(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】内燃機関の吸気装置
(51)【国際特許分類】
F02B 23/10 20060101AFI20220907BHJP
F01L 3/24 20060101ALI20220907BHJP
F02M 61/18 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
F02B23/10 K
F01L3/24 Z
F02M61/18 320Z
(21)【出願番号】P 2018167742
(22)【出願日】2018-09-07
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若本 進児
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-316538(JP,A)
【文献】特開平05-223041(JP,A)
【文献】特開2002-089275(JP,A)
【文献】特開2004-257352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 23/10
F01L 3/24
F02M 61/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気ポートの開口部を開閉する吸気バルブと、
前記吸気バルブを移動させるバルブ開閉機構と、
前記吸気バルブの移動量であるバルブリフト量が所定の閾値未満である場合に、燃焼室に噴射する燃料が前記吸気バルブに干渉せず、前記バルブリフト量が前記閾値以上である場合に、前記燃焼室に噴射する燃料の一部が前記吸気バルブに干渉する位置に配されるインジェクタと、
前記吸気バルブに圧縮された空気を噴射する空気噴射部と、
前記バルブリフト量が前記閾値以上である期間のうちの少なくとも一部の期間において、前記空気噴射部に空気を噴射させる空気噴射制御部と、
を備え
、
前記空気噴射制御部は、前記インジェクタによる燃料の噴射開始時期となった場合に、前記空気噴射部に空気の噴射を開始させ、前記バルブリフト量が前記閾値を下回った場合に、前記空気噴射部に空気の噴射を終了させる内燃機関の吸気装置。
【請求項2】
前記空気噴射制御部は、前記インジェクタに供給される燃料の圧力に基づいて、前記空気噴射部から噴射される空気の圧力を変化させる請求項
1に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項3】
吸気ポートの開口部を開閉する吸気バルブと、
前記吸気バルブを移動させるバルブ開閉機構と、
前記吸気バルブの移動量であるバルブリフト量が所定の閾値未満である場合に、燃焼室に噴射する燃料が前記吸気バルブに干渉せず、前記バルブリフト量が前記閾値以上である場合に、前記燃焼室に噴射する燃料の一部が前記吸気バルブに干渉する位置に配されるインジェクタと、
前記吸気バルブに圧縮された空気を噴射する空気噴射部と、
前記バルブリフト量が前記閾値以上である期間のうちの少なくとも一部の期間において、前記空気噴射部に空気を噴射させる空気噴射制御部と、
を備え
、
前記空気噴射制御部は、前記インジェクタに供給される燃料の圧力に基づいて、前記空気噴射部から噴射される空気の圧力を変化させる内燃機関の吸気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、吸気ポート内に燃料を噴射(所謂、ポート噴射)するとともに、吸気バルブの傘部の裏面に空気を噴射する技術が開示されている。かかる技術によれば、燃料が吸気ポート内を通じて吸気バルブの傘部の裏面に直撃することで生じる壁膜流を、傘部から浮遊させることができ、燃料を微粒化することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内燃機関には、上述のポート噴射の他、燃料をシリンダ内に直接噴射する構成のもの(所謂、直噴エンジン)がある。直噴エンジンでは、吸気バルブの開閉状態によっては、噴射された燃料が吸気バルブに付着することがある。吸気バルブに燃料が付着すると、付着した燃料が不完全燃焼を起こし、吸気バルブに煤などのデポジットが堆積する。
【0005】
そこで、本発明は、吸気バルブに燃料が付着するのを抑制することが可能な内燃機関の吸気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の内燃機関の吸気装置は、吸気ポートの開口部を開閉する吸気バルブと、吸気バルブを移動させるバルブ開閉機構と、吸気バルブの移動量であるバルブリフト量が所定の閾値未満である場合に、燃焼室に噴射する燃料が吸気バルブに干渉せず、バルブリフト量が閾値以上である場合に、燃焼室に噴射する燃料の一部が吸気バルブに干渉する位置に配されるインジェクタと、吸気バルブに圧縮された空気を噴射する空気噴射部と、バルブリフト量が閾値以上である期間のうちの少なくとも一部の期間において、空気噴射部に空気を噴射させる空気噴射制御部と、を備え、空気噴射制御部は、インジェクタによる燃料の噴射開始時期となった場合に、空気噴射部に空気の噴射を開始させ、バルブリフト量が閾値を下回った場合に、空気噴射部に空気の噴射を終了させる。
