(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】バッテリモジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6568 20140101AFI20220907BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20220907BHJP
H01M 10/6557 20140101ALI20220907BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20220907BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20220907BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20220907BHJP
H01M 50/342 20210101ALI20220907BHJP
【FI】
H01M10/6568
H01M10/613
H01M10/6557
H01M10/625
H01M10/647
H01M10/48 301
H01M50/342
(21)【出願番号】P 2018107113
(22)【出願日】2018-06-04
【審査請求日】2021-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【氏名又は名称】大竹 雅久
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】中川 功
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-012463(JP,A)
【文献】特開2013-062207(JP,A)
【文献】特開2011-124056(JP,A)
【文献】特開2016-152067(JP,A)
【文献】特開2009-301969(JP,A)
【文献】特開2015-138773(JP,A)
【文献】特開2007-280858(JP,A)
【文献】特開2015-028884(JP,A)
【文献】特開2007-227171(JP,A)
【文献】特開2009-054297(JP,A)
【文献】国際公開第2012/032697(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6568
H01M 10/613
H01M 10/6557
H01M 10/625
H01M 10/647
H01M 10/48
H01M 50/342
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリセルを有するバッテリスタックと、
前記バッテリセルどうしの間に配置され、前記バッテリセルを冷却するバッテリ冷却流体が流通する経路を形成するバッテリ冷却部と、
前記バッテリセルが異常状態の際に、前記バッテリ冷却流体が前記バッテリ冷却部から前記バッテリスタックの側に流れる流出部位を形成する流出部位形成部と、を具備し、
前記バッテリ冷却部は、筐体部と、前記筐体部の内部に壁状に形成された壁部と、を具備し、
前記流出部位形成部は、前記壁部を前記筐体部に向かって部分的に突出させた突出部であることを特徴とするバッテリモジュール。
【請求項2】
複数のバッテリセルを有するバッテリスタックと、
前記バッテリセルどうしの間に配置され、前記バッテリセルを冷却するバッテリ冷却流体が流通する経路を形成するバッテリ冷却部と、
前記バッテリセルが異常状態の際に、前記バッテリ冷却流体が前記バッテリ冷却部から前記バッテリスタックの側に流れる流出部位を形成する流出部位形成部と、を具備し、
前記流出部位形成部は、前記バッテリセルが前記異常状態の際に、前記バッテリセルの排煙弁からの発熱または圧力により開口される異常時開口部であることを特徴とするバッテリモジュール。
【請求項3】
前記バッテリ冷却部は、前記バッテリセルどうしの間に配置される主面部と、前記バッテリセルの側方に突出する突出部と、を有することを特徴とする
請求項2に記載のバッテリモジュール。
【請求項4】
複数のバッテリセルを有するバッテリスタックと、
前記バッテリセルどうしの間に配置され、前記バッテリセルを冷却するバッテリ冷却流体が流通する経路を形成するバッテリ冷却部と、
前記バッテリセルが異常状態の際に、前記バッテリ冷却流体が前記バッテリ冷却部から前記バッテリスタックの側に流れる流出部位を形成する流出部位形成部と、を具備し、
