(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】ドリル・ガイド挿入取外ツール及びドリル・ガイド挿入取外ツールを用いて寛骨臼カップにドリル・ガイドを挿入する方法及び寛骨臼カップからドリル・ガイドを取り外す方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/17 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
A61B17/17
(21)【出願番号】P 2020211099
(22)【出願日】2020-12-21
(62)【分割の表示】P 2018504947の分割
【原出願日】2016-07-15
【審査請求日】2021-01-12
(32)【優先日】2015-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518028206
【氏名又は名称】ヒップ イノベーション テクノロジー、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100069431
【氏名又は名称】和田 成則
(72)【発明者】
【氏名】ターマニーニ、ゼーファー
(72)【発明者】
【氏名】マクドナルド、ステェファン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァニエル、ブリアン
(72)【発明者】
【氏名】ブラットン、リンダ
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-194230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
寛骨臼カップにドリル・ガイドを挿入取り外しするドリル・ガイド挿入取外ツールであって、前記寛骨臼カップは、底部から延びるステムを有する窪み部と、前記寛骨臼カップの周縁に近接して前記窪み部に配置されたカップ・スロットと、前記寛骨臼カップを前記寛骨臼に固定するためのねじを収容する1つまたは複数の貫通穴と、を含み、前記ドリル・ガイドは、前記寛骨臼カップの窪み部に嵌合するように寸法決めされ、前記寛骨臼カップに最適に配置されたとき前記カップ・スロットに係合するように配置されたばね荷重式ピンを有し、前記寛骨臼カップの貫通穴とほぼ同心円状に整列し間隔をあけるように寸法決めされた1つまたは複数の貫通穴、および、各穴について設けられたガイド窪みをさらに含み、各ガイド窪みは、前記ドリル・ガイドの周縁部で前記ドリル・ガイドを横切る梁部材に配置されているドリル・ガイド挿入取外ツールおいて、
ピボット・ピンによって接続され、ピボット・ピンの周りに回転可能である2つのレバーであって、各レバーは近位端と遠位端とを有し、前記近位端の互いに向かう移動が前記遠位端の互いに向かう移動を引き起こすように、前記ピボット・ピンは前記近位端と前記遠位端との間に配置される2つのレバーと、
前記レバーの近位端のそれぞれに設けられたハンドルと、
前記レバーの遠位端のそれぞれに設けられた対向する切欠きを有するグリッパと、
前記レバーの近位端の近くに配置され、前記レバーが互いに向かって移動された後に前記レバーが互いに離れる方向に回転することを防止する解放可能なラチェット部と、
を具備し、
前記寛骨臼カップに前記ドリル・ガイドを挿入するに際しては、前記グリッパの切欠きを前記ばね荷重式ピンに配置し、前記ハンドルを互いに向かって移動させることによって前記ばね荷重式ピンを前記ドリル・ガイドから突出しないところまで内向きに移動させて前記レバーを前記ラチェット部でロックし、その後前記ドリル・ガイドを前記ばね荷重式ピンが前記カップ・スロットと整列する位置に回転させ、前記レバーを前記ロック位置から解放して前記ピンを前記カップ・スロット内に移動可能にし、前記挿入取り外しツールを前記ドリル・ガイドから取り外し、
前記寛骨臼カップから前記ドリル・ガイドを取り外すに際しては、前記グリッパの切欠きを前記ばね荷重式ピンに配置し、前記ハンドルを互いに向かって移動させることによって前記ばね荷重式ピンを前記ドリル・ガイドから突出しないところまで内向きに移動させて前記レバーを前記ラチェット部でロックし、前記ドリル・ガイドを前記寛骨臼カップから引き出す
ドリル・ガイド挿入取外ツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工股関節を移植するために使用される外科用器具に関し、より詳細には、ドリル・ガイド挿入取外ツール及びドリル・ガイド挿入取外ツールを用いて寛骨臼カップにドリル・ガイドを挿入する方法及び寛骨臼カップからドリル・ガイドを取り外す方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リバース型人工股関節は、米国特許第8,313,531号および第8,540,779号に記載されている。人工装具および修正手術方法も、米国特許第8,992,627号に記載されている。これらの3つの特許の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、当該技術分野において周知の従来の人工股関節にも関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第8,313,531号
