(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】被加工物の加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/08 20140101AFI20220908BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20220908BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
B23K26/08 D
B23K26/53
H01L21/78 B
H01L21/78 F
(21)【出願番号】P 2018228469
(22)【出願日】2018-12-05
【審査請求日】2021-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 健太呂
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-138951(JP,A)
【文献】特開2018-32825(JP,A)
【文献】特開2018-120913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能なチャックテーブルに保持された被加工物を180度の回転範囲内で加工手段によって環状に加工する被加工物の加工方法であって、
該被加工物を保持する該チャックテーブルを180度回転させながら該加工手段によって被加工物に第1の弧状分割ラインを形成する第1加工ステップと、
該被加工物の中心を対称点に点対称の位置に該チャックテーブルと該加工手段とを相対的に移動させる移動ステップと、
該被加工物を保持する該チャックテーブルを180度回転させながら該加工手段によって被加工物に第1の弧状分割ラインと対向する第2の弧状分割ラインを形成し、環状の分割ラインを形成する第2加工ステップと、
を備える事を特徴とする被加工物の加工方法。
【請求項2】
該第2加工ステップは、該チャックテーブルを該第1加工ステップと逆方向に180度回転させながら行うことを特徴とする請求項1に記載の被加工物の加工方法。
【請求項3】
該移動ステップの実施の前または後に、該チャックテーブルを該第1加工ステップと逆方向に180度回転させ、該第1加工ステップ実施前の角度に戻す逆回転ステップを備え、該第2加工ステップの該チャックテーブルの回転方向は該第1加工ステップと同方向であることを特徴とする請求項1に記載の被加工物の加工方法。
【請求項4】
該加工手段は、
該被加工物に対して吸収性を有する波長のレーザー光線を照射することを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の被加工物の加工方法。
【請求項5】
該加工手段は、
該被加工物に対して透過性を有する波長のレーザー光線を該レーザー光線の集光点が被加工物の内部に位置付けられた状態で照射し、該被加工物の内部に分割起点となる改質層を形成することを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の被加工物の加工方法。
【請求項6】
該加工手段は、回転可能なスピンドルに保持された切削ブレードであり、該切削ブレードを該被加工物に所定深さ切り込んで加工することを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の被加工物の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を環状に加工する加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の出願人は、被加工物を360度回転しないチャックテーブルで保持して、被加工物を加工する加工装置を提案している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示された加工装置は、被加工物を環状に加工したい場合、装置を改造する必要があり費用と時間がかかる。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、コストの高騰を招くことなく被加工物を環状に加工することができる被加工物の加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の被加工物の加工方法は、回転可能なチャックテーブルに保持された被加工物を180度の回転範囲内で加工手段によって環状に加工する被加工物の加工方法であって、該被加工物を保持する該チャックテーブルを180度回転させながら該加工手段によって被加工物に第1の弧状分割ラインを形成する第1加工ステップと、該被加工物の中心を対称点に点対称の位置に該チャックテーブルと該加工手段とを相対的に移動させる移動ステップと、該被加工物を保持する該チャックテーブルを180度回転させながら該加工手段によって被加工物に第1の弧状分割ラインと対向する第2の弧状分割ラインを形成し、環状の分割ラインを形成する第2加工ステップと、を備えることを特徴とする。
【0007】
前記被加工物の加工方法において、該第2加工ステップは、該チャックテーブルを該第1加工ステップと逆方向に180度回転させながら行っても良い。
【0008】
前記被加工物の加工方法において、該移動ステップの実施の前または後に、該チャックテーブルを該第1加工ステップと逆方向に180度回転させ、該第1加工ステップ実施前の角度に戻す逆回転ステップを備え、該第2加工ステップの該チャックテーブルの回転方向は該第1加工ステップと同方向であっても良い。
【0009】
前記被加工物の加工方法において、該加工手段は、該被加工物に対して吸収性を有する波長のレーザー光線を照射しても良い。
【0010】
前記被加工物の加工方法において、該加工手段は、該被加工物に対して透過性を有する波長のレーザー光線を該レーザー光線の集光点が被加工物の内部に位置付けられた状態で照射し、該被加工物の内部に分割起点となる改質層を形成しても良い。
【0011】
前記被加工物の加工方法において、該加工手段は、回転可能なスピンドルに保持された切削ブレードであり、該切削ブレードを該被加工物に所定深さ切り込んで加工しても良い。
【発明の効果】
【0012】