また、上記課題を解決するために、本発明の内燃機関の吸気装置は、吸気ポートの開口部を開閉する吸気バルブと、吸気バルブを移動させるバルブ開閉機構と、吸気バルブの移動量であるバルブリフト量が所定の閾値未満である場合に、燃焼室に噴射する燃料が吸気バルブに干渉せず、バルブリフト量が閾値以上である場合に、燃焼室に噴射する燃料の一部が吸気バルブに干渉する位置に配されるインジェクタと、吸気バルブに圧縮された空気を噴射する空気噴射部と、バルブリフト量が閾値以上である期間のうちの少なくとも一部の期間において、空気噴射部に空気を噴射させる空気噴射制御部と、を備え、空気噴射制御部は、インジェクタに供給される燃料の圧力に基づいて、空気噴射部から噴射される空気の圧力を変化させる。
【0008】
また、空気噴射制御部は、インジェクタに供給される燃料の圧力に基づいて、空気噴射部から噴射される空気の圧力を変化させてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、吸気バルブに燃料が付着するのを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】内燃機関システムの構成を示す概略図である。
【
図3】吸気ポートを上方から見た平面部分拡大図である。
【
図4】吸気ポートを側面から見た側面部分拡大図である。
【
図5】吸気バルブのバルブリフト量とインジェクタから噴射された燃料との関係を説明する説明図である。
【
図6】吸気バルブのバルブリフト量とインジェクタから噴射された燃料との関係を説明する説明図である。
【
図7】吸気バルブのバルブリフト量とインジェクタから噴射された燃料との関係を説明する説明図である。
【
図8】クランク角と、吸気バルブのバルブリフト量と、燃料の噴射タイミングとの関係を説明する説明図である。
【
図9】クランク角と、吸気バルブのバルブリフト量と、燃料の噴射タイミングとの関係を説明する説明図である。
【
図10】インジェクタから噴射される燃料の圧力と、空気圧縮部における空気の圧縮量との関係を説明する説明図である。
【
図11】空気噴射制御部における圧縮空気の噴射制御動作を説明するフローチャートである。
【
図12】空気噴射制御部における空気の圧縮量制御動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態の一態様について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0012】
図1は、内燃機関システム1の構成を示す概略図である。
図1では、信号の流れを破線の矢印で示している。以下では、本実施形態に関係する構成や処理について詳細に説明し、本実施形態と無関係の構成や処理については説明を省略する。
【0013】
内燃機関システム1は、内燃機関2、吸気装置3および制御装置4を含んで構成される。内燃機関2は、例えば、レシプロエンジンである。また、内燃機関2は、例えば、吸気行程、圧縮行程、燃焼行程、排気行程が繰り返し行われる4ストロークエンジンである。内燃機関2は、シリンダブロック10、シリンダヘッド11およびピストン12を含んで構成される。
【0014】
シリンダブロック10には、円筒形状のシリンダ13が形成されている。シリンダ13には、ピストン12が摺動可能に収容されている。クランクケース14は、シリンダブロック10と一体成形される。クランクケース14には、シリンダ13に連通するクランク室15が形成されている。クランク室15には、クランクシャフト16が収容されている。ピストン12は、コネクティングロッド17を介してクランクシャフト16に連結されている。
【0015】
シリンダブロック10には、シリンダ13の開口を覆うようにシリンダヘッド11が接合されている。シリンダ13、シリンダヘッド11およびピストン12に囲まれた空間は、燃焼室18となる。
【0016】
シリンダヘッド11には、燃焼室18に開口する吸気ポート20および排気ポート21が形成されている。また、シリンダヘッド11には、吸気バルブ22、吸気カム23、排気バルブ24および排気カム25が設けられている。
【0017】
吸気カム23は、クランクシャフト16の回転に基づいて吸気バルブ22を往復移動させる。吸気バルブ22は、吸気カム23にしたがって、吸気ポート20における燃焼室18に臨む開口部26を開閉する。つまり、吸気カム23は、開口部26における開口面の法線方向に吸気バルブ22を移動させるバルブ開閉機構である。吸気バルブ22および吸気カム23は、開口部26ごとに設けられている。吸気バルブ22については、後に詳述する。
【0018】
排気カム25は、クランクシャフト16の回転に基づいて排気バルブ24を往復移動させる。排気バルブ24は、排気カム25にしたがって、排気ポート21における燃焼室18に臨む開口部27を開閉する。排気バルブ24および排気カム25は、開口部27ごとに設けられている。
