(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
E03D 5/01 20060101AFI20220907BHJP
E03D 11/02 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
E03D5/01
E03D11/02 B
(21)【出願番号】P 2018184439
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】三宅 翼
(72)【発明者】
【氏名】末永 光宏
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-66758(JP,A)
【文献】特開2001-123511(JP,A)
【文献】特開2017-166560(JP,A)
【文献】特開2001-90162(JP,A)
【文献】特開平4-118432(JP,A)
【文献】特開平8-144346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00- 7/00
E03D11/00-13/00
F16K21/00-24/06
F16K31/12-31/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧した洗浄水によって洗浄される水洗大便器であって、
洗浄水を貯水する貯水タンクと、
ボウル部と、洗浄水を吐水するリム吐水口及びジェット吐水口と、排水トラップ部と、を備えた便器本体と、
上記貯水タンクから洗浄水を上記リム吐水口及び上記ジェット吐水口のそれぞれに供給可能にする給水路と、
この給水路に設けられて上記リム吐水口及び上記ジェット吐水口のそれぞれに洗浄水を供給する給水経路を切り替える切替部であって、まず、上記給水路内の洗浄水を上記リム吐水口から吐水する第1洗浄工程を実行させ、その後、上記給水路内の洗浄水を少なくとも上記ジェット吐水口から吐水する第2洗浄工程を実行させるように上記給水経路を切り替える上記切替部と、
上記貯水タンクから上記給水路に供給する洗浄水を加圧し、上記給水路の洗浄水の流量を調整可能にする加圧ポンプであって、上記第1洗浄工程時に圧送する洗浄水の第1流量よりも上記第2洗浄工程時に圧送する洗浄水の第2流量の方が大きくなるように調整可能である上記加圧ポンプと、を有し、
上記切替部は、上記加圧ポンプにより加圧された洗浄水の水圧を受けて機械的に作動し且つ上記給水路から少なくとも上記ジェット吐水口への給水経路を開閉する切替弁体と、上記加圧ポンプから上記切替弁体まで延びる第1流路と、この第1流路における分岐部から分岐して上記リム吐水口まで延びる第2流路と、上記切替弁体から上記ジェット吐水口まで延びる第3流路と、を備えており、
上記切替弁体は、上記第1流路の軸方向上の対向する位置に配置されていることを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記第3流路の流路断面積(A3)は、上記第1流路の流路断面積(A2)よりも大きい請求項1記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記第1流路における上記分岐部よりも下流側の流路断面積(A2)は、上記分岐部よりも上流側の上記第1流路の流路断面積(A1)よりも大きい請求項1又は2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記第1流路は円筒状に形成されており、上記切替弁体の中心は上記第1流路の中心軸線上に位置している請求項1乃至3の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項5】
上記切替部は、まず、上記第1洗浄工程を実行させて、上記給水路内の洗浄水を上記リム吐水口から吐水し、その後、上記第2洗浄工程を実行させて、上記リム吐水口からの洗浄水の吐水を継続させながら、上記ジェット吐水口からも洗浄水を吐水するように上記給水経路を切り替えるものであり、上記第1流路から上記第2流路に分岐させる上記分岐部は、上記切替弁体よりも上流側に位置している請求項1乃至4の何れか1項に記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係り、特に、加圧した洗浄水によって洗浄される水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、加圧した洗浄水によって洗浄される水洗大便器として、例えば、特許文献1、2に記載されているような水洗大便器が知られている。
まず、特許文献1に記載されている従来の水洗大便器においては、水道水をリム吐水口に直接供給して吐出させることによりリム吐水を実行する一方、タンクに貯水された洗浄水をポンプで加圧してジェット吐水口から吐出させることによりジェット吐水を実行する、いわゆる、「ハイブリッド洗浄」によるボウル部の洗浄を実行するようになっている。
また、上述した特許文献1に記載されている従来の水洗大便器においては、水道に直結されているリム吐水用の給水経路と、ジェット吐水用の洗浄水が貯水されるタンクに給水するジェット吐水用の給水経路とが電気的な切替弁(電磁弁等)により切替可能となっており、この電気的な切替弁の切替動作は、コントローラの制御により電気的な信号で行われるようになっている。これにより、便器洗浄が開始された際には、まず、リム吐水口から洗浄水を吐水するリム吐水が行われ、つぎに、このリム吐水を継続した状態でジェット吐水口から洗浄水を吐水するジェット吐水が行われるようになっている。
さらに、特許文献2に記載されている従来の水洗大便器においては、タンクに貯水された洗浄水をポンプで加圧し、このポンプで加圧された洗浄水のみによりリム吐水及びジェット吐水のそれぞれを実行するようになっている。また、この水洗大便器においては、ポンプで加圧された洗浄水の吐水流路が電気的な切替弁(電磁弁等)によりリム吐水用の給水経路とジェット吐水用の給水経路のそれぞれに切替可能となっており、この電気的な切替弁の切替動作がコントローラの制御により電気的な信号で行われるようになっている。