本願発明の被加工物の加工方法は、コストの高騰を招くことなく被加工物を環状に加工することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る被加工物の加工方法の加工対象の被加工物の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る被加工物の加工方法により加工される直前の被加工物の断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る被加工物の加工方法を実施する加工装置の一例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る被加工物の加工方法の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図4に示された被加工物の加工方法の第1加工ステップ開始直後の被加工物とレーザー光線照射ユニットとを模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、
図4に示された被加工物の加工方法の第1加工ステップ後の被加工物とレーザー光線照射ユニットとを模式的に示す図である。
【
図7】
図7は、
図4に示された被加工物の加工方法の移動ステップ後の被加工物とレーザー光線照射ユニットとを模式的に示す図である。
【
図8】
図8は、
図4に示された被加工物の加工方法の第2加工ステップ開始直後の被加工物とレーザー光線照射ユニットとを模式的に示す図である。
【
図9】
図9は、
図4に示された被加工物の加工方法の第2加工ステップ後の被加工物とレーザー光線照射ユニットとを模式的に示す図である。
【
図10】
図10は、実施形態2に係る被加工物の加工方法を実施する加工装置の一例を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、実施形態2に係る被加工物の加工方法の第1加工ステップ開始直後の被加工物と切削ユニットとを模式的に示す図である。
【
図12】
図12は、実施形態2に係る被加工物の加工方法の第1加工ステップ後の被加工物と切削ユニットとを模式的に示す図である。
【
図13】
図13は、実施形態2に係る被加工物の加工方法の第2加工ステップ開始直後の被加工物と切削ユニットとを模式的に示す図である。
【
図14】
図14は、実施形態2に係る被加工物の加工方法の第2加工ステップ後の被加工物と切削ユニットとを模式的に示す図である。
【
図15】
図15は、実施形態3に係る被加工物の加工方法の流れを示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、
図15に示された被加工物の加工方法の第1加工ステップ後の被加工物とレーザー光線照射ユニットとを模式的に示す図である。
【
図17】
図17は、
図15に示された被加工物の加工方法の移動ステップ後の被加工物とレーザー光線照射ユニットとを模式的に示す図である。
【
図18】
図18は、
図15に示された被加工物の加工方法の逆転ステップ後の被加工物とレーザー光線照射ユニットとを模式的に示す図である。
【
図19】
図19は、
図15に示された被加工物の加工方法の第2加工ステップ開始直後の被加工物とレーザー光線照射ユニットとを模式的に示す図である。
【
図20】
図20は、
図15に示された被加工物の加工方法の第2加工ステップ後の被加工物とレーザー光線照射ユニットとを模式的に示す図である。
【
図21】
図21は、実施形態4に係る被加工物の加工方法の第1加工ステップ後の被加工物と切削ユニットとを模式的に示す図である。
【
図22】
図22は、実施形態4に係る被加工物の加工方法の移動ステップ後の被加工物と切削ユニットとを模式的に示す図である。
【
図23】
図23は、実施形態4に係る被加工物の加工方法の逆転ステップ後の被加工物と切削ユニットとを模式的に示す図である。
【
図24】
図24は、実施形態4に係る被加工物の加工方法の第2加工ステップ後の被加工物と切削ユニットとを模式的に示す図である。
【
図25】
図25は、実施形態1から実施形態4の変形例1に係る被加工物の加工方法を実施する加工装置のレーザー光線照射ユニットを示す図である。
【
図26】
図26は、実施形態1から実施形態4の変形例2に係る被加工物の加工方法を実施する加工装置の切削ユニットを示す図である。
【
図27】
図27は、実施形態1から実施形態4の変形例3に係る被加工物の加工方法を実施する加工装置の切削ユニットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0015】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る被加工物の加工方法を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係る被加工物の加工方法の加工対象の被加工物の一例を示す斜視図である。
図2は、実施形態1に係る被加工物の加工方法により加工される直前の被加工物の断面図である。
図3は、実施形態1に係る被加工物の加工方法を実施する加工装置の一例を示す斜視図である。
図4は、実施形態1に係る被加工物の加工方法の流れを示すフローチャートである。
【0016】
実施形態1に係る被加工物の加工方法は、
図1に示す被加工物1の加工方法である。実施形態1では、被加工物1は、シリコン、サファイア、又はガリウムヒ素などを基板2とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハである。被加工物1は、
図1に示すように、交差する複数の分割予定ライン3で区画された基板2の表面4の複数の領域それぞれにデバイス5が形成されたデバイス領域6と、デバイス領域6を囲繞しかつデバイス5が形成されていない外周余剰領域7とを備えている。被加工物1は、
図2に示すように、外縁部に基板2の表面4から裏面8に至る断面円弧状の面取り部9が形成されている。
【0017】
デバイス5は、例えば、IC(Integrated Circuit)、又はLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサである。実施形態1において、被加工物1は、
図2に示すように、デバイス領域6の裏面8側が薄化されて、デバイス領域6の裏面8側に円形凹部10が形成され、外周余剰領域7が薄化されずに環状凸部11が形成されるとともに、デバイス領域6の裏面8側に金属膜12が形成されて、実施形態1に係る被加工物の加工方法が施される。実施形態1において、被加工物1は、いわゆるTAIKO(登録商標)研削されたウェーハである。
【0018】
(加工装置)
実施形態1に係る被加工物の加工方法は、
図3に示される加工装置20により実施される。実施形態1において、加工装置20は、被加工物1をアブレーション加工するレーザー加工装置である。加工装置20は、
