(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】被加工物の加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20220908BHJP
B23K 26/03 20060101ALI20220908BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20220908BHJP
【FI】
H01L21/78 B
B23K26/03
B23K26/53
(21)【出願番号】P 2018002893
(22)【出願日】2018-01-11
【審査請求日】2020-11-12
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベ テウ
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-064746(JP,A)
【文献】特開2006-339382(JP,A)
【文献】特開2012-256793(JP,A)
【文献】特開2017-217673(JP,A)
【文献】特開2017-120820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/03
B23K 26/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に分割予定ラインによって区画された複数のデバイスが形成された被加工物を該分割予定ラインによって分割する被加工物の加工方法であって、
該被加工物の表面側を保持テーブルに保持する保持ステップと、
該被加工物の裏面側から該分割予定ラインに沿って該被加工物に対して透過性を有するレーザー光線を照射して内部に改質層を形成する改質層形成ステップと、
該被加工物の裏面側から赤外線を含む照明光を照射しながら赤外線カメラで該改質層を撮像し、該分割予定ラインに対する該改質層の相対的な位置を確認する改質層確認ステップと、を備え、
該改質層確認ステップにおいて、撮像される領域は、該被加工物の表面に金属部品が形成されて
、該金属部品に該改質層が重なっている領域であることを特徴とする被加工物の加工方法。
【請求項2】
該改質層確認ステップでは、
該改質層が形成されたばかりの分割予定ライン上に該金属部品が有るか否かを判定し、
該改質層が形成されたばかりの分割予定ライン上に該金属部品が有ると判定すると、該金属部品の上方に該赤外線カメラを位置付けて、該赤外線カメラで被加工物の裏面側を撮像し、
該改質層が形成されたばかりの分割予定ライン上に該金属部品が無いと判定すると、該金属部品が存在している分割予定ラインのうち最も最近に該改質層を形成した分割予定ラインに存在する該金属部品の上方に該赤外線カメラを位置付けて、該赤外線カメラで被加工物の裏面側を撮像することを特徴とする請求項1に記載の被加工物の加工方法。
【請求項3】
該保持ステップの実施後に、該赤外線カメラと該保持テーブルとを第1の方向に相対移動させながら任意の該分割予定ラインを撮像して、金属部品が形成されている第1の方向の座標を記憶する第1方向座標記憶ステップと、
該第1方向座標記憶ステップの実施後に、金属部品が形成されている第1の方向の座標に該赤外線カメラを合わせた状態で、該赤外線カメラと該保持テーブルとを第1の方向に交差する第2の方向に相対移動させながら金属部品が形成されている第2の方向の座標を検出する第2方向座標記憶ステップと、を備え、
該改質層確認ステップで撮像する領域は、該第1方向座標記憶ステップ及び該第2方向座標記憶ステップとで記憶された座標である事を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の被加工物の加工方法。
【請求項4】
該第1方向座標記憶ステップ及び該第2方向座標記憶ステップにおいて、
該赤外線カメラによって撮像された画像における白と黒の割合から金属部品の有無を判断する事を特徴とする請求項3に記載の被加工物の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の内部に形成された改質層の分割予定ラインに対する相対的な位置を確認する被加工物の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン、サファイア、ガリウムなどを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等の被加工物であるウエーハは、表面の格子状の分割予定ラインに区画された複数の領域にデバイスが形成されている。ウエーハは、レーザー加工装置又は切削装置等の加工装置により分割予定ラインに沿って改質層、レーザー加工溝又は切削溝等の加工痕が形成されて、個々のデバイスに分割される。
【0003】
前述した加工痕を分割予定ラインに沿って形成する加工装置は、所定のタイミングで加工痕の分割予定ラインに対する相対的な位置を確認するカーフチェックを遂行する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1等に示されたカーフチェックを遂行する加工装置として、ウエーハの裏面側からレーザー光線を照射して内部に加工痕である改質層を形成するレーザー加工装置が用いられている。この種のレーザー加工装置は、カーフチェックを遂行する際に、裏面側からウエーハを赤外線カメラで撮像する。しかしながら、前述したレーザー加工装置は、裏面側からウエーハの内部に形成された改質層を撮像するために、改質層を検出しにくい場合があり、この場合、改質層の検出精度が低下してしまう。