側に移動する前のインクの一部が、図7及び図8Cの矢印a3に示されるように、開口A3を介して上流側補助インク室65に流入するようになっている。
上流側補助インク室65に流入したインクは、フィルター61を通過して下流側補助インク室66に移動する。
【0057】
フィルター61のうち上流側補助インク室65と下流側補助インク室66との間に設けられている部分が、「第2のフィルター」を構成する。
本実施形態では、上流側インク室62と下流側インク室63との間に設けられた「第1のフィルター」と、この「第2のフィルター」とが、単一のフィルター61によって構成されている。換言すれば、「第1のフィルター」と、「第2のフィルター」とが一体的に設けられている。
【0058】
下流側補助インク室66の上面(+Z方向側の面)のうち-X方向側の端部には、連通流路67に連通する開口A4が設けられている。
連通流路67は、開口A4から+Z方向に延びた後に-X方向側に折れ、さらに蛇行しながら-Z方向に向かう形状で設けられている。連通流路67の開口A4とは反対側の端部は、インク排出流路721に接続されている。
よって、上流側補助インク室65に流入したインクは、フィルター61を通過して下流側補助インク室66に移動した後に、連通流路67を通ってインク排出流路721に流入する。
上流側補助インク室65、下流側補助インク室66及び連通流路67は、タンク内流路F1と、インク排出流路721とをインク吐出部10を介さずに繋ぐ「バイパス流路F2」(図9)を構成する。
【0059】
また、インク排出流路721におけるバイパス流路F2との接続位置とアウトレット72との間には、アウトレット72に向かう排出方向にインクを通過させ、当該排出方向と反対方向にはインクを通過させない逆流防止手段としての逆止弁73(チェックバルブ)が設けられている。
【0060】
次に、インクタンク60を含むインクジェットヘッド100の全体におけるインクの流動経路について説明する。
図9は、インクジェットヘッド100におけるインクの流動経路を説明する模式図である。図9では、説明の便宜上、インクタンク60内のフィルター61や上流側インク室62及び下流側インク室63を横方向に長い形状で描いている。
【0061】
図9に示されるように、外部からインレット71に流入したインクは、インク供給流路711を通り、開口A1を介してインクタンク60内の上流側インク室62に流入する。上流側インク室62に流入したインクの大部分は、上述したタンク内流路F1を通ってインク吐出部10の流入口101に流入する。
【0062】
流入口101に流入したインクの一部は、共通インク室13のうち第1の共通インク室131に流入し、残りのインクが第2の共通インク室132に流入する。第1の共通インク室131と第2の共通インク室132との間の隔壁は、インクが通過できない部材(例えば樹脂)により構成されている。
第1の共通インク室131に流入したインクは、そのままインク吐出部10の流出口102に導かれる。
第2の共通インク室132に流入したインクは、一部がアクチュエーター基板12のインク流路に流入してノズル基板11のノズル111から液滴として外部に吐出され、ノズル111から吐出されないインクは流出口102に導かれる。
【0063】
このように、ノズル111から吐出されないインクを第1の共通インク室131に流入させて流出口102から流出させることで、インクジェットヘッド100内で効率良くインクを還流させることができる。これにより、インク中の気泡を外部に排出したり、駆動基板30からインクに伝わった熱をインクとともに外部に排出したりすることができる。
第1の共通インク室131と第2の共通インク室132の容積比は、第2の共通インク室132からノズル111へのインクの供給量が確保され、かつ、第1の共通インク室131によって還流されるインク量が所望の量となるように設定される。
【0064】
インク吐出部10の流出口102から流出したインクは、インク排出流路721を通ってアウトレット72(インク排出流路721の出口)から外部に排出される。
【0065】
また、上述したとおり、タンク内流路F1を流れるインクの一部は、開口A3からバイパス流路F2に流入し、インク吐出部10を介さずにインク排出流路721に導かれる。
また、インク排出流路721におけるバイパス流路F2との接続位置とアウトレット72との間に逆止弁73が設けられていることで、アウトレット72側からインク吐出部10へのインクの逆流が防止される。
【0066】
図9に示されるインクの流動経路におけるインクの流れは、インクジェット記録装置1が有するインク循環機構9により発生させることができる。
【0067】
図10は、インク循環機構9の構成を示す模式図である。
インク循環機構9は、供給用サブタンク91、還流用サブタンク92及びメインタンク93などを備える。
供給用サブタンク91は、インクジェットヘッド100のインクタンク60に供給されるインクを貯留する。供給用サブタンク91は、インク流路94によってインレット71に接続されている。