図3に示すように、被加工物1を保持面31で保持するチャックテーブル30と、加工手段であるレーザー光線照射ユニット40と、チャックテーブル30を保持面31と平行な方向であるX方向に加工送りさせる加工送りユニットであるX軸移動ユニット50と、チャックテーブル30を保持面31と平行でかつX方向と直交する方向であるY方向に割り出し送りさせる割り出し送りユニットであるY軸移動ユニット60と、制御ユニット100とを備える。
【0019】
チャックテーブル30は、図示しない保護部材を介して被加工物1の表面4側を保持面31で保持する。保持面31は、透過性を有する樹脂などから構成され、図示しない真空吸引源と接続された図示しない吸引溝が形成される。チャックテーブル30は、保持面31上に載置された被加工物1を吸引保持する。実施形態1では、保持面31は、水平方向と平行な平面である。
【0020】
また、チャックテーブル30は、回転ユニット32によりZ方向と平行な中心軸線回りに180度を超え、360度未満の範囲で回転される。チャックテーブル30及び回転ユニット32は、X軸移動ユニット50によりX方向に移動されかつY軸移動ユニット60によりY方向に移動される筐体33に設置されている。回転ユニット32は、筐体33の側面に固定されたモータ34と、モータ34の出力軸に連結されたプーリー35と、チャックテーブル30の外周に巻回されたベルト36とを備えている。モータ34を回転すると、プーリー35及びベルト37を介してチャックテーブル30が回転される。また、実施形態1では、回転ユニット32は、中心軸線回りの一方向101と、一方向101の逆方向の他方向102との双方において、チャックテーブル30を220度回転させることが可能である。
【0021】
X軸移動ユニット50、及びY軸移動ユニット60は、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ51,61、ボールねじ51,61を軸心回りに回転させる周知のパルスモータ52,62及び筐体33をX方向、又はY方向に移動自在に支持する周知のガイドレール53,63を備える。
【0022】
また、加工装置20は、チャックテーブル30のX方向の位置を検出するためX方向位置検出ユニット54と、チャックテーブル30のY方向の位置を検出するためのY方向位置検出ユニット64とを備える。X方向位置検出ユニット54及びY方向位置検出ユニット64は、X方向、又はY方向と平行に設置されたリニアスケール55,65と、X方向、又はY方向にチャックテーブル30とともに移動するリニアスケール55,65を読み取る図示しない読み取りヘッドとにより構成することができる。X方向位置検出ユニット54、及びY方向位置検出ユニット64は、検出結果を制御ユニット100に出力する。
【0023】
レーザー光線照射ユニット40は、被加工物1に対して吸収性を有する波長のレーザー光線41(
図5等に示す)をチャックテーブル30に保持した被加工物1に照射するユニットである。また、レーザー光線照射ユニット40は、レーザー光線41を被加工物1に照射し、被加工物1をアブレーション加工するユニットである。レーザー光線照射ユニット40は、加工装置20の装置本体21から立設した柱部22に連なった支持柱23の先端に取り付けられている。
【0024】
また、加工装置20は、チャックテーブル30に保持された被加工物1をチャックテーブル30の下方から撮像する撮像ユニット70を筐体33内に備えている。即ち、撮像ユニット70は、チャックテーブル30の下方に配置されて、チャックテーブル30越しにチャックテーブル30に保持された被加工物1を撮像する。撮像ユニット70は、チャックテーブル30に保持された被加工物1を撮像するCCD(Charge Coupled Device)カメラや赤外線カメラにより構成されて、撮像して得た画像を制御ユニット100に出力する。
【0025】
制御ユニット100は、加工装置20の上述した構成要素をそれぞれ制御して、被加工物1に対する加工動作を加工装置20に実施させるものである。なお、制御ユニット100は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット100の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、加工装置20を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介して加工装置20の上述した構成要素に出力する。制御ユニット100は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される図示しない表示ユニットと、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる図示しない入力ユニットと、図示しない報知ユニットとが接続されている。入力ユニットは、表示ユニットに設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。
【0026】
実施形態1に係る被加工物の加工方法は、
図3に示す加工装置20により実施される、即ち加工装置20の加工動作の一部である。実施形態1において、被加工物1の加工方法は、円形凹部10の外縁に沿って全周に亘ってレーザー光線41を照射して、アブレーション加工を施して、被加工物1の円形凹部10と環状凸部11とを分割する方法である。
【0027】
オペレータが加工内容情報を制御ユニット100に登録し、被加工物1の表面4側を保護部材を介してチャックテーブル30の保持面31に載置し、オペレータから加工動作の開始指示があると、制御ユニット100は、加工動作を開始する。
【0028】
加工動作では、制御ユニット100は、チャックテーブル30の保持面31に被加工物1を吸引保持し、撮像ユニット70によりチャックテーブル30に保持された被加工物1を撮像させる。制御ユニット100が、チャックテーブル30に保持された被加工物1の分割予定ライン3と、レーザー光線照射ユニット40との位置合わせを行なうためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、アライメントを遂行する。
【0029】
そして、制御ユニット100は、加工内容情報に基づいて、X軸移動ユニット50とY軸移動ユニット60と回転ユニット32により、レーザー光線照射ユニット40と被加工物1とを相対的に移動させて、被加工物1に実施形態1に係る被加工物の加工方法を実施する。被加工物の加工方法は、回転可能なチャックテーブル30に保持された被加工物1を180度の回転範囲内でレーザー光線照射ユニット40によって環状に加工する方法であって、
図4に示すように、第1加工ステップST1と、移動ステップST2と、第2加工ステップST3とを備える。
【0030】
(第1加工ステップ)
図5は、
図4に示された被加工物の加工方法の第1加工ステップ開始直後の被加工物とレーザー光線照射ユニットとを模式的に示す図である。