前記バッテリセルの下方に、前記バッテリ冷却部どうしの間隙としてスリットを形成することを特徴とするバッテリモジュール。
【請求項5】
異常時に於いて、前記スリットから流出する前記バッテリ冷却流体の流量を、前記流出部位から流出する前記バッテリ冷却流体の流量よりも少なくすることを特徴とする請求項
4に記載のバッテリモジュール。
【請求項6】
前記バッテリ冷却部に前記バッテリ冷却流体を供給するポンプと、
前記バッテリスタックの温度を検知する温度センサと、
前記温度センサの出力に基づいて前記ポンプの吐出力を制御する制御部と、を更に具備し、
前記制御部は、前記温度センサで検出した前記バッテリスタックの温度が第1温度以上であれば、前記ポンプが前記バッテリ冷却部に供給する前記バッテリ冷却流体の流量を増加させることを特徴とする請求項1から請求項
5の何れかに記載のバッテリモジュール。
【請求項7】
前記制御部は、前記温度センサで検出した前記バッテリスタックの温度が前記第1温度以上であれば、前記バッテリスタックの充放電を制限することを特徴とする請求項
6に記載のバッテリモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリモジュールに関し、特に、異常時における緊急冷却機能を備えたバッテリモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車には、車両に駆動力を与えるモータに電力を供給する大型のバッテリが搭載されている。また、掛かる車両に備えられるバッテリは、異常時において発熱する場合があるため、このような場合にバッテリを冷却する機能を備えている。
【0003】
特許文献1では、角形扁平電池を縦方向に積層させ、角形扁平電池どうしの間に、その内部を冷却流体が流通する中空体が配置されている。異常時に於いて角形扁平電池が発熱すると、中空体が溶融することでその内部から冷却流体が流出し、流出した冷却流体により角形扁平電池が冷却される。
【0004】
特許文献2では、蓄電池の状況に応じて冷却用の流体の流量を変化させる発明が記載されている。具体的には、蓄電池の内部抵抗を推定部で推定する。そして、推定した内部抵抗値が高ければ、蓄電池を冷却する冷却水の流量を増加させる。一方、推定した内部抵抗値が低ければ、冷却水の流量を減少させる。このようにすることで、蓄電池の状況に応じて、冷却水の流量を最適化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-54297号公報
【文献】特開2012-221927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、異常時に於いて角形扁平電池が発熱することを利用して中空体から流体を流出させているが、流体を流出させる為の特定の部位を形成していない。よって、異常時に於いて流体を角形扁平電池に効果的に供給することが簡単で無い課題があった。
【0007】
更に、特許文献2に記載された発明では、蓄電池の内部抵抗に基づいて冷却用の流体の流量を調整しているが、異常時に於いては内部抵抗に基づいて冷却流体の流量を適正化することは困難を伴う課題があった。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、異常時に於いてバッテリスタックを効果的に冷却することができるバッテリモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のバッテリモジュールは、複数のバッテリセルを有するバッテリスタックと、前記バッテリセルどうしの間に配置され、前記バッテリセルを冷却するバッテリ冷却流体が流通する経路を形成するバッテリ冷却部と、前記バッテリセルが異常状態の際に、前記バッテリ冷却流体が前記バッテリ冷却部から前記バッテリスタックの側に流れる流出部位を形成する流出部位形成部と、を具備し、前記バッテリ冷却部は、筐体部と、前記筐体部の内部に壁状に形成された壁部と、を具備し、前記流出部位形成部は、前記壁部を前記筐体部に向かって部分的に突出させた突出部であることを特徴とする。
【0011】