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、改質層の検出精度の低下を抑制することができる被加工物の加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の被加工物の加工方法は、表面に分割予定ラインによって区画された複数のデバイスが形成された被加工物を該分割予定ラインによって分割する被加工物の加工方法であって、該被加工物の表面側を保持テーブルに保持する保持ステップと、該被加工物の裏面側から該分割予定ラインに沿って該被加工物に対して透過性を有するレーザー光線を照射して内部に改質層を形成する改質層形成ステップと、該被加工物の裏面側から赤外線を含む照明光を照射しながら赤外線カメラで該改質層を撮像し、該分割予定ラインに対する該改質層の相対的な位置を確認する改質層確認ステップと、を備え、該改質層確認ステップにおいて、撮像される領域は、該被加工物の表面に金属部品が形成されて、該金属部品に該改質層が重なっている領域であることを特徴とする。
前記被加工物の加工方法において、該改質層確認ステップでは、該改質層が形成されたばかりの分割予定ライン上に該金属部品が有るか否かを判定し、該改質層が形成されたばかりの分割予定ライン上に該金属部品が有ると判定すると、該金属部品の上方に該赤外線カメラを位置付けて、該赤外線カメラで被加工物の裏面側を撮像し、該改質層が形成されたばかりの分割予定ライン上に該金属部品が無いと判定すると、該金属部品が存在している分割予定ラインのうち最も最近に該改質層を形成した分割予定ラインに存在する該金属部品の上方に該赤外線カメラを位置付けて、該赤外線カメラで被加工物の裏面側を撮像しても良い。
【0008】
前記被加工物の加工方法において、該保持ステップの実施後に、該赤外線カメラと該保持テーブルとを第1の方向に相対移動させながら任意の該分割予定ラインを撮像して、金属部品が形成されている第1の方向の座標を記憶する第1方向座標記憶ステップと、該第1方向座標記憶ステップの実施後に、金属部品が形成されている第1の方向の座標に該赤外線カメラを合わせた状態で、該赤外線カメラと該保持テーブルとを第1の方向に交差する第2の方向に相対移動させながら金属部品が形成されている第2の方向の座標を検出する第2方向座標記憶ステップと、を備え、該改質層確認ステップで撮像する領域は、該第1方向座標記憶ステップ及び該第2方向座標記憶ステップとで記憶された座標であっても良い。
【0009】
前記被加工物の加工方法において、該第1方向座標記憶ステップ及び該第2方向座標記憶ステップにおいて、該赤外線カメラによって撮像された画像における白と黒の割合から金属部品の有無を判断しても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明の被加工物の加工方法は、改質層の検出精度の低下を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る被加工物の加工方法の加工対象の被加工物の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る被加工物の加工方法で用いられるレーザー加工装置の構成例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る被加工物の加工方法の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、
図3に示された被加工物の加工方法の保持ステップを示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図3に示された被加工物の加工方法の第1方向座標記憶ステップ及び第2方向座標記憶ステップにおいて被加工物の赤外線カメラが撮像する領域を示す平面図である。
【
図6】
図6は、
図3に示された被加工物の加工方法の第1方向座標記憶ステップ及び第2方向座標記憶ステップにおいて赤外線カメラが撮像した画像の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、
図3に示された被加工物の加工方法の第1方向座標記憶ステップ及び第2方向座標記憶ステップにおいて赤外線カメラが撮像した画像の他の例を示す図である。
【
図8】
図8は、
図3に示された被加工物の加工方法の改質層形成ステップを示す斜視図である。
【
図9】
図9は、
図3に示された被加工物の加工方法の改質層形成ステップにおいて制御ユニットが繰り返し実行するフローチャートである。
【
図10】
図10は、実施形態1に係る被加工物の加工方法の改質層確認ステップにおいて赤外線カメラが撮像した画像の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、実施形態1に係る被加工物の加工方法の改質層確認ステップにおいて赤外線カメラが撮像した画像の比較例を示す図である。
【
図12】
図12は、実施形態2に係る被加工物の加工方法の第1方向座標記憶ステップ及び第2方向座標記憶ステップにおいて被加工物の赤外線カメラが撮像する領域を示す平面図である。
【
図14】
図14は、実施形態1及び実施形態2の変形例に係る被加工物の加工方法の改質層確認ステップにおいて赤外線カメラが撮像した画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る被加工物の加工方法を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係る被加工物の加工方法の加工対象の被加工物の一例を示す斜視図である。
図2は、実施形態1に係る被加工物の加工方法で用いられるレーザー加工装置の構成例を示す斜視図である。
【0014】
実施形態1に係る被加工物の加工方法は、