これらの特許文献1、2に記載されている従来の水洗大便器については、低水圧の地域や場所に設置した場合においても、タンクに貯水された洗浄水をポンプで加圧して吐水を行うことができるようになっているため、便器の洗浄性能を確保することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-156201号公報
【文献】特開2017-66758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されている従来の水洗大便器においては、水道水の直圧によるリム吐水用の給水経路やポンプの加圧によるジェット吐水用の給水経路のそれぞれに対して給水する手段や装置等を設ける必要があるため、その分、部品点数も多くなり、装置全体が大型化してしまうという問題がある。
特に、水道水をリム吐水口へ直接供給するリム吐水用の給水経路においては、水頭圧(いわゆる、ヘッド圧)を考慮すると、切替弁をリム吐水口よりも高い位置に配置することが好ましい。しかしながら、このように切替弁をリム吐水口よりも高い位置に配置した場合には、水洗大便器の高さ方向のスペースを要することになるため、装置の小型化を阻害する要因となっている。
【0005】
また、上述した特許文献2に記載されている従来の水洗大便器においては、共通のポンプで加圧された洗浄水をリム吐水口とジェット吐水口に供給する構造により、水洗大便器の高さ寸法を抑制することができる。しかしながら、切替弁によりリム吐水用の給水経路からジェット吐水用の給水経路に切り替える際には、加圧ポンプにより比較的大きな水圧がかかった状態の洗浄水について、リム吐水用の給水経路からジェット吐水用の給水経路に切り替える必要がある。
したがって、このように給水経路に比較的大きな水圧がかかった状態において電気的な切替弁(電磁弁等)を駆動させるためには、比較的大きなトルクが必要とされるため、その分、切替弁が大型化してしまうという問題がある。
これに対して、比較的低い水圧がかかった状態において切替弁を予め作動させておくことにより、切替動作に必要なトルクを小さくすることもできる。しかしながら、切替弁が全開状態となった時にポンプの回転数を上昇させると、特に、ジェット吐水において、サイホンの発生に寄与しない無駄水が発生してしまうことが懸念されるという問題もある。
そこで、本発明者らは、加圧ポンプによって発生する給水路内の水圧に応じて、リム吐水用の給水経路やジェット吐水用の給水経路を開閉することにより流路切替を行う切替部に着目し、この切替部を含む装置の小型化を実現することを目的として鋭意開発を行っている。
しかしながら、水圧によって給水経路を開閉することにより流路切替を行う切替部の切替弁等の切替機構に対しては、これらの切替機構に作用する水圧(より厳密には、静圧や動圧)が不安定であると、切替弁の開閉動作も不安定となるため、リム吐水やジェット吐水の吐水流量がばらつくという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、リム吐水口やジェット吐水口に洗浄水を供給する給水経路を安定して切り替えることができ、吐水流量の安定化を実現することができる水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、加圧した洗浄水によって洗浄される水洗大便器であって、洗浄水を貯水する貯水タンクと、ボウル部と、洗浄水を吐水するリム吐水口及びジェット吐水口と、排水トラップ部と、を備えた便器本体と、上記貯水タンクから洗浄水を上記リム吐水口及び上記ジェット吐水口のそれぞれに供給可能にする給水路と、この給水路に設けられて上記リム吐水口及び上記ジェット吐水口のそれぞれに洗浄水を供給する給水経路を切り替える切替部であって、まず、上記給水路内の洗浄水を上記リム吐水口から吐水する第1洗浄工程を実行させ、その後、上記給水路内の洗浄水を少なくとも上記ジェット吐水口から吐水する第2洗浄工程を実行させるように上記給水経路を切り替える上記切替部と、上記貯水タンクから上記給水路に供給する洗浄水を加圧し、上記給水路の洗浄水の流量を調整可能にする加圧ポンプであって、上記第1洗浄工程時に圧送する洗浄水の第1流量よりも上記第2洗浄工程時に圧送する洗浄水の第2流量の方が大きくなるように調整可能である上記加圧ポンプと、を有し、上記切替部は、上記加圧ポンプにより加圧された洗浄水の水圧を受けて機械的に作動し且つ上記給水路から少なくとも上記ジェット吐水口への給水経路を開閉する切替弁体と、上記加圧ポンプから上記切替弁体まで延びる第1流路と、この第1流路における分岐部から分岐して上記リム吐水口まで延びる第2流路と、上記切替弁体から上記ジェット吐水口まで延びる第3流路と、を備えており、上記切替弁体は、上記第1流路の軸方向上の対向する位置に配置されていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、切替部の切替弁体が第1流路の軸方向上の対向する位置に配置されているため、切替弁体が加圧ポンプから第1流路に供給された洗浄水の水圧を受けて開弁した状態では、切替弁体の受圧面に対して水圧(より厳密には、動圧)をほぼ均等に作用させることができる。これにより、特に、切替弁体の開弁動作を安定させることができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、上記第3流路の流路断面積(A3)は、上記第1流路の流路断面積(A2)よりも大きい。
このように構成された本発明においては、第3流路の流路断面積が第1流路の流路断面積よりも大きいため、切替弁体が開弁状態において、第1流路の洗浄水が切替弁体を通過して第3流路に流入した際に、第1流路の軸方向に対してほぼ均等に周方向に広がることができる。
したがって、洗浄水が開弁後の切替弁体に対して局所的に流動することを抑制することができるため、切替弁体の受圧面に作用する水圧(より厳密には、動圧)が変動してばらつくことなく、均等に作用することができる。
よって、切替弁体による給水経路の切替時の動作を安定化させることができるため、例えば、給水路内の洗浄水をリム吐水口から吐水する第1洗浄工程(いわゆる、リム吐水)を実行させた後に、給水路内の洗浄水を少なくともジェット吐水口から吐水する第2洗浄工程(いわゆる、リム・ジェット吐水又はジェット吐水)を実行させる際に、リム吐水やジェット吐水の安定化を実現することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記第1流路における上記分岐部よりも下流側の流路断面積(A2)は、上記分岐部よりも上流側の上記第1流路の流路断面積(A1)よりも大きい。