本発明のバッテリモジュールは、複数のバッテリセルを有するバッテリスタックと、前記バッテリセルどうしの間に配置され、前記バッテリセルを冷却するバッテリ冷却流体が流通する経路を形成するバッテリ冷却部と、前記バッテリセルが異常状態の際に、前記バッテリ冷却流体が前記バッテリ冷却部から前記バッテリスタックの側に流れる流出部位を形成する流出部位形成部と、を具備し、前記流出部位形成部は、前記バッテリセルが前記異常状態の際に、前記バッテリセルの排煙弁からの発熱または圧力により開口される異常時開口部であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のバッテリモジュールでは、前記バッテリ冷却部は、前記バッテリセルどうしの間に配置される主面部と、前記バッテリセルの側方に突出する突出部と、を有することを特徴とする。
【0013】
本発明のバッテリモジュールは、複数のバッテリセルを有するバッテリスタックと、前記バッテリセルどうしの間に配置され、前記バッテリセルを冷却するバッテリ冷却流体が流通する経路を形成するバッテリ冷却部と、前記バッテリセルが異常状態の際に、前記バッテリ冷却流体が前記バッテリ冷却部から前記バッテリスタックの側に流れる流出部位を形成する流出部位形成部と、を具備し、前記バッテリセルの下方に、前記バッテリ冷却部どうしの間隙としてスリットを形成することを特徴とする。
【0014】
また、本発明のバッテリモジュールでは、異常時に於いて、前記スリットから流出する前記バッテリ冷却流体の流量を、前記流出部位から流出する前記バッテリ冷却流体の流量よりも少なくすることを特徴とする。
【0015】
また、本発明のバッテリモジュールでは、前記バッテリ冷却部に前記バッテリ冷却流体を供給するポンプと、前記バッテリスタックの温度を検知する温度センサと、前記温度センサの出力に基づいて前記ポンプの吐出力を制御する制御部と、を更に具備し、前記制御部は、前記温度センサで検出した前記バッテリスタックの温度が第1温度以上であれば、前記ポンプが前記バッテリ冷却部に供給する前記バッテリ冷却流体の流量を増加させることを特徴とする。
【0016】
また、本発明のバッテリモジュールでは、前記制御部は、前記温度センサで検出した前記バッテリスタックの温度が前記第1温度以上であれば、前記バッテリスタックの充放電を制限することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明のバッテリモジュールは、複数のバッテリセルを有するバッテリスタックと、前記バッテリセルどうしの間に配置され、前記バッテリセルを冷却するバッテリ冷却流体が流通する経路を形成するバッテリ冷却部と、前記バッテリセルが異常状態の際に、前記バッテリ冷却流体が前記バッテリ冷却部から前記バッテリスタックの側に流れる流出部位を形成する流出部位形成部と、を具備し、前記バッテリ冷却部は、筐体部と、前記筐体部の内部に壁状に形成された壁部と、を具備し、前記流出部位形成部は、前記壁部を前記筐体部に向かって部分的に突出させた突出部であることを特徴とする。従って、異常状態となったバッテリセルが膨張すると、その膨張に伴い壁部の突出部が内部から筐体部に接触することで筐体部に流出部位が形成される。このようになると、この流出部位を経由してバッテリ冷却流体がバッテリセルに流出し、バッテリセルが好適に冷却される。
【0020】
本発明のバッテリモジュールは、複数のバッテリセルを有するバッテリスタックと、前記バッテリセルどうしの間に配置され、前記バッテリセルを冷却するバッテリ冷却流体が流通する経路を形成するバッテリ冷却部と、前記バッテリセルが異常状態の際に、前記バッテリ冷却流体が前記バッテリ冷却部から前記バッテリスタックの側に流れる流出部位を形成する流出部位形成部と、を具備し、前記流出部位形成部は、前記バッテリセルが前記異常状態の際に、前記バッテリセルの排煙弁からの発熱または圧力により開口される異常時開口部であることを特徴とする。従って、バッテリセルが異常状態の際に、流出部位から、バッテリセルの排煙弁の近傍にバッテリ冷却流体を供給することで、より確実に発煙や発火を抑止できる。
【0021】
また、本発明のバッテリモジュールでは、前記バッテリ冷却部は、前記バッテリセルどうしの間に配置される主面部と、前記バッテリセルの側方に突出する突出部と、を有することを特徴とする。従って、バッテリ冷却部の主面部または突出部に流出部位形成部を形成することで、異常時にバッテリセルを効果的に冷却することができる。
【0022】
本発明のバッテリモジュールは、複数のバッテリセルを有するバッテリスタックと、前記バッテリセルどうしの間に配置され、前記バッテリセルを冷却するバッテリ冷却流体が流通する経路を形成するバッテリ冷却部と、前記バッテリセルが異常状態の際に、前記バッテリ冷却流体が前記バッテリ冷却部から前記バッテリスタックの側に流れる流出部位を形成する流出部位形成部と、を具備し、前記バッテリセルの下方に、前記バッテリ冷却部どうしの間隙としてスリットを形成することを特徴とする。従って、異常時に於いて流出部位から流出するバッテリ冷却流体を、スリットを経由して外部に流出させることができ、バッテリ冷却流体をバッテリセルに確実に接触させることで、バッテリセルの発火等を確実に防止することができる。