図6は、
図4に示された被加工物の加工方法の第1加工ステップ後の被加工物とレーザー光線照射ユニットとを模式的に示す図である。なお、
図5及び
図6は、被加工物1の形状を簡略化して円板状に示すが、実施形態1では、実際には、被加工物1は、円形凹部10と環状凸部11とを備えている。
【0031】
第1加工ステップST1は、被加工物1を保持するチャックテーブル30を180度回転させながらレーザー光線照射ユニット40によって被加工物1に第1の弧状分割ライン201を形成するステップである。第1加工ステップST1では、制御ユニット100は、円形凹部10の外縁のうちの予め設定された所定の加工開始点13をレーザー光線照射ユニット40の下方に位置付ける。なお、加工開始点13は、円形凹部10の外縁のうちの当該加工開始点13から中心軸線回りにチャックテーブル30が一方向101と他方向102との双方に180度回転可能な位置である。
【0032】
第1加工ステップST1では、制御ユニット100は、
図6に示すように、回転ユニット32にチャックテーブル30を中心軸線回りの一方向101に回転させながらレーザー光線照射ユニット40にレーザー光線41を円形凹部10の外縁に沿って照射させる。第1加工ステップST1では、制御ユニット100は、チャックテーブル30が180度回転すると、回転ユニット32にチャックテーブル30の回転を停止するとともに、レーザー光線照射ユニット40にレーザー光線41の照射を停止させる。こうして、第1加工ステップST1では、
図6に示すように、加工装置20は、加工開始点13から加工終了点14に亘って、円形凹部10の外縁のうちの半周上に第1の弧状分割ライン201を形成する。なお、加工開始点13と、加工終了点14とは、被加工物1の中心15に関する点対象となる位置となっている。また、実施形態1において、第1の弧状分割ライン201は、基板2を貫通して、基板2を円形凹部10と環状凸部11とに分割する溝である。被加工物の加工方法は、第1加工ステップST1実施後、移動ステップST2に進む。
【0033】
(移動ステップ)
図7は、
図4に示された被加工物の加工方法の移動ステップ後の被加工物とレーザー光線照射ユニットとを模式的に示す図である。なお、
図7は、被加工物1の形状を簡略化して円板状に示すが、実施形態1では、実際には、被加工物1は、円形凹部10と環状凸部11とを備えている。
【0034】
移動ステップST2は、被加工物1の中心15を対称点に点対称の位置にチャックテーブル30とレーザー光線照射ユニット40とを相対的に移動させるステップである。移動ステップST2では、制御ユニット100は、移動ユニット50,60にチャックテーブル30を移動させて、加工開始点13をレーザー光線照射ユニット40の下方に位置付けさせる。実施形態1では、制御ユニット100は、X軸移動ユニット50とY軸移動ユニット60とのうち少なくとも一方にX方向とY方向とのうち少なくとも一方にチャックテーブル30を移動させて、
図7に示すように、加工開始点13をレーザー光線照射ユニット40の下方に位置付ける。被加工物の加工方法は、移動ステップST2実施後、第2加工ステップST3に進む。
【0035】
(第2加工ステップ)
図8は、
図4に示された被加工物の加工方法の第2加工ステップ開始直後の被加工物とレーザー光線照射ユニットとを模式的に示す図である。
図9は、
図4に示された被加工物の加工方法の第2加工ステップ後の被加工物とレーザー光線照射ユニットとを模式的に示す図である。なお、
図8及び
図9は、被加工物1の形状を簡略化して円板状に示すが、実施形態1では、実際には、被加工物1は、円形凹部10と環状凸部11とを備えている。
【0036】
第2加工ステップST3は、被加工物1を保持するチャックテーブル30を180度回転させながらレーザー光線照射ユニット40によって被加工物1に第1の弧状分割ライン201と中心15を挟んで対向する第2の弧状分割ライン202を形成し、環状の分割ライン200を形成するステップである。第2加工ステップST3では、制御ユニット100は、
図8に示すように、回転ユニット32にチャックテーブル30を中心軸線回りの一方向101の逆方向の他方向102に回転させながらレーザー光線照射ユニット40にレーザー光線41を円形凹部10の外縁に沿って照射させる。第2加工ステップST3では、制御ユニット100は、チャックテーブル30が180度回転すると、回転ユニット32にチャックテーブル30の回転を停止するとともに、レーザー光線照射ユニット40にレーザー光線41の照射を停止させる。
【0037】
こうして、第2加工ステップST3では、
図9に示すように、加工装置20は、加工開始点13から加工終了点14に亘って、円形凹部10の外縁のうちの半周上に第1の弧状分割ライン201に連続した第2の弧状分割ライン202を形成する。実施形態1において、第2の弧状分割ライン202は、基板2を貫通して、基板2を円形凹部10と環状凸部11とに分割し、第1の弧状分割ライン201と分割ライン200を構成する溝である。このように、実施形態1では、第2加工ステップST3は、チャックテーブル30を第1加工ステップST1と逆方向の他方向102に180度回転させながらレーザー光線照射ユニット40で加工を行う。被加工物の加工方法は、第2加工ステップST3実施後、終了し、制御ユニット100は、チャックテーブル30をオペレータにより被加工物1が載置された位置まで移動させた後、被加工物1の吸引保持を解除する。
【0038】
実施形態1に係る被加工物の加工方法は、移動ステップST2において、チャックテーブル30を移動させて、レーザー光線照射ユニット40の下方に被加工物1の加工開始点13を位置付けるので、各加工ステップST1,ST3において、チャックテーブル30を180度回転することで被加工物1の360度全周に亘る加工を行うことができる。その結果、被加工物の加工方法は、チャックテーブル30の回転可能な範囲が360度未満であっても、加工装置20の改造等を行うことなく、被加工物1の360度全周に亘る加工を行うことができるので、コストの高騰を招くことなく被加工物1を環状に加工することができるという効果を奏する。
【0039】
また、実施形態1に係る被加工物の加工方法は、加工ステップST1,ST3においてチャックテーブル30を回転する方向が互いに逆方向であるので、各加工ステップST1,ST3において、チャックテーブル30を180度回転することで被加工物1の360度全周に亘る加工を行うことができる。
【0040】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る被加工物の加工方法を図面に基づいて説明する。