図1に示す被加工物1を加工する方法である。実施形態1に係る被加工物の加工方法の加工対象の被加工物1は、シリコン、サファイア、ガリウムなどを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハである。被加工物1は、
図1に示すように、表面2に複数の分割予定ライン3によって格子状に区画された複数のデバイス4が形成されている。分割予定ライン3は、互いに交差(実施形態1では、直交)している。
【0015】
また、被加工物1は、分割予定ライン3に金属部品であるTEG(Test Element Group)5を形成している。TEG5は、金属等で形成され、デバイス4の設計、製造上の問題を見つけ出すためのテストパターンである。TEG5は、被加工物1の分割予定ライン3の予め定められた所定位置に配置されている。
【0016】
また、実施形態1において、TEG5は、分割予定ライン3同士が交差する交差部6に設けられているが、本発明では、TEG5が設けられる位置は、交差部6に限定されない。また、実施形態1において、TEG5は、第1の方向であるX軸方向と第2の方向であるY軸方向とのそれぞれにおいて、一つおきの交差部6に設けられて、表面2に周期的に配置されているが、本発明では、TEG5は、X軸方向とY軸方向とのそれぞれにおいて、周期的に配置されていなくても良い。
【0017】
また、実施形態1では、被加工物1は、分割予定ライン3に金属部品であるTEG5を形成したが、本発明では、TEG5に限定されることなく、金属部品としてCMP(Chemical Mechanical Polishing)用のダミーパターンを形成しても良い。CMPのダミーパターンは、CMP研磨時に被加工物1が均一に削れて、厚みのばらつきを抑制するために、分割予定ライン3に形成されるものであり、金属等から構成される。また、実施形態1において、被加工物1は、表面2に保護テープ9が貼着されて、
図2に示すレーザー加工装置10により加工される。なお、被加工物1は、母材が赤外線を透過し、TEG5及びデバイス4が赤外線を反射する。
【0018】
図2に示すレーザー加工装置10は、被加工物1の内部に分割予定ライン3に沿って
図1に点線で示す改質層100を形成する装置である。レーザー加工装置10は、
図2に示すように、被加工物1の表面2側を保持面11で保持する保持テーブル12と、被加工物1が透過性を有する波長のレーザー光線200(
図8に示す)を保持テーブル12に保持された被加工物1に照射するレーザー光線照射ユニット20と、保持テーブル12をX軸方向に移動させるX軸移動ユニット30と、保持テーブル12をY軸方向に移動させるY軸移動ユニット40とを備える。また、レーザー加工装置10は、保持テーブル12に保持された被加工物1の裏面7側から撮像する赤外線カメラ50と、各構成要素を制御する制御ユニット60とを備える。
【0019】
保持テーブル12は、円盤形状であり、被加工物1を保持する保持面11がポーラスセラミック等から形成されている。また、保持テーブル12は、X軸移動ユニット30によりX軸方向に移動自在で回転駆動源13により鉛直方向に沿ったZ軸方向と平行な軸心回りに回転自在に設けられている。保持テーブル12は、保持面11に保護テープ9を介して被加工物1の表面2側が載置される。保持テーブル12は、保持面11が図示しない真空吸引源と接続され、真空吸引源により吸引されることで、被加工物1の表面2側を吸引、保持する。
【0020】
レーザー光線照射ユニット20は、保持テーブル12に保持された被加工物1に対して対向して配置されている。レーザー光線照射ユニット20は、被加工物1の裏面7側から各分割予定ライン3に沿って被加工物1に対してレーザー光線200を照射して、被加工物1の内部に破断起点となる改質層100を形成するものである。なお、改質層100とは、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態になった領域のことを意味し、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、及びこれらの領域が混在した領域等を例示できる。レーザー光線照射ユニット20は、レーザー加工装置10の装置本体14から立設した壁部15に連なった支持柱16の先端に取り付けられている。
【0021】
赤外線カメラ50は、保持テーブル12に保持された被加工物1を撮像するものであり、実施形態1では、レーザー光線照射ユニット20とX軸方向に並列する位置に配設されている。実施形態1では、赤外線カメラ50は、支持柱16の先端に取り付けられている。赤外線カメラ50は、保持テーブル12に保持された被加工物1に赤外線を含む照明光を照射する図示しない照明器と、保持テーブル12に保持された被加工物1で反射された反射光のうち主に赤外線を受光するCCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子等を備える。照明器は、Z軸方向に沿って照明光を被加工物1に照射する同軸照明と、Z軸方向に対して交差する方向に沿って照明光を被加工物1に照射する斜光照明とを備える。なお、実施形態1において、同軸照明及び斜光照明の照明光の光量は、撮像素子が受光するデバイス4及びTEG5から反射された赤外線の光量が分割予定ライン3及び改質層100から反射された赤外線の光量よりも多く、かつ分割予定ライン3から反射された赤外線の光量が改質層100から反射された赤外線の光量よりも多くなるように調整される。赤外線カメラ50は、撮像素子が赤外線を受光して得た画像を制御ユニット60に出力する。
【0022】