【0023】
また、本発明のバッテリモジュールでは、異常時に於いて、前記スリットから流出する前記バッテリ冷却流体の流量を、前記流出部位から流出する前記バッテリ冷却流体の流量よりも少なくすることを特徴とする。従って、バッテリ冷却流体がバッテリセルと熱交換する時間を一定以上に確保することができ、バッテリセルの過熱等を防止する効果を顕著にすることができる。
【0024】
また、本発明のバッテリモジュールでは、前記バッテリ冷却部に前記バッテリ冷却流体を供給するポンプと、前記バッテリスタックの温度を検知する温度センサと、前記温度センサの出力に基づいて前記ポンプの吐出力を制御する制御部と、を更に具備し、前記制御部は、前記温度センサで検出した前記バッテリスタックの温度が第1温度以上であれば、前記ポンプが前記バッテリ冷却部に供給する前記バッテリ冷却流体の流量を増加させることを特徴とする。従って、バッテリスタックが異常状態の際に、大量のバッテリ冷却流体をバッテリ冷却部に供給することで、バッテリスタックの過熱を防止し、ひいては発煙等を防止することができる。
【0025】
また、本発明のバッテリモジュールでは、前記制御部は、前記温度センサで検出した前記バッテリスタックの温度が前記第1温度以上であれば、前記バッテリスタックの充放電を制限することを特徴とする。従って、バッテリスタックの過熱および漏電を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態に係るバッテリモジュールが組み込まれた車両を示す側方断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るバッテリモジュールが組み込まれた車両を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るバッテリモジュールを部分的に示す断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るバッテリモジュールを示す図であり、(A)はバッテリ冷却部を示す斜視図であり、(B)および(C)はバッテリ冷却部の断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るバッテリモジュールを部分的に示す図であり、突出部で流出部位を形成する状況を示す断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るバッテリモジュールを示す図であり、流出部位形成部の他形態を示す断面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るバッテリモジュールを示す図であり、(A)は他形態のバッテリ冷却部およびバッテリスタックを示す断面図であり、(B)は異常状態に於けるバッテリ冷却部およびバッテリスタックを示す断面図である。
【
図8】本発明の他形態に係るバッテリ冷却部を示す斜視図である。
【
図9】本発明の実施形態に係るバッテリモジュールを示す図であり、異常時にバッテリを冷却する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図を参照して本実施形態に係るバッテリモジュール10を説明する。以下の説明では、同一の部材には原則的に同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。
【0029】
図1を参照して、本形態のバッテリモジュール10を備えた車両20を説明する。車両20は、例えば電気自動車またはハイブリッド自動車である。車両20が電気自動車の場合は、バッテリモジュール10から供給される電力で回転するモータを駆動源として、車両20が走行する。車両20がハイブリッド自動車の場合は、上記したモータまたはエンジンの一方または両方を駆動源として車両20が走行する。
【0030】
バッテリモジュール10は、後部座席であるシート22の後方斜め下に配設されており、仕切板23で覆われている。ここで、バッテリモジュール10は、シート22の下方等に配設されても良い。
【0031】
図2を参照して、バッテリモジュール10の接続構成を説明する。バッテリモジュール10は、バッテリスタック14、バッテリ冷却部15、ポンプ12、ラジエタ17、制御部13、温度センサ11およびモータ16を備えている。