【0019】
燃料を貯留する燃料タンク30は、燃料ポンプ31に接続される。燃料ポンプ31は、燃料配管32(デリバリパイプ)に接続される。燃料配管32は、インジェクタ33に接続される。燃料ポンプ31は、燃料タンク30内の燃料を汲み上げ、汲み上げた燃料の圧力を上げる。以降、燃料の圧力のことを燃圧と呼ぶことがある。燃料ポンプ31は、燃圧を上げた燃料を、燃料配管32を通じてインジェクタ33に供給する。燃圧は、エンジン回転数やエンジン負荷によって変動する。
【0020】
シリンダヘッド11には、インジェクタ33が設けられている。インジェクタ33には、燃料配管32を通じて供給される燃料を噴射する燃料噴射口34が設けられている。インジェクタ33は、燃料噴射口34が燃焼室18に臨むように設置される。インジェクタ33は、制御装置4の制御の下、燃料を燃焼室18に直接噴射する。つまり、内燃機関2は、所謂、直噴エンジンである。
【0021】
また、シリンダヘッド11には、点火プラグ35が設けられている。点火プラグ35は、燃焼室18において生成される空気と燃料との混合気に点火する。ピストン12は、混合気の燃焼によりシリンダ13内で往復運動をする。ピストン12の往復運動は、コネクティングロッド17を通じて、クランクシャフト16の回転運動に変換される。
【0022】
吸気装置3は、吸気ポート20を含む吸気流路42、吸気バルブ22、空気圧縮部51、空気噴射部53、圧縮空気流路54を含んで構成される。
【0023】
吸気ポート20には、インテークマニホールド40が接続されている。インテークマニホールド40は、集合部で複数の分岐路に分岐している。インテークマニホールド40の各分岐路は、複数の吸気ポート20にそれぞれ接続される。インテークマニホールド40の集合部は、吸気管41に接続される。吸気ポート20、インテークマニホールド40および吸気管41は、シリンダ13(燃焼室18)に吸気(空気)を導入する吸気流路42を形成する。以下では、吸気流路42を通る吸気の流れに沿って、内燃機関2から遠い方を上流と呼び、内燃機関2に近い方を下流と呼ぶ。
【0024】
吸気管41には、上流側から順に、エアクリーナ43、スロットルバルブ44が設けられる。エアクリーナ43は、外部から吸入された空気に混合されている異物を除去する。スロットルバルブ44は、アクセル開度に応じてアクチュエータ45によって開閉される。燃焼室18に送られる吸気量は、スロットルバルブ44の開閉に応じて調整される。
【0025】
吸気管41におけるエアクリーナ43とスロットルバルブ44との間には、流通管50が接続されている。流通管50は、空気圧縮部51を介して空気噴射部53に接続されている。流通管50は、吸気流路42から分岐される圧縮空気流路54を形成する。以下では、圧縮空気流路54において、空気噴射部53から遠い方を上流と呼び、空気噴射部53に近い方を下流と呼ぶ。
【0026】
空気圧縮部51は、例えば、高圧ポンプである。空気圧縮部51は、空気圧縮部51よりも上流側の圧縮空気流路54を通じて吸気流路42内の空気を吸入して圧縮する。空気圧縮部51は、吸入して圧縮した空気を、空気圧縮部51よりも下流側の圧縮空気流路54を通じて空気噴射部53に供給する。以後、空気圧縮部51によって圧縮された空気を圧縮空気と呼ぶことがある。
【0027】
空気噴射部53は、吸気ポート20に設けられる。空気噴射部53は、圧縮空気を吸気ポート20の開口部26に向けて噴射する。空気噴射部53については、後に詳述する。
【0028】
排気ポート21には、エキゾーストマニホールド70が接続されている。エキゾーストマニホールド70は、複数の分岐路が集合部で1つにまとめられる。エキゾーストマニホールド70の各分岐路は、複数の排気ポート21にそれぞれ接続される。エキゾーストマニホールド70の集合部は、排気管71に接続される。排気ポート21、エキゾーストマニホールド70、排気管71は、シリンダ13(燃焼室18)から排出される排気が通る排気流路72を形成する。排気管71には、触媒73が設けられる。触媒73は、例えば、三元触媒などであり、排気に含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)を除去する。
【0029】
また、内燃機関システム1には、アクセル開度センサ80、クランク角センサ81、フローメータ82、燃圧センサ83が設けられている。アクセル開度センサ80は、アクセルペダルの踏込み量に応じたアクセル開度を検出する。クランク角センサ81は、クランクシャフト16の回転角度であるクランク角を検出する。フローメータ82は、吸気管41におけるスロットルバルブ44の下流側に設けられており、燃焼室18へ供給される吸気量を検出する。燃圧センサ83は、インジェクタ33に供給される燃料の燃圧を検出する。
【0030】
制御装置4は、例えば、ECU(Engine Control Unit)である。制御装置4は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路から構成され、内燃機関システム1を統括制御する。制御装置4は、プログラムを実行することで、駆動制御部90および空気噴射制御部91として機能する。