図10は、実施形態2に係る被加工物の加工方法を実施する加工装置の一例を示す斜視図である。
図11は、実施形態2に係る被加工物の加工方法の第1加工ステップ開始直後の被加工物と切削ユニットとを模式的に示す図である。
図12は、実施形態2に係る被加工物の加工方法の第1加工ステップ後の被加工物と切削ユニットとを模式的に示す図である。
図13は、実施形態2に係る被加工物の加工方法の第2加工ステップ開始直後の被加工物と切削ユニットとを模式的に示す図である。
図14は、実施形態2に係る被加工物の加工方法の第2加工ステップ後の被加工物と切削ユニットとを模式的に示す図である。なお、
図11、
図12、
図13及び
図14は、被加工物1の形状を簡略化して円板状に示すが、実施形態2では、実際には、被加工物1は、円形凹部10と環状凸部11とを備えている。また、
図10から
図14は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0041】
実施形態2に係る被加工物の加工方法は、
図10に示される加工装置20-2により実施される。実施形態2において、加工装置20-2は、被加工物1を切削加工する切削装置である。加工装置20-2は、
図10に示すように、レーザー光線照射ユニット40の代わりに切削ユニット80を備え、切削ユニット80をZ方向に切り込み送りさせる割り出し送りユニットであるZ軸移動ユニット90と、切削ユニット80のZ方向の位置を検出するため図示しないZ方向位置検出ユニットを備えること以外、加工装置20と構成が同等である。
【0042】
切削ユニット80は、
図10に示すように、モータにより軸心回りに回転可能な図示しないスピンドルに保持された加工手段である切削ブレード81をチャックテーブル30に保持した被加工物1に所定深さ切り込んで、被加工物1を加工するユニットである。実施形態2において、切削ユニット80の切削ブレード81は、支持柱23の先端に配置されている。
【0043】
Z軸移動ユニット90は、柱部22に軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ91、ボールねじ91を軸心回りに回転させる周知のパルスモータ92及び切削ユニット80及び支持柱23をZ方向に移動自在に支持する周知のガイドレール93を備える。Z方向位置検出ユニットは、Z方向と平行に設置された図示しないリニアスケールと、Z方向に切削ユニット80及び支持柱23とともに移動するリニアスケールを読み取る図示しない読み取りヘッドとにより構成することができる。Z方向位置検出ユニットは、検出結果を制御ユニット100に出力する。
【0044】
実施形態2に係る被加工物の加工方法は、
図10に示す加工装置20-2に実施される。加工装置20-2は、加工装置20と同様に、オペレータにより加工内容情報が登録され、オペレータから加工動作の開始指示があると、チャックテーブル30に保持された被加工物1の分割予定ライン3と、切削ユニット80の切削ブレード81との位置合わせを行なうためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、アライメント等を遂行する。
【0045】
そして、加工装置20-2の制御ユニット100は、被加工物1に実施形態2に係る被加工物の加工方法を実施する。被加工物の加工方法は、実施形態1と同様に、第1加工ステップST1と、移動ステップST2と、第2加工ステップST3とを備える。
【0046】
(第1加工ステップ)
第1加工ステップST1では、制御ユニット100は、円形凹部10の外縁のうちの加工開始点13をスピンドルにより回転された切削ユニット80の切削ブレード81の下方に位置付ける。なお、実施形態2では、切削ブレード81の両表面をチャックテーブル30に保持された被加工物1の接線と平行に位置付ける。
【0047】
第1加工ステップST1では、制御ユニット100は、
図11に示すように、スピンドルにより回転された切削ユニット80の切削ブレード81を所定深さである保護部材に切り込む高さまで下降させて、切削ブレード81を被加工物1の加工開始点13に切り込ませるとともに、回転ユニット32にチャックテーブル30を中心軸線回りの一方向101に回転させる。第1加工ステップST1では、制御ユニット100は、チャックテーブル30が180度回転すると、回転ユニット32にチャックテーブル30の回転を停止するとともに、切削ユニット80を切削ブレード81が被加工物1から離れる高さまで上昇させる。
【0048】
こうして、第1加工ステップST1では、
図12に示すように、加工装置20は、加工開始点13から加工終了点14に亘って、円形凹部10の外縁のうちの半周上に第1の弧状分割ライン201を形成する。被加工物の加工方法は、第1加工ステップST1実施後、移動ステップST2に進む。
【0049】
(移動ステップ)
移動ステップST2では、制御ユニット100は、移動ユニット50,60にチャックテーブル30を移動させて、加工開始点13を切削ユニット80の下方に位置付けさせる。実施形態2では、制御ユニット100は、X軸移動ユニット50とY軸移動ユニット60とのうち少なくとも一方にX方向とY方向とのうち少なくとも一方にチャックテーブル30を移動させて、加工開始点13を切削ユニット80の下方に位置付ける。なお、実施形態2では、切削ブレード81の両表面をチャックテーブル30に保持された被加工物1の接線と平行に位置付ける。被加工物の加工方法は、移動ステップST2実施後、第2加工ステップST3に進む。
【0050】
(第2加工ステップ)
第2加工ステップST3では、制御ユニット100は、
図13に示すように、スピンドルにより回転された切削ユニット80の切削ブレード81を保護部材に切り込む高さまで下降させて、切削ブレード81を被加工物1の加工開始点13に切り込ませるとともに、回転ユニット32にチャックテーブル30を中心軸線回りの一方向101の逆方向の他方向102に回転させる。第2加工ステップST3では、制御ユニット100は、チャックテーブル30が180度回転すると、回転ユニット32にチャックテーブル30の回転を停止するとともに、切削ユニット80を切削ブレード81が被加工物1から離れる高さまで上昇させる。
【0051】
こうして、第2加工ステップST3では、
図14に示すように、加工装置20は、加工開始点13から加工終了点14に亘って、円形凹部10の外縁のうちの半周上に第1の弧状分割ライン201に連続した第2の弧状分割ライン202を形成する。このように、実施形態2では、第2加工ステップST3は、チャックテーブル30を第1加工ステップST1と逆方向の他方向102に180度回転させながら切削ユニット80で加工を行う。被加工物の加工方法は、第2加工ステップST3実施後、終了し、制御ユニット100は、チャックテーブル30をオペレータにより被加工物1が載置された位置まで移動させた後、被加工物1の吸引保持を解除する。