【0032】
バッテリスタック14は、後述するように複数の板状セルから構成されており、電池パックとも称される。バッテリスタック14としては、例えばリチウムバッテリを採用することができる。
【0033】
バッテリ冷却部15は、バッテリスタック14と密着するように配置され、バッテリ冷却流体19が流通する流路が内部に形成され、充電時および放電時にバッテリスタック14を冷却する。
【0034】
ラジエタ17は、バッテリ冷却流体19と外部雰囲気とを熱交換することで、バッテリ冷却流体19を冷却する。
【0035】
ポンプ12は、バッテリ冷却流体19がラジエタ17とバッテリ冷却部15との間で循環するように、バッテリ冷却流体19に圧力を加える。
【0036】
温度センサ11は、バッテリスタック14の温度を計測するセンサであり、バッテリスタック14の温度を示す電気信号を制御部13に伝送する。
【0037】
制御部13は、CPU、RAMおよびROM等からなり、温度センサ11が計測したバッテリスタック14の温度等に基づいて、ポンプ12の吐出力を制御する。
【0038】
モータ16は、バッテリスタック14から供給される電力で回転し、
図1に示した車両20に駆動力を与える駆動力発生手段である。ここで、バッテリスタック14を充電するための充電用エンジンが配設されても良い。
【0039】
上記した構成のバッテリモジュール10は、次のように動作する。即ち、バッテリスタック14を充電する際には、外部電源や車載エンジン等からバッテリスタック14に電力を供給する。充電時に於けるバッテリスタック14の過熱を防止するために、温度センサ11の出力に応じて制御部13はポンプ12を運転し、バッテリ冷却流体19をバッテリ冷却部15に供給する。ポンプ12の運転により、バッテリ冷却流体19はラジエタ17とバッテリ冷却部15とを循環する。バッテリ冷却流体19がバッテリスタック14と熱交換することで、充電時に於けるバッテリスタック14の過熱が防止される。
【0040】
バッテリスタック14が放電する際は、バッテリスタック14から供給される電力でモータ16が回転することで、上記した車両20に駆動力が与えられる。更に、バッテリスタック14が放電する際には、温度センサ11の出力に応じて、制御部13はポンプ12を運転する。ポンプ12が運転されると、バッテリ冷却流体19はラジエタ17とバッテリ冷却部15との間で循環させる。バッテリ冷却流体19がバッテリ冷却部15の内部でバッテリスタック14と熱交換することで、バッテリスタック14の放電時に於ける過熱が防止される。
【0041】
図3を参照して、バッテリ冷却部15およびバッテリスタック14の関連構成を説明する。この図は、バッテリ冷却部15およびバッテリスタック14を部分的に示す断面図である。
【0042】
バッテリスタック14は、積層された複数のセルから構成され、ここではバッテリセル181、182、183、184が示されている。個々のバッテリセル181等は、略板形状を呈している。
【0043】
バッテリスタック14どうしの間には、バッテリ冷却部15が配設されている。具体的には、バッテリセル181とバッテリセル182との間にはバッテリ冷却部151が配設され、バッテリセル182とバッテリセル183との間にはバッテリ冷却部152が配設され、バッテリセル183とバッテリセル184との間にはバッテリ冷却部153が配設され、バッテリセル184の右方にはバッテリ冷却部154が配設されている。
【0044】
バッテリ冷却部151等は略筐体状の構成を有し、その内部にはバッテリ冷却流体19が流通する。バッテリ冷却流体19としては、水、不凍液、油などの非伝導性流体、または、これらの混合液体等を採用することができる。
【0045】
バッテリスタック14が充放電している間は、バッテリスタック14の温度等に応じて、バッテリ冷却部15をバッテリ冷却流体19が流通する。具体的には、バッテリ冷却流体19は、バッテリ冷却部151、152、153、154の順番で流通する。バッテリ冷却部151を流通するバッテリ冷却流体19が、バッテリセル181およびバッテリセル182と熱交換する。バッテリ冷却部152を流通するバッテリ冷却流体19が、バッテリセル182およびバッテリセル183と熱交換する。バッテリ冷却部153を流通するバッテリ冷却流体19が、バッテリセル183およびバッテリセル184と熱交換する。バッテリ冷却部154を流通するバッテリ冷却流体19が、バッテリセル184と熱交換する。このように、各バッテリ冷却部151等が各バッテリセル181等と熱交換することで、各バッテリセル181等を効率的に冷却することができる。