また、レーザー加工装置10は、保持テーブル12のX軸方向の位置を検出するため図示しないX方向位置検出ユニットと、保持テーブル12のY軸方向の位置を検出するための図示しないY方向位置検出ユニットとを備える。X方向位置検出ユニット及びY方向位置検出ユニットは、X軸方向又はY軸方向と平行なリニアスケールと、保持テーブル12と一体にX軸方向又はY軸方向に移動する読み取りヘッドとを備える。X方向位置検出ユニット及びY方向位置検出ユニットは、保持テーブル12のX軸方向又はY軸方向の位置を制御ユニット60に出力する。
【0023】
制御ユニット60は、レーザー加工装置10の上述した構成要素をそれぞれ制御して、被加工物1に対する加工動作をレーザー加工装置10に実施させるものである。なお、制御ユニット60は、コンピュータである。制御ユニット60は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。
【0024】
制御ユニット60の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、レーザー加工装置10を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介してレーザー加工装置10の上述した構成要素に出力する。また、制御ユニット60は、加工動作の状態や画像などを表示する表示ユニット61及びオペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる入力ユニット62とが接続されている。入力ユニット62は、表示ユニット61に設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。
【0025】
制御ユニット60は、被加工物1の加工前に被加工物1を裏面7側から赤外線カメラ50に撮像させ、赤外線カメラ50が撮像して得た画像に基づいて、被加工物1とレーザー光線照射ユニット20との位置合わせを行なうアライメントを遂行する。また、制御ユニット60は、所定の改質層確認タイミングにおいて、分割予定ライン3に実際に形成された改質層100の分割予定ライン3に対する相対的な位置を確認する。なお、赤外線カメラ50は、アライメントを遂行する際及び改質層100の分割予定ライン3に対する相対的な位置を確認する際に、例えば、被加工物1の数mm(実施形態1では、5mm程度)四方の領域を撮像する。
【0026】
実施形態1に係る被加工物の加工方法は、被加工物1を分割予定ライン3によって分割する方法である。
図3は、実施形態1に係る被加工物の加工方法の流れを示すフローチャートである。
図4は、
図3に示された被加工物の加工方法の保持ステップを示す斜視図である。
図5は、
図3に示された被加工物の加工方法の第1方向座標記憶ステップ及び第2方向座標記憶ステップにおいて被加工物の赤外線カメラが撮像する領域を示す平面図である。
図6は、
図3に示された被加工物の加工方法の第1方向座標記憶ステップ及び第2方向座標記憶ステップにおいて赤外線カメラが撮像した画像の一例を示す図である。
図7は、
図3に示された被加工物の加工方法の第1方向座標記憶ステップ及び第2方向座標記憶ステップにおいて赤外線カメラが撮像した画像の他の例を示す図である。
図8は、
図3に示された被加工物の加工方法の改質層形成ステップを示す斜視図である。
【0027】
被加工物の加工方法は、
図3に示すように、保持ステップST1と、第1方向座標記憶ステップST2と、第2方向座標記憶ステップST3と、改質層形成ステップST4と、分割ステップST5とを備える。実施形態1において、第1方向座標記憶ステップST2と、第2方向座標記憶ステップST3と、改質層形成ステップST4とは、レーザー加工装置10により実施される。
【0028】
保持ステップST1は、被加工物1の表面2側を保持テーブル12に保持するステップである。実施形態1において、保持ステップST1は、オペレータが入力ユニット62を操作して加工内容情報を制御ユニット60に登録し、オペレータが保持テーブル12に保護テープ9を介して被加工物1の表面2側を載置し、オペレータから加工動作の開始指示があった場合に実施される。
【0029】
保持ステップST1では、
図4に示すように、オペレータが被加工物1の表面2側を保護テープ9を介して保持面11に載置した後に、制御ユニット60は、オペレータから加工動作の開始指示があると、真空吸引源を駆動させて保持テーブル12に被加工物1を吸引保持する。保持ステップST1では、制御ユニット60は、赤外線カメラ50に保持テーブル12に保持された被加工物1の予め設定された所定箇所を撮像させて、アライメントを遂行し、アライメント結果に基づいて、互いに直交する分割予定ライン3のうち一方をX軸方向と平行にして、第1方向座標記憶ステップST2に進む。
【0030】
第1方向座標記憶ステップST2は、制御ユニット60が、保持ステップST1の実施後に、赤外線カメラ50と保持テーブル12とをX軸方向に相対移動させながら赤外線カメラ50が任意の分割予定ライン3を撮像して、TEG5が形成されている領域のX軸方向の座標を記憶するステップである。なお、実施形態1において、被加工物1のX軸方向とY軸方向とを含む平面内での位置は、
図5に示すように、被加工物1の予め定められた基準位置からのX軸方向の距離と、Y軸方向の距離とで定められる。なお、X軸方向は、互いに直交する分割予定ライン3のうち一方と平行な方向であり、Y軸方向は、互いに直交する分割予定ライン3のうち他方と平行な方向である。なお、本発明でいうX軸方向の座標は、
図5に示すように、被加工物1の基準位置からのX軸方向の距離で定められる。
【0031】