このように構成された本発明においては、第1流路における切替弁体側の流路断面積(A2)を分岐部よりも上流側の第1流路の流路断面積(A1)よりも大きくすることができる。
したがって、切替弁体が開弁状態において、第1流路における切替弁体側の流路断面積(A2)を通過した洗浄水の水圧が切替弁体に作用する作用面を大きくすることができる。
また、第1流路における分岐部よりも上流側の流路では、分岐部の下流側の第1流路よりも流路断面積が小さい分だけ、洗浄水の流速が分岐部よりも下流側の第1流路に比べて大きくなるため、洗浄水を下流側の切替弁体に向けて流れ易くすることができる。
したがって、切替弁体が、第1流路の洗浄水の水圧に応じて作動し易くなるため、安定した開閉動作を実現することができる。
これにより、切替弁体による給水経路の切替時の動作を安定化させることができ、リム吐水やジェット吐水の安定化を実現することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、上記第1流路は円筒状に形成されており、上記切替弁体の中心は上記第1流路の中心軸線上に位置している。
このように構成された本発明においては、第1流路が円筒状に形成されており、切替弁体の中心は第1流路の中心軸線上に位置しているため、第1流路内の洗浄水の水圧を切替弁体に対して周方向全体に亘って作用させることができる。
したがって、切替弁体による給水経路の切替時の動作をより安定化させることができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、上記切替部は、まず、上記第1洗浄工程を実行させて、上記給水路内の洗浄水を上記リム吐水口から吐水し、その後、上記第2洗浄工程を実行させて、上記リム吐水口からの洗浄水の吐水を継続させながら、上記ジェット吐水口からも洗浄水を吐水するように上記給水経路を切り替えるものであり、上記第1流路から上記第2流路に分岐させる上記分岐部は、上記切替弁体よりも上流側に位置している。
このように構成された本発明においては、切替部による給水経路の切り替えにより、第1洗浄工程を実行させて、給水路内の洗浄水をリム吐水口から吐水するリム吐水を実行した後、第2洗浄工程において、リム吐水を継続させながら、給水路内の洗浄水をジェット吐水口からも吐水するジェット吐水を実行し、リム・ジェット吐水を確実に実行することができる。
このとき、第1流路から第2流路に分岐させる分岐部が切替弁体よりも上流側に位置しているため、切替弁体が作動して第1洗浄工程から第2洗浄工程に切り替わる際に、第1流路の分岐部から第2流路に流れる洗浄水(リム吐水)の流れが、切替弁体の動作による影響を受け難くすることができる。
したがって、第1洗浄工程及び第2洗浄工程のそれぞれにおいて実行されるリム吐水について、切替弁体の動作にほとんど影響されることなく、流量のばらつきを抑制して安定させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水洗大便器によれば、リム吐水口やジェット吐水口に洗浄水を供給する給水経路を安定して切り替えることができ、吐水流量の安定化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態による水洗大便器の全体概略構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態による水洗大便器の切替弁装置の縦断面図であり、閉弁状態を示す。
【
図3】本発明の一実施形態による水洗大便器の切替弁装置の縦断面図であり、開弁状態を示す。
【
図4】本発明の一実施形態による水洗大便器の基本動作を示すタイムチャートである。
【
図5】本発明の一実施形態による水洗大便器の全体概略構成図であり、切替弁装置の開弁状態を示す。
【
図6】本発明の一実施形態による水洗大便器において、加圧ポンプの回転数に対するリム吐水、ジェット吐水、及び、リム・ジェット吐水のそれぞれの流量Q[L/min]と圧力[kPa]との関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
つぎに、添付図面を参照して、本発明の一実施形態による水洗大便器について説明する。
なお、以下、本明細書中において「洗浄水の流量」や「吐水流量」等という表現の中で使用されている「流量」という用語については、単位時間当たりの体積変化[L/min](いわゆる、「体積流量」又は「瞬間流量」とも呼ぶ)を意味している。
図1は、本発明の一実施形態による水洗大便器の全体概略構成図である。
図1に示すように、本発明の一実施形態による水洗大便器1は、陶器等からなる便器本体2、及び、この便器本体2の後方に配置された機能部4をそれぞれ備えている。
便器本体2は、ボウル部6、リム吐水口8aを含むリム給水路8、ジェット吐水口10aを含むジェット給水路10、及び、排水トラップ管路12(排水トラップ部)をそれぞれ備えている。
【0015】
機能部4は、上流側から下流側に向って、給水管14、電磁弁16、貯水タンク18、加圧ポンプ20、及び、切替弁装置22等を備えている。
給水管14は、その上流側が水道に直結されている。また、電磁弁16は、貯水タンク18の上流側の給水管14の途中に設けられ、コントローラ24(制御部)の制御により開閉されるようになっている。これにより、給水管14内の洗浄水が貯水タンク18内に供給又は停止されるようになっている。
【0016】
さらに、加圧ポンプ20は、貯水タンク18から下流側に延びる給水路26に設けられている。この加圧ポンプ20は、低揚程で大流量に適した、いわゆる、「軸流ポンプ」等が採用されているが、その構造の詳細について、周知技術であるため、説明を省略する。
また、加圧ポンプ20の羽根車(図示せず)の回転数N[rpm]は、コントローラ24の制御により調整可能となっている。
【0017】