【文献】米国特許第8,540,779号
【文献】米国特許第8,992,627号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ドリル・ガイド挿入取外ツール及びドリル・ガイド挿入取外ツールを用いて寛骨臼カップにドリル・ガイドを挿入する方法及び寛骨臼カップからドリル・ガイドを取り外す方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の外科用ツール・システムは、寛骨臼に寛骨臼カップを最適に配置するために外科医が適正な角度および深さで穴を正確にあけることを可能にする。本発明のシステムは、ドリル・ガイドと、ドリル・ガイドと協働して使用されるドリル・ビット・ガイドを有するハンドルと、ドリル・ビットと、を含む。挿入取り外しツールは、止血鉗子と同様の大きさおよび構造であり、ツールの近位端のハンドルおよびラチェット部を含み、ラチェット部は、止血鉗子に見られるのと同じ種類の歯を有し、止血鉗子と同じ方法で解放可能である。挿入取り外しツール50を使用してドリル・ガイド60を寛骨臼カップに挿入するか、または寛骨臼カップ20から取り外すとき、挿入取り外しツールの遠位端のグリッパの対向する切欠きは、ピン・ハンドルに接触し、ピンが後退し、ドリル・ガイドが寛骨臼カップに挿入されるか、または寛骨臼カップから取り外されるように、互いに向かって握られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明のドリル・ガイドの第1の実施形態の正面図である。
【
図5】
図5は、ドリル・ガイドの第1の実施形態の斜視図である。
【
図6】
図6は、ドリル・ガイドの第1の実施形態の分解図である。
【
図7】
図7は、リバース型股関節寛骨臼カップに配置されたドリル・ガイドの第2の実施形態の斜視図である。
【
図8】
図8は、リバース型股関節寛骨臼カップに配置された
図7のドリル・ガイドの断面図である。
【
図9】
図9は、リバース型股関節寛骨臼カップの断面図である。
【
図10】
図10は、リバース型股関節寛骨臼カップに配置されたドリル・ガイドと、ガイド・ハンドルと、ドリル・ビットとを含む本発明の外科用ツールの斜視図である。
【
図12】
図12は、ドリル・ガイドを寛骨臼カップに挿入するか、またはドリル・ガイドを寛骨臼カップから取り外すために任意選択により使用することができる挿入取り外しツールの斜視図である。
【
図14】
図14は、挿入取り外しツールの遠位端の拡大図である。
【
図15】
図15は、ドリル・ガイドに関連して使用される挿入取り外しツールを示す図である。
【
図16】
図16は、本発明のドリル・ガイドの第3の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明が適用される外科用ツール・システムは、寛骨臼カップを寛骨臼に固定するために使用されるねじを収容または受け入れるための穴を寛骨臼にあけるために使用される。本発明の第1および第2の実施形態における寛骨臼カップは、底部から延びるステムを有する窪み部と、寛骨臼カップの周縁に近接して窪み部に配置されたスロットと、寛骨臼カップを寛骨臼に固定するためのねじを収容する1つまたは複数の貫通穴と、を含む。第1および第2の実施形態は、リバース型人工股関節と共に使用するためのものである。第3の実施形態では、ツール・システムは、寛骨臼カップの窪み部から延びるステムを有さない従来の人工股関節に関連して使用される。
【0009】
外科用ツール・システムは、寛骨臼カップの窪み部に嵌合するように寸法決めされたドリル・ガイドを備える。ドリル・ガイドが寛骨臼カップに最適に配置されたとき、スロットに係合するように、ドリル・ガイド内にばね荷重式ピンが配置される。ドリル・ガイドは、寛骨臼カップの貫通穴とほぼ同心円状に整列し間隔をあけるように寸法決めされた1つまたは複数の貫通穴も含む。ガイド窪みは各穴に対して設けられ、各ガイド窪みは、ドリル・ガイドの周縁部においてドリル・ガイドを横切る梁部材に配置される。
【0010】
ハンドルが提供され、ハンドルはハンドルの遠位端に配置されたドリル・ビット・ガイドを有するシャフトを含む。ドリル・ビット・ガイドは、ドリル・ビット・ガイド遠位端および側部を有する。ドリル・ビット・ガイドは、穴に係合するような大きさであり、側部は、それぞれの穴のためにガイド窪みに係合するように配置される。切断部分およびドリル・ビット・ガイドを貫通する大きさのシャフトを有するドリル・ビットが使用される。
【0011】
上記外科用ツール・システムを使用する方法は、順次のステップを含んでおり、最初に、寛骨臼に配置された寛骨臼カップにドリル・ガイドを配置する。次に、ピンがスロットに係合するまで、ドリル・ガイドをカップ内で回転させる。次に、ドリル・ビット・ガイドの遠位端を貫通穴に配置し、穴のための対応するガイド窪みをドリル・ビット・ガイドの側部に係合させる前または後に、ドリル・ビットをドリル・ビット・ガイドに挿入する。寛骨臼に穴をあける。次に、ドリル・ビットおよびドリル・ビット・ガイドを取り外し、ねじを穴に挿入して締める。
【0012】
図面を参照すると、
図1~
図6に示すドリル・ガイド1は、貫通穴3を有する球状基部2を含む。基部2は、全体的に突状の外面と全体的に窪み状の内面とを有し、内面は