【0052】
実施形態2に係る被加工物の加工方法は、移動ステップST2において、チャックテーブル30を移動させて、切削ユニット80の下方に被加工物1の加工開始点13を位置付けるので、各加工ステップST1,ST3において、チャックテーブル30を180度回転することで被加工物1の360度全周に亘る加工を行うことができる。その結果、被加工物の加工方法は、チャックテーブル30の回転可能な範囲が360度未満であっても、加工装置20の改造等を行うことなく、被加工物1の360度全周に亘る加工を行うことができるので、コストの高騰を招くことなく被加工物1を環状に加工することができるという効果を奏する。
【0053】
また、実施形態2に係る被加工物の加工方法は、加工ステップST1,ST3においてチャックテーブル30を回転する方向が互いに逆方向であるので、各加工ステップST1,ST3において、チャックテーブル30を180度回転することで被加工物1の360度全周に亘る加工を行うことができる。
【0054】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3に係る被加工物の加工方法を図面に基づいて説明する。
図15は、実施形態3に係る被加工物の加工方法の流れを示すフローチャートである。
図16は、
図15に示された被加工物の加工方法の第1加工ステップ後の被加工物とレーザー光線照射ユニットとを模式的に示す図である。
図17は、
図15に示された被加工物の加工方法の移動ステップ後の被加工物とレーザー光線照射ユニットとを模式的に示す図である。
図18は、
図15に示された被加工物の加工方法の逆転ステップ後の被加工物とレーザー光線照射ユニットとを模式的に示す図である。
図19は、
図15に示された被加工物の加工方法の第2加工ステップ開始直後の被加工物とレーザー光線照射ユニットとを模式的に示す図である。
図20は、
図15に示された被加工物の加工方法の第2加工ステップ後の被加工物とレーザー光線照射ユニットとを模式的に示す図である。なお、
図16、
図17、
図18、
図19及び
図20は、被加工物1の形状を簡略化して円板状に示すが、実施形態3では、実際には、被加工物1は、円形凹部10と環状凸部11とを備えている。また、
図15から
図20は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0055】
実施形態3に係る被加工物の加工方法は、実施形態1と同様に、
図3に示される加工装置20により実施され、
図15に示すように、第1加工ステップST1と、移動ステップST2と、逆回転ステップST10と、第2加工ステップST3-3とを備える。
【0056】
(第1加工ステップ)
第1加工ステップST1では、実施形態1と同様に、制御ユニット100は、円形凹部10の外縁のうちの加工開始点13をレーザー光線照射ユニット40の下方に位置付け、回転ユニット32にチャックテーブル30を中心軸線回りの一方向101に回転させながらレーザー光線照射ユニット40にレーザー光線41を円形凹部10の外縁に沿って照射させる。第1加工ステップST1では、実施形態1と同様に、
図16に示すように、加工装置20は、加工開始点13から加工終了点14に亘って第1の弧状分割ライン201を形成する。
【0057】
(移動ステップ)
実施形態3では、制御ユニット100は、実施形態1と同様に、X軸移動ユニット50とY軸移動ユニット60とのうち少なくとも一方にX方向とY方向とのうち少なくとも一方にチャックテーブル30を移動させて、
図17に示すように、加工開始点13をレーザー光線照射ユニット40の下方に位置付ける。被加工物の加工方法は、移動ステップST2実施後、逆回転ステップST10に進む。
【0058】
(逆回転ステップ)
逆回転ステップST10は、移動ステップST2の実施の後に、チャックテーブル30を第1加工ステップST1と逆方向である他方向102に180度回転させ、チャックテーブル30の向きを第1加工ステップST1実施前の角度に戻すステップである。逆回転ステップST10では、制御ユニット100は、回転ユニット32にチャックテーブル30を他方向102に180度に回転させて、
図18に示すように、加工終了点14をレーザー光線照射ユニット40の下方に位置付けさせる。被加工物の加工方法は、逆回転ステップST10実施後、第2加工ステップST3に進む。なお、実施形態3では、被加工物の加工方法は、移動ステップST2の実施の後に逆回転ステップST10を行っているが、本発明では、第1加工ステップST1後でかつ移動ステップST2の実施の前に逆回転ステップST10を行っても良い。
【0059】
(第2加工ステップ)
第2加工ステップST3-3では、制御ユニット100は、
図19に示すように、回転ユニット32にチャックテーブル30を中心軸線回りの一方向101に回転させながらレーザー光線照射ユニット40にレーザー光線41を円形凹部10の外縁に沿って照射させる。第2加工ステップST3-3では、制御ユニット100は、チャックテーブル30が180度回転すると、回転ユニット32にチャックテーブル30の回転を停止するとともに、レーザー光線照射ユニット40にレーザー光線41の照射を停止させる。このように、実施形態3では、第2加工ステップST3-3のチャックテーブル30の回転方向は、第1加工ステップST1と同方向である。
【0060】
こうして、第2加工ステップST3-3では、
図20に示すように、加工装置20は、加工終了点14から加工開始点13に亘って、円形凹部10の外縁のうちの半周上に第1の弧状分割ライン201に連続した第2の弧状分割ライン202を形成し、分割ライン200を形成する。被加工物の加工方法は、第2加工ステップST3-3実施後、終了し、制御ユニット100は、チャックテーブル30をオペレータにより被加工物1が載置された位置まで移動させた後、被加工物1の吸引保持を解除する。
【0061】
実施形態3に係る被加工物の加工方法は、移動ステップST2において、チャックテーブル30を移動させて、レーザー光線照射ユニット40の下方に被加工物1の加工開始点13を位置付け、逆回転ステップST10において、チャックテーブル30を他方向102に回転させて、レーザー光線照射ユニット40の下方に被加工物1の加工終了点14を位置付けるので、各加工ステップST1,ST3-3において、チャックテーブル30を180度回転することで被加工物1の360度全周に亘る加工を行うことができる。その結果、被加工物の加工方法は、チャックテーブル30の回転可能な範囲が360度未満であっても、加工装置20の改造等を行うことなく、被加工物1の360度全周に亘る加工を行うことができるので、コストの高騰を招くことなく被加工物1を環状に加工することができるという効果を奏する。