また、切替弁装置22は、加圧ポンプ20の下流側の給水路26に設けられており、その詳細な構造については後述するが、加圧ポンプ20により加圧された洗浄水の水圧を受けて開閉するようになっている。これにより、切替弁装置22は、便器本体2のリム吐水口8a及び上記ジェット吐水口10aのそれぞれに洗浄水を供給する給水経路を切り替える切替部として機能するようになっている。
【0018】
つぎに、
図1~
図3を参照して、切替弁装置22の詳細について説明する。
まず、
図2は、本発明の一実施形態による水洗大便器の切替弁装置の縦断面図であり、閉弁状態を示し、
図3は、本発明の一実施形態による水洗大便器の切替弁装置の縦断面図であり、開弁状態を示す。
【0019】
図1~
図3に示すように、切替弁装置22は、上流側給水路28(第1流路)と、リム給水路30(第2流路)と、ジェット給水路32(第3流路)と、切替弁体34とを備えている。
まず、
図1~
図3に示すように、上流側給水路28(第1流路)は、加圧ポンプ20から延びる給水路26に接続されており、その下流側が切替弁体34まで鉛直方向上方に延びている。すなわち、切替弁体34は、上流側給水路28(第1流路)の軸方向上の対向する位置に配置されている。
つぎに、
図1~
図3に示すように、リム給水路30(第2流路)は、切替弁体34よりも上流側に位置している上流側給水路28の途中の分岐部B1から分岐しており、その下流側が便器本体2のリム吐水口8aの上流側のリム給水路8に接続されている。
また、
図1~
図3に示すように、ジェット給水路32(第3流路)においては、切替弁体34により開閉される上流端(上流側給水路28の上端且つ下流端)より下流側の流域が側方に延びている。さらに、ジェット給水路32(第3流路)の下流側は、便器本体2のジェット吐水口10aの上流側のジェット給水路10に接続されている。
【0020】
ちなみに、
図1に示すように、切替弁装置22のリム給水路30又は便器本体2のリム給水路8のいずれか一方の途中には、定流量弁35が設けられている。
これにより、便器本体2のリム給水路8を通過して、リム吐水口8aからボウル部6内に吐水されるリム吐水が外部へ飛び散る等の機外漏水を抑制することができるようになっている。
なお、本実施形態においては、リム給水路8に定流量弁35を設けているが、切替弁装置22に定流量機能を付与してもよい。
【0021】
また、
図1~
図3に示すように、切替弁体34は、ジェット給水路32の上流端のみに開閉可能に設けられており、上流側給水路28の分岐部B1に位置するリム給水路30の上流端よりも上方に位置している。これにより、切替弁体34は、リム給水路30については常時開放状態にする一方、ジェット給水路32(第3流路)のみについて開閉するものとなっている。
特に、
図1及び
図2に示すように、切替弁体34が閉弁している状態では、上流側給水路28内の洗浄水のすべてが、分岐部B1からリム給水路30(第2流路)及び便器本体2側のリム給水路8を経てリム吐水口8aに供給されるようになっている。
一方、
図3に示すように、切替弁体34が開弁している状態では、上流側給水路28内の洗浄水の一部が、分岐部B1からリム給水路30(第2流路)及び便器本体2側のリム給水路8を経てリム吐水口8aに供給されるようになっていると共に、上流側給水路28内の洗浄水の大半以上が、分岐部B1からジェット給水路32(第3流路)及び便器本体2側のジェット給水路10を経てジェット吐水口10aに供給されるようになっている。
【0022】
さらに、
図2及び
図3に示すように、切替弁体34は、ダイヤフラム型の弁体部34aと、この弁体部34aを支持する支持部34bと、弁体部34a及び支持部34bに対して垂直な軸方向(作動軸方向)に延びる弁軸部34cとを備えている。
弁体部34aは、鉛直方向に延びる上流側給水路28の中心軸線C1方向(流路軸方向)上の対向する位置に配置されている。
これにより、弁体部34aの下面(受圧面S0)が加圧ポンプ20により加圧された上流側給水路28内の洗浄水の水圧を受けて、切替弁体34が閉止状態から開弁動作を開始するようになっている。
ここで、弁体部34aの下面(受圧面S0)が加圧ポンプ20により加圧された上流側給水路28内の洗浄水の水圧を受けて、切替弁体34が閉止状態から開弁動作を開始するときの水圧を「境界水圧P0[kPa]」とすると、弁体部34aの下面(受圧面S0)が加圧ポンプ20により加圧された上流側給水路28内の洗浄水の所定水圧(境界水圧P0[kPa])以上の水圧を受けた場合には、切替弁体34(34a、34b、34b)が上流側給水路28の流路軸方向と同一方向(弁軸部34cの軸方向(作動軸方向))に機械的に作動することができようになっている。これにより、ジェット給水路32の上流端が水圧に応じて弁体部34aにより開閉可能となっている。
なお、本実施形態において、「切替弁体34が機械的に作動する」とは、切替弁体34が電気信号による制御や電磁力等により電気的に作動(電気的に開閉)する電気式の弁体とは異なることを意味しており、切替弁体34が開閉時に水圧等が直接的に作用することにより押圧されて機械的に作動(機械的に開閉)する機械式の弁体であることを意味している。
【0023】
つぎに、
図2に示すように、上流側給水路28(第1流路)は、ほぼ円筒状に形成されており、切替弁体34の弁体部34aの中心O1は、上流側給水路28の中心軸線C1(第1流路中心軸線)上に位置している。
これにより、
図2に示す閉弁状態の上流側給水路28内の洗浄水の水圧(静圧)P1及び
図3に示す開弁状態の上流側給水路28内の洗浄水の水圧(動圧)P2について、弁体部34aの受圧面S0に対して周方向全体に亘ってほぼ均等に作用させることができるようになっている。よって、切替弁体34による給水経路の切替時の動作をより安定化させることができるようになっている。
【0024】
つぎに、
図2及び
図3に示すように、切替弁装置22は、さらに、圧縮コイルばね36(付勢部)と、環状シール部材38(緩衝部)と、支持部材40(支持部)とをそれぞれ備えている。
圧縮コイルばね36(付勢部)は、その下端が切替弁体34の支持部34bにより支持されていると共に、上端が支持部材40(支持部)により支持されている。
また、この圧縮コイルばね36(付勢部)は、圧縮された撓み量に応じて、切替弁体34(34a、34b、34b)に対して閉弁させる方向の付勢する付勢力を作用するようになっている。
【0025】
例えば、