【0046】
図4を参照して、バッテリ冷却部15の構成を説明する。
図4(A)はバッテリ冷却部15を上方側から見た斜視図であり、
図4(B)は
図4(A)のA-A線に於ける断面図であり、
図4(C)は
図4(A)のB-B線に於ける断面図である。
【0047】
図4(A)を参照して、バッテリ冷却部15は、その内部に上記したバッテリ冷却流体19が流通する内部空間を有する筐体形状を呈している。具体的には、バッテリ冷却部15は、上下方向に細長く伸びる板状を呈する主面部24と、主面部24の上端部近傍を前方に向かって突出させた突出部25と、を有している。バッテリ冷却部15は、例えば、一体成型された合成樹脂から構成される。
【0048】
主面部24は、下方に面する下面32、上方に面する上面33、前方に面する前面28、後方を向く後面29、左方を向く左側面30、右方を向く右側面31、を有している。
【0049】
突出部25は、下方を向く下面35、前方を向く前面34を有している。
【0050】
前面34の左端部分を略円形に開口することで注入口26が形成されている。注入口26は、上記したバッテリ冷却流体19がバッテリ冷却部15の内部に注入される開口である。
【0051】
後面29の上方左端部分を略円形に開口することで排出口27が形成されている。排出口27は、バッテリ冷却部15の内部を流通したバッテリ冷却流体19が取り出される開口である。前方から見て、注入口26と排出口27とは、重畳して配置される。
【0052】
図4(B)を参照して、バッテリ冷却部15の内部には壁部36が形成されている。壁部36は、左側面30から右側面31に至るまで壁状に形成されている。また、左右方向に於ける壁部36の中央部近傍を、前後方向に向かって突起させることで、突出部37が形成されている。突出部37は、前後方向に向かって楔形に突出している。ここでは、複数の突出部37が略等間隔に形成されている。
【0053】
図4(C)を参照して、壁部36は、上面33から下面32の近傍まで延在している。即ち、壁部36と下端と下面32との間には、バッテリ冷却流体19が流通するための間隙が形成されている。上記した突出部37は、上下方向に於いて壁部36の略中央部に形成されている。
【0054】
また、上記した突出部37は、上下方向および左右方向に於いて、
図3に示したバッテリセル181等の中央部近傍に対応する部分には配設される。このようにすることで、バッテリセル181等が異常膨張する際には中央部の膨張量が大きいことから、後述するように、その膨張を利用して開口を形成することができる。
【0055】
更に
図4(C)を参照して、バッテリ冷却部15の内部をバッテリ冷却流体19が流通する際には、注入口26から流入したバッテリ冷却流体19は、前面28と壁部36との間の空間を下方に向かって流通する。次に、バッテリ冷却流体19は、壁部36と後面29との間の空間を上方に向かって流通する。その後、バッテリ冷却流体19は、排出口27から外部に流出する。このようにすることで、バッテリ冷却部15の内部に於いてバッテリ冷却流体19が流通する経路を長くすることができ、より効果的にバッテリスタック14とバッテリ冷却流体19とを熱交換することができる。
【0056】
図5を参照して、バッテリセル182およびバッテリセル183が異常時に膨張した場合を説明する。内部短絡等が発生することで、バッテリセル182およびバッテリセル183が異常状態となると、バッテリセル182およびバッテリセル183は温度上昇すると共に膨張する。
【0057】
バッテリセル182が異常膨張すると、バッテリセル182の両側面が側方に向かって膨出する。この結果、バッテリセル182の後方側面に当接している前面28も、後方に向かって同様に変形し、前面28の中間部は突出部37に当接する。バッテリセル182の異常膨張が更に進行すると、鋭利な形状を呈する突出部37に前面28は強く押しつけられる。そして、前面28の突出部37に接触する部分が開口することで流出部位40が形成される。
【0058】
同様に、バッテリセル183が異常膨張することでその側面が側方に膨出すると、後面29は前方に向かって変形し、後面29の中間部が突出部37に当接し、後面29が部分的に開口することで流出部位40が形成される。
【0059】