【0031】
駆動制御部90は、クランク角センサ81によって検出されたクランク角に基づいて現時点のエンジン回転数を導出する。駆動制御部90は、現時点のエンジン回転数およびアクセル開度センサによって検出されたアクセル開度に基づいて、目標トルクおよび目標エンジン回転数を導出する。駆動制御部90は、目標トルクおよび目標エンジン回転数に基づいて目標空気量を決定し、目標空気量に基づいて目標スロットル開度を決定する。そして、駆動制御部90は、目標スロットル開度でスロットルバルブ44が開閉されるようにアクチュエータ45を駆動させる。
【0032】
また、駆動制御部90は、目標空気量に基づいて燃料の目標噴射量を決定し、目標噴射量に基づいて目標噴射時期および目標噴射期間を決定する。駆動制御部90は、インジェクタ33を目標噴射時期および目標噴射期間で駆動させ、目標噴射量の燃料を噴射させる。また、駆動制御部90は、目標エンジン回転数およびクランク角に基づいて目標点火時期を決定し、点火プラグ35を目標点火時期で駆動させて点火させる。
【0033】
空気噴射制御部91は、クランク角センサ81によって検出されたクランク角にしたがって、空気噴射部53を制御する。より詳細には、空気噴射制御部91は、インジェクタ33が燃料の噴射を開始した場合に、空気噴射部53に圧縮空気の噴射を開始させる。また、空気噴射制御部91は、吸気バルブ22のバルブリフト量が所定の閾値を下回った場合に、空気噴射部53に圧縮空気の噴射を終了させる。バルブリフト量は、開口部26の位置に対する吸気バルブ22の位置を示し、開口部26の開口面の法線方向についての吸気バルブ22の移動量を示す。
【0034】
また、空気噴射制御部91は、内燃機関2の始動時に空気圧縮部51の運転を開始させ、内燃機関2の停止時に空気圧縮部51の運転を停止させる。また、空気噴射制御部91は、燃圧センサ83によって検出された燃圧に基づいて、空気噴射部53から噴射される圧縮空気の圧力を変化させる。例えば、空気噴射制御部91は、空気圧縮部51の回転速度を変化させて、圧縮空気の圧力を変化させる。空気噴射制御部91については、後に詳述する。
【0035】
図2は、空気噴射部53の構成を示す概略図である。空気噴射部53は、本体部101、空気噴射口102、プランジャロッド103、スプリング104、ソレノイド105を含んで構成される。
【0036】
本体部101は、内部に空間を有する略筒状に形成されている。本体部101の先端には、本体部101の内外の空間を連通させる空気噴射口102が設けられている。空気噴射部53は、空気噴射口102を開口部26に向けて配置される。
【0037】
プランジャロッド103は、棒状に形成されており、本体部101内に収容される。スプリング104は、プランジャロッド103の後端に設けられる。本体部101の後端側は、流通管50に接続され、本体部101内には、流通管50から圧縮空気が供給される。プランジャロッド103の先端は、スプリング104の付勢力および圧縮空気の圧力によって空気噴射口102に押し付けられ、空気噴射口102を本体部101の内側から塞ぐ。
【0038】
ソレノイド105は、プランジャロッド103の後端付近に設けられている。ソレノイド105には、制御装置4から駆動電圧が与えられる。ソレノイド105は、駆動電圧にしたがって電流が流れると磁力を発生し、プランジャロッド103を吸引する。プランジャロッド103は、ソレノイド105の吸引力により、スプリング104の付勢力および圧縮空気の圧力に抗してリフトされる。これにより、プランジャロッド103の先端が空気噴射口102から離れ、空気噴射口102が開弁される。その結果、空気噴射口102から圧縮空気が噴射される。
【0039】
図3は、吸気ポート20を上方から見た平面部分拡大図である。
図4は、吸気ポート20を側面から見た側面部分拡大図である。
図3および
図4では、圧縮空気の噴射方向を、ハッチングした領域A1で概念的に示し、燃料の噴射方向を、ハッチングした領域A2で概念的に示している。なお、領域A1および領域A2では、ハッチングの斜線の方向を異ならせている。
【0040】
吸気ポート20は、インテークマニホールド40側から燃焼室18側に進む途中で二分岐されている。つまり、吸気ポート20のインテークマニホールド40側端には、インテークマニホールド40に接続される1個の開口部があり、吸気ポート20の燃焼室18側端には、2個の開口部26がある。換言すると、開口部26および吸気バルブ22は、1個のシリンダ13に対して2個設けられる。以後、吸気ポート20における分岐前(インテークマニホールド40側)の部分を集合部111と呼び、吸気ポート20における分岐後(燃焼室18側)の部分を分岐部112と呼ぶことがある。
【0041】