第1方向座標記憶ステップST2では、制御ユニット60が、X軸方向と平行な複数の分割予定ライン3のうち予め定められた任意の分割予定ライン3の一端の上方に赤外線カメラ50を位置付けた後、赤外線カメラ50で照射光を照射して分割予定ライン3を撮像しながら赤外線カメラ50が他端の上方に向かうように保持テーブル12をX軸移動ユニット30によりX軸方向に移動させる。このとき、赤外線カメラ50の照明器が照射した照明光のうち赤外線は、被加工物1の母材を透過するとともに、デバイス4及びTEG5により反射される。このために、赤外線カメラ50の撮像素子は、デバイス4及びTEG5により反射された赤外線を受光する。
【0032】
実施形態1では、第1方向座標記憶ステップST2では、制御ユニット60は、
図6及び
図7に示すように、赤外線カメラ50が撮像した画像300,301のうち赤外線カメラ50の撮像素子の受光量が予め定められた閾値を超える領域を白(2値化の1ともいい、
図6及び
図7中に白地で示す)とし、閾値以下の領域を黒(2値化の零ともいい、
図6及び
図7中に密な平行斜線で示す)とする。閾値は、赤外線カメラ50の撮像素子のデバイス4及びTEG5により反射された赤外線の受光量よりも小さくかつ赤外線カメラ50の撮像素子の分割予定ライン3及び改質層100により反射された赤外線の受光量よりも大きな値である。
【0033】
第1方向座標記憶ステップST2において、制御ユニット60は、
図6及び
図7に示す赤外線カメラ50によって撮像された画像300,301における白と黒の割合からTEG5の有無を判断する。具体的には、第1方向座標記憶ステップST2では、制御ユニット60は、
図7に示す白の割合が所定値よりも大きな画像301にはTEG5が有ると判断する。第1方向座標記憶ステップST2では、制御ユニット60は、
図6に示す白の割合が所定値以下の画像300にはTEG5が無いと判断する。
【0034】
なお、実施形態1では、閾値を超えるデバイス4及びTEG5が設けられた領域を白で示し、受光量が閾値以下のTEG5が設けられていない分割予定ライン3である領域を黒で示しているが、本発明では、デバイス4及びTEG5が設けられた領域、TEG5が設けられていない分割予定ライン3である領域を示す方法は、これらに限定されない。
【0035】
第1方向座標記憶ステップST2では、制御ユニット60は、赤外線カメラ50が分割予定ライン3の他端の上方に到達しても、一度もTEG5が有ると判断できなかった場合には、被加工物1と赤外線カメラ50とをY軸方向に相対的に移動させた後、赤外線カメラ50を他の分割予定ライン3の一端の上方に位置付けて、赤外線カメラ50を他端に向かうように保持テーブル12をX軸移動ユニット30によりX軸方向に移動させながら撮像させる。制御ユニット60は、TEG5を検出するまで、赤外線カメラ50と保持テーブル12とをX軸方向に相対移動させながら赤外線カメラ50にX軸方向と平行な分割予定ライン3を撮像させる。
【0036】
第1方向座標記憶ステップST2では、制御ユニット60は、赤外線カメラ50が分割予定ライン3の他端の上方に到達した際に、少なくとも一度TEG5が有ると判断できた場合には、撮像したTEG5のX軸方向の中央の座標をTEG5が形成されている領域のX軸方向の座標として記憶する。実施形態1では、第1方向座標記憶ステップST2では、制御ユニット60は、赤外線カメラ50が撮像した全てのまたは少なくとも一つのTEG5のX軸方向の中央の座標をTEG5が形成されている領域のX軸方向の座標として記憶する。即ち、制御ユニット60は、加工内容情報等としてすべてのTEG5同士の相対的な位置関係をすでに登録されていれば、第1方向座標記憶ステップST2では、一つのTEG5のX軸方向の座標のみを記憶しても良い。第1方向座標記憶ステップST2では、制御ユニット60は、TEG5のX軸方向の中央の座標を記憶すると、第2方向座標記憶ステップST3に進む。こうして、実施形態1では、第1方向座標記憶ステップST2において、制御ユニット60は、
図5に一点鎖線400で囲んで示すX軸方向と平行な分割予定ライン3のTEG5を検出する。
【0037】
第2方向座標記憶ステップST3は、制御ユニット60が、第1方向座標記憶ステップST2の実施後に、TEG5が形成されているX軸方向の座標に赤外線カメラ50を合わせた状態で、赤外線カメラ50と保持テーブル12とをY軸方向に相対移動させながらTEG5が形成されている領域のY軸方向の座標を検出するステップである。なお、実施形態1において、Y軸方向の座標は、
図5に示すように、被加工物1の基準位置からのY軸方向の距離で定められる。
【0038】
第2方向座標記憶ステップST3では、制御ユニット60が、第1方向座標記憶ステップST2で記憶したTEG5のX軸方向の中央の座標のうち任意の一つのTEG5のX軸方向の中央の座標に赤外線カメラ50を位置付ける。即ち、第2方向座標記憶ステップST3では、制御ユニット60が、第1方向座標記憶ステップST2で撮像した分割予定ライン3に設けられた任意の一つのTEG5の上方に赤外線カメラ50を位置付ける。
【0039】
第2方向座標記憶ステップST3では、制御ユニット60が、赤外線カメラ50を上方に位置付けた任意の一つのTEG5のY軸方向の中央の座標をTEG5が形成されている領域のY軸方向の座標として記憶する。第2方向座標記憶ステップST3では、制御ユニット60が、赤外線カメラ50で照射光を照射して分割予定ライン3を撮像しながら赤外線カメラ50が分割予定ライン3に沿って移動するようにY軸移動ユニット40により保持テーブル12をY軸方向に移動させる。
【0040】
実施形態1では、第2方向座標記憶ステップST3では、制御ユニット60は、第1方向座標記憶ステップST2と同様に、
図6及び
図7に示すように、赤外線カメラ50が撮像した画像300,301のうち赤外線カメラ50の撮像素子の受光量が予め閾値を超える領域を白とし、閾値以下の領域を黒とし、画像300,301における白と黒の割合からTEG5の有無を判断する。
【0041】
