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  • 特許-金属含有廃棄物の処理装置及び処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】金属含有廃棄物の処理装置及び処理方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 5/00 20060101AFI20220907BHJP
   B09B 3/30 20220101ALI20220907BHJP
   B03C 1/00 20060101ALI20220907BHJP
   B03C 1/02 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
B09B5/00 Z
B09B3/30 ZAB
B03C1/00 B
B03C1/02 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019114406
(22)【出願日】2019-06-20
(65)【公開番号】P2021000586
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】竹本 智典
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 洸
(72)【発明者】
【氏名】武藤 恭宗
(72)【発明者】
【氏名】石田 泰之
【審査官】岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-034143(JP,A)
【文献】特開2018-058059(JP,A)
【文献】特開2017-140555(JP,A)
【文献】特開2011-046983(JP,A)
【文献】特表平05-502187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B5
B09B3
B03C1
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属含有廃棄物を選別処理して得られた貴金属濃縮物であって、Si及びCaの含有率の合計が5質量%以上30質量%以下、及びAl及びCuの含有率の合計が20質量%以上60質量%以下である貴金属濃縮物を磁力選別する磁力選別機と、
該磁力選別機によって分離された非磁着物を破砕する破砕機と、
該破砕機によって破砕された破砕物から微粒分を除去する選別機からなることを特徴とする金属含有廃棄物の処理装置。
【請求項2】
前記選別機で分離された粗粒分を前記破砕機に戻す循環ルートを備えることを特徴とする請求項1に記載の金属含有廃棄物の処理装置。
【請求項3】
金属含有廃棄物を選別処理して得られた貴金属濃縮物であって、Si及びCaの含有率の合計が5質量%以上30質量%以下、及びAl及びCuの含有率の合計が20質量%以上60質量%以下である貴金属濃縮物を磁力選別するステップと
該磁力選別によって得られた非磁着物を破砕するステップと
該破砕によって得られた破砕物から微粒分を除去するステップからなることを特徴とする金属含有廃棄物の処理方法。
【請求項4】
前記微粒分を除去した後の粗粒分を再度破砕し、該破砕によって得られた破砕物から微粒分を除去することを特徴とする請求項3に記載の金属含有廃棄物の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属含有廃棄物の処理装置及び処理方法に関し、特に、焼却灰やシュレッダーダスト等から主に貴金属を回収する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
焼却灰等の廃棄物から貴金属等の有価金属を回収するため、特許文献1には、焼却灰等を予備処理した後、竪型ローラーミルの操業条件を調整し、貴金属をミル排石側へ移行させて回収する技術が記載されている。
【0003】
一方、シュレッダーダスト等から貴金属等を回収するため、特許文献2には、シュレッダーダストの加熱物を選別処理し、エアテーブルで分離した重産物に貴金属等を濃縮させて回収する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6375205号公報
【文献】特開2018-164872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1及び2に記載の発明において、貴金属等を濃縮させたミル排石や重産物には、アルミニウム(純Al、Al合金)や、ガラス等の密度3t/m3以下の粒子が混入していたり、粒子表面に灰やガラスが付着することがある。例えば、特許文献1のミル排石には20%以上のアルミニウムが含まれ、特許文献2の重産物には数%のアルミニウムが含まれている。そのため、ミル排石や重産物の貴金属の品位が低下するおそれがあった。
【0006】
そこで、上記重産物等をさらに軽産物と重産物に比重選別すると、軽産物に移行する貴金属の存在によって結果的に貴金属の回収率が低下することがある。例えば、比重選別でアルミニウムやガラスの混入を防止し、重産物の貴金属品位向上を図ると、重産物の回収量が少なくなり、結果的に回収率が低下するという問題がある。
【0007】
また、渦電流選別で貴金属を多く含む導電産物を回収しようとした場合には、ガラスは非導電産物として除去できるが、アルミニウムは貴金属等と共に導電産物として回収されてしまう。特に、貴金属等に灰が付着している場合には、渦電流選別の効果は限定的となる。
【0008】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、金属含有廃棄物から主に貴金属を効率よく回収することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、金属含有廃棄物の処理装置であって、金属含有廃棄物を選別処理して得られた貴金属濃縮物であって、Si(ケイ素)及びCa(カルシウム)の含有率の合計が5質量%以上30質量%以下、及びAl(アルミニウム)及びCu(銅)の含有率の合計が20質量%以上60質量%以下である貴金属濃縮物を磁力選別する磁力選別機と、該磁力選別機によって分離された非磁着物を破砕する破砕機と、該破砕機によって破砕された破砕物から微粒分を除去する選別機からなることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、貴金属濃縮物から、貴金属の品位を低下させる原因となるアルミニウム、ガラス、灰等の微粒分を除去することができるため、貴金属濃縮物の貴金属濃度を高めることができる。