インジェクタ33は、2個の開口部26の間(例えば、2個の開口部26を結ぶ線分を二分する中央部)に設けられる。また、インジェクタ33は、シリンダ13に対する燃料噴射口34の高さ位置が、シリンダ13に対する開口部26の高さ位置よりも少し高く(ピストンのストローク方向上死点側)になるように設けられる。
【0042】
燃料噴射口34は、所定の燃料噴射角で燃料を噴射するような開口面を形成する。インジェクタ33は、例えば、燃料噴射口34の開口面の法線方向が、開口部26の開口面の法線方向に大凡一致するように配置される。
【0043】
吸気バルブ22は、軸部121および傘部122から構成される。軸部121は、棒状に形成されている。傘部122は、略円盤状に形成されている。軸部121の先端は、傘部122の中央に連続している。換言すると、傘部122は、軸部121の先端において軸部121の長手に交差する方向に突出している。
【0044】
吸気バルブ22は、軸部121が吸気ポート20側に位置し、傘部122が燃焼室18側に位置するように配置される。また、吸気バルブ22は、軸部121の長手方向が開口部26における開口面の法線方向に一致するように配置される。
【0045】
空気噴射部53は、吸気ポート20における集合部111に設けられる。空気噴射部53は、集合部111における分岐部112に比較的近い位置に設けられる。空気噴射部53は、分岐方向の中央に設けられる。また、空気噴射部53は、集合部111において、シリンダ13に対して遠い面である上面側に設けられる。
【0046】
空気噴射口102は、所定の空気噴射角で圧縮空気を噴射するような開口面を形成する。また、空気噴射部53は、空気噴射口102の開口面の法線方向が、吸気ポート20の長手方向に大凡一致するように配置される。
【0047】
空気噴射部53が集合部111の分岐部112付近に設けられているため、空気噴射部53から噴射された圧縮空気は、2個の分岐部112のそれぞれに同時に送出される。例えば、空気噴射口102から噴射された圧縮空気の半分が一方の分岐部112に送出され、圧縮空気の残り半分が他方の分岐部112に送出される。
【0048】
また、分岐部112に送出された圧縮空気は、分岐部112および開口部26を通じて吸気バルブ22の傘部122に到達する。例えば、
図3の左側の吸気バルブ22では、傘部122における右側に圧縮空気が当たり、
図3の右側の吸気バルブ22では、傘部122における左側に圧縮空気が当たる。
【0049】
図5~
図7は、吸気バルブ22のバルブリフト量とインジェクタ33から噴射された燃料との関係を説明する説明図である。
図5~
図7では、吸気ポート20内を透視して示している。また、
図5~
図7では、燃料の噴射方向を、ハッチングした領域A2で概念的に示している。
【0050】
図5は、吸気バルブ22の傘部122が吸気ポート20の開口部26に接触しているとき、つまり、吸気バルブ22のバルブリフト量がゼロのときを示している。このとき、インジェクタ33から噴射された燃料は、吸気バルブ22に当たらない。
【0051】
図6は、吸気バルブ22の傘部122が吸気ポート20の開口部26から離れ、吸気バルブ22のバルブリフト量が比較的少ないときを示している。このとき、インジェクタ33から噴射された燃料は、吸気バルブ22に当たらない。
【0052】
これらに対し、
図7は、吸気バルブ22の傘部122が吸気ポート20から離れ、吸気バルブ22のバルブリフト量が比較的多いときを示している。このとき、インジェクタ33から噴射された燃料の一部は、各吸気バルブ22の傘部122に当たる。例えば、
図7において、左側の吸気バルブ22では、傘部122における右側に燃料が当たり、右側の吸気バルブ22では、傘部122における左側に燃料が当たる。また、燃料は、傘部122における軸部121側の面(裏面)である傘裏部123や傘部122における側面である周縁部124に当たる。
【0053】
このように、吸気バルブ22は、バルブリフト量が多くなるほど、燃料に当たり易くなる。つまり、インジェクタ33は、バルブリフト量が所定の閾値未満である場合に、燃焼室18に噴射する燃料が吸気バルブ22に干渉せず、バルブリフト量が所定の閾値以上である場合に、燃焼室18に噴射する燃料の一部が吸気バルブ22に干渉する位置に配置される。
【0054】
所定の閾値は、噴射された燃料と吸気バルブ22とが干渉するか否かの境界におけるバルブリフト量に相当する。所定の閾値は、インジェクタ33と吸気バルブ22との位置関係で決まるため、内燃機関2の設計時に予め知ることができる。所定の閾値は、例えば、約6mmに設定される。
【0055】
図8および
図9は、クランク角と、吸気バルブ22のバルブリフト量と、燃料の噴射タイミングとの関係を説明する説明図である。また、
図8および
図9において、実線B1は、吸気バルブ22のバルブリフト量を示しており、一点鎖線B2は、所定の閾値を示しており、二点鎖線B3は、燃料の噴射量を示している。また、
図8および
図9では、吸気行程の開始時点のクランク角を0度としており、吸気行程の終了時点(圧縮行程の開始時点)のクランク角を180度としている。また、
図8および