上記のように、前面28および後面29に流出部位40が形成されると、流出部位40を介して上記したバッテリ冷却流体19がバッテリ冷却部153の外部に流出する。この結果、流出したバッテリ冷却流体19がバッテリセル182およびバッテリセル183に接触することで、バッテリセル182およびバッテリセル183が冷却され、過熱が抑止される。また、加熱されたバッテリ冷却流体19が蒸発する際に生じる気化熱により、バッテリセル182およびバッテリセル183を更に冷却することができる。
【0060】
更には、バッテリセル182およびバッテリセル183が排煙した場合であっても、バッテリ冷却流体19が流通する径路に排煙ガスを流すことができる。よって、バッテリ冷却流体19が流通する経路を、非常時に於ける排煙機構として利用することができる。この場合は、排煙のための専用機構を排除することができ、バッテリモジュール10全体の構成を簡素化することができる。
【0061】
図6を参照して、異常時にバッテリ冷却部15を開口する他の構成を説明する。ここでは、排煙弁38の上方またはその近傍に於いて、バッテリ冷却部15の下面35に異常時開口部39を形成している。異常時開口部39は、下面35を部分的に脆弱に形成した部位であり、例えば、下面35を部分的に肉薄とした部位である。
【0062】
係る構成とすることで、異常時に於いて異常時開口部39からバッテリ冷却流体19をバッテリセル18に向かって吐出することができる。具体的には、異常時に於いてはバッテリセル18の上端に配設された排煙弁38からガスが発生する。ガスが発生すると、発生したガスは高圧且つ高温であるため、そのようなガスが脆弱な異常時開口部39に吹き付けられると異常時開口部39は開口することで流出部位となる。異常時開口部39が開口すると、この流出部位からバッテリ冷却流体19がバッテリセル18に向かって噴出し、バッテリ冷却流体19によりバッテリセル18が冷却され、バッテリセル18の過熱が抑止される。
【0063】
ここで、
図5に示した突出部37と、
図6に示した異常時開口部39とは、共に異常時に於いてバッテリ冷却流体19をバッテリセル18に向かって流出させるための流出部位を形成する流出部位形成部である。流出部位形成部として、突出部37および異常時開口部39の何れか一方が採用されても良いし、両方が組み合わせて採用されても良い。
【0064】
図7を参照して、バッテリ冷却部15の他の構成を説明する。
図7(A)はバッテリ冷却部15の他の構成を示す断面図であり、
図7(B)は係る構成に於いてバッテリスタック14が異常膨張した場合を示す断面図である。
【0065】
図7(A)を参照して、バッテリセル181等の下部は前後方向に延伸しており、バッテリセル181等どうしの間の下方に、両者の間隙としてのスリット41が形成されている。具体的には、バッテリ冷却部151とバッテリ冷却部152との間、バッテリ冷却部152とバッテリ冷却部153との間、バッテリ冷却部153とバッテリ冷却部154との間に、それぞれ、スリット41が形成されている。また、スリット41は、バッテリセル181等の下方に形成されている。スリット41は、後述するように、異常時に於いてバッテリ冷却部151等から漏出するバッテリ冷却流体19を、所定量外部に漏出させるためのものである。
【0066】
図7(B)を参照して、異常時に於ける動作を、バッテリセル183を例に説明する。異常時に於いてバッテリセル183が膨張すると、
図5を参照して説明したように、バッテリ冷却部152およびバッテリ冷却部153の側面を開口することで、流出部位40が形成される。流出部位40からは、バッテリ冷却部152およびバッテリ冷却部153の内部を流通するバッテリ冷却流体19が、バッテリセル183に向かって噴出する。噴出された後のバッテリ冷却流体19は、バッテリ冷却部152およびバッテリ冷却部153と、バッテリセル182の側面との間に満たされた後に、スリット41を経由して外部に流出する。
【0067】
ここで、
図6を再び参照して、流出部位として異常時開口部39が形成された場合は、異常時開口部39を開口した部位から流出するバッテリ冷却流体19が、バッテリセル18の周囲を満たした後に、
図7(A)に示すスリット41を経由して外部に流出する。
【0068】
また、スリット41を経由するバッテリ冷却流体19の流量は、流出部位40を経由するバッテリ冷却流体19の流量よりも少なく設定することができる。このようにすることで、流出するバッテリ冷却流体19とバッテリセル183とが接する時間を、一定以上にすることができ、バッテリセル183の過熱や発火を防止する効果が大きくなる。
【0069】