第2方向座標記憶ステップST3では、制御ユニット60は、Y軸移動ユニット40により保持テーブル12をY軸方向に移動させながら赤外線カメラ50が分割予定ライン3の全てを撮像しても、一度もTEG5が有ると判断できなかった場合には、被加工物1と赤外線カメラ50とをX軸方向に相対的に移動させて、第1方向座標記憶ステップST2で記憶したTEG5のX軸方向の中央の座標のうち任意の他の一つのTEG5のX軸方向の中央に座標に赤外線カメラ50を位置付けて、赤外線カメラ50が分割予定ライン3に沿って移動するように保持テーブル12をY軸方向に移動させながら撮像させる。制御ユニット60は、TEG5を検出するまで、赤外線カメラ50と保持テーブル12とをY軸方向に相対移動させながら赤外線カメラ50にY軸方向と平行な分割予定ライン3を撮像させる。
【0042】
第2方向座標記憶ステップST3では、制御ユニット60は、赤外線カメラ50が分割予定ライン3を撮像した際に、少なくとも一度TEG5が有ると判断できた場合には、撮像したTEG5のY軸方向の中央の座標をTEG5が形成されている領域のY軸方向の座標として記憶する。実施形態1では、第2方向座標記憶ステップST3では、制御ユニット60は、赤外線カメラ50が撮像した全てのTEG5のY軸方向の中央の座標をTEG5が形成されている領域のY軸方向の座標として記憶する。第2方向座標記憶ステップST3では、制御ユニット60は、TEG5のY軸方向の中央の座標を記憶すると、改質層形成ステップST4に進む。こうして、実施形態1では、第2方向座標記憶ステップST3において、制御ユニット60は、
図5に一点鎖線401で囲んで示すY軸方向と平行な分割予定ライン3のTEG5を検出する。
【0043】
改質層形成ステップST4は、被加工物1の裏面7側から分割予定ライン3に沿って被加工物1に対して透過性を有するレーザー光線200を照射して内部に改質層100を形成するステップである。改質層形成ステップST4では、制御ユニット60が、
図8に示すように、アライメント結果に基づいて、被加工物1を保持した保持テーブル12とレーザー光線照射ユニット20とを分割予定ライン3に沿って相対的に移動させながら集光点を被加工物1の内部に合わせてレーザー光線照射ユニット20からレーザー光線200を被加工物1の裏面7側に照射する。改質層形成ステップST4では、制御ユニット60が、レーザー光線照射ユニット20からレーザー光線200を被加工物1に照射して、被加工物1の内部に分割予定ライン3に沿った改質層100を形成する。被加工物の加工方法は、改質層形成ステップST4において、被加工物1の内部に全ての分割予定ライン3に沿った改質層100を形成すると、制御ユニット60が、レーザー光線照射ユニット20からのレーザー光線200の照射を終了して、保持テーブル12を被加工物1が載置された位置まで移動させた後、被加工物1の吸引保持を解除して、分割ステップST5に進む。
【0044】
分割ステップST5は、被加工物1を改質層100を起点に個々のデバイス4に分割するステップである。実施形態1において、分割ステップST5では、オペレータ等が改質層100が形成された被加工物1に図示しないエキスパンドシートを貼着し、被加工物1から保護テープ9を剥がした後、被加工物1を図示しないエキスパンド装置に搬送する。分割ステップST5ででは、オペレータが被加工物1をエキスパンド装置に取り付けた後、エキスパンド装置によりエキスパンドシートを面方向に拡張して外力を付与するなどして、被加工物1を個々のデバイス4に分割する。被加工物の加工方法は、被加工物1を個々のデバイス4に分割すると終了する。
【0045】
また、実施形態1に係る被加工物の加工方法では、改質層形成ステップST4において、制御ユニット60は、
図9に示すフローチャートを繰り返し実行する。
図9は、
図3に示された被加工物の加工方法の改質層形成ステップにおいて制御ユニットが繰り返し実行するフローチャートである。
図10は、実施形態1に係る被加工物の加工方法の改質層確認ステップにおいて赤外線カメラが撮像した画像の一例を示す図である。
図11は、実施形態1に係る被加工物の加工方法の改質層確認ステップにおいて赤外線カメラが撮像した画像の比較例を示す図である。
【0046】
改質層形成ステップST4では、制御ユニット60は、所定の改質層確認タイミングであるか否かを確認する(ステップST6)。改質層確認タイミングは、分割予定ライン3に対する改質層100の相対的な位置を確認するタイミングである。実施形態1において、改質層確認タイミングは、予め定められた所定数(例えば、5又は10等)の分割予定ライン3に改質層100を形成する毎であるが、本発明では、これらに限定されない。改質層形成ステップST4では、制御ユニット60は、改質層確認タイミングではないと判定する(ステップST6:No)と、ステップST6を繰り返す。制御ユニット60は、改質層確認タイミングであると判定する(ステップST6:Yes)と、改質層確認ステップST7に進む。即ち、実施形態1に係る被加工物の加工方法は、改質層確認ステップST7を備える。
【0047】
改質層確認ステップST7は、被加工物1の裏面7側から赤外線カメラ50で改質層100を撮像し、分割予定ライン3に対する改質層100の相対的な位置を確認するステップである。改質層確認ステップST7では、制御ユニット60は、改質層100が形成されたばかりの分割予定ライン3上に座標記憶ステップST2,ST3において座標を記憶したTEG5が有るか否かを判定する。
【0048】