図2に示すように、閉弁状態の切替弁体34の弁体部34aの受圧面S0に対して所定水圧(境界水圧P0[kPa])未満の水圧(静圧)P1が作用している場合には、圧縮コイルばね36の付勢力F1が水圧(静圧)P1相当の流体力を上回るため、切替弁体34の閉止状態が維持されるようになっている。
そして、閉弁状態の切替弁体34の弁体部34aの受圧面S0に所定水圧(境界水圧P0[kPa])以上の水圧(静圧)P1が作用した場合には、
図3に示すように、切替弁体34の弁体部34aが上昇して開弁状態に切り替わるようになっている。
さらに、
図3に示すように、開弁状態の切替弁体34の弁体部34aの受圧面S0に所定水圧(境界水圧P0[kPa])以上の水圧(動圧)P2(≧P0)が作用している場合には、水圧(動圧)P2相当の流体力が圧縮コイルばね36の圧縮撓みに応じた付勢力F2を上回るため、切替弁体34が付勢力F2に抗して開弁方向に作動しており、切替弁体34の開弁状態が維持されるようになっている。
【0026】
つぎに、
図2及び
図3に示すように、環状シール部材38(緩衝部)は、円形断面を有するOリング、又は、円形断面以外のXパッキンやYパッキン等の環状のシール部材である。
この環状シール部材38は、切替弁体34の弁軸部34cが挿入されることにより、切替弁体34の弁軸部34cの外周面の上部に取り付けられた状態で支持部材40により保持される。これにより、切替弁体34の弁軸部34cは、環状シール部材38を介して支持部材40により作動軸方向に摺動可能に支持された状態となる。
また、
図2及び
図3に示すように、環状シール部材38(緩衝部)は、切替弁体34の作動軸方向に対して垂直な方向の緩衝力f0を切替弁体34の弁軸部34cに作用するようになっている。
これにより、環状シール部材38は、支持部材40の内部スペースV1が大気開放される程度に、切替弁体34の弁軸部34cの外周面に接触している。これにより、切替弁体34の弁軸部34cが作動軸方向に摺動した際には、環状シール部材38が切替弁体34の弁軸部34cに対して動摩擦力等を作用させて、摺動抵抗を付与することができるようになっている。
【0027】
ちなみに、
図1~
図3に示すように、切替弁装置22における切替弁体34(34a、34b、34b)、圧縮コイルばね36、環状シール部材38、支持部材40のそれぞれについては、貯水タンク18のオーバーフロー水位WOよりも上方に位置している。
これらにより、貯水タンク18内の洗浄水がオーバーフロー水位に到達したとしても、これらの部材34,36,38,40が水没することを確実に防ぐことができ、切替弁装置22の動作不良や劣化を防ぐことができるようになっている。
【0028】
つぎに、
図2に示すように、切替弁装置22の上流側給水路28(第1流路)の分岐部B1からリム給水路30(第2流路)に沿って延びる中心軸線C2(第2流路中心軸線)は、分岐部B1から上流側給水路28(第1流路)の下流側に向って延びる中心軸線C1(第1流路中心軸線)に対して角度θで交差している。
ここで、本実施形態においては、角度θが90度(直角)に設定されている例(θ=90°)について説明するが、角度θについては、0度よりも大きく且つ90度未満(0°<θ<90°)の角度(鋭角)になるように設定されてもよい。
これらにより、
図1~
図3に示すように、上流側から上流側給水路28(第1流路)の分岐部B1に流れ込んだ洗浄水が、分岐部B1の下流側の上流側給水路28に流れ込むと共に、分岐部B1からリム給水路30(第2流路)にも分岐して流れ込み易くすることができるようになっている。
また、上流側給水路28(第1流路)からリム給水路30(第2流路)へ分岐する分岐部B1付近又はその下流側の上流側給水路28やリム給水路30内で渦流が発生することを効果的に抑制することができるようになっている。
【0029】
つぎに、
図3に示すように、切替弁装置22のジェット給水路32(第3流路)は、上流側から下流側に向って、遷移流路部32a、及び、主流路部32bをそれぞれ備えている。
まず、ジェット給水路32の遷移流路部32aは、切替弁体34より開閉される上流端32c(上流側給水路28の下流端)から主流路部32bまで遷移するように形成された流路である。
また、ジェット給水路32の主流路部32bは、遷移流路部32aの下流端から側方、すなわち、上流側給水路28(第1流路)の鉛直方向に延びる中心軸線C1に対して直交する方向に延びるように形成された流路である。
さらに、ジェット給水路32の遷移流路部32aの上流端32c(上流側給水路28の下流端)は、主流路部32bの上端32dよりも下方に位置している。
これらにより、
図3に示すように、切替弁体34が開弁した状態では、上流側給水路28(第1流路)の下流端32cからジェット給水路32(第3流路)の遷移流路部32aに洗浄水が流入した際、遷移流路部32aの上流端32cと主流路部32bの上端32dとの間の流域を広く確保することができるようになっている。
したがって、切替弁体34の開弁時に、上流側給水路28(第1流路)からジェット給水路32(第3流路)に流れ込む際に渦流が発生することを効果的に抑制することができるようになっている。
【0030】
ここで、
図2及び
図3に示すように、切替弁装置22の上流側給水路28(第1流路)における分岐部B1よりも上流側の第1流路断面積A1は、上流側給水路28(第1流路)における分岐部B1よりも下流側の第2流路断面積A2とは異なっている。
ここで、本実施形態においては、第2流路断面積A2が第1流路断面積A1よりも大きく設定されている(A2>A1)。
【0031】
また、
図2及び
図3に示すように、切替弁装置22のジェット給水路32(第3流路)の主流路32bの第3流路断面積A3は、上流側給水路28(第1流路)における分岐部B1よりも下流側の第2流路断面積A2よりも大きく設定されている(A3>A2)。
さらに、
図2及び
図3に示すように、切替弁装置22の上流側給水路28(第1流路)における分岐部B1よりも下流側の第2流路断面積A2は、リム給水路30(第2流路)の第4流路断面積A4よりも大きく設定されている(A2>A4)。
また、
図2及び
図3に示すように、切替弁装置22の上流側給水路28(第1流路)における分岐部B1よりも上流側の第1流路断面積A1は、リム給水路30(第2流路)の第4流路断面積A4よりも大きく設定されている(A1>A4)。