【0062】
また、実施形態3に係る被加工物の加工方法は、加工ステップST1,ST3-3においてチャックテーブル30を回転する方向が互いに同方向であるので、各加工ステップST1,ST3-3において、チャックテーブル30を180度回転することで被加工物1の360度全周に亘る加工を行うことができる。
【0063】
〔実施形態4〕
本発明の実施形態4に係る被加工物の加工方法を図面に基づいて説明する。
図21は、実施形態4に係る被加工物の加工方法の第1加工ステップ後の被加工物と切削ユニットとを模式的に示す図である。
図22は、実施形態4に係る被加工物の加工方法の移動ステップ後の被加工物と切削ユニットとを模式的に示す図である。
図23は、実施形態4に係る被加工物の加工方法の逆転ステップ後の被加工物と切削ユニットとを模式的に示す図である。
図24は、実施形態4に係る被加工物の加工方法の第2加工ステップ後の被加工物と切削ユニットとを模式的に示す図である。なお、
図21、
図22、
図23及び
図24は、被加工物1の形状を簡略化して円板状に示すが、実施形態4では、実際には、被加工物1は、円形凹部10と環状凸部11とを備えている。また、
図21、
図22、
図23及び
図24は、実施形態2及び実施形態3と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0064】
実施形態4に係る被加工物の加工方法は、
図10に示された加工装置20-2により実施形態3に係る被加工物の加工方法を実施する方法である。実施形態4に係る被加工物の加工方法は、実施形態3と同様に、第1加工ステップST1と、移動ステップST2と、逆回転ステップST10と、第2加工ステップST3-3とを備える。
【0065】
(第1加工ステップ)
第1加工ステップST1では、実施形態2と同様に、
図21示すように、加工装置20は、加工開始点13から加工終了点14に亘って、円形凹部10の外縁のうちの半周上に第1の弧状分割ライン201を形成する。被加工物の加工方法は、第1加工ステップST1実施後、移動ステップST2に進む。
【0066】
(移動ステップ)
移動ステップST2では、制御ユニット100は、実施形態2と同様に、X軸移動ユニット50とY軸移動ユニット60とのうち少なくとも一方にチャックテーブル30をX方向とY方向とのうち少なくとも一方にチャックテーブル30を移動させて、
図22に示すように、加工開始点13を切削ユニット80の切削ブレード81の下方に位置付ける。被加工物の加工方法は、移動ステップST2実施後、逆回転ステップST10に進む。
【0067】
(逆回転ステップ)
逆回転ステップST10では、制御ユニット100は、回転ユニット32にチャックテーブル30を他方向102に180度回転させて、
図23に示すように、加工終了点14を切削ユニット80の切削ブレード81の下方に位置付けさせる。なお、実施形態4では、切削ブレード81の両表面をチャックテーブル30に保持された被加工物1の接線と平行に位置付ける。被加工物の加工方法は、逆回転ステップST10実施後、第2加工ステップST3-3に進む。なお、実施形態4では、被加工物の加工方法は、移動ステップST2の実施後に逆回転ステップST10を行っているが、本発明では、移動ステップST2の実施前に逆回転ステップST10を行っても良い。
【0068】
(第2加工ステップ)
第2加工ステップST3-3では、制御ユニット100は、スピンドルにより回転された切削ユニット80の切削ブレード81を保護部材に切り込む高さまで下降させて、切削ブレード81を被加工物1の加工終了点14に切り込ませるとともに、回転ユニット32にチャックテーブル30を中心軸線回りの一方向101に回転させる。第2加工ステップST3-3では、制御ユニット100は、チャックテーブル30が180度回転すると、回転ユニット32にチャックテーブル30の回転を停止するとともに、切削ユニット80を切削ブレード81が被加工物1から離れる高さまで上昇させる。このように、実施形態4では、第2加工ステップST3-3のチャックテーブル30の回転方向は、第1加工ステップST1と同方向である。
【0069】
こうして、第2加工ステップST3-3では、
図23に示すように、加工装置20-2は、加工終了点14から加工開始点13に亘って、円形凹部10の外縁のうちの半周上に第1の弧状分割ライン201に連続した第2の弧状分割ライン202を形成して、分割ライン200を形成する。被加工物の加工方法は、第2加工ステップST3-3実施後、終了し、制御ユニット100は、チャックテーブル30をオペレータにより被加工物1が載置された位置まで移動させた後、被加工物1の吸引保持を解除する。
【0070】
実施形態4に係る被加工物の加工方法は、移動ステップST2において、チャックテーブル30を移動させて、切削ユニット80の切削ブレード81の下方に被加工物1の加工開始点13を位置付け、逆回転ステップST10において、チャックテーブル30を他方向102に回転させて、切削ユニット80の切削ブレード81の下方に被加工物1の加工終了点14を位置付けるので、各加工ステップST1,ST3-3において、チャックテーブル30を180度回転することで被加工物1の360度全周に亘る加工を行うことができる。その結果、被加工物の加工方法は、チャックテーブル30の回転可能な範囲が360度未満であっても、加工装置20の改造等を行うことなく、被加工物1の360度全周に亘る加工を行うことができるので、コストの高騰を招くことなく被加工物1を環状に加工することができるという効果を奏する。
【0071】
また、実施形態4に係る被加工物の加工方法は、加工ステップST1,ST3-3においてチャックテーブル30を回転する方向が互いに同方向であるので、各加工ステップST1,ST3-3において、チャックテーブル30を180度回転することで被加工物1の360度全周に亘る加工を行うことができる。
【0072】
〔変形例1〕
本発明の実施形態1から実施形態4の変形例1に係る被加工物の加工方法を図面に基づいて説明する。
図25は、実施形態1から実施形態4の変形例1に係る被加工物の加工方法を実施する加工装置のレーザー光線照射ユニットを示す図である。
図25は、実施形態1から実施形態4と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0073】
変形例1に係る被加工物の加工方法は、
図25に示す加工手段であるレーザー光線照射ユニット40-1を備える加工装置20により実施される。
図25に示す加工装置20は、
図3に示された加工装置20と加工手段であるレーザー光線照射ユニット40-1が異なること以外、構成が同等である。