還流用サブタンク92は、インク流路95によってアウトレット72に接続されており、アウトレット72から排出されたインクを貯留する。
供給用サブタンク91及び還流用サブタンク92は、インク流路96で接続されている。そして、インク流路96に設けられたポンプ98により、還流用サブタンク92から供給用サブタンク91にインクを戻すことができるようになっている。
メインタンク93は、供給用サブタンク91に供給されるインクを貯留する。メインタンク93は、インク流路97によって供給用サブタンク91に接続されている。また、インク流路97に設けられたポンプ99により、メインタンク93から供給用サブタンク91にインクが供給される。
【0068】
供給用サブタンク91は、その液面が、インク吐出部10のインク吐出面112(以下、「位置基準面」とも記す)より高くなる位置に設けられ、還流用サブタンク92の液面は、その液面が位置基準面より低くなる位置に設けられている。よって、位置基準面と供給用サブタンク91との水頭差による圧力P1と、位置基準面と還流用サブタンク92との水頭差による圧力P2が生じている。この結果、インレット71におけるインクの圧力がアウトレット72におけるインクの圧力よりも高くなっている。この圧力差により、インレット71からインクタンク60、インク吐出部10を経てアウトレット72に向かうインクの流れが生じ、インク吐出部10へのインク供給、及びインク吐出部10からのインクの排出(還流)がなされるようになっている。また、各サブタンク内のインク量や、各サブタンクの鉛直方向の位置を変更することで、圧力P1及び圧力P2を調整することができ、これによりインクの流速を調整することができる。
【0069】
図11は、インクジェット記録装置1の主要な機能構成を示すブロック図である。
インクジェット記録装置1は、上述したヘッドユニット3と、制御部20と、搬送駆動部82と、入出力インターフェース83と、バス84などを備える。このうちヘッドユニット3は、駆動制御回路81と、駆動素子31及び圧電素子123が設けられたインクジェットヘッド100と、を有する。また、制御部20は、CPU21(Central Processing Unit)、RAM22(Random Access Memory)、ROM23(Read Only Memory)及び記憶部24を有する。
【0070】
CPU21は、ROM23に記憶された各種制御用のプログラムや設定データを読み出してRAM22に記憶させ、当該プログラムを実行して各種演算処理を行う。また、CPU21は、インクジェット記録装置1の全体動作を統括制御する。
【0071】
RAM22は、CPU21に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。RAM22は、不揮発性メモリーを含んでいても良い。
【0072】
ROM23は、CPU21により実行される各種制御用のプログラムや設定データ等を格納する。なお、ROM23に代えてEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリー等の書き換え可能な不揮発性メモリーが用いられても良い。
【0073】
記憶部24には、入出力インターフェース83を介して外部装置200から入力されたプリントジョブ及び当該プリントジョブに係る画像データが記憶される。記憶部24としては、例えばHDD(Hard Disk Drive)が用いられ、また、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などが併用されても良い。
【0074】
駆動制御回路81は、制御部20からの制御信号に基づいて、駆動素子31に対して適切なタイミングで各種制御信号や画像データを供給する。
【0075】
搬送駆動部82は、CPU21から供給される制御信号に基づいて搬送部2の搬送ローラー2a、2bを駆動するモーターに駆動信号を供給して搬送ローラー2a、2bを所定の速度及びタイミングで回転させ、搬送ベルト2cを周回移動させる。
【0076】
入出力インターフェース83は、外部装置200と制御部20との間のデータの送受信を媒介する。入出力インターフェース83は、例えば各種シリアルインターフェース、各種パラレルインターフェースのいずれか又はこれらの組み合わせで構成される。
【0077】
バス84は、制御部20と他の構成との間で信号の送受信を行うための経路である。
【0078】
外部装置200は、例えばパーソナルコンピューターであり、入出力インターフェース83を介してプリントジョブ及び画像データ等を制御部20に供給する。
【0079】
以上のように、本実施形態のインクジェットヘッド100は、インクを吐出するノズル111の開口部がインク吐出面112に設けられており、ノズル111の開口部からインクを吐出させるための動作を行う動作素子としての圧電素子123を有するインク吐出部10と、圧電素子123を駆動するための駆動回路が設けられた駆動基板30と、インク吐出部10に供給されるインクを貯留するインクタンク60と、を備え、インクタンク60は、当該インクタンク60の対向面60aが駆動基板30に沿って設けられており、かつ、駆動基板30の熱が対向面60aに伝わる態様で設けられている。