【0032】
つぎに、
図1~
図6を参照して、本発明の一実施形態による水洗大便器1の動作(作用)を説明する。
図4は、本発明の一実施形態による水洗大便器の基本動作を示すタイムチャートである。また、
図5は、本発明の一実施形態による水洗大便器の全体概略構成図であり、切替弁装置の開弁状態を示す。
さらに、
図6は、本発明の一実施形態による水洗大便器において、加圧ポンプの回転数に対するリム吐水、ジェット吐水、及び、リム・ジェット吐水のそれぞれの流量Q[L/min]と圧力[kPa]との関係を示す特性図である。
なお、
図6に示す特性図においては、加圧ポンプ20の回転数N毎に描かれた流量Q[L/min]と圧力[kPa]との関係を示す曲線が等高線状に複数描かれている。また、
図6では、リム吐水、ジェット吐水、及び、リム・ジェット吐水のそれぞれに対応する流量Q[L/min]と圧力[kPa]との関係を示す曲線がそれぞれ放物線状に描かれている。さらに、
図6では、切替弁体34が稼働したときに取り得る流量Q[L/min]と圧力[kPa]との関係の軌跡を太線及びバツ印で示している。
【0033】
まず、
図4に示すように、時刻t0の待機状態後の時刻t1において、便器洗浄スイッチ(図示せず)が操作されると、コントローラ24の制御により電磁弁16及び加圧ポンプ20のそれぞれの電源がオフ状態からオン状態となる。これにより、加圧ポンプ20が作動し、加圧ポンプ20の回転数N[rpm]が回転数N1[rpm](例えば、N1=3000rpm)まで上昇する。この加圧ポンプ20の作動により、
図1に示すように、貯水タンク18内の洗浄水は、給水路26を経て切替弁装置22の上流側給水路28(第1流路)に供給される。
このとき、
図1及び
図2に示すように、切替弁装置22の切替弁体34においては、圧縮コイルばね36が切替弁体34に作用する付勢力F1が、切替弁装置22の上流側給水路28(第1流路)内の水圧P1(境界水圧P0未満の静圧、P1<P0)が弁体部34aの受圧面S0に作用する流体力を上回っている。これにより、弁体部34aは、上昇することなく、最低位置にあり、ジェット給水路32の遷移流路部32aの上流端32c(上流側給水路26の下流端)を閉止している状態(閉弁状態)となる。
したがって、
図1及び
図6に示すように、加圧ポンプ20から回転数N1で切替弁装置22の上流側給水路28内に供給された洗浄水W1(
図6の水圧P1[kPa]及び流量Q1[L/min])は、上流側給水路28の分岐部B1からリム給水路30(第2流路)のみに供給されるため、ジェット給水路32(第3流路)に供給されることはない。
そして、このリム給水路30内の洗浄水は、定流量弁35を通過し、便器本体2のリム給水路8のリム吐水口8aからボウル部6に吐水される。これにより、
図4に示す時刻t1から時刻t2までの時間(例えば、t2-t1=2.5秒)では、リム吐水口8aからの1回目のリム吐水が実行され、第1洗浄工程として、1回目のリム洗浄(いわゆる、「前リム洗浄」)が実行される。
【0034】
つぎに、
図4に示すように、時刻t2において、加圧ポンプ20の回転数N[rpm]が回転数N1[rpm]から回転数N2[rpm](例えば、N2=5000rpm)まで上昇する(N2>N1)。そして、
図4の時刻t2から時刻t3までの時間(例えば、t3-t2=1.0秒)、加圧ポンプ20の回転数N[rpm]がほぼ一定の回転数N2[rpm]に維持される。
このとき、
図2、
図3及び
図5に示すように、切替弁装置22の切替弁体34においては、切替弁装置22の上流側給水路28(第1流路)内の水圧(静圧)P1が弁体部34aの受圧面S0に作用する流体力が、圧縮コイルばね36が切替弁体34に作用する付勢力F1を上回るようになる。これにより、
図4の時刻t2では、弁体部34aが、ジェット給水路32の遷移流路部32aの上流端32c(上流側給水路26の下流端)を閉止している状態(
図2参照)から上昇し、開弁している状態となる(
図3参照)。
また、
図3に示すように、開弁した状態の弁体部34aの受圧面S0においては、水圧(動圧)P2が作用するようになり、この水圧(動圧)P2に相当する流体力についても圧縮コイルばね36による付勢力F2を上回っているため、切替弁体34の開弁状態が維持される(
図3参照)。
したがって、
図5及び
図6に示すように、加圧ポンプ20から回転数N2で切替弁装置22の上流側給水路28内に供給された洗浄水W1(
図6の水圧P2[kPa]及び流量Q2[L/min])のうちの一部の洗浄水W2(
図6の水圧P2[kPa]及び流量Q3[L/min])が、リム吐水用として、上流側給水路28の分岐部B1からリム給水路30(第2流路)に供給される。
同時に、
図5及び
図6に示すように、加圧ポンプ20から回転数N2で切替弁装置22の上流側給水路28内に供給された洗浄水W1(
図6の水圧P2[kPa]及び流量Q2[L/min])のうちの残部の洗浄水W3(
図6の水圧P2[kPa]及び流量Q4[L/min])が、ジェット吐水用として、上流側給水路28の分岐部B1からジェット給水路32(第3流路)に供給される。
そして、
図5に示すように、リム給水路30内の洗浄水W2(流量Q3[L/min])は、定流量弁35を通過し、便器本体2のリム給水路8のリム吐水口8aからボウル部6に吐水される。これにより、2回目のリム吐水が実行され、第2洗浄工程として、2回目のリム洗浄(いわゆる、「中リム洗浄」)が実行される。
同時に、
図5に示すように、ジェット給水路32内の洗浄水W3については、リム給水路30内の洗浄水W2(流量Q3[L/min])よりも大きい流量Q4[L/min](Q4>Q3)で流れ、便器本体2のジェット給水路10のジェット吐水口10aからボウル部6に吐水される。これにより、1回目のジェット吐水が実行され、第2洗浄工程として、1回目のジェット洗浄が実行される。
【0035】
つぎに、
図4に示すように、時刻t3において、加圧ポンプ20の回転数N[rpm]が回転数N2[rpm]から、この回転数N2よりも低く且つ第1洗浄工程の回転数N1よりも高い回転数N3[rpm](例えば、N3=4000rpm)まで下降する(N1<N3<N2)。そして、
図4の時刻t3から時刻t4の時間(例えば、t4-t3=1.2秒)まで、加圧ポンプ20の回転数N[rpm]がほぼ一定の回転数N3[rpm]に維持される。