図4において符号4で示されている。ピン・スロット6を有する梁5が内面4に配置され、内面4を横断する。ピン・スロット6はピン7を収容し、各ピン7はピン・ハンドル8を有する。
【0013】
図1および
図6を参照すると、ピン7は、ばね9によって外方向に付勢されており、ばね9の端部はばねスロット10に配置される。ばね9は、ねじ11とねじ付きブッシュ12によって梁5に固定される。
【0014】
また、梁5には、ガイド窪み13が設けられる。各ガイド窪み13は、
図10および
図11に示すガイド・ハンドル30を配置するために穴3と並んでいる。当業者には理解されるように、寛骨臼カップは、ねじまたは他のファスナのための1つの穴を有することができ、または複数の穴10、15、20などを有することができる。本発明のドリル・ガイドは、任意の数の穴を有する寛骨臼カップと共に使用するために作成することができる。
【0015】
図7および
図8は、リバース型股関節寛骨臼カップ20に配置されたドリル・ガイド1aの第2の実施形態を示している。このドリル・ガイドは、
図1~
図6に示す第1の実施形態の要素のすべてを有するが、ガイド窪み13の周囲に球状基部2aがより多く充填されている点が異なる。ドリル・ガイドを有さない寛骨臼カップ20の断面図が
図9に示される。寛骨臼カップ20は、カップ・スロット21と、ステム22と、カップ穴23とを有しており、このカップ穴には任意選択によりねじ溝が形成される。
図4および
図8に示すように、ドリル・ガイドは、ステム22を受け入れる大きさの開放シャフトを有する。したがって、ドリル・ガイドは、寛骨臼カップ20の窪み部に嵌合するように寸法決めされる。
【0016】
寛骨臼カップ20が寛骨臼40に配置された後、ドリル・ガイドが寛骨臼カップ20に配置される(
図11参照)。寛骨臼カップ20へのドリル・ガイドの配置は、ピン・ハンドル8を互いに向かって握り、ドリル・ガイドを寛骨臼カップ20に配置し、ピン・ハンドル8を解放し、ピン7がカップ・スロット21に係合するまでドリル・ガイドを回転させることによって行われ、これによりドリル・ガイドを所定の位置に固定する。
【0017】
図10および
図11に示すように、ドリル・ガイド・ハンドル30には、シャフト31が設けられており、シャフト31は、シャフト31の遠位端にドリル・ビット・ガイド32が配置されている。ドリル・ビット33は、ドリルが深すぎる穴を形成するのを防止するための止め部34を有する。ドリル・ビット33は、ドリル・ビット・ガイド32に配置される。ドリル・ガイド・ハンドル30は、ドリル・ビット・ガイド32の遠位端をドリル・ガイドの穴3(
図1~
図7も参照)に配置し、ドリル・ビット・ガイド32の側面を適切なガイド窪み13に載せることによって使用される。
【0018】
3つの穴3およびガイド窪み13のうち、中央の穴3のための適切なガイド窪みは、中央のガイド窪み13である。例えば中央の左側の穴には、中央の左側にあるガイド窪みが使用される。ドリル・ビット33は、ドリル・ビット・ガイド32に配置することができ、好ましくは、ハンドル30がドリル・ビット・ガイド32をドリル・ガイドに配置する前にドリル・ビット・ガイド32に配置される。各穴があけられた後、ガイド・ハンドル、ビットおよびドリル・ガイドが取り外され、ねじがねじ込まれて締め付けられ、第2および第3の穴に対して工程が繰り返される。
【0019】
挿入取り外しツール50が
図12および
図13に示されている。ツール50は、止血鉗子と同様の大きさおよび構造である。ツールは、ツールの近位端のハンドル51およびラチェット部52を含む。
図12Aに示すように、ラチェット部52は、止血鉗子に見られるのと同じ種類の歯80を有する。ラチェット部は、止血鉗子と同じ方法で解放可能である。ピン53は、梃子を提供するように配置され、グリッパ54は、遠位端に配置される。ピン53とグリッパ54との間に位置するツールの部分は、任意選択により(例えば、約20°で)傾斜していてもよい(図示せず)。
【0020】
ツール50の遠位端の拡大図が
図14に示され、
図15は使用中のツールを示している。図示されているように、ツール50を使用してドリル・ガイドを寛骨臼カップに挿入するか、または寛骨臼カップから取り外すとき、ツール50の遠位端56のグリッパ54の対向する切欠き57は、図示のようにピン・ハンドル8に接触する。ツール50を使用して、ピン・ハンドル8は、ピン7が後退し、ドリル・ガイドが寛骨臼カップに挿入されるか、または寛骨臼カップから取り外されるように、互いに向かって握られる。
【0021】
本発明のドリル・ガイドの第3の実施形態が
図16の断面図でドリル・ガイド60として示されている。ドリル・ガイド60は、
図17に断面図で示された従来の寛骨臼カップ70と共に使用される。ドリル・ガイド60は、ねじ付きスリーブ79にねじ込まれ、ねじ11が
図1~
図6に示すようにばね9を梁5に固定するのと同じ方法でばね69をドリル・ガイドに固定するねじ61を含む。ばね69は、ばね9と同じ種類のばねである。ドリル・ガイド60は、基部62、穴63、ピン67およびピン68を有し、それらのすべては本明細書に記載される本発明のドリル・ガイドの第1および第2の実施形態における対応物と同じように機能する。従来の寛骨臼カップ70には、ピン67によって係合されるカップ・スロット71も設けられる。
【0022】
本発明の外科用器具は、股関節置換手術において使用される他のツールおよび/またはインプラント要素を含むキットに含まれてもよい。