図9では、空気噴射部53が圧縮空気を噴射する期間をハッチングの領域B4で示している。
【0056】
図8は、例えば、内燃機関2が高回転で運転するときを示している。
図8の例において、吸気バルブ22は、排気行程から吸気行程へ移る少し前に開き始める。吸気バルブ22のバルブリフト量は、クランク角が約90度に向けて進むにしたがって漸増していく。吸気バルブ22のバルブリフト量は、クランク角がクランク角CA11を超えると、一点鎖線B2で示す所定の閾値であるバルブリフト量VL10を超える。クランク角CA11は、例えば、約50度である。
【0057】
また、吸気バルブ22のバルブリフト量は、クランク角が約90度を超えて180度に向けて進むにしたがって漸減していく。吸気バルブ22のバルブリフト量は、クランク角がクランク角CA12を超えると、一点鎖線B2で示す所定の閾値であるバルブリフト量VL10を下回る。クランク角CA12は、例えば、約140度である。つまり、クランク角CA11からクランク角CA12までの期間では、バルブリフト量がバルブリフト量VL10以上となり、その他の期間では、バルブリフト量がバルブリフト量VL10よりも少なくなる。
【0058】
また、吸気バルブ22は、クランク角が180度と270度との間の所定のクランク角において開口部26を完全に閉じる。
【0059】
なお、内燃機関2では、クランク角からカムシャフトの回転角度が導出可能であり、カムシャフトの回転角度から吸気カムの角度が導出可能であり、吸気カムの角度からバルブリフト量が導出可能である。このため、内燃機関2では、クランク角に基づいてバルブリフト量を導出することができる。
【0060】
また、
図8の例において、インジェクタ33は、クランク角がクランク角CA21になると、燃料の噴射を開始する。クランク角CA21は、例えば、クランク角CA11と90度との間(例えば、約60度など)に設定される。また、インジェクタ33は、クランク角がクランク角CA22になると、燃料の噴射を停止する。クランク角CA22は、例えば、クランク角CA12と180度との間(例えば、約160度など)に設定される。つまり、クランク角CA21からクランク角CA22までの期間において、燃料が噴射され、その他の期間において、燃料が噴射されない。
【0061】
また、インジェクタ33は、二点鎖線B3で示すように、クランク角に対する燃料の噴射量を示す波形がパルス状になるように、燃料を噴射する。
【0062】
また、
図8の例において、クランク角CA21からクランク角CA12までの期間は、バルブリフト量がバルブリフト量VL10以上であり、かつ、燃料が噴射されている期間である。この期間は、噴射された燃料と吸気バルブ22とが干渉する期間である。以後、噴射された燃料と吸気バルブ22とが干渉する期間を、干渉期間と呼ぶことがある。
【0063】
空気噴射制御部91は、吸気行程中の燃料が噴射されていないとき、空気噴射部53に圧縮空気の噴射を停止させる。具体的には、空気噴射制御部91は、ソレノイド105への駆動電圧の印加を行わない。これにより、空気噴射部53は、空気噴射口102が閉状態となり、圧縮空気を噴射しない。
【0064】
空気噴射制御部91は、燃料の噴射の開始に合わせて(クランク角がクランク角CA21になると)、空気噴射部53に圧縮空気の噴射を開始させる。例えば、空気噴射制御部91は、ソレノイド105に駆動電圧を印加する。これにより、空気噴射部53は、空気噴射口102が開状態となり、圧縮空気を噴射する。
【0065】
空気噴射制御部91は、バルブリフト量がバルブリフト量VL10を下回るまで(クランク角がクランク角CA12よりも大きくなるまで)、空気噴射部53に圧縮空気の噴射を維持させる。具体的には、空気噴射制御部91は、ソレノイド105への駆動電圧の印加を継続する。
【0066】
空気噴射制御部91は、バルブリフト量がバルブリフト量VL10を下回ると(クランク角がクランク角CA12よりも大きくなると)、空気噴射部53に圧縮空気の噴射を停止させる。具体的には、空気噴射制御部91は、ソレノイド105への駆動電圧の印加を行わない。
【0067】
図9は、例えば、内燃機関2が低回転で運転するときを示している。
図9では、バルブリフト量を示す実線B1および所定の閾値を示す一点鎖線B2については、
図8と同様となっている。
【0068】
図9の例において、燃料の噴射開始時期を示すクランク角CA21は、例えば、90度以上(例えば、約110度など)に設定される。つまり、
図9の例では、燃料の噴射開始時期が
図8に比べて遅れており、干渉期間が
図8に比べて短くなっている。
【0069】
また、空気噴射制御部91は、
図8の例と同様に、燃料の噴射の開始に合わせて空気噴射部53に圧縮空気の噴射を開始させ、バルブリフト量がバルブリフト量VL10を下回ると空気噴射部53に圧縮空気の噴射を停止させる。
図9の例では、干渉期間が短くなることに合わせて、圧縮空気の噴射期間も短くなっている。
【0070】