図8を参照して、バッテリ冷却部15の変形例を詳述する。この図は、バッテリ冷却部15を上方から見た斜視図である。この図を参照して、主面部24の下端部を前方および後方に突出させることで張出部42が形成されている。また、張出部42の前面を溝状に切り欠くことでスリット41が形成されている。スリット41は複数が形成されている。同様に、後方に向かって突出する張出部42の後面にも複数のスリット41が形成されている。
【0070】
図9のフローチャートを参照して、上記した各図も参照しつつ、異常時に於いてバッテリスタック14の過熱を抑止する制御方法を説明する。
【0071】
ステップS10では、先ず、温度センサ11がバッテリスタック14の温度を常時計測する。温度センサ11は、バッテリスタック14の温度を示す温度データを制御部13に伝送する。
【0072】
ステップS11では、制御部13は、温度センサ11で計測したバッテリスタック14の温度が、予め設定された第1温度以上であるか否かを判断する。ここで、第1温度とは、バッテリスタック14が正常に充放電する際の温度よりも高い温度である。よって、バッテリスタック14の計測温度が第1温度以上であれば、バッテリスタック14は異常状態であると判断される。
【0073】
バッテリスタック14の温度が第1温度未満である場合、即ち、バッテリスタック14が正常に充放電を行っており、ステップS11でNOの場合は、制御部13は、ステップS10に戻り、バッテリスタック14の温度監視を続ける。
【0074】
一方、バッテリスタック14の温度が第1温度以上である場合は、バッテリスタック14が異常状態であり、ステップS11がYESであるので、ステップS12に移行する。
【0075】
ステップS12では、制御部13は、ポンプ12の吐出量を増加させ、バッテリ冷却部15に供給されるバッテリ冷却流体19の流量を増加させる。ここでは、ポンプ12の吐出量を、例えば、通常使用領域を超えて、大きくする。このようにすることで、バッテリスタック14を冷却する機能を増大し、バッテリスタック14の過熱を抑止する。この時、
図5に示したように、バッテリセル182等が膨張する現象を利用して流出部位40を形成し、バッテリセル182等にバッテリ冷却流体19を供給することで、バッテリセル182等の過熱および延焼を防止する。
【0076】
更に、制御部13は、バッテリスタック14に入出力される電力を制限する。例えば、バッテリスタック14に入出力される電力を0kWとする。これにより、異常時に解ける漏電および感電を抑止することができる。
【0077】
ステップS13では、制御部13は、温度センサ11で計測したバッテリスタック14の温度が、予め設定された第2温度以上であるか否かを判断する。本工程の第2温度は、上記した第1温度よりも高く設定された温度である。バッテリスタック14の計測温度が第2温度以上であれば、バッテリスタック14は更に異常な状態であると判断される。
【0078】
バッテリスタック14の温度が第2温度未満である場合、ステップS13でNOの場合は、制御部13は、ステップS11に戻り、バッテリスタック14の温度監視および冷却を続ける。
【0079】
一方、バッテリスタック14の温度が第2温度以上である場合は、バッテリスタック14が異常状態であり、ステップS13がYESであるので、ステップS14に移行する。
【0080】
ステップS14では、制御部13は、ポンプ12の吐出量を更に最大限まで増加させ、バッテリ冷却部15に供給されるバッテリ冷却流体19の流量を増加させる。このようにすることで、バッテリスタック14を冷却する機能を更に増大し、バッテリスタック14の過熱や延焼を抑止する。更に、制御部13は、バッテリスタック14に入出力される電力を制限する。例えば、バッテリスタック14に入出力される電力を0kWとする。
【0081】
以上、本発明の実施形態を示したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0082】
10 バッテリモジュール
11 温度センサ
12 ポンプ
13 制御部
14 バッテリスタック
15 バッテリ冷却部
151 バッテリ冷却部
152 バッテリ冷却部
153 バッテリ冷却部
154 バッテリ冷却部
16 モータ
17 ラジエタ
18 バッテリセル
181 バッテリセル
182 バッテリセル
183 バッテリセル
184 バッテリセル
19 バッテリ冷却流体
20 車両
22 シート
23 仕切板
24 主面部
25 突出部
26 注入口
27 排出口
28 前面
29 後面
30 左側面
31 右側面
32 下面
33 上面
34 前面
35 下面
36 壁部
37 突出部
38 排煙弁
39 異常時開口部
40 流出部位
41 スリット
42 張出部