また、
図4の時刻t3から時刻t4までの時間では、加圧ポンプ20の回転数N3[rpm]が、
図4の時刻t2から時刻t3の期間の加圧ポンプ20の回転数N2[rpm]よりも低下した分だけ、時刻t3から時刻t4までの時間の切替弁装置22の上流側給水路28(第1流路)内の水圧(動圧)P3[kPa]及び流量Q5[L/min](
図6参照)のそれぞれについても、時刻t2から時刻t3までの時間の水圧(動圧)P2及び流量Q2[L/min](
図6参照)よりも低下する(P3<P2、Q5<Q2)。
しかしながら、
図4の時刻t3から時刻t4までの時間においても、切替弁装置22の上流側給水路28(第1流路)内の水圧(動圧)P3が弁体部34aの受圧面S0に作用する流体力が、圧縮コイルばね36が切替弁体34に作用する付勢力F2を上回っているため、切替弁体34の開弁状態が維持される。
これらにより、2回目のリム吐水の実行が維持されながら、2回目のジェット吐水が実行され、第2洗浄工程として、2回目のリム洗浄(いわゆる、「中リム洗浄」)が継続されながら、2回目のジェット洗浄が実行される。
これらの結果、
図4に示す時刻t2から時刻t4までの時間では、リム吐水口8aからのリム吐水とジェット吐水口10aからのジェット吐水とにより、いわゆる、「リム・ジェット吐水」が実行され、第2洗浄工程として、中リム洗浄及びジェット洗浄の双方が並行に実行される。
【0036】
つぎに、
図4に示すように、時刻t4において、加圧ポンプ20の回転数N[rpm]が回転数N3[rpm]から、第1洗浄工程の回転数N1よりも低い回転数N4[rpm](例えば、N4=2500rpm)まで下降する(N4<N1<N3)。そして、
図4の時刻t4から時刻t5までの時間(例えば、t5-t4=5.0秒)まで、加圧ポンプ20の回転数N[rpm]がほぼ一定の回転数N4[rpm]に維持される。
また、
図4の時刻t4から時刻t5までの時間では、加圧ポンプ20の回転数N4[rpm]が、
図4の時刻t1から時刻t2までの時間の加圧ポンプ20の回転数N1[rpm]よりも低下した分だけ、時刻t4から時刻t5までの時間の切替弁装置22の上流側給水路28(第1流路)内の水圧(静圧)P4[kPa]及び流量Q6[L/min](
図6参照)のそれぞれについても、時刻t2から時刻t3までの時間の水圧(静圧)P1及び流量Q1[L/min](
図6参照)よりも低下する(P4<P1、Q6<Q1)。
このとき、
図1及び
図2に示すように、切替弁装置22の切替弁体34においては、圧縮コイルばね36が切替弁体34に作用する付勢力F1が、切替弁装置22の上流側給水路28(第1流路)内の水圧(静圧)P4が弁体部34aの受圧面S0に作用する流体力を上回っている。これにより、時刻t4以後の切替弁体34の弁体部34aは、最低位置まで下降しており、ジェット給水路32の遷移流路部32aの上流端32c(上流側給水路26の下流端)を再び閉止している状態(閉弁状態)となる。
したがって、
図1及び
図6に示すように、加圧ポンプ20から回転数N4で切替弁装置22の上流側給水路28内に供給された洗浄水(
図6の水圧P4[kPa]及び流量Q6[L/min])は、上流側給水路28の分岐部B1からリム給水路30(第2流路)のみに供給されるため、ジェット給水路32(第3流路)に供給されることはない。
そして、このリム給水路30内の洗浄水は、
図4に示す時刻t4から時刻t5までの時間(例えば、t5-t4=5.0秒)では、リム吐水口8aからの3回目のリム吐水が実行され、第3洗浄工程として、3回目のリム洗浄(いわゆる、「後リム洗浄」)が実行される。
【0037】
ちなみに、
図1、
図4及び
図5に示すように、給水管14から貯水タンク18への給水については、コントローラ24による電磁弁16の開閉制御により行われ、
図4の時刻t1から時刻t6までの時間において、電磁弁16が開弁状態となり、貯水タンク18への給水が実行される。
【0038】
なお、
図4に示す時刻t0~t6、及び、加圧ポンプ20の回転数N1~N4等については、水洗大便器1の仕様により適宜変更することが可能であり、限定されるものではない。
【0039】
上述した本発明の一実施形態の水洗大便器1によれば、
図2及び
図3に示すように、切替弁装置22の切替弁体34が上流側給水路28(第1流路)の軸方向上の対向する位置に配置されている。
これにより、
図2に示すように、切替弁体34が加圧ポンプ20から上流側給水路28(第1流路)に供給された洗浄水W1の水圧P1を受けて閉止している状態では、切替弁体34の弁体部34aの受圧面S0に対して水圧P1(より厳密には、静圧)をほぼ均等に作用させることができる。
また、
図3及び
図5に示すように、切替弁体34が加圧ポンプ20から上流側給水路28(第1流路)に供給された洗浄水W1の水圧を受けて開弁した状態では、切替弁体34の弁体部34aの受圧面S0に対して水圧P2(より厳密には、動圧)をほぼ均等に作用させることができる。
これらにより、切替弁体34の開弁動作を安定させることができる。
【0040】
また、本実施形態の水洗大便器1によれば、
図3に示すように、ジェット給水路32(第3流路)の遷移流路部32aにおける上流側給水路28(第1流路)の中心軸線C1に対して垂直な流路断面積、及び、ジェット給水路32(第3流路)の主流路部32bにおける流路断面積A3が、上流側給水路28(第1流路)の流路断面積A2よりも大きく設定されている。
これらにより、
図3に示すように、切替弁体34が開弁状態において、上流側給水路28(第1流路)の洗浄水W1が切替弁体34を通過してジェット給水路32(第3流路)の遷移流路部32aに流入した際に、この遷移流路部32a内の洗浄水W3の流れが、上流側給水路28(第1流路)の軸方向(中心軸線C1の軸線方向)に対して垂直な方向や周方向にほぼ均等に広がることができる。
したがって、上流側給水路28(第1流路)の洗浄水W1が開弁後の切替弁体34の弁体部34aに対して局所的に流動することを抑制することができる。これにより、切替弁体34の弁体部34aの受圧面S0に作用する水圧P2(より厳密には、動圧)が変動してばらつくことなく、均等に作用することができる。