【0011】
上記金属含有廃棄物の処理装置に、前記選別機で分離された粗粒分を前記破砕機に戻す循環ルートを設け、粗粒分を再度破砕することで、回収する破砕物の貴金属濃度をさらに高めることができる。
【0012】
また、本発明は、金属含有廃棄物の処理方法であって、金属含有廃棄物を選別処理して得られた貴金属濃縮物であって、Si及びCaの含有率の合計が5質量%以上30質量%以下、及びAl及びCuの含有率の合計が20質量%以上60質量%以下である貴金属濃縮物を磁力選別するステップと、該磁力選別によって得られた非磁着物を破砕するステップと、該破砕によって得られた破砕物から微粒分を除去するステップからなることを特徴とする。本発明によれば、貴金属濃縮物から、アルミニウム、ガラス、灰等の微粒分を除去することで、貴金属濃縮物の貴金属濃度を高めることができる。
【0013】
上記金属含有廃棄物の処理方法において、前記微粒分を除去した後の粗粒分を再度破砕し、該破砕によって得られた破砕物から微粒分を除去することで、回収する破砕物の貴金属濃度をさらに高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、金属含有廃棄物から主に貴金属を効率よく回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る金属含有廃棄物の処理装置の一実施の形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明に係る金属含有廃棄物の処理装置について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る金属含有廃棄物の処理装置の一実施の形態を示し、この処理装置1は、金属含有廃棄物を選別処理して得られた貴金属濃縮物を磁力選別する磁力選別機(以下「磁選機」という。)2と、磁選機2によって分離された非磁着物を破砕する破砕機3と、破砕機3によって破砕された破砕物から微粒分を除去する篩選別機4と、篩選別機4で分離された篩上物を破砕機3へ戻す循環ルート5とで構成される。
【0018】
処理対象である貴金属濃縮物とは、焼却灰やシュレッダーダスト等の金属含有廃棄物を選別処理して貴金属を濃縮させたものであって、ケイ素(Si)及びカルシウム(Ca)の含有率の合計が5質量%以上30質量%以下、好ましくは5質量%以上20質量%以下、Al及び銅(Cu)の含有率の合計が20質量%以上60質量%以下、好ましくは30質量%以上50質量%以下、及び平均粒径が10mm以下のものをいう。
【0019】
磁選機2は、貴金属濃縮物を磁着物と非磁着物に分離するために設けられ、好ましくは吊り下げ式であって、磁石の磁束密度が700ガウス以上5000ガウス以下のものを用いることができる。
【0020】
破砕機3は、非磁着物の粒子表面からAl、Si及びCaの粒子を剥離させるために設けられ、破砕方式は特に限定されず、乾式、湿式を問わない。但し、装置が磨耗したり、篩選別機4で貴金属が微粒分側へ移行する上で適さないので、過粉砕となるものは避ける。尚、湿式の破砕機を用いたとしても、処理対象である非磁着物は金属、スラグ、ガラスが主体であり、溶出成分は少ないため、水処理の付加は大きくない。
【0021】
篩選別機4は、粒径が0.5mm程度以下の微粒分を除去するために設けられる。篩選別機4の代わりに、分級機や、風力選別機を用いてもよい。
【0022】
次に、上記構成を有する処理装置1の動作について、図1を参照しながら説明する。
【0023】
受け入れた貴金属濃縮物に含まれる磁着物を磁選機2で除去し、磁選機2から排出される非磁着物を破砕機3で破砕する。破砕機3から排出され、Al、Si及びCaを多く含む微粒分を篩下物として篩選別機4で除去する。
【0024】
循環ルートを介し、篩選別機4で分離された粗粒分を篩上物として破砕機3へ戻し、破砕機3による破砕と、篩選別機4による篩選別を繰り返し行う。
【0025】
上述のようにして最終的に粗粒分を篩上物として回収することで、回収する篩上物の貴金属品位を高めることができる。
【0026】
次に、本発明の試験例について説明する。
【0027】
試料1として、焼却灰を選別処理した貴金属濃縮物を、試料2として、シュレッダーダストの加熱物を選別処理した貴金属濃縮物を用い、各試料100gについて磁力選別(磁束密度1000ガウス)を行ってワイヤー等の異物を除去した後、粉砕機(WARING社製、MX1200XTM(破砕容器CAC90B))で、固液比1:5で水洗・破砕した。10秒間破砕した後、0.5mmの篩目で篩い分けた。各篩上物を再度水洗・破砕し、再度篩分けた。これを3回繰り返した。反復処理が完了した後、篩上物を乾燥させて成分を分析した。試料1の処理前後の成分分析値を表1に、試料2の処理前後の成分分析値を表2に、各試料の処理後の貴金属等の濃縮率を表3に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
表1~表3に示す通り、貴金属であるAu(金)、Ag(銀)及びPd(パラジウム)や、Cuの濃縮率が130%程度と高く、その他の金属(Al、Si及びCa)の濃縮率が25~70%程度と低下し、貴金属等がさらに濃縮していることが判る。
【0032】
尚、上記実施の形態においては、循環ルート5を設けることで回収する篩上物の貴金属品位を高めることができて好ましいが、必ずしも循環ルート5を設ける必要はなく、篩選別機4で分離された粗粒分をそのまま処理物とすることも可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 金属含有廃棄物の処理装置
2 磁選機
3 破砕機
4 篩選別機
5 循環ルート
図1