このような構成により、インクタンク60を、駆動基板30の熱を受けて外部に排出するヒートシンクとして機能させることができる。すなわち、駆動基板30からインクタンク60に伝わった熱の一部を、インクタンク60の外面から外部空間に排出したり、インクタンク60が取り付けられた外装部材51を介して外部に排出したりすることができる。また、インクタンク60に伝わった熱の一部は、インクタンク60内のインクに伝わるため、当該インクを所定の経路でインクジェットヘッド100の外部に導くことで、駆動基板30の熱をインクとともに外部に排出することができる。
これにより、駆動基板30の熱がインク吐出部10内のインクに伝わってインクの粘度が低下することによりノズル111からの適正なインク吐出が行なえなくなったり、インク吐出部10が駆動基板30の熱により膨張してノズル111の位置が変動したりする不具合の発生を抑制することができる。この結果、駆動基板30の熱に起因する記録画像の画質低下を効果的に抑制することができる。
【0080】
また、駆動基板30は、インク吐出部10のインク吐出面112とは反対側においてインク吐出面112に交差する方向に沿って設けられている。このような構成によれば、インク吐出部10のインク吐出面112とは反対側のスペースを利用して駆動基板30を配置することができるため、インク吐出面112と平行な方向についてのインクジェットヘッド100のサイズを小さく抑えつつインクジェットヘッド100に駆動基板30を設けることができる。また、このように配置された駆動基板30に対してインクタンク60の対向面60aが沿うようにインクタンク60を配置することで、インク吐出面112と平行な方向についてのインクジェットヘッド100のサイズを小さく抑えつつインクジェットヘッド100にインクタンク60を設けることができる。
【0081】
また、インクタンク60には、インク吐出部10に供給されるインクが所定の供給方向に流れるタンク内流路F1と、タンク内流路F1の内部に対向面60aに沿って設けられ、タンク内流路F1を流れるインクが通過する第1のフィルターとしてのフィルター61と、が設けられている。このように、インクタンク60内においてフィルター61を対向面60aに沿って設けることで、インクジェットヘッド100のサイズの増大を最小限に抑えつつ、大面積のフィルター61を設けることができる。これにより、タンク内流路F1を流れるインクがフィルター61を通過する際のインクの圧力損失を小さく抑えることができる。よって、インクを流動させるための背圧を、必要なインクの流速が確保できる範囲で小さくしたり、同一の背圧でのインクの流速を増大させたりすることができる。これにより、インクに混入した異物を効率良くフィルター61で捕捉することができる。また、インクを効率良く流動させることができるため、駆動基板30の熱やインク中の気泡を、より容易に外部に排出することができる。
【0082】
また、タンク内流路F1は、上記供給方向についてフィルター61の上流側に隣接する上流側インク室62と、上記供給方向についてフィルター61の下流側に隣接する下流側インク室63と、を有し、フィルター61の対向面60a側に上流側インク室62が設けられている。
このような構成では、駆動基板30に近い側に、上流側インク室62が設けられることとなる。上流側インク室62に流入したインクは、フィルター61を通過して下流側インク室62に移動するまでの間、上流側インク室62内に滞留するため、上流側インク室62内の各部におけるインクの流速が一様に低い状態となりやすい。よって、駆動基板30からの熱を上流側インク室62内の各位置でほぼ均等に、かつ効率良くインクに伝えることができる。これにより、駆動基板30からの熱をインクタンク60内のインクを介して効率良く排出することができる。
【0083】
また、インク吐出部10は、タンク内流路F1から流入したインクの一部が流出する流出口102を有し、インクジェットヘッド100は、インク吐出部10の流出口102から流出したインクをインクジェットヘッド100の外部に導くインク排出流路721を備える。このように、インクタンク60からインク吐出部10に供給されるインクのうちノズル111から吐出されないインクを外部に導いて還流させる構成とすることで、インクタンク60のタンク内流路F1におけるインクの流量を増大させることができる。これにより、インクに伝わった駆動基板30の熱やインク中の気泡を、インクとともにより効率良く流動させて外部に排出することができる。
【0084】
また、インクジェットヘッド100は、タンク内流路F1と、インク排出流路721とを、インク吐出部10を介さずに繋ぐバイパス流路F2と、バイパス流路F2の内部に設けられ、当該バイパス流路F2を流れるインクが通過する第2のフィルターとしてのフィルター61と、インク排出流路721におけるバイパス流路F2との接続位置とインク排出流路721の出口(アウトレット72)との間に設けられ、アウトレット72に向かう方向と反対方向にはインクを通過させない逆止弁73と、を備える。