よって、切替弁体34による給水経路30,32の切替時の動作を安定化させることができるため、例えば、給水路28内の洗浄水をリム給水路30、8を経てリム吐水口8aから吐水する第1洗浄工程(前リム洗浄工程)において、リム吐水を安定して実行させることができる。その後、リム吐水口8aからの吐水を継続させながら、給水路28内の洗浄水をジェット給水路32,10を経てジェット吐水口10aから吐水する第2洗浄工程(中リム洗浄/ジェット洗浄工程)でリム・ジェット吐水を実行させる際に、リム吐水やジェット吐水の安定化を実現することができる。
【0041】
さらに、本実施形態の水洗大便器1によれば、
図2及び
図3に示すように、上流側給水路28(第1流路)における分岐部Bよりも下流側(上流側給水路28(第1流路)の切替弁体34側)の流路断面積A2が、分岐部Bよりも上流側の上流側給水路28(第1流路)の流路断面積A1よりも大きく設定されている。
これにより、
図3に示すように、切替弁体34が開弁状態において、上流側給水路28(第1流路)における切替弁体34側の流路断面積A2を通過した洗浄水W1の水圧P2(動圧)が切替弁体34の弁体部34aの受圧面S0に作用する作用面を大きくすることができる。
また、上流側給水路28(第1流路)における分岐部Bよりも上流側の給水路28においては、分岐部Bの下流側の上流側給水路28(第1流路)よりも流路断面積が小さい分だけ、洗浄水の流速が分岐部Bよりも下流側の上流側給水路28(第1流路)に比べて大きくなるため、洗浄水を下流側の切替弁体34に向けて流れ易くすることができる。
したがって、切替弁体34が、上流側給水路28(第1流路)の洗浄水W1の水圧に応じて作動し易くなるため、安定した開閉動作を実現することができる。
これにより、切替弁体34による給水経路30,32の切替時の動作を安定化させることができ、リム吐水やジェット吐水の安定化を実現することができる。
【0042】
また、本実施形態の水洗大便器1によれば、
図2及び
図3に示すように、切替弁装置22の上流側給水路28(第1流路)が円筒状に形成されており、切替弁体34の弁体部34aの中心O1は上流側給水路28(第1流路)の中心軸線上に位置している。これにより、上流側給水路28(第1流路)内の洗浄水W1の水圧を切替弁体34の弁体部34aに対して周方向全体に亘って作用させることができる。
したがって、切替弁体34による給水経路30,32の切替時の動作をより安定化させることができる。
【0043】
さらに、本実施形態の水洗大便器1によれば、切替弁装置22による給水経路30,32の切り替えにより、
図1、
図2及び
図4に示すように、第1洗浄工程(前リム洗浄工程)を実行させて、給水路28内の洗浄水W1をリム給水路30,8を経てリム吐水口8aから吐水するリム吐水を実行させる。
その後、
図3~
図5に示すように、第2洗浄工程(中リム洗浄/ジェット洗浄工程)において、給水路28内の洗浄水W1の一部W2によるリム吐水を継続させながら、給水路28内の洗浄水W1の残部W3をジェット給水路32,10を経てジェット吐水口10aからも吐水するジェット吐水を実行し、リム・ジェット吐水を確実に実行することができる。
このとき、上流側給水路28(第1流路)からリム給水路30(第2流路)に分岐させる分岐部Bが切替弁体34よりも上流側に位置している。これにより、切替弁体34が作動して第1洗浄工程(前リム洗浄工程)から第2洗浄工程(中リム洗浄/ジェット洗浄工程)に切り替わる際に、上流側給水路28(第1流路)の分岐部Bからリム給水路30(第2流路)に流れる洗浄水W2(リム吐水)の流れが、切替弁体34の動作による影響を受け難くすることができる。
したがって、第1洗浄工程(前リム洗浄工程)から第2洗浄工程(中リム洗浄/ジェット洗浄工程)のそれぞれにおいて実行されるリム吐水について、切替弁体34の動作にほとんど影響されることなく、流量[L/min]のばらつきを抑制して安定させることができる。
【0044】
なお、上述した本発明の一実施形態による水洗大便器1においては、一例として、
図4に示す第2洗浄工程(中リム洗浄/ジェット洗浄工程)において、リム吐水及びジェット吐水の双方を実行させる形態について説明したが、第2洗浄工程において、リム吐水を省略して、ジェット吐水のみを実行するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 水洗大便器
2 便器本体
4 機能部
6 ボウル部
8 リム給水路
8a リム吐水口
10 ジェット給水路
10a ジェット吐水口
12 排水トラップ管路(排水トラップ部)
14 給水管
16 電磁弁
18 貯水タンク
20 加圧ポンプ
22 切替弁装置(切替部)
24 コントローラ(制御部)
26 給水路
28 上流側給水路(第1流路)
30 リム給水路(第2流路)
32 ジェット給水路(第3流路)
32a ジェット給水路の遷移流路部
32b ジェット給水路の主流路部
32c ジェット給水路の遷移流路部の上流端、上流側給水路の下流端
32d ジェット給水路の主流路部の上端
34 切替弁体
34a ダイヤフラム型の弁体部
34b 支持部
34c 弁軸部
35 定流量弁
36 圧縮コイルばね(付勢部)
38 環状シール部材(緩衝部)
40 支持部材(支持部)
A1 流路断面積(第1流路の第1流路断面積)
A2 流路断面積(第1流路の第2流路断面積)
A3 流路断面積(第3流路の第3流路断面積)
A4 流路断面積(第2流路の第4流路断面積)
B1 分岐部
C1 切替弁装置の上流側給水路の中心軸線(第1流路中心軸線)
C2 切替弁装置のリム給水路の中心軸線(第2流路中心軸線)
f0 緩衝力、摩擦力
F1 付勢力
F2 付勢力
N1 加圧ポンプの回転数
N2 加圧ポンプの回転数
N3 加圧ポンプの回転数
N4 加圧ポンプの回転数
O1 切替弁体の弁体部の中心
P0 境界水圧(所定水圧)
P1 水圧(静圧)
P2 水圧(動圧)
P3 水圧(動圧)
P4 水圧(静圧)
Q1 流量[L/min](第1流量)
Q2 流量[L/min](第2流量)
Q3 流量[L/min]
Q4 流量[L/min]
Q5 流量[L/min]
Q6 流量[L/min](第3流量)
S0 受圧面
V1 内部スペース
W1 上流側給水路(第1流路)の洗浄水
W2 リム給水路(第2流路)の洗浄水
W3 ジェット給水路(第3流路)の洗浄水
WO 貯水タンクのオーバーフロー水位