このように、空気噴射制御部91は、干渉期間に、空気噴射部53に圧縮空気を噴射させる。噴射された圧縮空気は、分岐部112および開口部26を通じて、吸気バルブ22の傘部122に到達する。これにより、吸気バルブ22の傘部122の周囲が、圧縮空気の層(換言すると、エアカーテン)によって保護される。特に、2個の吸気バルブ22の一方の傘部122における他方の傘部122側の傘裏部123および周縁部124が、圧縮空気の層によって保護される。このため、本実施形態の吸気装置3は、噴射された燃料が吸気バルブ22に接触することを、圧縮空気の層によって防止することができる。
【0071】
図10は、インジェクタ33から噴射される燃料の圧力と、空気圧縮部51における空気の圧縮量との関係を説明する説明図である。
【0072】
上述のように、燃圧はエンジン回転数などによって変動する。燃圧が高くなると、圧縮空気の圧力によっては、圧縮空気の層を突き抜けて燃料が吸気バルブに付着するおそれがある。
【0073】
そこで、
図10に示すように、空気噴射制御部91は、燃圧が増加するにしたがって空気圧縮部51における空気の圧縮量を増加させる。例えば、空気噴射制御部91は、燃圧の増加にしたがって空気圧縮部51である高圧ポンプの回転速度を増加させて、空気の圧縮量を増加させる。これにより、本実施形態の吸気装置3は、燃圧が高くなったとしても、燃料が圧縮空気の層を突き抜けて傘裏部123および周縁部124に付着するのを抑制することができる。
【0074】
なお、
図10では、燃圧が増加するにしたがって空気の圧縮量を線形的に増加させる例を示した。しかし、空気噴射制御部91は、燃圧が増加するにしたがって空気の圧縮量を非線形的に増加させてもよい。例えば、空気噴射制御部91は、燃圧が増加するほど空気の圧縮量の増加量を増加させてもよい。
【0075】
図11は、空気噴射制御部91における圧縮空気の噴射制御動作を説明するフローチャートである。空気噴射制御部91は、所定時間間隔ごとにクランク角センサ81から現在のクランク角を取得する(S100)。また、空気噴射制御部91は、現在の吸気行程における燃料の噴射開始時期に対応するクランク角CA21を駆動制御部90から取得する(S110)。
【0076】
次に、空気噴射制御部91は、クランク角が、クランク角CA21よりも小さいか否かを判定する(S120)。つまり、ステップS120では、インジェクタ33による燃料の噴射開始時期となったか否かを判定している。
【0077】
現在のクランク角がクランク角CA21よりも小さい場合(S120におけるYES)、空気噴射制御部91は、空気噴射部53に圧縮空気の噴射を停止させる(S130)。具体的には、空気噴射制御部91は、空気噴射部53のソレノイド105に駆動電圧を印加しない。この場合、ソレノイド105に磁力が発生しないため、空気噴射部53は、プランジャロッド103の先端が空気噴射口102を塞ぎ、圧縮空気を噴射しない。直前の一連の処理において、空気噴射部53に圧縮空気の噴射を停止させていた場合、空気噴射制御部91は、空気噴射部53に圧縮空気の噴射の停止を維持させる。
【0078】
一方、現在のクランク角がクランク角CA21よりも小さくない(クランク角CA21以上の)場合(S120におけるNO)、空気噴射制御部91は、現在のクランク角が、バルブリフト量がバルブリフト量VL10を下回るときのクランク角CA12よりも大きいか否かを判定する(S140)。つまり、ステップS140では、バルブリフト量が閾値を下回ったか否かを判定している。
【0079】
現在のクランク角がクランク角CA12よりも大きくない(クランク角CA12以下の)場合(S140におけるNO)、空気噴射制御部91は、空気噴射部53に圧縮空気を噴射させる(S150)。具体的には、空気噴射制御部91は、空気噴射部53のソレノイド105に駆動電圧を印加する。この場合、ソレノイド105に磁力が発生し、空気噴射部53は、プランジャロッド103の先端が空気噴射口102からリフトされて、圧縮空気を噴射する。なお、直前の一連の処理において、空気噴射部53に圧縮空気を噴射させていた場合、空気噴射制御部91は、空気噴射部53に圧縮空気の噴射を維持させる。
【0080】
一方、現在のクランク角がクランク角CA12よりも大きい場合(S140におけるYES)、空気噴射制御部91は、空気噴射部53に圧縮空気の噴射を停止させる(S130)。なお、直前の一連の処理において、空気噴射部53に圧縮空気の噴射を停止させていた場合、空気噴射制御部91は、空気噴射部53に圧縮空気の噴射の停止を維持させる。
【0081】
図12は、空気噴射制御部91における空気の圧縮量制御動作を説明するフローチャートである。空気噴射制御部91は、所定時間間隔ごとに燃圧センサから燃圧を取得する(S200)。なお、燃圧の取得間隔である所定時間間隔は、現在のクランク角の取得間隔と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、空気の圧縮量制御は、圧縮空気の噴射制御と同期していてもよいし、非同期であってもよい。
【0082】
次に、空気噴射制御部91は、取得した燃圧に基づいて空気の圧縮量を導出する(S210)。例えば、空気噴射制御部91は、