このようなバイパス流路F2によっても、駆動基板30から伝わった熱をインクとともにアウトレット72から外部に排出したり、インク中の気泡をアウトレット72から外部に排出したりすることができる。また、バイパス流路F2を通るインクの排出経路は、インク吐出部10を通るインクの排出経路と比較して流路長が短いため、圧力損失を小さくすることができる。このため、バイパス流路F2を通るインクの排出経路によれば、インク吐出部10を通るインクの排出経路よりも効率良く放熱や気泡の除去を行うことができる。
さらに、逆止弁73を設けることで、アウトレット72側からインク吐出部10へのインクの逆流を防止することができる。よって、このようなインクの逆流により、気泡や異物などがノズル111及び当該ノズル111に連通するインク流路に混入する不具合の発生を抑制することができる。
【0085】
また、バイパス流路F2は、インクタンク60の内部に設けられており、第1のフィルター及び第2のフィルターが一体的に設けられている。これにより、インクジェットヘッド100を構成する部材の数を低減させて製造コストの上昇を抑えることができる。また、インクジェットヘッド100の小型化を実現することができる。
【0086】
また、インクジェットヘッド100は、インクタンク60を着脱可能に固定する取付部材としての取付ネジ54を備える。このようにインクタンク60を着脱可能に固定した構成とすることで、フィルター61に目詰まりや経時劣化などが生じた場合に、インクタンク60を交換することで、容易かつ低コストにフィルター61を交換することができる。
【0087】
また、インクタンク60と駆動基板30との間には、駆動基板30の少なくとも一部を覆うカバー部材52が設けられており、カバー部材52とインクタンク60との間には、カバー部材52及びインクタンク60に接触する放熱部材53が設けられている。これによって、駆動基板30の熱をより効率良くインクタンク60に伝えることができる。
【0088】
また、駆動回路の動作時における駆動基板30の前面からの放熱量が、駆動基板30の後面からの放熱量より大きく、インクタンク60が駆動基板30の前面側に設けられている構成とすることで、駆動基板30の熱を効率良くインクタンク60に伝えて排出することができる。
【0089】
また、本実施形態のインクジェット記録装置1は、上記のインクジェットヘッド100を備えるので、インクジェットヘッド100における駆動基板30の熱に起因する画質低下を効果的に抑制することができる。
【0090】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
上記実施形態では、インクタンク60において、フィルター61に対して-Y方向側(対向面60a側)に上流側インク室62及び上流側補助インク室65が設けられ、フィルター61に対して+Y方向側に下流側インク室63及び下流側補助インク室66が設けられていたが、本変形例では、フィルター61に対するこれらのインク室の位置関係が逆になっている。すなわち、本変形例では、フィルター61に対して-Y方向側(対向面60a側)に下流側インク室63及び下流側補助インク室66が設けられ、フィルター61に対して+Y方向側に上流側インク室62及び上流側補助インク室65が設けられている。
【0091】
このような構成では、対向面60aに近い側、すなわち駆動基板30に近い側に、下流側インク室63が設けられるため、上流側インク室62からフィルター61を通過して下流側インク室63に移動した後のインクが、駆動基板30の熱を受けやすい。
ここで、図12に示されるように、下流側インク室63では、図中右上に設けられている開口A2に向かってインクが流れるため、開口A2の近傍の領域Rにおけるインクの流速が、その他の領域におけるインクの流速より速くなる。
よって、フィルター61の対向面60a側に下流側インク室63が設けられている本変形例の構成によれば、領域Rにおいてインクが吸収した熱を素早く引き回し流路64に排出できるため、領域Rにおける排熱効率が高くなる(換言すれば、領域Rの範囲内を集中的に冷却することができる)。このため、駆動基板30のうちY方向から見て領域Rと重なる範囲に、発熱量の大きい回路部品(例えば、駆動素子31)を配置することで、当該回路部品から放出された熱を効率良く吸収してインクとともに外部に排出することができる。
【0092】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、インクタンク60の形状及び設置態様は、上記実施形態で説明したものに限られず、「対向面60aが駆動基板30に沿っており、かつ駆動基板30の熱が対向面60aに伝わる」との条件を満たす範囲で任意の形状及び設置態様とすることができる。