改質層確認ステップST7では、制御ユニット60は、改質層100が形成されたばかりの分割予定ライン3上に座標記憶ステップST2,ST3において座標を記憶したTEG5が有ると判定すると、記憶したTEG5のうちいずれかのTEG5の上方に赤外線カメラ50を位置付けて、赤外線カメラ50で被加工物1の裏面7側に照明光を照射しながら撮像する。また、改質層確認ステップST7では、制御ユニット60は、改質層100が形成されたばかりの分割予定ライン3上に座標記憶ステップST2,ST3において座標を記憶したTEG5が無いと判定すると、座標記憶ステップST2,ST3において座標を記憶したTEG5が存在している分割予定ライン3のうち最も最近に改質層100を形成した分割予定ライン3を抽出する。改質層確認ステップST7では、制御ユニット60は、抽出した分割予定ライン3に存在するTEG5のうちいずれかのTEG5の上方に赤外線カメラ50を位置付けて、赤外線カメラ50で被加工物1の裏面7側に照明光を照射しながら撮像する。
【0049】
また、改質層形成ステップST4では、制御ユニット60は、TEG5が形成されている領域のX軸方向の座標及びY軸方向の座標を記憶し、記憶したX軸方向の座標及びY軸方向の座標を用いて改質層確認ステップST7をするように設定してもよい。ゆえに、本発明では、制御ユニット60は、改質層形成ステップST4において、改質層確認タイミングであるか否かを確認するステップST6を経ず、事前に改質層確認ステップST7をすべきタイミング、位置を定めていても良い。
【0050】
このように、赤外線カメラ50が、改質層確認ステップST7で撮像する領域は、第1方向座標記憶ステップST2及び第2方向座標記憶ステップST3とで記憶されたTEG5のX軸方向及びY軸方向の中央の座標である。また、改質層確認ステップST7において、被加工物1の赤外線カメラ50で撮像される領域は、被加工物1の表面2にTEG5が形成されている領域である。
【0051】
すると、TEG5が赤外線を反射するので、
図10に示す赤外線カメラ50が撮像した画像500では、改質層100から反射された赤外線の受光量がTEG5から反射された赤外線の受光量よりも少なくなる。また、実施形態1では、TEG5が設けられていない分割予定ライン3が反射し撮像素子が受光する赤外線の受光量よりも、改質層100が反射し撮像素子が受光する赤外線の受光量が少ない。
【0052】
実施形態1において、改質層確認ステップST7では、
図10に示すように、制御ユニット60は、座標記憶ステップST2,ST3と同様に、赤外線カメラ50が撮像した画像500のうち受光量が閾値を超える領域を白(
図10中に白地で示す)とし、閾値以下の領域を黒(
図10中に密な平行斜線で示す)とする。また、制御ユニット60は、TEG5が設けられていない分割予定ライン3が反射し撮像素子が受光する赤外線の受光量よりも小さく、かつ、改質層100が反射し撮像素子が受光する赤外線の受光量よりも大きな値を第2の閾値とする。このために、第2の閾値は、閾値よりも小さい。制御ユニット60は、赤外線カメラ50が撮像した画像500のうち受光量が閾値以下の領域のうち第2の閾値を下回る領域を
図10に粗な平行斜線で示すように改質層100として検出する。すると、赤外線カメラ50が撮像した画像500は、TEG5と改質層100とが重なっている。こうして、改質層確認ステップST7では、制御ユニット60は、赤外線カメラ50が撮像した画像500からTEG5及び分割予定ライン3を検出する。
【0053】
改質層確認ステップST7では、制御ユニット60は、分割予定ラインの幅方向の中央の位置と、改質層100の幅方向の中央の位置とを算出して、分割予定ライン3に対する改質層100の相対的な位置を確認して、ステップST6に戻る。制御ユニット60は、分割予定ライン3の幅方向の中央の位置と、改質層100の幅方向の中央の位置とのY軸方向のずれが零となるように、以後の改質層100の形成時にY軸移動ユニット40等を制御する。このように、改質層確認ステップST7の前に、制御ユニット60は、被加工物1の表面2のTEG5が形成されている領域のX軸方向及びY軸方向の位置を記憶しており、改質層確認ステップST7では、記憶したTEGが形成されている領域を赤外線カメラ50に撮像させて、分割予定ライン3に対する改質層1000の相対的な位置を確認する。
【0054】
実施形態1に係る被加工物の加工方法は、改質層確認ステップST7において赤外線カメラ50でTEG5が設けられている領域を撮像するので、赤外線カメラ50が撮像して得た画像500では、
図10に示すように、TEG5に改質層100が重なる。なお、実施形態1では、改質層100の幅方向の両縁がTEG5に重なっている。このために、実施形態1に係る被加工物の加工方法は、改質層確認ステップST7において赤外線カメラ50が撮像して得た画像500では、
図10に示すように、
図11に示すTEG5が設けられていない領域を撮像して得た画像501よりも改質層100を鮮明に認識でき、改質層100の幅方向の両縁を正確に検出することができる。その結果、被加工物の加工方法は、改質層確認ステップST7における改質層100の検出精度の低下を抑制することができる。なお、
図11は、
図10と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0055】
また、被加工物の加工方法は、改質層確認ステップST7で赤外線カメラ50が撮像する領域が座標記憶ステップST2,ST3で記憶されたTEG5が形成されている領域のX軸方向及びY軸方向の座標である。このために、被加工物の加工方法は、改質層確認ステップST7においてTEG5が形成されている領域を確実に撮像でき、TEG5に改質層100が重なる画像500に基づいて分割予定ライン3に対する改質層100の相対的な位置を確認することができる。
【0056】
また、被加工物の加工方法は、座標記憶ステップST2,ST3において、画像300,301における白と黒の割合からTEG5の有無を判断するので、TEG5が有る位置と無い位置とを区別することができる。