図10で示すような、燃圧と空気の圧縮量との関係を示す予め記憶されたテーブルを用いて、空気の圧縮量を導出する。
【0083】
次に、空気噴射制御部91は、導出された圧縮量を示す圧縮制御信号を、空気圧縮部51に送信する(S220)。これにより、空気圧縮部51では、受信した圧縮制御信号にしたがった圧縮量となるように回転速度などが変わる。
【0084】
以上のように、本実施形態の吸気装置3では、吸気バルブ22の開閉に応じて、噴射される燃料が吸気バルブ22に干渉しないときと、噴射される燃料の一部が吸気バルブ22に干渉するときとがあるように、インジェクタ33が配置されている。そして、本実施形態の吸気装置3は、噴射される燃料の一部が吸気バルブ22に干渉するときに、吸気バルブ22に圧縮空気を噴射する。
【0085】
これにより、本実施形態の吸気装置3は、燃料が吸気バルブ22に干渉するときに、吸気バルブ22の周囲が圧縮空気の層(換言すると、エアカーテン)によって覆われる。したがって、本実施形態の吸気装置3によれば、燃料が吸気バルブ22に付着するのを抑制することができる。その結果、本実施形態の吸気装置3は、吸気バルブ22へのデポジットの堆積を抑制することができる。
【0086】
また、本実施形態の吸気装置3は、クランク角がインジェクタ33による燃料の噴射開始時期に対応するクランク角CA21以上となった場合に、圧縮空気の噴射を開始し、クランク角が、バルブリフト量がバルブリフト量VL10を下回るときのクランク角CA12を超えた場合に、圧縮空気の噴射を終了する。このため、本実施形態の吸気装置3は、燃料が吸気バルブ22に付着するのを効率的に防止することができる。また、本実施形態の吸気装置3は、圧縮空気を常に噴射する態様に比べ、圧縮空気の噴射にかかる消費エネルギ(例えば、空気噴射部53のソレノイド105に印加する駆動電圧)を抑制することができる。
【0087】
また、本実施形態の吸気装置3は、燃圧に基づいて、空気噴射部53から噴射する圧縮空気の圧力を変化させる。このため、本実施形態の吸気装置3は、圧縮空気の圧力を変化させない態様に比べ、燃料が吸気バルブ22に付着するのを、より確実に抑制することができる。
【0088】
また、インジェクタ33の燃料の噴射方向を制限することで、吸気バルブ22への燃料の付着を抑制する比較例が挙げられる。この比較例では、燃焼室18における混合気の分布に偏りが生じ、ノッキングが発生したり、エミッション(排気ガス成分)が悪化するおそれがある。これに対し、本実施形態の吸気装置3は、インジェクタ33の燃料の噴射方向を制限することなく吸気バルブ22への燃料の付着を抑制することができる。このため、本実施形態の吸気装置3は、ノッキングの発生やエミッションの悪化を回避することができる。
【0089】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0090】
例えば、上記実施形態では、バルブリフト量がバルブリフト量VL10以上であり、かつ、燃料が噴射されている期間(干渉期間)に、圧縮空気が噴射されていた。しかし、空気噴射部53は、少なくとも吸気バルブ22のバルブリフト量がバルブリフト量VL10以上であるときに、圧縮空気を噴射すればよい。バルブリフト量がバルブリフト量VL10以上であるときは、燃料が噴射されれば燃料が吸気バルブ22に干渉することとなり、燃料が吸気バルブ22に付着するおそれがある状況である。このため、少なくともバルブリフト量がバルブリフト量VL10以上であるときに圧縮空気を噴射すれば、燃料が吸気バルブ22に付着するのを抑制することができる。
【0091】
また、空気噴射部53は、バルブリフト量がバルブリフト量VL10以上である全期間に亘って圧縮空気を噴射してもよいし、バルブリフト量がバルブリフト量VL10以上である期間のうちの一部の期間において圧縮空気を噴射してもよい。上述の干渉期間は、一部の期間の具体例である。
【0092】
また、上記実施形態の空気噴射部53は、干渉期間の全期間に亘って圧縮空気を噴射していた。しかし、空気噴射部53は、干渉期間のうちの一部の期間において圧縮空気を噴射してもよい。この態様においても、圧縮空気を噴射している間は、燃料が吸気バルブ22に付着するのを抑制することができる。ただし、干渉期間の全期間に亘って圧縮空気を噴射する態様の方が、燃料の付着の抑制効果が高いため、より好ましい。
【0093】
なお、上記実施形態において、燃料の噴射開始時期に対応するクランク角CA21が、本発明の第1クランク角に相当し、バルブリフト量がバルブリフト量VL10を下回るときのクランク角CA12が、本発明の第2クランク角に相当する。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、内燃機関の吸気装置に利用できる。
【符号の説明】
【0095】
2 内燃機関
3 吸気装置
20 吸気ポート
22 吸気バルブ
23 吸気カム
33 インジェクタ
53 空気噴射部
91 空気噴射制御部
CA12、CA21 クランク角
VL10 バルブリフト量