一例を挙げると、上記実施形態では、インクタンク60として、対向面60a、及び対向面60aの反対側(前面側)の面がいずれも平坦であるものを例に挙げて説明したが、これに限られず、インクタンク60の対向面60a以外の面の形状は、ヘッドユニット3に収まる範囲内で任意の形状とすることができる。
また、上記実施形態では、駆動基板30とインクタンク60とが、間にカバー部材52及び放熱部材53を挟んで対向している例を挙げて説明したが、これに限られず、例えば駆動基板30とインクタンク60とが直接対向する構成としても良い。具体的には、カバー部材52のうちインクタンク60に覆われる部分に開口部を設けることで、駆動基板30の熱が当該開口部を通って直接インクタンク60に放射されるようにしても良い。
また、対向面60aが駆動基板30に沿っている態様には、対向面60aと駆動基板30とが平行である態様に加え、対向面60aが駆動基板30に対して若干の角度(例えば数度から十数度程度)を有して傾斜している態様も含まれる。
また、インクタンク60を着脱可能に設けた構成に代えて、インクタンク60が着脱不能に固着された構成としても良い。
【0093】
また、上記実施形態では、駆動基板30が、インク吐出部10のインク吐出面112に垂直に設けられている例を挙げて説明したが、これに限られず、駆動基板30は、インク吐出面112に交差する任意の方向に沿って設けることができる。また、駆動基板30及びインクタンク60の配置スペースを確保できる場合には、駆動基板30をインク吐出面112と平行に設けても良い。
【0094】
また、駆動基板30の後面側からの放熱量が前面側からの放熱量より大きい構成とし(例えば、駆動基板30の後面側に駆動素子31を実装し)、インクタンク60を駆動基板30の後面側に配置しても良い。
【0095】
また、上記実施形態のインクタンク60におけるタンク内流路F1の構成は例示であり、タンク内流路F1は、インレット71から流入したインクをインク吐出部10に供給可能な他の任意の構成とすることができる。
【0096】
また、上記実施形態では、バイパス流路F2がインクタンク60の内部に設けられている例を挙げて説明したが、これに限られず、バイパス流路F2をインクタンク60の外部に設けても良い。この場合は、バイパス流路F2内に、インクタンク60のフィルター61とは別個のフィルター(第2のフィルター)を設けることが望ましい。
【0097】
また、上記実施形態では、インク供給流路711及びインク排出流路721がインクタンク60内に設けられている例を挙げて説明したが、これに限られず、インク供給流路711及びインク排出流路721の少なくとも一方を、インクタンク60の外部に設けても良い。
【0098】
また、上記実施形態では、圧電素子123を変形させることで圧力室内のインクの圧力を変動させてインクを吐出させる、ベントモードのヘッドチップを有するインクジェットヘッド100を例に挙げて説明したが、これに限定する趣旨ではない。例えば、圧力室の壁面をなす圧電部材がシアモード型の変位を繰り返すことで圧力室内のインクの圧力を変動させてインクを吐出させる、シアモードのヘッドチップを有するインクジェットヘッドに対して本発明を適用しても良い。
【0099】
また、上記各実施形態及び各変形例では、搬送ベルト2cを備える搬送部2により記録媒体Mを搬送する例を用いて説明したが、これに限定する趣旨ではなく、搬送部2は、例えば回転する搬送ドラムの外周面上で記録媒体Mを保持して搬送するものであっても良い。
【0100】
また、上記各実施形態及び各変形例では、シングルパス形式のインクジェット記録装置1を例に挙げて説明したが、インクジェットヘッド100を走査させながら画像の記録を行うインクジェット記録装置に本発明を適用しても良い。
【0101】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0103】
1 インクジェット記録装置
2 搬送部
3 ヘッドユニット
9 インク循環機構
10 インク吐出部
101 流入口
102 流出口
11 ノズル基板
111 ノズル
112 インク吐出面
12 アクチュエーター基板
123 圧電素子
13 共通インク室
131 第1の共通インク室
132 第2の共通インク室
20 制御部
30 駆動基板
31 駆動素子
32 第1のコネクター
33 第2のコネクター
40 配線部材
51 外装部材
52 カバー部材
53 放熱部材
54 取付ネジ
60 インクタンク
60a 対向面
601 基部
602 蓋部
603 固定部
61 フィルター
62 上流側インク室
63 下流側インク室
64 引き回し流路
65 上流側補助インク室
66 下流側補助インク室
67 連通流路
68 仕切部材
71 インレット
711 インク供給流路
72 アウトレット
721 インク排出流路
73 逆止弁
100 インクジェットヘッド
F1 タンク内流路
F2 バイパス流路
HC ヘッドチップ
M 記録媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12