【0074】
レーザー光線照射ユニット40-1は、被加工物1に対して透過性を有する波長のレーザー光線41-1をレーザー光線41-1の集光点42が被加工物1の内部に位置付けられた状態で照射し、該被加工物1の内部に分割起点となる改質層300を形成するものである。なお、改質層300とは、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態になった領域のことを意味し、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、及びこれらの領域が混在した領域等を例示できる。変形例1では、改質層300の機械的な強度は、周囲の機械的な強度よりも低い。
【0075】
変形例1に係る被加工物の加工方法は、実施形態1又は実施形態3に係る被加工物の加工方法と同様に、被加工物1の外周余剰領域7に、第1加工ステップST1において改質層300からなる第1の弧状分割ライン201を形成し、第2加工ステップST3,ST3-3において改質層300からなる第2の弧状分割ライン202を形成し、環状の分割ライン200を形成する。
【0076】
なお、変形例1に係る被加工物の加工方法は、被加工物1の裏面8側からレーザー光線41-1を照射したが、本発明では、被加工物1の表面4側からレーザー光線41-1を照射しても良い。また、変形例1に係る被加工物の加工方法は、円形凹部10と環状凸部11とが形成されていない被加工物1、即ち、表面4及び裏面8の双方が平坦な被加工物1を研削する前に、研削時に発生する外縁からの割れがデバイス領域6まで到達することを抑制するために、改質層300からなる環状の分割ライン200を形成するのが望ましい。
【0077】
〔変形例2〕
本発明の実施形態1から実施形態4の変形例2に係る被加工物の加工方法を図面に基づいて説明する。
図26は、実施形態1から実施形態4の変形例2に係る被加工物の加工方法を実施する加工装置の切削ユニットを示す図である。
図26は、実施形態1から実施形態4と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0078】
変形例2に係る被加工物の加工方法は、
図26に示す切削ユニット80-1を備える加工装置20-2により実施される。
図26に示す加工装置20-2は、
図10に示された加工装置20-2と加工手段である切削ブレード81-2が異なること以外、構成が同等である。
【0079】
変形例2において、切削ブレード81-2は、被加工物1の外周余剰領域7に裏面8側から保護部材に到達しない深さ切り込んで、被加工物1の外周余剰領域7の全周に亘って切削溝400を形成するものである。
【0080】
変形例2に係る被加工物の加工方法は、実施形態2又は実施形態4に係る被加工物の加工方法と同様に、被加工物1の外周余剰領域7に、第1加工ステップST1において切削溝400からなる第1の弧状分割ライン201を形成し、第2加工ステップST3,ST3-3において切削溝400からなる第2の弧状分割ライン202を形成し、環状の分割ライン200を形成する。
【0081】
なお、変形例2に係る被加工物の加工方法は、被加工物1の裏面8側から切削ブレード81-2を切り込ませたが、本発明では、被加工物1の表面4側から切削ブレード81-2を切り込ませても良い。また、変形例2に係る被加工物の加工方法は、円形凹部10と環状凸部11とが形成されていない被加工物1、即ち、表面4及び裏面8の双方が平坦な被加工物1を研削する前に、研削時に発生する外縁からの割れがデバイス領域6まで到達することを抑制するために、切削溝400からなる環状の分割ライン200を形成するのが望ましい。
【0082】
〔変形例3〕
本発明の実施形態1から実施形態4の変形例3に係る被加工物の加工方法を図面に基づいて説明する。
図27は、実施形態1から実施形態4の変形例3に係る被加工物の加工方法を実施する加工装置の切削ユニットを示す図である。
図27は、実施形態1から実施形態4と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0083】
変形例3に係る被加工物の加工方法は、
図27に示す切削ユニット80-3を備える加工装置20-2により実施される。
図27に示す加工装置20-2は、
図10に示された加工装置20-2と加工手段である切削ブレード81-3が異なること以外、構成が同等である。
【0084】
変形例3において、切削ブレード81-3は、被加工物1の面取り部9に表面4側から保護部材に到達しない深さ切り込んで、被加工物1の面取り部9の表面4側を除去する、所謂エッジトリミング加工を被加工物1に施すものである。
【0085】
変形例3に係る被加工物の加工方法は、実施形態2又は実施形態4に係る被加工物の加工方法と同様に、被加工物1の面取り部9に、第1加工ステップST1において表面4側から切削ブレード81-3を切り込ませて面取り部9の表面4側を除去して第1の弧状分割ライン201を形成し、第2加工ステップST3,ST3-3において表面4側から切削ブレード81-3を切り込ませて面取り部9の表面4側を除去して第2の弧状分割ライン202を形成し、環状の分割ライン200を形成する。
【0086】
なお、変形例3に係る被加工物の加工方法は、円形凹部10と環状凸部11とが形成されていない被加工物1、即ち、表面4及び裏面8の双方が平坦な被加工物1を研削する前に、研削時に外縁からの割れを抑制するために、面取り部9の表面4側を除去して、環状の分割ライン200を形成するのが望ましい。
【0087】
なお、前述した変形例1、変形例2及び変形例3に係る被加工物の加工方法は、実施形態1等と同様に、各加工ステップST1,ST3,ST3-3において、チャックテーブル30を180度回転することで被加工物1の360度全周に亘る加工を行うことができ、コストの高騰を招くことなく被加工物1を環状に加工することができるという効果を奏する。
【0088】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、本発明では、被加工物1は、TAIKO(登録商標)研削されたウェーハに限定されない。
【符号の説明】
【0089】
1 被加工物
15 中心
30 チャックテーブル
40,40-1 レーザー光線照射ユニット(加工手段)
41,41-1 レーザー光線
42 集光点
81,81-2,81-3 切削ブレード(加工手段)
101 一方向
102 他方向(逆方向)
200 分割ライン
201 第1の弧状分割ライン
202 第2の弧状分割ライン
300 改質層
ST1 第1加工ステップ
ST2 移動ステップ
ST3,ST3-3 第2加工ステップ
ST10 逆回転ステップ