【0057】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る被加工物の加工方法を図面に基づいて説明する。
図12は、実施形態2に係る被加工物の加工方法の第1方向座標記憶ステップ及び第2方向座標記憶ステップにおいて被加工物の赤外線カメラが撮像する領域を示す平面図である。
図12は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0058】
実施形態2に係る被加工物の加工方法は、座標記憶ステップST2,ST3が異なること以外、実施形態1と同じである。実施形態2に係る被加工物の加工方法は、第1方向座標記憶ステップST2において、制御ユニット60は、
図12に一点鎖線400-2で囲んで示すように、複数の分割予定ライン3を赤外線カメラ50で撮像し、各分割予定ライン3のTEG5のX軸方向の座標を記憶する。実施形態2に係る被加工物の加工方法は、第1方向座標記憶ステップST2において、制御ユニット60は、撮像した複数の分割予定ライン3に設けられたTEG5のうちX軸方向の座標が最も近いTEG5が設けられたY軸方向と平行な分割予定ライン3を第2方向座標記憶ステップST3において撮像し、TEG5のY軸方向の座標を記憶する。
【0059】
実施形態2に係る被加工物の加工方法は、実施形態1と同様に、改質層確認ステップST7において赤外線カメラ50でTEG5が設けられている領域を撮像するので、改質層確認ステップST7において赤外線カメラ50が撮像して得た画像500では、改質層100を鮮明に認識でき、改質層100の幅方向の両縁を正確に検出することができる。その結果、被加工物の加工方法は、改質層確認ステップST7における改質層100の検出精度の低下を抑制することができる。
【0060】
前述した各実施形態に係る被加工物の加工方法によれば、以下のレーザー加工装置が得られる。
(付記1)
表面に分割予定ラインによって区画された複数のデバイスが形成された被加工物の内部に分割予定ラインに沿って改質層を形成するレーザー加工装置であって、
該被加工物の表面側を保持する保持テーブルと、
該被加工物の裏面側から該分割予定ラインに沿って該被加工物に対して透過性を有するレーザー光線を照射して内部に改質層を形成するレーザー光線照射ユニットと、
該被加工物の裏面側から撮像する赤外線カメラと、
各構成要素を制御する制御ユニットと、を備え、
該制御ユニットは、
該被加工物の表面の金属部品が形成されている領域の位置を記憶しており、記憶した該金属部品が形成されている領域を該赤外線カメラに撮像させて、該分割予定ラインに対する該改質層の相対的な位置を確認することを特徴とするレーザー加工装置。
(付記2)
該制御ユニットは、
該赤外線カメラと該保持テーブルとを第1の方向に相対移動させながら任意の該分割予定ラインを撮像して金属部品が形成されている第1の方向の座標を、該金属部品が形成されている領域として記憶し、
該金属部品が形成されている領域の第1の方向の座標に該赤外線カメラの第1の方向の位置を合わせた状態で、該赤外線カメラと該保持テーブルとを第1の方向に交差する第2の方向に相対移動させながら金属部品が形成されている第2の方向の座標を、該金属部品が形成されている領域として記憶する
ことを特徴とする付記1に記載のレーザー加工装置。
【0061】
上記レーザー加工装置は、各実施形態に係る被加工物の加工方法と同様に、分割予定ラインに対する改質層の相対的な位置を確認する際に、赤外線カメラで金属部品が設けられている領域を撮像するので、赤外線カメラが撮像して得た画像では、改質層を鮮明に認識でき、改質層の幅方向の両縁を正確に検出することができる。その結果、レーザー加工装置は、分割予定ラインに対する改質層の相対的な位置を確認する際に、改質層の検出精度の低下を抑制することができる。
【0062】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。なお、前述した実施形態1及び実施形態2では、各TEG5が一つの金属部品であるが、本発明では、
図13に示すように、互いの間の間隔8が所定距離以下の複数のTEG5-2を一つのTEG5として検出しても良い。また、前述した実施形態1及び実施形態2では、改質層確認ステップST7において、改質層100の幅方向の両縁がTEG5と重なっているが、本発明では、改質層100の幅が予め定められているのであれば、
図14に示すように、改質層100の幅方向の一方の縁がTEG5に重なっていれば良い。なお、
図13は、
図1に示す被加工物の変形例の要部を示す平面図である。
図14は、実施形態1及び実施形態2の変形例に係る被加工物の加工方法の改質層確認ステップにおいて赤外線カメラが撮像した画像の一例を示す図である。なお、
図13及び
図14は、実施形態1及び実施形態2と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0063】
また、本発明では、座標記憶ステップST2,ST3間で軸心回りに被加工物1を90度回転させても良い。この場合、第2方向座標記憶ステップST3では、制御ユニット60が、赤外線カメラ50で照射光を照射して分割予定ライン3を撮像しながら赤外線カメラ50が分割予定ライン3に沿って移動するようにX軸移動ユニット30により保持テーブル12をX軸方向に移動させて、TEG5が形成されている領域の被加工物1のY軸方向の座標を検出する。
【符号の説明】
【0064】
1 被加工物
2 表面
3 分割予定ライン
4 デバイス
5 TEG(金属部品)
7 裏面
12 保持テーブル
50 赤外線カメラ
100 改質層
200 レーザー光線
ST1 保持ステップ
ST2 第1方向座標記憶ステップ
ST3 第2方向座標記憶ステップ
ST4 改質層形成ステップ
X 第1の方向
Y 第2の方向